【ウクライナ危機(40)】ロシアは国を上げて同性愛者を迫害している……。ウクライナ侵攻もう一つの背景『LGBTQ問題』

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【ウクライナ危機(40)】ロシアは国を上げて同性愛者を迫害している……。ウクライナ侵攻もう一つの背景『LGBTQ問題』

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【ウクライナ危機(39)】宗派を超え世界中のキリスト教がロシアを批判する中で戦争支持を続けるキリル総主教……。ウクライナ正教会はついに関係を断絶する『孤立するロシア正教会』
“https://diggity.info/society/ukraine-39/”

Lesbian, Gay, Bisexual, Tansgender, Queer

ウクライナのLGBTQ(性的マイノリティ)

Bloomberg Quicktake: Now/YouTube

 ウクライナ侵攻で世界から批判を浴びるロシアは、LGBTQなど性的少数派を抑圧していることでも知られる。

ディープフェイクを善用する 露の弾圧からLGBTQを守る/上/毎日新聞.2022

ウクライナのLGBTQ(性的少数者)は、自分の命を失うことだけでなく、自国がロシアに占領された場合に受ける迫害についても恐れている。

「ロシアが勝てば闇」 ウクライナのLGBTQ兵が命を懸ける理由/Forbes JAPAN.2022

 ウクライナ最大のLGBTQ権利擁護団体であるキエフ・プライドのレニー・エムソン代表は1月、PinkNewsに対して、LGBTQコミュニティは必要があれば戦う用意があると語りました。「この点で私たちは一致団結しています。ジェンダーアイデンティティや性的指向に関係なく、みんな一緒に、前に進むのです」

ウクライナのLGBTQ団体が「私たちは決してあきらめない。共に勝利する」との声を上げました/PRIDE JAPAN.2022

 侵攻が始まった木曜日、キエフ・プライドはTwitterで「私たちは強くあり続ける、怖気づいたりしない」と綴りました。

ウクライナのLGBTQ団体が「私たちは決してあきらめない。共に勝利する」との声を上げました/PRIDE JAPAN.2022

 キエフ・プライドのエドワード・リース氏はCBSのインタビューに対して「ウクライナはヨーロッパの国です。私たちには10年のプライドマーチの歴史があります」と語りました。「私たちはロシアとは全く異なる道を歩んできました。人々の人権やLGBTQ、女性の権利などについての意識が変わっていく様を見てきました。ですから、ロシアに与することは少しも望んでいません」

ウクライナのLGBTQ団体が「私たちは決してあきらめない。共に勝利する」との声を上げました/PRIDE JAPAN.2022

LGBTQって?

#LGBTQ

セクシュアリティにおいて、身体の性と心の性が一致し、異性を恋愛対象とする人たちが多数者です。しかし、同性を好きになる人、同性も異性も好きになる人、いずれも好きにならない人、また、身体の性と心の性が一致していないような感覚や違和感を抱きながら日々の生活を送っている人もいます。

LGBTQとは/LGBT講演会 事前資料.大阪高等学校 学校法人 大阪学園

セクシュアリティにおいて、身体の性と心の性が一致し、異性を恋愛対象とする人たちが多数者です。しかし、同性を好きになる人、同性も異性も好きになる人、いずれも好きにならない人、また、身体の性と心の性が一致していないような感覚や違和感を抱きながら日々の生活を送っている人もいます。

LGBTQとは/LGBT講演会 事前資料.大阪高等学校 学校法人 大阪学園
LGBTとは

LGBTとは、レズビアン(Lesbian)、ゲイ(Gay)、バイセクシュアル(Bisexual)、トランスジェンダー(Transgender)の頭文字で構成されている言葉。そんな中、最近では「性自認や性的指向はその4種類だけではない」ということで、さらにLGBTQという言葉もよく使われるように。

ハンガリーで反LGBTQ法案が可決。「性的マイノリティーへの差別だ!」と世界中から批判殺到/ELLEgirl.2021
LGBT+Q=LGBTQ

LGBTQの「Q」は、クィア(Queer)またはクエスチョニング(Questioning)という二つの言葉を意味しており、「クエスチョニング」は自分のセクシュアリティーが定まっていない、またはあえてカテゴライズしていないという状態、「クィア」は多様性のある性的マイノリティー全体を包括する言葉だとされている。

