【ウクライナ危機(36)】旧ソ連諸国のみんなで再び一緒に繁栄を……。プーチンの呼びかけにウクライナは拒否!逆にEU加盟を目指した『ウクライナ侵攻の要因?“ユーラシア連合”』
Eurasian Union
プーチンの夢『ユーラシア連合』
「ユーラシア連合」は旧ソ連地域を中心とした地域の多面的な統合を進め、EUとアジアを結ぶ架け橋になることを目指すものである。その発足には段階的な発展が想定されている。当面はロシア、カザフスタン、ベラルーシという関税同盟、および統一経済圏を維持している国に主眼が置かれている。なお、その3ヶ国の他にも、現段階でキルギスとタジキスタンが関心を示している。そして、次第に共通通貨の発行や就労の自由化を検討しながら、2015年までに「ユーラシア経済同盟」の発足を目指し、経済的なつながりを基盤としながら、政治や社会の面でも統合を進めていく予定である。2012年3月19日に、メドベージェフ大統領(当時)もEAEC首脳会議の折りに、「ユーラシア連合」に関する包括条約が、2015年1月1日までに署名されると表明した。
第6章ユーラシア統合の理想と現実-思惑が交錯する中でのナショナリズムとリージョナリズムの相克-(p.30)/廣瀬陽子.JIIA -日本国際問題研究所-
「ソ連復活の試み?」これに対して世界は警戒
しかし、プーチンがソ連解体を「20世紀最悪の地政学的惨事」だと主張していることもあり、旧ソ連諸国、中国・欧米の多くは、本構想を「ソ連復活の試み」だとして警戒している。同構想には形を変えた帝国主義というイメージがついて回っているのである。
第6章ユーラシア統合の理想と現実-思惑が交錯する中でのナショナリズムとリージョナリズムの相克-(p.30)/廣瀬陽子.JIIA -日本国際問題研究所-
プーチンはそれを否定……あくまでEU的な地域構想
1991年のソ連崩壊を「20世紀最大の地政学的破局」と表現したこともあるプーチン首相。ユーラシア連合は旧ソ連とは別物だと強調したうえで、「過去の何かを復活させようとしたり、模倣しようとするのは甘い考えだ。しかしながら、新たな政治経済や新しい価値体系に基づく強固な統合は、時代の要請だ」と訴えた。
旧ソ連構成国で「ユーラシア連合」を=プーチン首相/REUTERS.2022
(前略)EUとアジアを結ぶ架け橋を作り、グローバル化に貢献する意向を強調している。「ユーラシア連合」のイメージは、EU的な地域機構であり、国際的な影響力を強めたいとも主張している
第6章ユーラシア統合の理想と現実-思惑が交錯する中でのナショナリズムとリージョナリズムの相克-(p.30)/廣瀬陽子.JIIA -日本国際問題研究所-
欧米との関係を失いたくないウクライナは「ユーラシア連合」加盟に対して慎重な姿勢を示した
だが、ウクライナは「関税同盟」加盟には慎重だ。何故なら、「関税同盟」加盟は、ウクライナの主権の維持にとって脅威であり、欧米と築いてきた関係を喪失することを意味するからだ。
第6章ユーラシア統合の理想と現実-思惑が交錯する中でのナショナリズムとリージョナリズムの相克-(p.103)/廣瀬陽子.JIIA -日本国際問題研究所-
まず、プーチンは旧ソ連を構成していた国々の共同体(CIS)の再結合を目指す
プーチン大統領は、ソ連邦崩壊を「地政学的な最大の悲劇」と言い、ロシア主導による独立国家共同体(CIS)の再統合を目指した。
(連載1)旧ソ連内における露の地政学的後退/袴田 茂樹 日本国際フォーラム評議員/青学・新潟県立大学名誉教授.2014
ロシアの対外政策は大きく三つのサークルに分類できる。CIS(独立国家共同体=旧ソ連15カ国のうち12カ国の国家連合)諸国、旧ソ連に近接する国、アメリカ・西欧諸国の三つで、言うまでもなく、最後のアメリカ・西欧諸国がロシアからはもっとも関係が遠い。ユーラシア連合構想をロシアは推進しており、その核となるのがCIS諸国である。
コロナ禍でも威力を発揮したロシアのデジタル監視システム 輸出で影響力増大/Newsweek.2022
プーチンの思い描くCISはまるでソ連?「共通の軍隊と共通の通貨(ルーブル)を持つ連邦」
プーチンのCISに関する当初の見解は、共通の軍隊(ロシア軍主導)と共通通貨(ルーブル)を持つ連邦で、明らかに脱共産主義の「ソ連体制」再構築を念頭に置いていた。
(連載1)旧ソ連内における露の地政学的後退/袴田 茂樹 日本国際フォーラム評議員/青学・新潟県立大学名誉教授.2014
CISの始まりはソ連崩壊前までさかのぼる
現在のロシア連邦は旧ソ連を構成する15の共和国の1つでした。ソ連は1922年、主要構成4カ国による結成条約により成立。名目上は共和国の自由意志での集合です。
ウクライナ侵攻をロシア側のロジックで考察してみる/Yahoo!ニュース.2022
しかし91年当時、ソビエト連邦は大きく揺らいでいました。
ソビエトクーデター未遂事件30年 その意義とロシアの民主主義/NHK 解説委員室.2021
連邦の大統領はゴルバチョフ、改革は行き詰まりを見せていました。独立の動きを進めるバルト三国、一方最大の共和国ロシアも国家主権を宣言、エリツィン氏が大統領に就任し、ウクライナなどほかの共和国と連携を強めていました。連邦の大統領がいてロシアの大統領がいる。双方の綱引きが連邦の基盤を揺るがしていました。
