【ウクライナ危機(44)】アジアのリーダーとして…ウォロディミル・ゼレンスキーが日本国会で語るメッセージ

ウォロディミル・ゼレンスキーが、日本国会での歴史的な演説を行いました。その言葉は、多くの日本人の心に深く響くものとなり、日本とウクライナの友情と連携をさらに強化するきっかけになりました。

この記事では、ゼレンスキーの演説の中で特に印象的だった部分や、日本と彼の国との関係にどのような影響を与えるかについて詳しく取り上げます。

【ウクライナ危機(43)】世界中の議会を魅了する特別な瞬間!ゼレンスキー大統領の歴史的なオンライン演説
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二〇二二年二月二四日、ロシア軍に侵攻を受けて以降、世界第二位の軍事大国との極めて不利な戦いを、ゼレンスキーは、砲弾や戦闘機ではなく「言葉の力」で戦ってきた。事実、「ゼレンスキーは、降伏拒否、反抗、勇気、勇敢さの象徴になりつつある」(オリシア・ルツェビッチ氏/BBCのラジオ番組)、「人間に与えられるあらゆる才能のうち、雄弁に語る能力ほど貴重なものはない」(イギリスの故・チャーチル元首相の言葉を用いて/アメリカのCNNの番組)と、各メディアは率直にその発信力に賛辞を送っている。 では、なぜ若き大統領の言葉はなぜ自国民を奮い立たせ、世界をも動かすのか? 本書では、ウクライナの国民や軍を奮い立たせ、世界の主要国の議場を総立ちにさせてきた一〇〇の言葉を拾い集め、五つの種類に分類しながら、それぞれ解説を加えていく。(著者より)(「Books」出版書誌データベースより)

Zelensky’s speech to Japan’s parliament

ウォロディミル・ゼレンスキーの日本国会演説

FNNプライムオンライン/YouTube

ロシアの侵攻を真正面から受けているウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領の動きが、国際的な関心を中心に急速に高まっています。ゼレンスキーはすでに、米国、英国、ドイツといった主要国の議会でオンライン演説を行い、熱心で感情豊かなスピーチで多くの人々の心をつかんできました。

ゼレンスキーの演説は、具体的な要求や協力の呼びかけだけでなく、ウクライナの国民の意志や平和を求める声として、多くの国々に響き渡っている。特に西側諸国は、ゼレンスキーのスピーチを受けて、連帯感を強化し、ウクライナへの支援の機運が高まっています。

一方、ロシアのウラジミール・プーチン大統領は、西側諸国の結束の強化に苦しんでいるとみられています。特に、ゼレンスキー大統領が国際的な舞台での発言を強化する中、ロシア側の戦略や情報戦が有利に進められない状況が続いています。

そして、ついにここ日本でゼレンスキー大統領が国会でのオンライン演説を計画しているとの情報が流れ、日本国内外から多くの注目が集まりました。日本は、アジア地域での影響力を持つ国として、ウクライナ問題にどう関与していくのか、また、ゼレンスキー氏の訴えにどう応えていくのか、その方針や意向が注目されました。

日本中が注目!日本初の国会での歴史的な瞬間

日本の国会は歴史的な瞬間を迎えることとなります。

衆院広報課によれば、ゼレンスキー大統領のオンラインでの演説は、日本の国会での海外国家元首による初めてのオンライン演説となる予定です。これまでには、フランスのミッテラン大統領や米国のレーガン、クリントンの両大統領が議場で演説を行ったことはあったものの、オンラインでのものはこれが初めてです。

この特別な状況により、演説内容の事前のすり合わせが行われなかったため、内容に対する予測が難しくなっています。特に、ロシアのサハリン州での地下資源開発プロジェクトに関連する問題について、具体的な名前が出されることになれば、岸田政権にとっては困難な状況になる可能性がありました。

メディア関連の動きも活発で、各テレビ局の夕方の報道番組でゼレンスキー大統領のオンライン演説が生中継されることが予想されていました。そんな中で日本テレビは、視聴者の関心が高いため演説の内容や背景、反応など多角的に報道する方針を示しました。

オンライン演説は、衆議院の公式中継「衆議院インターネット審議中継」を通じて配信され、主会場である国際会議室での演説の様子は、カメラで撮影して中継される予定。

会議室には、衆参両院の正副議長や各会派の代表者、岸田首相や林外相らが出席予定で、会議室に入りきらなかった議員のために、近くの多目的ホールでも演説が中継されることとなりました。

ゼレンスキー大統領の日本国会リモート演説、迅速な対応と経緯

ゼレンスキー大統領が日本の国会でのオンライン演説を行う経緯は、異例の迅速さをもって進行しました。

  • 3月15日:日本外務省にゼレンスキー大統領の意向が伝わる。この情報を基に、衆院議院運営委員会の与野党理事らが先行して調整を開始。
  • 3月15日:在日ウクライナ大使館からの連絡を受け、国会への大統領の演説に関する意向が伝えられる。
  • 3月16日:自民党の高木毅委員長と立憲民主党の馬淵澄夫委員長が会談を持ち、演説の実現に向けた調整を進める方針で一致。
  • 3月17日:ウクライナのコルスンスキー駐日大使が正式にゼレンスキー大統領の国会オンライン演説を要請。両院議長はこの要請を真摯に受け止め、各会派との調整を希望。
  • 3月17日:岸田文雄首相が、技術的な課題を認識した上で国会の前向きな対応を望む意向を示す。
  • 3月18日:高木毅委員長と馬淵澄夫委員長が再度会談。ゼレンスキー大統領の演説の実施時期について「なるべく早く」との意向で合意。
  • 3月18日:衆参両院が、国会内の会議室で3月23日にゼレンスキー大統領のリモート演説を実施することを正式に決定。

