ロシアの経済が続くウクライナ危機の中で、国際的な金融制裁の影響を深く受けています。制裁の継続的な圧力により、多くのロシア企業が業績を悪化させ、市民の生活水準も低下しているとの報告が相次いでいます。こうした背景の中で、ロシアのプーチン大統領は「非友好的な国・地域」として制裁に参加した国のリストを公表しました。このリストの公表は、国際的な対立をさらに加熱させる可能性があります。
この記事では、金融制裁の現状やロシアの反応、そして非友好的な国・地域のリストの詳細について深く探っていきます。
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Unfriendly Countries List
『非友好的リスト』
「非友好国」とは、ロシアがその国が自国の領土の安全や経済・政治の安定性に対して脅威を持つと認識した国を指す言葉です。この定義は2018年6月4日の「アメリカとその他外国の非友好的行動への対策」の連邦法127-FZ号で初めて明確にされました。この法律には、非友好国への潜在的な制裁措置が挙げられており、それには以下のような項目が含まれます。
- ロシアと非友好国またはその関連企業との国際協力の停止。
- 非友好国製の商品や原材料のロシアへの輸入の制限。
- 非友好国の市民や団体によるロシア向けの輸出の禁止。
- 特定の業種における国や地方のニーズを満たすための仕事やサービスの制限。
- 国や地方の資産の民営化への参加の制限。
- ロシア大統領の決定に基づくその他の措置。
この法律は、ロシアが外国との関係における対応策を明文化したものと言えます。
制裁でルーブルが急落……ロシアのデフォルトの可能性が高まる
制裁の影響を受けて、侵略の開始から3月初めまでの間に、ロシアの通貨ルーブルはドルに対して急速に価値を失いました。ロシアの民間企業の株は国内での取引が停止となり、国外で上場している企業の株価も急落。ロシアの債券も大量に売却され、市場は「トリプル安」という状態に突入しました。制裁によりロシア中央銀行の外貨準備の約半分が利用不能となり、結果として外貨建ての国債の利子や元本の返済が困難となりました。これにより、ロシアが債務不履行に陥る可能性が高まりました。
「非友好国・地域」の債務はルーブルで返済可能
ロシアは、この国際的な制裁に対して受け身になっているわけではありませんdせいた。
2022年3月5日には、プーチン大統領は「非友好国」である日米欧などに対して、ルーブルでの債務返済を許可する大統領令に認可を与えます。これはロシアの政府、個人、法人が持つ外国向けの債務(金融商品を含む)に関して、ルーブルでの返済を可能にするものであり、これは西側国家からの経済制裁に対する反撃としての措置でした。
この令は、返済額が1ヶ月において1,000万ルーブル(約900万円)を超える、またはそれに等しい外貨の場合にのみ適用されます。
ロシア政府からも、ドル建ての国債利息の支払いが困難になった場合、ルーブルでの支払いに変更する可能性が示唆され、外貨準備の使用を許可しなければルーブルでの返済を強制するという姿勢を露わにしました。
ルーブルの価格急落、デフォルトを回避するための措置
2022年3月2日にロシア中央銀行は、外国人投資家が所有するルーブル建てのロシア国債に対する利払いを一時停止しました。通常、ルーブル建てならば利払いに問題は生じないはずです。
しかしこれは、ルーブルの国外への大量流出を招き、結果的にルーブルの価値を低下させる恐れがあります。この措置は、そうした流れを修正するためのものと考えられます。
さらに、ロシア政府が外貨での債務返済に積極的であることを示唆しており、その主な目的はデフォルトのリスクを低減することです。ロシア中央銀行は、自らが設定した為替レートでの支払いが債務の履行とみなされるとの立場を取っています。しかし、多くの海外投資家がこの方針を受け入れるかどうかは未知数で、デフォルトに関する意見がロシアの国内外で分かれる可能性が高まっていきました。
「非友好国・地域」のリストをロシアが公表
ロシア政府は3月7日に、「非友好的な国と地域」としてのリストを公開しました。これは、国営タス通信を含む複数の情報源によって報告されました。公表されたリストには以下の国と地域が含まれており、合計48カ国と地域がその対象となりました。
- アメリカ
- カナダ
- EU全加盟国(27カ国)
- イギリス
- ウクライナ
- モンテネグロ
- スイス
- アルバニア
- アンドラ
- アイスランド
