【ウクライナ危機(52)】危機が再燃させる冷戦の影!マクドナルドの撤退は新たな時代のシンボルとなるか?

東西冷戦時代、米ソの対立は世界中の人々の生活に大きな影響を与えていた。その対立が終結を迎えた1990年代初頭、ロシアの首都モスクワにオープンしたマクドナルドは、新たな時代の訪れとともに西側ライフスタイルの象徴として受け入れられ、ロシア国見にとっても特別な存在となっていました。しかし、近年の国際的な緊張が高まる中で、このアイコン的存在であるマクドナルドまでもがロシア市場からの撤退を表明しました。

この撤退は、単にビジネスの戦略としての意味だけではなく、ロシアと西側諸国との関係の変遷を示す象徴的な出来事として、多くの人々の心に大きな影を落としています。この記事では、マクドナルドの撤退の背景と、それがロシアと世界に与える影響について詳しく探っていきます。

【ウクライナ危機(51)】侵攻に抗議の声、国際大会排除・イベント延期、欧米企業のロシア市場撤退に揺れる国際舞台
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侵攻の歴史的経緯から全面撤退に至るまで、ソ連側から見た実態を膨大な資料に基づいて鮮やかに描き出す。元駐モスクワ英国大使の歴史家が明かす、戦争の全貌と真実。冷戦期の「神話」を覆すアフガン戦史の決定版。(「BOOK」データベースより)

McDonald’s To Exit from Russia

ロシア国民に愛されたマクドナルドが撤退

CNBC/YouTube

2022年2月24日、世界は一つの出来事に息をのみました。ロシアのウクライナ侵攻という衝撃的なニュースは、国際的な経済・政治の波紋を引き起こすこととなりました。特に、経済的な影響は予測を超えるものであり、3月に入るとその影響はロシア市場にまで及びました。

連日、大手外国ブランドが事業の休止や撤退を明らかにし、これにロシアの消費者は驚きと失望を隠すことはできませんでした。北欧の家具ブランド、IKEAの撤退、世界的なコーヒーチェーン、スターバックスの休業、そしてファッションブランド、ユニクロの撤退。これらの企業はロシア市場において多大な影響を持つブランドであり、その動向は多くの市民の生活に密接に関わっていたのです。

しかし、これらの中でも特に大きな注目を浴びたのが、マクドナルドの事業休止でした。

ロシアでも人気!マクドナルド

ロシアでのマクドナルドの歴史は30年を超え、この間、同国の飲食業界に多大な影響を及ぼしてきました。

マクドナルドはロシアにおいて約850店舗を展開し、その大部分、約84%が直営店で運営されていました。これほどまでに広範囲にわたり事業展開を行っていた背景には、ロシア市場のポテンシャルの大きさがあります。この巨大チェーンがロシアとウクライナで記録した2021年の売上は、約20億ドルにのぼり、その全体の売上に占める割合は約9%を形成していたのです。

ABC News/YouTube

ロシア・ウクライナ店舗を一時閉鎖、従業員への給与支払いは継続

2022年3月8日、マクドナルドはロシア国内の約850店舗の営業を一時停止する決断を下しました。この発表は、ウクライナへのロシアの軍事介入を背景としており、クリス・ケンプチンスキーCEOは「ウクライナでの状況を看過することはできない」との理由を述べました。

マクドナルドは、長年にわたり地域社会への貢献を主旨としており、ロシアでは6万2千人の従業員が勤務し、多くのサプライヤーや地域のパートナーと連携してきました。また、ウクライナでは108店舗が営業を停止することとなり、この両国での従業員への給与支払いは継続するとのことでした。

しかし、今後の再開の時期については現時点で予測がつかないといいます。マクドナルドがロシア及びウクライナでの事業を主に直営店舗で展開していることから、この決断は経営への大きな影響をもたらすとみられている。これに対し、マクドナルドは従業員の支援として500万ドルの寄付を行うことと報じられていました。

撤退しないマクドナルドに対してのボイコットの呼びかけ

この決定の背後には、ロシアがウクライナへの軍事介入を開始して以降、アップル、ナイキ、ゼネラル・モーターズ、リーバイスなど、多くの米国の企業がロシア市場でのビジネスを即座に中断したことが挙げられます。このような大手企業が一斉にビジネスを停止する中、マクドナルドは営業を継続しており、多くの注目を集めました。

