【ウクライナ危機(33)】欧米がウクライナのファシスト“ネオナチ”を支援している!?『侵攻の口実“ネオナチとバンデラ主義”』

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【ウクライナ危機(33)】欧米がウクライナのファシスト“ネオナチ”を支援している!?『侵攻の口実“ネオナチとバンデラ主義”』

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【ウクライナ危機(32)】NATOのミサイル防衛システムは脅威!それがウクライナに配備されればモスクワまでたった数分で……。『侵攻の口実“MDシステム”』
“https://diggity.info/society/ukraine-32/”

Great Patriotic War

ソ連(ロシア)にとってアイデンティティ「ナチスとの戦い」

Guardian News/YouTube

緊迫するウクライナ情勢は、2月24日、ロシア軍がウクライナへと侵攻したことで、戦争へと発展した。プーチン大統領は、演説で開戦理由を説明したが、そのほとんどが難癖のようなもので、大義無しの戦争が起こってしまったことについて、世界中で驚きの声が聞かれる。

ウクライナの「ナチ化」を防ぐ、というプーチンの主張はロシア兵にも空虚に響く/Newsweek.2022
NATO主要国がウクライナのネオナチ勢力を支援

「NATO主要国がウクライナのネオナチ勢力を支援している」というのも、怪しい開戦理由の一つだ。プーチン大統領はここ数年、ウクライナ政権を「ネオナチ」と呼び続けている。

ウクライナの「ナチ化」を防ぐ、というプーチンの主張はロシア兵にも空虚に響く/Newsweek.2022
ゼレンスキーがナチ系過激派の影響を受け東部の親ロシア派住民にジェノサイド

 プーチン大統領は最近、ゼレンスキー政権を「キエフで権力を握る者たち」と表現し、正当な政権と認めていなかった。

傀儡政権でウクライナ支配――プーチン大統領の侵攻「5段階計画」/新潮社 Foresight.2022

 24日の国民向け演説でも、「特別軍事作戦」の目的は、キエフ政権によって8年間にわたり虐殺あるいは虐待を受けてきた人々を保護することだとし、「数々の血なまぐさい犯罪を犯した者たちを裁く」と強調した。

傀儡政権でウクライナ支配――プーチン大統領の侵攻「5段階計画」/新潮社 Foresight.2022

 ロシア側は、ゼレンスキー政権がウクライナ西部を拠点とするナチ系過激派の影響を受け、東部で親露派住民の「ジェノサイド」(大量虐殺)を行っていると主張している。

傀儡政権でウクライナ支配――プーチン大統領の侵攻「5段階計画」/新潮社 Foresight.2022

ナチスを撃退!!プーチン(ロシア)にとってアイデンティティの象徴「大祖国戦争」

Ingen/YouTube

ロシア人は、第二次世界大戦を「善なるソ連(ロシア)と悪のナチスドイツの聖戦」と位置づけている。そのため彼らは、「第二次世界大戦」とはいわず、「大祖国戦争」と呼ぶ。

日本のメディアは絶対に報じない…プーチンが北方領土を「返さない」理由/現代ビジネス | 講談社.2021
時代は第二次世界大戦!!ヒトラー(ナチスドイツ)とスターリン(ソ連)は独ソ不可侵条約を結ぶ

 1939年8月に、スターリンとヒトラーは独ソ不可侵条約を締結し、それによって東部の安全を確保したヒトラーは、9月1日にポーランドに侵攻する。第二次世界大戦の勃発である。スターリンは、ヒトラーと図って、ポーランドを分割するなど領土を拡大した。

【舛添直言】誰も信じぬ「ゼレンスキー政権=ナチス説」を主張する露の不正義/JBpress.2022
ヒトラーは条約を破棄……ソ連に攻め込んだ

 しかし、ヒトラーは、1941年6月、独ソ不可侵条約を破棄して、ソ連に攻め込んだ。

【舛添直言】誰も信じぬ「ゼレンスキー政権=ナチス説」を主張する露の不正義/JBpress.2022
「ナチスの“バルバロッサ作戦”」 ナチスがウクライナの首都防衛していたソ連軍を殲滅
British Pathé/YouTube

1941年6月22日、ナチス・ドイツとその同盟国の軍隊およそ330万は、バルト海から黒海に至る長大な戦線(約3000キロメートル)でソ連に攻め入った。「バルバロッサ」作戦、そして史上最大の陸上戦である独ソ戦が開始されたのである。

第2次大戦の独ソ戦「殲滅するまで戦う」の惨劇/東洋経済ONLINE.2022

ドイツ軍の進撃はめざましく、各地でソ連軍を包囲撃滅しつつ、ミンスク、スモレンスクなどの要衝を占領し、北では革命の聖都であるレニングラード(現サンクトペテルブルク)に迫った。41年8月から9月にかけてはウクライナで機動戦を展開、キエフ(キーウ)方面の防衛に当たっていたソ連軍45万余を殲滅(せんめつ)した。

