地獄と化した南米の楽園……石油に呪われた国“ベネズエラ” ②

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地獄と化した南米の楽園……石油に呪われた国“ベネズエラ” ①
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Hyperinflation

全国民が同時に破産!「ハイパーインフレ」

Al Jazeera English/YouTube

 チーズ1キロ、米ドルにして1ドル14セント相当を買うために、1000ボリバル紙幣7500枚を用意しなければならなかった。1000ボリバル紙幣は、2017年に完全導入されたばかりだ。

アングル:デノミ強行ベネズエラ、超インフレ国の買い物事情/朝日新聞デジタル.2018

 53セント相当の石鹸1つを買うには、同紙幣が3500枚必要だ。

アングル:デノミ強行ベネズエラ、超インフレ国の買い物事情/朝日新聞デジタル.2018
ハイパーインフレーションって?

ベネズエラの急激なインフレはこうして始まり、「インフレ率は2016年、225%に達した。南スーダンを除いて、世界中のどこよりも高い水準となった」。

ベネズエラは「崩壊寸前」、なぜそこまで追い込まれたのか/Forbes JAPAN.2019

失業率が急上昇

 失業率も急上昇しており、ハイパーインフレの出現とともに、2015年は7%台だったが、2018年は38%台まで上昇したと推定されている。

物価上昇率250万%、ベネズエラ「超インフレ」より怖い反米思想/iRONNA.2019
公務員の給料激減!職場放棄

経済危機のベネズエラでは税務署から人が消え、学校では教師が足りず、公共料金は徴収されないままになっている。公務員の給与が雀の涙ほどに下がり、何十万人もの欠勤や退職が相次いでいるからだ。

ベネズエラ、大幅賃金低下で公務員が欠勤や大量離職 社会機能が崩壊の危機/Newsweek.2020

公務員は、ほとんど食べていけない額の給与収入など諦めて職場を離れる。スタッフが減った電力会社や電話会社は、停電や技術障害を放置することもしばしば。公務員数十人への取材によると、カラカスの地下鉄公社は運行数を制限し、国税当局は民間企業への厳しい監視をやめた。

ベネズエラ、大幅賃金低下で公務員が欠勤や大量離職 社会機能が崩壊の危機/Newsweek.2020
貧困とは無縁のはずの富裕層も被害

 富裕層なら安心かというと、そうではない。ベネズエラはチャベス前政権時代から企業や富裕層への締め付けを強化し、価格統制を行って、貧困層の生活支援を進める政策を進めてきた。

またも中国の影 今度はベネズエラ? 米国の裏庭で破綻ドミノの危機迫る/産経ニュース.2015

 富裕層が強盗に押し入られる事件も多発するなど、治安も悪化している。

またも中国の影 今度はベネズエラ? 米国の裏庭で破綻ドミノの危機迫る/産経ニュース.2015

ライフラインがストップ!

TIME/YouTube

 首都カラカスでは、そこに暮らすほぼ全ての人の日常生活が厳しい状況に追い込まれている。停電が慢性的に発生するため、政府は電気の使用時間を制限したほか、ショッピングモールは暗闇に包まれている。一戸建て住宅や集合住宅は日常的に水不足に悩まされている。

苦境に喘ぐベネズエラ、電気も水も薬もなし/WSJ.2016

カラカスでは多くの人々が湧き水を求め、山に登る。自動車などの移動手段を持たない低所得者層などは生活排水などで汚染された川の水をくんでおり、健康被害も懸念される。

ベネズエラ停電1週間 復旧宣言も断水・略奪続/日本経済新聞.2019

停電が長引いたことで、世界最悪水準とされる治安の悪化にも拍車がかかっている。冷蔵設備の不良などで食品不足が深刻になる中、食料品店などでは略奪行為が頻発。同国第2の都市である西部マラカイボでは、暴徒化した市民にショッピングモールが襲撃された。

ベネズエラ停電1週間 復旧宣言も断水・略奪続/日本経済新聞.2019

「通貨はもはやただの紙切れ」

M D/YouTube

治安の悪化もさることながら、経済状況は悲惨を極める。ベネズエラの19年1月のインフレ率は268万%だという。ベネズエラの通貨「ボリバル」はもはや価値を持っていない。

ハイパーインフレで「地獄」と化したベネズエラ、そのヤバすぎる現実/現代ビジネス | 講談社.2019

昨年まで100円で買えたものが1月末には268万円になったわけで、もはや略奪以外に物を手に入れる方法はないのかもしれない。逆の見方をすれば268万円のカネが1ヶ月で100円の価値しかなくなったわけで、すべての国民が同時に破産したのだ。

ハイパーインフレで「地獄」と化したベネズエラ、そのヤバすぎる現実/現代ビジネス | 講談社.2019

戦後まもなくの日本でもインフレが横行しました。その記憶は徐々に薄れているものの、日本の経済史にとって重要な事件です。しかし、ピークだった昭和21年でも年率で500%ほど(東京小売物価指数)でした。もちろん500%でも恐るべき水準ですが、1万%となると別次元、100万%ともなれば経済史の教科書に載るレベルです。

【柴山桂太】ハイパーインフレの発生条件/表現者クライテリオン | オフィシャルHP.2018
AKAtheHuss/YouTube

……紙幣が足りない。物々交換でやり取り

BBC News/YouTube

ハイパーインフレは市民の購買力をそぎ、生活を困窮させ、十分な食事がとれない人も多数出ている。またインフレ加速のスピードに紙幣供給が追いつかず、市中で紙幣が不足して日常の買物の支払いに大いに支障が出ていた。

