ウクライナのブチャ市。ロシア軍の撤退後、目撃されたのは無言の悲劇の証しでした。街の至る所に、無実の民間人の遺体が散乱し、その光景は、虐殺、強姦、拷問、強奪といった極限の状況を物語っていました。
この記事では、ブチャで発生した出来事の詳細と、国際社会の反応を深堀りしていきます。多くの命が失われ、家族や友人を亡くした市民たちの証言を通じ、この悲劇の全貌を明らかにしていきます。
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Bucha massacre
世界中が震撼したロシア軍の蛮行『ブチャの虐殺』
キーウ近郊のブチャ市で、ロシア軍による民間人の大量虐殺が行われたとの疑惑が浮上し、世界中から非難の声が高まりました。現地からは戦慄を感じる映像が数多く流れ、多くの国々と国際社会がこれを強く非難しました。
ブチャは2月24日のロシアによるウクライナ侵攻の際、ロシア軍によって占領された都市の1つです。ロシア軍はチェルノブイリ原発を占領した後、キーウに向かって南下してこの地域を占領しました。そして3月3日以降、1カ月近くこの都市を支配していましたが、ウクライナ軍の反撃により撤退を余儀なくされました。
そしてロシア軍の撤退後、衝撃的な事実が明らかとなりました。ブチャの街で数百体もの市民の遺体が一度に発見されたのです。この事実を受けて、ロシア軍による「民間人大虐殺」の疑惑が急速に高まり、国際的な非難の声が強まっている。特に、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領への批判は尋常ではなく、「戦犯」として国際刑事裁判所(ICC)に送致すべきだとの声が高まりました。
ウクライナの首都から25km「ブチャ市」
ブチャは、ウクライナのキーウ州に位置する都市で、ブチャ地区の中心として機能している。具体的には、国の首都であるキーウから西方25kmの地点に広がる。最新の人口統計によると、2021年の時点でブチャの人口は3万6971人。
この都市の名前は、地域を流れるブチャ川に由来している。この川は、より大きなイルピニ川の支流として知られている。
ブチャの歴史は古く、初めて文献に記録されたのは1630年である。それから長い年月を経て、この地域は発展を続けてきた。2006年まで、ブチャは「町」としての地位を持っていたが、その後「都市」としての地位を得ることとなった。
ブチャは緑に囲まれた平和な郊外の住宅地で、治安が良く、多くの公園に囲まれており、首都キーウへのアクセスの良さから、庭付きの家に住むことを夢見る裕福な家族が多く住んでいました。しかし、2022年のロシアによるウクライナ侵攻は、この町の風景を一変しました。
ロシア軍の侵攻が開始して数日でブチャはロシア軍の支配下に置かれた
2022年2月24日に戦線布告したロシア軍は、速やかにウクライナの首都キーウを目指して進撃を開始した。その道筋上には、ブチャという戦略的に重要な都市が位置していました。ロシア軍の首都包囲作戦のためには、このブチャを制圧することが不可欠でした。
初め、ウクライナ軍はブチャでロシア軍の進行を阻止しようと試みました。しかし、ロシア軍は強大な力を持ち、3月3日には再びブチャを攻撃。これはキーウを包囲するための一環として行われました。
ロシア軍の侵攻下、ブチャ市民は大きな恐怖を感じた。地元の防衛部隊も存在していたが、そのほとんどはロシア軍の強大な軍事力の前に逃亡を余儀なくされました。
その後、ブチャはロシア軍の支配下に置かれた。多くの市民は家を失い、平穏な生活は一変してしまいました。この出来事は、ロシアのウクライナ侵攻の中で、特に印象的な出来事の一つとして記憶されています。
クライナ軍がブチャを奪還…道端に放置されていた遺体の山
その後、駐留していたロシア軍と、ウクライナ軍との間で激しい戦闘が繰り広げられました。数週間にわたる戦闘の末、ロシア軍は撤退し、ウクライナ当局は4月2日にキーウ州全域、そしてブチャの「解放」を宣言しました。
解放されたブチャに入った、ウクライナ軍と市民が目にしたものは、惨劇の現場だった。かつての平和な街の道路は、無残にも多数の遺体で覆われていました。ウクライナ国土防衛隊のオレクサンドル・ポーレビスキはその様子を「道路のあちこちに住民の遺体が横たわっているのを目撃した」と証言しています。ウクライナ軍の車両は、その遺体を避けながら進むしかありませんでした。
メディアが現地入り……。その惨劇を初めて世界が知る
ロシアのウクライナ侵攻後のブチャの光景は、言葉では語り尽くせないほどの惨状でした。メディアやジャーナリストが現地を訪れると、彼らのカメラや筆は、一切の言葉を必要としない悲劇の証言者となりました。
街のあちこちにはウクライナのパスポートや市民の遺留品が散乱、さらに無惨に放置されたたくさんの遺体。買い物帰りのようにショッピングバッグを持っている者、後ろ手に縛られ顔面に弾丸の跡が残る者。そのほとんどは、日常の普通の服装をしていました。
地下室で縛られた子供の遺体、犬に食われた痕跡のある遺体。拷問の痕跡を持つ遺体の中には耳が切り取られたり、歯が抜かれたりしたものも。…。
これらの悲劇的なシーンは、世界中の人々の心を打ち、深い衝撃と怒りをもたらしました。
SNSを通じて拡散された画像や映像は、その惨劇の規模と非現実的な残忍を現実の出来事として示し、多くの人々の目に触れることになりました。
しかし、物語を伝えるものの中で最も心を打つのは、言葉だった。西側のジャーナリストが目撃者となった老人に話を求めた際、彼の声は出ず、震える体が彼の経験した恐怖を物語っていた。その沈黙は、言葉よりも強く、この惨劇の真実を伝えていた。
メディアと戦争の真実「ブチャの証言」
ブチャの惨劇は、現代のメディア環境と情報伝達のあり方を考えさせられる出来事となりました。過去の歴史的な惨劇、特に1990年代の「スレブレニツァ虐殺事件」を思い起こさせるこの事態に、メディアはどのように取り組むべきか、という課題を突きつけられたのです
オーストリア国営放送の経験豊富な記者は、ブチャでの出来事が戦争犯罪として扱われるべきかを慎重に検討し、文書化する必要があるとのコメントを出しました。
一方、BBCは、その衝撃的な映像内容に注意書きを添えて公開しました。過去、遺体の映像や写真は慎重な編集判断を経て公開されることが多かったが、ブチャの事態では、これらの映像や写真がSNSを通じて頻繁に流布されていいます。
ニューヨークタイムズが3月6日に公開した写真は特に注目を浴びた。写真には、家族が歩道に横たわり、ウクライナ兵士が蘇生しようとしている様子が描写されています。この写真は、通常、遺体を直接的に写したものとしては非常に異例のものでした。
