恐ろしい出来事が世界に訪れました。人類史上初めて、原子力発電所を標的にした戦争行為が実行されたのです。
原子力発電所は、現代社会において電力供給の要となっており、クリーンで持続可能なエネルギー源として広く利用されています。しかし、同時にこれらの施設は適切な保護が必要な脆弱なターゲットでもあります。ロシア軍の原発攻撃は、その脆弱性を突いた挑戦的で危険極まる行動であり、国際社会は深刻な懸念を抱きました。
この記事では、その背後にある動機、計画の推移、そして世界中で広がる恐怖について詳しく取り上げていきます。
【ウクライナ危機(44)】アジアのリーダーとして…ウォロディミル・ゼレンスキーが日本国会で語るメッセージ
Ukraine Nuclear Power Plant Attack
危険すぎる……。ロシア軍による原子力発電所への攻撃
2022年、ロシア軍がウクライナの原子力発電所を標的とした攻撃が行われ、国際社会はその規模と意図に大きな衝撃を受けました。
ウクライナとロシアとの間には、クリミアの併合をきっかけとする長年の対立がありました。しかし、核施設を標的にするという事態は、これまでの戦争の歴史においても前代未聞のものでした。
原子力大国「ウクライナ」
ウクライナは、世界で数少ない原発大国の一つである。この国には4カ所に15基の原発が存在し、発電量に占める原発の割合は50%を超えています。しかし、人類史上最悪の原子力事故を引き起こしたチェルノブイリ原発での発電は2000年に停止されました。
ウクライナの原発依存の背景
それでもウクライナが原発を使い続ける背景には、エネルギー安全保障とロシアからの独立があります。ウクライナのエネルギー戦略とは、実質的には「脱ロシア依存」を意味すしています。ウクライナは独立以降、ロシアからの天然ガスと石油輸入に依存してきましたた。そのため、エネルギー供給を確保するために、原発を活用してきたのです。
ロシアとの関係がパイプラインというインフラによって固定化されている現状は、ウクライナにとって非常にリスクが高いものでした。特に政治的な緊張が高まる中では、エネルギー供給の安定性が懸念されていました。
現在の原発の稼働状況
2023年2月24日のロシアの侵攻時、ウクライナ国内の15基の原発のうち13基が稼働中でしたが、この侵攻以降、稼働する原発の数は減少しています。それでも、現状ウクライナの発電は約60%が原発に依存しており、それらの原発を停止すると電力不足となる可能性が懸念されていました。
「ロシアの核戦力」プーチン大統領の脅しと国際的緊張
ロシアは世界の数少ない核保有国の一つですその核戦力は、冷戦時代の遺物であり、現在も国際的な戦略均衡を保つ一因となっています。
核兵器は非常に破壊力が高く、全人類にとって非常に危険な存在です。そのため、国際社会では核兵器の拡散防止や軍縮が重要な課題とされています。
多くの国が核兵器の保有を制限するための条約に署名し、核兵器の使用を禁止するための取り組みが行われています。これにより、世界の平和と安全を守るための努力が続けられています。
ロシアはウクライナへの軍事侵攻を開始した2022年2月24日に、プーチン大統領は、あろうことか核保有国という立場を利用し「ロシアは核保有国の一つ。攻撃すれば不幸な結果になる」という脅迫を行いました。この発言は国際社会に大きな懸念をもたらしました。
核戦力を前面に出し、脅威を高める
ロシアのプーチン大統領は、侵攻の数日後の2月27日、国防大臣および参謀総長に対し、“核抑止部隊”を「特別の臨戦態勢」に移行するよう命じました。これは、ロシアの核兵器を使用する意志を示す強いメッセージであり、明確な威嚇と解釈されています。
「核抑止部隊」とは?
「核抑止部隊」とは、ロシアが持つ核兵器を運用するための軍部隊を指す。これには、陸上・海上・空中発射の核ミサイルや爆弾を保有・運用する部隊が含まれるています。
プーチン大統領の核武装をちらつかせる動き
つまり、プーチン大統領は、ウクライナに対する野望を最悪のシナリオである核兵器を使用してでも実現するという意向を示す行動をとった。このような動きには、国際的に強い非難が向けられており、多くの国がその危険性を強く感じている
プーチン大統領のこの動きは、ウクライナに対する野望を、最悪核兵器を使用してでも実現するという意向を示す行動と捉えられました。このような動きには、国際的に強い非難が向けられており、緊張が高まる中で、平和的解決を求める声が多く挙がりました。
ウクライナの核放棄とロシアの安全保障と裏切り
冷戦終結後、ウクライナは領土内に残された核兵器を放棄しました。この放棄は、1994年のブダペスト覚書の一環として、ウクライナ、ロシア、アメリカ、イギリスの間で合意された。この覚書の中で、ロシアはウクライナの主権と領土保全を保障していました。
しかし、今回のロシアの行動は、その約束を完全に反故にするものとして多くの国際的な非難を受けました。
ウクライナの核施設、ロシアの攻撃のターゲットとなる
2022年2月24日にロシアがウクライナへの侵攻を開始し、ロシア軍はまず1986年の大規模な原発事故で知られるチェルノブイリ原発を占拠しました。国際原子力機関(IAEA)のグロッシ事務局長は、ロシアに対し、ウクライナの核施設を危険に晒す行動を控えるよう強く求めました。
しかしその後も、ロシアの攻撃は止まりませんでした。2月27日にはキーウ郊外の放射性廃棄物処分施設(Kyiv SISP)がミサイルで攻撃され、3月4日には欧州最大規模のザポリージャ原発がロシア軍により制圧されました。
さらに、3月6日にはウクライナ第2の都市ハリコフの原子力研究施設が攻撃され、変電所が破壊されるなどの被害が出ました。
ロシア軍は、その後も4基の原子炉を持つ南ウクライナ原発に接近しており、原発の近くでの戦闘が続いています。これにより、同原発にも大きな危険が迫っていました。
ゼレンスキー大統領のロシア軍の原発攻撃に対するコメント
「ロシア国民にお聞きしたい。なぜこのようなことが可能なのか。私たちはチェルノブイリの大惨事で共に戦いました…覚えていますか?爆発音とともに燃え盛る黒鉛が空から降り注ぐ光景を。放射能はロシアの国境がどこにあるかどうかは関係ありません」
ウクライナのゼレンスキー大統領は、ロシア軍によるウクライナの原発攻撃を非常に深刻に受け止め、その行動の根拠と危険性についてこのようにコメントしました。
この言葉は、1986年のチェルノブイリ原発事故の記憶と、その際の両国の協力を強調するものでした。
戦慄!!人類の歴史上初めて原発がターゲットにされた戦争
ウクライナでの原子力発電所における戦闘は、未曾有の事態であり全人類に衝撃を与えました。これまでの核セキュリティの議論や方針は、主に「非国家」主体、すなわちテロリストによる攻撃を前提としていました。しかし、ウクライナでの事態は、その概念を大きく変える必要があることを示しました。
過去のケースでは、1981年にイスラエルがイラクの原子力研究炉を空爆した事件があります。この攻撃は、核兵器開発の懸念から実施されました。しかし、それはあくまで研究炉への攻撃であり、商業用の原発が戦時下に、特に市街戦のような状況で攻撃されることは、これまでの歴史上類を見ないものでした。