ソビエトクーデター未遂事件30年 その意義とロシアの民主主義/NHK 解説委員室.2021
ゴルバチョフはソ連を維持するために、共和国の権限を大幅に拡大した新たな連邦条約を結ぼうとしていた
ゴルバチョフは連邦を維持するためにロシアやウクライナなど9つの共和国と共和国の権限を大幅に拡大した新たな連邦条約・主権国家連邦条約で合意、調印は8月20日に行われることになっていました。
ソビエトクーデター未遂事件30年 その意義とロシアの民主主義/NHK 解説委員室.2021
そんな中、ソ連でクーデターが発生!!ロシア共和国大統領のエリツィンが鎮圧
その前日に軍と治安機関のトップを含む連邦の保守派が国家非常事態委員会を組織して事実上のクーデターを起こしたのです。
ソビエトクーデター未遂事件30年 その意義とロシアの民主主義/NHK 解説委員室.2021
しかし、ロシア共和国のエリツィン大統領の抵抗の呼び掛けに市民が呼応し、クーデターは3日間で挫折した。
「民主革命」評価は少数 ソ連クーデター未遂30年―ロシア/JIJI.COM.2022
エリツィンもゴルバチョフの連邦維持する方針には賛成していた
連邦体制そのものは維持するとのゴルバチョフ大統領の考えについては、エリツィン・ロシア共和国大統領も基本的に同じであった。
第3章 各地域の情勢と日本との関係 第4節 旧ソ連/外務省ホームページ
あくまで独立した国家を目指すウクライナ!国民投票の結果を受けて“独立を宣言”
しかしこのようなロシア共和国指導部の考えを覆したのは、ウクライナの動きであった。ウクライナにおいては、クーデター未遂事件の直後の91年8月に共和国議会が独立の意思を明確にしたが、その後も独立への動きはますます強まり、12月の国民投票において国民の圧倒的多数が共和国議会の独立宣言を支持したことにより、ソ連からの分離・独立の流れは決定的なものとなった。
第3章 各地域の情勢と日本との関係 第4節 旧ソ連/外務省ホームページ
「ウクライナが参加しない連邦は意味がない」ロシアは方針を転換!ベラルーシとウクライナと独立国家共同体協定(CIS)に署名
このようにウクライナの独立が既成事実化される中で、「連邦制は必要だが、ウクライナが参加しない連邦は意味がない」旨を発言していたロシア指導部も、結局は従来のままでの連邦制維持の政策の転換を余儀無くされ、91年12月にはロシア共和国、ベラルーシ共和国及びウクライナの指導者が、ソ連の消滅を確認するとともに、独立国家共同体(CIS)創設協定に署名した。
第3章 各地域の情勢と日本との関係 第4節 旧ソ連/外務省ホームページ
さらに8つのソ連構成共和国がCISに参加……ソ連は崩壊した
このCISには、91年12月のアルマ・アタ首脳会合において、上記の3か国のほかに、バルト三国及びグルジア共和国を除く8つのソ連構成共和国がそれぞれ独立国家の資格で参加し、ここに、ソ連は事実上解体した。
第3章 各地域の情勢と日本との関係 第4節 旧ソ連/外務省ホームページ
「CSTO集団安全保障条約機構」ソ連構成共和国の6カ国による軍事同盟が設立
CSTOはソ連崩壊に伴って1992年5月15日に旧ソ連の構成共和国6ヵ国によって設立された軍事同盟で、設立時から今日に至るまで紆余曲折があるものの、現在のメンバー国は「ロシア、ベラルーシ、アルメニア、 カザフスタン、 キルギス、 タジキスタン」である。
中露は軍事同盟国ではなく、ウクライナ戦争以降に関係後退していない/Yahoo!ニュース.2022
CSTOの設立根拠となる1992年の集団安全保障条約第4条に、加盟国が侵略を受けた場合、「残る全加盟国は、被侵略国の要請に応じて、軍事的援助を含む必要な援助を早急に行うとともに、自らの管理下にある全ての手段を用いた支援を国連憲章第51条に規定された集団的自衛権の行使手順に則って提供する」との規定がある。
第I部 わが国を取り巻く安全保障環境/防衛省 情報検索サービス
バルト3国はCISではなくEU・NATOに加盟……その後も旧ソ連国が次々とEUに加盟加盟していく
しかしバルト3国はソ連邦崩壊以前から結託して反露姿勢を保持し、CISへも加盟せずNATO、EUに加盟した。
(連載1)旧ソ連内における露の地政学的後退/袴田 茂樹 日本国際フォーラム評議員/青学・新潟県立大学名誉教授.2014
EUは旧ソ連国「ベラルーシ・ウクライナ・モルドバ」国境まで迫る
2004年の第5次EU拡大によって、バルト三国と東欧のチェコ・ハンガリー・ポーランド・スロバキア・スロベニアがEU加盟国となり、2007年にはブルガリアとルーマニアがここに加わったことで、EUは旧ソ連のベラルーシ・モルドヴァ・ウクライナと直接に国境を接することになった。
プーチンの旧ソ連再編に必要不可欠だったウクライナの存在/WANI BOOKS NewsCrunch
ロシアとの紛争でジョージアが脱退、さらにウクライナはロシアのクリミア併合で事実上のCISから脱退
旧ソ連15カ国のうちバルト諸国を除く12国が加盟していたが、ロシアとの紛争が起きたジョージアが2009年に脱退し、14年のロシアによる一方的なクリミア併合を機にウクライナも事実上、脱退している。中立国になったトルクメニスタンも05年に準加盟国に転じた。
