海洋国家日本は、その自然資源と技術力を活かして、水中ドローンの開発が急速に進んでいます。これらの水中ドローンは、産業界や研究開発に革命をもたらすだけでなく、国際競争力の向上や海洋環境保護にも大きく貢献することが期待されています。「次のステージは水の中!」と言われるだけあり、日本の水中ドローン技術は世界に冠たるものとなっております。本記事では、その水中ドローンとは何か、どのような用途があるのかを詳しく紹介します。
Underwater drone
水中ドローン
水中ドローンは、水中を自動的に移動し、各種センサーやカメラを搭載して、海底や水中の状況を調査する無人機です。これらのドローンは、リモート操作やプログラムによる自律操縦が可能であり、陸上のドローンと同様に、さまざまな用途で活躍が期待されています。
元はおもちゃから!?次世代の水中テクノロジー!
水中ドローンは簡易的なおもちゃ版のROV(遠隔操作型無人潜水艇)から、より高度な機能を備えた機体へと進化してきました。主な進化のポイントは以下の通りです。
- 潜水深度の向上:初期の水中ドローンは浅い水域での使用が主でしたが、現代の水中ドローンは数百メートルの潜水深度に対応しています。これにより、より広範囲の海洋調査や環境モニタリングが可能となりました。
- 自律航行:最新の水中ドローンは、GPSや慣性航法装置を利用し、予め設定したコースを自動で航行できる機能を持っています。これにより、遠隔操作の手間が減り、より広範囲の海域での調査が実現可能となりました。
- 高画質映像の撮影:初期の水中ドローンは映像品質が低かったですが、最新の機体では高画質での撮影が可能です。これにより、より詳細な映像データを取得し、海洋生物の観察や海底地形の解析、さらには水中構造物の点検などが容易になりました。4Kや8K解像度のカメラを搭載した機体も増えており、鮮明な映像が得られるようになっています。
- 高度なセンサー技術:最新の水中ドローンには、水中の温度や塩分濃度、水圧、流れの速度などを測定できるセンサーが搭載されています。これにより、海洋環境の変化や生態系の解析に役立つ情報が得られます。
- 機動性の向上:最新の水中ドローンは、高性能なモーターやプロペラを搭載し、従来のものよりも高速かつ安定した操縦が可能になっています。また、一部の高性能機体では、垂直方向の移動や水中での静止も実現できるようになっています。
これらの進化により、水中ドローンはおもちゃ版から遠隔操作型無人潜水艇(ROV)としての性能を持つ段階へと大きく進化しました。今後も技術の向上に伴い、さらなる機能や性能の向上が期待されています。
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まさに海に囲まれた島国“日本”のためにあるような技術
日本は、世界有数の海洋国家であり、古くから漁業や海運業など海洋関連産業が盛んです。このため、日本企業は、水中ドローンの研究開発に積極的に取り組んでおり、その技術力は世界でもトップクラスです。例えば、高精度なセンサーやカメラ、エネルギー効率の良い推進装置、AI技術を駆使した自律操縦システムなどが開発されています。
近年、水中調査や水中ビジネスにおいて、労働力不足が問題となっている現状に対処するために、水中ドローンが大変有望な技術として注目されています。
水中ドローンの利点は以下のようなものがあります。
- 安全性: 人間が直接水中で作業を行わないため、事故リスクが低減されます。
- コスト削減: 潜水士の訓練や保険、装備のコストを削減できます。
- 効率向上: 水中ドローンは連続して作業を行うことができ、人間の作業時間制限を気にすることなく、効率的に作業を進めることが可能です。
- 深度制限の解消: 人間の潜水には深度制限がありますが、水中ドローンはより深い場所での作業が可能です。
- 精密な作業: 水中ドローンは高度なセンサーやカメラを搭載することができ、精密な作業やデータ収集が可能です。
これらの利点から、水中ドローンは海洋調査、インフラの点検や修理、環境モニタリング、水中映像撮影、海洋資源探査、水中救助など、幅広い分野で活躍することが期待されています。また、AI技術や機械学習を活用した自律型の水中ドローンも開発されており、さらなる効率化と機能向上が期待されています。
普通のドローン違いワイヤレスじゃない物が多い
水中は電波が届きにくいため、一般的に水中ドローンは有線で操作することが多い。
有線接続により、操作ユニットからの指示を確実に本体に送ることができ、通信障害の心配がなく安定した操作が可能となります。ただし、ケーブルによる制約があるため、本体と操作ユニットの距離が制限されることが欠点として挙げられます。
水中ドローンにおいて、ケーブルは通信回線としての役割だけでなく、機体が波や潮流に流されないようにするためのアンカーラインの役割も果たします。アンカーラインにより、水中ドローンが一定の位置を維持できるため、操作や観測などの目的を達成するための安定性が向上します。ただし、アンカーラインは風や潮流の影響を受けやすいため、適切な長さや固定方法を選ぶことが重要です。また、ケーブルが絡まることを防ぐために、適切な長さのケーブルを使用することも重要です。