2010年には、当時にアメリカの大統領オバマの呼びかけで核セキュリティ・サミットが開始されました。このサミットでは、核関連施設のセキュリティを強化するための国際協力が中心となっていました。しかし、その議論の中心は、非国家主体、つまりテロリストによる物理的やサイバー攻撃に対する対策であり、国家間の戦争におけるリスクは十分には考慮されていませんでした。
今回のウクライナでの事態は、戦争状態下での原発の安全性という、新たなリスクを浮き彫りにしました。もし、このような状況で原発が大事故を引き起こすことになれば、その結果は人類史上未曾有のものとなるのは確実です。
ロシアの原発攻撃と国際秩序の揺らぎ
ロシアがウクライナの原発に対して軍事攻撃を行ったことは、国際的な合意と条約を無視する行為として大きな懸念を生んでいる。ロシア(旧ソ)自体が批准して締結されたジュネーブ条約には、原発などの重要施設への攻撃が禁じられており、その背景には、もし被害が発生した際の住民への影響の甚大さが理由として挙げられる。
原子力発電の利用は「原子力の平和利用」として国際的に認められているもので、これは核不拡散条約の3本柱の1つとして位置付けられている。平和利用の大前提として、国際法に基づき、他国を侵略することなく行われるべきです。
しかし、今回ロシアが原発への攻撃を行ったことで、第2次世界大戦後の国際秩序における「原子力の平和利用」という基盤が揺らぐこととなりました。加えて、ロシアが核兵器の使用をちらつかせることは、核保有国としての責任を放棄する行為と言えます。
ロシアの原発攻撃は、核兵器の使用と同等の影響をもたらす可能性があり、これを行った国が核保有国であるというのは、極めて深刻な事態でした。
原発の防護と国際秩序の維持
今回の攻撃は、他の国々にも影響を及ぼす可能性があります。ロシアの行動を模範とすることで、原発が将来的に他の国によっても攻撃の対象とされるリスクが高まってしまったのです。
今の国際秩序の中では、交戦国であるロシアにジュネーヴ条約を守るように促し、原発攻撃を止めるように訴えるしかありません。しかし、このような訴えだけで、実際の戦場での事態を十分に制御することは現実的はありません。
一方で、原子力発電所を武力攻撃に対して完全に耐えうるものとするのも、技術的、経済的な面から見ても現実的ではありません。
そのため、原子力施設が戦争の最前線にさらされるリスクを最小限にするための国際的な取り組みを進めるしか方法がありません。
ウクライナの原発危機と被爆者の声
ウクライナの原発危機は、世界中の人々に深刻な懸念を抱かせていました。
日本からは、2011年の福島第一原発事故を経験した人々や、広島・長崎での原爆投下を生き抜いた被爆者たちから、強い抗議の声が上がっています。
歴史的背景から考えると、被爆者たちにとって、ウクライナやロシアとの絆は非常に深いものがあるます。1986年のチェルノブイリ原発事故後、被爆者としての共通の経験を持つ日本とソ連(後のロシア)の間で、交流が進められてきました。
これまでの交流を通じて、被爆者たちは両国の学生や市民との友情を築き上げてきました。その深い絆から「争いをやめてほしい」と心から訴えました。
「許せん。核による威嚇で世界を恐怖に陥れている」
被爆者の一人、高東征二さんはこれまでも核の脅威を強く訴えてきましたた。原爆投下後の「黒い雨」の被害者であり、その後も続く放射線の影響を身をもって知っている経験から「核兵器でも原発でも、放射線を浴びれば深刻な健康被害を受ける」と警鐘を鳴らし、さらに「核と人類は共存できない。人類そのものを滅亡させる恐れがある」と強く非難しました。
広島県原爆被害者団体協議会の佐久間邦彦理事長は、原発の爆発が起こるとその影響は広範囲に及ぶと警告。特に「死の灰」とも呼ばれる放射性物質が流れ、ロシアを含む多くの地域が壊滅的な状態になる可能性を指摘しました。
一体なぜ?ロシア軍が原発を攻撃した本当の目的
ロシア軍がウクライナ国内の原子力発電施設をターゲットにしている事実は多くの国際的な関心を引きつけています。その背後にはどのような戦略や目的が隠れているのでしょうか?
1. 政治的影響: ウクライナのエネルギーインフラを掌握することで、ロシアはウクライナ政府に直接的な圧力をかけることができます。エネルギーは国家の安定や経済の動きに直接的な影響を及ぼすため、このような占拠行為はウクライナ政府の交渉力を大きく低下させる可能性があります。
2. 経済的影響: エネルギー供給の中断や不安定さは、ウクライナの経済に大きな打撃を与える可能性があります。工業生産、農業、日常生活など、さまざまな分野での活動が停滞する恐れがあります。
3. 心理的影響: 重要なインフラが外部の力によって脅かされることで、ウクライナ国民の間に不安や恐れが拡がる可能性があります。これは、ロシアがウクライナの抵抗力を弱めるための戦略の一部として利用されるかもしれません。
また、ロシアの原発攻撃は、地理的・戦略的な利点を追求する意図があると見られます。
ロシア軍の戦略とチェルノブイリの位置
米シンクタンク「トルーマン国家安全保障プロジェクト」のサマンサ・ターナー研究員の見解によると、ロシア軍がチョルノービリ周辺を掌握することで地理的・戦略的に有利になるといいます。す。
ドニプロ川の重要性
ドニプロ川はウクライナの主要な河川として知られ、その支配は軍事的に大きな意味を持ちます。この川を北上すると、ロシアと緊密に連携するベラルーシに到達することができ、逆に南下するとキーウ、ウクライナの首都へのアクセスが可能になるからです。ターナーはこの川の重要性を強調し、ロシア軍が部隊の移動のために複数の回廊を開き、主要地域を支配するとの見解を示しました。
原子力発電所の占拠の意図
ロシア軍がチェルノブイリ原発を占拠することの背後には、それを戦略的な盾として使用する目的があると指摘してました。原発周辺をミサイル基地化することで、万が一の戦争の際にNATO軍が攻撃できないような状況を作り出すことが可能となります。
この戦略は、NATO軍が放射能のリスクを冒して攻撃することを避けるため、チェルノブイリ原発周辺を軍事基地化することで達成されると考えられます。
ロシアのウクライナ侵攻と核兵器の懸念と矛盾
2022年2月24日、ロシアのプーチン大統領はウクライナ侵攻を発表する演説の中で、ウクライナのゼレンスキー政権が「核兵器保有を要求している」と主張し、「それを受け入れることはできない」と非難しました。
さらに、NATOに支援されたウクライナの「ネオナチ(極右主義者)」との対立について触れ、「ロシアとの対立は避けられない」と述べ、軍事的行動の正当性を主張しました。
ウクライナの核歴史
ウクライナが一時期核武装国家であったことは、その後の動向を理解する上で重要な背景情報となっています。ソ連の崩壊後、ウクライナは短期間、核武装国家の地位を有していましたが、ブダペスト覚書に従い、核兵器を放棄しました。その取り決めには、ロシアからの安全保障の約束も含まれていました。
再びの核武装化への動き?
