東京ドームは、その夜、特別な雰囲気に包まれていました。
球場内は期待と興奮、そして一抹の寂しさが交錯する中、ファンたちの目は一人の選手、背番号51のイチローに釘付けでした。
長いキャリアを日米で築き上げ、日本の野球ファンの心をつかんで離さないイチローが、再び母国の土でプレーする機会は、多くのファンにとって貴重なものとなっていたのです。
《イチロー引退の日(5)》開幕前最後の実戦、巨人との第二戦で上がった大歓声とは?
ICHIRO’S LAST GAME
イチロー開幕戦と引退の噂
2019年3月20日、シアトル・マリナーズが日本での開幕戦に向けて開幕登録枠28人を発表、その中に、45歳のイチローの名が含まれていました。
イチローはマイナー契約でスプリングトレーニングに招待され、この発表によってメジャー19年目の契約が正式に結ばれることとなりました。
イチローの年俸は75万ドル(約8,250万円)で、昨年と変わらず、出来高の追加は無いとされています。
ただし、実際の試合に出場できるのは25人で、ヘルナンデスとリークの2名の先発投手、そして故障中のスミス外野手はベンチ外となりました。
開幕戦後、アメリカでのシーズンで枠が再び25人に戻る際には、イチローがその中に入るかどうかは保留とされました。
昨季、選手登録から外れてフロント入りしたイチローは、今年はマイナー契約でキャンプに参加しています。しかし、開幕に向けた試合での彼の打撃は、残念ながら24打席連続無安打という結果に終わりました。
昨シーズン中に一度選手登録を外れ、フロント入りしたイチローはマイナー契約でのキャンプ入りとなりました。
結果を残すしかない状況の中、開幕前の巨時との試合では、残念ながら24打席連続でヒットを記録することができませんでした。
一方で、日本プロ野球、西武からポスティングシステムを経てマリナーズに加入した27歳の菊池雄星投手は、3月21日の開幕2戦目で先発し、メジャーデビューを迎えることになっていました。
これは、日本のピッチャーが日本でのメジャーリーグの試合でデビューするのは史上初の出来事となります。
厳しい状況の中にいたイチロー、日本での特別な試合で、多くのファンの期待に応えることができるか、多くの注目が集まっていました。
MLB開幕戦、東京ドームでの野球熱はピークに
3月20日、東京ドームで行われたMLB開幕戦、シアトル・マリナーズ vs. オークランド・アスレチックス戦に、4万5787人ものファンが集結し、スタジアムは超満員の熱気に包まれました。
この日、特に目立ったのは背番号「51」のシャツを着用したファンの姿だった。
彼らは、イチローの功績を称え、イチローが所属した過去のチーム、マリナーズ、マーリンズ、オリックス、そしてWBC日本代表の「51」のシャツを身につけていたのです。
さらに、ニューヨーク・ヤンキース時代に背番号「31」のシャツを着用したファンの姿もありました。
もちろん、イチローのファンだけではありません。
アスレチックスのシャツを着たファンや、他のMLBチームのシャツやベースボールキャップを着用しているファンも多く見られました。
Sold out of jerseys and a long line for photos.