ハンガリーで反LGBTQ法案が可決。「性的マイノリティーへの差別だ!」と世界中から批判殺到/ELLEgirl.2021

ウクライナに暮らすLGBTQ

Voice of America/YouTube

ロシアの侵攻前も、ウクライナでLGBTQとして生きることは楽ではなかった。

「ロシアが勝てば闇」 ウクライナのLGBTQ兵が命を懸ける理由/Forbes JAPAN.2022

例えば、同性カップルに否定的な感情を抱いている人が8割を超えています。無論、同性婚は法制化されていません。

ウクライナのLGBTQ当事者を支援しよう/LGBTER.2022

宗教組織の間ではLGBTQへの反発が強いものの、近年には性的少数者の権利向上運動が大きく進展。ウクライナは、自国を逃れざるを得なかった東欧のLGBTQが集まる場所となっていた。

「ロシアが勝てば闇」 ウクライナのLGBTQ兵が命を懸ける理由/Forbes JAPAN.2022
緊急時に出国するときも暴力などの被害を受ける可能性

国連難民高等弁務官事務所の2021年の報告書によると、LBGTQの人々は緊急時に国を出ようとする際にたびたび暴力や被害に直面している。とくにトランスジェンダーが国境を越える場合、身分証明書とアイデンティティが一致しないと面倒なことにもなりうる。往々にしてボディチェックを受け、拘束や虐待に遭う可能性すらある。それに加え、ウクライナは2016年にトランスジェンダーの施設入院を廃止したものの、人権擁護団体ILGA-Europeが同年行なった調査によれば、LBGTQI+コミュニティ支援という点ではウクライナはヨーロッパ49カ国中39位だった。以来ウクライナではトランスジェンダーに対する曖昧な手続きを最小化する措置が講じられ、

ウクライナのトランスジェンダー女性が抱える苦悩「私は誰も殺したくない」/Rolling Stone Japan.202

ナチス・ドイツの同性愛者迫害とLGBT

United States Holocaust Memorial Museum/YouTube

ドイツでは19世紀の帝政時代からソドミー法たる刑法175条が存在したものの、第一次大戦後の一時期は名目化していたようで、ベルリンは当時世界でも有数のLGBT天国だったとか。

『アイヒマンを追え! ナチスが最も畏れた男』に学ぶ、戦争下ドイツでのセクシュアリティ/FILMAGA. Filmarks.2021
刑法175条「ソドミー法」

「ソドミー法」とは、平たく言えば男性同士の性行為を犯罪とする法律の総称です。

『アイヒマンを追え! ナチスが最も畏れた男』に学ぶ、戦争下ドイツでのセクシュアリティ/FILMAGA. Filmarks.2021
ヒトラーの独裁の下で秘密警察による同性愛者狩り

ところが、総統となったヒットラーによる独裁が始まると、同性愛を罪と定めた刑法175条は改正されて処罰の対象が拡大され、秘密警察ゲシュタポによる同性愛者狩りが始まったのです。

ホロコーストで消えた「ピンクトライアングル」は、なぜLGBTQのシンボルになったのか?【世界が変わる異文化理解レッスン 基礎編13】/サライ.jp.2019

ナチスは、同性愛関係を「異常」で「男らしくない」行動と見なしました。これは、子孫を生み出さないことから、「アーリア人」が増えることを奨励するナチスの政策にとって脅威だったのです。ヒトラーが政権を取った直後、突撃隊(SA)が同性愛クラブを襲撃し始めました。多くの同性愛者が逮捕され、強制収容所に収容されました。何十人もの十代の若者が、この集団に含まれていました。

「国家の敵」/ホロコースト百科事典

ドイツ史上、同性愛事件としてよく知られるのは、オイレンブルク事件とナチス期のレーム事件(1935)である。皇帝ヴィルヘルム二世は、ビスマルクを追い出して親政をはじめたさい、オイレンブルク伯とその友人たちを側近として取り立てた。ナショナリストのハルデンは、皇帝を政治に不適な弱々しい「女性」メタファーで語り、オイレンブルクを長とする側近グループ(リーベンベルク円卓)を「男色家の奸臣房」と非難した。男性同性愛は、「男性同盟」国家ドイツの国益を損なうとみなされたのである 。

補論3)近代市民社会における男性同性愛者排除の論理(三成美保)/比較ジェンダー史研究会
女性同性愛者やドイツ人と付き合っていないドイツ人以外の同性愛者は迫害の対象に含まれなかった