特にインターネット上での反応は鋭く、多くのユーザーからマクドナルドのボイコットを呼びかける声が上がっていました。SNSでは、マクドナルドを中心とした議論が活発化し、ツイッターでは週末にそのトピックがトレンド入り。世間の厳しい視線がマクドナルドに注がれていたのです。

この発表後にマクドナルドに行列

マクドナルドがロシア国内での営業を一時休止すると発表した直後、3月8日の夕方のモスクワ市内の「マクドナルド」前には異常な長蛇の列ができていました。多くのモスクワ市民は、30年以上の歴史を持つこのチェーンが閉店するのかもしれないとの懸念から、最後の一食を求めて足を運んだのです。

列に並んでいたあるロシア人は、「昔、マクドナルドがモスクワで初めて開店したとき、人々は新しい食文化に興味津々で店の前に並んだ。親父がその話をよくしていた。そして今、再びこうして並んでいる。理由はまったく異なるが、歴史には皮肉な回りくどさがあるようだ」とは感慨深く語っていました。

翌日の3月9日には、世界中のSNSにはモスクワのマクドナルドの店舗やドライブスルーに長蛇の列ができている様子が投稿されました。

後日、ハンバーガを転売する人も

また、驚くべきことに、一部の人々は「さっき購入したハンバーガーを宅配します」と称して、これらの商品を驚異的な価格、約3〜4万円でオンライン上で転売する現象も起きていました。

冷戦に終わりの象徴 マクドナルドが一時閉店と営業停止を発表

3月12日にはロシア国内の全店舗を一時的に閉店するという衝撃の発表を行いました。事業再開の目処が全く立っていない状況の中で、多くの従業員や消費者は不安や期待を抱きつつ、現在の状況を受け入れざるを得ない状況となりました。

その中で、ベラルーシの反体制派メディア「NEXTA」が公式ツイッターに投稿した動画が話題になりました。その動画には、店舗閉鎖直前のマクドナルド店内で、従業員たちが手を取り合い、歌を歌いながら踊る姿が収められています。彼らの明るい笑顔とは裏腹に、その背後に潜むのは一時的な閉店に伴う不安や寂しさが感じられました。

6万2000人という大勢の従業員にとって、突然の閉店発表は大きな衝撃となりました。しかし、マクドナルドは従業員の給与の支払いを続けるという対応を示し、少しでも従業員たちの不安を和らげる努力が見られました。

ドナルド・マクドナルド・ハウスは継続

一時的な店舗閉鎖という重大な決断を下したマクドナルドですが、その一方で社会への貢献活動に変わりはないとの立場を明らかにしました。特に医療機関と連携して世界中に設置している人道支援施設「ドナルド・マクドナルド・ハウス」について、ロシア国内での運営は今後も継続するとの発表がありました。

「ドナルド・マクドナルド・ハウス」は、重い病気や手術を必要とする子供たちとその家族が医療施設の近くで過ごすことができるように提供される宿泊施設です。子供たちが治療を受ける間、家族が一緒にいられることで、心のサポートや安らぎを提供しています。

マクドナルドのこの決定は、数多くの困難な状況に直面している家族や子どもたちへのサポートが継続することを意味し、社会への責任のあり方を象徴しています。企業がビジネスを中断しても、コミュニティに対するサポートや責任は続けていくべきだという強いメッセージが、この決定に込められていました。

「Uncle Vanya’s」頭マクドナルドの撤退後のロシアフード業界

マクドナルドのロシアからの一時的な店舗閉鎖は、国内外で驚きのニュースとなった。しかし、このニュースが落ち着く前に、新たな話題がロシアのフード業界を席巻しました。それが「Uncle Vanya’s」です。

新ブランド「Uncle Vanya’s」の展開

マクドナルドの撤退発表から数日を経たないうちに、ロシア議会は新たなファーストフードチェーン「Uncle Vanya’s」の展開を検討し始めました。モスクワ市長は、首都モスクワにある250のマクドナルド店舗を1年以内にこの新しい国内チェーンに置き換える計画がある発言。さらに、食材の99%がロシア産となり、欧米マクドナルドよりも取引の都合が良くなるとされていました。

興味深いことに、この新しいブランド「Uncle Vanya’s」のロゴは、マクドナルドの有名な「M」を元にしており、それを横向きにしたキリル文字の「B」(Vanya’sの「V」を示す)としてデザインされています。このデザインは、ロシア国家院議長ヴャチェスラフ・ヴォロージンが「ロシア版マクドナルドを持つべきだ」との発言の後、特許出願されたものとのことです。