— Seattle Mariners (@Mariners) March 20, 2019
Tokyo is ready to watch a legend. pic.twitter.com/rkOpp85gPe
開幕戦でさらなるMLB記録を達成
さらに、これでイチローは2012年以来となる特別な記録を打ち立てたことになりました。
この試合に先発したことで、MLB歴代6位となる開幕戦連続出場を達成。さらに、45歳149日での開幕先発は、MLB史上野手としては2番目の高齢記録となりました。
MLB公式サイトの情報によれば、この年齢での開幕戦先発出場としては、フリオ・フランコの45歳227日が最年長で、彼は2004年にアトランタ・ブレーブスで一塁手としてその記録を樹立しています。
しかし、この記録の中で外野手を特定すると、イチロー選手が最年長となることが明らかになりました。
イチロー選手が開幕戦でスタメン出場するのは、この試合で14回目。そのうち、マリナーズでのスタメン出場は13回目となります。
この数字について、公式サイトは「イチローの13回の開幕戦先発出場は、マリナーズの球団史上、野手としては2番目に多い。この記録はケン・グリフィーJr.と並んでいる」と指摘しています。
イチローが東京ドームに姿を現す
午後3時、多くのファンや報道陣が待つ中、イチローが私服姿で東京ドームへと姿を現しました。
イチローの姿をキャッチするためのカメラのシャッター音が鳴り響く中、イチローは落ち着いた様子で三塁側のクラブハウスへと向かいました。
程なくして、チームメンバーと共にグラウンドに登場したイチローは、チームの集合写真撮影のために位置を取りました。
ゴードンとともに前から2列目の中央に立ったイチローの隣には、この日がメジャーデビューとなる菊池雄星が3列目の中央よりに位置していました。
撮影は約5分ほどで終了し、イチローは他の選手たちと共にベンチ裏へと戻っていきました。
その後、再びグラウンドへ姿を現したイチローは、日本野球界のレジェンド、ソフトバンクの王貞治会長が見守る中で、ウオーミングアップを開始しました。
王会長の厳しい眼差しと期待に満ちた表情が、イチローへの深い信頼とリスペクトを感じさせました。
イチローと「イチメーター」エイミー・フランツの特別な瞬間
イチローとファンの間の絆を象徴するような心温まる一幕が、この日の東京ドームで繰り広げられました。
エイミー・フランツさんは、イチローの熱心なファンとして知られ、その愛は「イチメーター」という愛称で多くの人々に知られています。
彼女は今日も例外ではなく、家族と共にイチローの応援に駆けつけました。彼女たちの位置は、右翼スタンドの特定の場所、それは彼らの“定位置”です。
守備練習中、イチローの目にその「イチメーター」の姿がとまった瞬間、彼はエイミーさんに向けて特別なプレゼントを準備していました。ボールを彼女の方へと投げ入れたのです。
この一瞬の交流は、まるで映画のような感動的なシーンとなり、エイミーさんの家の家宝として永遠に語り継がれることでしょう。
その後、エイミーさんは、「イチローがボールを投げてくれたの!いつだって最高な気持ちです」と、その喜びを隠しきれない様子でファンや取材陣に語っていました。
野球場は、ただの試合を超えた特別な瞬間や絆を感じる場所となることが多い。そして、この日のイチローとエイミーさんの交流は、それを改めて思い出させてくれる出来事となりました。
日本での人気
エイミーさんは日本のファンの間でも有名で、試合中にも関わらサインや記念写真をお願いするファンが殺到しました。
試合に集中したいエイミーは「試合中はサインできません。ごめんなさい。試合後に時間を設けます」というメッセージを持った紙を準備し、それを掲げることで対応をしていました。
一方で、マスコミからの取材申し込みも多数あり、エイミーさんはそれに対応する一方で、独自の「イチメーター」を掲げ、ファンやマスコミにそのシャッターチャンスを提供しました。
イチローのフリー打撃中の見せ場
フリー打撃が始まり、イチローはまるで試合中のような集中力を見せていました。
