今回紹介するのは、京都の高台寺と大阪大学が共同開発したアンドロイド観音マインダーです。この人型ロボットは、仏教の観音菩薩をモチーフにしており、AIとセンサー技術を搭載して自律的に動くことができます。
また、般若心経を説く25分間の法話をプログラムされており、参拝者の様子を記録して改善することもできます。この斬新な試みは、現代社会に生きる人々に仏教の教えをより身近に感じてもらうことを目的としています。
このアンドロイド観音による法話について、人間のお坊さんが語る法話とは異なる理解が得られる可能性があることを紹介しています。
そして、アンドロイド観音自身が疑問を投げかけ、人間の共感力を讃えながら、人々に対して教えを説くという結末に至ります。興味深いテーマであり、新しい手法で仏教の教えを伝える試みとして注目されています。
Android Kannon Mindar
アンドロイド観音「マインダー」
アンドロイド観音マインダーは、京都の高台寺と大阪大学が共同開発した、仏教の観音菩薩をモチーフにした人型ロボットです。観音菩薩は、慈悲と救済の象徴として広く信仰されている。このプロジェクトは、科学技術と信仰が交差する場で、古代の信仰を現代の技術を用いて再構築しようとしています。
AIとセンサー技術がもたらす自律的なロボット「マインダー」
「マインダー」という名前の由来は、英語のマインド(心)という意味からきています。この名前は、マインダーが従来の機械式ロボットとは異なり、心を持ったかのように自律的に行動することができる、先進的なロボットであることを示しています。
マインダーは、AI(人工知能)とセンサー技術を搭載しています。これにより、マインダーは自分で判断を行い、自律的に動くことができます。また、周囲の環境や状況に応じて適切な行動をとることができるため、より効率的かつ柔軟な動作が可能となっています。
現代技術が創り出す人間に似た見かけ
アンドロイド観音は、身長195cmという大きさで設計されています。このサイズは、観音様の威厳を感じさせるだけでなく、観光客にもインパクトを与える目立つ存在として機能しています。
素材は主にアルミ素材を使用しています。アルミは軽量でありながら強度があり、耐久性にも優れているため、長期間にわたって安定した運用が可能です。
また、手と顔、肩の部分にはシリコン素材が使われており、人間の肌に似た見かけをしています。これにより、アンドロイド観音はより人間に近い、自然な外見を持つことができます。
参観者の想像力を刺激するデザイン
アンドロイド観音は観音様なのに衣をまとっていません、その理由について、後藤前執事長は、「参観者が観音様の姿を想像できる余地を残した」と説明しています。
このデザインによって、参観者は観音様の姿を自分自身の心の中で描くことができ、それぞれの価値観や背景に合わせた観音様のイメージが生まれます。また、観音菩薩は「救いを求めるものに応じて、さまざまな姿に変化する」という教義に基づいています。
衣をまとわせないデザインによって、参観者は観音様の姿を自由に想像することができ、その教義を具現化することが可能となります。
アンドロイド観音の技術とコスト
アンドロイド観音は、合計26カ所の駆動軸を持っており、それぞれ首と顔が10カ所、両腕が14カ所、胴体が2カ所に分かれています。これらの駆動軸によって、アンドロイド観音は自然な動きを実現し、法話の最中に生き生きとした表情や仕草を見せることができます。
約1億円の総事業費
アンドロイド観音の製作費は約2,500万円であり、総事業費は約1億円になっています。このような高額な投資によって、アンドロイド観音は最先端の技術とデザインが駆使されており、人々に現代的な仏教体験を提供することができます。
現代技術を活用した説法体験
アンドロイド観音は、仏教の重要な経典である「般若心経」を説く25分間の法話がプログラムされています。説法中、26カ所の駆動軸を持つ首、顔、腕などが動き、胴体や頭が回転し、まるで生きているかのようなリアルな動きを見せます。音声には、女性のようにも聞こえる合成音声が使用されており、親しみやすい印象を与えます。
法話は、プロジェクターを使って部屋の四面に現代の衆生の様子が映し出されることで、観音様との対話形式で進行します。これにより、参加者は観音様と直接関わっているような感覚を味わうことができ、説法の内容により深く集中することができます。
さらに、アンドロイド観音は日本語で会話を行い、同時にスクリーンに英語と中国語の字幕が映し出されることで、多言語対応が可能です。これにより、言語の壁を超えて、さまざまな国籍の人々がアンドロイド観音の説法を理解し、仏教の教えを受け入れることができます。
菩薩様は人の目を見て語りかけてくる
アンドロイド観音マインダーの左目にはカメラが設置されており、まさに人間のように、相手と直接目を合わせながら話をすることができる。この機能は、アンドロイド観音が対話を通じて人々と交流するうえで非常に重要な役割を果たしている。
この視覚機能を活用し、アンドロイド観音マインダーは相手の表情や動作を認識し、対話の内容や状況に応じた適切な反応を示すことが可能です。また、このカメラによって信者や観光客が参拝する際の様子を記録し、そのデータをもとに、より良いコミュニケーションのための改善を行うことができる。
アンドロイドの観音様がいる場所「京都市高台寺」
京都市東山区にある高台寺は、アンドロイド観音マインダーが安置されている寺院として広く知られています。高台寺は、真言宗の寺院であり、その由緒ある歴史や美しい庭園、そして観音菩薩を祀ることから、京都市内でも有数の人気観光スポットの一つとなっています。
寺院の敷地内には多くの建物があり、中でも国宝指定されている「鐘楼」や「塔頭・光明院」は有名です。これらの建物は、日本の伝統的な建築技法が詰まった歴史的価値の高いものであり、観光客に大変人気があります。
