【ウクライナ危機(56)】「ブチャの虐殺調査」ウクライナ危機と関与兵士・部隊の特定動向

ブチャで発生した虐殺事件は、国際的な関心を集める大きな問題となっている。多くの目撃者が「黒い制服の部隊」の関与を報告しているが、具体的な部隊や兵士の正体を特定するのは困難を極めています。しかし、国際社会はそのまま放置するわけにはいかず、真実を明らかにするための調査が加速しています。

この事件の背後には、様々な複雑な要因や背景が存在し、それを解明するためには多方面からの情報収集と分析が不可欠だ。特に、カディロフツィの兵士やブリヤート人、スラブ系の兵士など、異なる部隊や組織の関与に関する情報が錯綜しており、それを整理する作業が進行中である。

この記事では、ブチャの虐殺における様々な部隊の関与に焦点を当て、国際社会がどのようなアプローチで真実を追い求めているのかを詳細に探っていきます。

【ウクライナ危機(55)】ブチャの虐殺はフェイク!?ロシアが主張する中で人工衛星は真実を見ていた。
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単身赴任中の父と3か月を過ごすため、高校生の瀬里琉唯(るい)は母・妹とともにウクライナに来た。初日の夜から両親は口論を始め、琉唯は見知らぬ国で不安を抱えていた。キエフ郊外の町にある外国人学校にも慣れてきたころロシアによる侵攻が近いとのニュースが流れ、一家は慌ただしく帰国の準備を始める。しかし新型コロナウイルスの影響で一家は自宅から出ることができない。帰国の方法を探るものの情報が足りず、遠くから響く爆撃の音に不安と緊張が高まる。一瞬にして戦場と化したブチャの町で、琉唯は戦争の実態を目の当たりにする。(「Books」出版書誌データベースより)

The Executioners from Bucha

ブチャの虐殺の実行部隊は?様々な部隊の関与が取り沙汰される

CRUX/YouTube

ウクライナ首都キーウ(キエフ)近郊の町、ブチャでの残虐行為に関して、米国が実行部隊の特定に取り組んでいることが明らかとなりました。この行為に関与したとされるロシア軍部隊の特定が可能であるとの見解を米国は示しています。

この情報は、米国内での最新情報に詳しい当局者からの発言として伝えられたものでせう。同当局者は「実行部隊の特定は、情報機関にとって極めて優先度が高い」と述べ、既に実行部隊を絞り込む段階にあることを確認。その上で、特定作業に自信を見せました。

しかし、米国がこれらの調査結果を公表するかどうかについては、現時点ではまだ明確ではありません。公表に関する最終決定はウクライナに委ねられる可能性も考えられるといいます。

虐殺部隊「第64自動車化狙撃旅団」

ウクライナ国防省は2022年4月4日、首都キーウ近郊の町、ブチャで発生した残虐行為に関与したとされる部隊「第64自動車化狙撃旅団」の詳細情報を公開しました。

この発表によれば、多くの民間人殺害に関与したと疑われている「第64自動車化狙撃旅団」は、ロシア極東のハバロフスク近郊を本拠地として活動していることが明らかにされました。

CNN/YouTube
プーチンから「親衛隊」の名誉称号を授与を贈られる

「第64独立自動車化狙撃旅団」によって占領されていた2月末から1カ月以上の期間に、市内で数多くの民間人が殺害されたとの報告が相次いでいます。

しかし、ロシア側はこれらの虐殺行為の疑惑を一切否定しています。それどころか、プーチン大統領は4月18日に、この部隊の兵士たちが「英雄的行為と武勇、忍耐力と勇気を示した」と称賛し、兵士らに「親衛隊」の名誉称号を付与することを発表しました。