フリージャーナリスト志葉玲さんの取材に基づくブチャの実態
ウクライナのブチャでの惨状は、メディアやジャーナリストたちが現地から発信する情報によって、徐々に明らかになってきました。フリージャーナリストの志葉玲さんもその一人。彼女は現地入りし、目の当たりにした光景や情報をもとに、ブチャでの事態の深刻さを伝えています。
遺体の数が当初300余りと言われていたのに、それが400を超えるという情報は衝撃的です。これはまだ全体像をつかめていない可能性があり、今後さらに発見されるかもしれません。志葉さんが直接確認した遺体の状態や拷問の形跡は、この事件の残虐性を示す証拠として、無視できないものとなります。
ロシア政府の否定にも関わらず、地元住民や目撃者、そして現地で取材を行っているジャーナリストたちの証言は一貫しています。彼らの声や情報が、事実を知る上での重要な手がかりとなり、国際社会に真実を伝える役割を果たしています。
フリージャーナリストたちの勇敢な取材活動によって、隠された真実や被害の実態が明らかにされることが期待されます。
ブチャの街中には地雷……それは遺体にまでも設置
この悲劇を更に深刻にしているのは、ロシア軍による地雷の設置です。ブチャの多くの地域が地雷で覆われており、これにより市民の生活が危険に晒されています。特に、ロシア軍が撤退する際に民家や遺体に地雷を仕掛けたとの情報は、市民たちに恐怖と憤りをもたらしています。
ウクライナのゼレンスキー大統領は、この事態を非難し、市民に対して帰宅を急がないよう呼びかけています。地雷の除去作業は時間がかかり、その間も市民たちは安全を確保するための措置を取らざるを得ない状況にあります。
このような状況下で、市民たちの安全と生活の再建が求められています。国際社会は、ブチャの現状を知り、支援や協力を急ぐべき時であり、住民たちの苦しみを軽減するための対策が求められています。
「ブチャの叫び」SNSを通じた惨状の伝播
ウクライナのブチャでは、ロシアの侵攻が始まってから1カ月以上もの間、国際的なメディアの関心が向けられていなかった。情報が封じられ、真実が明らかにされる機会が限られていた中、市民たちはSNSを活用してその惨状を世界に伝えようとしました。
中でも、25歳の地域サッカーリーグの人気選手の悲劇が多くの人々の心をつかんだ。彼は両親と共に拷問を受け、命を奪われたとの情報がSNS上で伝えられた。添付された写真には、遺体の一部が土の中から露出している姿が確認された。この若き選手と彼の両親は3月23日に行方不明になったとされ、その後、遺体として発見された。特に父親の遺体は下水道に捨てられていたという情報は、その残虐性を更に物語っている。
SNSを通じて伝わるこれらの情報は、ブチャの現実を強烈に伝えるものとなり、多くの人々は、その恐ろしさと悲しみを共有し、ブチャの状況への関心と支援の必要性を感じるようになりました。
住民の証言で浮かび上がるロシア軍のありとあらゆる凶悪で残虐な行為
ブチャは、ロシアの侵攻によって多くの民間人が命を奪われたとみられており、その惨劇は住民の生々しい証言から明らかとなっていきました。
証言によると、無抵抗の男性が銃撃の対象となり、少女に対しては性暴力が加えられた。基本的な生活資源である食料や水の供給は途絶え、多くの人がその結果衰弱死を迎えたといいます。
74歳のマリヤ・コノワロワさんは、そのような中で三男ドミトリーさんをロシア兵によって失いました。ドミトリーさんは当時41歳で、彼の命を奪った日は3月4日でした。
ブチャに住むオレナさんは、AFP通信の取材を受ける際に、ロシア兵が食料を調達しようとしていた男性に発砲した様子を証言。彼女はその瞬間を直接目撃しています。
同日、国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチに対して地元の教師からも証言があった。その証言によれば、ロシア軍は5人の住民男性を連行し、そのうちの1人が処刑されたという。
地獄のロシア軍による支配
ロシア語調査サイト「The Insider」によれば、地元住民のクリスティナさんは、電気や水道、ガスがなく、外出が禁止された状態での日々の苦しさを語っています。
ブチャから逃れた者たちの証言もまた、その地の恐ろしさを物語っています。「ロシア兵は酒を飲んで銃を撃っていた」「遺体が放置され、それを犬が食べていた」というような恐ろしい現実が彼らの口から次々と語られました。
さらに悲劇的なのは、子供までもがこの侵攻で命を失ったことだ。3月6日、ロシア兵はキーウ近郊の村の地下室に手りゅう弾を投げ込み、逃げ出してきた14歳の子供とその母親を撃った。目撃者の男性は、「子供はその場で亡くなり、母親は2日後に死亡した」と語った。
「我々はお前らをナチスから救いに来た」ロシア軍のプロパガンダ
ブチャでは、ロシア兵士たちは住民に向けて特定のメッセージを発信していた。彼らの発言によれば、ロシア兵はブチャの住民に対して「ナチスから救いに来た」という言葉をかけた。この「ナチス」とは、第二次世界大戦時のドイツの国家社会主義労働者党のことを指す言葉であり、ロシア兵がこの侵略行為の大義名分ととして使用している可能性が考えられます。
証言によると、ロシア兵たちはウクライナのゼレンスキー大統領についても発言をしてたといいます。ゼレンスキー大統領は外交政策において、NATO(北大西洋条約機構)との関係強化や加盟を目指す姿勢は示しています。
ロシア兵士たちはゼレンスキー大統領を「NATOに入りたいピエロ」と揶揄し、さらに「矯正しなければならない、ナチスはどこだ!」と叫んでいたと言います。
住民の家に侵入し強奪したものをベラルーシで転売
4月2日、ウクライナ国防省情報総局は、ロシア軍の兵士たちがウクライナの住民の家に侵入し、貴重品や家電製品などを強奪しているという報告を公表しました。それによれば、ロシアの兵士たちは家具やその他の物を物色し、パソコン、テレビ、その他売却できる物を持ち去っています。さらにこれらの物は、隣国ベラルーシで転売されているという情報も提供されています。
米国メディア『ラジオ・フリー・ヨーロッパ』によれば、ベラルーシの市民からの報告により、ロシアの兵士たちは戦車で「商品」を運んできているとされています。これらの「商品」とは、ウクライナの人々から強奪した品物を指しており、彼らはこれをベラルーシの市民に売りつけようとしているという。商品の種類は様々で、おもちゃや食器、タイヤなどが含まれているとのことです。
「計410人の遺体を発見した」ウクライナの検察当局が発表
