《イチロー引退の日(5)》開幕前最後の実戦、巨人との第二戦で上がった大歓声とは?

巨人とのエキシビション第二戦は、開幕戦を控えた大切な一戦なりました。

オープン戦からここまで不振に苦しむイチローに不安と期待の声が上がる中、イチローのあるプレーで雰囲気が一変しました。今回も引き続き、エキシビョンの模様を皆様に詳しくお届けします。

《イチロー引退の日(4)》日本のファンが待ち望んだ瞬間!イチロー、7年ぶりの凱旋で野球界に興奮巻き起こる!!
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2000年、メジャーリーグ挑戦直前のインタビューから、2019年3月、現役引退直後にシアトルの自宅で行われたロングインタビューまで。スポーツ総合誌Numberを中心に20年間、100時間を超える単独インタビューを完全収録した、イチロー本の決定版。(「Books」出版書誌データベースより)

ICHIRO’S LAST GAME

イチロー、開幕戦前に巨人との実践で静かな闘志

2019年3月18日、開幕戦が迫る中、東京ドームで行われた巨人との第二戦に、イチローは前日に引き続き9番ライトで先発出場を果たしました。

ここまでの彼の打席は、なんと21打席連続ノーヒットという厳しい状況。多くのファンがイチローの次なるヒットを期待してスタンドを埋め尽くしていました。

しかし、イチロー自身は冷静にこの状況を受け止め、自らの内に秘めた技術をフィールド上で最大限に発揮したいという強い意志を持っていました。

試合では、その闘志を感じさせるプレーを見せ、ファンはイチローの全力のプレーに拍手を送りました。

東京ドーム、イチローに熱狂の渦

東京ドームには、その日、通常とは違う雰囲気が流れていました。

プロとしての経験と実績を持つ巨人の選手たちが、まるで初めての大舞台に立つ少年のような無邪気な瞳を持ってフィールドにいました。

スタンドからは、一斉にスマートフォンのシャッター音が聞こえ、その光景はまるで、特別な何かが起こることを期待する一大イベントのようでした。

試合前の全体練習を終えると、巨人の選手たちは通常、ベンチへと戻り、試合の準備に入るのが日常です。

しかしこの日は異なっていました。選手たちは再びグラウンドに足を運び、ワクワクした表情を浮かべていたのです。

彼らの目の前には、マリナーズのユニフォームに身を包んだ「51」の背番号、イチローの姿がありました。

スタンドのファンたちと同じように、巨人の選手たちも、そのスーパースター、イチローの動き一つ一つをスマホのカメラで撮影していました。

45歳にしてもなおその絶妙なバッティングフォームで、スタジアムの奥深くへとボールを飛ばすフリー打撃は圧巻でした。

その光景を目の当たりにした巨人の選手たちは、「えぐい、えぐい」という感嘆の言葉を連発。イチローのプレーに驚きと尊敬の念を隠せない様子でした。

原監督とイチローの練習前の会話

東京ドームのグラウンドに姿を現したイチローが真っ先に訪れたのは、バッティングゲージの裏で選手を見守っていた巨人・原辰徳監督のもとでした。

2人は長い間、日本の野球界を支えてきた大ベテラン。それぞれ異なる道を歩んできましたが、互いの存在を深く尊敬し合っていることは、一目瞭然でした。

バッティングについて、イチロー異例の姿

2日間に渡り続いたこのやり取りは、ただの“談笑”とは言えない何か深いものを含んでいました。

特にイチローが動作を伴って打撃に関する何かを示しながら話す様子は、そのキャリアを通じて稀に見るものでした。

加えて、自身が「右打者のことはよくわからない」と公言しているイチローが、かつての右のスラッガー、原監督にアドバイスを求めている姿は、極めて珍しく、イチローを知る有識者たちを驚かせました。