VestiKhabarovsk/YouTub

指揮官「アザベック・オムルヴェコフ中佐」

4月5日、英国のタイムズ紙は、ロシア軍の活動を監視する市民団体「InformNapalm(インフォーム・ナパーム)」が、ブチャを占領した部隊を特定したと報じました。その部隊は「ロシア軍の第64独立機動旅団(第51460部隊)」で、指揮官は「アザベック・オムルベコフ中佐」であるとの情報も明らかにされました。

ニューズウイーク誌の報道によれば、オムルベコフ中佐は「ブッチャの虐殺者」という異名を持ち、2014年のクリミア侵攻時の活躍が評価されています。その功績により、中佐はロシアのドミトリー・ブルガーコフ副国務相から勲章を授与されたといいます。

ブチャの虐殺後に大佐に昇進

ウクライナのブチャで、ロシア軍の侵攻により多数の市民の遺体が発見される中、英国政府が「虐殺に関わった指揮官」として経済制裁の対象に指名したアザトベク・オムルベコフ中佐が大佐へと昇進したことが明らかになった。ブチャにおいて、ロシア軍が少なくとも350人、多くが民間人を殺害したとの報告があるにもかかわらず、ロシアのプーチン大統領はオムルベコフ大佐に「ロシアの英雄」という称号を贈った。

故郷では功績を讃えられ記念碑も設置

さらに、オムルベコフ大佐の故郷であるロシアの街には、功績を称える記念碑が新たに設置されました。式典には市の幹部が参加し、「我々の街の人間が一世一代の偉業を成し遂げた」と英雄として祭り上げました。

BFMTV/YouTube

「戦争犯罪者」ウクライナ国防省によって兵士1600名の名簿が公開

ウクライナ国防省は「すべての戦争犯罪者が、ウクライナ市民に対して犯した罪のために裁判にかけられる」と激しく非難し、部隊の兵士の名前や生年月日、階級、パスポートナンバーなど1600人以上の情報が公開しました。ブチャの住民の証言によれば、この中には年長の兵士も所属していたといいます。

虐殺部隊がすぐに再び激戦地に投入…その理由は?

ウクライナ国防省は「第64自動車化狙撃旅団」が4月6日までにロシアへ一旦引き上げられていたが、プーチン大統領の指示により、わずか2日間の休憩を経て、再び東部ハリキウの激戦地に投入される予定だと発表しました。

ウクライナ国防省は、「虐殺部隊が再びハリキウに戻ることで、ブチャと同様の殺戮が行われる可能性がある」とし、住民に対して高い警戒感を持って行動するよう呼び掛けました。。

ロシアが“証拠隠滅”を狙う?

ブチャでの虐殺疑惑が深まる中、部隊の兵士は、国際法廷において戦争犯罪者として証言を求められる可能性が高まっており、ロシアが“証拠隠滅”を試みるのではないかとの憶測が高まりました。

「兵士が死ねば証言できない」兵士が戦闘を拒否すれば軍法会議

ウクライナ国防省は、「ブチャでの犯罪行為に責任を感じる兵士は再びウクライナへの投入に反対している。しかし、ロシアの司令部はこの訴えを無視しており、もし戦闘を拒否すれば軍法会議にかけるとの脅しを受けている」との情報を明らかにしました。

筑波大学の中村逸郎教授は、ロシア軍内の残虐行為に関して、「チェチェン共和国の『カディロフツィ』や、シリアからの傭兵の関与の可能性もある」と指摘。さらに、「もし、ロシア兵を再び前線に送るのであれば、国内の『兵士の母の会』などの団体が静観することはなく、反戦ムードが高まることは確実」と分析しました。

中村教授はまた、経済制裁の影響により、ロシア国内で紙や食料などの不足が始まっているとも指摘。「最近の農業関連の会合でのプーチン大統領の様子からも、国内の状況に過敏になっている様子が伺える」と語りました。