近年のウクライナの政治的変動、特にNATOとの接近を背景に、プーチンはウクライナが再び核武装化を目指しているのではないかとの懸念を持っています。これがロシアのウクライナ侵攻の一因となっているとの見方も存在します。
ロシアの二重基準
しかし、このような懸念を口にする一方で、プーチン大統領が米欧を威嚇する行動は、多くの国際的な観察者から二重基準として受け取られています。ロシアが自国の利益のために核の脅威を利用しながら、ウクライナに対しては核武装の可能性を完全に否定する姿勢は、多くの疑問を呼び起こしています。
ウクライナの核関連の情報戦:真実とプロパガンダ
2022年のロシアによるウクライナ侵攻は、多くの情報戦が展開されています。
特に、ロシアが発するプロパガンダの一つとして、「ウクライナが秘密裏に核兵器やダーティーボムを開発している」というものがあります。
ロシアの主要メディアが、ウクライナが核兵器やダーティーボムを製造していたと報道しました。しかしこれは、ロシアの情報機関からの情報をもとにしたものであり、真相は不明です。
ウクライナ側は、ロシアのこれらの主張を強く否定。ウクライナ原子力公社はウザポリージャ原発の占拠に関して、ロシアのジャーナリストたちが原発に足を踏み入れたと報告しており、ロシアが「ウクライナの核開発に関する虚偽の情報を発表する可能性がある」とSNS上で注意を促していました。
ロシアメディアの主張と専門家の疑問
ロシアの主要メディア、特にタス通信は、ウクライナが核兵器やダーティーボムを製造していると報道しており、その情報源としてロシア軍や情報機関を引き合いに出している。
更に、チェルノブイリ原発の占拠を正当化するかのような報道をしており、それによれば、この行動によってウクライナ政府が核廃棄物を軍事的に利用するリスクが減少したとしている。
しかし、これには専門家からも疑問の声が挙がっている。軍事ジャーナリストの前田哲男さんは、ダーティーボムの概念についての誤解を指摘している。
ダーティーボムは、放射性物質を用いたものであって、核爆発を伴うものではない。この爆弾は、放射性物質で敵のリソースを汚染することを目的としており、その名称は長い間使われてきたものだと前田さんは述べている。
また、現在の状況でウクライナ側がどのようにしてこれを使用するのか、その根拠となる説明が乏しいとも指摘している。
さらにに、軍事ジャーナリストの黒井文太郎さんも、ロシア軍の行動についての疑問を呈している。ロシア軍がベラルーシからキエフに向かって進行中に、チェルノブイリ原発を占拠したのは、単に途中の地点であったウクライナ軍との衝突を経てのもので、それ以上の背景はないのではないかとの見解を示している。
その他にも、ロシア側の発表が信頼性を欠いているとの指摘は多く、ロイター通信もロシアの「信頼できる関係者」からの情報として伝えているが、具体的な証拠は示されていないと報じてます。
ダーティーボムとは
ロシア軍が占拠したザポリージャ原発や、チェルノブイリ原発への攻撃以降、このようなプロパガンダが展開されました。
ザポリージャ原発の占拠に関して、ウクライナ原子力公社はロシアのジャーナリストたちが原発に足を踏み入れたと報告。さらに、ロシアがウクライナの核開発に関する虚偽の情報を公表する可能性があるとの警告をSNSで行っていました。
これを証拠として引き合いに出されることが増えてきた。しかし、これらの主張の背後には、ウクライナに対する国際的な世論の操作を目的とした情報操作の可能性が指摘されている。
。これに対し、ウクライナ政府はSNS上でこれを一貫して否定している。
ももたらしている。特に、ウクライナが核兵器を再び開発・保有する動きがあるという主張がロシアからなされ、その情報戦は両国間の緊張を一層高めている。
ロシアの主張としては、ウクライナが核兵器やダーティーボムの製造を進めているというもの。特にロシア軍が占拠したザポリージャ原発や、歴史的なチェルノブイリ原発における動きが、これを証拠として引き合いに出されることが増えてきた。しかし、これらの主張の背後には、ウクライナに対する国際的な世論の操作を目的とした情報操作の可能性が指摘されている。
ウクライナ側は、ロシアのこれらの主張を強く否定。ウクライナ原子力公社の発表によれば、ロシアのジャーナリストたちがザポリージャ原発に入ることを許可され、その後の偽情報の拡散を警戒している。さらに、著名な軍事ジャーナリストである前田哲男さんや黒井文太郎さんからも、ロシアの情報が信憑性に欠けるとの声が上がっている。
実際、ダーティーボムは核兵器とは異なり、核爆発を伴わない。そのため、その名の通り「汚染」を目的とした兵器であり、古くからその存在が知られている。ロシア軍がチェルノブイリを占拠した背景についても、単純に軍事作戦の一環との見方が強い。
このような情報戦の中で、核関連の情報が繰り返し取り上げられる背景には、核というキーワードの持つ強いインパクトと、それを利用した情報操作の効果があると考えられる。今後も情報の真偽を見極めることが、この複雑な情勢を理解するための鍵となるだろう。
Russian forces seize Chernobyl nuclear power plant
チョルノービリ(チェルノブイリ)原子力発電所占領
ウクライナ侵攻の際に、ロシア軍がチョルノービリ(チェルノブイリ)原子力発電所を急速に占拠した行動は、国際的な懸念を引き起こしました。1986年の大規模な原発事故で有名なこの施設は、事故以後も放射線量が非常に高いため、特別な注意が求められる場所です。
侵攻初日の2022年2月24日、午後4時頃、ロシア軍とウクライナ軍は、チョルノービリ付近での戦闘を開始しました。僅か数時間後の午後6時頃、ロシア軍はチョルノービリ原子力発電所周辺地域を制圧。そして、翌25日には、さらに原子炉のサイトを占領しました。
ロシアとウクライナ、原発占拠の事実について対立
ロシアのウクライナ侵攻に伴う原発施設への動きは、その事実関係についても双方の間で意見が対立しました。
ロシア側は、ウクライナ国家親衛隊およびウクライナ軍と協力して、原発の安全確保に努めているとの立場を取りました。これに対、ウクライナ側は、ロシア軍が一方的に原発を掌握し、ウクライナ軍や国家親衛隊との共同作業などは存在しないと主張しました。
チェルノブイリ原発での停電と安全性問題
3月9日、ウクライナの国営原子力発電会社から、ロシア軍によって占拠されているチェルノブイリ原子力発電所で送電網に損傷が発生し、停電が起きているとの報告が出されました。この事態は、使用済み核燃料の冷却ができなくなることを意味し、放射性物質が大気中に放出されるリスクを伴うものでした。
ウクライナのクレバ外相は、「チェルノブイリ原発の予備電源がもつのは48時間だ。それを過ぎると、使用済み核燃料の冷却システムが止まり、放射能漏れが発生する恐れがある」とSNSで警告。さらに、ロシアに停戦と電力供給の復旧を緊急に求める国際的な協力を要請しました。
さらに、ウクライナの国営原子力発電会社も、原発には停電時に冷却が困難となる使用済み燃料集合体が約2万体存在しており、これらが過度に温まると、放射性物質が大気中に放出されるリスクが高まると指摘しました。
一方で、国際原子力機関(IAEA)は「使用済み燃料貯蔵プールの熱負荷と冷却水量は、電力供給がなくとも、効率的な熱の除去が可能である」と指摘し、チョルノービリ言発の停電が安全性に重大な影響を及ぼすことはないとの見解を示しました。