旧ソ連の地域機構CIS、30周年で首脳会議 求心力は低下/日本経済新聞.202
CISの中で最初の経済統合の試み「ユーラシア経済共同体(EurAsEC)」が設立
ソ連崩壊後、ロシアは旧ソ連構成国との経済統合を再度進めようとした。しかし、グルジアやウクライナが親西側路線を強めたり、関税の課税原則に関してCIS(独立国家共同体)諸国内で意見の相違が生まれるなどした結果、CIS全体に及ぶ経済統合の試みは頓挫した。
ロシア、カザフスタン、ベラルーシの経済統合―関税同盟条約を中心に―(p.183)/小泉 悠.海外立法情報課.国立国会図書館デジタルコレクション
その一方で浮上してきたのが、一部の諸国のみを対象とする経済統合構想である。1990年代以降、ロシアは、ベラルーシ、カザフスタン、キルギスタン、タジキスタンとそれぞれ二国間自由貿易協定を締結し、2000年ごろまでには一部の品目を除く自由貿易地域を形成していた。さらにロシアはベラルーシ及びカザフスタンとともに関税同盟を結成し、共通関税政策を実施しようとしたが、効果的な政策は打ち出せず、形骸化が指摘されていた。しかし、2001年にはユーラシア経済共同体(EAEC)が発足し、さらにこの枠内で「共通経済空間(EEP)」構想が打ち出されるなど、2000年代に入ってから経済統合に向けた動きは再び活発化しはじめた。
ロシア、カザフスタン、ベラルーシの経済統合―関税同盟条約を中心に―(p.183)/小泉 悠.海外立法情報課.国立国会図書館デジタルコレクション
当初の経済構想はウクライナが『オレンジ革命(カラー革命)』でロシアと距離を置いたことで頓挫
しかし、その歩みは必ずしも順調ではなく、紆余曲折が続いている。まず、ベラルーシ、カザフスタン、ロシア、ウクライナによる「統一経済空間」を結成する構想が進められた(2003年2月~)。しかし、「カラー革命」後のウクライナがロシアとの関係に距離を置いたことから、この構想は頓挫する。
中央アジアにおけるロシア主導の多国間協力―集団防衛と経済統合の展開―(p.65)/湯浅 剛.中央アジアにおけるロシア主導の多国間協力.防衛研究所
ウクライナを除く三カ国を基軸に限定的な関税同盟の構想切り替える
代わって浮上したのが、ウクライナを除く三カ国を基軸とする、より限定的な「関税同盟」の構想である。この、域内での統一的な関税制度の導入をめざす構想は、2006年8月16日のユーラシア経済共同体非公式首脳会合(於ソチ)で具体化した。その後、同盟創設に関する条約が2007年10月6日、ドゥシャンベでのユーラシア経済共同体国家間理事会の際に調印された。
中央アジアにおけるロシア主導の多国間協力―集団防衛と経済統合の展開―(p.65)/湯浅 剛.中央アジアにおけるロシア主導の多国間協力.防衛研究所
未来の『ユーラシア経済連合』にむけてロシア・カザフスタン。ベラルーシが“ユーラシア関税同盟”を発足!
2010年1月にロシア・カザフスタン・ベラルーシの3国は、ユーラシア関税同盟を発足させて域内関税障壁を撤廃し、相互関係を深めて将来的にはユーラシア経済連合にまで昇華させることに合意(後略)
丸紅、カザフスタン共和国・アティラウ製油所近代化——17年間にわたる取り組み、二勝一敗——(p.49)/根岸 邦夫.概況 NOW:カザフスタン
2011 年 11 月には関税同盟の最高意思決定機関であった「ユーラシア経済共同体国家間評 議会」が「ユーラシア経済最高評議会」に、さらに常設調整機関の「関税同盟委員会」が 「ユーラシア経済委員会」へと改称された。
-思惑が交錯する中でのナショナリズムとリージョナリ ズムの相克-(p.100)/廣瀬 陽子.第6章 ユーラシア統合の理想と現実.JIIA -日本国際問題研究所-
3カ国の統一経済圏を形成へ
(前略)さらに 2012 年 1 月 1 日には、3 ヶ国首脳が「共通経済空間」(後述)創設を発表する など、関税同盟の発展と更なる新しい段階への移行が見て取れる。
第6章ユーラシア統合の理想と現実-思惑が交錯する中でのナショナリズムとリージョナリズムの相克-(p.99)/廣瀬陽子.JIIA -日本国際問題研究所-
ユーラシア関税同盟のスタートが延期された!?ベラルーシがロシアに不服
2010年7月1日から、ロシア、ベラルーシ、カザフスタン3カ国の関税同盟がスタートする筈であった。3カ国は、2009年11 月27日に、関税同盟に関する一連の協定書に署名しており、1 月には域外国に対する共通輸入関税が導入された。しかし、ベラルーシは1月に原油輸入関税に関するロシアの通告を不服として、7 月以降のスケジュールを認めない方針を表明した。
ロシア:ベラルーシとの天然ガス紛争と関税同盟の展望(p.2)/本村真澄.石油企画調査部.2010
『ロシア・ベラルーシエネルギー紛争』
ロシアとの政治的な緊張関係は、4月18日、政権転覆で一時カザフスタンに逃れていたバキエフ・キルギス大統領のベラルーシ亡命をルカシェンコ大統領が容認したことで更に高まった。これを伏線とするかのように、6月になって天然ガス供給を巡り紛争が発生した。
ロシア:ベラルーシとの天然ガス紛争と関税同盟の展望(pp.2-3)/本村真澄.石油企画調査部.2010