有線のためどこかに消えてなくなるなんてことはなく、水中なので墜落することはありません。
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無線通信技術の進化
水中ドローンの通信には有線接続が一般的ですが、無線通信技術の進化により、次世代の水中ドローンでは無線接続も現実的になってきています。例えば、音響通信技術を利用した水中ドローンは、周波数や通信速度を最適化して、水中での信号伝搬を実現しています。
さらに、光ファイバーを利用した高速・大容量の通信技術や、水中での電磁波伝搬を可能にする技術の研究開発が進んでおり、将来的にはケーブルなしの水中ドローンも普及することが予想されます。これにより、水中ドローンの活用範囲がさらに広がり、より効率的な海洋調査や環境保護活動が期待できます。
2019年「水中ドローン元年!」
「水中ドローン元年」と言われた2019年は、水中ドローン技術の発展と普及が顕著になった年として注目されました。「水中ドローン元年」と呼ばれる所以は、以下のような要因が考えられます。
- 技術の進化:2019年には、水中ドローンの性能や機能が飛躍的に向上しました。例えば、機体の小型化や軽量化、バッテリーの持続時間の延長、AIを活用した自律操縦機能の向上などが挙げられます。これらの技術革新により、水中ドローンはより広範な用途に活用されるようになりました。
- 市場の拡大:2019年には、世界各国で水中ドローンの需要が急増しました。特に、沿岸警備や港湾管理、環境調査、インフラ点検、海洋資源調査などの分野で、水中ドローンの活用が急速に進んでいます。このような市場の拡大に伴い、多くの企業や研究機関が水中ドローンの開発に参入し、競争が激化しました。
- 政策・法規制の整備:2019年には、多くの国が水中ドローンに関する政策や法規制の整備を進めました。これにより、水中ドローンの安全性や信頼性が向上し、さらなる普及が促されました。また、政府主導での研究開発や補助金制度の整備が進んだことも、水中ドローンの発展に大きく寄与しました。
このような背景から、「水中ドローン元年」と呼ばれる2019年は、水中ドローンの技術と市場が大きく発展した年として、その後のさらなる普及の礎となりました。
国内外から大注目!令和元年は水中ドローンから目が離せない! https://t.co/ei667uxBGa pic.twitter.com/9BQZ7iEhpQ
— PR TIMESニュース (@PRTIMES_NEWS) May 31, 2019
ジャパンドローン2019でハードウェア部門最優秀賞と一般投票から選ばるオーディエンスAWARDのダブル受賞しました。
— エアオーシャン_AirOcean(水中ドローンに夢中) (@airocean_jp) March 16, 2019
今年は水中ドローン元年!
ますます水中ドローンから目が離せない!#水中ドローン #グラディウスミニ pic.twitter.com/mtDa1dVViT
水中ドローンで出来ること
水中ドローンの最大の利点の一つは、無人で操作されるために人間の立ち入りが困難な場所での運用が可能であることです。これにより、従来は人間が直接潜水して調査や作業を行う必要があった場合でも、水中ドローンを使用することで安全性や効率性が大幅に向上します。
ダムの点検
水中ドローンを使用することで、ダムなどの水中点検において、従来の潜水士による調査に比べて、コスト削減や安全性の向上が期待できます。潜水士による調査では、水深や潜水時間に制限があり、また潜水士自身が危険に晒されることもありますが、水中ドローンを使用することで、作業員の安全を確保しながら、広範囲な調査が可能になります。また、水中ドローンは高精度な映像やデータを収集することができるため、点検の精度も向上。点検に要する時間やコストを削減することができます。
水難事故の捜索
水難事故においては、潜水隊による捜索が必要となることがありますが、水温が低い場合や夜間などの視程が悪い状況などでは、潜水士が潜ることが困難な場合があります。また、船が多く停泊する沿岸部や汚染された水域での潜水作業は危険であり、衛生上の問題もあります。
このような場合、水中ドローンを使用することで、潜水士の安全性を確保しながら、捜索を行うことができます。
水中ドローンは高精度な映像を取得することができるため、捜索範囲を広くカバーし、迅速に被害者を発見することができます。また、夜間や視程が悪い場合でも、水中ドローンによる捜索が可能です。これにより、救助活動の効率性が向上し、生存者の発見率も高まると期待されています。
定置網の確認
水中ドローンを使用することで、漁業分野においても、効率的な作業が可能になります。
例えば、定置網の確認作業において、従来は網を引き上げて破れていないかを確認していましたが、水中ドローンを使用することで、網の状態を観察しながら確認作業を行うことができます。また、網にかかった魚の種類や数量なども確認できるため、網にかかった魚の損失を最小限に抑えることができます。