- リヒテンシュタイン
- モナコ
- ノルウェー
- サンマリノ
- 北マケドニア
- 日本
- 韓国
- オーストラリア
- ミクロネシア
- ニュージーランド
- シンガポール
- 台湾
ロシアによるこのリストは、欧米などの制裁に同調した国や地域を対象としていました。
日本、ロシアの「非友好的な国」認定を受け松野博一官房長官がコメント
ロシアの「非友好的な国」リストに日本が含まれたことに対し、松野博一官房長官が3月8日の会見でコメント。
松野官房長官は「大変遺憾で、外交ルートを通じて抗議した」と述べ、日本政府の強い不満を表明。さらに、「日本国民や企業の利益が損なわれないように求めたい」との立場を明確にしました。
また、ロシアのこの措置による日本の企業活動への影響に関しては、松野官房長官は「現在、内容を精査しており、影響について現時点で述べるのは差し控えたい」との見解を示しました。
ロシアの「非友好国」認定に対する周辺国の反応「ジョージアのケース」
旧ソビエト連邦の一部として、ロシアとの歴史的・地理的な関係を持つジョージア。この国は、かつてのソビエト連邦の指導者であるスターリンの出身地としても知られている。ロシアの最近の「非友好的な国」の認定を受けて、ジョージアのティムラズ・レジャバ駐日大使は独自の立場をSNSで明らかにしました。
レジャバ大使の公式Twitterアカウントには、「ジョージアと日本は非非友好国です。ガウマルジョス」というメッセージが投稿されました。これは、ジョージアと日本の間の友情と連帯を強調し、同時にロシアの動きを皮肉っていると解釈できます。
「ガウマルジョス」という言葉は、ジョージア語で「乾杯」を意味し、この文脈で使用された場合、二国間の連帯と友情の深さをさらに強調するものとして捉えられるものでした。
ジョージアと日本は非非友好国です🇬🇪🇯🇵
— 駐日ジョージア大使 ティムラズ・レジャバ (@TeimurazLezhava) March 8, 2022
ガウマルジョス🍷
「非友好国・地域」のロシアでの特許を無効
2022年3月7日にロシア政府が発表した法令により、特定の「非友好国」の特許権者へのロイヤリティ支払いが事実上無効化されることとなりました。これは、国際的な知的財産権の保護という原則に大きな影響を及ぼす可能性があり、多くの企業や国が懸念していました。
特許の使用料が0%
ロシアは以前から、国の緊急時や国家安全保障のために特許権者の同意なしに特許技術の使用を許可するという法律を持っていましたが、その際には通常、権利者に対して使用料が支払われていまいた。しかし、この新しい法令により、「非友好国」の特許権者には使用料の支払いが0%とされることとなってしまいました。
特許権は存在するが無料でも使用可能……事実上の特許無効
この法令は、特許権が無効になるわけではなく、ロシア政府が強制的にライセンスを命じる場合にのみ適用されるという。しかし、この「ゼロ円という対価」は、事実上、特許権が無効となるのと同等の状況を生み出しています。
この措置は、特に技術先進国の企業にとって大きな打撃となり得る。特許技術の無料使用は、研究開発の投資回収を困難にし、新たな技術開発のモチベーションを低下させる恐れがあるからです。さらに、この法令が商標権にも適用されるのかどうか明確ではないため、広範な知的財産権がこの措置の影響を受ける可能性が懸念されています。
「非友好国・地域」への木材輸出規制
3月9日、ロシア政府は日本を含む「非友好国」に対し、丸太、単板、木材チップの輸出禁止を宣言しました。この禁輸措置は2022年末まで続くと発表されています。一方、日本政府も4月19日からこれらの製品の輸入を禁止するという措置をとっています。
これらの相互措置は、両国の経済や産業に影響を及ぼす可能性があります。特に、日本の建築業や家具製造業など、木材を中心とする産業は、原材料供給の変動に影響を受けやすいため、価格の上昇や供給量の不足が懸念されます。同様に、ロシアの木材産業も、主要な輸出先である日本への輸出停止により、売上の減少や在庫の増加などの影響が考えられます。
「ウッドショック」
ロシアの木材輸出規制は、世界の木材市場においてさらなる影響を及ぼす可能性があります。2021年のデータによれば、外材の中でロシア材が占めるシェアは5%に過ぎないが、「単板」の輸入量に関しては8割がロシア産であると農林水産省は述べている。この単板は、合板として住宅の屋根や壁などの建材に用いられ、特に建材メーカーや住宅メーカーがその高品質と低価格のために頼りにしていました。