ウクライナと同じくロシアの天然ガスを抜き取っていた
04 年にもベラルーシ側によるガス抜き取りに対抗して供給停止が行われており、2007 年の天然
ロシア:ベラルーシとの天然ガス紛争と関税同盟の展望(p.3)/本村真澄.石油企画調査部.2010
ガス価格に関しては前年 12 月 31 日の午後 11 時 58 分にようやく妥結するなど、その危うい基盤
はウクライナとの状況と大差ない。そして、2006 年にウクライナにおける親西側のユーシェンコ
政権下での天然ガス紛争では、欧州全体を巻き込んだ報道合戦となったことから、2007 年の原油
関税を巡るロシアとベラルーシとの石油紛争も大きく報道された。
しかしその後の国際世論は、エネルギー価格の高騰している時期にロシアがエネルギー価格を引
ロシア:ベラルーシとの天然ガス紛争と関税同盟の展望(p.3)/本村真澄.石油企画調査部.2010
き上げようとすることはビジネスとして当然という認識が広まり、2009 年のウクライナとのガス
紛争、そして今回のベラルーシとのガス紛争において、パニック的な報道は見られなくなっている。
プーチンが論文で『ユーラシア経連連合』その先の『ユーラシア連合』構想が披露
プーチン首相が2011年10月4日にイズベスチア紙で発表した論文「ユーラシアにとっての新たな統合プロジェクト:今日生まれる未来」においてユーラシア連合構想が披露された。
ロシアNIS調査月報 2012年6月号 特集 NIS経済とユーラシア新秩序/一般財団ロシアNIS貿易会
ソ連時代の国々と一緒に経済的な結びつき「ユーラシア経済連合」さらに」それを発展「ユーラシア連合」を作りたい
この中でプーチン首相は,旧ソ連空間で「ユーラシア連合」と称する新たな国家統 合の枠組みを主導していく考えを表明し,内外で反響を呼んだ。2011 年 9 月 24 日の「統一ロ シア」党大会でプーチンが 2012 年の大統領選に出馬することが決まった直後の論文であり, 来たる大統領選に向けてのマニフェスト第一弾と受け止められた。論文の中でプーチンは,3 国の関税同盟とその次のステージである「単一経済空間」の枠組みでの統合を今後さらに深化 させ,その関係を「ユーラシア経済連合」へと,さらには「ユーラシア連合」へと発展させる という構想を語っている。
ロシアの通商・産業政策におけるユーラシア経済連合の意義(p.142)/服部 倫卓(一般社団法人ロシア NIS 貿易会ロシア NIS 経済研究所副所長).ロシア・東欧研究 第45号 2016年
西側・ヨーロッパのEU(欧州連合)に対抗するため
むろん,欧州統合の場合でもそうであったように,「共同体」よりも「連合(ロシア語ではソユーズ)」の方がより強い一体性を感じさせる。プーチンがこの局面で新たに「連合」という言葉を使ったのは,欧州連合(EU)に比肩する地域統合体を築いていくという意欲の表れと受け取れる。「我々が提案しているのは,現代世界の極の一つとなりうる,しかもヨーロッパとダイナミックなアジア太平洋地域の効果的な『結節点』の役割を果たせるような,強力な超国家的統合モデルである」といったくだりには,野心的な姿勢が見て取れた。そしてプーチンは論文の中で,関税同盟に加わっていない他のCIS諸国にも,ユーラシア連合への参加を呼びかけている。
ロシアの通商・産業政策におけるユーラシア経済連合の意義(p.142)/服部 倫卓(一般社団法人ロシア NIS 貿易会ロシア NIS 経済研究所副所長).ロシア・東欧研究 第45号 2016年
『ユーラシア連合』を作るにあたって重要な役割を期待していた国「ウクライナ」
名指しこそしていないものの,最も期待をかけていたのは,ウクライナの参加であった。
ロシアの通商・産業政策におけるユーラシア経済連合の意義(p.142)/服部 倫卓(一般社団法人ロシア NIS 貿易会ロシア NIS 経済研究所副所長).ロシア・東欧研究 第45号 2016年
その頃、EUは旧ソ連諸国対象の新たな枠組み「東方パートナーシップ」で勧誘を始めていた
ちょうどその頃、EUは旧ソ連の近隣諸国を対象に、「東方パートナーシップ」という政策枠組みを打ち出し、同諸国に「連合協定」の締結を呼びかけていました。かくして、プーチン主導のユーラシア統合と、EUの東方パートナーシップがせめぎ合うこととなります。
ユーラシア経済連合創設から5年 目指したEUには遠く及ばず/朝日新聞GLOBE+.2020
協定の柱となっているのが、「深化した包括的な自由貿易圏(DCFTA)」です。単なる自由貿易圏(FTA)に留まらず、双方間の貿易経済活動にEUのルールを浸透させ、ヒト・モノ・カネの動きをより活発化しようという点に眼目があります。
ウクライナとEUの関係はどこまで深まったか/朝日新聞GLOBE+.2021
EU加盟に向けて動いていたウクライナのヤヌコビッチ大統領を懐柔
2010年4月、ヤヌコビッチ政権は、ロシアとハリコフ合意を締結してクリミア半島のセバストーポリにおけるロシア黒海艦隊の駐留期限を2042年まで延長することを認める一方、EUとの間で連合協定締結のための交渉も進め、2012年3月には準備作業を完了し、2013年11月のリトアニアのビリニュスでのEU首脳会議で調印という段階まで至っていた。