虐殺を実行した第64自動車化狙撃旅団所属の兵士10人を特定

4月28日、ウクライナのイリナ・ウェネディクトワ検事総長は、戦争犯罪の容疑で10人の男性を特定し、彼らの写真を公開しました。公表された写真には10人の若い男性が写っており、ウェネディクトワ検事総長は、フェイスブックへの投稿で、これらの男性は「民間人への残忍な行為や、その他の違法行為、および戦争慣例違反の疑いがある」と説明しました。

具体的には、2022年2月24日から3月31日にかけて、家電、洋服、下着などの民間人の私有財産を略奪した疑いが持たれています。さらに、これらの略奪品はロシア部隊の撤退後、ベラルーシ南部に送られたとの情報もあります。

ウェネディクトワ検事総長の声明では、「これらの容疑者を拘束し、裁判にかけるため、指名手配を実施する」とし、一般市民や関連情報を持つ者に対して、情報提供を呼びかけています。

ゼレンスキー大統領も演説で明言

ウクライナのゼレンスキー大統領は、4月28日にソーシャルメディアにて行った演説で、ロシア軍による犯罪の調査が進行中であることを明らかにしました。

この中で、ブチャでウクライナ国民に対しての犯罪行為を行ったとされるロシア陸軍第64自動車化狙撃旅団の兵士10人が、初めての容疑者として特定されたとは述べました。さらに、これらの容疑者の姓が既に判明しており、彼らの行った犯罪について、「彼らが何をしたかは立証されている」と強調、迅速な捜査と対応を求める姿勢を見せました。

裁判や判決が出るまで容疑者が生き残れない可能性

スウェーデンの「ディアコニア国際人道法センター」のマネージャー、スティーヴン・ウィルキンソンは、ロシア軍の戦争犯罪容疑者らがロシアに滞在している場合、彼らの起訴に成功する可能性は「かなり低い」との見解を示しました。

しかし、その後の情報によると、ロシア陸軍の第64自動車化狙撃旅団、特にブチャでの犯罪行為を行ったとされる10人の容疑者は、現在ウクライナのドンバス地方の戦闘最前線にあるイジュームへと東進しているといいます。また、一部報道によれば、同旅団は大きな損失を被っているとのことです。

これらの情報が事実であるとすれば、この10人の容疑者がまだ生存している場合、ウクライナの権限下で発見されて裁判にかけられる可能性も完全に否定できません。

一方で、ゼレンスキー大統領は、第64自動車化狙撃旅団はハリコフ地域に再配置されており、一部の兵士たちはウクライナ軍の報復の対象となる可能性があり、裁判にかけられる前に生き残るのが難しいと述べています。

ロシアの空挺師団が関与の可能性

ロイター通信の調査によれば、ロシア軍の精鋭部隊、第76親衛空挺師団のパラシュート部隊が、ウクライナのキエフ郊外ブチャでの民間人処刑に関与していた可能性が強く示唆されています。この部隊は、ブチャでの占領活動に加わっていたとされています。

この報道は、ロイターが発見した文書、目撃証言、および同紙が入手・分析した動画3本を根拠にしている。動画の中では、3月上旬にブチャを占領したとされる空挺部隊の兵士が、男性8人を銃を突きつけながらオフィスビルに連行する様子が捉えられています。このビルでは、後にその男性たちの遺体が発見されました。

ブチャでの民間人処刑、目撃者が証言

タイムズ紙の報道によれば、キエフ郊外のブチャで連行された男性たちが処刑方式の殺害を受けたと、同地での事件を目撃した複数の人々が証言しています。中でも、43歳の建築業者とされる男性は銃で撃たれ、一命を取り留めたという。

この男性は「私は撃たれて倒れた。脇腹に銃弾が食い込んだ。倒れ込んで死んだふりをした。身動きも呼吸もしなかった」とタイムズ紙に明かしている。

さらに、事件の翌日に撮影されたドローン映像では、オフィスビルの外で遺体を見張るロシア兵2人の姿が確認されています。この映像は、ロシア軍が関与したとされる一連の出来事の裏付けとなる重要な証拠となる可能性が高い。