飛んでくるボールの一つ一つに瞬時に反応し、そのボール処理の美しさには誰もが目を奪われました。地面を這うようなゴロボールも、彼のグローブにすっと収まる。
そして、そのボールをセカンド方向へ置かれたボールボーイへと矢のような返球で送り返していました。
特に印象的だったのは、打球を見事な背面キャッチ、続く後ろ向きキャッチを成功させた瞬間です。
この難しいプレーを華麗に成功させたイチローに、ライトスタンドからは大きな歓声が上がりました。
そしてその歓声に応えるかのように、イチローはファンへの感謝の意を込めてボールをスタンドへ向けて投げ入れました。
この瞬間、東京ドームの雰囲気は一層盛り上がりました。
イチロー、東京ドームのフリー打撃で圧巻のパフォーマンス
イチローが東京ドームで行ったフリー打撃のパフォーマンスは、ファンを一層沸かせるものとなりました。
バントの練習を一度行った後、26スイングでの7本のホームランは、まさに圧巻の一言。特にバックスクリーン横への一撃は、会場に集まった多くの観客の心を掴みました。
そして、ライトスタンド上段に届く一発は、東京ドームの空気を一変させるものとなりました。
その瞬間、ドーム内は歓声と拍手の嵐。イチローのこの打撃パフォーマンスは、多くのファンにとって待ちに待った瞬間でした。
更に驚くべきは、3月16日の練習でも彼は似たようなパフォーマンスを披露していました。28スイングでの10本のホームランは、その中でも5本が連続してのもの。
実戦での打率が伸び悩んでいる中、このような練習の成果はファンを安心させるものとなりました。
👀👀👀#MLB開幕戦 pic.twitter.com/YxLP6LMMpF
— MLB (@MLB) March 20, 2019
王貞治氏、開幕戦前のイチローを激励
フリー打撃の後、ダッグアウト裏でソフトバンク球団会長で世界のホームランキングである王貞治が、イチロー選手にエールを送る場面がありました。
王が練習中のベンチ裏で「とにかく頑張って。見ているから」とイチローに声をかけると、イチローは即座に「全力でやります」と真剣な表情で答えていました。
このやりとりは、二人の深い絆を再確認させるものになりました。
この二人の関係は、単なる先輩と後輩を超え戦友とも呼べる苦難を戦い抜いた絆があります。
それは2006年のWBC、侍ジャパンの監督は王貞治、イチローはチームの主力選手として出場し、壮絶な戦いの末に日本代表を世界一に導きました。
この経験は、二人にとって忘れることのできない特別な思い出となってたのです。
スタメン発表の興奮
東京ドームがさらに盛り上がる中、マーチングバンドがグラウンドに登場。
彼らは鮮やかなユニフォームを身にまとい、一体感ある動きとともに魅力的な演奏を披露し、ファンたちを魅了しました。
その後、待ちに待ったスタメン発表はまずはアウェイのマリナーズから。
スタジアムの大スクリーンに映し出される顔写真とともに、コーチや控え選手たちの名前が一人ひとりアナウンスされていく。そして、スターティングメンバーの紹介へと移行しました。
ファンの期待と興奮がピークに達する中、「ナンバー51 ライトフィールダー イチロースズキ」というアナウンスが流れると、スタジアム全体が一瞬の静寂の後、大歓声と拍手に包まれた。
ベンチから元気よく飛び出したイチローは、チームメイトたちと次々とハイタッチを交わし、チームメイトの列に並びました。
国歌斉唱
試合前、ミュージカル俳優の山崎育三郎が国歌独唱を務めました。
山崎は小学生時代、6年間野球をしており、特に古田敦也とイチローのファンでした。イチローとの対面を長らく夢見てきた彼にとって、この日はその夢が叶った特別な日となりました。
しかし、試合の直前という状況から「全然話しかけられなかった」と、イチローに直接自らの思いを伝えることができなかったと残念そうに語っていました。
さらに、独唱を始めた際にバックスクリーンにイチローのアップが映し出されたことで、「震えてしまって…」というほどの緊張感を覚えたといいます。