このような外部から電源供給を失っている中で、チョルノービリ原発の作業員は、非常用のディーゼル発電機を使用してなんとか施設内の作業を続けていました。
再度の損傷と続く対立
この問題に対して、3月10日、ロシア国防省はウクライナ側が損傷を受けた送電線の修理に進むことを許可したと発表。その夜には修理作業が始まったと伝えられ、ロシアのエネルギー省は、同原発が隣国ベラルーシからの電力供給を受けていると発表しました。
しかし、国際原子力機関(IAEA)は核物質監視システムのデータ送信は依然として停止しており、原発とウクライナ当局との間の伝達は電子メールのみで行われていると指摘していました。
ロシアが送電線修理を許可
ウクライナ北部のチェルノブイリ原発では、ロシア軍の掌握下での電力供給が途絶する状態が続いている。この問題に対して、3月10日、ロシア国防省はウクライナ側が損傷を受けた送電線の修理に進むことを許可したと発表。その夜には修理作業が始まったと伝えられ、ロシアのエネルギー省は、同原発が隣国ベラルーシからの電力供給を受けていると情報を公開している。
しかしながら、国際原子力機関(IAEA)からは、核物質監視システムのデータ送信が停止していること、および原発とウクライナ当局との間のコミュニケーションが電子メールのみで行われているとの報告がある。
ロシア軍によって再び損傷
3月14日、電力供給の問題が一時的に落ち着いたかに思われた矢先、再び送電線がロシア軍によって損傷されたとの報告がウクライナの国営電力会社ウクルエネルゴから出され、再びの緊迫した状況を伝えました。
この報告は、3月13日に一度は送電線の修理が完了し、電力の供給が再開され、多くの関係者や市民からは、電力供給の完全復旧に期待の目が寄せられていた矢先のことでした。
ロシア軍の完全撤退と健康被害の可能性
3月31日、ウクライナ北部のチョルノービリ原発で新たな局面が訪れました。
ウクライナの原子力企業エネルゴアトムは、ロシア軍が原発から完全撤退し、ウクライナ側が再び原発の管理を取り戻したことを明らかにしたのです。
さらに、ウクライナ政府機関も、SNSのフェイスブックで「原発の敷地内には外部の者は一切いない」との投稿を行いました。
この撤退の動きは、ロシアの国際的な非難への対応としての撤退と考えられていました。しかし、エネルゴアトムは、ロシア軍兵士たちが被曝していた可能性があると警告しました。
例えば、「彼ら(ロシア兵)は被曝の量が高かった。脱走や反乱の動きが確認されていた」との報告があります。さらに、他のメディアによれば、放射線の急性症状によってパニックになったロシア兵がいたという指摘もありました。
一方で、長期間の占拠下で働いていた原発の作業員たちの間にも疲労やストレスが蓄積していたことが懸念されていました。
現地の原発作業員の証言によれば、ロシア兵の多くが帰宅を望んでおり、情報へのアクセスが不足していたという。この証言から、ロシア兵の中には放射線のリスクや原発の現状について十分な情報を持っていなかった可能性が浮上しました。
放射線量が一時的に上昇
ロシア軍の占領下、チェルノービリ原発近くでの状況は急激に悪化しました。送電線が何度も切断・修復される中、大規模な火災が原発周辺で発生し、1万ヘクタールにも及ぶ土地が焼失しました。これにより、原発の電源供給が途絶え、サイト監視システムからの重要なデータの送信が停止しました。加えて、原発内部のシェルターの換気も停止、放射線量が一時的に高まる事態となりました。
具体的な原因はまだ完全には明らかになっていませんが、戦車による原発施設への直接的な被害や火災が、放射性物質の再浮遊とその後の広範囲な汚染の原因となった可能性が考えられています。
死のリスク……。放射性物質を略奪した疑惑
チェルノービリ原発の禁止区域にあるエコセンター研究基地では重大な事件が発生してました。区域の管理当局がフェイスブックを通じて公表した情報によれば、ロシアの部隊が保管エリアに侵入し、高レベルの放射性物質133個を盗み出しました。この物質は、少量であっても不適切な取り扱いがあれば、人命に重大な危険を及ぼすものであり、現在の所在は不明です。
この情報に関して、BBCは独自の調査を行っており、確認作業を進めている段階ではありますが、ウクライナのヘルマン・ハルシチェンコ・エネルギー相の発言によれば、ロシア軍の兵士の中には「衝撃的な」量の放射線にさらされた者がおり、その中で余命1年未満の状態になっている兵士がいる可能性があるとのことです。
また、チェルノービリ原発の安全技術責任者、バレリー・シミョノフは、ロシアの兵士が原発の廃棄物貯蔵庫で高放射性の「コバルト60」を無防備に手に取っていたと証言しました。この行為により、その兵士は短時間で極端な量の放射線を浴びてしまいました。
ただし、その後の兵士がどうなったのかについて、シミョノフは「わからない」と語りました。
立ち入り禁止区域「赤い森」でのロシア兵の活動
1986年4月、チョルノービリ原発4号機が暴走し爆発。この事故は大量の放射性物質の飛散と数百万人の被ばくをもたらしました。INESでの評価は最悪の「レベル7」とされ、その影響は現在に至るまで続いています。
爆発から36年が経過した現在でも、原発の周囲には放射性物質による深刻な汚染が存在しています。事故の後、4号機はコンクリートの「石棺」で封じられ、さらにアーチ形シェルターが設置され、放射性物質の飛散が防がれています。しかし、この事故の影響は、原発の敷地だけでなく、その周辺にも及んでいます。
その中で最も印象的な被害を受けた場所が「赤い森」と呼ばれる松林です。事故の放射線によって、一気に松の葉が赤く変色。しかし、この赤い葉を持つ木々は現在は存在せず、伐採されて埋められました。この処置は、実際には汚染の深刻化を招いたとも言われています。
赤い森は現在でも、チョルノービリの立ち入り禁止区域内で最も高い放射線量を示しており、一般の人々はもちろん、原発の職員であっても、特別な許可なくこのエリアに入ることは厳格に禁じられています。
チェルノブイリ周辺の火災
このような地域での火災、放射線量の上昇を招くリスクを持っています。
火災が発生すると、焼け落ちる植物や土壌から放射性物質が再び空気中に放出され、その結果、空間放射線量が上昇します。
立ち入り禁止区域の森林では過去にも大規模な火災がたびたび発生しており、これに対応するための消火活動が行われています。
地元の消防士たちは、火災鎮火の際に必ず放射線量を計測する線量計を携行しており、許容線量を超えると人員の交代が優先されます。これは、消防士たちが長時間高い放射線量の環境下で作業を行うことによる健康被害を防ぐための措置です。
戦闘行為の危険性
ゼレンスキー大統領は、このような高い放射線量のリスクを持つ地域での戦闘行為の危険性を演説で強調しました。ゼレンスキーの指摘通り、こうした場所での戦闘行為は「愚の骨頂」であると言えます。
防護服なし!?ロシア兵の無謀な活動
侵攻直後の2023年2月24日、ロシア軍がチェルノブイリ原発周辺での活動を開始した際、ウクライナ原子力規制当局は放射線量の上昇を記録しました。
ウクライナ原子力規制当局によれば、これはロシア軍の大型軍用車両が立ち入り禁止区域の汚染された土壌をかき回した結果であるとされています。
ロイター通信によると、ロシア兵は赤い森を戦車や装甲車で走行し、さらに防護服を着用せずに現地に入っていたとの目撃情報がウクライナ人の原発スタッフから得られています。このような行動により、兵士たちは非常に高い量の放射線にさらされていた可能性があります。その結果、吸気による体内被曝のリスクも高まっています。