この一連の経緯を通じて、日本の国会と政府のリーダーシップが、国際的な緊急事態に迅速かつ柔軟に対応する姿勢を示しました。特に、ロシアの侵攻を受けたウクライナとの連帯を示す意味でも、ゼレンスキー大統領の国会演説は大きな意義を持つものとなると期待されました。

ANNnewsCH/YouTube

ゼレンスキー大統領のリモート演説、会場と技術的課題の概要

ウクライナのゼレンスキー大統領の日本国会でのオンライン演説は、国際的な状況や技術的課題を背景に計画されています。これは、ウクライナと日本の間の友好関係や協力のシンボルとも言えるでしょう。以下は、その要点のまとめです。

  1. 使用技術:
    • オンライン会議システム「Zoom」を介して行われることが予定されています。この手法は、多くの国際的な会議やイベントでも使用されており、安定した接続を期待できます。
  2. 通訳:
    • ゼレンスキー大統領はウクライナ語での発言を予定しており、その通訳を担当するのは在日ウクライナ大使館の職員です。このような場面での正確な通訳は非常に重要であり、双方の国の理解や友情を深めるための橋渡しの役割を果たします。
  3. 会場の選定:
    • 設備面での整備や新型コロナウイルスの影響を考慮し、議員会館内の国際会議室が演説の会場として選ばれました。これは、衆参議員の安全を考慮し、また必要な技術設備がすでに整っているための選択です。
  4. 生中継と録画:
    • オンライン演説は生中継を予定していますが、ウクライナ国内の状況や技術的な問題によっては録画に切り替わる可能性があるとのことです。

日ロ関係の悪化…ゼレンスキー大統領の演説前の状況

ゼレンスキー大統領の日本での国会演説の数週間前、日本とロシアの関係は、経済制裁や外交的対立を背景に、かつてないほどの緊張を増していました。

ロシアの「非友好国リスト」の公表
2023年3月7日、ロシアは対立している国々を対象とした「非友好国リスト」を発表。日本もアメリカやEU全加盟国と共にその中に名を連ねました。

岸田首相の北方4島に関する発言
同日、岸田首相は参院予算委員会にて、国後、択捉、歯舞、色丹の4島について、日本の固有の領土としての立場を強く主張しました。

ウクライナへの防衛装備提供
3月8日、日本はウクライナからの要請を受け、防弾チョッキ、ヘルメット、防寒服などの防衛装備を供与することを決定。これは通常「防衛装備移転三原則」によって規制されるものだが、特例的に供与が実施されました。

ロシアの北方領土「経済特区」制定
3月9日、ロシアのプーチン大統領は北方領土の「経済特区」制定法案に署名。同法案は北方領土に新規進出する企業に税免除を20年間認める内容となっており、これは北方領土のロシアによる実効支配をさらに固定化するための策とみられています。

ロシアの軍事活動の増加
3月10日、ロシアは択捉島でのミサイルによる軍事演習を実施。続いて、3月11日と15日にロシア海軍艦艇が津軽海峡を通過。これはウクライナへの兵士や武器の輸送だけでなく、日本への示威行為とも受け取られています。

ロシアによる日本への外交的打撃
そして、ゼレンスキー大統領の日本国会演説の2日前の3月21日に、ロシア外務省は日本との平和条約交渉の中断や北方領土に関する日本との各種協議の撤退を発表しました。

この一連の動きにより、ゼレンスキー大統領の日本での演説の背景には、日ロ間の緊張が高まる局面が存在していたと考えられます。

ANNnewsCH/YouTube

ゼレンスキー演説に反対の声?国内では賛否

ゼレンスキー大統領の演説の日が迫る中で、日本国内での反応は賛否両論の声が出ていました。

ジャーナリストの鳥越俊太郎は、国際的な紛争の一方の当事者であるゼレンスキー大統領の演説を国会で流すことに反対の立場を明確にしました。彼は、国会が国権の最高機関であることから、このような演説を許可することに懸念を示し、また同様の状況で台湾総統の演説を国会で放映するのかという疑問を呈しています。

それに対し、立憲民主党の泉健太代表は、ゼレンスキー大統領の演説に対して、首脳会談や共同声明が前提条件であるとの立場を示しました。泉代表のこの意見は、ゼレンスキー大統領の演説内容に対する不確実性、つまりどのような発言がされるか予測できないという点に懸念を抱いていることを示唆しています。

一方、日本維新の会の松井一郎代表(大阪市長)は、泉健太代表の意見を批判し、ゼレンスキー大統領の演説をオンラインで受け入れる体制を整えることが必要だと述べました。

このように、ゼレンスキー大統領の日本の国会でのオンライン演説に対する意見は多岐にわたり、その背景には、国際的な紛争の現状や、国会という場を利用しての外国首脳の演説に対する異なる価値観や考え方が影響していると考えられます。

TBS NEWS DIG Powered by JNN/YouTube

《2022年3月23日》「支援に感謝」日本の国会でゼレンスキーが演説!!

