アメリカ西海岸で展開された独立リーグ「パシフィック・アソシエーション」の魅力的な歴史を紹介します。ハワイやカリフォルニアを拠点にした4つのチームが活躍し、観客数は200〜300人程度でしたが、時には1000人以上も集まりました。遠征費の課題にも取り組み、リーグは短い3ヶ月で80試合を行いました。
また、女性選手の参加もあり、吉田えり投手がナックルボーラーとして注目を浴びました。しかし、2020年に消滅し、新たな独立リーグ「MLBパートナー・リーグ」が誕生しました。この記事では、パシフィック・アソシエーションが紡いだ軌跡を紹介します。
Pacific Association
パシフィック・アソシエーション
パシフィック・アソシエーションの一つ、サンフランシスコ周辺で展開されている独立リーグ「パシフィック・アソシエーション」は、アメリカ合衆国西海岸を中心に展開しています。
観客を惹きつける様々な取り組み
パシフィック・アソシエーションは、試合だけでなく、エンターテイメント性の高いイベントも提供しています。例えば、観客参加型のゲームやコンテスト、ファイヤーワークス、ライブ音楽、飲み物や食べ物の販売などがあります。また、選手との交流イベントや、チャリティーイベントなども定期的に開催されています。これらのイベントは、ファンを楽しませるだけでなく、試合の雰囲気を盛り上げる役割も果たしています。
元はハワイとの合同リーグ
パシフィック・アソシエーションは、もともとハワイとの合同リーグとして始まりました。
ハワイを拠点とする2チーム「ハワイ・スターズ」「マウイ・イカイカ」と、サンフランシスコを拠点とする「サンラファエル・パシフィックス」、カリフォルニア州ヴァレーホを拠点とする「ヴァレーホ・アドミラルズ」の4チームが参加しました。
ハワイの2チームは旅費が高すぎて脱退
最初のシーズン中、ハワイを拠点とする2つのチーム、「ハワイ・スターズ」と「マウイ・イカイカ」が、日本の独立リーグであるBCリーグとリーグ間試合を行いました。
他のカリフォルニアのチームは、アリゾナのフリーダム・リーグと対戦しました。
ハワイの2つのチームは旅費の高さを理由に、2013シーズン終了後に活動停止。
再編を迫られる!
このため、リーグは2014シーズンに新たなチームを加える必要がありました。
2014年に再編成され、「ソノマ・ストンパーズ(カリフォルニア州のソノマ郡)」と、「ピッツバーグ・メトル(ペンシルベニア州ピッツバーグ)」の2つのチームが参加し、4チームのリーグになりました。
日本ハムファイターズでもプレーしたマイク・マーシャルが初代コミッショナーを務めた。
2017年には、サンフランシスコの起業家であるジョナサン・ストーンが新たにコミッショナーに就任しました。2018年には、マルティネス・クリッパーズとナパ・シルバラードが新たに加盟し、リーグは6つのクラブに拡大しました。
シーズンは3ヶ月!
1週間に6試合、3カ月で80試合のスケジュールが組まれています。観客数は時には1000人以上になることもありますが、一般的には200〜300人程度の入場者があります。
給料だけで生活するのは厳しいが…。
選手の平均給料は月500ドル(約5万3千円)ほどで、活躍すると1000ドル(約10万5千円)以上もらう選手もいるそうです。
野球だけに集中できる環境
選手は球団が用意してくれた地元のホストファミリーにお世話になり、食事に関しては、毎試合後に球団から用意してもらえる。そのため、特に贅沢はできないかもしれませんが、生活する上で問題はないようです。
試合開始時間は、ほとんどが18時または19時から。選手たちは試合前練習やグラウンド整備などのため、5、6時間前に球場に来て準備を始める。
試合前の練習や準備には、投手が投球練習をしたり、打者がバッティング練習をしたり、グラウンドキーパーがグラウンドを整備したりする必要があるので5〜6時間前には球場に来て準備を始める。
また、試合前には選手たちがストレッチやランニングなどのウォーミングアップを行うこともあります。試合が終わった後には、選手たちはシャワーを浴びて、ミーティングを行い、次の日の準備をして帰宅します。
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「コストダウンのために」各チームの距離が近い
遠征費は独立リーグにとって重要な課題の1つであり、綿密な計画と財政管理が求められます。今リーグは遠征費を抑えるため、各球団は飛行機で1時間以内の距離に本拠地があります。
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男性プロリーグで初の女性バッテリー誕生!