4月3日、ウクライナの検察当局は、首都キーウ近郊の複数の地域で410人の遺体を確認したと発表しました。キーウ州ブチャ市の情報によれば、手を縛られたり、他の拘束された形跡がある市民の遺体が約300人、その中で約50人が処刑の形跡を持つと指摘されています。
国際メディアロイターも、平服を着た男性3人の遺体を確認しました。その中の1人は至近距離からの射撃痕が確認されています。さらに、ロシア軍に拘束された後、拷問を受け、切断された状態で遺体が発見されたという証言も報じられています。
市の公式発表によれば、280人の遺体は集団埋葬として処理されました。
ウクライナの大統領、ウォロディミル・ゼレンスキー氏は、SNS上でこれらの遺体の写真を公開しました。自転車に乗ったままの状態で亡くなった人や、拷問、切断された痕跡のある遺体の写真を伴い、ロシア兵士の母親たちへの訴えとして「あなたたちの子供たちがどんな行為をしているのか、見るべきだ。これがあなたたちが育て上げた子供たちの行動だ」と訴えました。
国際刑事裁判所に調査を要求
ウクライナ当局は、ロシア軍による疑わしい戦争犯罪の記録のための検視作業を進めていることを明らかにしました。この作業は、最近の報道によると、首都キーウ近郊で発見された多数の遺体など、数々の疑惑の事例を基に進められています。
さらに、ウクライナは国際刑事裁判所(ICC)に対して、ロシア軍の行為についての独立した調査を要求しています。ICCは戦争犯罪、ジェノサイド、人道に対する罪など、重大な国際犯罪に関する裁判を担当する国際的な司法機関であり、ウクライナの要求はロシア軍の行動が国際的なスタンダードに照らしてどのように評価されるかを決定するための重要なステップです。
これらの要求と検視作業は、ロシア軍の行動に対する国際的な非難を一層強める可能性があります。ウクライナの当局は、事実の明確化と、可能な戦争犯罪の証拠の収集を重視しており、今後のICCの動きに注目が集まっています。
まぎれもない虐殺……。民間人の集団埋葬地が発見される
4月3日、ブチャの教会の前広場から、長さ約14メートルの民間人の集団埋葬地が突如発見され、失踪した家族を捜している多くの市民が集まりました。SNS上で共有された画像には、互いに重なるように埋められた遺体が確認できます。
この悲劇的な発見は、ロシア軍によるウクライナ侵攻中の行動に対する疑念を一層深めるものであり、国際的な反発を引き起こしました。
ウクライナ、ブチャの集団埋葬地での惨状が明らかに
ウクライナのブチャで発見された集団埋葬地から、118体の遺体が回収されたことが、アナトリー・フェドルク市長によって明らかにされました。ウクライナ検察総長室は、既にブチャで410体の遺体が移動され、その中の140体が法医学的に検視されたと発表。このブチャでの惨状は、ロシアの戦争犯罪疑惑事件2500件の中の一例に過ぎないと主張しています。
ロシア軍の持続的な砲撃により、多くの市民が命を落とし続ける中、個別の埋葬が困難となった現場の様子を、現地医師アンドリー・レフキフスキーさんが共同通信の取材に応じ、詳細を明かした。
ロシア軍が2月24日にベラルーシ国境から侵攻を開始して以降、キーウ近郊のブチャも攻撃を受け続け、多くの市民やウクライナ兵が犠牲となりました。
拠点となる病院の遺体安置室は既に容量オーバーとなり、一刻も早く遺体の埋葬が求められ、3月10日にレフキフスキーら医師団によって、67人の遺体が病院の近くの空地に埋葬されました。その多くは市民であり、一部はウクライナ兵でした。さらに、黒煙を上げる建物の中で、身元不明の遺体も埋葬されることとなりました。
ロシア軍が撤退過程で民間人に向けて無差別に発砲していたとの証言もあり、現地警察や当局は死亡した民間人の数や身元確認を急いでいます。
実際に穴を掘っている現場を衛星写真で確認
アメリカの人工衛星企業、マクサー・テクノロジーズが、ウクライナのブチャ市にある教会の敷地内に、長さ13メートルの塹壕(ざんごう)が掘られているのを衛星写真で確認したと発表しました。この写真は3月31日に撮影され、その場所は以前からの情報で知られている集団墓地と一致するとのこと。
同社によれば、この塹壕は3月10日ごろから掘られていた様子が確認されています。BBCはこの情報について独自の確認は取れていないものの、米国のCNNは、集団墓地の現場で確認した遺体について報じています。CNNによると、発見された遺体の大部分は黒い袋に収められており、10人以上の遺体が一つの袋にまとめられていたという。また、ロイター通信は、埋められた場所から人の手や足が突き出ている様子を伝えています。
女性への性暴力事件事件が多発
4月3日、ガーディアン紙はロシア軍が占領したウクライナの地域での多数の性暴行事件について報じ、被害に遭ったウクライナの女性たちのトラウマを取り上げました。写真家ミハイル・パリンチャクがキーウの近郊で撮影した1枚の写真が、国際的な非難の的となりました。この写真には、男性1人と女性3人の遺体が毛布の下に見える。パリンチャク氏の証言によれば、その毛布の下には、全裸の女性たちの遺体も含まれており、いくつかの身体部位は焼けた形跡がありました。
ガーディアンは、この写真がロシア軍によるウクライナ民間人への処刑、強姦、拷問などの犯罪の証拠として公表されたものの一例であると指摘。特にロシア軍が撤退した地域では、集団的な性暴行や子供の前での強姦などの極めて重大な犯罪が増加しているとの情報を伝えました。
キーウ在住の女性活動家、アントニナ・メドヴェチュク氏は、戦争の中で女性が直面する特有の危険についてガーディアンに語っています。彼女は「避難する際、護身のために真っ先に持ったのはコンドームとハサミだった」と述べ、戦争の日常の中で、女性が性的暴力から身を守るための手段を求めていたことを明かしました。
国際人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」の報告書
国際人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)」は、ロシア軍がウクライナで行った戦争犯罪に関する詳細な調査報告を公表。ウクライナの市民からの証言を基に、ロシア兵士らによる性的暴行、拷問、暴力、略奪、殺害などの犯罪行為を詳細に明らかにしました。
ウクライナ第2の都市ハルキウの学校に家族とともに避難していた31歳の女性の証言によれば、3月13日深夜、ロシア兵士が学校に侵入し、彼女を脅迫。銃を突きつけながら複数回の性的暴行を加えたという。その後も彼女は暴力を受け、身体に深い傷を負いました。