2023年3月23日、ロシアによる軍事侵攻の真っ只中にあるウクライナのゼレンスキー大統領は日本の国会で演説を行いました。しかし、この演説は通常のように国会の本会議場で行われるものではなく、衆議院第一議員会館の「国際会議室」でオンライン中継という形で実施されました。

演説の開始にあたり、細田博之衆院議長が挨拶を行いました。彼は、日本の国会がロシアのウクライナ侵攻を公然と非難していることを再確認し、日本がウクライナとその国民と共にあるとの立場を強調しました。

オンライン中継のスタートとともに、カーキ色の服装で無精ヒゲをたくわえたゼレンスキー大統領の姿が巨大スクリーンに映し出されると、岸田文雄首相や林芳正外相をはじめ、約300人の国会議員から拍手が送られました。

ゼレンスキー大統領は、日本とウクライナとの間には実際の距離が8,193キロメートルもあるものの、自由を愛する気持ちは両国間で変わらないとのメッセージを強調しました。この言葉に、多くの議員たちは真剣な表情で画面を見つめ、その言葉に深く頷いたり、感動の色を見せたりしていました。

ゼレンスキー大統領の演説は、短いながらも約12分間という短い時間で行われましたが、日本とウクライナとの友好関係、そして現在の状況に対する強いメッセージが伝わってきたことは間違いありません。

朝日新聞社/YouTube
演説の全文

細田衆議院議長閣下、
 山東参議院議長閣下、
 岸田内閣総理大臣閣下、
 日本国会議員の皆様、
 日本国民の皆様、

ウクライナ大統領である私にとって、日本国会において史上初めて皆様に対して演説を行うことを大変光栄に存じます。

両国の首都は8,193キロメートルを隔てております。経路にもよりますが、平均すると、航空機で15時間を要します。しかしながら、自由に対する我々の感情、生存への希求、平和への希望に、いかほどの距離がありましょうか。

2月24日、私は両国の間に何らの距離もないことを理解しました。我々の首都の間には1ミリの距離もなく、我々の心に瞬時の差もないことを。なぜなら、貴国は即座に支援のために駆けつけてくれたからです。そして私は、そのことを心から感謝しております。

ロシアがウクライナ全体の平和を破壊したとき、我々は、世界が本当に戦争に反対し、自由を求め、世界の安全を求め、全ての社会の調和のとれた発展を求めていることを即時に理解しました。日本はアジアにおいてこの立場のリーダーとなりました。貴国は即座に、ロシア連邦により開始されたこの残酷な戦争を終結させるため、ウクライナ、すなわち欧州における平和のために活動し始めました。そしてこのことは大変重要なことです。地球上の全ての人々にとって重要なのです。なぜなら、ウクライナの平和なくしては、世界のいかなる人も自信をもって将来を見据えることができないからです。

皆様はチェルノブイリ原発のことを御存じかと思います。ウクライナにある原子力発電所で、1986年に大きな爆発事故が発生した所です。放射性物質が放出されました。世界の様々な場所にその影響が出ました。チェルノブイリ原発の30キロメートル圏内は未だに危険なため閉鎖されております。爆発により生じた影響を除去する過程において、閉鎖された区域の中の森林に何千トンもの汚染物質、がれきや車両などが廃棄されました。地中にあるのです。

2月24日には、この土地をロシア軍の装甲車が通りました。そして、大気中に放射性物質の塵を巻き上げました。力によって、また武器によってチェルノブイリ原発は制圧されてしまったのです。過去に大惨事が発生した原発を想像してみてください。破壊された原子炉は覆われ、核廃棄物の貯蔵施設があります。ロシアはこの施設をも戦場へと変えました。そして、ロシアは閉鎖された30キロメートル圏内の区域を、我々の防衛軍に対する新たな攻撃を仕掛けるために使用しているのです。

ロシア軍がウクライナを離れた後に、チェルノブイリ原発に与えた損傷を調査するには数年を要するでしょう。放射性廃棄物の貯蔵施設のどの場所が損傷を受けたか、放射性物質の塵がどれだけ地球に拡散されたかということです。

皆様、
 ウクライナには稼働中の原子力発電所が4つあり、15の原子炉があります。全てロシアの脅威にさらされています。ロシア軍は既にヨーロッパ最大のザポリージャ原発を攻撃しました。戦闘により何百もの発電所が被害を受け、多くが危険な状態にあります。爆撃によってガスや石油のパイプライン、炭鉱が脅威に直面しています。

先日、ロシア軍はウクライナのスムイ州にある化学工場を攻撃し、アンモニアが流出しました。我々は、特にサリンといった化学兵器を使用した攻撃が起きる可能性があると警告を受けています。それは、シリアで起きたのと同様のことです。

そして、世界中の政治家が議論すべき大きな課題が、ロシアが核兵器を使用した場合、どう対応すべきかです。核兵器が使用されれば、世界のいかなる人の信頼も、いかなる国も、完全に破壊されてしまいます。

ウクライナ軍は既に28日間にわたり堂々と祖国を防衛しています。世界最大規模の国が28日間にわたり全面的な侵攻を仕掛けています。しかし、ロシアの潜在力は最大規模でもなく、大きな影響力もありません。モラルに至っては最低です。

ロシアはウクライナの平和な町に1000発以上もミサイルを打ち込み、数え切れないほど多くの爆弾を使用しました。ロシア軍は何十もの町を破壊し、完全に焼け落ちた場所もあります。ロシア軍に占領された多くの町や村では、人々は、殺された親戚、友人、隣人を尊厳をもって埋葬することもできません。壊れた家の庭や近くの道端など、どこでも可能な場所に埋葬するしかないのです。

数千人が殺され、うち121人は子どもです。

およそ900万人のウクライナ人がロシア軍から逃れ、自宅や住み慣れた場所を去ることを余儀なくされました。ウクライナの北部、東部、南部では、恐ろしい脅威から逃れるため人々が退避し、いなくなりつつあります。

ロシアは我々の通常の交易路である海さえも封鎖しました。世界のほかの潜在的な侵略者に、海路を封鎖すれば自由主義国を脅すことができると示しているのです。

皆様、
 今日、ウクライナとその友好国、そして我々の反戦の連帯こそが、世界の安全を完全に崩壊させないことを保障します。国家の自由、人々、社会における多様性、また国境の安全の確保のための土台を保障するのです。我々、我々の子供、孫たちの平和を守るためにです。

国際機関が機能しなかったことを目の当たりにしました。国連や安全保障理事会でさえもです・・・。彼らに何ができるのでしょうか。改革が必要です。誠実さの注射が必要なのです。機能するため、すなわち、ただ議論をするだけでなく、真に決断し本当の影響力を及ぼすためにです。