市場への反応

この新ブランドがどれほどの成功を収めるのか、また、市場での実際の受け入れられ方はまだ未知数です。しかし、既にSNS上では多くの議論が交わされており、特にTwitter上での言及が増えている。ロシアの消費者は新しいブランドをどのように受け入れるのか、また、国際的な反応はどうなるのか、今後の動向が注目されています。

TheTech Outlook/YouTube

撤退した店舗が水餃子の店に代わる可能性

3月30日、ロシアのマトビエンコ上院議長は、ウクライナ侵攻への抗議としてロシアから一時撤退を選択した外国企業についての見解を述べました。その中で、外国企業の資産差し押さえには反対するとした上で、これらの企業がロシアに戻らない場合、現地企業がその資産や経営権を取得する可能性があるとの立場を示しました。

特に、マクドナルドを例に挙げて、マトビエンコ議長は「モスクワでは既に提案が寄せられている」と述べ、同社の店舗がロシア伝統の「ペリメニ」(水ギョーザとも呼ばれる料理)屋や他のロシア式食堂に変わる可能性も考えられると語りました。

しかし、議長は強硬な態度だけを示すわけではなく、「残るか去るかは今後、自ら決めることだ」との立場を表明し、外国企業に対しての翻意を求めるメッセージも発信しました。これは、外国企業との関係修復や経済的な安定を求めるロシアの意向を反映していると解釈することができます。

テレ東BIZ/YouTube

マクドナルドがロシアからの完全撤退を発表

5月16日、マクドナルドは公式にロシア市場からの撤退を発表しました。3月18日の発表ではロシア内での事業一時停止が通告されていましたが、今回の発表で完全撤退が明らかになりました。同社はロシア撤退に伴い、約12億から14億ドルの非現金費用を計上する見込みと語りました。

この撤退は、主に「ウクライナ戦争に起因する人道危機と予想できない事業環境」を理由に挙げています。同社は、「ロシア事業の保有はもはや継続できないとの結論に至った」と明言しています。リス・ケンプチンスキーCEOは、社員とサプライヤーへのメッセージで「これは前例のない、重大な結果をもたらす複雑な問題だ」と語り、同社のこの難しい決断を共有しました。

ケンプチンスキーCEOはさらに。「食料を供給し、何万人もの一般市民を雇用し続けることは、確かに正しいことだと言う人もいるかもしれない」としながらも、「しかし、ウクライナでの戦争による人道的危機を無視することはできない。また、我々のロゴである『ゴールデンアーチ』が、32年前にロシア市場に参入した時と同じ希望と約束を象徴しているところを想像できない」と強調しました。

マクドナルドのロシア撤退は、ウクライナでの現地の紛争がもたらす国際的なビジネスへの影響の象徴となりました。

ロシアでのブランド維持を強調:「アーチ外し」の意味とは?

マクドナルドがロシア事業の売却と評価損の計上を発表した際、特筆すべきポイントが「アーチ外し」の方針です。この言葉自体が新しいものかもしれないが、それが意味するところは非常に明確です。それは、売却後のマクドナルドの店舗が、もはや「マクドナルド」の名の下で運営されないということです。

これ以降、新たなオーナーは「マクドナルドの名称、ロゴ、ブランディング、メニュー」を使用することはできなくなります。これは、マクドナルドが自社のブランド価値を非常に高く評価しており、特にロシアという特定の市場において、そのブランドを保護・維持したいと考えているからでしょう。商標権の維持という方針からは、将来的にはロシア市場への再参入も視野に入れていることも垣間見えます。

マクドナルドCEO、ロシア撤退も「再会の希望」を訴える

「さよならではなく、また会う日まで」

マクドナルドがロシア市場からの撤退を発表した後、同社の最高経営責任者(CEO)クリス・ケンプチンスキー氏が従業員への手紙で感謝の意を示しました。その中で、「未来の予測は不可能だが」と前置きしながら、マクドナルドが32年にわたってロシアにもたらしてきた「希望」という価値について触れました。

この「希望」は、マクドナルドがロシアの人々に提供してきたサービスと、それを支える多数の従業員たちの努力によって育まれてきました。多くのロシア国民にとって、マクドナルドは西洋の文化や価値観、そして高いサービス基準を体感できる場となっていました。