女性同性愛者はナチスの人種政策に対する脅威とは見なされず、一般的に迫害の対象にはなりませんでした。同様に、ドイツ人以外の同性愛者も、彼らがドイツ人とつきあっていない限り、一般的に迫害の対象にはなりませんでした。ナチスではほとんどの場合、もとは同性愛者だった者が「民族意識」を持つようになり、それまでのライフスタイルをあきらめた場合、彼らを「民族共同体」に受け入れる姿勢を取っていました。

第三帝国における同性愛者の迫害/ホロコースト百科事典
強制収容所で同性愛者は「ピンクのトライアングル」を付けさせられた
World Jewish Congress/YouTube

強制収容所では、収容された人々は囚人番号に加えて、色の違う逆三角形の布のマークを囚人服につけられ、グループ分けされていました。ユダヤ人は黄色、政治犯は赤、刑事犯は緑、反社会分子とされた人たちは黒、新興宗教信者は紫、ロマ人は茶色、そして男性同性愛者はピンクのトライアングルをつけられていました。刑法175条には女性の同性愛は含まれていなかったので、処罰の明確な対象になっていなかったものの、反社会的とみられて収容され、黒のトライアングルをつけさせられた女性たちもいたと言われています。

ホロコーストで消えた「ピンクトライアングル」は、なぜLGBTQのシンボルになったのか?【世界が変わる異文化理解レッスン 基礎編13】/サライ.jp.2019
収容所では同性愛者を大量虐殺

1万人とも60万人とも言われるLGBTQが収容所で組織的に虐殺されました。

ピンク/PRIDE JAPAN
収容所から生き残ったが、当時外の世界は同性愛が違法……

収容所の生き残りの人たちの多くがそうであったように、生き残ったLGBTQも戦後、口をつぐんでいました。また、収容所を出て家に戻っても、当時の欧州の国々はどこも同性愛を違法と見なしており、彼らは戦後補償も受けられず、周囲に真実を語ることもできずにいました。

ピンク/PRIDE JAPAN
LGBTQを追悼……「ピンクのトライアングル」が解放運動のシンボルへ
The Pink Triangle

しかし1972年、ハインツ・ヘーガーというゲイの生き残りの方が『ピンク・トライアングルの男たち―ナチ強制収容所を生き残ったあるゲイの記録 1939-1945』という本を発表し、大きな反響を呼び、これがきっかけで、亡くなったLGBTQへの追悼として、ホモフォビアへの抵抗として、ピンク・トライアングルを(当時の言葉で言う)ゲイ解放運動のシンボルとしようという運動が高まり、世界中に広がりを見せました。アムステルダムには、迫害を受けた同性愛者を追悼するためのピンク・トライアングルの記念碑が建立されています。

ピンク/PRIDE JAPAN
「レインボーフラッグ」の誕生!!
Great Big Story/YouTube

 1978年にレインボーフラッグがデザインされ、PRIDEのシンボルとしてはレインボーカラーのほうがメインになりましたが、ピンクもまた、LGBTQのシンボルカラーであり続けています。シンガポールがパレードの代わりに開催している「ピンクドット」もそういう意味です。 

ピンク/PRIDE JAPAN

レインボーフラッグを考案した人物は、サンフランシスコのギルバート・ベーカー氏。1976年にデザインされ、1978年6月25日に開催された「サンフランシスコ・ゲイ・フリーダム・デイ・パレード」にて初めて公の場で使用されたとされています。

LGBTの象徴「レインボーフラッグ」の意味とは?色分けされた6色の理由。レインボーグッズも紹介。/自分らしく生きるプロジェクト.2020
その時代、同性愛は病気と医学的に認識されていた……。

精神医学で診断基準として使われるWHOのICD(国際疾病分類)において、同性愛は1980年代まで医学上「精神障害」とされていました。

ホモセクシュアル/ホモロマンティックとは?【”ホモ”って差別用語?】/JobRainbow.2022

1948年に定められたICD-6に加えられた精神障害のセクションには「セクシュアリティの逸脱」、1965年のICD-8には「セクシュアリティの逸脱・障害」としてHomosexuality(同性愛)は分類されていました。

ホモセクシュアル/ホモロマンティックとは?【”ホモ”って差別用語?】/JobRainbow.2022

位置付けが変わったのは1990年に発表されたICD-10。こちらで「性の方向づけそのものは障害とはみなされない」と注釈がついたことで、同性愛は「疾病」「障害」に分類されなくなりました。