別の場面では、ブチャの市民がロシア兵によって公共の場所に連行され、身分証明や携帯電話を調査された後、複数の男性が処刑される様子が目撃されました。一部の兵士は、その暴力行為を正当化するような言葉を投げかけています。
HRWの調査報告は3月14日までの事象に基づいているが、ロシア軍が撤退した4月以降、ブチャでの惨劇が広範囲にわたって明らかになっています。ニューヨーク・タイムズなどの国際メディアは、ブチャの通りに散乱する無数の遺体や荒廃した風景を伝え、国際社会の衝撃を引き起こしました。
HRWは、これらの事実を基に「ロシア軍による明確な戦争犯罪」との結論を下した。これらの報告は、ロシアの行為を非難する声が高まる中で、さらなる証拠として注目されている。
ウクライナの人権状況に関する報告
ウクライナの人権オンブズマン、リュドミラ・デニソヴァ氏が英BBC放送でのインタビュー中に、ブチャでの悲惨な状況について詳しく述べました。デニソヴァによれば、ブチャのある家の地下室で14歳から24歳の少女や女性25人がロシア軍の占領期間中に組織的にレイプの被害に遭っています。更にその中の9人は妊娠した状態で見つかったとのこと。
この他にも、25歳の女性は「ナチスの売春婦はみんなこうなる」と言い放ちながら、彼女の16歳の妹が路上でレイプされるのを見るという経験を強いられました。さらに、ウクライナ最高会議の人権オンブズマンは、キーウの近郊イルピンにおいて10歳未満の子ども2人が性的暴行や拷問を受け、死亡したとの情報を公開しています。
デニソヴァは、このような事態が国際的な人権法、特にジュネーブ条約に明確に違反しているとして、国際コミュニティや組織、特に国連や全欧安保協力機構(OSCE)に対してアクションを求めました。
あまりに残酷な体験に白髪になった子供
ウクライナ側のボランティア団体と国際NGO「ヘルシンキ・インスティテュート」は、ブチャでのロシア軍による戦争犯罪の証拠を文書化する作業を共同で進めています。
この取り組みの中で、6歳の少年イワン(仮名)が虐殺を体験し、髪の毛が真っ白になったことがわかりました。ブチャの住民は栄養失調やトラウマを抱えており、食料、水、薬、治療が必要です。イワンは母親がロシア兵にレイプされるのを目の前で見ており、その悲劇によって髪の毛が真っ白になり、言葉を発しなくなったとされています。
ナチスのマーク「かぎ十字」が刻まれた女性の遺体
ウクライナの女性議員であるレシア・バシュレンコ議員は、自身のツイッターにナチスを象徴する「かぎ十字」のマークが刻まれた女性の遺体の写真を投稿し、大きな衝撃を引き起こしました。
バシュレンコ議員は、「レイプされ、殺された女性の拷問された遺体。言葉がありません。私の心は怒りと恐怖と憎しみで凍りついています」とコメントし、写真には女性の腹部にかぎ十字と思われる焼き印があり、ナチ党のシンボルであるハーケンクロイツが鮮明に残っています。女性の遺体には多くのあざもあり、非常に痩せている状態だったと報告されています。
その後、バシュレンコ議員は別の投稿で、ロシア兵がウクライナで略奪し、レイプし、殺害していると主張しました。「かぎ十字の焼き印を押された女性。ロシアとロシアの男たちが行ったこと。不道徳な犯罪者の国」とツイートし、怒りを表明しています。バシュレンコ議員は他の投稿でも、破壊された街や遺体を運ぶ人々の様子などをツイートし、監視カメラの映像には複数のロシア兵がテレビや高級品などを略奪し、郵便局から自国に送っている様子も捉えられていると告発しています。
このような残忍な事例について、ウクライナの検事総長は、ロシア軍による5000件の戦争犯罪を調査していることを明らかにしている一方で、「残念ながら、それ以上の出来事もあります」とツイートしています。
家庭暴力被害者支援団体「ラ・ストラーダ・ウクライ」の報告
戦争の影響は、被害者の声によってのみ明らかになることが多い。その中でも、非常に感じ取りづらく報告されにくいのが性暴行の被害です。
ウクライナの性暴行および家庭暴力被害者支援団体である「ラ・ストラーダ・ウクライナ(La Strada Ukraine)」は、この問題に真正面から取り組んでいる団体の一つです。
彼らの関係者は、「数千人にのぼる女性と年若い少女が性暴行を受けた可能性がある」と被害の実態について驚くべき事実を明かしました。
また、3月の申告内容の一例として、「ロシア兵士3人が母親と17歳の娘に性暴行を加えた」というおぞましい証言があることを語りました。
極悪非道な行為がロシア軍で公認?ウクライナ当局が通話を傍受
米議会が出資する放送局のラジオ・フリー・ヨーロッパは4月に、ウクライナ当局は、ロシア軍兵士による驚愕の通話の内容を傍受したという報道をしました。それによれば、ウクライナに派遣された若いロシア兵が祖国にいる妻に電話をかけ、集団暴行への参加を示唆した通話内容が明らかにされています。更に衝撃的なことに、その妻は、「了解、許可します。でも避妊具は使ってね」と応じたとされています。
このような通話の内容は、戦争下での性暴行が、ロシア軍においてある種の「許容された行動」であるとの疑惑を強めました。事実、メリンダ・シモンズ駐ウクライナ英国大使は、レイプ行為がロシア軍の戦略の一部として行われている可能性を指摘しています。
具体的にはシモンズ大使は、次のように述べています。
「ウクライナにおける状況の全容はいまだ不明ですが、それ(レイプ行為)がロシアの武器庫の一部を担っていることは明らかです」
さらに、「女性が自身の子供たちの目の前で犯され、少女たちは家族のいる場でそうされ、故意に服従させられているのです」とも付け加えました。
戦争の武器として使われている……。国連女性機関「UN Women」が国連で訴える
国連女性機関「UN Women」のバフース事務局長は、4月11日の安全保障理事会での発言において、ウクライナにおけるレイプや性暴力の増加について警鐘を鳴らしました。
彼女は、ウクライナの人権団体「ラ・ストラーダ・ウクライナ」の報告を引用し、4月から2か月半の間に、ロシア軍による性暴力の相談が18件も寄せられたと明らかにしました。
最も若い被害者はわずか13歳の少女で、彼女は民家の地下シェルターでロシア兵による性暴力を受けたとされる。また、母親と娘が交互にレイプされたという痛ましいケースも報告されています。
同団体によれば、ロシア軍兵士が性暴力を行う際の特徴として、被害者に対して「静かにしないと親戚を殺す。黙っていれば何もしない」と脅迫するという手口が挙げられています。
さらに、現在明らかになっている事例は「氷山の一角に過ぎない」とし、さらに大きな問題が隠されている可能性を指摘。