これにより、ロシア兵は放射線量の高いエリアで無防備な状態での活動を行っていたことが明らかとなり、非常に高い被曝リスクにさらされていた可能性が考えられます。
原発の作業員らは、ロシア兵のこれらの行動を「自殺行為」と評しており、放射線に関する知識や危険性の認識が不足していたのではないかと懸念されています。
赤い森での塹壕……それは放射線のプール
ウクライナ国防省はロシア軍のチェルノブイリ「赤い森」での行動について、その危険性と放射線に対する知識の不足を厳しく批判しています。公式ツイッターによれば、ロシア軍は高濃度の放射線汚染があるこの地域で防御施設を構築しようとしており、これは「完全な人命軽視」と評されています。
赤い森を撮影したドローンの動画には、軍用車両の通過や塹壕の形跡が確認されており、このエリアの放射線の危険性を完全に無視した行動をしていたことが明らかになっています。ロシア軍は2月24日の侵攻開始直後にチェルノブイリ原発を制圧し、その後、3月末に管理権限をウクライナ側に戻し、部隊を撤収させました。
このような状況の中、特に赤い森において防護服もせずに立ち入り、更には塹壕を掘る行為は、極めて高い放射線リスクを伴うものであり、まるで放射線のプールに入るようなものです。
「赤い森」でのロシア軍の行動が議論の的
ウクライナ国営の原発企業「エネルゴアトム」の代表、ペトロ・コティンは、赤い森地域の放射線レベルに関して、依然として非常に高い数値が測定されていると発表しました。専門家とともに地域を訪問した結果、一部の地域では正常な数値よりも最大で160倍も高い放射線が確認されています。
コティンはさらに、赤い森に約30日間滞在していたロシアの占領軍について、将来的に放射線の影響を受ける可能性が高いと述べました。
その上、ゲルマン・ガルシェンコ・エネルギー相は、ロシア軍が赤い森の汚染された土を軍靴につけたまま原発のオフィスに入ったことで、放射線の数値がさらに上昇したと指摘しています。彼はこの行動を非常に不可解とし、その理由を疑問視しています。
さらに、エネルゴアトムからは、ロシア軍が原子力安全研究所からコンピューターやオフィス用品を略奪し、さらに研究用の機器や測定道具を破壊したとの報告が出されています。これらの行動は、ロシア軍のチェルノブイリにおける行動の不注意と不適切さをさらに浮き彫りにしました。
ロシア軍の行動に関する専門家の見解
ロシアがウクライナ侵攻時に占拠したチェルノブイリ原発近くの「赤い森」での行動が、急性放射線症候群を引き起こした可能性が報じられている。各報道機関の情報によれば、被ばくしたロシア兵の中から少なくとも1名が死亡している。
戦時下における放射線被爆による死亡は、広島の原爆投下で被爆した日本兵や捕虜の米兵以来の出来事とも考えられる。これに関して、多くの原子力専門家や団体が意見や分析を公表している。
環境データ提供団体「セーフキャスト」は、彼らが保有するデータを基に、ロシア軍が「赤い森」で顕著な放射線量に被ばくした可能性を指摘。しかしその一方で、急性放射線症候群に至るほどの放射線量ではないとの見解を示している。
さらに、原子力エネルギーに関する助言団体「ラディアント・エナジー・ファンド」の創設者であるマーク・ネルソンは、放射性物質の崩壊が36年に渡り継続していることから、土壌をかく乱する行為はロシア軍の被ばく量を増加させる可能性があると認識している。ただし、彼は「多数の兵士が急性放射線症候群になるとは考えにくい」との立場を明らかにしている。
チェルノブイリ原発の現場作業員の極限状態
ロシアのウクライナ侵攻が始まった2月24日、夜勤シフトで働いていた100人以上のチェルノブイリ原発の作業員は、原発内で困難な状況に直面しました。BBCの取材によれば、作業員たちは食べ物や医薬品の供給が限られ、過酷な労働条件の下での作業が強いられていたという。
主な状況:
- 過酷な労働: 通常、作業員は12時間の交代制で働くのですが、ロシア軍の拘束により連続勤務が強いられていた。彼らはテーブルや床で寝るしかなく、食事も1日1回のパンしか与えられなかった。
- 高度な緊張: ロシア兵の厳しい監視の下で作業を行うことは、作業員にとって非常にストレスフルでした。使用済み核燃料冷却システムのような重要なシステムでの操作ミスが懸念されていた。
- 移動の制限: 職員の親族によれば、ロシア側はシフト交換は認めているが、原発と自宅の間の移動の安全性は保証されていないとの姿勢を示していた。
オレクシー・シェレスティ監督はAFPに対し、突如としての事態変化に心の準備ができていなかったと述べ、作業員たちはただ自分の仕事をこなし、原発の安全を確保しようと必死になっていたと伝えています。
チェルノブイリ原発の停電
3月9日、原発の作業員たちにとって最も恐ろしい瞬間に直面しました、停電です。
近隣での戦闘が原因となり、原発は電力供給を失ったのです。この停電の危機に対処するため、最初はディーゼル燃料を使用し、その後はロシア軍から供給される燃料を利用して電力を確保しました。このような状況下でも、ベラルーシの送電網を活用して、再び電力供給を安定させることができました。
オレクシー・シェレスティ監督によれば、この時期は「精神的、感情的につらかった」と述べています。彼ら作業員はほとんどの時間、自分の指定された場所に留まらざるを得ず、ロシアの軍兵士らとの交流もほとんどなかったと言います。この事から、原発の作業員たちは非常に厳しい状況の中で職務を遂行していたことが伺えます。
作業員が交代制に移行
3月20日、ロシア軍はチェルノブイリ原発で閉じ込められていたウクライナ人職員の交代を許可しました。これに先立つ2022年2月23日から、原発では200人以上の技術者や警備員がロシアの侵攻により原発から出られない状態になっていました。
これらの作業員らは、連続した長時間の勤務と、ロシア軍の存在による緊張状態の中での作業を強いられていました。このような過酷な状況下での作業は、彼らの肉体的および精神的な健康を損なう可能性が高く、さらに原発の安全運転へのリスクが高まる恐れがありました。
事実、3月13日には、国際原子力機関(IAEA)がこれらの作業員の疲労の蓄積と、それによる原発の適切な修理やメンテナンスが行われていない状況を報告しています。IAEAは、この問題の解決のために作業員のローテーションが急募されると公式に呼びかけていました。
ロシア軍の許可により、これらの作業員はようやく交代することができ、新しい作業員が原発の適切な運用とメンテナンスを担当することとなりました。
ロシア軍撤退
3月31日、ウクライナの国営エネルゴアトムは、ロシア軍がチェルノブイリ原発からの撤退を完了したことを公式に発表しました。エネルゴアトムのオンライン投稿によると、「チェルノブイリ原子力発電所のスタッフは、原発施設内に不審者や部外者はいないと確認した」とのこと。
また、チェルノブイリの労働者が住んでいた近隣の町、スラヴチチからもロシア軍が撤退したことが明らかにされました。
更に、エネルゴアトムは別の投稿で、ロシア側が公式にチェルノブイリ原発の保護および運営の責任をウクライナ側に返還したことを確認しました。
オレクシー・シェレスティ監督は、ロシア軍が首都キーウとチェルノブイリから撤退する数日前に、交渉を通じて解放されたと述べています。彼はこの経験について、「彼ら(ロシア軍)は私を解放したいと話していたが、私を何から解放するというのだろうか?それには理解が及ばない」とコメントしています。