ホモセクシュアル/ホモロマンティックとは?【”ホモ”って差別用語?】/JobRainbow.2022
1990年にWHOが同性愛を病気の分類から除外

1990年5月17日に世界保健機関(WHO)は、同性愛を国際疾病分類から除外しました。このことを記念し、2005年から5月17日は国際反ホモフォビアの日(IDAHO)と呼ばれるようになりました。

5月17日に際して/EMA日本.2014
1994年 ドイツが刑法175条「ソドミー法」を撤廃

175条は、東ドイツでは1968年の刑法改定で条文が削除されたが、西ドイツでは1968年にナチス以前の条文に戻されたものの継続して施行され、東西ドイツ統一後の1994年になってようやく撤廃された。

ナチス時代の法で有罪となった同性愛者5万人、判決無効に ドイツ/AFPBB News.2017

ナチスを彷彿とさせる弾圧……。ロシア南部「チェチェン共和国」

moviecollectionjp/YouTube

 ロシアのプーチン大統領は、自国がウクライナに戦争を仕掛けた理由を複数挙げて説明している。それぞれの説得力にはばらつきがある。例えば北大西洋条約機構(NATO)がロシアの国境に向けて拡大するのを止める、ロシア人の同胞をジェノサイド(集団殺害)から守る、あるいはウクライナを「非ナチス化」するという根拠のない主張もある。

プーチン氏から見た世界、よみがえる中世の物語/CNN.co.jp.2022

「非ナチ化」がいったい何を指すのか不明だ。そもそもナチスのような蛮行を行っているのはウクライナではない。ロシア政府の後ろ盾のあるチェチェン共和国だ。

「この国にゲイは存在しない」プーチン政権を後ろ盾にするチェチェン。その「ゲイ狩り」の実態を暴く/HUFFPOST.2022
チェチェン共和国の独裁者カディロフ首長

チェチェンはカフカス地方に住むイスラム系民族で、’90年以降、2度にわたってロシアに独立戦争を仕掛けた。だが、プーチンは独立派の中心人物アフマド・カディロフに利権を与えて懐柔し、「ロシアの犬」に仕立て上げた。今は息子のラムザン・カディロフが独裁体制を敷き、私兵をウクライナに派遣する。

プーチンが派遣した、ゼレンスキー暗殺部隊「ロシアの犬」の恐ろしい正体/現代ビジネス | 講談社.2022

、あるテレビのインタビューで、チェチェンで同性愛者が拉致や拷問を受けている件について質問を受けると「そんな質問をしにきたのか」と笑い、こう答えた。

ロシア構成国チェチェンの「ゲイ狩り」やブラジルのトランス女性描く映画。世界で起きる暴力にどう抗えるか/Yahoo!ニュース.2022

「この国にゲイは存在しない。もしいるならカナダにでも連れてってくれ。民族浄化のためにもいらない」

ロシア構成国チェチェンの「ゲイ狩り」やブラジルのトランス女性描く映画。世界で起きる暴力にどう抗えるか/Yahoo!ニ
大規模な組織的弾圧

 このチェチェンで近年起きているのが、性的少数者に対する大規模な組織的弾圧だ。イスラム圏のチェチェンでは同性愛者(特に男性)への差別が元々根強いという社会的背景がある。それでも、弾圧が始まる以前は、目立たないよう努めれば、性的少数者であっても比較的平穏に暮らせたとされる。

「LGBTの粛清」が蔓延るロシアの「内なる外国」チェチェン/新潮社 Foresight.2022

 事態が暗転したのは2017年春のことだ。違法薬物に絡む治安当局の捜査が大弾圧へと転じた。薬物使用が疑われる男性容疑者の携帯電話の保存データから、彼が同性愛者と示す写真が見つかったのが事の起こりだった。当局は連絡先に登録されていた男性たちを次々と拘束し、拘束後には殴打や電気ショックの拷問を加えて無理やり情報を提供させ、同性愛者と疑う計100人以上を芋づる式に狩り出した。

「LGBTの粛清」が蔓延るロシアの「内なる外国」チェチェン/新潮社 Foresight.2022

 拷問によって多数の死傷者や行方不明者が出たとされ、同様の弾圧はその後も繰り返された。昨年6月には、家族から性的指向を理由に暴行され、隣接するダゲスタン共和国の保護施設へ逃れていた22歳の女性が、チェチェンの警官隊によって強制的に連れ戻される事件もあった。