2009WBC イチローのスランプと原監督の信頼

イチローと原辰徳監督の関係性やその心境を考察する上で、10年前の2006年WBCのエピソードを掘り下げる必要があります。

シアトル・マリナーズのユニフォームで無数の記録を塗り替えたイチローは、2006年の初代WBC大会で日本を世界一へと導きました。

その後も輝かしいキャリアを重ね、すでに伝説となっていたイチローに、2009年WBCでの連覇の期待とプレッシャーが重くのしかかりました。

侍ジャパンに招集された、一流のプロ野球選手たちをもってしても、イチローのプレーを身近で見ることの興奮は隠しきれない様子でした。

イチローの打撃、守備、そして走塁。試合までの準備やその姿勢、イチローの全てに選手たちは魅了されていたのです。

ところが、大会が進むにつれて、イチローの不調が明らかとなってきました。特に日本での1次ラウンドでの打撃不振は、イチロー自身も予想していなかったことだったと思います。

そして、米国での2次ラウンド。普段のイチローならヒットが連発されるはずの試合でも、イチローのバットは沈黙を続けました。

そして、最も印象的だったのは、キューバとの再戦。一塁に走者を置いた大切なチャンスで、送りバントを選択したことに、多くのファンや評論家を驚きました。

あの、イチローが送りバントを選択すること自体が、どれほど打撃に自信を失っていたかを物語っていました。

しかもそれが三塁前への小フライで失敗に終わったことで、イチローの不調はより一層深刻なものとなってしまいました。

ベンチに戻ったイチローのそばに、チームメイトたちは心配そうに集まり、激励の言葉をかけるものの、その目は遠くを見つめていた。

チームメイトやファンは、イチローの冷静さや経験から、このスランプもいつか打破されると信じていたが、本人はその瞬間、深い苦悩の中にいたのです。

「もうバントはしなくていい」イチローの背中を押す

落胆するイチローに、チームを率いていた原監督はイチローにとっての大きな転機となる言葉を送りました。

「もうバントはしなくていい。俺はイチローが見たいんだ」

これは単なる励ましの言葉以上のものであり、イチロー自身の持つポテンシャルと、ファンやチームメイトのイチローに対する期待を伝えるものでした。

「フォア・ザ・チーム」原監督の哲学とイチローの存在

原辰徳監督は、日本代表を成功へ導くための原動力として「フォア・ザ・チーム」の精神を強く推進していました。

この考え方は、自らの能力や欲望よりもチームの利益を優先し、何が最善であるかを常に考えることを強調しています。

これは、単に献身的にプレーするだけでなく、常にチーム全体の利益を最優先に考える姿勢を意味します。

しかしこの哲学の中で、特例とも言える存在がイチローでした。イチローのスキルや実績は、単なるプレイヤー以上のものを持っていました。

イチローがバットを振るたびに、ファンやチームメイト、そして相手チームに与える影響は計り知れないものでした。そのため、原監督はイチローに対して特別な期待と役割を持っていました。

原監督からの一言がイチローの中で何かを変えたのか、第4打席でのその打席はまさに神がかり的なものでした。

ついに、イチローは深刻なスランプを乗り越え、13打席ぶりのヒットを放ちます。イチローのヒットの瞬間、スタジアムの雰囲気は一変しました。

このヒットはメリカでの決勝ラウンド初安打であり、これぞイチローと言うような鮮やかなものでした。

そして、次の打席。ファンの期待はピークに達していましたが、イチローはそれを裏切ることなく、センターオーバーへの圧巻の三塁打を放ちました。

これはイチロー完全復活の一打となり、スタジアムの大歓歓声、そしてイチローの走塁は、多くのファンにとって忘れられない瞬間になりました。

そして、本来の輝きを取り戻したイチローは決勝で韓国との“ライバル対決に挑みました。

イチローの伝説の一打

2009年WBC決勝、日本対韓国。

アジア野球界での長年のライバルとして死闘を繰り広げてきた両国の大舞台に、ドジャースタジアムは5万4868人の観客が駆けつけ、全世界が注目しました。

この試合は、野球史に残る壮絶な試合になりました。

9回裏、日本は勝利まであとアウト1に迫っていました。

しかし、ダルビッシュ有の投じたスライダーをイ・ボムホが見事にレフト前に打ち返し、2塁からの走者がホームに駆け込み、試合は土壇場で同点。勢いは韓国側に一気に傾き、試合は延長戦へと突入しました。