第2次大戦の独ソ戦「殲滅するまで戦う」の惨劇/東洋経済ONLINE.2022
ソ連はその後もナチスと激戦を繰り返し、スターリングラードの戦いでナチスを降伏させる
TheUntoldPast/YouTube

 ソ連軍は、侵攻してきたドイツ軍と激しい戦闘を繰り返し、1943年1月、スターリングラードの戦いで、ドイツ軍を降伏させた。

【舛添直言】誰も信じぬ「ゼレンスキー政権=ナチス説」を主張する露の不正義/JBpress.2022

甚大な人命の損失を伴う大勝利だった。ソ連は「大祖国戦争」と呼ぶ対独戦で、戦闘員・民間人を計2700万人以上失った。

「私が知っていたロシアはもうない」 変わるモスクワをBBCロシア編集長が紹介/BBCニュース.2022

ロシアがナポレオンに勝利した戦争を「祖国戦争」と呼称するが、スターリンはナショナリズムを高揚させるため、独ソ戦開始からベルリン陥落(1945年5月)までの戦争を「大祖国戦争」と呼んだ。

「私が知っていたロシアはもうない」 変わるモスクワをBBCロシア編集長が紹介/BBCニュース.2022

1948年から1964年にかけて、祝日ではない単なる記念日に格下げされていた時期もありましたが、戦勝20周年を記念して1965年に祝日として復活、今日のロシアでも一年で最も重要な祝日となっています。

第二次世界大戦の始まりと終わり 日本とロシアの意識はこんなにも違う/朝日新聞GLOBE+.2022
「大祖国戦争」ソ連崩壊後のロシアでもナショナリズムのシンボル

 ナチズムとの戦いにソ連の共産主義が勝利したとして、ソ連時代には、ナチズムやファシズムに対する共産主義の優位が称賛されたのである。1991年にソ連邦が解体した後も、「大祖国戦争」はロシア・ナショナリズムのシンボルとして機能し続けている。

【舛添直言】誰も信じぬ「ゼレンスキー政権=ナチス説」を主張する露の不正義/JBpress.2022
それはプーチンにとってはロシア団結のためのアイデンティティ

 プーチン氏にとってソ連が歴史上で最も輝いていた瞬間は、第2次世界大戦、つまり大祖国戦争だった。

ロシアがウクライナ人を「ナチス」と呼ぶ理由/ウォール・ストリート・ジャーナル/2022

プーチンにとって、第二次世界大戦の記憶は、ロシア国内をまとめていく際のアイデンティティの核として非常に重要です。ソ連軍がナチスを打ち負かした、これによってソ連はもちろん世界が救われた、という意識を強く持っています。ソ連・ロシアは多民族国家ですが、それが一丸となってナチスに立ち向かったという記憶は、ロシアをまとめる上で重要な意味を持つのです。

ロシアのウクライナ侵攻の背景を読み解く/東京大学.2022

「ウクライナの非軍事化と非ナチ化を目指す」ウクライナ侵攻直前のプーチンは演説でナチスとの戦いを語った

2022年2月24日にロシアがウクライナに侵攻した。ロシアのプーチン大統領は国民向けテレビ演説で「ウクライナの非軍事化と非ナチ化を目指す」と語っていた。プーチン大統領は現在のウクライナのゼレンスキー大統領の政策を第二次世界大戦時のナチスドイツに例えてロシア軍の武力侵攻を正当化しようとしていた。

ロシア「ウクライナの非ナチ化を」ホロコースト生存者の孫のゼレンスキー大統領「私がどうしてナチスに?」/Yahoo!ニュース.2022
ゼレンスキー政権は反ロシアのネオナチ!?あくまでウクライナの中のナチスを駆除するための戦い

プーチン大統領は、ゼレンスキー政権を反ロシアの「ナチスト集団」と決めつけ、国営通信社はウクライナの民族浄化に言及する過激な論文を配信。「敵はナチス」と訴え、国内の結束を図る狙いとみられる。民間人の犠牲拡大につながる恐れがあり、ウクライナや欧米は非難している。

ロシア「敵はナチス」 ウクライナ侵攻を正当化 国内結束図る狙いか/北海道新聞 どうしん電子版.2022

ゼレンスキー大統領を「ナチス」や「ネオナチ」と呼ぶのは、ロシアだけでなく、世界のためにロシアが立ち向かうべき敵なんだ、というイメージを植え付けようとしているのだと思います。「ウクライナ人の多くは善良で本当はロシアと仲良くしたいが、少数の危険分子が彼らを惑わしているので、それを駆除する必要がある」という認識です。