「LGBTの粛清」が蔓延るロシアの「内なる外国」チェチェン/新潮社 Foresight.2022

 チェチェンの同性愛者弾圧に関する報道は、世界各国で非難を巻き起こした。

同性愛者には「うそか死しかない」 チェチェン逃れた男性ら語る/AFPBB News.2017
ロシア政府は迫害の事実を認めず

恐怖に怯え、息を潜めて暮らしている彼ら彼女らを、活動家たちはモスクワの隠れ家にかくまうが、なお追っ手が迫り、カナダなど海外へ脱出させるため秘密裏に動く。

映画「チェチェンへようこそ-ゲイの粛清-」元町映画館で ウクライナ情勢とかぶるロシアの姿勢/兵庫おでかけプラス | 神戸新聞NEXT.2022

活動家たちは、ロシアと2度の独立紛争を交えたチェチェンのカディロフ首長を憤慨させないよう、ロシア政府が目をつむっていると非難している。

同性愛者には「うそか死しかない」 チェチェン逃れた男性ら語る/AFPBB News.2017

ロシア政府もチェチェンで起きている同性愛者らへの迫害について認めることはない。

ロシア構成国チェチェンの「ゲイ狩り」やブラジルのトランス女性描く映画。世界で起きる暴力にどう抗えるか/Yahoo!ニュース.2022
ナチスも同じように同性愛者を迫害していた

その恐るべき迫害の実態は、かつてナチスが行った同性愛者への迫害を彷彿とさせる。

「この国にゲイは存在しない」プーチン政権を後ろ盾にするチェチェン。その「ゲイ狩り」の実態を暴く/HUFFPOST.2022

今回のプーチンのウクライナ侵攻の最終目標が何か、はっきりしないが、仮にウクライナに親ロシア派の傀儡政権を誕生させることだとすれば、ウクライナの性的マイノリティたちも、チェチェン同様の危機にさらされる可能性があるだろう。

「この国にゲイは存在しない」プーチン政権を後ろ盾にするチェチェン。その「ゲイ狩り」の実態を暴く/HUFFPOST.2022

憲法改正で同性婚が禁止!ロシアのLGBT迫害

VICE Japan/YouTube

 ロシアでLGBT(性的少数者)であることは、生きづらいだけでなく、危険でもある。SNSでゲイを装って誘い出して監禁・虐待し、その様子を撮ってSNSで堂々と公開までする。LGBT反対派のページには「家族を崩壊させる犯罪だ」「我々の価値観は西欧とは違う」との言葉が躍る。

ロシアのゲイに聞いた 「この国に自由はあるのか」(ロシアの謎)/朝日新聞GLOBE+.2018
ソ連では同性愛は犯罪だった

 もともとロシア社会には同性愛に対する嫌悪感が強く、ソ連時代には同性愛は刑法典で「犯罪」と位置づけられていた(1993年に同性愛を犯罪とする条項は削除)。現在でもロシア社会では「同性愛者はHIVの元凶だ」あるいは「刑務所帰りのごろつきだ」といった偏見も根深く、なかでもモスクワ市のルシコフ前市長はゲイプライドマーチ(同性愛者の権利を訴えるデモ行進)を「悪魔の所行」と呼んだことでも知られる。

同性婚合法化で苦慮するロシア政府 「問うな/WEDGE Infinity.2015
「政府・ロシア正教会・過激派」三位一体の迫害

ロシアの反同性愛には3つの顔がある、と記者は言う。政府と、ロシア正教会と、そして過激派だ。政府が法を通し、教会がそれを祝福し、過激派が実行する。憎悪の三位一体とでも呼ぶべきか。ある過激派の活動に同行した記者は、メンバーのひとりから、こんな言葉を聞かされる。「政府がちゃんと取り締まらないなら、ほかの手が必要だ。まずは拳だ。それから弾丸だ」。むき出しの暴力は、ふくらみ続けるクレムリンのエゴと重なり合って、散発的な襲撃は大きな政治勢力へと変貌する。

「反同性愛」をめぐる三位一体──プーチンは神を演じ、ロシアの路地は血に濡れる/GQ Japan.2014
「同性婚は悪魔崇拝」プーチンの主張

プーチンは、欧米が掲げる「民主主義」、「自由」、「多様性」などという価値観は、ロシアには無縁なものであるだけでなく、ロシアを堕落させるものだと考えている。

プーチン大統領はなぜウクライナを攻めるのか 欧米の価値観を“全否定”する行動原理/テレ朝news.2022

ある集会で同性婚を「悪魔崇拝」とプーチンが呼んだ時、ロシア社会や経済界を仕切る取り巻きのオリガルヒ(新興成金)たちは拍手喝采を送った。欧米における同性愛者の権利拡張を、プーチンは、無垢なロシアを堕落させるために欧米が仕掛けた世界的陰謀だとみなしている。