ロシアは世界の2割の森林を有しているため、その輸出が規制されると、木材の供給が逼迫し、価格が急上昇する可能性が高まる。これはすでに過去に「ウッドショック」として経験された問題と類似しています。
2020年に新型コロナウイルスの影響を受けた木材市場では、生産量を減少させることで需給バランスを保とうとしたが、建築需要の予想外の増加により、予想とは逆の方向に市場が動いた。この結果、全世界で木材の価格が急騰し、さらに物流の混乱がこれに拍車をかける形となりました。
再燃する「ウッドショック」と日本の木材市場
2020年の新型コロナウイルスの影響による「ウッドショック」の余波は、2021年末から2022年初めにかけての回復の兆しをみせていたが、2022年2月のロシアのウクライナ侵攻によって再びその影が大きくなってきている。ロシアとウクライナの政治的な紛争は、世界的な木材供給にも大きな影響を及ぼしている。
ロシア制裁の影響で、ロシア産の木材の輸出が急激に減少。これにより、既に供給不足となっていた木材市場はさらなる逼迫を迎えている。ロシアは世界の森林の約2割を有しており、その供給が途絶えることは、木材価格のさらなる上昇を意味する。
日本においても、この状況は深刻である。特に品質が高いロシア材の供給不足は、建築業界を中心に大きな打撃となっている。日本の農林水産省によると、2021年の外材に占めるロシア材のシェアは5%程度だが、「単板」に関しては約8割がロシア産であった。この単板は、住宅の屋根や壁などに使用される合板の主要な材料として利用されるため、その供給不足は住宅メーカーや建材メーカーにとって大きな問題となっている。
また、日本の木材市場は、ロシア産の木材の輸入禁止に伴い、国産の木材にシフトしているが、それによって国内の木材の価格も高騰している。特に、尾鷲ヒノキの原木価格は、1年前に比べて2倍から3倍の価格となっているとの報告もある。
このような背景から、建材メーカーや住宅メーカーは、ロシア産から他の産地への調達先の切り替えに苦労している。日本の木材業界にとって、今後の供給体制や価格動向の変化にどう対応するかが、大きな課題となっている。
「非友好国・地域」の特許や商標はパクってもOK
2022年3月に、ロシアの新たな知的財産政策が国際的な注目を集める事態となりました。ワシントン・ポストの報道によれば、ロシアは「非友好国」として指定した国々の企業が保有する特許や商標を無断で使用することを事実上合法とする方針を打ち出しました。
主要ポイント
- 非友好国の定義と措置:ロシア政府は、特定の国々を「非友好国」と位置づけ、これらの国の企業がロシア内で享受していた特許や商標の保護を停止することを宣言しました。
- 損害賠償訴訟の免除:ロシア国内の企業が、非友好国の企業が持つ特許や商標を許可なく使用しても、法的な損害賠償のリスクは発生しないとのことです。
- 中国を除く主要先進国の影響:この新政策は、中国を除いた多くの先進国の企業に影響を与えることとなります。
ロシアも加盟している知的財産保護の国際条約に完全に違反
加えて、この新政策は、「パリ条約」という長い歴史を持つ国際条約と明確に相反するものです。
パリ条約は、工業所有権の保護に関する国際的な取り決めを定めており、加盟国は外国の知的財産を自国民と同等に保護するという原則(内国民待遇)を持っています。ロシアもこの条約の加盟国であるため、新たな政策はこの条約に明確に違反しています。
「アスピリンの特許」過去を振り返ると、戦時中に他の国でもこの前例があった
特許や商標の権利の剥奪は、現代のロシアの例だけではなく、歴史的にも幾度か見られる事例が存在します。第一次世界大戦中のアメリカにおけるバイエルのアスピリン特許の喪失は、その代表的なケースの一つです。
事の経緯
- 背景:1917年にアメリカが第一次世界大戦に参戦すると、中央同盟国(ドイツ、オーストリア=ハンガリー帝国、オスマン帝国など)はアメリカにとって敵国となりました。
- 敵国の資産の没収:アメリカ政府は、敵国企業の米国内資産の没収を開始しました。これにより、多数のドイツ企業が米国でのビジネスや資産を失う事態となりました。
- バイエルのアスピリン特許:この中で、特に有名なケースとしてドイツの製薬大手、バイエルのアスピリンに関する特許が挙げられます。アスピリンは、その当時既に世界中で広く使用されている解熱鎮痛剤であり、バイエルが持つ米国での特許権は非常に価値がありました。
- 商標の剥奪:加えて、バイエルの商号や、世界的にも有名な「バイエル十字」の商標もアメリカ政府によって剥奪されました。