第7回 破綻経済と仮想通貨(ベネズエラ)《新興国発イノベーション》(坂口安紀)/坂口 安紀.IDE-JETRO ジェトロ・アジア経済研究所.2020

ハイパーインフレに苦しむ南米ベネズエラでは、慢性的に不足する食料や医薬品と同じように現金の入手も難しく、市民は日用品を得るために、物々交換に頼る場面が増えている。

超インフレ+現金不足のベネズエラ あらゆる支払いが食料との物々交換に/Newsweek.2018

「ここに現金はない。物々交換だけだ」と、ミレディ・ロベラさん(30)は、夫が捕ってきた魚が入ったクーラーボックスを手に、海沿いの道を歩きながら言った。4人の子どもに食べさせる食料か、息子のてんかん治療薬と、魚を交換できればと考えている。

超インフレ+現金不足のベネズエラ あらゆる支払いが食料との物々交換に/Newsweek.2018

カラカスのバイクタクシー運転手フリオ・ブランコさん(34)は、信頼できる顧客からは、銀行振り込みでの支払いも受け付けることにしたと話す。単純に、出回っている現金が足りないためだという。

超インフレ+現金不足のベネズエラ あらゆる支払いが食料との物々交換に/Newsweek.2018
もはや政府も金がない

ベネズエラでは病院の医薬品棚がほとんど空になり、政府は製薬会社に対する50億ドル(約5650億円)の未払い金に頭を悩ませている。そうしたなかで政府は最近、外国のサプライヤー数社に代替手段による返済を申し出た。医薬品の代金をダイヤモンドや金(ゴールド)、コルタンで支払うというのだ。コルタンは携帯電話やソニーのゲーム機「プレイステーション」などに使われるレアメタル(希少金属)だ。

代金はダイヤで-財政難ベネズエラが困惑の提案 /WSJ.2018

新しい通過を発行!市場は大混乱

Ruptly/YouTube

経済危機が深刻化する南米のベネズエラで、通貨単位を10万分の1に切り下げるデノミネーション(デノミ)の実施に伴う新通貨の導入が21日、本格的に始まった。新しい単位の「ボリバル・ソベラノ」に対応するため、多くの企業・商店が業務を停止し、労働者は仕事に出かけなかった。

ベネズエラで新通貨導入 経済活動は麻痺状態に/BBCニュース.2018

 一方で経済活動には通貨切り下げの影響が出ている。カラカスのあるカフェの経営者は、客が150ボリバルのコーヒー1杯を5000ボリバル札で支払おうとしたが、釣り銭がなかったため売るのを断ったと語った。また現金自動預払機(ATM)ではまだ新しい紙幣を扱うことができないという。

ハイパーインフレのベネズエラ、新紙幣の流通開始も混乱続く/AFPBB News
紙切れになった紙幣を使ってポーチやバッグを……
AP Archive/YouTube

ベネズエラでの苦しい生活に見切りをつけ、隣のコロンビアの街ククタに逃れる人は1万人以上にのぼる。そのひとりヘスス・コリーナさん(36歳)は、紙切れと化したベネズエラの紙幣(通貨の名称はボリーバル)でポーチなどの小物を作り、ククタの路上で売る。「札束を持っているより、それを加工して売った方がお金になるんだ」

1000枚の紙幣で作ったポーチを450円で販売! ハイパーインフレ続くベネズエラから逃げた男の生きる術/ganas.2018

ベネズエラの首都カラカスで、ウィルマー・ロハス(Wilmer Rojas)さん(25)は、価値が低下した同国の通貨ボリバルの紙幣を使い、バッグや王冠などの工芸品を手作りして生活している。

紙幣で手作りバッグ、通貨価値低下のベネズエラ/AFPBB News.2018

数百万人が自分の国から脱出!

TRT World/YouTube

ベネズエラの危機は深まっている。ハイパーインフレ、飢餓、犯罪、病気の蔓延、そして死を逃れるため、何百万もの人々が国外に脱出している。

ベネズエラ避難民が語る絶望と希望/Newsweek.2019

なんとベネズエラ人の国外流出は把握されているだけでも400万人を超えている(6月7日付国連発表)。2015年末時点でのベネズエラ人の国外流出は69万5000人だったので、驚異的なペースだ。ベネズエラの人口は3000万人超なので、1割以上が国外に流出した計算となる。

ハイパーインフレで「地獄」と化したベネズエラ、そのヤバすぎる現実/現代ビジネス | 講談社.2019

脱出して向かう先は大きく分けて二つある。隣国のコロンビアとブラジルである。2000キロの国境を共有するコロンビアにはこれまで100万人がベネズエラから入国しているという。現在も日毎に35000人のベネズエラ人が入国しているという。歴史とは皮肉なもので、半世紀前にはコロンビアからベネズエラに内戦を避け職場を求めて500万人以上のコロンビア人がベネズエラに移民したのである。当時のベネズエラは原油の輸出で経済は潤っていた。

ベネズエラ人の国外脱出者400万人、更に増える見込み/白石 和幸.アゴラ.2018
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世界最大の石油埋蔵量を誇る産油国ベネズエラ。だが、戦争や自然災害とは無関係に経済が縮小を続けている。その間、治安は悪化、食料供給や医療制度も崩壊の危機にある。四〇〇万人以上が陸路国外に脱出し、シリアに次ぐ難民発生国となった。かつて二大政党制を長期間維持し「民主主義の模範」とされた同国に何が起こったのか――。本書は、チャベス大統領就任以降、権威主義体制に変容し、経済が破綻に向かう二〇年間の軌跡を描く。(「Books」出版書誌データベースより)

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