10回表、延長戦に突入した試合はまさに緊迫の一言。韓国はそ絶好調の守護神、イム・チャンヨンをマウンドに送り出しました。

イム・チャンヨンは東京ヤクルトスワローズでの確かな実績もあり、韓国代表としてもその信頼は厚く、まさに最後の壁とも言える存在でした。

日本は内川と岩村の連続ヒットで走者を2人出し、ツーアウト1、2塁。次の一打が、この試合の行方を大きく左右することは明らかで、スタジアムの緊張はピークに達していました。

その中で、打席に入ったのがイチローでした。イチローはこの試合、ここまで3安打を放っており本来の輝きを取り戻していました。

イム・チャンヨンの球筋をファールで粘りながら見極めるイチロー。

そして、ついに8球目の外角やや低めに来た高速シンカーを完璧に取られセンターに打ち返し、日本に勝ち越しとなる2点をもたらしました。

ABEMA 野球【公式】/YouTube
WBC連覇の瞬間

10回裏、雰囲気の中でダルビッシュが続投。先頭打者に四球を与えるものの、高い集中力と技術で後続のバッターを次々と打ち取っていきました。

そして最後はスライダーで相手バッターを三振に仕留め、日本は見事に優勝を決めました。

WBC連覇を達成した瞬間、喜びの渦に包まれたスタジアムの中心にいたのはイチローでした。

イチローの決勝タイムリーは、日本の勝利を決定づけると同時に、野球人生の中でのハイライトの一つとして語り継がれることになりました。

【公式】TBS スポーツ/YouTube
イチローと原監督の信頼関係

あの名試合から早10年。野球界の2大巨星、イチローと原監督が再びバッティングゲージで対話を交わす場面が訪れました。

その感動的な場面の少し前に、原監督はあの日の記憶を心に留めて語っていました。

原監督は、「フォア・ザ・チームの気持ちはわかる。でも、イチローだぞ…イチローなんだぞ?打って出るのを皆が見たいんだ」と自身のイチローへのリスペクトと共に、大会中にファンの期待の狭間で葛藤していた事を明らかにしました。

続いて、「あの時、決して強くは言わなかった。でも、監督からすれば、あの一つのアウトで戦術が変わってくるんだ。イチローには担うべき、イチローだから担える役割というものがあるわけだから」と述べ、イチローが特別な存在であるということを強調しました。

これまで、原監督がイチローの打撃に関して公にコメントすることは一切ありませんでした。そんな原監督が述べた言葉には何か特別な意味が込められていたのかもしれません。

井口監督と坂本選手とイチローの談笑

原監督との会話の途中では、千葉ロッテマリーンズの井口資仁監督も加わりました。

井口監督はこの日、テレビの解説者として来ていた。3人の間には、共通の経験や思い出、そして野球への熱い情熱がある。

彼らの談笑は、まるで古い友人たちが久しぶりに再会したかのような温かさを感じさせた。

その場には、さらに一人、巨人のエースであり、日本を代表するショートストップ、坂本勇人選手も加わりました。

坂本は前日の試合後に、バッティングのタイミングについて手応えを感じていたと公言していまいた。そして、そのタイミングの取り方について、イチローにアドバイスを求めていました。

 