ロシアのウクライナ侵攻の背景を読み解く/東京大学.2022
「私がナチスになれますか?」かつてナチスに迫害されたユダヤ系のゼレンスキーが怒りの反論

それに対してウクライナのゼレンスキー大統領は「ロシアはウクライナをナチスと言いますが、私たちはナチスとの戦いで多くの命が失われました。そのような私たちがナチスでしょうか?そして(ユダヤ人である)私がナチスになれますか?私たちがナチスだと、赤軍でナチスと戦ってきた私の祖父の前でも言えますか?」と怒りを込めて反論していた。

ロシア「ウクライナの非ナチ化を」ホロコースト生存者の孫のゼレンスキー大統領「私がどうしてナチスに?」/Yahoo!ニュース.2022

ゼレンスキー大統領はユダヤ系で、先祖がホロコーストの犠牲になっているので、ナチスであるわけがないですが、ソ連・ロシアの文脈での「ナチス」は、ユダヤ人を虐殺したことではなく、ドイツの全体主義と軍国主義が世界に混迷と苦難をもたらした、ということがまずイメージされます。

ロシアのウクライナ侵攻の背景を読み解く/東京大学.2022
ウクライナ侵攻中にロシアのラブロフ外相が正当性を主張!?「ヒトラーにもユダヤ人の血が流れていた」
FNNプライムオンライン/YouTube

 問題の発言は5月1日日曜日、イタリアのテレビ番組「Zona Bianca」でのインタビューに答えて出てきたものです。

無知で野蛮・冷酷なロシアを世界に知らしめたラブロフの失言/JBpress.2022

インタビューの中で、ウクライナのゼレンスキー大統領自身がユダヤ系であるにも関わらず、なぜロシアはウクライナの「非ナチス化」のために戦っていると主張できるのか質問されると、外相は「私が間違っているかもしれないが、ヒトラーにもユダヤ人の血が流れていた。(だからゼレンスキーがユダヤ系であることは)全く意味をなさない。最も過激な反ユダヤ主義者はたいていの場合ユダヤ人だと、賢明なユダヤ人は言う」と答えた。

「ヒトラーにユダヤ人の血」、ロシア外相発言にイスラエルが猛反発/BBCニュース.2022

 ラブロフ外相の発言は、ロシアの主張する「ウクライナの脱ナチス化」は侵略のための口実に過ぎないとする国際社会の視線を払拭し、ウクライナ侵略の正当性を強調しようとの試みとみられる。

ウクライナ「脱ナチス化」主張のロシア、「ヒトラーはユダヤ人」…イスラエル「怒り」/hankyoreh japan.2022
ゼレンスキーが猛反発

この発言に、ゼレンスキー大統領は猛反発。

ロ外相「ヒトラーにユダヤの血」 “非ナチス化”で侵略正当化 ゼレンスキー氏が批判/FNNプライムオンライン.2022

ウクライナ・ゼレンスキー大統領「ロシアトップの外交官が、ナチスの責任をユダヤ人に押しつけている。閣僚による反ユダヤ主義の暴言は、ロシアが第2次世界大戦の教訓をすべて忘れたからだ」

ロ外相「ヒトラーにユダヤの血」 “非ナチス化”で侵略正当化 ゼレンスキー氏が批判/FNNプライムオンライン.2022
各国からも非難が殺到

ドイツ政府報道官は2日、ラブロフ氏の発言は「ばかげた」プロパガンダ(政治宣伝)だと述べた。

「ヒトラーにユダヤ人の血」、ロシア外相発言に各国反発/REUTERS.2022

イタリアのドラギ首相は、ラブロフ外相の発言は誤りだとし、イタリアはロシアとは異なり表現の自由を認めているため、イタリアのテレビ局のインタビューで虚偽であってもこうした発言を行うことが可能だったと述べた。

「ヒトラーにユダヤ人の血」、ロシア外相発言に各国反発/REUTERS.2022

カナダのトルドー首相も、ラブロフ外相の発言は信じがたく、「容認できない」として非難した。

「ヒトラーにユダヤ人の血」、ロシア外相発言に各国反発/REUTERS.2022
ユダヤ人の国イスラエルもブチギレる

この発言に対し、イスラエル政界からは右派か左派かを問わず、一斉に怒りの声が上がった。

「ヒトラーにユダヤ人の血」、ロシア外相発言にイスラエルが猛反発/BBCニュース.2022

 イスラエルのナフタリ・ベネット首相は声明を発表し「そのような嘘は、ユダヤ人に対して行われた歴史上最も恐ろしい犯罪の責任をユダヤ人に転嫁するもの」とし「政治的目的のためにホロコーストを持ち出すな」と警告した。祖父がホロコーストの被害者であるイスラエルのヤイール・ラピード外相は「ユダヤ人を反ユダヤ主義者だと非難するのは、ユダヤ人を標的にした最も低級な人種主義」と反論した。