さらに、タイムズ紙は監視カメラの映像を基に、現場に残された証拠と照らし合わせて、関与した兵士をロシアの空挺師団の一員と特定しています。

タイムズ紙の最近の報道によると、ロシア軍の精鋭部隊である第76親衛空挺師団のパラシュート部隊がウクライナのキエフ郊外、ブチャで民間人殺害に関与していた疑いが強まっている。この情報は、タイムズ紙が入手した目撃証言と分析した動画、およびロイターが発見した文書に基づくものだ。

3月上旬、ブチャを占領したとされる空挺部隊の兵士が、男性8人を処刑した疑いが浮上。この事件は、タイムズ紙が分析した動画2本によって立証されている。動画には、空挺部隊の兵士が銃を突きつけて男性たちをオフィスビルに連行する様子が映し出されている。同オフィスビルでは後に、これらの男性の遺体が発見された。

目撃者たちの証言によると、連行後、処刑方式の殺害が行われたという。一人の目撃者は、自らも銃で撃たれ、一命を取り留めたと証言している。彼は「撃たれて倒れ、死んだふりをした」と語った。事件翌日のドローン映像には、ロシアの兵士2人がオフィスビルの外で遺体を監視する様子が映し出されている。

ブチャの虐殺疑惑「カディロフ部隊」の影

ウクライナのキーウ近郊の都市、ブチャではロシア軍の撤収前、ロシア南部チェチェン共和国から派遣された戦闘員の支配下にあったことが明らかとなっている。キーウ近郊で多数の民間人が殺害された事件に、チェチェン共和国の独裁的リーダー、カディロフ首長の私兵組織「カディロフ部隊」の関与が浮上している。

この「カディロフ部隊」はカディロフ首長の厳しい指示の下、活動を続けており、過去にも数多くの人権侵害が報告されている。もしブチャでの事件がこの部隊の手によるものであるとされれば、ロシアとチェチェンの関係にも深刻な影響が及ぶと懸念されている。

防衛ジャーナリストの半田滋氏は以下のように指摘しています。

「カディロフ氏はプーチン大統領に忠誠を誓い、私兵を差し出したのです。カディロフ部隊の残虐性は有名で、ブチャで民間人を拷問、殺害にも関わっているとみられています。キーウ近郊から撤退後、戦闘激化が懸念されるウクライナ東部に送り込まれます。正規軍にチェチェン人部隊が混在していて、ロシア軍は統制が取れていません。東部の都市でも残虐行為が起きる恐れがあります」

「チェチェンからきたロシアの兵」ブチャの住民の証言

ブチャの事件が国際的な懸念を呼び起こしている中、43歳のオレクサンドル・イェレミッチというウクライナの領土防衛軍の軍事予備役メンバーが、ロシア兵によって命を奪われたとの証言が出てきたました。

目撃した地元住民によると、イェレミッチは、ロシア南部のチェチェン地域から派遣されたロシア軍によって自宅近くから連れ去られたといいます。また、4発の銃声が響いたと証言しており、「彼らはイェレミッチを門の端まで連れて行き、最後には彼の頭を撃った」と激しく語りました。

その住民の隣にいた二人の男も、この悲劇の目撃者でした。二人も、イェレミッチが連れ去られるのを目撃しており、その後の銃声を確認しています。この事件が起こった後、三人は日が暮れるまでロシア軍の命令通りに待機し、その後、イェレミッチの遺体を取りに行ったと語っています。

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ブリヤート人兵士の関与疑惑

ウクライナのブチャやマカリウでの出来事を通して、ロシア軍内部には異なる背景や性格を持つ兵士たちが存在していることが浮き彫りとなっている。ある男性がその具体的な様子を語っています。