プーチン大統領はなぜウクライナを攻めるのか 欧米の価値観を“全否定”する行動原理/テレ朝news.2022

しかもプーチンは、ロシア国内でみずからの政権に反対する民主派勢力を「外国と結託して同性愛を煽る異常性愛者」と決めつけている。

プーチン大統領はなぜウクライナを攻めるのか 欧米の価値観を“全否定”する行動原理/テレ朝news.2022
同性愛者をの人たち狩る!?過激な集団の出現
Voice of America/YouTube

 ロシアのゲイとレズビアンはこれまでにも、暴力やヘイトクライム(憎悪犯罪)、同性愛嫌悪による殺人の被害を受けてきた。しかし、LGBTの人々に対する暴力をゲームに変え、遊び感覚でLGBTの人々を“狩る”ことを推奨する自警団的集団の出現は、状況のさらなる悪化を示していると活動家らは指摘している。

「同性愛者狩り」で活動家殺害か ロシアのLGBTに恐怖広がる/AFPBB News.2019

 活動家らによると、ピラのウェブサイトは約1年前に開設され、標的となる人物の名前と写真を投稿した上で、標的への襲撃に対し「報酬」を約束していた。

「同性愛者狩り」で活動家殺害か ロシアのLGBTに恐怖広がる/AFPBB News.2019
ロシアのLGBTQを迫害する法律!「同性愛プロパガンダ」禁止法

 こうした社会の保守的な見方に同調する形で、ロシアではサンクトペテルブルグ市、モスクワ市といった有力自治体が「非伝統的な性的関係のプロパガンダ」を禁止する条例を相次いで制定し、2013年には連邦法として全土に適用範囲が広がった。

同性婚合法化で苦慮するロシア政府 「問うな/WEDGE Infinity.2015

この法律についてプーチン大統領は、児童がどちらの性別で将来の人生を生きるのか、どのような生き方を選ぶのか、成人した状態で選択できるようにさせるためのものと説明した。成人後に性別を変える点に関して「制限するものは何もない」とした。

プーチン大統領 反同性愛プロパガンダ法についてコメント/スプートニク日本ニュース.2019

ソチ五輪の開幕式にオバマ大統領が欠席したのは、2013年にロシア議会で可決された「同性愛プロパガンダ禁止法」に対する抗議の意味合いだったと言われる。

「反同性愛」をめぐる三位一体──プーチンは神を演じ、ロシアの路地は血に濡れる/GQ Japan.2014
ロシア国内での同性愛嫌悪が増長した

この法案がロシアの立法府を通過して以降、ロシア国内の同性愛嫌悪の暴力事件が増加している。

ラムシュタイン、ロシア公演中に反LGBTQ法にキスで抗議/Rolling Stone Japan.2019

社会学者アレクサンドル・コンダコフは「もともと知識がないところに、LGBTを辱める国の方針が加わり『自分はLGBTが嫌いだ』と人々が考えるようになった」と分析する。

ロシアのゲイに聞いた 「この国に自由はあるのか」(ロシアの謎)/朝日新聞GLOBE+.2018
事実上の同性愛者への取締り
AP Archive/YouTube

同国の「同性愛プロパガンダ」禁止法は、子どもにLGBTQに関するコンテンツを見せることを禁じるもので、事実上、LGBTQとしての生き方を話題にすることに対する禁止令として使われている。

「ロシアが勝てば闇」 ウクライナのLGBTQ兵が命を懸ける理由/Forbes JAPAN.2022

ロシア当局は、プロバガンダ法は同性愛嫌悪を意図したものでは無いと主張するが、その施行のもと、過去8年間に渡って事実上あらゆる形態のLGBTQ+の人々の生活に対する取り締まりが行われている。

なぜBTSのポスターはロシアで印刷が拒否されたのか?/VOGUE.2021

10代のためのLGBTオンライン・ネットワークを設立したレナ・クリモバ氏は昨年、この法律によって罰金刑を受けている。

地図で見るLGBT違法の国、合法の国/ナショナルジオグラフィック.2016

この同性愛プロパガンダ法はロシア人以外の外国人にも適用され、この罪で逮捕されると最長15日間の拘留または最高5000ルーブル(約8600円)の罰金を課せられたのちに、国外追放となる。