その中で、「呼吸が浅くなってしまって自分としては6割ぐらいしか歌えなかった。最悪です」と、完璧なパフォーマンスができなかったことを悔しがっていました。
イチロー選手、開幕戦で熱狂的な声援に包まれる
国歌斉唱に続き、夜空を彩る華麗な花火が上がるシーンとなった。
その鮮やかな光景を背に、イチロー選手がフィールドに登場し、その姿を目の当たりにした観客からは、一斉に「イチロー!」という声が湧き上がった。
選手たちがポジションについていく中、イチロー選手はレフトフィールドへ駆け出し、その動き一つ一つにファンの視線が集まった。
イチローはレフトとセンターの間をダイナミックにダッシュし、三塁線近くでストレッチを開始。その様子は、まるで彼がこのステージでのプレーへの意気込みを伝えるかのようだった。
レジェンドたちが揃い踏み!?豪華すぎる始球式
続いての始球式が行われた。その始球式には、イチロー選手とともにMLBで活躍した、日本とアメリカの伝説的な選手たちが参加した。
マリナーズで2000年から2003年まで一世を風靡した「大魔神」こと佐々木主浩氏がピッチャー、そして2006年から2009年のマリナーズ時代を支えたキャッチャー城島健司。
打席には、アスレチックスで数々の盗塁記録を打ち立てたリッキー・ヘンダーソンが立ち、それを撮影するかのように、3塁側のカメラマン席には、ケン・グリフィーJr.の姿も見受けられました。
ドーム内の雰囲気は一気に最高潮へと達し、佐々木氏が投じたストライクボールを、ヘンダーソンが見事に空振り。その後の3人の握手のシーンに、観客は大きな拍手と歓声を送った。
佐々木は、自身の投球について「練習していなかったので不安だったが、予想以上の結果で良かった」とコメント。一方、ヘンダーソンは「日本での開幕戦は本当に特別。
日本とアメリカのファンが一緒になってこの素晴らしい舞台を作ったことは感謝している」と熱く語りました。
そして、今回の開幕戦の主役であるイチローに対して、佐々木や城島、ヘンダーソンからも温かいエールが送られた。
特に城島は、マリナーズ時代のイチロー選手との共演を振り返り、「シアトルでの日々は素晴らしい思い出ばかり。イチローさんの野球人生を最後まで応援したい」と心からのメッセージを寄せました。
このような伝説たちが一堂に会する始球式は、東京ドームの開幕戦をより一層盛り上げるものとなったのです。
三塁エキサイトシートでのサイン会
今日も、試合開始前にイチローのサイン会がファンを盛り上げました。
このサイン会はイチロー凱旋以来、毎試合行われており、イチローが三塁側のエキサイトシートでファンにサインをしている姿は、多くのカメラに捉えられました。
これまでは試合開始直前まで行われていましたが、開幕戦の準備のため約2分で切り上げていました。
一塁エキサイトシートの林家ペー&パー子夫妻
エキサイトシートの中でも特に目立っていたのが、林家ペー&パー子夫妻の豪華な衣装でした。
彼らはイチローの若い頃の顔がプリントされたピンク色の衣装で登場し、一塁側エキサイトシートで試合を観戦。
その姿が大リーグ公式サイトの動画コーナー「Cut4」の公式ツイッターで紹介されると、ファンからはさまざまなコメントが寄せられました。
一部のファンは彼らを知らず、「彼らは日本で有名なコメディアンだ」と説明するコメントも見られました。
また、「Hayashiya pe & pako」というコメントや「結構良い場所で目立っていましたね!! そりゃあ~目立つわな」という反応が寄せられ、林家ペー&パー子夫妻の存在もこの試合の一つの見どころとなっていました。
The drip is IMMACULATE in Japan. #MLB開幕戦 pic.twitter.com/QzqUjWaDWn
— Cut4 (@Cut4) March 20, 2019
イチロー、日本の公式戦に7年ぶりの出場でファン熱狂
ついに東京ドームが特別な一日を迎えました。
2019年3月20日、MLBの開幕戦で、シアトル・マリナーズのイチローが「9番・ライト」のポジションでスタメン出場を果たし、その瞬間、東京ドームは熱気に包まれました。