ロシアによるウクライナに対する戦争により世界は不安定になりました。世界は多くの新たな危機にさらされています。誰も明日どうなるか分からないのです。

全ての資源輸入国にとって、世界市場の混乱は問題です。かつてないほどの環境問題、食糧危機はかつてないほどの状況です。しかし、何よりも重要なことは、今、地球上の全ての侵略者、また侵略する可能性のある者に対し、戦争を始めれば大きな罰を受けることを知らしめ、抑止することです。世界を破壊するべきではないことを知らしめることです。責任ある国家がまとまり、平和を維持することは全くもって論理的で正しいことなのです。

日本が、この歴史的な瞬間に、ウクライナを真に支援するため、信念に基づいた立場をとられていることに感謝します。日本は、アジアで最初に、平和を取り戻すためにロシアに圧力をかけ、制裁を課すことに踏み切ってくれました。どうかこの取組を継続してください。

ロシアが平和への道を追求し、我々の国ウクライナに対するこの残酷な侵略の津波を止めるよう、アジアの友好国と一丸となって情勢の安定化に取り組んでいただくことを求めます。資金がロシア軍に流れないよう、ロシアとの貿易を禁止し、ロシア市場から企業を引き上げる必要があります。また、我が国、またロシア軍に対抗している我が国の防衛軍、兵士を助ける必要があります。ロシアにより破壊された都市や、荒廃した領土に再び人々が戻れるよう、今から、ウクライナの復興について考え始める必要があるのです。

人々は、住んでいた故郷、子ども時代を過ごした故郷、住み慣れた故郷に戻る必要があります。皆さんにもきっとこの気持ちが分かると思います。故郷に帰る必要があるというこの気持ちを。

平和が脅威にさらされるたびに、予防的かつ強力に行動できるよう、我々は新しい安全保障体制を構築しなければなりません。

既存の安全保障体制を基盤にして、それは可能なのでしょうか。この戦争を見ればわかるとおり、絶対にできません。我々には新しいツールが必要なのです。それはいかなる侵略に対しても予防的かつ強力に対抗する、新たな安全保障の体制です。その発展のためには日本のリーダーシップが不可欠なのです。ウクライナのためにも、世界のためも、私の心からのお願いです。

世界が再び自信を取り戻し、明日の姿に自信を持てるように。安定した平和な明日が訪れると、我々、そして次世代が確信できるように。

皆様、
 日本の皆様、
 私たちが力を合わせれば、私たちが想像する以上に多くのことを行うことが可能です。

私は、日本の皆さんの輝かしい発展の歴史を知っています。いかに調和を築き、守っているのか。規範に従い、命の価値に重きを置いているのか。環境を保護しているのか。その根底にあるのは、ウクライナ人も大好きな、日本の文化です。これは本当のことです。

2019年、私が大統領に就任して半年経過した頃のことですが、私の妻オレーナが視覚障害を持つ子どものためのプロジェクトに参加しました。このプロジェクトはオーディオブックを作るものであり、妻がウクライナ語で音声を吹き込んだのは日本のおとぎ話でした。我々ウクライナ人にとって、そして子どもたちにとって共感できる内容だったからです。そして、これは我々ウクライナ人が日本の文化に対して持っている多大な関心のほんの一部です。

両国間の距離は遠く離れていますが、ウクライナ人と日本人は似通った価値観を有しています。同じように温かい心を持っているため、実際には距離が存在しないのです。両国の協力及びロシアへの更なる圧力によって、我々は平和を達成するでしょう。そして、我々は国土を復興し、国際機関を改革できるでしょう。

私は、その時も、共に反戦連合に加わる現在と同様に、日本が我々と共にあるだろうと確信しています。今は、我々全員にとって極めて重要な時期なのです。

ありがとうございます(ウクライナ語)。

ありがとうございます(日本語)。

ウクライナに栄光あれ!

日本に栄光あれ!

ゼレンスキー・ウクライナ大統領演説(仮訳)/参議院
FNNプライムオンライン/YouTube

演説にたいして各政党代表の反応

日本の国会でのリモート演説は、欧米向けの議会演説が攻撃的だったのに対して、やかで配慮のある内容となっていました。日本の国民性を尊重し、チェルノブイリ原発事故を引き合いに出して共感を求めるアプローチをとったのは、両国の関係をより深化させるための戦略的な判断だったと考えられます。

各政党代表の反応
  • 岸田文雄首相:ウクライナの国民とその祖国を守るゼレンスキー大統領の決意に感銘を受けたと語り、ロシアに対する追加の制裁や人道支援を検討する意向を示しました。また、国連の改革の必要性を強調しました。
  • 立憲民主党・泉健太代表:原発に対する攻撃とそれに対する懸念を強調。また、国連の機能不全に対する不満を明らかにしました。
  • 国民民主党・玉木雄一郎代表:金融制裁の他に、貿易制限も検討すべきだとの考えを示しました。
  • 日本維新の会・馬場伸幸共同代表:大統領が「ウクライナの復興」に言及していたことを評価しました。
  • 公明党・山口那津男代表:ウクライナでの子どもの犠牲者数や、チェルノブイリ原発事故の放射能汚染問題を挙げて印象を述べました。
  • 共産党・志位和夫委員長:ロシアの侵略と戦争犯罪に対する憤りを表明し、核兵器の使用の禁止を訴えました。
  • 社民党・福島瑞穂党首:難民への支援を強調し、日本ができる限りの支援を行うべきだと語りました。

このように、各政党代表からはゼレンスキー大統領の演説に対するさまざまな反応が示されました。

日テレNEWS/YouTube
鳩山由紀夫元首相のツイッター発言と反響

鳩山由紀夫元首相は3月23日、自身のツイッターでウクライナのゼレンスキー大統領の日本の国会でのリモート演説前に、ゼレンスキー大統領の対応を疑問視する内容を投稿しました。