ラムシュタイン、ロシア公演中に反LGBTQ法にキスで抗議/Rolling Stone Japan.2019
2020年にはロシア憲法が改正され同性婚が憲法で禁止された
Bloomberg Quicktake: Now/YouTube

同国は2020年の国民投票により、異性間の結婚しか認めない憲法改正が承認された。これにより、同性婚を支持する法律を将来制定する道は事実上閉ざされた。

アングル:失われるLGBT+の生命線、関連サイトに弾圧/REUTERS.2021

改憲後には性的少数者の権利擁護を訴えるデモに参加した人権活動家が逮捕されている。

改憲で「虹色アイス」とばっちり 同性婚禁じたロシア、LGBTに逆風強まる/東京新聞 TOKYO Web.2020

改憲の全国投票直前の6月末にも騒動が起きました。

ペテルブルクのコスプレイベントで未成年者が拘束/あさこ行政書士事務所.2021

在ロシア米国大使館がLGBT国際イベントを祝して虹色旗を掲げたところ、ロシアの保守派が「社会秩序を乱す」と反発したのです。しかし、その一方で、一部の市民は賛意を示そうと虹色旗のもとに集まりました。

ペテルブルクのコスプレイベントで未成年者が拘束/あさこ行政書士事務所.2021

さらに、「外国エージェント法」により、外国から資金援助を受けるNGOの登録が義務付けられている。NGOなどを「外国のスパイ」と位置付け、悪魔化するのが狙いだと言われ、人権団体や性的マイノリティ、外国人労働者などが「伝統に反する存在」として、国内の不満を向ける敵として利用されているという指摘もある。

ロシア構成国チェチェンの「ゲイ狩り」やブラジルのトランス女性描く映画。世界で起きる暴力にどう抗えるか/Yahoo!ニ

「ウクライナ侵攻は同性愛との戦い」ロシア正教会キリル総主教が主張

La7 Attualità/YouTube

総主教は欧米社の同性婚を非難し、同性愛は罪だと宣言。同時に、少数派宗教グループに対する取り締まり強化を歓迎している指導者だ。

宗教者とプーチン大統領の愛人が制裁される時/アゴラ 言論プラットフォーム.2022

彼は声明でウクライナにおけるロシアの敵対勢力を「悪の勢力」と呼び、最近の説教では、この対立は罪と「ゲイパレード」を開催する西側諸国からの圧力に対するより大きな戦いの一部であると主張。

暴言がエスカレートするキリル総主教 米キリスト教指導者が「戦争支持」の再考を要請/クリスチャンプレス.2022
ウクライナでの戦争は「同性愛者のパレード」に対抗する戦いの一部

キリル氏はモスクワでの説教で、「(ウクライナ東部の)ドンバス地域での紛争は世界の大国と名乗る関係国が差し出す価値観といわれるものに対する根本的な拒否に根差している」と主張。

ウクライナ戦争の一因はプライドパレード、ロシア正教会トップ/CNN.co.jp.2022

「どちらの立場にくみするかのテストはあなたの国がプライドパレードの催しを受け入れるかどうかになる」と指摘。これらの関係国の仲間になるためにはパレード開催が必要とし、この要求に抵抗した場合、力で押さえられることは承知の通りだとも続けた。

ウクライナ戦争の一因はプライドパレード、ロシア正教会トップ/CNN.co.jp.2022

総主教はウクライナの戦争を人間が神の教えを守る形而上学的な意味合いを持つ闘争とも形容。「国際的な関係の領域で現在起きていることは政治的な意味合いを帯びているだけではない」とし、「政治とは違ったはるかに重要な人間の魂の救済の問題である」と説いた。

ウクライナ戦争の一因はプライドパレード、ロシア正教会トップ/CNN.co.jp.2022

「神の教えに背けば神聖さと罪の境界線をあいまいにしながら教えの尊さを損ね、さらに罪を人間の振る舞いの一つの例や見本ともなり得るとして助長する人々は決して許されるものではない」とも強調。「この問題に関する本当の戦争が現在起きている」と訴えた。