CEOの言葉は、現在の政治的・経済的状況にもかかわらず、マクドナルドがロシアに対して持ち続ける感謝と希望を強調するものでした。

BBC News/YouTube

マクドナルドの事業をロシアの実業家「アレクサンドル・ゴボル」に売却

シアにおけるマクドナルドの撤退は国際的な注目を集める事態となったが、その後の展開はさらに驚きの連続だった。撤退発表のわずか3日後、実業家アレクサンドル・ゴボルがロシアにおけるマクドナルドの事業を手に入れることが明らかとなった。

アレクサンドル・ゴボルは石炭産業を中心に財を築き、その後ホテルやレストランチェーンといった分野へ進出。特にシベリア地方でのマクドナルドのチェーン運営の経験は、この取引において彼の資質を裏付けるものとなった。UAEでの極秘交渉を経て、6万2000人の従業員の雇用維持や給与支払いという条件のもと、マクドナルドの事業を「格安」で取得したとゴボル氏は語っている。

この取引は、マクドナルドの撤退という外資撤退の象徴的な事例に、新たな展望をもたらした。ゴボル氏は今後の事業展開に意欲を燃やし、店舗数を現在の850店から1000店へと増やすことを計画しているとのこと。これは、彼のビジョンと経営手腕によって、ロシアのファーストフード業界に新たな変革がもたらされる可能性があることを示唆している。

この一連の展開は、政権にとっても好意的に受け止められている。ロシア政府は、外資撤退の流れを逆行させることなく、国内企業としての再スタートを支援し、事業の成功を追求している。マクドナルドの撤退という出来事が、政府と実業家の連携によって新たなビジネスの機会へと変わっている様子は、ロシア経済のレジリエンスと柔軟性を物語っている。

後継企業の展望と取引の進行

その後、後継企業の方針が徐々に明らかになってきました。

オレグ・パロエフCEOの下、新たな経営体制は積極的な再開と拡大を目指しています。具体的には、6月末までに200店舗、そして夏の終わりまでには既存の850店舗すべての営業を再開するとのこと。さらに新しい店舗の開設も計画されていることから、この事業の拡大と成長への期待感が高まっています。

事業の承継に関しては、前従業員6万2000人の雇用が継続されるとの報告があり、従業員やその家族にとっても安堵のニュースとなりました。

当局の承認を得ることで、取引はスムーズに進行中であり、今後数週間でその完了が予想されています。

さらに、タス通信をはじめとする情報源によれば、シベリア地方でフランチャイズとして25店舗を運営していたロシアの企業に対しても独特の取引が行われました。具体的には、マクドナルドが15年以内にロシアでの事業を再開する際には、全店舗を買い戻すという条件での売却がなされたとのこと。

サンクトペテルブルクの店舗においては、マクドナルドの象徴ともされる黄色の「M」の看板が撤去される様子が目撃されました。これは、マクドナルドのロシアからの撤退と、新たな経営体制への移行を象徴する出来事となりました。

このような状況の中、新経営体制のもとでの事業の再開と展開が、ロシアの食品業界や労働市場、さらには経済全体にどのような影響を及ぼすのか、今後の動向が注目されます。

Bloomberg Quicktake: Now/YouTube

ロシアの日にオープン!!その名も「フクースノ・イ・トーチカ」

米マクドナルドがロシアから撤退し、そのビジネスがロシアの実業家へ売却されたことから約1ヶ月後、新しい展開がロシアで進行しています。6月12日、ロシアの祝日「ロシアの日」に、新ブランド「VKUSNO I TOCHKA(ヴクスノ・イ・トーチカ、直訳:おいしい、それだけ)」が、新規店舗として開店しました。この展開は、マクドナルドの既存のインフラを基にして行われ、15の店舗がモスクワ市とモスクワ州内で営業を開始しました。

新ブランド「VKUSNO I TOCHKA」は、店舗の標語に「名前は変わっても愛はそのままだ」と掲示し、正午の開店をカウントダウンと共に祝いました。顧客は、オーダーをする際にタッチパネルとカウンターの2つの方法から選ぶことができます。

興味深いことに、新ブランドは、ハンバーガーのレシピを変えず、マクドナルド時代の機材をそのまま使用していると説明しています。これは、消費者に対して馴染みのある味を提供し、事業の途切れを最小限に抑える戦略と見ることができます。そして、7月中旬までには、全ての850店舗がオープンする予定です。

この新しい展開はロシアのファーストフード市場において新たな章を開くもので、現地でのビジネスモデルがどのように展開していくのか、既存の顧客が新ブランドをどのように受け入れるのかなど、多くの観点から今後の展開が注目されました。