試合開始と共に、1回裏、守備についたイチローの姿にファンたちは立ち上がり、熱い歓声を送り続けました。
スタンドのあちこちで掲げられる「イチロー愛してる」というメッセージのプラカード。それは、イチローを心から愛する日本のファンたちの熱い想いが詰まったものであった。
日米通算での28年間の長いキャリアを持つイチローは、昨年5月2日のアスレチックス戦を最後に公式戦から姿を消していました。
そのイチローが、実に322日ぶり、そして日本では7年ぶりに公式戦の舞台に再び姿を現したこの日。ファンたちはイチローのプレーに息を呑み、その一挙手一投足に目を奪われることになりました。
第一打席、積極的な姿勢は結果につながらず
イチローは第一打席、ファンの期待と緊張が交錯する中、3回表、無死一塁の状況で、アスレチックスの先発右腕、ファイヤーズとの対戦が始まりました
イチローの名前がアナウンスされると、東京ドーム全体が大歓声でイチローを迎え入れました。
ファイヤーズの初球は低めの内角に来たボールが暴投となり、一気に無死二塁のチャンスが訪れました。
イチローは2球目、ファーストストライクを大胆に狙いました。しかし、ファイヤーズの鋭い速球に詰まり、セカンドへの簡単なフライアウトとなってしまいました。
ファンの期待に応えられなかったイチローの打席でしたが、マリナーズの攻撃はそこで終わりませんでした。
続く1番・ゴードンがクラッチな右前適時打を放ち、1-2で点差を詰める。
その後、二死満塁のチャンスを迎えた新加入の5番・サンタナが、勝ち越しの満塁弾を右翼席へ叩き込み、5-2とマリナーズが逆転。
イチローの打席が結果に結びつかなかったことは残念でしたが、その後のチームの連携で勝ち越しという展開は、ファンにとって喜びの一つとなりました。
イチロー、粘りのフォアボールで塁上に。結果はホームを踏めず
マリナーズのイチローが、開幕戦での第2打席を迎えたのは、チームが1点のリードを保った4回表の攻撃。
無死一塁の場面、新人右腕の菊池雄星投手もベンチから熱くその打席を見守る中、イチローは2番手として右腕ヘンドリックスとの対決を迎えました。
対戦の中心となったのは、150キロ前後の速球。カウント3-1からは4球連続のファウルで粘りを見せるイチロー。
ファンは、この打席中のイチローの動きに一喜一憂。1球ごとのリアクションで、歓声やため息が織り交ぜられていました。
6球目は自身の身体に当たる自打球が飛び出し、一時はその痛さに身をよじったものの、その次の低めに外れるボールを見極めフォアボールを選択し今シーズンは初の出塁、無死一二塁のチャンスを作りました。
2塁まで進塁
その後、イチローを師と仰ぐゴードンの送りバントでイチローは2塁まで進塁するも、結果的にはホームを踏むことはできませんでした。
#MLB日本開幕戦🇯🇵#マリナーズ vs #アスレチックス
— セレクション公式イチロー選手応援アカウント (@ICHIRO_GOODS1) March 20, 2019
残念ながら #イチロー 選手は4回表の攻撃で交代となりました⤵️
セカンド走者🏃からベンチに戻る姿です👌
明日こそ、是非一本🙏 pic.twitter.com/6xIUyNY0Rd
イチロー、感動的な途中交代。東京ドームはスタンディングオベーション
4回裏、イチローが右翼守備に就いていたところ、突如としてマリナーズのスコット・サービス監督が主審に近寄り、イチローの交代を告げました。
東京ドームに集まった4万5787人の観客、時歴史的な瞬間だった。
この突然の展開に、一瞬、満員の東京ドームが静寂に包まれました。
イチローは、ライトスタンドに向かって手を挙げファンに挨拶をした後、三塁ベンチの方へと向かいました。その姿を迎えるように、マリナーズの4人の内野手とナルバエズ捕手が集まり、イチローとハグ。
更に両軍のベンチからはスタンディングオベーションが起こり、背番号「51」を熱く見送りました。
観客も、フィールドからベンチに下がるイチローの背中に大きな拍手を送りました。