このような政策は、戦争の中での経済戦略の一環として行われましたが、戦後もその影響は続いており、バイエルはアメリカでのアスピリンの特許権を再び取得することはできませんでした。この例は、国際的な緊張や対立が特許や商標といった知的財産権にどのような影響を及ぼすかを示すものとして、今日のロシアの事例と共に考える上で興味深いものです。
後日、ロシアで非友好国の特許や商標は保護される判決が出る
今後「非友好国」として定義される欧米・日本などの国々が持つロシア国内の知的財産を保護しなくなる可能性があるのでは?との臆測が広がりました。この背景には、3月にロシアの裁判所が英国企業のキャラクターの商標侵害訴訟を「非友好国」を理由に却下した事件が影響している。
さらに、特許の強制実施の際の補償を非友好国へは支払わないという方針も明らかにされており、国際的な知的財産の取り決めや規則に対する混乱が拡大したのです。
しかし、モスクワにあるロシア唯一の知財裁判所は、2022年5月20日にこのような非友好国への差別的な取り扱いを打ち消す判決を下しました。ロシア企業がイタリア企業を相手取り、商標の不使用による登録取り消しを求めた訴訟で、非友好国の企業の知財は保護されるべきでないと主張するロシア企業に対して、知財裁判所は「非友好国を理由に法廷での証明責任を免れるわけではない」との判断を示し、イタリア企業の主張を支持した。
この知財裁判所の判決は、連邦内の裁判所が下す知的財産に関する判決の統一性を確保する役割を持っており、今後の知的財産に関する裁判の方向性を示すものとなるとみられています。
「非友好国・地域」でロシアから撤退した企業の資産を奪ってもOK!国有化法案が検討
3月10日、ロシアのプーチン大統領は、ロシア市場から撤退した外国企業の資産を国有化する新政策を承認しました。閣僚会議において、プーチン大統領は「撤退する外国企業に対して明確な姿勢を取る」と発言、ロシア政府がその経営を主導する方針を明らかにしました。
ミシュスチン首相は会議中、「企業が生産を停止することを阻止するための法案を準備した」と伝え、政府が管理者を派遣し、事業運営を行う手法について説明しました。プーチン大統領も、ロシアのサプライヤーへの損害を防ぐための断固とした対策が必要であり、外部管理者が派遣された後、事業継続を希望する者への譲渡が考慮されるべきだと主張しました。
既に200社以上の外国企業がロシア市場から撤退あるいは停止を決定しています。政権の与党「統一ロシア」のメドヴェージェフ元大統領は、西側諸国の制裁に対応して外国企業の資産国有化の方針を示唆していました。また、ジューコフ下院第一副議長は、「ロシアでの事業を再開する意志を示す企業は、国有化の対象から除外される」との見解を示しました。
企業の撤退でのロシア経済対策
ロシアは、ウクライナ侵攻を背景に欧米や日本などの「非友好国・地域」からの企業撤退が続出する中、これらの企業が投資している工場や店舗を国有化し、転売を検討しています。この措置の背景には、雇用と供給網の維持を目指すという政府の狙いがあります。
プーチン大統領は、接収の対象となる企業の行方は、親会社の意向に依存すると述べています。ミシュスチン首相は、多くの企業が事業活動を一時的に停止しているものの、雇用や賃金の支払いは継続しているとし、「状況は慎重に監視される」との立場を示しています。
現地の新聞、イズベスチヤによれば、ロシア政府と検察は、国有化を検討中の企業60社のリストを既に受け取っているといいます。このリストには、トヨタ、フォルクスワーゲン、ポルシェ、シェル、イケア、H&M、アップル、マイクロソフト、IBMなどの国際的な大手企業が含まれていると報じられています。
ロシアでの営業を再開 or 売却……etc
ロシアが採用している一連の強硬策が、国際的な投資協定の違反として、大きな法的対立を引き起こす可能性が高まっています。これにより、ロシア市場に進出している世界の企業は、前例のない試練に直面することになります。
ロシア経済発展省の発表によれば、企業の外部管理にロシア開発対外経済銀行(VEB.RF)などが関与する可能性があります。特に、企業の経営者や株主は、ロシアでの営業を再開するか、あるいは株式を売却するなどの対応を5日以内に選択しなければならないとされています。
この措置は、株主を含む経営陣がロシアの法律に反して事業活動を事実上終了させた企業に対して施行されると経済発展省は明らかにしました。さらに、2月24日以降に経営陣がロシアを離れたり、資産を移転したりした企業も、この措置の対象となる可能性が示唆されています。