「一瞬一瞬が魅せる真剣さ」イチローの試合前練習

試合前の練習でイチローはエンカーシオンやハニガーら、チームメイトと談笑しながらウォームアップする場面もあったが、その合間合間に見せる真剣な眼差しが印象的でした。

ハニガーとのキャッチボールでは、精度の高いボールを遠投してみせ、観る者すべてを感嘆させました。

距離を徐々に伸ばし、それでも揺るがない投球は、彼の高い技術を見せつけていました。

続いてライトの守備位置へ移動し、丁寧にストレッチ。イチローのルーティーンは、まるで若手選手のような真剣さと情熱に満ちていました。

「背面キャッチ」

フリーバッティング中のボール拾いすら観客を魅了しました。

その中でも特に注目を集めたのは、鋭いライナー性の当たりに対しての反応でした。イチローは迅速に前に進み、見事に背面でボールをキャッチ。

この一連の動きは非常に流れるようで、一発での成功にスタンドは大きな歓声と拍手を送りました。

その後、イチローは三塁ベンチへと移動。そこでフリーバッティングの準備を開始すると、スタンドからは更なる温かい拍手が送られました。

その間、人気俳優の亀梨和也や、元プロ野球選手である“シギィー”こと長谷川滋利とも軽く会話を交わし、バッティングゲージに向かいました。

野球情報局 竹下一朗/YouTube
イチローのフリーバッティング

試合前の練習中、イチローのバッティング練習は、ファンやメディアから注目の的となっていました。

イチローの1回目の打席では、独特のリズムでバントを始め、次第にフルスイングへと移行。その結果、スタンドインに1本のヒットを記録し、通常の流れでベースランニングへと移行した。

そして2回目の打席。この時、彼は強烈な打撃を3回披露し、そのすべてがスタンドの中段に突き刺さるホームラン。

続く3回目、4回目、5回目の打席でも、合計で6本の柵越えホームランを打ち、フリーバッティングの合計で10本のホームランをマークした。

この圧巻の打撃パフォーマンスに、スタジアム内は大きな歓声で彼を称賛した。

練習の終了後、イチローは淡々とベンチ裏へと戻っていったが、その背中には多くの期待と賞賛の声が送られていた。

イチローのアナウンスで盛り上がるスタジアム

スタジアムのアナウンスにより「イチロー」という名前が呼ばれるや否や、瞬時に場内は熱狂的な拍手と歓声に包まれました。

この瞬間を待ちわびていたファンたちの期待と興奮が一体となり、そのエネルギーは場内の隅々にまで伝わった。イチローは、心からの感謝とともに両手を上げ歓声に応えました。

kuriboo sensei/YouTube
kuriboo sensei

試合前のストレッチとサイン会

国歌斉唱が終わるとスタジアムの雰囲気は一変、緊張感が漂う中でイチローはライト方向へと走って行きました。

ライトに到着したイチローは、すぐに入念なストレッチを開始。特に足首や太もも、腰周りを重点的に伸ばしているのが目につきました。

hiroshimamaful/YouTube
即席サイン会

試合の直前の緊張感漂うスタジアムの中、ストレッチが終わったイチローはファンへの感謝の意を示すため、今日もエキサイトシートの観客へサインを行いました。

前日と同様、観客の間に笑顔と期待のざわめきが広がりました。

ファンの一人が持っていたイチローのレプリカユニフォーム、子供たちが手に持つグローブやボール、そして多くのファンが手にしたノートや写真に、一つひとつ丁寧にサインをするイチローの姿に、スタンドからは感謝の拍手や歓声が上がっていました。

関口メンディー、人生2度目の始球式に挑戦

スタジアムの緊張感と期待感が高まる中、始球式を務めるための名前がコールされました。それは、男性7人組ユニット、GENERATIONS from EXILE TRIBEの関口メンディー。

関口メンディーは近日公開予定の映画「PRINCE OF LEGEND」のプロモーションも兼ねて、一丸となった共演者たちとともに登場しました。黒いスーツをまとった彼らの登場に、場内は更なる歓声に包まれました。

関口メンディーの始球式への登板は、実は2度目。関口メンディーは2018年にも巨人対楽天戦で始球式を行っており、その時は驚異的な133kmの速球を披露していました。