「われわれはウクライナでの暴力とレイプがロシアの侵略者によって戦争の武器として使用されていることを知っており、目撃している。われわれの声を聞いてほしい」と、ウクライナにおける性暴力が、ロシア軍による戦略的な武器として使用されているとの認識を示し、国際社会に対し、緊急に対応するよう訴えました。
心理学者が明かすロシア兵による性的虐待の背景
心理学者のバシリサ・レフチェンコは、ロシア兵によるウクライナ人への性的虐待について、「ロシア兵らは、できることは何でもして自分たちの優位を見せつけようとする。この場合、レイプも一つの手段となる」と指摘。
この行為がロシア兵らの支配欲を示すための手段として使用されているとの見解を示しました。
レフチェンコは、戦争の影響でトラウマを受けたウクライナ人を支援するため、無償のカウンセリングサービスを提供するプロジェクトを立ち上げました。彼女が設立したネットワーク「サイ・フォー・ピース」を通じて、これまでにキーウ州の女性約50人の声を収集。
その訴えによれば、ロシア兵による凄惨な性的虐待の現実が浮かび上がります。一部の報告では、15歳の少女とその母親が親ロシア派のチェチェン人兵士によって性的虐待を受け、別の女性は7人の兵士によって集団レイプされるという悲劇的な事例もありました。更に、拘束されたウクライナ人は、これらの虐待の様子を強制的に目の当たりにするよう命じられたこともあったといいます。
国際NGO「国際家族計画連盟」が緊急避妊薬を提供
国際非政府組織である国際家族計画連盟(IPPF)は、ロシアの侵攻によって大きな被害を受けたウクライナの地域に「モーニングアフターピル」として知られる緊急避妊薬を約3,000包提供しました
IPPFのキャロライン・ヒクソンは、この緊急避妊薬の配布が非常に重要なタイミングで行われたと強調しました。彼女によれば、モーニングアフターピルは、性的暴行後の5日間以内に摂取することで、妊娠を防ぐ効果があるとされている。その上で、ヒクソンさんは「レイプの結果、妊娠してしまうことは非常に大きなトラウマとなる」と述べ、この薬の重要性を強調しています。
さらに、IPPFは妊娠24週目まで使用できる薬用中絶薬もウクライナに送っているとのこと。ヒクソンさんは、「戦争前はウクライナでも緊急避妊薬を入手することができました。しかし、サプライチェーンの寸断により、女性たちが緊急避妊薬を手に入れることが難しくなっています。このため、私たちの提供する支援が特に重要となっている」と語りました。
「これはジェノサイドだ」ゼレンスキーが怒りの声を上げる
ゼレンスキー大統領は4月3日、アメリカのCBSテレビ番組に出演し、「これは国家と人々を消滅させる行為だ」と述べました。さらに、ウクライナには100以上の民族が住んでいることを指摘し、ロシアの行為はこれらの民族すべての破壊と根絶を意味する「ジェノサイド」と強く非難しました。
ゼレンスキーは侵攻を命じたロシアのウラジーミル・プーチン大統領だけでなく、作戦を指揮したロシア軍の将官らも国際的な責任を持つべきだとの考えも明らかにしました。
これに対し、アントニー・ブリンケン米国務長官もCNNテレビでのインタビューにて、「ロシア軍が戦争犯罪を犯していると信じている」と述べ、ロシアの行為に対する強い非難の意を示しました。
「平和な都市の普通の市民が、なぜ拷問されて死んだのか……」ビデオ演説でロシアを非難
「平和な都市の普通の市民が、なぜ拷問されて死んだのか。なぜ女性がイヤリングを耳から引きはがされ、絞め殺されたのか。どうしたら子どもたちの前で女性に性的暴行を加え、殺害できるのか。なぜ戦車で人々をつぶしたのか」
ゼレンスキー大統領は4月3日のビデオ演説で、ロシア軍の蛮行を詳細に非難し、これらの罪状に関する捜査を国際社会とともに進め、罪を犯した者たちを見つけ出し、罰する考えを示しました。
さらに、ゼレンスキー大統領の批判はロシアだけでなく、北大西洋条約機構(NATO)の一部加盟国にも向けられました。特にロシアへの宥和的な政策を取り続けた国々に対しての非難は鋭く、「メルケル前独首相、サルコジ元仏大統領は(虐殺が起きた)ブチャに来て、ロシアへの譲歩政策の結果を目の当たりにするべきだ。拷問されたウクライナ人たちの姿を直接見るべきだ」と、当時の独仏首脳を名指しで非難しました。
2008年にウクライナのNATO加盟を反対した国「フランス」「ドイツ」
ゼレンスキー大統領が独仏を批判した背景には、2008年のブカレストで開催されたNATO首脳会談において、ウクライナのNATO加盟を、ロシアの顔色を伺った結果両国が拒否したことが関係しています。
ゼレンスキー大統領は、「共同声明の『ウクライナは将来NATOに加盟する』という言葉は、中身を伴わない口先だけの約束にすぎなかった。実際には、ドイツとフランスの反対によって、ウクライナのNATO加盟要請は拒否された。しかしその事実は、公にされなかった」とは強調。
さらに、「独仏がウクライナのNATO加盟を拒んだのは、ロシアを刺激したくないという、両国の愚かな恐れが原因だ。独仏は、ウクライナのNATO加盟を拒否すれば、ロシアを懐柔しておとなしくさせることができると思い込んだのだ」と強く批判しました。
これについてドイツのメルケル元首相とシュタインマイヤー大統領は声明を発表
ドイツのフランク・ヴァルター・シュタインマイヤー大統領は4月4日、「ロシアから直接ガスを輸送するノルドストリーム2の建設に尽力したことは誤りだった。プーチン大統領の真意を見抜けず、東欧諸国などの警告を受け入れなかった」との声明を発表し、対ロ政策の過去の失敗を公然と認めました。
これは、駐独ウクライナ大使アンドリー・メリニクが4月3日に「シュタインマイヤー大統領は、プーチン大統領が仕掛けたクモの巣に絡めとられている」と非難したことに対する反応とされています。
シュタインマイヤーは、過去のシュレーダー政権の連邦首相府長官およびメルケル政権の外務大臣として、ロシアとの緊密な経済関係を築いたキーパーソンの一人。大統領としての彼のこのような公然たる認識表明は、極めて異例の出来事として注目を集めています。
一方、アンゲラ・メルケルは、ブチャでの虐殺を非難し、国際的な努力を支援する意向を示した上で、「2008年にウクライナのNATO加盟に反対したことは正しかった」と述べ、当時の決定を正当化しました。
さらに、ドイツのロシアからのガス輸入政策にも焦点が当たっています。
4月5日の時点で、ショルツ政権はガスの即時輸入禁止に反対しており、この姿勢に対してウクライナや東欧諸国から「ドイツはいつまでロシアに多額の金を払い続けるのか」という声の高まりが確認されています。これにより、ドイツ政府はさらなる外交の難局に立たされていると見られます。
ポーランドのモラヴィエツキ首相もドイツを非難