ソノマ・ストンパーズは、オーナーのフランシス・フォード・コッポラさんが有名なワイナリーを所有する街のチームで、女性選手の参加を条件にチームを結成しました。女性の選手は、投手が全試合数の20%、野手が40%の出場機会が与えられました。この取り組みは、男子プロリーグに先駆けて女性バッテリーが誕生した話題となり、米国内外で注目されました。
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Pacific Association’s Sonoma Stompers sign two female players https://t.co/2nLuMjcdzP pic.twitter.com/KDJAANmGC2
— SI MLB (@si_mlb) June 30, 2016
日本人選手も参加!
パシフィック・アソシエーションには日本人選手も参加しています。
ナックル姫「吉田えり」
女性野球選手の吉田えりは、2010年にパシフィック・アソシエーションのマウイ・イカイカでプレーしました。吉田はナックルボールを武器にしていたことから、「ナックル姫」という愛称で親しまれています。吉田がマウイ・イカイカに加入した際には、地元メディアで彼女のプレーが大々的に報じられ、多くのファンから注目を集めました。彼女は翌年にもマウイ・イカイカでプレーし、2011年には北米独立リーグのアトランティックリーグのロードアイランド・レッドストリームでもプレーしました。
Congrats to female Knuckleball pitcher Eri Yoshida for posting a win last night for Maui’s Na Koa Ikaika baseball. pic.twitter.com/gC31mzOB
— Shiina (@mauidesigns) June 10, 2012
Eri Yoshida is set to start tonights game vs @EdmCapitals come out and see her for the first time on Maui! pic.twitter.com/f5wJfj9
— Maui Pro Baseball (@Maui_Baseball) August 10, 2011
NPBの選手も参加!
横浜DeNAベイスターズや、東北楽天ゴールデンイーグルスなどでプレーした古木克明外野手が、2013年にはハワイ・スターズに入団しました。その後、同じくパシフィック・アソシエーションに参加するマリンカーズやイカイカなどでプレーし、2017年にはソノマ・スタンパーズに移籍しました。パシフィック・アソシエーションでは主に外野手としてプレーしています。
日本独立リーグとの交流戦も開催!
日本のプロ野球独立リーグ、ベースボール・チャレンジ(BC)リーグの石川ミリオンスターズは、2012年7月12日に米ハワイ・マウイ島のワイルクで、パシフィック・アソシエーションのマウイ・イカイカとの2試合目の交流試合を行いました。この試合には吉田えり投手(当時20歳)も登板しました。
新型コロナパンデミックの影響もあり消滅
2019年のシーズンの前に、マルティネスとピッツバーグの2つのチームがリーグから離脱し、Salina Stockadeが旅行チームとして追加されました。旅行チームとは、あるリーグに加盟していないチームで、他のリーグや球団との試合を行うことが多いチームのことを指します。通常、ある地域に本拠地を置いておらず、移動しながら試合を行うことが多いため、旅行チームと呼ばれます
2020年のシーズンの前に、「サンラファエル・パシフィックス」はペコス リーグに向けてリーグを離れました。カリフォルニア「ドージコイン」が新しく加わるチームとしてウェブサイト掲載されていましたが、COVID-19 のパンデミックによってシーズンが延期された後、試合を行うことなく削除されました。
また新たな独立リーグへ
そして、2020年をもってパシフィック・アソシエーションは消滅しました。しかし、2021年には新しい独立リーグである「MLBパートナー・リーグ」が発足し、パシフィック・アソシエーションに所属していた一部のチームが参加しています。