そしてこの日、彼は巨人の背番号77のユニホームを身にまとい、再びその剛速球を披露することとなりました。

場内の期待がピークに達したその瞬間、関口メンディーは力強くボールを放つ。しかし、電光掲示板に映し出された数字は127km。

前回の自己記録を更新することはできませんでしたが、それでもその速球に場内は一時のどよめきが。そして、ベンチの方を振り返ると、マリナーズのイチローがその場面を温かい笑顔で見守っていました。

始球式を終えて

始球式を務めた関口メンディーは、イチロー選手も見守る中での投球を終え、「127キロという結果、あまり悔しくはありません!」「考え方とか、イチローさんはすごく尊敬させていただいている。同じフィールドにいて不思議な気持だったし、素敵な経験をさせていただいた」と感慨深げでした。

始球式の投球後、関口は普段使っているボールとは異なる、メジャーリーグ公式球の違いを実感。

「これを渡された」と普段とは異なる縫い目と質感のボールを確認、「縫い目も違いますよね。(指に)かからなかった」と高めに抜けた要因かもしれないと分析しました。

巨人のエース、菅野智之投手から始球式前に「外角低めをねらうといい」とのアドバイスをもらっていましたが、「ちょっとねらい過ぎてしまったかな」と苦笑いしつつも、目標はあくまで140キロと明言しました。

関口は「1度は出したい」と語り、最後はテレビカメラに向かって「次はしっかりリベンジできるように。ゴメンディー!!!」と、決め台詞で締めくくりました。

一方、原辰徳監督が率いる新生巨人軍と、イチローが所属するシアトル・マリナーズとの対戦において、関口メンディーの“全力投球”には共演者たちも感銘。

片寄涼太は「メンディーさんの勇姿を見ることができてうれしかったです!」とコメントし、鈴木伸之は「メンディーさんの背中がいつもの15倍以上に大きく見えました!」と興奮気味に話しました。

また、大学で同級生である町田啓太も「本当に誇らしいです」と感動を込めて述べました。

スポーツ狂/YouTube

第1打席でバットを折られる

3回表、先頭打者としてむかえたイチローの第一打席は坂本工宜投手との対決となりました。

坂本投手は準硬式出身という異色の経歴を持ちながらも、今月に支配下登録されたばかりの新星。初球から140キロの直球でイチローに挑みます。4球連続で直球を投じ、カウントは2-2。

そして、巨人投手陣が前日の今村、田口とべて直球勝負を仕掛けてきた中、初めての変化球となるチェンジアップを低めに投げました。

外角低めへと逃げるボールをイチローは崩れながらもなんとかファウルにしました。しかし、6球目のインコース高めの143キロの直球に詰まり、バットを折られ一ゴロに倒れました。

坂本工宜はその後、ゴードンとハニガーも打ち取り、この回を3者凡退で抑える素晴らしいピッチングを見せました。

この日のイチローとの対戦を経て、「イチローさんと同じグラウンドに立ち、対戦できたことはいい経験になりましたし、なんとか抑えることができたのは良かったです」と坂本工宜はコメントし、イチローに対するリスペクトと自らの投球に対する満足感を表していました。

ベルTV 2nd/YouTube

第二打席は見逃し三振

試合の中盤4回の表、イチローの第二打席に注目が集まりました。

一死で二・三塁の大チャンスの場面、イチローがバッターボックスに立つと、場内の空気が引き締まったのが感じられました。

ファンの期待と熱視線を背に、イチローがヒットを打つことを望む声が響き渡ります。

今度の対戦相手は、左腕の戸根千明投手。戸根は「真っ直ぐで勝負したい」との思いを胸に、独特の球種でイチローを追い込みます。

両者の間にはテンポ良く進む投球と打撃の駆け引きが繰り広げられ、カウントは2-2となりました。

5球目、イチローは何とかファウルで粘ったものの、6球目のスライダーには完全に手が出せず見逃し三振。

イチローの体が前に倒れるような姿勢でその球を見送る姿は、全盛期のイチローならまずあり得ないことでした。

若手の注目投手、戸根千明は堂々としたピッチングを見せながらも、内心では緊張していたことを明かしました。

「最初はやはり力んでしまった」と自身のピッチングを振り返り、それでも心の中で「自分はどこまで通用するんだろう」という思いを持ちながらマウンドに立ったと述べました。