ウクライナ危機で揺らぐロシアの 立ち位置(p.194)/防衛研究所
EUに加盟すればプーチンの夢『ユーラシア経済連合』に加盟できないことが判明
ここで、EUとの連合協定案が成立すれば、ロシアが主導するユーラシア経済連合(EAEU)にウクライナが加盟することができなくなることが判明し、プーチン政権はヤヌコヴィチ政権に圧力をかけた。
大国間競争時代のロシア(p.86)/日本国際問題研究所.2022
ウクライナがEUに行ってしまうと最終的な目標『ユーラシア連合』の存在そのものが意味のないものに
(前略)ウクライナの連合協定案は、ロシア側が推進するユーラシア経済連合(EAEU)にウクライナが関わる可能性を排除する条項を含んでいた。
2021 年春のウクライナにおけるエスカレーション危機(p.1)/山添 博史.防衛研究所.2021
旧ソ連圏ではロシアに次ぐ大国ウクライナをEUに取られたら、彼の夢である「ユーラシア連合」は意味のないものになってしまうからだ。
なぜウクライナで欧米とロシアは綱引きするのか? プーチンの夢「ユーラシア連合」/Yahoo!ニュース – Yahoo! JAPAN.2014
ウクライナをEUに取られたくないプーチンは様々な優遇策を提示し、ウクライナにユーラシア連合の枠組み参加を約束させる
2013年末、ロシアはウクライナに対して、EUとの連合協定締結を見送る見返りとして、ウクライナに供給する天然ガス価格の33%値下げとウクライナ国債150億ドルの購入を提示した。
ウクライナ危機で揺らぐロシアの 立ち位置(p.194)/防衛研究所
但しこの融資には条件が入っていて、カネを貸す代わりに約20億ドルと言われている未払いの天然ガス代金を支払うこと、そしてウクライナが「ユーラシア連合」(いわば旧ソ連帝国再興)を目指した枠組みに入ることを約束させています。
ウクライナ問題、「苦しいのは実はプーチン」ではないか?/Newsweek.2014
ここで成立した合意は、あくまでもウクライナがEUとの関係拡大に踏み出さないというものであり、ロシア主導の関税同盟や、その他の枠組みに参加するというものではない。それでも、ウクライナが西側の政治・社会・経済的枠組みの中に組み込まれることは、ロシアにとって許容しがたい事態だったのであり、多額の経済的代償を払う価値はあったということなのだろう。
プーチンの旧ソ連再編に必要不可欠だったウクライナの存在/WANI BOOKS NewsCrunch.2022
プーチンと約束したヤヌコビッチ大統領はEUとの連合協定を直前で延期
プーチンに資金援助までちらつかされたヤヌコーヴィチは11月末、EU連合協約への署名を直前になって「延期」する。
なぜウクライナで欧米とロシアは綱引きするのか? プーチンの夢「ユーラシア連合」/Yahoo!ニュース – Yahoo! JAPAN.2014
それは3年前にティモシェンコが道筋を付けた、EUとの連合協定(将来的なEU加盟を見据えた協力合意)を見送ることを意味した。
ロシアに苦しめられ続けた、知られざるウクライナ政治30年史/Newsweek.2021
これが『ユーロ・マイダン革命』のきっかけになった
(前略)それをきっかけに野党および市民による大規模な反政府デモが発生し、2014年2月の政変に至ります。
ユーラシア経済連合創設から5年 目指したEUには遠く及ばず/朝日新聞GLOBE+.2020
ユーロ・マイダン革命でヤヌコビッチが国外逃亡……プーチンと交わした約束も白紙に戻った
この「ユーラシア連合」入りというのは、キエフでの反政府運動の激化を招きました。反対にウクライナのEU入りを目指していたグループとしては絶対に許すことはできなかったのです。その結果として100名を超える流血と、ヤヌコビッチの逃亡劇に至ったわけです。
ウクライナ問題、「苦しいのは実はプーチン」ではないか?/Newsweek.2014
ユーロ・マイダン革命後のウクライナEUとの連合協定に調印へ
2014年2月にヤヌコービッチ政権が崩壊すると、それを受けて成立したウクライナ暫定政権は、3月21日に政治条項に限定した形で、EUと連合協定に調印。他方、EUは協定の経済条項に含まれるDCFTAを先取りする形で、4月16日付の欧州議会・理事会規則(4月23日発効)により、ウクライナ産品に対する関税を片務的に減免する措置を打ち出しました。その後、5月25日投票の選挙でP.ポロシェンコが当選し、6月7日に第5代ウクライナ大統領に就任。これを受け、6月27日のブリュッセルにおけるEUサミットの席で、連合協定(残されていた経済条項)への最終的な調印が行われました
ウクライナとEUの関係はどこまで深まったか/朝日新聞GLOBE+.2021
EUに加盟に向けての最初の一歩「深化した包括的自由貿易協定を含む連合協定」
正式名称は「深化した包括的自由貿易協定を含む連合協定」という。単一市場へのアクセスをある程度認めることで、民主主義と市場経済の進展を助けて、EUのルールを浸透させていくのが目的である。
キエフ陥落を前に、フランス人の72%が欧州軍の創設を支持、モルドバもEU加盟を申請:欧州の歴史の転換/Yahoo!ニュース – Yahoo! JAPAN.2020