そしてベンチの中でも、イチローはチームメイトから暖かい抱擁と握手を受けました、特に翌日の公式戦デビューを控えている新人菊池雄星投手との握手やサービス監督とのハグが印象的でした。
さらに、イチローは敵チームのベンチにも手を挙げて感謝の意を示しました。
この瞬間は、公式戦の厳しい緊迫感とは一線を画し、45歳の伝説の選手を労う温かな空気に満ちていました。
“イチメーター”のエイミーさんもボードを掲げる
この交代に、イチローの大ファンのエイミーの表情は一変。「私ももっと見ていたかった。観客全員が同じ気持ちだと思う」と、残念そうに語りました。
それに続き「今日はヒットが出なかったけれど、毎試合ヒットを打つ選手なんていない。私はイチローを信じている」と、変わらぬ熱いサポートを誓いました。
そんなエイミーは、イチローがベンチに下がった後、ライトスタンドで立ち上がり、イチローの日米通算安打数を示すボードを高く掲げました。
その姿を目にした観客たちは、すぐにその意味を理解し、球場全体が再び温かい拍手で包まれました。
エイミーの“イチメーター”は、イチローの輝かしいキャリアを追い続けるファンの象徴ともいえる存在。
その彼女が、この歴史的な瞬間にも東京ドームにいたことは、多くのファンにとって感慨深いものなりました。
https://t.co/t4N7x2rlaS
— 朝日新聞 映像報道部 (@asahi_photo) March 20, 2019
【#大リーグ #アスレチックス 対 #マリナーズ】スタンドには「ICHI-METER」(イチ・メーター)が掲げられていました。#イチロー 選手のこれまでの歩みを写真特集でご覧ください。(達)#ichiro #MLB pic.twitter.com/oZymSv5k9O
イチロー現役の終わりを予感させる交代劇
9番という打順、そしてその後の交代は、多くのファンや関係者にとって、イチローの現役生活の終わりを感じさせるものでした。
守備位置から3塁ベンチへと続く道のりは、まるで「最後の花道」のように、チームメイトからも、敵チームの選手たちからも、そして何よりもスタジアムの満員ファンからの温かい拍手と歓声に包まれました。
「エリア51」と称されるライト守備の位置から、イチローがゆっくりとベンチに戻っていく姿は、まるで一つのエンターテインメント、一つのショーのようにも見えました。
しかし、その背後には、イチローの長いキャリア、その栄光と挫折、そして無数の記録と努力が詰まっていました。
その日のイチローの交代劇は、まるで現役生活の集大成、そして感謝の気持ちを伝えるための「セレモニー」のようでした。
そして、その姿を目の当たりにしたすべての人々は、イチローの偉大さと愛情を一層深く感じることとなったのです。
突然の交代、イチローの未来にファン達は不安を抱く
突如として起こったイチローの途中交代は、東京ドームの観客たちに衝撃をもたらし、SNSではその話題が瞬く間に拡散しました。
イチローの名を持つワードがTwitterのトレンドに上昇し、多くのファンからの感情の声が飛び交いました。
特に、日本での公式戦出場が7年ぶりということもあり、イチローのプレーを楽しみにしていたファンからの声は特に強かった。
途中交代という状況に対する様々な反応がSNS上で見受けられました。
一部のファンは、交代のタイミングで席を外していたことや、急いで試合を見に来たのにイチローが交代している事実を受け入れることができず、その失望感をSNSで吐露していました。
その一方で、両軍の選手たちがイチローを温かく迎え入れる姿に感動し、その美しい光景をSNSで共有するファンも多かった。
しかし、多くのファンからは「引退」に関する不安や懸念の声が上がっていました。
イチローの途中交代という行動が、彼のキャリアの終わりを示唆しているのではないかという疑問や心配が、SNS上に溢れていました。
交代の様子から イチロー引退 って…
— 25,000 (@250_political) March 20, 2019
単に外野手として開幕最年長出場記録を更新したから、それを称えてってだけやないの?