「なぜ彼はロシアの侵攻を止める外交努力をしなかったのか」と問いかけ、さらに「熱狂の先に平和はない」との立場を表明。

鳩山元首相は、現状を冷静に捉える姿勢と平和を作り出すための協力を日本国民に求めたが、具体的な「協力」の内容には触れませんでした。

村晴男弁護士の反応

一方、タレントとしても知られる北村晴男弁護士は、翌3月24日に鳩山元首相のツイートに対して批判的な意見を自身のツイッターに投稿。

鳩山氏の発言を引用し「ウクライナをロシアに売り渡す為の外交努力」を行う可能性があったと批判。更には、日本の過去の選挙に触れ「愚かなマスコミ報道に動かされて鳩山氏を首相に選んだ結果、安全保障上の危機を招き、その政党は消滅した」と痛烈に批判しました。

ゼレンスキー大統領演説の通訳についての反応

ゼレンスキー大統領の日本国会での演説は、多くの人々の注目を集めましたが、同時に演説を日本語に通訳した在日ウクライナ大使館のスタッフの女性にも多くの注目が寄せられました。

演説後のツイッタートレンドに「ゼレンスキー大統領」とともに「同時通訳」が上位にランクインするなど、多くの人がその通訳の技術やその背後にある努力に感動しました。

通訳者は、その場の雰囲気や文化的背景、さらには言語のニュアンスを的確に伝えるための努力をしていますが、それを完璧に伝えるのは非常に高度なスキルを必要とします。一方で、聞き手の側にも、その努力を理解し、通訳の背後にあるメッセージや意図を受け取る姿勢が求められます。

同時通訳は非常に難しい技術であり、特にウクライナ語と日本語という、言語構造や単語の長さ、文化背景などが大きく異なる2つの言語間での通訳は、一層の難易度が高い。限られた時間内で、意味を損なわずに訳すことは、高度な技術と集中力を要する。

その上、政治的な内容や緊張感のある場での通訳は特にプレッシャーが高まるもことになります。今回の出来事は、同時通訳の難しさやその背後にある努力を再認識させるものとなりました。

そんな中で、大使館員がその役目を果たしたことは、多くの人々からの賞賛を受ける一方で、一部のユーザーからは、通訳の技術に対する批判的な声も上がりました。

これは、情報の伝達の難しさや、人々の期待値、そしてその背後にある通訳者の努力や背景を知らないことからくるものと思われます。

ウクライナ語と日本語の翻訳の複雑さ

ウクライナ語や多くのスラブ語は、文の構造や情報の提示方法が日本語や英語とは異なるため、これを正確に翻訳することは容易ではありません。以下、その複雑さと翻訳の際の課題を考察します。

  1. 情報量が多い一文
    ウクライナ大統領府広報室が公開した原文には、情報量が非常に多い一文が含まれていました。これは、同時通訳者にとって大きな挑戦となりました。
  2. 関係代名詞や接続詞の使用
    英語の「which」や「that」のような関係代名詞や接続詞は、ウクライナ語にも存在します。これらの言葉を使用することで、情報を後ろにどんどん追加することができます。ゼレンスキー大統領の演説では、このような表現が頻繁に使用されました。
  3. ウクライナ語の文構造
    ゼレンスキー大統領の演説の中には、ウクライナ語で自然な文構造が使われていましたが、これを日本語に直訳すると理解しづらい場面もある。例えば、「確信させられるかどうかにある」という文の情報の提示の順序は、日本語としては不自然に感じられることがある。
  4. 強調表現の好み
    ゼレンスキー大統領の演説では、特定の強調表現がよく使われています。これは、大統領自身や彼のスピーチライターが好む表現であると考えられます。
賞賛の声

以下は、公共の場やSNSで見られる賞賛のコメントの一部です。

  1. 伝わる努力の評価
    「同時通訳の方、歴史に残るであろうゼレンスキー閣下の演説を一生懸命伝えようとしている。頑張って。ウクライナ語と日本語を同時通訳できるあなたは貴重な存在です。完璧ではなくとも努力は伝わっています。」
  2. 尊敬と感謝の意表現
    「ウクライナ語と日本語の同時通訳って相当難しいだろうことに加え、重要でかつこれほどまでに注目されていた上に、祖国が戦禍に巻き込まれてる状況で、緊張と涙こらえてやりきった通訳さんには敬意しかない。」
  3. 通訳者の技術の希少性の認識
    「同時通訳をボロクソ言ってる人がいるけど、同時通訳ができるレベルの日ウ通訳者がどれだけいるとお思いか…」
  4. 非難者への反論
    「非難してる人には試しに日本語で誰が喋ってる横で同時に同じ内容を日本語で話してみて欲しい。絶対に無理だから。」

これらのコメントは、一般の人々が同時通訳の難しさやその重要性を理解し、それを行う者たちへの感謝と尊敬を示していることを明確に示しています。これは、言語や文化の架け橋としての通訳者の役割の価値を再確認するものであり、彼らの努力や献身に対する感謝の気持ちを深めるものです。

今回の演説は、同時通訳の難しさやその背後にある努力を再認識させるものとなりました。

ウクライナ大統領演説の邦訳に見る異例の対応

ウクライナのゼレンスキー大統領の演説の日本語訳は、ウクライナ大統領府のHPに掲載された英語訳をもとに衆院事務局によって行われました。これは多くの点で非常に特別なことでした。