Guardian News/YouTube
マクドナルドを超えることが目標!?オレグ・パロエフ社長が記者団に語る

ロシアの新たなファーストフードチェーンである「フクースナ・イ・トーチカ」は、米国のマクドナルドの業績を超える目標を掲げており、業界での新しい展開が進行中です。オレグ・パロエフCEOに「我々には、過去の結果を上回るチャンスが十分にある」と述べており、ただマクドナルドの成功を再現するだけでなく、2021年、マクドナルドが記録した最も高い業績をも上回るつもりだと語りました。

新しいロゴマークがモスバーガーっぽい?

ロシアの新たなバーガーチェーン、「フクースナ・イ・トーチカ」のロゴが、国内外で話題になりました。

ロゴは、2本の黄色のフライドポテトとオレンジ色の点で「M」を形作っており、2本の線はフライドポテトを、円はハンバーガーを象徴しているとされています。一方で、このロゴがポルトガルのペットフードメーカー「マトス・ミックス」に類似していると指摘する声や、ロシアのテレビ司会者、クセーニャ・ソプチャクからは「陰鬱」で「醜悪」と批判されています。

海外では特に、日本発のハンバーガーフランチャイズ「モスバーガー」のロゴに類似しているとの声が上がっています。これに対して、日本のインターネットユーザーからも注目を集め、不思議な反応が見受けられるなど、ロゴにより国際的な議論が巻き起こりました。

日本でも、ロシアの「フクースナ・イ・トーチカ」のローンチとそのロゴのデザインが広まり、多くのネットユーザーがその独自性や類似性について意見を交わしています。特にヤフージャパンの関連記事やコメント欄には、多くの日本のネットユーザーが興味深いとの反応を示しています。

マクドナルドのメニュービッグマックなどは除外された

「フクースナ・イ・トーチカ」の開店時、モスクワの店内ではプラカードを掲げた若者たちが「ビッグ・マックを返せ」と抗議しました。昔ながらのマクドナルドのメニュー、特にビッグマックやマックフルーリーなどが、商標権の関係で新メニューから消えてしまったのです。

新しいメニューは一部のアイテムの価格が以前のマクドナルド時代よりも安くなっています。例えば、ダブルチーズバーガーは約160ルーブル(約370円)から129ルーブル(約300円)に、フィッシュバーガーも190ルーブルから169ルーブルに値下げされています。しかし、新しい経営陣は、利用客がこの違いをあまり気づかないことを期待しています。

オレグ・パロイエフCEOはモスクワのプーシキン広場で開催された記者会見で「品質や雰囲気が変わったと、お客さんたちが気付かないようにする。それが目標だ」と話しました。この場所は32年前、ソ連時代にマクドナルド1号店が開かれた歴史的な場所です。

開店当初はSNSで批判の声

ロシアの新ブランド「フクースナ・イ・トーチカ」に関する報道とSNSでの声は、全体的に賛否両論となっています。特に、伝統的な「ハッピー・ミール」の消失は大きな話題となっており、子供たちや親からの反応は概ねネガティブなものが多いようです。

テレビでは「祖国の製品を大切にしたい」との声が紹介され、ロシアの国産品を支持する意見が放送されました。一方で、SNSではメニューの内容の変更やアイスクリームの量の減少、ジュースの味が薄いなどの批判的な意見が目立ちました。

特に話題となっているのが、「ハッピー・ミール」の消失です。この理由として「おまけのおもちゃが調達できない」ということが挙げられています。ロシアの地元経済紙は「子供が悲鳴をあげる」という表現を使用し、子供たちや家族にとって「ハッピー・ミール」がどれだけ特別な存在であったかを強調しています。

品質とブランドイメージでの問題が多発

その他の多くの問題も話題になりました。

  1. 品質の問題:SNS上で「ハンバーガーにカビが生えていた」という投稿が話題になり、真偽の確認が求められています。また、既に「メニューの変更や量の減少」という不満も存在していたため、消費者の信頼がさらに揺らいでいるようです。
  2. 衛生管理の懸念:ハンバーガー用のパンを鳥がつつく映像がSNSに投稿され、店舗の衛生状況に対する懸念が拡大しています。
  3. ブランド名の問題:店名に関する論争も起こっており、ウラジオストクのカフェ経営者は新ブランドの名前が自分の店の名前を模倣していると主張しています。また、地元メディアは新ブランド名が「呼びづらい」という消費者の声を伝えており、ブランド名の定着にも課題があるとの報道があります。
  4. 製品管理の疑問
  5. 「製品管理のノウハウはマニュアルを引き継ぐだけでは身につかない」との意見がSNSで見られ、品質管理への不安が強まっています。

運営会社は、品質と安全性を最優先し、関連手続きに従って運営しているとコメントしていますが、消費者の不安や疑問を完全に払拭するには至っていないようです。

ロシアの新ファストフードチェーン、オープン初日に大行列!