4月4日、ロシアによるウクライナ市民の虐殺が明らかになる中、ポーランドのモラヴィエツキ首相がドイツの対ロ制裁姿勢を公然と批判しました。首相は「ショルツ首相、今あなたが聞くべきはドイツ企業の声ではない。罪のない女性や子供の声だ」と、ドイツの経済的な利益とのバランスを強く問いただしました。
さらにモラヴィエツキ首相は、フランスのマクロン大統領に対して「マクロン大統領、あなたはプーチンと何回交渉したのか? それで何を成し遂げたのか?」という厳しい言葉で疑問を投げかけました。
また、モラヴィエツキ首相はハンガリーのオルバーン・ヴィクトル首相についても触れ、ハンガリーがロシアに対する制裁には賛成していることを明らかにした上で、ハンガリーの立場と対照的にドイツが制裁の主要な障害となっているとの立場を明確にしました。
ドイツ側からは、リンドナー財務相が「我々は犯罪的な戦争を相手にしている。ロシアとの経済的なつながりをできるだけ早く断ち切らなければならないのは明らかだ」と語り、厳しい制裁の必要性を認めつつ、天然ガスの供給問題についての懸念も示しています。
特に、ポーランドや旧ソ連地域、または旧ソ連の一部であったEU諸国は、ウクライナ戦争に対する危機感が非常に強く、ドイツが地域の安全保障により積極的に関与すべきとの声が高まっています。
「我々はここで発生した残虐行為について、ロシア人たちを許さない」ブチャ市長の怒りの声
4月4日、ウクライナのブチャ市のアナトリー・ペドルク市長が米国CNNに出演し、ロシアによる市内の残虐行為を非難しました。「我々はここで発生した残虐行為について、ロシア人たちを許さない」と強調しました。
ウクライナのイリーナ・ベネディクトワ検事総長も3日、フェイスブックを通じてブチャを含むキーウ周辺の都市で、410体の民間人とみられる遺体の発見を公表。このうち、1日から3日までの間に140体に対する調査を完了したとのことです。ブチャは2月26日、ロシア軍侵攻の3日目に占領され、その後ウクライナ側は市内に接近できない状況でした。
ペドルク市長は、「占領者によって無差別に殺害された。多くは高齢者だった」と明らかにしました。さらに彼は、「ロシアの占領者がプーチン大統領やショイグ国防相から実行許可を得ていたと感じる。彼らはキーウを占領できなかったため、欲求不満をブチャや周辺地域に向けたのだ」と述べました。
市長はまた、ロシアによる1カ月以上の占領によって、市の半分以上が破壊されたと指摘。しかし、「戦争から平時の生活に戻るため」、市民とともに復興のための努力を続けているとのことです。
ロシア軍の残虐行為に国際社会が批判
ブチャでの悲劇に対する国際的な非難の声が高まっています。各国の首脳と指導者たちはロシアの行動を糾弾し、真相究明を求めています。
アントニー・ブリンケン米国務長官はCNNに出演し、「このような写真を見ると憤慨せずにはいられない」とロシア軍の行動を非難。ドイツのオラフ・ショルツ首相、フランスのエマニュエル・マクロン大統領、EUのウルズラ・フォンデアライエン執行委員長も強い言葉で非難の声を上げました。
英国のジョンソン首相はプーチン大統領とロシア軍を非難し、戦争犯罪に関する国際刑事裁判所(ICC)の捜査を支援する姿勢を示しました。イタリアのディマイオ外相は新たな制裁の可能性を指摘。アントニオ・グテーレス国連事務総長は国連レベルでの調査を示唆、ポーランドのマテウシュ・モラウィエツキ首相はロシアに対する強力な制裁を求めました。
ジョー・バイデン米大統領は、「私はプーチン氏を戦争犯罪人と呼んだことで批判されたが、ブチャでの出来事を見れば、彼は戦争犯罪者である」と強く非難。ウクライナへの武器提供を続ける姿勢を明確にし、真相究明の重要性を強調しました。
国際刑事裁判所への提訴を呼びかけ
ハーグの国際刑事裁判所(ICC)に提訴を呼び掛けるなか、英国、フランス、ドイツ、イタリア、そして欧州連合(EU)がロシアへのさらなる制裁を模索しています。
EUがロシアへの制裁を強化
欧州連合(EU)のシャルル・ミシェル欧州理事会常任議長は、ツイッターを通じてロシアへの追加制裁を示唆しました。EUは既にロシアのウクライナへの侵攻を受けて制裁を実施していますが、ロシア産ガスの輸入に関してはまだ手を付けていません。
EUは現在、ガス輸入の約4割をロシアからの供給に依存しており、これは1日あたり最大8億ユーロ(約1千億円)にも上る。この依存度はドイツ、イタリア、東欧諸国などで特に高い。
しかし、エネルギーの輸入停止を求める声も高まっており、バルト三国などが先頭に立って主張しています。特に、リトアニアのナウセダ大統領は、ロシア産ガスの輸入停止を発表。ツイッターで「リトアニアができたことは、EU全体でも可能だ」とし、他のEU国々にも同様の措置を取るよう促しています。
ロシア外交官を追放
欧州連合(EU)は、ロシアに対する追加制裁の導入を今週中にも検討する方針を示しました。この背景には、ウクライナ首都キーウ近郊ブチャでの多数の民間人殺害があり、これに関してウクライナのクレバ外相は「ロシアの行為は氷山の一角」と述べ、国際社会に制裁強化を求めました。
ドイツとフランスの外務省は、4月4日にそれぞれ多数のロシア外交官の追放を決定。特にドイツは「ロシア指導部の残虐性」を追放の理由として挙げました。ロシアはこれに対して関与を否定。ザハロワ外務省情報局長はインタファクス通信を通じて「対抗措置を取る」との立場を示しました。なお、独仏メディアによると、ドイツは40人、フランスは35人の外交官を追放することを決定。フランスは「安全保障に反する活動」を追放の理由とし、これは欧州全体の取り組みの一部であると説明しています。
「ジェノサイドと認定されるだろう」虐殺を知ったゼレンスキーがブチャを訪れる
4月4日、ロシア軍が撤退した後、ブチャやキーウ州全体で410人の民間人の遺体が発見の報告を受け、ゼレンスキー大統領が、防弾チョッキを着用して、キーウ州ブチャの虐殺現場を視察しました。
ゼレンスキー大統領、ブチャの惨状を視察し「ジェノサイド」と非難
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、キーウ州ブチャの虐殺現場を視察し、その惨状を国際報道陣に公開。普段、報道陣の前で闘志と活力に満ちた表情を見せるゼレンスキーだが、ブチャでの光景を目の当たりにし、悲痛な表情を露わにした。
ゼレンスキー大統領は、ブチャでの残虐行為は「ロシア軍の性質」を示しており、これは「ジェノサイド」ともいえる行為だと述べ、ロシアを強く非難。彼は、「毎日、わが国の戦闘員が領土を奪還すると、何が起きていたかを目の当たりにする」と発言し、ロシア兵による民間人への暴行や殺害を訴えた。