トレンドにイチロー引退!?#イチロー引退
— ヨシナアゲハ (@hmdmsk16) March 20, 2019
スポーツ報知が捉えた異例の瞬間
イチローの突如の途中交代は、ファンやメディア、そして他の選手たちにとっても驚きの出来事でした。
その中で、スポーツ報知はこの瞬間を特別に取り上げ、「何を意味するのか」という疑問を投げかけました。
#イチロー 選手 4回裏ライトの守備位置に一度は就きましたが、ベンチに下がりました。下がる際には、選手たちとハグ。コーチや監督とも。これは何を意味するのか😳 #イチロー交代 #mlb #OpeningDay2019 #OpeningSeries2019 #seattlemariners #oaklandathletics #tokyodome #ichiro #メジャー開幕 pic.twitter.com/iexyppVhj5
— スポーツ報知 (@SportsHochi) March 20, 2019
マリナーズ公式ツイッターの意味深投稿
イチローの突如の途中交代により、多くのファンや関係者の間でざわめきが起こっている中で、マリナーズの公式ツイッターもその動きを取り上げる形で一つの投稿をしました。
それはイチローの独特なバッティングルーティンの動画であり、バットで照準を合わせる姿が映し出されており、その動画には「Unforgettable(忘れがたい)」という一言のキャプションが添えられていました。
このツイートは、単にイチローのプレースタイルや存在感を称えるものと解釈される一方で、突如の交代とと同じタイミングで投稿だったことから、多くのファンにはさらなる疑念や憶測を抱かせる要因となりました。
イチローの交代とその後のハグ、そしてこの意味深なツイートが重なり、多くのファンが彼の野球人生の今後についての憶測を加速させた。
「引退を暗示?」、「今日が日本での最後の試合?」といったコメントが多数投稿され、マリナーズの公式ツイッターへの反響も大きく、ファンの間での議論が沸き起こりました。
Unforgettable. pic.twitter.com/it2lYwfI1V
— Seattle Mariners (@Mariners) March 20, 2019
俺でもわかる英文ツイート。
— 鉄分多めのぐっさん (@aahry_ichigo) March 20, 2019
こんなこと公式呟いて、ああいう交代の仕方で、みんなイチロー引退って思うわな…
最初からそうなんだろうなとは薄々思ってたけど、まだ自分含めみんなが認めたくないというか、まだひょっとしたらやってくれそうで踏ん切りがつかないというか…
本人の口から聞きたいね。 https://t.co/Y79IiPLpxc
「明日も同じ光景に」イチローの交代劇にグリフィーJr
このような疑問に答える形で、日本テレビの生放送中、マリナーズOBでありイチローの元同僚、ケン・グリフィーJrが解説席に登場しました。
イチローベンチでハグをする中、日テレの生放送では、解説として登場していたグリフィー氏に、蛯原アナウンサーがイチローの交代についての意見を求めました。
グリフィーは、「これでイチロー選手を見られるのは最後なのだろうか?」という質問に、「そんなことはないよ。あれは最高の儀式。明日も同じような光景が見られるよ」と答えました。
この返答は、解説席にいた他のメジャーOBたちにも安堵の表情をもたらしました。
長谷川滋利は「グリフィーがそう言ってくれて安心してます」とコメント。
さらに、黒田博樹は「アメリカの野球文化の中では、あのような光景は珍しくない。それはイチローへの深いリスペクトの表現なのだろう」との見解を示しました。
マリナーズ、イチロー交代の舞台裏で今季初勝利
イチローの交代後、試合は激しい攻防を展開していきました。
5回、マリナーズのティム・ベッカムが1号2ランホームランを放ち、この大きな一打でマリナーズはアスレチックスを9-4という大差で引き離すことに成功します。
しかし、アスレチックスも決して諦めることなく攻撃を仕掛けてきます。
7回裏、彼らの4番・マット・チャップマンが1号3ランホームランを放つ大仕事。これによりアスレチックスは2点差まで詰め寄る大逆襲を見せました。
そんなピンチの中、マリナーズのブルペンが輝きました。
4番手としてマウンドに上がったザック・ロスカップがきっちりと相手打線を抑え、5番手・ハンター・ストリックランドも同様にクリーンなリリーフを見せる。
最終的にマリナーズは9-7でアスレチックスを下し、今季初勝利を手にしました。
イチローの交代がファンやメディアの大きな注目を集めた一方、チームは確固たる意志で勝利を目指し、その結果を手に入れることができました。
マリナーズの今季に対する意気込みが感じられる一戦となりました。