様々な問題はありましたが、ロシアで新たにスタートしたファストフードチェーンの店舗は、多くのロシア人が待ち望んでいたものであり、オープン初日から大繁盛しました。

大盛況の開店

オープン初日、店舗は正午に開店しましたが、その数時間前から既に長い行列ができていました。特にプーシキン広場の店舗では、1990年12月にロシア初のマクドナルドとしてオープンした歴史を持つ場所として、最も多くの人々が集まりました。ソーシャルメディア上でも、まるで1990年に戻ったかのような興奮の声が多く見られました。また、その日のスタッフは、1990年と同様に風船を手にして客を迎えていました。

以下は、その日の様子や来店者たちの声をまとめたものです。

市民の声と期待

  • アテム・キリエンコさん:「ダブルチーズバーガーの味はマクドナルドとほとんど変わらない。週に1度は訪れるつもりだ」と米CNNにコメント。
  • セルゲイ・ブラソフさん(19歳):「政治と食事は関連していない。ただ美味しいマクドナルドを楽しみたくて来ただけだ」と話し、ロシア軍を支持する「Z」のマークの入った帽子を被っていました。
  • ガリナさん(55歳):「マクドナルドがオープンしたときからよく来ていた。新しい名前は発音が難しいけれど、営業が再開されて嬉しい」と感じた。
  • ドミトリーさん(19歳):「毎日マクドナルドに来てエネルギーを補給していた。こんな場所は他にない」とコメント。
  • アンドレイさん(27歳):「マクドナルドは撤退したけど、ハンバーガーがロシアに残って良かった。新しいブランドがどれだけ人気を持つか楽しみ」と語った。
  • オリガさん(19歳):「店舗の再開はとても嬉しい。今日はシェイクとフライドポテトを注文したい」と明るい笑顔で話した。
  • ダニイル・トレシキンさん(20歳):「バーガーの味も、提供スピードも変わっていない」と感じていました。

初日のバーガーの売り上げは個数は脅威の約12万個!!

オープン初日、驚愕の約12万個のハンバーガーを売り上げました。この数字は、かつてロシアで営業していたマクドナルドが経験したことのない日間販売数であるとCEOのオレグ・パロイエフは語っています。

CEOのコメントと今後の方針

オレグ・パロイエフCEOはロイターとのインタビューで、このような大きな需要が長期間続くことは予想していなかったと明かしました。一方で、実業家のアレクサンドル・ゴボルが掲げた目標を早期に達成できるように尽力するとも語りました。ゴボルは店舗数850を次の4〜5年間で1000に増やすという野心的な方針を持っています。

さらに、パロイエフCEOは、ロシア最大の銀行であるズベルバンクからの出資を受ける計画は今のところはないと明言しました。しかし、ズベルバンクとの戦略的な提携関係を強化することは前向きに検討していると明かしました。

新ファストフードチェーンの展望と課題

このように、オープン初日から大盛況を収め、さらに店舗拡大を図る一方で、原材料の調達に関する課題が浮上していました。

ウクライナへの侵攻を巡り、ロシアは国際的な全面的な経済制裁の影響を強く受けています。この結果、自動車部品からトイレ、さらにはハリウッドの新作映画に至るまで、ロシア国内での商品やサービスの不足が生じています。このような背景の中、食品業界も例外ではなく、国外からの原材料の輸入が困難になっていると見られています。

パロイエフCEOによれば、新規のサプライヤー探しや、国内での原材料の供給強化が必要となる可能性が高いとのこと。特に、この新ファストフード店が今後さらに店舗数を増やしていく予定であることを考えると、持続可能な供給網の構築が不可欠となるでしょう。

経済制裁の影響を受けながらも、ロシアの消費者からの高い支持を受けているこのファストフードチェーン。今後の原材料調達の動向やサプライヤーとの連携が、その成功を左右する大きな要因となることは間違いありません。

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