連合協定はウクライナとEUの政治・貿易に関して定めた約1200ページの文書からなる
ウクライナとEU、連合協定に調印 露は報復を警告/AFPBB News2014
連合協定の経済条項には「深化した包括的自由貿易協定」(Deep and Comprehensive Free Trade Area=DCFTA) が含まれている。
ウクライナの経済危機とビジネス環境/一般財団法人国際貿易投資研究所(ITI)
これによりウクライナはEUとの貿易が自由化されることになり、加盟に向けた事実上の第一歩を踏み出す。
ウクライナ EUとの連合協定に署名/日テレNEWS.2014
「何百万人ものウクライナ国民が望み、6カ月以上戦ってきた」。連合協定への署名を前にウクライナのポロシェンコ大統領は意義を強調。EUのバローゾ欧州委員長も「EUにとって最も野心的な交渉による合意だ」と表明した。
EU、旧ソ連3カ国と「連合協定」 経済発展後押し/日本経済新聞.2014
これは、EUに加盟候補国になるための、初めの一歩である。
キエフ陥落を前に、フランス人の72%が欧州軍の創設を支持、モルドバもEU加盟を申請:欧州の歴史の転換/Yahoo!ニュース – Yahoo! JAPAN.2020
ウクライナEU加盟への道はまだまだ先は遠かった……。
この協定を結んだからといって、加盟国になれるとは限らない。前述したように、これは加盟国の「正式候補」になるためのものだ。加盟にはまだまだ長い年月がかかる。でも、初めの一歩がなければ、何も始まらない。
キエフ陥落を前に、フランス人の72%が欧州軍の創設を支持、モルドバもEU加盟を申請:欧州の歴史の転換/Yahoo!ニュース – Yahoo! JAPAN.2020
同日、旧ソ連圏の「グルジア(ジョージア)」「モルドバ」もこの協定を終結
旧ソ連のモルドバとグルジアも,ウクライナと同日の2014年6月27日にEUと連合協定を結んだ。
ウクライナ経済の実相と対EU関係(p.154)/服部倫卓.『日本EU学会年報』第35号,pp.137-163 平成27年
EUが急いだのは3カ国とも親ロシア派を抱えており、その活動で政治情勢が揺らぐと懸念したためだ。ウクライナ東部で親ロ派が勢力を保ち、グルジアで南オセチア、モルドバでは沿ドニエストルがそれぞれ事実上の独立状態にある。EUは旧ソ連3カ国との署名までに時間をかけるほど、親ロ派が勢いづくと焦りを深めていた。
EU、旧ソ連3カ国と「連合協定」 経済発展後押し/日本経済新聞.2014
経済連合にウクライナを参加させるプーチンの計画が挫折……それでも夢の実現にむけて突き進む
(前略)ウクライナを巡る東西地政学は西に軍配が上がり、ウクライナをユーラシア統合に巻き込むプーチン・プランは挫折しました。
ユーラシア経済連合創設から5年 目指したEUには遠く及ばず/朝日新聞GLOBE+.2020
『ユーラシア経済連合創設条約に調印』
むろん、本命のウクライナを逃したからといって、統合の歩みを止めるわけにはいきません。ロシア・ベラルーシ・カザフスタン3国の首脳は2014年5月29日、ユーラシア経済連合創設条約に調印しました。関税同盟をさらに進化させ、商品だけでなくサービス・資本・労働力の移動も自由化し、さらに経済政策の共通化も含めた本格的な経済同盟の形成を目指すというものでした。
ユーラシア経済連合創設から5年 目指したEUには遠く及ばず/朝日新聞GLOBE+.2020
プーチン氏の狙いは、1億7000万人を超える規模の市場を創出し、欧州連合(EU)や米国、中国に対抗することだ。
焦点:狙うは「ソビエト帝国」再興か、プーチン氏が経済圏の構築加速/REUTERS.2014
これは夢物語のように見える。だが、プーチン大統領は否定しているものの、カザフスタンの首都アスタナで行われるこの調印式は、経済関係だけにとどまらず、より壮大な計画の一部だとみられている。
焦点:狙うは「ソビエト帝国」再興か、プーチン氏が経済圏の構築加速/REUTERS.2014
冷戦後最悪となる西側との対立を深めたロシアによるクリミア編入は、かつてソ連が支配していた領土を再びロシアが支配しようとする動きの一部とみられているが、プーチン氏はこれを否定。ユーラシア経済連合について「旧ソ連が支配していた地域内の統合を目指すものだが、それはソビエト連邦を復活させたいからではない。独立した国家であるかつてのソ連構成国の競争力を生かしたいからだ」と述べている。
焦点:狙うは「ソビエト帝国」再興か、プーチン氏が経済圏の構築加速/REUTERS.2014
ユーラシア経済連合創設条約が発効!その後にはアルメニアやキルギスが加盟した
条約は3国の批准を経て、2015年1月1日に発効、ここにユーラシア経済連合が正式に発足します。翌2日にはアルメニアが加盟、同年8月12日にはキルギスも加盟し、これによりユーラシア経済連合は現在の5ヵ国の体制となったわけです。
ユーラシア経済連合創設から5年 目指したEUには遠く及ばず/朝日新聞GLOBE+.2020
ユーラシア経済共同体は活動を終了
なお、EEU発足に伴い、域内の経済統合の推進母体となっていたユーラシア経済共同体(EurAsEC)は活動を終了した。