ウクライナ戦争の一因はプライドパレード、ロシア正教会トップ/CNN.co.jp.2022

「人権面で大惨事」が起きる!?ウクライナに住むLGBTQに対してアメリカが警告

戦争が始まる前から、すでに恐ろしい情報が出ていた。米国は国連に提出した書簡で、ロシアが「反体制派」のリストを作成し、LGBTQやジャーナリスト、活動家といった人々を殺害したり、収容所に送ったりすることを計画していると指摘。「人権面で大惨事」が起きると警告した。

「ロシアが勝てば闇」 ウクライナのLGBTQ兵が命を懸ける理由/Forbes JAPAN.2022

「ロシアは脅迫と抑圧を通じて協力を強制しようとするだろう」と、別の米政府当局者は匿名を条件に語った。

ロシア「暗殺リストを作成」ウクライナ侵攻後、反体制派やLGBTなど標的に/Newsweek.2022

「過去のロシアの作戦には、標的の殺害、誘拐・強制的な失踪、拘束、拷問が含まれていた。こうした行為の標的にされるのはロシアの行動に反対する人々──ウクライナに亡命中のロシアやベラルーシの反体制派、ジャーナリストや反腐敗活動家、宗教的・民族的少数派やLGBTのような弱者だろう」

ロシア「暗殺リストを作成」ウクライナ侵攻後、反体制派やLGBTなど標的に/Newsweek.2022

標的リストには、ロシアの計画に反対する可能性がある全ての人物が含まれているようだ。

ロシア「暗殺リストを作成」ウクライナ侵攻後、反体制派やLGBTなど標的に/Newsweek.2022
ロシアに占領された場合、ロシアでのLGBTQの人たちと同じような扱いを受ける可能性

プーチンのロシアでは、実はLGBTQの人たちはほとんど犯罪者として扱われてしまっています。つまりプーチン大統領は欧米の自由、民主主義、それから多様性といった価値観というのはまやかしだと考えています。

読めば流れが分かる ウクライナ危機の背景 プーチン大統領は何を恐れているのか〜後編/テレ朝news.2022

ロシアと戦うLGBTQの兵士

WION/YouTube

ウクライナ首都キーウ(キエフ)の自宅で、志願兵のオレクサンドル・ジューハンさんとアントニーナ・ロマノバさんは戦地に戻るため荷造りをしている。

戦地へ向かうウクライナのLGBTQ兵、シンボルは「ユニコーン」/Reuters.Yahoo!ニュース.2022

 2人の軍服の肩章部分には、国旗のすぐ下にユニコーンの絵が縫い付けられている。これは、LGBTQ(性的少数者)カップルのウクライナ兵であることを示している。

戦地へ向かうウクライナのLGBTQ兵、シンボルは「ユニコーン」/Reuters.Yahoo!ニュース.2022

 ジューハンさんは伝説上の獣であるユニコーンについて、LGBTQの兵士にとって重要なメッセージを伝えていると語る。「ロシアの戦争が始まった2014年にさかのぼる。沢山の人が、軍隊にはゲイはいないと言った。だからLGBTQコミュニティーはユニコーンを選んだ。空想的で実在しないような生き物だから。このようにして、軍隊の中のLGBTQのシンボルになった」

戦地へ向かうウクライナのLGBTQ兵、シンボルは「ユニコーン」/Reuters.Yahoo!ニュース.2022

 ウクライナ侵攻が始まる前は2人のどちらも武器を使う訓練は受けていなかったが、侵攻当初に数日間をバスルームに隠れて過ごした後、ロマノバさんはもっと行動を起こす必要があると思ったという。「3つの選択肢しかないことが明白になった。防空壕に隠れるか、避難するか、領土防衛隊に参加するか。私たちは3番目の選択肢を選んだ」

戦地へ向かうウクライナのLGBTQ兵、シンボルは「ユニコーン」/Reuters.Yahoo!ニュース.2022
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最近よく見かける「LGBT」という言葉。メディアなどでも取り上げられ、この言葉からレズビアン、ゲイの当事者を思い浮かべる人も増えている。しかし、それはセクシュアルマイノリティのほんの一握りの姿に過ぎない。バイセクシュアルやトランスジェンダーについてはほとんど言及されず、それらの言葉ではくくることができない性のかたちがあることも見逃されている。「LGBT」を手掛かりとして、多様な性のありかたを知る方法を学ぶための一冊。(「Books」出版書誌データベースより)

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【ウクライナ危機(41)】プーチン政権を脅かす民主化運動の波がモスクワまで迫ってきていた……。『ウクライナ侵攻の要因?“カラー革命”』
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