外交の通例との違い

一般的に、国際的なイベントや外国首脳の公式な演説の翻訳は、演説を行う国側によって提供されることが多い。これにはいくつかの理由があります。

第一に、演説を行う首脳の意図やニュアンスを最も正確に伝えるため、原文を作成した国の専門家が翻訳を行うのが最も適切であるとされるからです。第二に、国家間の信頼関係を維持・強化する意味でも、翻訳の正確性を保証するために相手国側に翻訳を依頼するのが一般的です。

ウクライナの現状を考慮した日本の対応

しかし、今回のゼレンスキー大統領の演説のケースでは、ウクライナが戦争状態にあるという非常事態を考慮し、日本の衆院事務局が翻訳の責務を負いました。この異例の対応は、日本がウクライナの現状に対する深い関心と共感を持っていること、また、ゼレンスキー大統領の演説の内容を日本の国民に速やかに伝えることの重要性を強く感じていることを示していると言えます。

ウクライナのゼレンスキー大統領による歴史的な演説の翻訳は、日本の衆院事務局によって実施されました。実はこのことは、国際関係の中では特別な事例でした。

「報保存と技術進化」ゼレンスキー大統領演説の翻訳を例として

情報の保存、管理、およびアーカイブは、技術の進化や社会の変化に伴って、その方法や取り組みを再評価する必要が出てきています。ゼレンスキー大統領の演説の翻訳を中心に、この課題について考察します。

限定された情報保存の問題

ウェブサイトに掲載されている情報が5年間しか保存されないという制約は、将来的な情報の利用や参照に制約をもたらす可能性があります。特定の歴史的な文書や重要な出来事の翻訳が、その後どのように扱われるかが未定であると、情報の継続的な利用や参照のための基盤が揺らぎかねません。

伝統的な取り組みとのギャップ

外国の首脳が日本を訪問した際の演説は、歓迎行事の一環として行われる伝統があり、これらの内容は正式な議事録には記録されないことが多かった。しかし、リモートでの出演や情報のデジタル化が進む中で、これらの伝統的な取り組みが現代の情報管理とどのように整合するかが課題となっています。

技術進化との適応

情報技術の進化は、情報の保存、管理、およびアーカイブの方法を大きく変える要因となっています。現代の情報化社会では、伝統的な取り組みを見直し、新しい技術やツールを活用して、情報をより効果的に保存・管理する方法を模索する必要があります。

伝統と現代の課題

ゼレンスキー大統領の演説の翻訳の取り組みを通じて、情報の保存や管理に関する現代の課題が浮かび上がってきます。伝統的な取り組みと新しい技術のギャップを埋めるための取り組みや、情報の継続的な保存・利用のための新しい方針・ツールの開発が求められています。

「 ゼレンスキー演説中止せよ」ウィキペディアページ改変事件

2022年3月23日、ウクライナのゼレンスキー大統領が日本の国会でビデオ演説を行う中、ゼレンスキー大統領のウィキペディアのページに一時的な不正な編集が行われ、その事件がSNS上で大きな話題となりました。

事件の経緯

ゼレンスキー大統領のビデオ演説が実施されている最中、ツイッターユーザーから「ゼレンスキーのwiki荒らされてる」「警告文出てきた」「すぐに元に戻ったけど怖かった」という内容の投稿が相次いぎました。これらの投稿を受けて多くの人がゼレンスキー大統領のウィキペディアページを確認し、事実確認の動きが広がった。

J-CASTニュースの報道によれば、ウィキペディアの編集履歴を調査した結果、一時期、ゼレンスキー大統領のページが黒の背景に「ゼレンスキー演説中止せよ」という赤い大きな文字で書き換えられていたことが確認されています。表示された期間は明確には特定されていないが、短時間で元のデザインに戻されています。

ウィキペディアは、その特性上、誰もが編集が可能なオンライン百科事典です。しかし、それゆえに不正編集やヴァンダリズム(故意の破壊活動)が行われることもあります。特定の政治的な動きや出来事と連動してページが改変されるケースも過去には報告されており、今回の事件もその一例と考えられます。

このような改変行為は、一時的に情報の流布や意見形成に影響を及ぼす可能性があり、特に重要な出来事や状況の最中に行われる場合、その影響は無視できないものになります。ウィキペディアの運営側も、このような編集行為に対して監視体制を強化しているが、完全に防ぐことは難しいとされています。

メディアの予告と実際の反応「スタンディングオベーション」問題

ゼレンスキー大統領の演説を中継するに当たり、フジテレビの「Live News イット!」が流した「演説生中継スケジュール」の内容が、ツイッターを中心に大きな反響を呼び起こした。特に、2回の「スタンディングオベーション」のタイミングが示されていたことが、多くの視聴者から疑問や違和感を感じる声を引き起こしました。

SNSでは、スタンディングオベーションという行為が予定されていること自体に疑問の声が挙がりました。通常、このような行為は自然に発生するものであり、それをスケジュールに組み込むという発想自体が「普通ではない」との指摘が多かったのです。これにより、SNS上では「スタンディングオベーション」が一時トレンド入りするほどの話題となりました。

さらに、実際の中継を見た視聴者からは、予告されたスタンディングオベーションとは異なる流れが観測され、そのギャップにさらなる反応が寄せられました。

実際の演説では、細田博之衆院議長の挨拶の後、議員たちは起立することなく座ったままゼレンスキー大統領を拍手で迎えました。ただし、ゼレンスキー大統領の演説終了時には、スタンディングオベーションが行われました。