さらに、接収される企業は改めてパッケージ化されることになり、3ヶ月後に公開競売で売却される可能性があります。また、新たな所有者は、従業員の3分の2を維持し、少なくとも1年間は事業活動を継続する必要があるといいます。
審議入りする可能性
ロシアメディアの報道によると、「国有化法案」が近く下院での審議入りする可能性があるとのことです。この法案は外国の資産をロシアが一方的に接収する内容となっており、国際的な緊張をさらに高める要因となると懸念されています。
ロシアの非鉄金属大手企業ノルニッケルの所有者であるポターニンは、3月10日にインタファクス通信とのインタビューの中で、この法案について「ロシアを旧ソ連に戻すものだ。国際的不信を招き、ロシアは今後何十年もの間、困難な状況に直面するだろう」と厳しい批判を展開しました。
旧ソ連時代にはドイツの自動車メーカーを奪った前例が……
このような資産の接収は、ロシアの過去、旧ソ連時代の歴史にも繋がっています。第2次大戦終了後、ソ連はドイツの自動車メーカーの工場を接収し、モスクビッチという国産車の生産を開始。この時、ソ連の技術力は西側諸国と比べて大きく劣っており、接収した工場を活用しても、高品質な自動車を製造することは困難でした。それにも関わらず、ソ連の国産車製造は崩壊まで続き、多くの国民は品質の低い車に乗るしかありませんでした。
ロシアが再びこのような手法に訴えることで、国際的な経済関係や信頼関係に大きなダメージを与えることになるとの声が多く上がっています。
ロシアの資産接収に警戒の声
3月10日、ホワイトハウスのサキ報道官は、ロシアの外国企業の資産接収を懸念し、そのような「無法な決定」がロシア自体に経済的な痛みとして跳ね返るであろうとの見解をツイッター上で明らかにした。さらに、このような行動は国際的な訴訟問題に発展する可能性があるとの見方を示しました。
サキ報道官はまた、「ロシアは投資やビジネスをする場としての安全性が損なわれ、世界のビジネスコミュニティーにその不信感をいっそう強く示すことになるだろう」と指摘しました。
一方、日本の松野博一官房長官は、3月11日の記者会見で、ロシアのプーチン大統領が資産接収の可能性を示唆したことについて言及。松野官房長官は、「我々はこれに深い懸念を抱き、日本国民や企業の利益が損なわれないように外交ルートを通じて強く求めてきている。引き続き、この問題に適切に対応する」と強調しました。
「非友好国」がロシアの天然ガス購入する場合、支払いはルーブルに限る
ロシアのプーチン大統領は3月23日、非友好国からの天然ガス支払いは今後ルーブルのみで受け取るとの方針を明らかにしました。この発表は関係閣僚とのオンライン会議中に行われたものでした。
西側諸国がロシアの外貨準備を凍結する措置を取ったことに対する反応として、プーチン大統領は「このような状況で、ドルやユーロなどの外貨で我々の商品の支払いを受け取る意味はない」と批判。さらに「非友好国と地域に供給する天然ガスの支払いはルーブルに変更する」と明言し、該当する取引についての具体的な対応措置の実施を速やかに進めることを指示しました。
G7は拒否
ロシアのウラジミール・プーチン大統領が天然ガスの支払いをルーブルでのみ受け取る方針を発表したことを受け、3月28日には日本を含むG7の外相がこの問題に関する会合を行い、ロシアによるルーブル払い義務化の動きに対して一致して拒否するとの声明を発表しました。
プーチンが大統領に署名!!執行される
3月31日、ロシアのプーチン大統領は、非友好的と判断された国々への天然ガス輸出に関して、ルーブル建てでの支払いを求める大統領令に署名したことを明らかにしました。
これにより、「非友好国」と指定された国々は、ロシアが指定する銀行に特別口座を開設し、4月1日以降、天然ガスの輸出代金をロシア通貨、ルーブルで支払うこととなります。新たな規則に従わない場合、既存の天然ガス供給契約は破棄されるとのことです。
一方で、新たな大統領令には例外条項も設けられています。それによれば、ロシア政府の特別委員会の許可が得られた場合、外貨での支払いも認められるとしています。これにより、実際の取引の場面でどれだけの国がルーブル建てでの支払いを強制されるのか、または外貨での取引が認められるのか、その実効性がどれだけあるのかはまだ不透明な状態となっています。
「まずは天然ガスから」プーチンの発言