ゼレンスキー大統領はまた、停戦交渉が進展していない現状について言及。ロシア軍の行為が次第に明らかになる中で、交渉が長引くことはロシア側にとって不利となるだろうと指摘。さらに、ウクライナのNATO加盟を巡る議論にも触れ、主要国の要人たちに対し、現地の状況を直接目の当たりにして欲しいと訴えた。
ブチャを視察したウクライナ国会のキラ・ルディク議員は、その惨状を「第2次大戦の映画のような光景」と述べ、戦闘地帯となった家の庭には「私たちは平和な人間です」というメッセージを掲示した家もあったが、残念ながら効果はなかったと報告した。
夜のビデオ演説でもロシア軍を非難
ゼレンスキー大統領はその日の夜のビデオ演説で、ロシア軍による戦争犯罪の疑いに関する徹底的な捜査を約束した。彼は「私たちはすでに、この犯罪に関与したロシア軍の全員を特定する努力をしている」と述べ、この取り組みはウクライナ、欧州連合、国際刑事裁判所などの国際機関と共同で行われると明らかにした。
さらに、ゼレンスキー氏は「占領者によるすべての犯罪が記録されており、有罪のロシア軍による全犯罪について裁くための根拠は提供される」と強調。ロシアに対する制裁措置の強化を訴え、「ロシアの民間人虐殺に対する制裁措置は、いよいよ強力にならざるを得ない」と述べた。
しかし、ゼレンスキー氏はヨーロッパの指導者たちに対して疑問を呈し、「何百人ものウクライナ国民が苦しむ中で、ロシアに最も厳しい圧力をかける必要性を理解するために、これほどの犠牲が必要だったのか?」と問いかけた。
最後に、西側諸国からの追加の武器支援を要求し、「私はあなた方を責めてはいない、ロシア軍だけを責めている」と強調。しかし、西側諸国には援助する能力があったとの立場を示した。
国連安全保障理事会でゼレンスキーがブチャの現状を訴える
2022年4月5日、ウクライナのゼレンスキー大統領が国連安全保障理事会で初めてのオンライン演説を行いました。。
アントニオ・グテーレス国連事務総長は冒頭で、「ブチャで殺害された民間人の恐ろしい映像を、私たちは決して忘れることはない」と述べ、強い非難の言葉を選びました。さらに独立した調査を要求し、「ウクライナでの戦争はいま止めなければならない。平和のための真剣な交渉が必要だ」と主張しました。グテーレス事務総長はまた、市民の犠牲を最小限に抑えるための人道的な停戦を強く求めました。
事務総長は、安全保障理事会の役割についても触れ、「国連安全保障理事会は連帯して平和を維持する責任を持っている」と強調しました。そして、「戦争を終わらせ、ウクライナで苦しんでいる人々や弱い立場の人々への戦争の影響を和らげるため、すべての権限を行使するよう求める」と述べ、常任理事国のロシアを含めた安保理のメンバー国に、平和の実現のための積極的な取り組みを促しました。
ゼレンスキーはブチャでのロシア軍の残虐な行為を訴える
クライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領が、日本時間午後11時からの国連安全保障理事会の会合にてオンラインでのビデオ演説を行い、ブチャでの大量虐殺について明らかにしました。彼の演説は、午後11時40分ごろから開始されました。
ゼレンスキー大統領は、演説の中で「昨日、ブチャを訪問した。目の当たりにしたのは、ロシア軍による無差別な殺戮である。人々は意図的に殺され、女性や子どもたちは家の外での殺害の後、その死体は燃やされた」と述べ、凄惨な現場の詳細を公表しました。
彼は続けて、「ロシアが犯したこれは、第2次世界大戦後の最も恐ろしい戦争犯罪である。ロシア軍及びその命令を出した者たちには、ただちに法的な裁きが必要である」と強調し、ロシアを強く非難しました。
ゼレンスキー氏はさらに、ブチャの事件が特例ではないことを強調。「ブチャのような事態が発生している町や都市は他にも多数存在しており、世界はまだその全容を知らない」と警告し、国際社会への協力と注意を求めました。
「国連を解体する覚悟はあるか」
演説の中でゼレンスキー大統領は、国際社会と特に国連の存在意義と活動に疑問を投げかけました。
ゼレンスキーは、「国連の安全保障理事会が保証すべき安全はどこにあるのか。事実として、安全はどこにも見当たらない。安保理の存在は、何も変わっていないかのように感じる」と述べ、国連憲章の初めの部分、第1章の第1条に言及し、「国連の主な目的は平和を維持すること。現状、この憲章は文字通り最初の条文から破られている」と非難しました。
国際社会の役割についても質問を投げかけました。「シリアやアフガニスタンでの虐殺は早期に止められるべきであった。国連はもはや閉鎖されるべきなのか?国際法の時代は終わってしまったのか?」と述べた。
ロシア政府に対しても厳しい言葉で非難。「ロシアは、自国の行動について説明する責任を避けることはできない」としました。
さらに、ロシアが国連安全保障理事会の常任理事国としての権限を乱用していると指摘。「私たちは、安保理の拒否権を”死の権利”として利用する国と対峙している。ロシアは、その地位を免罪符として利用しており、安保理から追放されるべきだ」と主張しました。
最後に、ゼレンスキーは第二次世界大戦後のドイツの戦犯らへの対応を引き合いに出し、「虐殺の実行者や命令者は直ちに責任を問われ、処罰されるべきだ」と強調しました。
演説後に犠牲者の姿を撮った映像を放映
ゼレンスキー大統領は国連安全保障理事会の演説を終えた後、ロシア軍の攻撃によるウクライナ市民の犠牲を示す衝撃的な90秒の映像を放映しました。
映像には、ブチャやイルピンなどでの犠牲となった市民の悲惨な姿が映し出された。特に、子どもをはじめとする無害な市民の遺体、身体の一部が露出した遺体、浅い墓に埋められた人々、焼かれた後、道路に放置された遺体、さらには手を背後に縛られた状態の犠牲者の姿などが含まれており、その映像は会議場の大型画面で放映されました。
この映像の放映は、ロシアによるウクライナへの攻撃の実態を世界に知らせることを目的としており、国際社会による一層の対応を促す意図があったと思われます。放映された映像は、その場にいた多くの外交官や関係者に強い衝撃を与え、さらなる国際的な対応の必要性を訴える強力な証拠となったといえるでしょう。
国連事務総長や各国がロシアを非難
国連安全保障理事会での会議において、多くの国からロシアのウクライナ侵攻に関連する行動に対して非難の声が上がっています。特に、アントニオ・グテーレス国連事務総長は、ロシアの行動に関して「無分別な人命喪失、深刻な都心破壊、民間基盤施設の損傷」と批判し、その後果たすべき役割と国際的な対応の必要性を強調しました。