イチロー交代劇、背後には事前の打ち合わせとサービス監督の粋な計らい
東京ドームでの壮絶な試合の背後に、イチローの交代劇がファンを驚かせました。しかし、この交代はイチロー自身が事前に知っていたものだったようです。
試合後のインタビューで、イチローは「特別な開幕ですね」とのコメントを残し、その中で交代に関して「いやいや知ってましたよ。2打席って」と話しました。
つまり、この交代は試合前からの予定だったことが明らかとなりました。
しかし、ゲーム中にチームメートたちがベンチ前で待ち構える“演出”には、イチロー自身も驚いていた様子。
イチローは「(するとは)わからなかった」と明かしました。アメリカの野球文化ではチームメートが選手を出迎えるハグシーンはよくあることだが、日本のファンにとっては少々新しいものだったのかもしれません。
「でも、あれ日本のファンの人はね、どうなんだろう。アメリカではよくやるけど、ちょっと戸惑っただろうね」と、イチローは日本のファンの反応を気にかけていました。
そして、この交代劇の背後には、サービス監督の粋な計らいもありました。監督の計らいにより、東京ドーム内は拍手で包まれ、感動的なシーンが生まれたのです。
第2戦でのイチロー起用、サービス監督が示唆
試合後のインタビューでマリナーズのサービス監督は、イチローの交代についての理由や第2戦での起用について明らかにしました。
監督は、「若返りを図っているチームで、もちろんイチローには出場してほしいが、他の選手も試したい。この交代の判断はチームのため。イチローもその意向を理解していました」とコメント。
続けて「第2戦の先発起用は約束できないが、試合の流れに応じてフィールドに送る可能性はある」と述べました。
これは日本のファンたちには朗報となりました。
明日も再び東京ドームでイチローのプレーが見られるかもしれない期待が高まる中、第2戦の起用が非常に注目されることとなったのです。
Truly an all-time great. pic.twitter.com/z3AtI0ceYE
— Seattle Mariners (@Mariners) March 20, 2019
エンゼルスの大谷翔平も観戦
エンゼルスのエース、大谷翔平投手が、マリナーズのイチロー外野手が昨年以来322日ぶりに公式戦に出場した日本開幕戦をテレビ観戦したことを明かし、イチローの持続的な高いパフォーマンスに対し、「かっこいい」との敬意の言葉を述べました。
マリナーズとアスレチックスの開幕戦は日本時間の夕方開始でしたが、アリゾナでは真夜中の開始。
それにも関わらず、大谷はイチローのプレーを見逃すことなく視聴。「イチローさんが交代されるまで見ていました」と語りました。
一方で、イチローが4回に交代した際の感動的な場面は大谷が歯磨きをしていたために見逃してしまったという。しかし、そのイチローのプレーを見るために深夜にわざわざ起きた理由を、「イチローを見たかったから」と明言しました。
「イチローさんのプレー、結果を出し続ける姿勢が本当にかっこいい」と語っており、長らくイチローのプレーを画面越しで見続けてきた大谷翔平にとって、イチローは偉大な存在であり続けています。
また、明日の3月21日には彼の高校の先輩、菊池雄星投手のメジャーデビューが予定されています。
しかし、大谷は「昨日は頑張って起きて観戦したので、今日はちょっと厳しいかも」と前日の夜更かしの影響を笑顔で語り、菊池の投球を寝ながら応援したいと述べました。
イチロー、久々の開幕戦でヒットなし。全球ファンが期待する“その瞬間”は
メジャー19年目を迎えたイチローが東京ドームでの開幕戦に登場しましたが、ヒットを打つことはできませんでした。
オープン戦からヒットの快音が途絶えており、ファンの間で「通算4368本目のヒットは明日に託されるのか?」という期待が高まっていました。
イチローは、1打席目には打ち損ね、2打席目には痛烈なライナーを放つもファウルとなり、結果として四球を選び、その後交代しベンチに戻りました。
サービス監督はこの交代理由について、若い選手にチャンスを与えたいと明らかにしています。
そしてマリナーズは、明日の東京ドームでの試合後にはアメリカへ戻ります。それは、同時に出場選手枠も「28」から「25」に戻ることを意味しています。
残念ながら、今のイチローではそこに選ばれるのは極めて難しい状況と言わざるを得ません。
昨シーズンは試合から離れた立場でチームをサポートし、今年はマイナー契約の招待選手としキャンプに参加しました。
イチロー「50歳まで現役」の目標はどうなるのか、野球ファンの注目が集まっていました。
東京ドームに集まったファン、そして世界中の野球ファンは、イチローが再びヒットを放つ瞬間を心待ちにしていたのです。
《イチロー引退の日(7)》「さようなら、イチロー」現役最後の日に起きた奇跡の瞬間