Zaporizhia forces seize Chernobyl nuclear power plant
ザポリージャ(ザポロジエ)原子力発電所占領
2022年3月4日のザポリージャ原発へのロシア軍の攻撃は、国際的な舞台でのウクライナとロシアの間の緊張を一層高める出来事となった。この攻撃は、多くの国際的な関係者や専門家から警戒と非難の対象となりました。
ザポリージャ原発には、旧ソビエト連邦時代に建設が始まったロシア型の加圧水型原子炉(VVER)が設置されており、この原子炉は欧米と同様の格納容器を持っているとされています。
外部からの攻撃によって原子炉が破壊されると、放射能が漏れ出す危険が高まり、風の向きによっては、セシウムやストロンチウムなどの核分裂生成物により、欧州全土が汚染される可能性が指摘されています。
また、6基の原発を持っており、その電気出力は欧州最大の規模の600万kwに達し、この原発だけでウクライナの電力のおおよそ2割を供給しています。
ウクライナのエネルギーインフラにおけるこの原発の重要性を考慮すると、その攻撃はウクライナのエネルギー供給と国民の安全に対する明確な脅威です。
攻撃の時点で、ザポロジエ原発の1号機は既に運転を停止していましたが、4号機は稼働中であり、残りの原子炉4基は冷却作業中で、運転を停止する方向で動いていました。これらの事実を考慮すると、攻撃は潜在的な放射能の危険や、さらなるエネルギー供給の中断のリスクを生じさせる可能性がありました。
市民がバリケードを作りロシア軍の侵入を防ごうとした
ウクライナのザポリージャ原発へのロシアの攻撃は、国際的に広がる危機の象徴となった。しかし、その危機の直前、ザポリージャの地域住民たちがその地での勇敢な抵抗を示したことは、ウクライナの人々の結束と彼らの国やコミュニティの未来に対する強い責任感を示すものでした。
2022年3月2日、ザポリージャ原発の周辺は非常に緊迫した雰囲気に包まれていました。
ザポリージャ原発に続く高速道路は、防衛のために集まった地域の住民たちで埋め尽くされていました。彼らは原発の安全とその地域の平和を守るため、自らの身を盾として立ちはだかりました。
現地メディアやSNSを通じて流れてきた情報によると、道路には車両やタイヤで作られたバリケードが築かれ、住民たちがロシア軍の進行を阻止するための物的な障害物として配置されていました。この姿を捉えた映像や写真はSNSを介して世界中に拡散され、多くの人々の心に深い感動や共感を呼び起こしました。
原発の安全を巡る国際的な関心
緊迫した状況が進行する中、ブルームバーグは「ウクライナ当局がザポリージャ原発の管理権を維持している」と報報じました。この報道は、原発の安全とそのコントロールを巡るウクライナ政府の努力を示すものであり、国際社会からの関心を高めるものとなりました。
この状況に対し、ウクライナ内務省の高官はSNS上で重要な声明を発表。原発が攻撃されるリスクについて、「もし侵攻があれば、チェルノブイリや福島のような大規模な原子力事故の可能性がある」との見解を示しました。このメッセージは、ロシア軍に対して、侵攻の結果として生じる可能性のある深刻な危険を考慮するよう強く求めるものでした。
国際的な観点からも、原子力発電所への攻撃の危険性に対する警告が出されています。IAEAのグロッシ事務局長は、「原発の安全を脅かすいかなる軍事行動も避けるべきである」という声明を発表。ロシアに対して原発への攻撃を控えるよう強く促しています。
バリケードを破壊しロシア軍が占拠
3月3日、ロシア軍の多数の戦車や歩兵隊が、原発の近くに設置されたバリケードを突破。その後、道路上での戦闘を経て、原発へと進撃を開始しました。
この行動中には発砲も行われ、ウクライナ側に死者が出るという悲劇的な出来事が生じました。
直前には国際原子力機関(IAEA)理事会でロシアの批難決議を可決
この攻撃は、IAEA理事会がロシアの侵攻行動を非難する決議を可決した直後に行われました。この決議には、35カ国中、日本を含む26カ国が賛成したものの、ロシアと中国の2カ国が反対票を投じました。さらに、パキスタンやインドなど5カ国が棄権し、2カ国が欠席するという結果となりました。
IAEAは、ロシア軍が原発を管理しているため、通常の方法での情報入手が困難であると指摘。このため、ロシアに対して通信手段を確保し、IAEAとの協力の下で原発の検証を許可するよう強く求めました
戦時においても遵守されるべきジュネーブ条約を加盟国が破ってしまうという事態は、通常の状況下では考えられないものです。そのため、国連やIAEAの会議で非難決議が採択されるのは予想された結果でしたが、それに反対する国が存在することは多くの国々にとって驚きの事態となりました。
占拠下での原発の運営は、ウクライナのスタッフが継続しており、ロシア軍がその上で駐屯している形になっていました。
ザポリージャ原発で火災
3月4日、ザポリージャ原発がロシア軍の攻撃を受けました。ウクライナの原子力規制当局によると、ロシア軍の攻撃が開始されたのはその日の午前1時ごろだったと報告しています。
この攻撃で1号基の原子炉建屋が損傷し、使用済み核燃料の乾式貯蔵施設にも2発が着弾しました。
ザポリージャ原子力発電所の広報、アンドレイ・タズはウクライナのテレビ局に対し「ザポリージャ原子力発電所に設置されている6機の原子炉のうちの1つで火災が発生した」と伝えました。
該当の原子炉は現在、改修作業中で稼働していないものの、内部には核燃料が保管されているという。
また、ザポリージャ原発の所長はSNSを使用して、ロシア軍の砲撃により、消防隊が火災現場に近寄ることができない状況を伝えている。
ロシア軍が攻撃をしてきた様子はライブカメラに映っていた
この様子は、原発敷地内に設置された監視カメラによって詳細に記録されています。
映像には、深夜の暗闇を切り裂く照明弾の強烈な閃光が映し出され、その後煙が上がっている様子が確認できます。この照明弾による攻撃は、ロシア軍の侵攻を告知する形となった。
ウクライナ外相、ロシア軍の原発攻撃に緊急訴え
4日午前2時半、ザポリージャ原発へのロシア軍による攻撃とそれに伴う火災の報道がなされる中、ウクライナのクレバ外相はツイッターで緊急のメッセージを発信しました。
外相は次のように訴えました。
「ロシア軍によるザポリージャ原発への攻撃により、火災が発生。ロシアは直ちに攻撃を中止し、消防隊の活動を許可するべきだ。」
また、ザポリージャ原発の重要性について触れ、「ヨーロッパ最大の原子力発電所である当該原発が、ロシア軍からの多方向の攻撃を受けている。火災はすでに発生し、もし爆発が起これば、被害はチェルノブイリの10倍となるであろう。」
最後に、ロシア側に対して緊急のアクションを要求。「ロシアは砲撃を即時に停止し、消防の活動を許可し、安全地帯を確立する必要がある」と強いメッセージを伝えました。
Russian army is firing from all sides upon Zaporizhzhia NPP, the largest nuclear power plant in Europe. Fire has already broke out. If it blows up, it will be 10 times larger than Chornobyl! Russians must IMMEDIATELY cease the fire, allow firefighters, establish a security zone!