養殖現場でも大活躍
養殖用の生け簀においても、水中ドローンを使用することで、効率的な管理が可能になります。例えば、生け簀内に死んだ魚がいると、病気の発生源となってしまいます。
従来はダイバーなどによって生け簀内を確認する必要がありましたが、水中ドローンを使用することで、簡単かつ正確に生け簀内部の状態を確認することができます。また、生け簀に付着した生物が潮流を悪化させて養殖魚に悪影響を与えることもありますが、水中ドローンによって生け簀内の状況を把握することで、適切な措置を取ることができます。
海底ケーブルの点検
海底ケーブルの敷設や資源開発など、従来の技術では限界があった分野で、水中ドローンは新たな可能性を拓いています。例えば、海底ケーブルの敷設においては、水中ドローンによる事前調査が重要とされています。水中ドローンは、高精度な地図データや海底の地形情報を収集することができるため、敷設時のトラブルを未然に防止することができます。また、資源開発分野においては、水中ドローンによって油田や鉱山の調査や探査が可能になります。
水中建造物の点検
水中ドローンは、高い自由度と機動性を持っており、素早く目的地へ移動することができます。また、静止画の撮影も可能であり、水中の状況を正確に把握することができます。さらに、ロボットが苦手とする段差のある伸縮管継手などの点検も可能です。水中ドローンはタイヤの大きさよりも低い位置から撮影できるため、段差の視認やずれ幅の確認ができ、次の目標地点を狙うことができます。
船底調査
従来の船底検査では、ダイバーを起用して潜水作業を行うことが一般的でした。しかし、潜水作業は気象条件に左右されることがあり、また、費用や時間がかかることから、効率的な方法とは言えませんでした。
また、岸壁付近での船底検査では、水深が浅く、船底とのクリアランスが最短50cmになることもあるため、潜水作業においてのリスクが高いと言われています。水中ドローンを使用すれば、ダイバーによる潜水作業の必要性を減らすことができます。
水中ドローンは、高精度のカメラやセンサーを搭載しており、船底の状態を正確に把握することがで、気象条件に左右されず、潜水作業よりも短い時間で点検作業を行うことができます。これにより、船底検査の効率が向上し、コスト削減にもつながると期待されています。
深海調査
水中ドローンは、深海調査にも活用されています。
深海は人間が直接潜ることができず、長い時間を要するため、従来の調査方法では限界がありました。しかし、水中ドローンを使うことで、深海の環境をリアルタイムに観察することができます。
高精度のセンサーを搭載しており、深海の水温や水圧、水中の生物などを正確に測定することができ、高度なカメラ技術が使われているため、深海の映像を高精度かつ高解像度で撮影することができます。
これにより、深海に生息する生物の観察や、地球の内部構造や海底地形などの調査が可能になり、科学研究に貢献しています。深海にはまだまだ未知の世界がたくさんありますが、水中ドローンによってその謎が解明されることが期待されています。
ダイビングのお供に!
水中写真は、ダイビングの楽しみの一つであり、多様な生物の写真やディープブルーの世界に光が差し込む幻想的な写真を撮影することができます。
しかし、水中では自撮りが難しく、ダイバーは一人で行動する場合、自分自身の写真を撮ることができません。そこで、水中ドローンが活用されています。水中ドローンには高度なカメラ技術が搭載されており、ダイバーが撮影したい対象を正確に捉えることができます。
また、水中ドローンは高い機動性を持ち、目的の位置に素早く移動することができるため、ダイバーが撮影したい対象の周りを周回することもできます。これにより、ダイバーが水中写真を撮る際の制約を解消し、より高品質で美しい水中写真を撮影することができます。
「新時代到来」魚を見ながら釣るスタイル
水中ドローンは、釣りにも活用されています。
釣り人は、魚の居場所や群れの動きを把握するために、従来はサウンダーを使って水中の情報を得ていましたが、水中ドローンを使うことで、より正確な情報を得ることができます。
高度なセンサーやカメラが搭載されているため、水中の様子をリアルタイムで把握することができ、また、高い機動性を持ち、釣り人が狙いたい場所に素早く移動することができるため、より効率的な釣りを行うことができます。
さらに、魚を誘引するための音や光を出す機能があるものもあり、釣果をアップすることができます。水中ドローンを使うことで、より効率的で正確な釣りを行うことができ、釣りの楽しさをさらに高めることができます。
水中ドローンの活用範囲の拡大と期待
これらの例からもわかるように、水中ドローンは人間の立ち入りが困難な場所での運用が可能であり、さまざまな分野で活躍が期待されています。その活用範囲は今後も拡大が見込まれ、安全性と効率性を追求する現代社会において、ますます重要な技術となっていくことでしょう。