「支払い手段をルーブルに変えるため、短期間に一連の方策を実現する決定を下した。まずは天然ガスから始めよう」
プーチン大統領は、政府閣議での発言の中で、国際取引における支払い通貨をルーブルに変更する方針を明らかにしました。
さらに、関係閣僚とのオンライン会議で、欧米によるロシアの外貨準備凍結を「不法」と非難。「ロシアを基本的にデフォルト(債務不履行)と宣言した欧米に対する輸出品の支払いをドルやユーロで受け取る意味はなくなった」と続けて言及しました。
信頼をなくしたユーロやドルでの決済を拒否
その後、プーチン大統領は、ドルやユーロなど「信頼をなくしたすべての外貨」での取引を拒否する考えを明確にしました。この背景には、西側諸国によるロシアへの経済制裁が進行中であることが挙げられます。
プーチンは、天然ガスを購入する企業がロシアの金融市場でルーブルを調達する手続きを、1週間以内に明確にするよう中央銀行と政府に指示しました。また、国営天然ガス会社ガスプロムに売買契約の一部変更を行うよう命令しました。今後、石油や他の主要な輸出品についてもルーブルでの決済が求められる可能性が高まっています。
さらにプーチンは、「このような(ルーブル)決済が行われなければ、我々は購入者に対して不履行(ガス供給中断)を考慮しうる。誰も我々にただで何かを売ってもらうことはできない。我々は慈善機関ではない。既存の契約は中断される」と強調しました。
この発言はロシアのエネルギー供給に対する取引先国の懸念を一層高めるものとなりそうです。
また、プーチン大統領はアメリカを批判し、対ロシア制裁を利用してヨーロッパ各国に高額なアメリカ産の天然ガスを押し付けようとしていると指摘しました。
ルーブルの価値を支えるための手段!?ガスとルーブルの価格が一時急上昇
ロシアのプーチン大統領が、天然ガス取引におけるルーブル決済を強調したことは、ヨーロッパのガス市場に一時的な混乱をもたらしました。ブルームバーグ通信によれば、プーチン大統領の発言の後、ヨーロッパのガス価格は一時30%以上急騰したとのことです。
一方で、ロシアルーブルは対ドルで一時1ドル=100ルーブルを超える上昇を見せました。これは、3月2日以来の高値となる94.9875ルーブルまで上昇したことを意味します。しかしこの上昇も長くは続かず、2月24日以降では約20%の下落を記録しています。
コンサルタント会社ライスタッド・エナジーのシニアアナリスト、ビニシャス・ロマーノ氏はこの動きについて、「額面通り受け取れば、今回の措置はルーブル相場を下支えするため、天然ガスの購入者にルーブル買いを強制しているように見える」との見解を示しました。
ルーブルでの決済義務化は4月1日から開始される予定ですが、その実施は即座には行われないようです。ロシアのペスコフ大統領報道官は3月30日に「(ルーブルで)すぐに払われなければならないということではない」との声明を発表しました。
「ルーブルで支払う意思はない」欧州諸国はこれに反発
ロシアのプーチン大統領の天然ガス取引におけるルーブル決済の強調に対して、欧州各国からは反発の声が高まっています。
イタリアの首相顧問は、「ルーブルで支払う意思はない」と明言しました。主要理由として、「ロシア制裁の軽減につながる可能性がある」ためと述べ、ロシアに対する強硬姿勢の維持を強調しました。
ドイツのオラフ・ショルツ首相も、西側諸国がロシア産ガスの代金をユーロやドルで支払い続けるとの立場を明確にしました。供給契約上、ユーロやドルでの支払いが明示されているとし、この契約内容に従うことをプーチン氏に再確認したと報告しました。一方で、ロシア産ガスの最大の輸入国であるドイツのハーベック経済相は、ルーブルでの支払い要求を契約違反として反発し、欧州諸国との協議を進める姿勢を示しています。
フランスのブリュノ・ルメール経済・財務相は、ロシア産ガスの供給停止に向けた準備を行っていると説明。特に、ドイツのロベルト・ハーベック副首相兼経済・気候保護相との会談後にこの点を強調しました。
日本もロシアからの液化天然ガス(LNG)の輸入国として影響を受ける可能性が高まっています。財務省の公開貿易統計によれば、日本が輸入するLNGの約7〜8%はロシア産となっており、これによる影響は避けられない状況です。
え!?ユーロでも支払いが可能!?複雑な抜け道
このような反発の中、プーチン大統領は、ロシアの天然ガス取引においてルーブルでの決済を強調しているものの、ドイツや他のEU諸国の首脳に対しては、従来通りユーロで支払いが可能であることを示唆しました。この動きの背後には、どのような戦略があるのでしょうか?