ウクライナ「脱ナチス化」主張のロシア、「ヒトラーはユダヤ人」…イスラエル「怒り」/hankyoreh japan.2022
プーチンがイスラエルに電話協議で謝罪

ロシアのプーチン大統領は5日、ラブロフ外相がナチス・ドイツを率いたヒトラーが「ユダヤ人の血を引いている」と発言したことを巡って、イスラエルのベネット首相との電話協議で謝罪した。ベネット氏も謝罪を受け入れた。タス通信などが伝えた。

ロシア外相の「ヒトラーはユダヤ系」発言、プーチン大統領が謝罪 イスラエル首相との電話協議で/東京新聞 TOKYO Web.2022

5日はイスラエルの独立記念日。プーチン氏はヘルツォグ大統領に書面で「友好と相互理解に基づく両国関係が続くと信じている」と祝意を伝えた。

ロシア外相の「ヒトラーはユダヤ系」発言、プーチン大統領が謝罪 イスラエル首相との電話協議で/東京新聞 TOKYO Web.2022

 イスラエルはロシア系住民が多く、ウクライナ侵攻に対して「中立的な立場」を保っているため、プーチン氏としてはイスラエルとの関係悪化を避けたい思惑があったとみられる。

ロシア外相の「ヒトラーはユダヤ系」発言、プーチン大統領が謝罪 イスラエル首相との電話協議で/東京新聞 TOKYO Web.2022

世界には現在、ユダヤ教徒が国家元首である国は2つしかない。一つはユダヤ人が人口の7割以上を占めるイスラエル。もう一つはロシアの侵略を受け、ユダヤ系のゼレンスキー大統領が国民を鼓舞し続けるウクライナである。ゼレンスキー氏はイスラエル国民を「兄弟たち」と呼び、強硬な対露制裁や優れた兵器の供与を求めているが、イスラエルは制裁には消極的で、ウクライナ支援も人道分野にとどめている。背景には、ロシアとの関係も悪化させられないというイスラエル独自の事情が垣間見える。

【国際情勢分析】ゼレンスキー大統領が批判する「兄弟」国イスラエルの事情/産経ニュース.2022

ウクライナ極右団体とネオナチの歴史

ウクライナ極右団体とネオナチの関係については、以前から懸念する声が出ている。特に、国家主義的な「アゾフ大隊」について不安視する声が目立つ。同大隊は、ウクライナ東部の紛争が最も激しかった時期にその名が知られるようになり、現在はウクライナ軍の一部隊となっている。

【解説】 ロシアはウクライナ情勢の「語られ方」をどう作っているのか/BBCニュース.2022

ただ、ウクライナで極右は依然として少数派のままだ。2019年の議会選挙では、全ウクライナ連合「自由」(スヴォボダ)など極右のグループや候補者は、議席確保に必要な最低得票率5%を大きく下回った。

【解説】 ロシアはウクライナ情勢の「語られ方」をどう作っているのか/BBCニュース.2022

『ユーロ・マイダン革命』ウクライナで極右勢力が表舞台に登場

BBC Newsnight/YouTube

EUとの連携協定が正式調印される筈であった2013年11月21日の夜、首都キーウ(キエフ)の独立広場(マイダン)には、SNSでの呼びかけに応じて集まった多数の市民が詰めかけ、連合協定締結の撤回に抗議の声を上げた。

2013年の「ユーロマイダン」から激化したウクライナの内部分裂/WANI BOOKS NewsCrunch.2022

ただし、この段階における抗議行動は、あくまでも平和的なデモに過ぎなかった。人々はウクライナ国旗やEU旗を掲げたり、歌いながら行進する程度で、暴力的な傾向は見られなかった。

2013年の「ユーロマイダン」から激化したウクライナの内部分裂/WANI BOOKS NewsCrunch.2022
当時の政権が強制排除にとりかかり、結果過激化した抗議デモの先頭立ったのが右派勢力

しかし、11月末、政府が内務省の機動隊を投入して、デモを強制的に解散させようとする過程で多数の負傷者が出ると、デモ隊も過激化する。その先頭にいたのが、ネオナチ集団「スヴァボーダ(自由)」や極右政党「右派セクター」の行動隊で、この頃から投石や火焰瓶などによる暴力的な傾向が強まりだした。

2013年の「ユーロマイダン」から激化したウクライナの内部分裂/WANI BOOKS NewsCrunch.2022

この一連の騒動はクリミア危機・ウクライナ東部紛争の直接のきっかけとなっており、プーチン大統領はこのときもウクライナの「ナチス化」を批判していた。

ウクライナの「ナチ化」を防ぐ、というプーチンの主張はロシア兵にも空虚に響く/Newsweek.2022

無論いかなる理由があろうと、ウクライナからクリミアをもぎ取り、内乱を煽って東部の州を独立させることに正当性は存在しえないが、確かに2010年以降のウクライナでの極右勢力の台頭は欧米側からも懸念されており、ヤヌコーヴィチ政権崩壊に際して、アメリカなどが極右政党に接触していたことに批判があったのも事実だ。