ユーラシア経済連合が発足、アルメニアも正式加盟(アルメニア、キルギス、ベラルーシ、カザフスタン、ロシア)/ジェトロ(日本貿易振興機構).2015
やはりどうしてもウクライナの参加が不可欠
ロシアは米国、欧州連合(EU)、中国に対抗し得る経済ブロックの確立を目指す考えだが、親ロシア派と親欧米派の対立で揺れるウクライナが参加しないことで、プーチン大統領が望む力は発揮できないとの見方も出ている。
旧ソ連3カ国が経済同盟条約に署名、ウクライナは不参加/REUTERS.2014
さらに拡大を目指すプーチン!中国の「一帯一路」との接続へ『大ユーラシア・パートナーシップ』計画
プーチン政権は2015年、中国の構想とユーラシア経済連合の「接続」を進めると宣言。中国の経済力が中央アジア地域に侵食するのを食い止める狙いがあった。
【一帯一路】ロシア、ユーラシア連合と共存探る/産経ニュース.2017
(前略)現在の北極圏の状態で石油や天然ガスを採掘するためには、やはり欧米の最新技術が必要であるというのもまた事実だ。ロシアは、それら欧米企業と協力して資源開発を進める予定であった。
プーチンが北方領土を「返還しない」どころか、そこで軍拡を進めている理由/現代ビジネス | 講談社.2022
しかし2014年のクリミア併合、ウクライナ東部へのロシアの介入などで、欧米がロシアに経済制裁を科したことから、ロシアの資源開発に欧米の企業が関われなくなり、しかも、ロシアは14年以降、経済的にも困窮するという悪条件も重なり、ロシアの北極圏開発計画は大きく遅れることになった。
プーチンが北方領土を「返還しない」どころか、そこで軍拡を進めている理由/現代ビジネス | 講談社.2022
そこでロシアにとって不可避になったのが中国との協力であった。
プーチンが北方領土を「返還しない」どころか、そこで軍拡を進めている理由/現代ビジネス | 講談社.2022
プーチン政権は2015年、中国の構想とユーラシア経済連合の「接続」を進めると宣言。中国の経済力が中央アジア地域に侵食するのを食い止める狙いがあった。
【一帯一路】ロシア、ユーラシア連合と共存探る/産経ニュース.2017
ロシアのプーチン大統領は中国の一帯一路構想と、自国のユーラシア経済連合構想の「連携」を進めてきたが、その連携の軸に北極圏も含めてゆくことを2017年に提案し、中国もそれを快諾した。
プーチンが北方領土を「返還しない」どころか、そこで軍拡を進めている理由/現代ビジネス | 講談社.2022
さらに、二国だけでは心もとないので、中露を中心とした経済圏を発展させたい。それが、ロシアを中心として形成されているユーラシア経済同盟(加盟国はロシア、ベラルーシ、カザフスタン、アルメニア、キルギス)と中国主導の一帯一路を結び付け、アジア太平洋地域とユーラシア地域の結合を深めようという戦略だ。
ウクライナ問題に「中国を巻き込む」プーチンの“本当の思惑”/現代ビジネス | 講談社
この構想をプーチン大統領は「大ユーラシア・パートナーシップ」と呼んでいる。共同声明では、ユーラシア大陸の統合プロセスや地域統合を目的としているという。
ウクライナ問題に「中国を巻き込む」プーチンの“本当の思惑”/現代ビジネス | 講談社
「ウクライナに対し、必要なあらゆる措置を講じる」ロシア国境までEUが迫りプーチンがキレる
EUは2000年代以降、中・東欧に加盟国を広げてきた。連合協定の署名で親EU国をさらに東方に拡大することになり、地政学的にはロシアに迫る。
EU、旧ソ連3カ国と「連合協定」 経済発展後押し/日本経済新聞.2014
ロシアのウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領が掲げる同国主導のEU、北大西洋条約機構(NATO)に対抗し得る経済連合にウクライナを加える目標を実現不可能にするものであり、ロシア政府はただちに、「ウクライナに対し、必要なあらゆる措置を講じる」との方針を表明。
ウクライナとEU、連合協定に調印 露は報復を警告/AFPBB News.2014
EUがウクライナに市場解放すると、ロシアはウクライナからの輸入に関税を導入
(前略)2016年1月1日から、ウクライナ・EUのDCFTAは全面的に施行されました。それまではEU側が片務的に関税の減免を実施していましたが、2016年からはウクライナの側もEUに市場を開くこととなりました。
ウクライナとEUの関係はどこまで深まったか/朝日新聞GLOBE+.2021
一方ロシアは、EU・ウクライナの連合協定に伴い両者間の自由貿易圏(FTA)が成立すれば、安価で競争力の強いEU産品がウクライナに溢れ、それがウクライナ産品と偽装されCIS自由貿易条約の枠組みにより無税でロシアに流入し深刻な被害が発生する恐れがあると主張した。そして、連合協定発効のあかつきには、ロシアはCIS自由貿易条約の例外措置としてウクライナ産品に関税を導入すると警告した。実際、EU・ウクライナのFTAが全面発効する2016年1月1日をもって、ロシアはウクライナからの輸入に関税を導入している。
ロシア ウクライナ侵攻と今後の世界 (1) 2度のウクライナ危機におけるEUとNATOの要因/一般財団法人 国際経済連携推進センター.2022
ウクライナとEUの連合協定が正式に発効 !