また、「日本のトップを走り、そしてメジャーでもトップを走る日本人選手との対戦は、本当に誰でも経験できるわけではありません。

その機会を持てたことは、非常に価値ある経験と感じています」と幼少期から憧れていたメジャーリーグのレジェンド・イチローとの対戦に喜びのコメントをしました。

ベルTV 2nd/YouTube

最後の第三打席のノーヒット

7回表、3-5で巨人が2点のビハインドを背負い、この回の先頭打者としてイチローがバッターボックスに立ちました。

会場の緊張感はピークに達し、ファンは息をのみました。桜井俊貴投手は、その圧倒的なプレッシャーの中でマウンドに立っていました。

対決は、桜井投手の初球、内角へのストレートで、イチローは見逃しストライク。次の投球、低めへのチェンジアップは見逃しとなり、カウント1-1。

そして、3球目、高めへのカットボールにイチローは空振り、カウントは1-2と桜井投手がリードします。

そして4球目の低めに140キロのストレート打つと打球はセンターへ、結果はセンターフライとなり、この打席もイチローは結果を残すことができませんでした。

試合後、桜井俊貴投手は「『うわぁ』とならないように、バッターボックスは見ないようにしました」とレジェンドとの対決を振り返っていました。

ベルTV 2nd/YouTube

7回裏に交代でベンチへ

豊富なキャリアと経験を背負い、いつものクールでありながらも力強いプレーを見せてくれるイチローでしたが、今日もまた、3打席で途中交代となりました。

7回裏、ライトの守備についた後、ベンチに向かう姿は前日と同じシナリオであり、多くのファンにとっては、イチローのプレーをもっと見たい、という思いがこみ上げる瞬間でもありました。

この前日と同様の交代は、マネージメントからの戦略か、あるいはイチローの体調やパフォーマンス管理に関連しているのか、具体的な理由は明かされていません。

マリナーズの勝利とアスレチックスの熱戦

一歩も引かない緊迫した戦いとなったこの試合は、最終的にマリナーズが6対5で勝利を収めました。

試合終了の瞬間に、マリナーズのベンチから一番に飛び出したのがイチローでした。イチローの顔には満面の笑みが広がり、胸を張るようにフィールドを駆け抜けた。

途中、巨人の元木コーチと熱い握手を交わし、その後、マリナーズの選手一人一人とハイタッチやハグで勝利の喜びを分かち合いました。

その後、ファンの声援に手を挙げ感謝を示し、フィールドを後にしました。

24打席連続ノーヒット…不振が続くイチロー

東京ドームに集まった満員のファンはイチローヒットを期待していました。

しかし、この日もイチローのバットは沈黙を続け、3打数0安打。オープン戦からの成績は24打席無安打で打率.065に落ちました。

プロ28年目の45歳、それでもあのイチローが、開幕前のテストマッチで一度もヒットを打てないことは、多くのファンにとって予想外でした。

イチロー、45歳にして”レーザービーム”を披露

安打こそ生まれなかったが、イチローのあるプレーにこの日一番の歓声が巻き起こりました。

3回裏の巨人の攻撃はノーアウト二塁。田中俊の打った打球がライト方向にフライが上がり、二塁走者のゲレーロがタッチアップの構えを取りました。

それに対して、ライトを守るイチローは打球の落下点を瞬時に見極め、助走をつけながら捕球体制に入りました。その後の動きは流れるようにスムーズでした。

イチローの代名詞とも言える正確無比な送球「レーザービーム」が、ノーバウンドで三塁手のミットに吸い込まれて行きました。これを見たゲレーロは、すぐに進塁を諦め二塁へ戻りました。