ウクライナの「ナチ化」を防ぐ、というプーチンの主張はロシア兵にも空虚に響く/Newsweek.2022

反ロシア極右民族主義!ネオナチと言われている政党「全ウクライナ連合『自由』」

極端な反ロシア政策を主張する極右民族主義政党「全ウクライナ連合『自由』」は、ネオナチ政党と目されており、その勢力はクリミア危機・ウクライナ東部紛争前夜の2012〜14年ごろに最高潮に達している。

ウクライナの「ナチ化」を防ぐ、というプーチンの主張はロシア兵にも空虚に響く/Newsweek.2022
『ユーロ・マイダン革命』後の暫定政権ではさまざまな主要ポストに抜擢された

副首相や国防大臣など閣僚4ポスト、さらに国家安全保障・国防会議議長や検事総長という要職を手にしたのが「全ウクライナ連合『自由』」(通称“スヴォボーダ”)。スヴォボーダは、民族的純血主義(ウクライナ語を話すウクライナ人しか認めない、ロシア系の住民は出ていけ、との主張)、外国人排斥を訴える“極右政党”である。

ウクライナ政変のキープレイヤーは「ネオナチ」だった/週プレNews.2014
現在は勢力は衰退!?ウクライナ政権のナチス化は事実ではない

しかし、現在の「全ウクライナ連合『自由』」は当時と比べると退潮傾向が大きい。もちろん政権に参画もしていない。ところがロシアでは、ウクライナの極右勢力が衰退すればするほど、ウクライナ政権のナチス化が強調されているという。つまり、ウクライナ政権へのロシア側の「ナチス化」批判は事実に基づいてはいないということができる。

ウクライナの「ナチ化」を防ぐ、というプーチンの主張はロシア兵にも空虚に響く/Newsweek.2022
逆にプーチンは欧州の極右政党と密接な関係

一方、プーチン氏自身は欧州の極右政党と密接な関係を持っている。例えば、オーストリアの極右政党「自由党」だ。同党関係者がモスクワを訪問した時、プーチン関係者に歓迎されている。プーチン氏の反ナチ主義は首尾一貫していないのだ。

ウクライナ侵攻は「プーチンの戦争」/アゴラ 言論プラットフォーム.2022

極右政治団体「右派セクター」

BBC News – Русская служба/YouTube

そしてもうひとつ、旧政権時代に内務省の兵器庫から銃器を奪取し、革命成功に決定的な役割を果たしたのが、昨年12月に過激派極右組織が集まって結成された政治団体「右派セクター」だ。

ウクライナ政変のキープレイヤーは「ネオナチ」だった/週プレNews.2014
「反ロシア」「反ユダヤ」様々なナショナリスト団体が集まって構成

(前略)「右派セクター」は、「スヴォボダ」をはじめ、いくつかのナショナリスト団体で構成されており、「反ロシア」とともに「反ユダヤ主義」を標榜している。

【IWJブログ】ウクライナ政変~揺らぐ権力の正当性――西部の首都キエフを支配した反政権派には米国政府とネオナチの影、プーチンに支援を求める東部の親露派住民 2014.3.6/IWJ Independent Web Journal,2014

 必ずしも一致団結しているわけではなく、内部に多少の温度差があり、「右派セクター」のリーダーの一人であるディミトリ・ヤロシュ氏は、「スヴォボダ」を「リベラルすぎる」と評しているという。

【IWJブログ】ウクライナ政変~揺らぐ権力の正当性――西部の首都キエフを支配した反政権派には米国政府とネオナチの影、プーチンに支援を求める東部の親露派住民 2014.3.6/IWJ Independent Web Journal,2014
ユーロ・マイダン革命ではバリケードに火炎瓶!!過激な武力闘争
romadske/YouTube

 右派セクターは2月の政変で主導的役割を果たした。特に衝突が激化するなかで、バリケードや火炎ビンなどを使った武力闘争でその存在感を発揮した。メンバーは1万人程度とみられている。

ウクライナ暫定政権を揺さぶる「右派セクター」/SankeiBiz.2014

2月21日、右派セクターのリーダーの一人であるAleksandr Muzychko氏は、「秩序と規律」の回復のために武力に訴えることを宣言したと露紙ロシア・トゥデイが伝えている。

【IWJブログ】分裂するウクライナ ——親ロシア派、親欧米派、そして第三の勢力 2014.2.25/IWJ Independent Web Journal,2014

この右派セクターのリーダーは「この町、この地域で、無法者や略奪者がいたら、右派セクター部隊がその場でそいつを撃つ。そうすれば、秩序と規律が保たれるだろう」と演説した。彼らの言う「無法者」「略奪者」は、警察のことでもある。「もし、キエフのこいつら(警察)が明日までに止めなければ、われわれが軍隊を引き継ぎ、装甲車・戦車を持つ」という過激な警告まで発している。