3月31日の大統領令によれば、ロシアからガスを購入する外国の買い手は、特定のロシア銀行に外貨とルーブルの双方の口座を開設することになります。そして、買い手は外貨口座に資金を送金し、当該銀行がそれをルーブルに交換します。この交換後の資金は、買い手のルーブル口座に振り込まれ、その後ガス供給企業への支払いが行われるという仕組みになっています。
この新たなシステムを介してロシアは、外貨でのガス料金の支払いを続ける日米欧に対しても柔軟性を持たせているように見受けられます。特に、この新しい決済方法の背後にある銀行としてガスプロムバンクが指名されている点が注目されます。この銀行は、国際銀行間通信協会(SWIFT)の制裁から現在は除外されており、ロシアはこれを利用して制裁の影響を最小限に抑える狙いがあると考えられます。
ロシアと欧州のガス供給緊張
ヨーロッパ、特にドイツは、ロシアからの天然ガス供給に大きく依存しています。事実、EU全体で消費される天然ガスの約4割がロシアからのものとなっている。この依存度の高さは、エネルギー供給におけるリスクをもたらしています。
ドイツのショルツ首相は、ロシア産の天然ガスの代わりとなるエネルギー源が現在のところ存在しないとの立場を明確にしており、ノルドストリーム1というガスパイプラインの供給が遮断されるシナリオは、欧州諸国にとって大きな打撃となることは明白です。この欧州全体のリスクを回避するため、ガスプロムバンクなどの一部のロシアの銀行は、国際的な制裁の対象から除外されているのです。
このような背景の中でも、ロシア側が提案した新しい決済体系に対して、ショルツ首相は従来のユーロやドルでの支払いを継続するとの立場を強調しました。これは、ロシアが一方的に取引の契約を変更しようとする姿勢に対する反発が根底にあると考えられます。
この緊張は、ロシアが4月27日にポーランドとブルガリアへの天然ガス供給を停止したことで一層高まりました。この停止は、欧州諸国とロシアとの間のガス供給問題が今後どのように進展するかを予感させる出来事となったのです。
「非友好国・地域」への食糧輸出を監視
4月5日、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、ウクライナに対する行動を受けて西側諸国からの制裁の中で、「非友好国」への食料輸出について、厳しい監視を行う方針を表明しました。
プーチン大統領は農業関連の会合において、「世界的な食料不足を背景に、今年は国外への供給を慎重に行わなければならない」と指摘。特に「わが国にとって明らかに友好的でない国への輸出は、注意深く監視する必要がある」と続けました。
このコメントは、ロシアが持つ食料輸出の力を外交の道具として利用する意向を示唆しています。西側諸国からの制裁が続く中、食料輸出を巡る政策の方針が、ロシアと他国との関係にどのような影響を与えるかが注目されます。
「非友好国・地域」のメディアはロシアで活動できない
4月5日、ロシア議会の内政干渉調査委員会のピスカレフ委員長が、ロシアメディアを「差別」とする外国の報道機関に対し、即時の活動停止を求める法案を提出しました。
この法案は、外国の報道機関がロシアメディアやジャーナリストに対して差別的な行動や報道を行った場合、即座にその活動を制限または禁止することを目的としています。具体的には、インターネット上でのあらゆる情報配信の禁止、特派員の認定停止、ロシア国内でのオフィスの閉鎖などが提案されています。
ピスカレフ委員長は、「ロシアメディアに対する外国の非友好的な行動」に対して、ロシアも迅速に対応する必要があると主張。
なお、ロシア議会は3月4日に、軍に対する「偽情報」の拡散に関して最長15年の懲役刑を定める法律を可決しています。この法律の影響で、多くの主要な外国メディアは、ロシアからの特派員を引き揚げる事態となりました。
後にプーチンが署名……施行される
ロシアのプーチン大統領は、軍や政府に対して批判的な報道を行うメディアの活動を制限する法律に署名し、これを施行しました。
新たに施行されたこの法律によれば、ロシアの軍や政府について「敬意を払わず、信用を貶める報道を行っている」と検察当局が判断した場合、該当するメディアはその活動を禁止されることとなります。さらに、ロシアのメディア活動を制限または妨害する外国に対して、報復措置としてその国のメディアのロシアでの活動が制限または禁止されることも法に盛り込まれています。
専門家の間では、この法律がウクライナへの軍事介入を批判的に報道するメディアを目の敵にしているとの見方が強まっています。この新法の施行により、報道の自由と表現の自由が大きく制約される可能性が高まりました。
「非友好国・地域」からの入国ビザ発給を制限・入国制限
ロシアのプーチン大統領は、4月4日に非友好国の国民への入国ビザ(査証)発給を制限する大統領令に署名しました。この決定は、欧州連合(EU)やノルウェー、スイス、アイスランドなどと結ばれていたビザ発給の円滑化に関する協定の一部条項を停止するものでした。