2001年から10年連続でゴールドグラブ賞に輝いたイチロー。

その守備の名手が、45歳にして見せつけた「レーザービーム」にスタジアムの熱気は最高潮に達し、大歓声と共に割れんばかりの拍手が沸き起こりました。

その中には”イチメーター”として知られる熱心なサポーター、エイミーさんの姿もありました。

また、生レーザービームに巨人の選手も大興奮、二塁に帰還したゲレーロや原監督までもイチローに拍手を送っていました。

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45歳での”レーザービーム”、米国でも称賛の的

MLBは、イチローの見事な「レーザービーム」の瞬間を、公式のインスタグラムアカウントで動画として公開しました。

そしてそのキャプションには、「リマインダー:イチローは45歳」という一文が添えられていました。

これには、高齢にもかかわらず、変わらないプレーのクオリティへの驚きを伝える意図が込められていたと考えられます。

この投稿後、すぐにアメリカのファンからも称賛の声が上がりました。

コメント欄には「彼は伝説だ」「45歳でこれだけのプレーを見せるなんて信じられない」「まだまだイチローの時代は終わっていない!」など、絶賛の声や驚きの声が並んでいました。

原監督の感想

2試合を戦った原監督は、試合後のコメントでイチローの活躍を称賛した。「本来のバッティングというのは本人が一番分かっていると思う。

ただ、動きそのものは非常に若々しくまだパワフルであると。今日の外野からのスローイングにおいても、知っている限りのイチローの姿であったと感じております」と語りました。

一方、巨人ベンチからの視点も同様に彼イチローを高く評価。

吉村禎章打撃総合コーチは、「私には、彼の中でもがいているというような雰囲気はまったく感じられないですね。どんな形でも打てていたバッター。周囲の見るような今こういう(悪い)状態だというふうに、彼が考えているとは私にはないように映りますけどね」と話し、「ベンチから守備に就くまでの走る姿はいいですね」と結果に拘らない評価を加えました。

プロのスカウトの間でも、イチローの存在は特別なものとして捉えられていようです。

ある日本人スカウトは、「選手の気持ちは背中に出る。僕は後ろ姿を大切に見てます」と、イチローの不屈の精神を暗示するようなコメントをしていました。

レーザービームの衰え?比較された昔と今

45歳になっても以前と変わらぬ動きで外野を縦横無尽に駆け巡り、正確な返球を見せるイチローの姿には、多くの人が感動し、尊敬の念を新たにしました。

しかし、メディアとネットの反応には大きなギャップが見受けられました。

デイリースポーツがレーザービームを「衰え知らずの肩」「放った“白い矢”」「どよめきの中を一直線に」と絶賛する一方、インターネットのユーザーの一部からは、過去のプレーとの比較や、現在の実力を疑問視する声も上がっていました。

特に、YouTubeのコメント欄やツイッターでは、イチローがマリナーズ時代やオリックス時代に見せていた鋭いライナー性の送球との比較がなされ、イチローの衰えを指摘する声が多く見受けられました。

その中には、この試合でのレーザービームを「すごい遠投」「山なりレーザー」といった言葉で表現していました。

不本意?イチローが語るレーザービーム

試合後、イチロー自身もレーザービームについて言及していました。

イチローは、その送球が成功したことについては「運だった」と控えめに語りつつ、そのようなチャンスがなかなか訪れないことを強調。「機会がないとできないから、よく打ってくれました」と、打者への感謝の言葉を語りました。

また、敵将の原監督が彼のプレーを称賛して喜んだことを伝えられると、「ゲレーロは見えたけど、原さんの反応は全然気づかなかった。それは嬉しいね」と少し驚きつつもコメントしました。

しかし、一見完璧な送球にもかかわらず、イチロー自身はその送球に満足していなかったようでした。

イチローは、送球時のボールの握り方について、フォーシームで握ることができず理想的なグリップができていなかったことを明かしました。

その上で、もし完璧な握りができていれば、さらにスピンがかかった球が放てたはずだと付け加えました。

打撃不振と日本のファンへの感謝

一方、打席でついては「凄い空気がよくて、ヒット1本打ちたかったけどそれは残念でしたね」と述べ、日本のファンがつくる空気がプラスになるかという質問には「そりゃあ、そうなるでしょ」とコメント。