道端の花壇を整備していたこの男性によれば、初めにブチャに到着したのはスラブ系の若い兵士たちで、19歳や20歳のような年齢の兵士が中心だったといます。「彼らはほとんど子供のようなもの。彼らの部隊は、私たちが外に出ても許容してくれ、主に空への威嚇射撃が主だった」と振り返っています。

しかし、その後の部隊ローテーションでの変化により、部隊の性格が一変したといいます。

男性は続けて、「それからモンゴル系のブリヤート人の兵士が来た。彼らの態度は過酷で、彼らとの交流で『戦争に行けば家に電気を供給する』や『大学の学費を支払う』との約束を聞かされた」と語りました。

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ブチャ市長、ロシア連邦軍の非人道的行為を非難

ブチャのアナトリー・ペドルク市長は、ロシア連邦軍の中でも特にカディロフの軍、チェチェン軍やブリヤート人の部隊による非人道的な行為を公やけに非難しました。

市長は、これらの部隊は「どんな軍よりも、ひどい殺しで、レイプしたり、一般市民に暴力を振るったり、町を壊したりした」と強く強調、「町を再建することはできますが、失われた命は決して戻ってこない」と深い悲しみの中で怒りをあらわにしました。

特に痛ましい事例として、妊娠している女性が避難中に殺害されたことが挙げられています。さらに、一般市民の住宅に侵入し、冷蔵庫や洗濯機、電子レンジなどの家電製品を盗む行為も確認されており、これらの物品はベラルーシに送られているといいます。

ペドルク市長は、これらの非人道的な行為を止めるため、国際社会に対し支援と協力を求めました。

ブチャで黒い制服の部隊」の目撃情報

ブチャにおいて、ロシア軍の「真っ黒な制服を着た部隊」が乱射を行ったとの目撃証言も報告されています。この情報は、ブチャが解放される約1週間前の3月26日および27日の期間に起こったと特定されています。

目撃者の中には、この「黒い制服の部隊」がロシアの民間軍事会社「ワグネル(ワグナー)」の兵士である可能性を指摘する者もいます。一方で、「ロシア連邦保安庁(FSB)」の特殊部隊のメンバーであるとの見方も存在しています。

ロシアの民間軍事会社「ワグネル・グループ」

ウクライナの軍及び関連当局は、ブチャに設置されたロシア軍の拠点には、歩兵、落下傘降下部隊、そしてロシアの民間軍事会社「ワグネル・グループ」と関連した部隊が混在していたと報告を行いました。また、この拠点は首都キーウ攻略を目的としたものであったと考えられています。

ワグネルは以前から国際的な議論の的となっており、特にシリアでの活動について注目が集まっています。過去には、グループの戦闘員がシリアで捕虜とされる人々を残虐に扱う様子をビデオ撮影し、それがインターネット上で公開される事件が発生しています。このビデオには、笑い声を上げながら人々をハンマーで打ちつけ、頭部や手足を切断する恐ろしい光景が収められていました。

欧米のメディアは、このワグネルがウクライナのキーウ近郊、ブチャでの虐殺に関与した可能性があると報じています。

Tribun Timur/YouTube

KGBの跡を継ぐ連邦保安局「FSB」の存在も浮上

ブチャにおける虐殺事件の背後に、ロシアの連邦保安庁(FSB)の関与があるとする証言が、現地の住民から明らかにされています。

ある住民によれば、「当初は主に若手の兵士たちが配置されていたが、約2週間後に40代の年配の兵士が増えた。そして、この時期から市内での虐殺が拡大した」と述べています。更に、年配の兵士たちは高度な装備と黒・緑色のユニフォームを身につけており、若手の兵士からは「彼らはFSBの人たちだ」という言葉が漏れ聞こえることもあったといいます。

FSBは、旧ソビエト時代の国家保安委員会(KGB)の国内部門の後継機関であり、特殊部隊ヴィンペルは、過去のチェチェンやウクライナといった紛争地域で、様々な工作活動、暗殺を含む破壊行為を行ってきた経緯があります。また、ロシアの現大統領、ウラジミール・プーチン氏も過去にKGB諜報員として勤務し、1998年から1999年にかけてFSBの長官を務めていました。