さらに、米国のトーマス・グリーンフィールド大使も会議で発言し、「米国はロシア軍がウクライナで戦争犯罪をしたとみなしている」と明確に表明しました。その上で、「ロシアの国連人権理事会への参加は国連全体を弱体化させる」との見解を示し、ロシアの資格停止を求める強い主張を行いました。
この動きに続き、週内にも国連総会でロシアに対する採決を行うことが提案されています。
「ひどく動揺」中国はブチャの調査を要請
国連安保理会議でのゼレンスキー大統領の演説とブチャに関する衝撃的な映像について、中国の張軍・国連大使は「ひどく動揺した」とのコメントを残しました。張大使は「事実の詳細な検証が必要である」とし、客観的かつ透明な調査を求める声を上げました。
インドも調査を要請
国連でのウクライナ問題に関する投票において、インドはこれまで棄権の姿勢を取ってきました。ロシアとの深い経済・軍事関連のつながりから、このような中立的な立場を維持してきたとされます。特に、軍事関連機器などでロシアに大きく依存しているインドにとって、ロシアとの関係は極めて重要です。
しかしながら、ブチャでの深刻な状況が明らかになると、インドもその態度を一部変えました。国連での会合において、インドはブチャの出来事について独立した調査を要請しました。この動きは、インドが国際的な人権問題や法の支配に関心を持っていることの表れとも言えるでしょう。
ロシア、ブチャの事件についての非難を退ける
国連での会合において、ウクライナのブチャでの事態に対する非難が高まる中、ロシアはこれを強く退けました。ロシアのネベンジャ国連大使は「ロシアの兵士と軍に関する大規模なうそを再び耳にしている」とコメントし、ロシア軍が民間人を標的にしていないとの立場を明確にしました。
ネベンジャ大使はさらに、ロシア軍が「これが多くの予想ほど早いペースで進軍していない理由だ」との考えを示しました。このコメントは、ロシア軍が民間人を避ける努力をしているとの立場を強調するものとみられます。
しかし、ウクライナ側や多くの国際的な声は、ブチャや他の地域での惨事をロシア軍の行動と結びつけて非難しています。このような状況の中で、ロシアと国際社会との間に大きな意見の隔たりが存在していることが明らかとなっています。
「国連安保理は存在するが、世界の安全保障は存在しない」演説の後にビデオ投稿
ゼレンスキー大統領は演説後、フェイスブックにビデオメッセージを投稿、「現在、創設された目的を遂行できていない」と語り、その原因は常任理事国であるロシアにあると指摘。現在の国際体制に警鐘を鳴らしました。
また、ゼレンスキーはロシアが「国際機関の信用を失墜させている」と強く非難、ロシアの役割は「建設的なことを妨害し、うそを広めること」だと主張しました。その上で、ゼレンスキーは西側の指導者たちに向け、ロシアへの制裁を強化するよう呼び掛けました。
欧州のトップもこの問題に注目しており、欧州委員会のウルスラ・フォン・デア・ライエン委員長と欧州連合(EU)外務トップのジョセップ・ボレルは、近日中にウクライナを訪問するとゼレンスキーは明らかにしました。
さらに、キーウが「世界的な民主主義の中心地」となっていることを強調し、欧州全体の自由のための戦いが現在進行中であると述べました。
ブチャの虐殺よりさらに悲惨……。『ボロディアンカの虐殺』
ブチャよりさらにロシアによるウクライナ侵攻の被害が深刻となっているのが、ブチャから20km北西に位置するボロディアンカです。ボロディアンカは3月、ロシアのウクライナ侵攻直後の最大の激戦地となり、ロシア軍がキーウに進行するための主要な関門地点として大規模な攻撃を受けました。
かつて1万2千人の人々が生活していたこの小都市は、「死の都市」とも称されるほどの壮絶な被害を受けました。住民たちの間には絶望と悲しみが広がっており、ある住民は「見るのもつらい。泣きたくなる」と悲痛な声を上げています。この事態は、ロシアの軍事的な行動がもたらす壮絶な被害を改めて浮き彫りにしている。
ロシアのクラスター爆弾による攻撃で…住民たちの絶望
ボロディアンカの大型商店街は、まるで菓子が砕けたような様相を呈しており、建物の中心に大きな穴が開いています。爆撃によって自宅を失った住民が、瓦礫の中から母親を必死に探す姿もみられました。
住民たちは、3月2日に都市の様々な場所にロシア軍のクラスター爆弾が投下されたと証言しています。
(クラスター爆弾は、国際法での使用が禁じられている大量破壊兵器であり、弾頭が爆発する際には数百の小さな爆弾が飛び散る特性があります。)
住民のの一人は、「再びロシア軍が私たちの町を攻撃するだろう。プーチン大統領にとって、キーウを再攻撃する他の選択肢はないだろう」と語っており、ロシア軍の再攻撃に怯えていました。
「ブチャよりさらに凄惨」ゼレンスキーがテレグラムで述べる
ゼレンスキー大統領は4月7日に、キーウ近郊のボロディアンカがブチャよりも悲惨な状況であるとコメントした。彼はテレグラムで公開した動画において、「ボロディアンカでのがれきの撤去が始まり、その状況は想像を超えて凄惨である。ロシア軍の占領による犠牲が増加している」と述べた。
さらに、ベネディクトワ検事総長もツイッターでキーウ地域の破壊の様子を公開し、ボロディアンカがこの地域で最も被害を受けた都市であると指摘。「都市の各所には戦争犯罪の証拠が散見される」と彼女はコメントした。
「虐殺はフェイク」プーチンはロシア軍の関与を否定
このような凄惨な虐殺行為について、ロシアのプーチン大統領は、「フェイク(偽情報)」とロシア軍の関与を否定しています。ロシア国防省も4月3日に声明を発表しており、ロシア軍の駐留中に「市民がロシア軍からの暴力を受けた事実はない」という内容で虐殺を否定しています。さらに、ロシアのペスコフ大統領報道官は4月4日、殺害された市民の映像について「我々の専門家がその映像に偽造の兆候を見つけた」とのコメントを出し、虐殺は作られた映像であるとの立場を明らかにしました
ウクライナ記者、ロシアの「自作自演」主張を否定
ロシア軍のウクライナ侵攻による攻撃の被害現場を取材してきた、地元放送局「キーウ・テレビ」の記者は、ロシア側が主張している「ウクライナによる自作自演説」に対して強く反論。
「ロシアは何を言っているのかわからない。これだけの破壊の痕跡を目の前にして、なぜ誰もウクライナ軍がこれを行ったという証言がないのか。」と怒りを込めて語りました。さらに、ロシアのプロパガンダに対する反論として、自らの取材と報道活動によってその矛盾を明らかにしていくと述べています。
【ウクライナ危機(55)】ブチャの虐殺はフェイク!?ロシアが主張する中で人工衛星は真実を見ていた。