【IWJブログ】分裂するウクライナ ——親ロシア派、親欧米派、そして第三の勢力 2014.2.25/IWJ Independent Web Journal,2014

ウクライナ東部の住民たちは彼らを恐れ、ロシア国営放送は彼らをネオナチのように報じている。

「私たちは、軍隊ではない。」:ウクライナ《右派セクター》リーダーへのインタビュー(翻訳記事)/CHEMODAN.2014
右派セクターの中にナチスの突撃隊と同じ名前の団体!?「ブラウン・シャツ」

2月にキエフで最終的に政権転覆を成功させたのは、反ユダヤ主義・反ロシアの「右派セクター」連合だったが、「右派セクター」には、新内閣でいくつかのポストを得たスボヴォダ党などとともに、「ブラウン・シャツ」というグループが含まれている。「ブラウン・シャツ」とは、ナチスの突撃隊の呼び名だった。共産党が「赤」と呼ばれるように、「茶色」「褐色」はファシストの別名である。現在のウクライナでは、ネオ・ナチと反ロシアは判別し難いものになっている。

【IWJブログ】ウクライナ東部の混乱――ロシアとアメリカは何を狙うのか 2014.7.20/IWJ Independent Web Journal,2014

ロシアではクリミア併合の理由は「右派セクター(ネオナチ)」からロシア系住民を守るため

 日本を含めた欧米諸国では、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が強行的にクリミアを併合したと同時に、新たにウクライナの東部州の併合も画策していると見る。同大統領こそがウクライナ東部の動乱の首謀者であり、混乱の引き金を引いた張本人であると捉える。

ウクライナ問題を引き起こした張本人は米国だった/JBpress.2014

 けれどもロシア国内での見方は真逆だ。親米派のウクライナ新政権は武装集団「右派セクター」のロシア系住民の殺害を容認し、プーチン大統領は彼らを守るためにクリミア併合に踏み切ったと見ている

ウクライナ問題を引き起こした張本人は米国だった/JBpress.2014

右派セクターの設立者「ドミトリー・ヤロシ」

右派セクターは、2013年11月に極右団体トライデントのリーダーであったドミトリー・ヤロシ氏が中心となり設立されました。

ウクライナ右派セクター党員用パッチ(ベロクロ)/パッチボックス
ユーロ・マイダン革命の後の暫定政権では「ドミトリー・ヤロシ」が国防会議副議長に就任
Радіо Свобода Україна/YouTube

(前略)リーダーのドミトロ・ヤロシを暫定政権の国防会議副議長に送り込んだ。

ウクライナ政変のキープレイヤーは「ネオナチ」だった/週プレNews.2014

暫定政権側は、右派セクターとヤロシ氏が政変で果たした役割は「あまりにも重要で、彼らを見限ることはできなかった」(3月1日付の米誌タイム、電子版)という。政変を支持した国民は彼らを「英雄視していた」(同)といい、ヤロシ氏に対しては、暫定政権内で副首相の座を与える動きがあったとも報じられている。

ウクライナ暫定政権を揺さぶる「右派セクター」/SankeiBiz.2014

 ただ、ヤロシ氏はロシアを「数世紀に及ぶウクライナの敵」と公言してはばからず、それがロシア系住民の恐怖を招いている。4月17日にジュネーブでウクライナ暫定政権と欧米、ロシアで合意した、ウクライナ国内における「全ての違法な武装組織の武装解除」にも応じず、ロシアが暫定政権を非難する論拠を与えている。5月2日に南部オデッサで発生した火災と、40人超の親露派が死亡した事件においても、ロシア側は右派セクターが関与したとの見方を示し、暫定政権と欧米を非難した。

ウクライナ暫定政権を揺さぶる「右派セクター」/SankeiBiz.2014
ロシアではテロ行為煽動で刑事告訴!国際指名手配された

3月はじめにロシア連邦予審委員会は、《右派セクター》の指導者ドミトリー・ヤロシ氏をテロ行為煽動の罪で刑事告訴し、彼は国際指名手配された。

「私たちは、軍隊ではない。」:ウクライナ《右派セクター》リーダーへのインタビュー(翻訳記事)/CHEMODAN.2014
2015年 ウクライナ軍の参謀総長顧問に就任

【4月7日 AFP】ウクライナ国防省は6日、極右組織「右派セクター(Pravy Sektor)」の指導者ドミトロ・ヤロシ(Dmytro Yarosh)氏を軍参謀総長の顧問に任命したと発表した。右派セクターは政府軍と共に親ロシア派武装勢力と戦っており、政府には義勇兵らの統率を強化する狙いがあるとみられる。