外務省と関連行政機関には、非友好国からの入国者に対する制限を課す指示が出されました。ロシア政府の発表によれば、制限の対象となるのはEU加盟国やEU非加盟の欧州諸国であり、日本はこれに含まれていません。具体的には、ロシアやその国民、法人に対して非友好的な行動をとる外国人の入国や滞在が制限されることになっています。
しかし、何を「非友好的な行動」と判断するのかについての詳細は明らかにされていません。このため、作為的 に入国や滞在の制限が行われる可能性が懸念されています。
また、この決定前の3月28日には、欧米諸国からの経済制裁への対抗措置として、ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相が、非友好国の市民へのビザ発給を制限する方針を示していました。
「非友好国・地域」との取引を禁止
5月3日、ロシア大統領府は、プーチン大統領が「一部の国や国際機関の非友好的行為」に対する報復的経済制裁の大統領令に署名したと発表しました。この大統領令は、ロシア政府の制裁対象となった米国をはじめとする非友好国の企業や団体が受益する場合、ロシア国内で生産された製品や原料の輸出を禁止するものです。
また、ロシア国内の企業に対して、制裁対象となる外国の企業や団体との新規契約締結や、既存の取引の実行も禁じられることが明記されています。具体的な制裁の対象となる国や組織については、10日以内に詳細が明らかにされる予定だといいます。
「非友好国リスト」を初めて作成したのは2021年!!そこには…。
ロシア政府は5月14日、非友好的な行動を取っている国として米国とチェコを正式にリストアップしました。このリストの大きな特徴として、各国の公館内で雇用できるロシア国籍者の人数が明示されている点が挙げられる。米国に対してはロシア人の雇用を0人とし、チェコに対しては19人と規定しています。
プーチン大統領は先月、外国の公館やその他の機関で働く地元職員の数を制限する法律に署名。これを受け、非友好的な国のリストの作成が政府によって進められていました。
この背景として、4月17日にチェコ政府が発表した2014年に同国で発生した弾薬庫爆発事件に関する新たな情報があります。この事件で2人が死亡し、チェコはロシア連邦軍参謀本部情報総局(GRU)の関与を断定していました。ロシアの「非友好国」指定は、この断定に対する報復としての位置づけとなっています。
『2014年 チェコ弾薬庫爆破事件』
2014年にチェコ南部ヴルベティツェで発生した「2014年 チェコ弾薬庫爆破事件」は、その影響で近隣の建物の窓が壊れ、周辺の学校の生徒たちも避難を余儀なくされました。その爆発で56歳と69歳の2人の男性が死亡、その遺体は爆発から1カ月以上後に発見された。事件当時、爆発の原因は事故とされていたが、新たな捜査結果によりその真相が明らかとなりました。
チェコの捜査当局は、この爆発にロシアGRUの工作員、アレクサンドル・ミシュキンとアナトリー・チェピゴフ両名が関与していたと発表。この二人は、2018年3月に英国ソールズベリーで発生した毒殺未遂事件の主犯としても指名されています。この事件では、ロシアの元スパイ、セルゲイ・スクリパリ氏とその娘ユリアが神経剤「ノビチョク」によって攻撃されています。
英国の捜査当局は、スクリパリ親子を狙った2人の男を「アレクサンデル・ペトロフ」と「ルスラン・ボシロフ」として指名していましたが、これらは偽名であるとされています。調査報道サイト「ベリングキャット」はさらに詳しく調査を進め、これらの偽名が実はGRUの将校、アレクサンドル・ミシュキンとアナトリー・チェピガのものであると報道しました。
チェコがロシアの外交官を追放すると、ロシアも対抗
チェコ政府は、2014年に発生した弾薬庫の爆発事件にロシア情報機関が関与していたとの結論に至り、4月17日にロシアの18人の外交官に対して国外退去を要求しました。この爆発事件で2人が死亡しています。翌日、ロシアもこれに対抗し、チェコの外交官20人を国外に追放する措置を取りました。
ロシアは、チェコの主張を否定し、「この挑発行為の当事者に、両国間の関係を壊した責任を理解させる」との声明を発表しました。さらにロシアは、「チェコの行動は、近年続く反ロシア的な態度の一環であり、米国が先日実施した対ロシア制裁を背景に、米国の寵愛を受けようとしている」と非難しました。
一方、チェコは、ロシアの弾薬庫爆発事件への関与疑惑をNATOとEUに報告。この問題は4月19日のEU外相会議で議論されると明らかにしました。米国務省もチェコの立場を支持し、「チェコ内でのロシアの破壊的な行動」への強い対応を支持するとの声明を発表しました。
この一連の対立を背景に、5月14日にロシア政府は、米国とチェコを「非友好国」として指定しました。
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