— Dmytro Kuleba (@DmytroKuleba) March 4, 2022
バイデン大統領、ゼレンスキー大統領と原発火災について電話協議
ホワイトハウスは、バイデン米大統領はザポリージャ原発の火災事件について、ウクライナのゼレンスキー大統領と電話で緊急協議を行ったと発表しました。発表によると、両首脳は、ロシアに対し、該当地域での軍事活動を速やかに停止するよう強く要請しました。
また、ゼレンスキー大統領はSNS上で新しい動画を公開し、その中で「ロシアはチェルノブイリの悲劇を再び引き起こそうとしている」という強いメッセージを伝えました。この発言は、1986年のチェルノブイリ原発事故を引き合いに出し、現在のザポリージャ原発の状況との類似性を指摘するものでした。
IAEA、ザポリージャ原発への砲撃に関する報告を確認
国際原子力機関(IAEA)もザポリージャ原子力発電所での状況に関し公式コメントを発表。そのTwitter上での投稿によれば、「私たちもザポリージャ原子力発電所への砲撃の報告を確認しており、状況の詳細を把握するためウクライナ当局と緊密にコンタクトをとっている」との内容が明かされました。IAEAの発表は、この原発事態が国際的な関心事となっていることを再確認するものとなりました。
#Ukraine: IAEA is aware of reports of shelling at #Zaporizhzhia Nuclear Power Plant (NPP), in contact with Ukrainian authorities about situation.
— IAEA – International Atomic Energy Agency (@iaeaorg) March 4, 2022
ザポリージャ原発の現況
占領下のザポリージャ原発では、原発の日常業務や管理はウクライナの専門家やスタッフが担当しており、事故やトラブルを防ぐための作業を継続している一方で、施設全体のセキュリティーや監視はロシア軍が担当しているという、前例のない運営状況になりました。
攻撃が行われたときには4号基が稼働中であり、それ以降に2号基も運転を再開。これにより、原発の一部は稼働して電力供給を続けている状況となっている。安全確保のため、ウクライナの専門家チームは絶えず監視と調整を行っていると伝えられています。
「ロシアによる原発攻撃は前例のない危険行為」ゼレンスキーの強い非難
ウクライナのゼレンスキー大統領は、ロシア軍によるザポリージャ原発への攻撃を強く非難し、その重大性と潜在的な危険を強調しました。大統領は、「ウクライナの15基の原子炉のうち1つが爆発した場合、それはウクライナだけでなく、全欧州の終焉を意味する」と述べました。
ゼレンスキー大統領はまた、「原発の原子炉を攻撃したのはロシアだけ。これは歴史上初の出来事」と指摘。欧州のリーダーたちに対して、核の災害が発生する前に、ロシア軍の行動を止めるよう強く訴えました。
「ウクライナが放火」ロシアの主張…真相は?
ロシア国防省は3月4日、公式声明でザポリージャ原発での火災についての関与を全面的に否定。ロシアの発表によれば、この火災はウクライナの「破壊工作集団」による放火が原因であると主張していました。
ウクライナの国営原子力企業が攻撃の詳細を明らかに
同日、ウクライナの国営原子力企業「エネルゴアトム」のペトロ・コチン社長代行は、4日にテレビ出演し、ザポリージャ原子力発電所への攻撃に関する新たな詳細を公開しました。
コチン代行によれば、攻撃は「敵の部隊が発電所の管理棟前の広場から開始した」とのこと。この攻撃は午前4時半まで継続され、その後ウクライナ軍の防御が突破され、発電所の施設と人員が敵の支配下に置かれたと述べました。
火災が教育訓練棟で発生
ウクライナ政府、ロシア軍の砲撃の影響で、ザポリージャ原子力発電所周辺にある5階建ての教育訓練棟で火災が発生したと発表しました。
また、ウクライナ緊急事態省の情報によれば、火災は3階から5階にかけて広がりましたが、幸いなことにけが人はいませんでした。
火事の現場となった教育訓練棟は、原子炉を中心とする原発の主要施設からわずか300メートル以上しか離れていない位置にあります。
施設内には欧米並みの安全設備が導入されていますが、継続的な無差別砲撃の危険性を考えると、事態は非常に深刻です。
さらに、火災発生後もロシア軍は原発の近隣施設への砲撃を午前3時まで続行し、これにより消防隊の迅速な対応が遅れました。
ゼレンスキー大統領はロシア軍の行動について厳しく非難。
「ロシアの戦車は赤外線装置を装備しており、明確に原子力施設を攻撃の対象としていた。彼らは自らが何を攻撃しているのかを十分に理解していた」との声明を発表しました。
ウクライナ、ザポリージャ原発の火災鎮火を発表
ウクライナ政府は、ザポリージャ原子力発電所で発生した火災が午前6時20分頃に鎮火したと公表しました。しかし、ロイター通信によれば、この原発はロシア軍によって掌握されているとの情報が流れています。幸いなことに、原発本体には直接の被害はなかったものの、消火活動が遅れていればさらなる火災の拡大の危険性も指摘されています。
ウクライナ外務省の情報によれば、火災の結果、数名の死傷者が出ているとのことです。現時点で、当局は放射線のレベルは通常範囲内であると発表していますが、発電装置内で核燃料の冷却に問題が生じた場合、大規模な放射線被害の危険が増大することも懸念されています。
外務省は、砲撃や戦闘の影響で原発周辺からの避難が難しくなった数千人の住民、特に民間人が、放射線の影響で被害を受ける可能性があると警告しています。そして、過去の原発事故、チェルノブイリや福島と比較して、この事態がもたらす可能性のある被害の深刻さを強調しています。
国際社会がザポリージャ原発攻撃に強く非難
ウクライナのザポリージャ原子力発電所へのロシア軍による攻撃を受け、国際社会からの非難が相次いでいます。
国連安全保障理事会が緊急会合を開催
国連安全保障理事会は、米国、英国、フランス、アイルランド、ノルウェー、アルバニアの要請を受けて、3月4日午前11時半に緊急会合を開催しました。会合では、ロシア軍の原発攻撃を中心に議論が交わされました。
各国代表の発言
- 米国のトーマスグリーンフィールド国連大使
「ロシアの攻撃は信じられないほど無謀で危険。プーチン大統領は即刻、狂気の行動を停止すべき。」 - ウクライナのキスリツァ国連大使
「事故が発生すれば、チェルノブイリや福島を超える被害が考えられる。」 - 英国のウッドワード国連大使
「初めての国家による稼働中の原発への攻撃は警戒が必要。ロシアの行動はジュネーブ条約違反。」 - ケニア代表
「紛争が続き、容認できないリスク。ロシアにジュネーブ条約順守を求める。」 - フランスのドリビエール国連大使
「国際原子力機関(IAEA)に、ウクライナの全施設の安全確保をサポートするよう要請する。」 - アイルランドのネイソン国連大使
「ヨーロッパ最大の原発での事故は、世界的な影響を及ぼす。ロシアの行動は許されない。」 - UAEのヌサイベ国連大使