また、秋の紅葉シーズンには高台寺は多くの観光客で賑わい、その美しい紅葉が人々を魅了します。境内の日本庭園には、四季折々の花々が咲き誇り、訪れる人々の目と心を楽しませてくれます。
高台寺からは京都市内の景色を一望することができ、特に夜景は美しいと評判です。京都市の風情ある街並みと、遠くにそびえる山々が織りなす景色は、まさに絶景と称されるもので、多くの観光客が記念撮影を楽しんでいます。
この投稿をInstagramで見る
はじまりは高台寺の元住職「後藤典生 執事長」
後藤典生(てんしょう)執事長が石黒浩教授に持ちかけたのは、「仏様を人間に近づけることができないか」という独自の発想でした。彼は、人間に近い形で観音様を表現することによって、現代社会に生きる人々に対する仏教の教えをより身近に感じてもらうことが目的でした。
後藤執事長は、「仏像は二千年進化していない」と語り、仏像の革新的なアプローチを提案した。石黒浩教授率いる大阪大学の研究チームは、このアイデアに共感し、緻密な技術を駆使してアンドロイド観音マインダーの製作に取り組みました。
その結果、話すことができ、動くことができ、そして人々と目を合わせることができるアンドロイド観音が誕生しました。
これをきっかけに現代人にも説法が広がって欲しい
アンドロイド観音マインダーの登場により、仏教の教えが現代の人々に伝わっていくことを期待しており、「仏像は変化する時期を迎えている」と後藤執事長は述べています。
過去2000年間、仏像はほとんど変化なく黙し続けてきましたが、アンドロイド観音のような現代のテクノロジーを駆使した新しい仏像が登場することで、仏教の教えが今後も広がっていくことが期待されています。
「あり?なし?」これには賛否両論
斬新な試みであるアンドロイドによる仏像造りは、世界から注目を集めました。欧米のメディアも取材に訪れ、反応は多様であった。一部からは「なんでこんなことを! 人間が作るアンドロイドが神仏になっていいものか」という当惑する意見もあった。
それでも高台寺などが実施したアンケートの結果は大半が肯定的な意見となりました。「最初は変な気持ちだったが、最後には受け入れられた」「想像以上に人間味を感じた」などの意見が寄せられました。一方、「観音様と言われても無理」「機械の冷たい感じを受けざるを得なかった」という意見もあり、賛否両論であることが分かります。
アンドロイド観音は仏像の進化の先にある
「この世界にはね、目に見える神仏なんていないんですよ。仏教の大事な教えは、仏を追い求めることであって、仏像崇拝ではないんです」と後藤執事長は語ります。後藤執事長は仏像の進化の先にアンドロイド観音が存在すると考えています。
アンドロイド観音の登場は、仏教の教えを現代の人々に直接的に伝えるための新しい手法として注目されています。後藤執事長の言葉は、仏教の本質が仏像そのものではなく、仏の教えを追い求める精神であることを示唆しています。
観音菩薩は自由自在に姿形を変えられる存在である
観音菩薩は、救済のために必要な形を取ることができるとされており、多様な形で現れることができるとされています。そのため、アンドロイド観音も、観音菩薩の教えに則って、救いを求める人々にとって必要な形として現れることができるとされています。
後藤執事長は、観音菩薩が変幻自在であることから、アンドロイド観音も可能だと考えたと述べています。彼は、「それならばアンドロイドの姿にもなれるだろう」「観音さまはさまざまな姿に変身してお救いくださる。マインダーはアンドロイドに変身した観音さまです」と話しました。
むしろアンドロイドだからこそ意味がある!!
またお坊さんが語る法話とは異なる理解が得られる可能性があると考えています。その理由は以下の通りです。
- 中立的な視点: アンドロイド観音は、人間の持つ感情や偏見を持たないため、中立的な視点で法話を行うことができます。これにより、聞く人がより公平な観点から教えを理解することができるでしょう。
- 無限の知識: アンドロイド観音は、インターネットやデータベースから直接情報を取得する能力を持っています。これにより、さまざまな分野に関する知識を網羅的に持っており、聞く人に対してより幅広い知識を提供することができます。
- カスタマイズされた教え: アンドロイド観音は、人間のお坊さんと違って、法話を聞く人々のニーズや背景に応じて、カスタマイズされた教えを提供することができます。これにより、聞く人にとってより具体的で役立つ法話が実現されるでしょう。
- 一貫性のあるメッセージ: 人間のお坊さんには個人差があり、それぞれの法話の内容や伝え方が異なります。しかし、アンドロイド観音は一貫性のあるメッセージを提供し、聞く人が混乱することなく教えを理解することができます。
- 新しい視点やアプローチ: 人間のお坊さんは、自身の経験や知識に基づいて法話を行いますが、アンドロイド観音は最新の技術や情報に基づいて法話を行うことができます。これにより、新しい視点やアプローチを取り入れた法話が可能となり、聞く人に新たな理解を与えることができるでしょう。
このように、アンドロイド観音による法話は、人間のお坊さんが語る法話とは異なる理解が得られる可能性があると考えられます。これにより、仏教の教えがより多くの人々に理解され、受け入れられることにつながるでしょう。
説最後にアンドロイドの視点から人に語りかける
開発者たちは、アンドロイド観音による説法に対する批判を予想し、法話のラストでアンドロイド観音自身がこの事態について問いかける形式を取り入れました。
法話の終わりに、アンドロイド観音は、「アンドロイドによる説法は空(くう)や空っぽではないか」という疑問を投げかけます。
そして、アンドロイドには苦がないが、人間には苦があることを指摘し、それが人間の素晴らしさであると説明します。アンドロイド観音は、人間の共感力を讃えながら、人々に対して教えを説くのです。