特にFSBのアルファ特殊部隊は、その中でも特に選抜されたエリートとして知られています。ブチャにおける目撃証言や現場の状況から、このエリート部隊が虐殺に関与している可能性が強く指摘されています。

ブチャ市民の証言「ロシアの年配の兵士たちとFSBの恐怖」

4月6日、ブチャ市の地元住民オレナはロシア軍の占領下での恐怖体験を証言しました。

オレナは7歳と9歳の子どもたちとともに、電気の通っていない団地の地下室で隠れて生活していました。彼女によれば、ロシア軍の到着前は武器を持たない地元企業の警備員中心の領土防衛隊が存在していたが、ロシア軍の進入とともに彼らは逃走したといいます。

当初、ブチャは若いロシア兵たちが街を支配していたが、約2週間後に年配の兵士たち(FSB・ロシア連邦保安局)が加わりました。その年配の兵士たちは高品質の装備を身に着け、ロシアの標準的な軍服とは異なる黒と濃い緑色のユニフォームを着用していた。

そして、同時に虐殺が始まったと言います。「彼らは残忍で、皆を虐待した。その時から虐殺が始まった」とオレナさんは涙をこらえながら話しました。

しかし、すべてのロシア兵が残忍だったわけではなく、「ロシア兵の中には『良い人』もいた」と付け加え、兵士らの中には、住民に対して親切に接する者もいたと語りました。

ある日、彼女が子どもに何を食べさせればよいかを尋ねると、兵士たちは食料や配給品を提供してくれた。しかし、その後の彼らの告白が驚きであった。「住民の移動を制限しているのは、暴力的な特殊部隊であるFSBだ」と彼らは語った。オレナさんは、ロシア兵が同胞に対してこのような言葉を使うことに驚いた。

オレナさんの住む地域では、女性のみが水や食料の調達のために外出が許可されていた。男性の外出は禁止されていた。彼女の近所の人々が一日の終わりにゴミを捨てるために外出したが、彼らは戻らなかった。建物に住む他の女性たちが中庭で火の薪を拾うために外に出たところ、彼らの遺体を発見した。彼らは血まみれで地面に倒れており、明らかに銃で撃たれた痕跡があった。

オレナさんがFSBの職員に立ち去る理由を問われたとき、彼女は「私は43年間ここで平穏に生活してきた。どこに行けばいいの?」と答えた。しかし、その返答は「裏切り者」という侮辱的なものでした。

FSBの恐怖支配「テロリスト」としての定義

ブチャの市民が体験したFSBの「威嚇行為」が詳細に明らかになっていきました。FSBの進駐が始まってから、住民に対する無差別な殺害や「裏切者」の発見に続き、地下牢での拷問や殺害など、恐怖支配が続行されたとの情報が確認されています。

これは、武力侵攻後の地域住民を強圧下に置くための行動と思われ、これはソ連〜ロシアで見られる典型的なパターンであり、過去にもチェチェンやドンバスで同様のことが行われてきました。フランス革命初期に名付けられた「テロール」や「テロリズム」という用語を基に、FSBの行動は明確に「テロ」として、そしてFSBのスペツナズ兵士たちは「テロリスト」として定義される可能性が指摘されています。

もしこれがFSBの仕業であれば、ロシアのプーチン大統領の意向が反映されているとの見方もある。しかしながら、多くの国際社会が期待する国際刑事裁判所(ICC)による戦争犯罪の捜査は困難との声も多い。ロシアのネベンジャ国連大使もICCによる捜査の限界を知り、虐殺を「ウクライナの偽装」として一蹴している。

テレビ朝日のコメンテーター、玉川徹は、「戦場での死は当たり前とFSBは考えており、人の命を軽視している」とし、「シリアやチェチェンでも虐殺があったとの報告はあるが、今回のような取り扱いはされていない。これには人種の問題も関係しているかもしれない」との指摘をしています。