2017年9月1日、EUとの連合協定が完全発効した(協定の主目的である「高度かつ包括的な自由貿易圏(DCFTA)」は2016年1月から暫定的に適用開始となっていた)。
ウクライナ ‐ 構造改革によりさらなる経済回復を図/ジェトロ(日本貿易振興機構).2017
本協定は自由貿易協定(FTA)を含んでおり、双方の輸入関税がほとんどの品目で撤廃される。協定内容は既に順次導入が進んでおり、6月11日からウクライナ人のEU短期滞在ビザが免除となっている。
ウクライナとEUの連合協定が正式に発効-人的交流や貿易の拡大を促進-/ジェトロ(日本貿易振興機構).2017
ロシアに配慮して連合協定の自由貿易協定の部分は来年末まで延期
ただ、EUとウクライナは先週末12日、連合協定の自由貿易協定(FTA)部分の実施を来年末まで延期することで合意している。免税対象のEU商品がウクライナを通じて国内に大量に流入することを警戒したロシアが、FTAが発効すればウクライナからの輸入品に関税をかけると警告していたため、ロシアに譲歩した。
ウクライナ議会、EUとの連合協定を批准/ロイター.2014
EU・NATO加盟を目指すポロシェンコ!!“ウクライナ憲法”に加盟の方針が明記される
ウクライナでは2019年1月に、当時のポロシェンコ大統領が再選出馬を正式に表明した。その際の演説でポロシェンコは、ウクライナは2024年にEUへの加盟申請を提出し、またNATOの「加盟のための行動計画」を受け取って履行し始めると宣言した。
ロシア ウクライナ侵攻と今後の世界 (1) 2度のウクライナ危機におけるEUとNATOの要因/一般財団法人 国際経済連携推進センター.2022
2019年2月、ウクライナの議会に当たる最高会議は、ポロシェンコ大統領(当時)が提出したEUと北大西洋条約機構(NATO)へのウクライナの加盟路線をウクライナ憲法に明記する憲法改正法案を可決しました。その結果、憲法序文には、ウクライナ民族の欧州アイデンティティとウクライナの欧州・欧州大西洋路線の不可逆性に関する文言が加筆されましたた。また、第102条には、「ウクライナ大統領は、ウクライナのEUとNATOへの完全な加盟に向けた国家の戦略的方針の実現を保証する者である」との文言も追加されたのです。
ウクライナとEUの関係はどこまで深まったか/朝日新聞GLOBE+.2021
ゼレンスキー大統領も方針を引き継いでいる
しかし、親欧米路線の懸命のアピールも実らず、ポロシェンコは2019年3、4月の大統領選挙に敗れます。ただ、この選挙では対外路線の選択はほとんど争点にならず、ポロシェンコに取って代わったV.ゼレンスキー大統領も、方針を大きく変えることはありませんでした。ポロシェンコ前政権のようなドグマ的な色彩こそ薄れたものの、EUおよびNATOへの統合を軸とした国造りを進め、そのスタンスに立ってロシアと対峙していくという点で、ゼレンスキーは前任者の路線を基本的に引き継いでいます。
ウクライナとEUの関係はどこまで深まったか/朝日新聞GLOBE+.2021
2022年2月24日 ウクライナ侵攻の前年……プーチンんは論文でウクライナ経済に言及
2022年2月24日未明、ロシア軍は突如ウクライナに対して巡航ミサイルを発射し、国境を越えてウクライナ領内になだれ込んだ。
ロシアは、なぜウクライナに侵攻したのか/一般社団法人 霞関会.2022
これに先立つ2021年7月、プーチン大統領は「ロシアとウクライナの歴史的一体性」と題する論文を発表し、ロシアとウクライナは民族的にも歴史的にも宗教的にも言語的にも一つの人々であって、これを割こうとするのは、米国とEUそしてそれに乗せられた間違ったウクライナの指導者であると論じ、ウクライナの主権はロシアのパートナーシップの範囲内でのみ存続するという結論を導き出している。
ロシアは、なぜウクライナに侵攻したのか/一般社団法人 霞関会.2022
ソ連崩壊後のロシアはウクライナをサポート
ソ連が崩壊した時、新生ロシアは新たな地政学的現実を受け入れた。それのみならず、ウクライナが独立国としてやっていけるよう、困難な1990年代にも、2000年以降も、ウクライナに巨額の支援を行ってきた。
ロシアとウクライナは「カインとアベル」?物議かもしたプーチン論文を分析する/朝日新聞GLOBE+.2021
1991~2013年に、天然ガスの値引きだけでも、ウクライナの国庫は820億ドル以上を節約できた。ウクライナ当局は、今日でもロシアから年間15億ドルのガス・トランジット収入を得ることに汲々(きゅうきゅう)としている。
ロシアとウクライナは「カインとアベル」?物議かもしたプーチン論文を分析する/朝日新聞GLOBE+.2021
ウクライナとロシアは、数十年、数百年と、単一の経済システムとして発展してきた。30年前の協力関係の深さはEU諸国が羨むほどのものだった。
ロシアとウクライナは「カインとアベル」?物議かもしたプーチン論文を分析する/朝日新聞GLOBE+.2021
両国は、自然かつ補完的な経済パートナーである。緊密な関係は、お互いの競争力を強化し、両国の潜在能力を数倍にも発揮することを可能とする。
ロシアとウクライナは「カインとアベル」?物議かもしたプーチン論文を分析する/朝日新聞GLOBE+.2021
プーチン (ロシア)にとってウクライナは裏切り者!?
2000年代におけるウクライナの変化はプーチン大統領が当時穏健路線を取った故でもあったが、「ほとんどわれわれ」とロシアがみなすウクライナ人の裏切りであると捉えられることになる。プーチン大統領はユーラシア経済連合(EAEU)構想を打ち出すことでウクライナがEUに取り込まれるのを防ごうとするが、欧州はウクライナがロシアの勢力圏の中にとどまる形でEUの経済的枠組みに参画することを良しとしなかった。ウクライナ国内ではロシア派と欧州派の綱引きが激化し、それらの矛盾が2014年の政変に結実する。
三浦瑠麗氏が読むロシアの地政学 瓦解する「帝国」とあいまいな国境/日経ビジネス.2022
この反乱は、ロシア政府の命令で、当時ウクライナの大統領だったヤヌコビッチ氏がEUへの完全加盟を目的とした協定を破棄したことに始まる。ヤヌコビッチ氏はその代わりに、ロシア側の対抗勢力であるユーラシア経済連合への加盟を目指した。プーチン大統領によるウクライナ領土の掌握は、彼がロシアに亡命する2日前に始まっていたのである。
ウクライナが「ロシアから離れたい」経済的理由/東洋経済ONLINE.2022
ロシアにとって、ウクライナは常に完全なる「主権」を認めない二級国家であった。実際、ウクライナはロシアの安価なエネルギー資源に頼らなければ立ち行かない。しかし、総合的に見て経済的魅力や自由主義的な諸価値からいえば、旧ソ連邦の構成国であっても西側に傾倒していくのは当然の成り行きであった。そのことが2014年のクリミア併合とウクライナ紛争の勃発につながっている。今回の戦争は、そこにウクライナのさらなる西欧編入志向とドンバスでの紛争膠着化が加わって起きたことだろう。
三浦瑠麗氏が読むロシアの地政学 瓦解する「帝国」とあいまいな国境/日経ビジネス.2022