ウクライナ、極右指導者を軍の顧問に 民兵組織の統率を強化/AFPBB News.2015

 ウクライナ政府軍と親露派との戦闘が始まって間もなく1年を迎える。政府は、親露派打倒という同じ目標を掲げながら、必ずしも軍の指揮下にない複数の民兵組織の統率を図りたい考えで、ヤロシ氏の顧問起用はその実現に向けた重要な一歩になるとみられる。

ウクライナ、極右指導者を軍の顧問に 民兵組織の統率を強化/AFPBB News.2015

 内務省はこれらの民兵組織に協力を呼び掛けており、中には政府から資金援助を受けている組織もあるが、予備兵も含め1万人が所属するとされる強力な右派セクターはこれまでのところ、政府に正式に登録することを拒否してきた。

ウクライナ、極右指導者を軍の顧問に 民兵組織の統率を強化/AFPBB News.2015

 しかしヤロシ氏をビクトル・ムジェンコ(Viktor Muzhenko)軍参謀総長の顧問に任命するという発表を受けて、右派セクターの姿勢も変化するとみられている。右派セクターの報道官は、政府の管理からは独立した状態を続けるものの、今後は国防省からの資金を受け取ると述べた。

ウクライナ、極右指導者を軍の顧問に 民兵組織の統率を強化/AFPBB News.2015
2021年 ウクライナ軍最高司令官顧問に任命

2021年11月2日、ヤロシはソーシャルメディア上で「ウクライナ軍最高司令官顧問に任命された」と述べた。ウクライナ・プラウダの(2021年12月の)要請に対し、ウクライナ軍参謀本部は、要請された情報の機密性を理由に、ヤロシとの協力関係の疑惑の詳細について開示を拒否した。この要請に先立ち、(陸軍の)公的顧問のポストは清算された 。

【知ってはいけないウクライナのネオナチ】右派セクター①/情報局815.note.2022

英雄 or テロリスト!?かつてナチスと共闘しソ連と戦った人物!ステンパン・バンデラを讃える「バンデラ主義者」

UATV English/YouTube

「ネオナチ」という言葉と並んで、「バンデラ」「バンデロフツィ(バンデラ主義者たち、バンデラ一派)」という用語が、プーチン大統領や政府高官の発言、国営メディアにも、ウクライナを非難する文脈で登場する。

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 バンデラとは、旧ソ連と戦うためにナチス・ドイツ(Nazi)と協力したウクライナ民族主義組織の指導者ステパン・バンデラ(Stepan Bandera)のこと。「バンデラ主義者」という言葉は、ロシア当局が民族主義的な考えを持っているとするウクライナ当局者をさげすむ際にしばしば使われる。

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ウクライナの政権内部でナチスと連携したバンデラを民族解放運動の指導者として再評価する動きがあった。そのことをプーチンは「ネオナチ」と呼んでいる。

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 このバンデラという人物は、ソ連の歴史教育では「ナチスの協力者」「テロリスト」として扱われてきました。しかし近年のウクライナでは、独立のためにソ連と戦ったバンデラの名誉回復がなされ、両国の間で評価が正反対になっています。

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1929年 ウクライナ国民機構が設立!バンデラが党首へ

(前略)ウクライナ国民機構(OUN-B)は1929年に設立され、4年後にはバンデラが党首になった。

ウクライナ問題について その3/キヤノングローバル戦略研究所.2014
ポーランド内務大臣暗殺疑惑で逮捕

1934年にバンデラや他の機構の指導者達はポーランド内務大臣の暗殺の嫌疑で逮捕された。

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釈放後にナチス・ドイツと共闘しソ連と戦った

彼は1938年に釈放され、直ちに独占領軍から資金援助を受けて800人もの戦闘員の訓練所を設立している。

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 第2次世界大戦当時、ウクライナでは民族主義が沸き起こり、ステパン・バンデラという人がウクライナ東部を拠点にソ連にレジスタンス戦を仕掛けました。「敵の敵は味方」という論理からナチスとも協力し、ソ連軍と戦ったのです。

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バンデラの軍団は虐殺をおこなった……

バンデラの軍団は、ドイツ軍の下に置かれ、無辜のユダヤ人、スロバキア人、チェコ人を虐殺した。

ナチスを彷彿させるウクライナキエフの「たいまつ行進」/現代ビジネス | 講談社.2015

しかし、ウクライナ独立の約束をナチスは守らず、バンデラはナチス占領下でウクライナ独立を宣言したために逮捕されるのですが、反ユダヤ主義者でもあり、ユダヤ人虐殺に関与しています。

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彼とその仲間が発表した声明には、反ユダヤ主義が色濃く表れており、ロシア人、ポーランド人、ユダヤ人を「敵対民族」として排斥することが謳われていた。

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虐殺の真相は?