Служба безпеки України/YouTube

プーチン直属の部隊!ロシア国家近衛隊

ウクライナ、ベネディクトバ総長は最近、ブチャにおける民間人の虐殺に関与したとされる最初の容疑者がロシア国家近衛隊の指揮官、セルヒ・コロッセイであると発表しました。

この情報は、ブチャの住民が郵便局の監視カメラの映像をもとにコロッセイを識別したことから明らかになりました。目撃者の証言によれば、コロッセイはブチャで民間人を拘束し、銃での実際の処刑に加えて、拘束者を恐怖に陥れる「模擬処刑」として知られる行為も行っていたとのことです。

また、現地のメディアはブチャで発見された手を縛られた遺体がコロッセイの犯行であることを示す動画を公開しました。この動画は、彼の犯罪行為をさらに裏付けるものとして広く取り上げられています。

さらに、コロッセイはベラルーシのマジル市で生まれ、後にロシアのモスクワへ移住。彼はその後、ロシア国家近衛隊に参加し、最近のウクライナとの紛争に関与していたと伝えられています。

ロシア国家親衛隊

ロシア国家親衛隊(ロスグヴァルディア)は、2016年に設立された大統領直属の軍組織であり、ロシア連邦軍とは別の指揮系統に位置しています。その主な目的は、国内でのテロや組織犯罪の取り締まりを強化することでした。実際に、多くの危機的状況や治安維持活動において、彼らの役割が明確にされてきました。

しかし、その実際の活動は、テロや犯罪対策だけでなく、国内の平和的な反政府デモの弾圧にも使われてきました。これは、政府にとって都合の悪い声や意見を封じるための手段として、ロシア国家親衛隊が利用されていることを示しています。

国家親衛隊の隊長はプーチンの元ボディーガード

ロシア国家親衛隊の隊長ヴィクトル・ゾロトフは、かつてプーチン大統領のボディガードとして仕えていた人物として知られています。彼が指導するロシア国家親衛隊は、プーチン大統領が直接の指導のもとに設立した組織で、大統領の意向を反映する形での活動が期待されています。

この組織の設立背景には、プーチン大統領の安全保障に対する独自の考え方や、自身に絶対的な忠誠を誓う組織の必要性がありました。ゾロトフの指揮のもと、40万人以上とも言われる親衛隊員を擁するロシア国家親衛隊は、プーチン大統領の強力な支持を受けています。

しかし、西側のアナリストの指摘によれば、ウクライナ侵攻時の初動においてロシア国家親衛隊が前線に投入されたことは、ロシアが短期決戦を期待し、その後の占領地域での秩序維持にこの部隊を利用する計画があったことを示しているとされています。

また、ゾロトフ自身は軍人としての伝統的な訓練を受けておらず、ロスグヴァルディアも戦車を持っていないなど、攻撃的な戦闘には不向きな部隊構成となっています。これがロシアの戦略や戦術にどのような影響を及ぼしているのかは、今後の展開を見守る必要があります。

Слідство.Інфо | Розслідування, репортажі, викриття/YouTube

新たな疑問と今後の調査

ブチャでの出来事は多くの人々の心を捉えており、真実を知るための調査が続けられています。未確認の情報や誤情報が流布する中、真実を突き止めることは容易ではありません。その中で、「黒い制服の部隊」に焦点を当てた調査が続けられる一方で、他の部隊や組織、兵士たちの行動も同じように調査の対象となっています。

カディロフツィやブリヤート人、スラブ系の兵士たちの行動に関する報告は、彼らの背後にある指導、訓練、動機などの要因が影響している可能性が指摘されています。このような状況下で、各兵士や部隊の行動を一括りにせず、それぞれの背景や状況を詳細に調査することが、より正確な情報を得るための鍵となるでしょう。

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