「福島とチェルノブイリの事故を鮮明に覚えている。同様の事故を二度と許容すべきではない。」 - 中国の張軍国連大使
「ザポリージャ原発の事態に懸念。事態悪化を避けるため、外交的解決を求める。」
このように、多くの国からロシアのザポリージャ原発攻撃に対し、国連安保理は非難の声を一斉に上げました。多くの国がロシアの行動を非難し、ジュネーブ条約の順守を求めています。一方、中国は外交的解決を再度訴えました。
ロシア大使の反論
ロシアのネベンジャ国連大使は、最近の火災について「ウクライナ政府が人工的なヒステリーを作り出している」とし、「ロシアに対する虚偽情報を広めるキャンペーンの一部」と反論しました。彼は、火災はウクライナ側の放火によるものだと明言。
ネベンジャ大使はさらに、一部報道や主張にある「ロシア軍が原発を砲撃した」との情報を否定。原発周辺での火災は真実ではなく、ロシア軍が原発を警備していたこと、そしてその警備中にウクライナ側の攻撃を受けて応戦しただけだと主張しました。
また、ロシア軍の原発の制圧行動は「ウクライナのテロリストが核で挑発しないように」との理由で正当化。原発制圧の背後には、ウクライナ側の潜在的な挑発を阻止する意図があるとしました。
ウクライナ大使がロシアの主張を強く批判
ウクライナのキスリツァ国連大使は、ロシアのネベンジャ大使の主張に対して即座に反応。「うそには慣れている」と冷静に批判。彼女は、ロシアの攻撃行動を単なる地域的問題としてではなく、欧州だけでなく全世界、さらには全人類に対する挑戦と位置づけた。
キスリツァ大使は特に、ネベンジャの情報提供に憤りを見せ、「うそを広めるのはやめろ」と声を荒げて非難。ウクライナとしては、ロシアの情報操作とみなすものに対し、断固とした態度で臨むことを明確にしました。
ロシアのウクライナ侵攻に関する国連安全保障理事会の決議
この会合の前の2月25日、国連安全保障理事会はロシアのウクライナへの侵攻に対する非難決議案を採決していました。
この非難決議案は多くの国々からの支持を受け、賛成多数で採決される見込みでした。しかし、常任理事国であり、侵攻中のロシアが拒否権を行使したため、決議案は否決されてしまいました
ロシアが拒否権を持つ常任理事国として、他の非常任理事国の賛成票に関わらず、一国が反対すれば決議は否決されるという国連の制度がここで最悪の影響を及ぼしました。ロシアは自身の行動を正当化するため、拒否権を行使する選択をしたのです。
この事態に対し、多くの国際社会からは非難の声が上がりました。特に、ロシアを除く他の常任理事国や非常任理事国からは、侵攻行為を非難する立場を鮮明にしました。
しかし、国連の仕組み上、常任理事国の拒否権の存在により、ロシアの行動に対する具体的な制裁措置を取ることは難しくなっています。これにより、国際社会の中で国連の役割や、拒否権の是非についての議論が再燃しています。
ロシアの占領下での運営と危機
ロシア軍にの占領下にあるザポリージャ原発の運営は、その後も現地のウクライナ人技術者によって継続されました。
スパイの疑念とロシア軍の洗い出し活動
ザポリージャ原発内での日常業務は、ロシア軍の厳しい監視のもとで行われている。彼らは、反抗的なウクライナの作業員の中からスパイがいないかを特定しようとました。
施設の保全担当技術者のセルゲイ・シュベッツはロシア軍による原発内の支配を妨害しようとし、ウクライナの防衛部隊に情報を提供していた疑いを持たれ、ロシア軍によって銃撃されました。
ウクライナ情報機関は、ロシア軍の通話を傍受し、シュベッツが重傷を負っているが生存していること、そしてシュベッツがロシア兵士に対して何らかの形で抵抗したことを確認しました。
原発での危機的状況はシュベッツの事件だけではありません。燃料の取り扱いを担当していた職員が1週間以上行方不明となった後、恐怖に打ち震える様子で戻ってきたこともありました。彼は何があったのかを語ろうと頑なに語ろうとしませんでした。
原発の複数の職員がロシア軍によって手錠をかけられ、尋問のために連れ去られる事件も続発しています。メディアの取材により、これらの職員の多くが尋問後に負傷した状態で放されていることが明らかとなっています。さらに、一部の職員は現在も行方不明のままdせう。
ウクライナ原子力発電公社の懸念
2022年5月31日、ウクライナの原子力発電公社エネルゴアトム社のペトロ・コティン総裁代理は、キーウ市での記者会見を通じて、原発の敷地内の危険な状況について公に警告。
500人以上のロシア軍兵士や軍用車両の配置、作業員への銃撃、さらには爆発物や兵器の配置など、非常に危険な状態が続いていると指摘しました。
その上で、ウクライナ及び世界の安全を確保するため、ザポリージャ原発をロシアの侵略者の手から解放する必要性を訴えました。
国際的な懸念
国際原子力機関(IAEA)の情報によれば、5月31日時点でザポリージャ原発の6基のうち2基がロシアの管理下で運転を続けています。これは国際的な懸念の対象となっており、ウクライナだけでなく、世界中の安全に影響を与える可能性があります。
危機の本質と解放の訴え
ロシア軍のこのような行動は、核関連の大規模な事故のリスクを高めています。管理棟が銃撃を受けたり、爆発物が置かれたりする行動は、誤った操作や事故により原子炉が大きなダメージを受ける可能性があり、その結果としての放射線のリスクが増加しています
ペトロ・コティン総裁代理は、ウクライナ及び世界の安全を確保するため、ザポリージャ原発をロシアの侵略者の手から解放する必要性を訴えています。
ロシアがこの原発をウクライナに返さない可能性を示唆
ロシアのマラト・フスヌリン(Marat Khusnullin)副首相は2022年5月18日、ウクライナにあるザポリージャ(Zaporizhzhia)原子力発電所について、同原発が発電する電気の代金をロシアに支払わなければ、ウクライナの送電線網から切り離すと述べ、事実上接収する可能性を示唆した。
ロシアの通信社によると、副首相は現地を視察した際、「もしウクライナのエネルギー業界が電気を受け取り、その代金を支払う用意があるなら、(原発は)ウクライナのために稼働するだろう。だがそうでないなら、ロシアのために稼働することになる」と述べた。
ロシア副首相、ザポリージャ原発の事実上の接収を示唆
2022年5月18日、ロシアのマラト・フスヌリン副首相のザポリージャ原子力発電所に関する以下の発言が注目を集めました。
「もしウクライナのエネルギー業界がこの発電所で生み出される電気の代金を支払う意向があれば、原発はウクライナの利益のために稼動し続けるだろう。しかし、支払いの意向がない場合は、その発電所はロシアの利益のために稼動することとなるだろう」
この発言を要約すると「ウクライナは同原発から生産された電気の代金はロシアに支払え、さもなければロシアはウクライナの送電線網から同原発を切り離す」という、事実上の接収を意味するものでした。
この発言は、ロシアとウクライナの間での電力供給に関する緊張をさらに高め、両国間の関係やヨーロッパ全体のエネルギー供給状況に影響を及ぼす可能性があり、国際社会から非難を呼ぶことになりました。
【ウクライナ危機(46)】中露の未来は?オリンピック休戦の違反と習近平の立場