日本のファンの熱気や応援ついて感謝を述べました。

 開幕戦に向けての気持ちを問われると、もう始まってしまうという焦りはなく、試合への気持ちは勝手に高まると述べ、開幕戦に向けての準備ができている様子が伺えました。

開幕スタメン確定!サービス監督が信頼の表明

試合後の会見でサービス監督は、「開幕初戦にはイチローを先発させる」と断言。

さらに、「彼は今日も守備でライトから三塁への送球で素晴らしいプレーを見せた。攻撃面ではまだ最高の状態にはなっていないが、短期間で調子を上げれことが出来る選手だと信じている。そしてそれが出来る選手こそがイチローだ。彼のプレーを楽しみにしている」と語りました。

これにより、ファンの間で長らく囁かれていたイチロー開幕スタメンの疑念がようやく解消され、明後日の開幕戦を待つばかりとなりました。

マリナーズは2試合連続での逆転勝利の勢いに乗っており、特にミッチ・ハニガー選手の好調が目立っていました。この状況化でのイチローの先発起用は、チームの勢いをさらに加速させる要因となるでしょう。

開幕前夜、レセプションパーティーでの特別な瞬間

3月19日、開幕戦の前夜の都内の一流ホテルで「MGM MLB開幕戦 レセプションパーティー」が盛大に行われました。

このパーティーは、シアトル・マリナーズとオークランド・アスレチックスのメジャーリーガーとその家族、関係者が集う、特別な夜となりました。

開場からしばらくすると、鮮やかなフラッシュの光の中、イチローがエントランスを歩んできた。

イチローのダークカラーのジャケットとネクタイ姿がエレガントに映え、その姿に会場は一時の静寂を迎えました。中央のテーブルでイチローが関係者との談笑が始めた頃、再びカメラのフラッシュが鳴り響きました。

今度の登場は、読売新聞グループ本社代表取締役主筆、渡辺恒雄だった。

公の場での姿は3カ月ぶりだったという渡辺は杖をつきながら会場を進んで行き、人ごみでイチローとはすれ違う形となったため二人の交流は実現しませんでした。

渡辺はその後、壇上での鏡開きのセレモニーに参加。イチローは、翌日の試合を前にして、リラックスした様子でワインを楽しんでいました。

特に注目すべきは、渡辺氏の大きな夢だったイチローの巨人監督就任の話題でした。

2012年の米大リーグ日本開幕戦当時、渡辺氏はこの構想を公にしており、イチロー本人にもオファーを出していたと言われている。

その夢から7年が経過している今、再び二人が同じ場所に揃ったことは、特別な瞬間となりました。

渡辺とイチローの間には、過去にあるエピソードがありました。

2012年の米大リーグ日本開幕戦当時、渡辺は巨人軍の監督にイチローを迎えるという意向を発表し、イチロー本人にもオファーを出していました。

その夢から7年、再び二人が同じ場所に揃ったことは、特別な瞬間になりました。

イチロー、再び困難からの挑戦

イチローは、キャリアを通して数々の困難を乗り越えてきました。今回のマイナー契約やオープン戦での不調も、その一部に過ぎないかもしれません。

2008年オープン戦の26打席連続無安打は、多くのファンやメディアにとって驚きの出来事でした。しかし、イチローはその年、213安打を記録し、MLBのシーズンを見事に締めくくりました。

その翌年の2009年、WBCでは決勝までの苦しい戦いを乗り越え、最もプレッシャーがかかる場面での4安打を含む圧倒的なパフォーマンスで日本を世界一へと導きました。

このようにイチローのキャリアは、困難からの挑戦と栄光の繰り返しでした。

明日、3月20日にメジャー19年目のシーズンを迎えるイチローは、再び困難からの挑戦になります。はたしてどのようなストーリを紡いでいくのか、多くのファンが注目していました。

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