れいわ新選組、ゼレンスキー大統領の演説についての談話を発表

3月23日、山本太郎が代表を務めるれいわ新選組は、国会の衆院議員会館で行われたウクライナのゼレンスキー大統領の演説に関する公式談話を発表した。

  • 主な談話の内容
    1. 軍事侵攻を受けるウクライナの首脳として、他国に連帯と行動を求めるゼレンスキー大統領の要求は理解するものの、日本の国会として拙速に反応するべきではないとの立場を示した。
    2. ウクライナのコルスンスキー駐日大使が国会への演説要請を行ったのは3月17日で、それから6日後の開催は早過ぎると指摘。
    3. 事前に配布された演説会の進行表には、ゼレンスキー大統領の出演時と演説後に「起立して拍手」の指示があり、反応の仕方までが事前に指定されていることに疑問を呈した。
    4. 衆参両議長を含む全参加者が起立して拍手する場面が放送された場合、日本が更なる制裁を受け入れる姿勢と受け止められる懸念を表明。
    5. 日本はロシアとウクライナのどちらの側にも立たず、中立の立場から戦争の即時停戦を呼びかけ、和平交渉のテーブルを提供すべきとの考えを示した。

また、れいわ新選組は以前から避難民の受け入れを急ぐべきとの立場を取っており、この談話でも周辺国への財政支援や医療物資の提供を訴え、民間の力を活用しての避難民受け入れの拡大を再度要請した。

この談話は、ゼレンスキー大統領の演説とそれに続く日本の対応に対するれいわ新選組の明確な立場を示すものとなった。

駐日ウクライナ大使、ゼレンスキー大統領の日本向けメッセージを詳細に語る

2022年4月1日午前、東京・内幸町にある日本記者クラブで、ウクライナのセルギー・コルスンスキー駐日大使が記者会見を開催した。大使は、現在の戦争の状況を説明するとともに、3月23日にオンラインで実施されたゼレンスキー大統領の国会演説についても触れました。

ゼレンスキー大統領は、他の国々、特に米国や英国、イスラエルに向けた演説で直接的な軍事的支援を要求していました。しかし、日本に対する演説では異なるアプローチを取り、国連安全保障理事会の機能不全を鑑み、新しい安全保障体制の形成における「日本のリーダーシップ」の必要性を訴えました。

コルスンスキーは、この演説の中の言葉の選び方は「非常に慎重」だったと評価。特に、憲法第9条をはじめとする「日本の政治的環境や、日本人の戦争に対する態度」も考慮されていたと指摘しました。

また、演説の終盤でゼレンスキー大統領が紹介したエピソードも印象的であった。大使は統領の妻のオレーナさんが視覚障害を持つ子供のためのオーディオブック制作に関与したことを明かし、彼女が日本のおとぎ話を朗読したと述べました。そのおとぎ話が「桃太郎」であったことも後に明らかになりました。

このエピソードから、ゼレンスキー大統領が日本の文化に敬意を表し、配慮をしていたことが分かります。

ゼレンスキー大統領の日本向け演説と「真珠湾攻撃」の認識

ウクライナのゼレンスキー大統領が行った国会リモート演説は、その言葉選びやトーン、そして内容が多くの日本人に好意的に受け入れられています。特に、彼の演説に見られる日本人の感性や文化への理解が「日本人の気質をよく理解している」として高く評価されており、これには「スピーチライターが優秀すぎる」という声も挙がっています。

一方で、一部の日本人の間では、ゼレンスキー大統領の以前の米連邦議会でのオンライン演説に対する疑念や不快感が残っていました。

真珠湾の演説

アメリカ議会でのゼレンスキー・ウクライナ大統領の演説は、多くの国際的な注目を集めたが、特に日本で反響ありました。その原因は、ロシアによるウクライナへの奇襲攻撃を、日本による真珠湾攻撃や9.11のテロと並べて比較した点にある。

アメリカの史観において、原爆投下は、真珠湾攻撃への「報復」としての側面があると見なされることがあります。この視点から、真珠湾攻撃は「卑劣な奇襲」とされ、その後の原爆投下は戦争を早期終結させるため、そして報復として正当化される感情的根拠が形成されています。

さらにアメリカでは、9.11のテロ攻撃と1941年の真珠湾攻撃は、本土への奇襲攻撃として同じカテゴリーに分類されることが一般的です。

しかし、日本にとって真珠湾攻撃はその後の太平洋戦争の始まりとして、そして原爆投下へと繋がる出来事として非常にセンシティブな出来事として位置づけられています。

真珠湾攻撃と原爆投下「日本の感情的背景」

この感情は日本の保守派だけでなく、多くの日本人に共有されているものです。その理由は、真珠湾攻撃とアメリカによる広島・長崎への原爆投下が、歴史的な文脈の中で密接に結びついて語られるからです。

真珠湾攻撃と原爆投下の性質は、実質的には大きく異なります。真珠湾攻撃は、米太平洋艦隊や基地施設、飛行場などの軍事目標に焦点を当てたものでした。一方、原爆投下は広島と長崎の市街地を直接標的とし、25万人以上の無辜の民間人が犠牲となりました。

このため、日本人の中には、真珠湾攻撃に対する反省の気持ちと、原爆投下や東京大空襲などの大量の市民犠牲を伴った攻撃とは、異なる問題として捉えるべきだとの認識が存在します。これは、日本の戦争体験とその後の平和を尊ぶ国民性、そして戦争の犠牲者を追悼する文化に根ざしています。

このような背景から、アメリカでのゼレンスキーの演説は、日本の歴史的背景や真珠湾攻撃に対する国民感情を無視したものと受け取られ、多くの日本人から強い反発を受けることになったのです。

各SNSでは、怒りや失望、憤りの声で溢れ、これまでウクライナを支援していたネットユーザーからも批判的な声が上がりました。

さらには、日本がこれまでウクライナに対して示してきた支援の是非を問い直す声も多く上がりました。その結果、「真珠湾攻撃」はSNS上でのトレンドワードとして急上昇ました。

例えば、高須クリニックの高須克也院長は、ゼレンスキー大統領のこの発言に対して「ゼレンスキー大統領が嫌いになった。アメリカ人のウケ狙いで真珠湾攻撃を引き合いに出して日本国民に恥をかかせてる(怒)」と投稿し非常に強い不快感を示しました。

または、多くの日本人が自身の感じる不満や怒りを表現し「耳を疑った」「非常に不愉快だ」「もう冷めた」「ウクライナを支持した日本の人々の中にも考えを変えた人が多い」「真珠湾を比喩に持ち出すのは適切でない」というようなコメントが多く見られました。

テレビワイドショーでのゼレンスキー大統領の真珠湾発言反響

テレビワイドショーでは、ゼレンスキー大統領の真珠湾発言が連日のように取り上げられ、国内の著名人やタレントたちもこの件についてコメントをしています。

お笑い芸人の松本人志は、真珠湾攻撃に言及したゼレンスキー大統領の演説に不快感を示すコメントを発表。「真珠湾攻撃を引き合いに出すのは適切でない」と指摘し、その上で「民間人を巻き込んだ事件ではないのに、今回の事件と同列に扱うのは納得がいかない」との立場を明らかにしました。さらに、もしゼレンスキー大統領が日本で演説する場合、このような比較は適切ではないと感じるだろうと指摘しました。

一方、ニュースキャスターの安藤優子は、ゼレンスキー大統領の演説の内容が国ごとに異なることを指摘。ドイツにおけるゼレンスキー大統領の発言内容やその背景についても言及し、ゼレンスキーを「巧妙に状況に応じて発言を変える政治家」と評価しました。

さらに、ジャーナリストの江川紹子はゼレンスキー大統領の演説の背後にある戦略性を強調。その発言が多くの人々の心を動かし、さらなる支援を得るためのものであるとの解釈を示しました。さらに、ゼレンスキー大統領とプーチン大統領の異なるコミュニケーション手法に着目し、ゼレンスキー大統領のメディアを活用した戦略に賞賛の声を寄せました。

在日ウクライナ人外交評論家、ゼレンスキー大統領の「真珠湾攻撃」例示に違和感

米連邦議会で行ったリモート演説での「真珠湾攻撃」の例示が日本国内で大きな話題となっている中、在日ウクライナ人で外交評論家のナザレンコ・アンドリーさんが自身のツイッターで感想を述べました。

ナザレンコは「真珠湾攻撃は民間人を的にしなかったので、例えとして不適切だと思います」と、ゼレンスキー大統領の真珠湾比喩に違和感を示すコメントを投稿。そして、多くの人々が偏った歴史認識を持つことへの懸念を述べ、トランプ元大統領の「リメンバー・パール・ハーバー」発言を例に挙げながら、歴史認識の修正には時間がかかるとの見解を示しました。

この投稿には多くの共感の声が寄せられ、日本国内からの批判に対しても「ゼレンスキー大統領もアメリカの民意を上げるために言ったのだろう」との意見や「ナザレンコさんのコメントに救われた」との声も多く見られました。

日本国内ではウクライナ支援の輪が広がっていく

ウクライナのゼレンスキー大統領の日本での演説は、多くの国民の心を動かし、ウクライナ支援の輪を広げるきっかけとなりました。確かに、演説に対する評価は一様ではありませんでしたが、多くの人々がそのメッセージを肯定的に受け止め、実際の支援活動への動きを加速させました。

全国各地での義捐金の募集、チャリティーコンサートの開催など、民間の取り組みが増える一方で、自治体や企業もウクライナの難民の受け入れを進めています。そして、これらの動きを背景に、日本政府も積極的な姿勢を見せています。古川禎久法相を特使として近隣国・ポーランドに派遣するという決定は、日本のウクライナへの関与をさらに強化するものとなりました。

また、日本が歴史的に経験した原発の事故やその後の復興努力、さらには戦争の経験から得られる平和主義の精神は、ウクライナとの連帯を深める上での大きな繋がりとなっています。日本は侵略に反対し、ウクライナとの絆を強める方針を取り、欧米とともに対ロシア制裁を実施しています。その上で、ウクライナへの1億ドルの緊急人道支援を表明し、岸田首相もさらなる支援を約束しています。

これらの取り組みを通じて、日本は国際社会において、ウクライナを支える立場を明確にし、その姿勢を強化していることが伺えます。

日本政府によるウクライナ首都呼称変更の発表

2022年3月31日、演説からおよそ一週間後、日本政府はウクライナの首都の呼称をキエフから「キーウ」に変更するという重要な決定を公表した。この変更は、国際的な状況の中で、ウクライナとの連帯を更に強化する意味合いが込められていた。多くの国際的な議論の中で、日本も地名の呼称を変更することで、ウクライナとの関係をより強固にする姿勢を明確にしたのであった。

日テレNEWS/YouTube
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二〇二二年二月二四日、ロシア軍に侵攻を受けて以降、世界第二位の軍事大国との極めて不利な戦いを、ゼレンスキーは、砲弾や戦闘機ではなく「言葉の力」で戦ってきた。事実、「ゼレンスキーは、降伏拒否、反抗、勇気、勇敢さの象徴になりつつある」(オリシア・ルツェビッチ氏/BBCのラジオ番組)、「人間に与えられるあらゆる才能のうち、雄弁に語る能力ほど貴重なものはない」(イギリスの故・チャーチル元首相の言葉を用いて/アメリカのCNNの番組)と、各メディアは率直にその発信力に賛辞を送っている。 では、なぜ若き大統領の言葉はなぜ自国民を奮い立たせ、世界をも動かすのか? 本書では、ウクライナの国民や軍を奮い立たせ、世界の主要国の議場を総立ちにさせてきた一〇〇の言葉を拾い集め、五つの種類に分類しながら、それぞれ解説を加えていく。(著者より)(「Books」出版書誌データベースより)
【ウクライナ危機(45)】原子力発電所を標的にした軍事作戦…世界を戦慄させた出来事

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