 ユダヤ人の虐殺に加担したという事実は議論も多く、またバンデラの一派の中にはユダヤ人を助けたという話もあり、必ずしも反ユダヤに全面的に加担したのではないという意見もある。

ウクライナには「ネオナチ」という象がいる~プーチンの「非ナチ化」プロパガンダのなかの実像【下】/論座 – 朝日新聞社の言論サイト.2022

しかしまったく別の歴史理解がむしろウクライナ国外では当たり前だ。ウクライナ人の父をもつカナダ人の歴史家のジョン・ポール・ヒムカの著書「ウクライナナショナリストとホロコースト」では、ウクライナのナショナリスト、つまりウクライナ民族主義者が、ホロコーストで果たした役割を詳述している。ライフルやショットガンで武装したウクライナのナショナリストの民兵がユダヤ人狩りをし、時には釘を打ち込んだ棒や農具で叩き殺してきたとの話は衝撃的である。この歴史家は、彼らがホロコーストに加担したことは明らかであると結論づけている。

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 イスラエルのハアレツ紙は、わずかな人がユダヤ人を助けたかもしれないが、多くのウクライナ人はユダヤ人を追い詰め、ナチスに引き渡し、さらには自分たちの手で彼らを殺害したと主張する。ウクライナ人がユダヤ人を助けたというわずかな例外をとりあげるのは、ホロコーストへの加担の責任を免れようとしているということだ。

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その後、バンデラはナチスドイツに逮捕され強制収容所に送られる

バンデラが指揮する軍団が、ドイツ軍の指揮下に入ってソ連軍と戦い、戦争初期にウクライナを支配下に置いた。もっとも、ナチスの特徴は、「約束を守るとは約束していない」と言って合意を反故にすることだ。ウクライナ独立の約束をナチスは守らず、ウクライナ人はドイツの鉱山や工場で働かされ、「東方の労働者」と呼ばれた。バンデラはナチスによって逮捕され、強制収容所に送られた。

ナチスを彷彿させるウクライナキエフの「たいまつ行進」/現代ビジネス | 講談社.2015
アメリカ軍によって強制収容所から釈放

戦争末期、バンデラは米軍によって強制収容所から釈放された。

ナチスを彷彿させるウクライナキエフの「たいまつ行進」/現代ビジネス | 講談社.2015

バンデラが解放されたのは、1944年9月であり、解放後、バンデラは反ソ連武力闘争の指導を提案されたが、バンデラはナチス・ドイツとの協力を拒否した。

キーウ市内、ステパン・バンデラの誕生日に合わせた行進実施/ウクルインフォルム通信.2019
KGBによって暗殺
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バンデラは1959年10月15日、ミュンヘンの自宅周辺でKGB(ソ連国家保安委員会=秘密警察)の刺客によって暗殺された。

ナチスを彷彿させるウクライナキエフの「たいまつ行進」/現代ビジネス | 講談社.2015
ソ連かウクライナが独立するとバンデラの名誉回復が進む

ウクライナがソ連の構成国だった時代には、当然ながら、ナチ協力者は裏切り者として断罪されていたが、1991年の独立に伴い、ウクライナでは徐々にバンデラの名誉回復の動きが進んだ。そうした動きは、ロシアに批判的な姿勢を示す政権の下で活性化した。

プーチンはなぜウクライナの「非ナチ化」を強硬に主張するのか? その「歴史的な理由」/現代ビジネス | 講談社.2022
「ウクライナ社会国民党」が結成!バンデラの組織「ウクライナ国民機構」の旗を掲げた

 旧ソ連時代は眠っていたナショナリズム運動、1991年の独立後目を覚ます。ウクライナ社会国民党(PSNU)が結成される。2000年代始めまではマイナーな、外国人嫌いの急進愛国主義の組織であり、僅かな影響が西部地域で確認されるだけだった。現在の党首オレーフ・チャフニボークは1998年に初めてウクライナ議会議員に選出された。

ウクライナのナショナリズム過激派【無料公開中】/ル・モンド・ディプロマティーク.2014

(前略)ステパン・バンデラを指導者とした第2次大戦中の組織である「ウクライナ国民機構(OUN-B)」が使っていた赤と黒の旗を掲げて行進している。

ウクライナ問題について その3/キヤノングローバル戦略研究所.2014
その後「全ウクライナ連合「自由」に名前を変更し中立のシンボルにした

PSNUは2004年の第6回総会の折り、ファシズムの旗印を取り下げた。そして《スヴォボダ》(全ウクライナ連合「自由」)と名前を変え、ネオナチの紋章《ボルフザンゲル》を捨て、中立的シンボルにした。

ウクライナのナショナリズム過激派【無料公開中】/ル・モンド・ディプロマティーク.2014
オレンジ革命後にユシェンコ大統領がバンデラに「ウクライナの英雄」の称号を授与
Gozikm/YouTube

例えば、ウクライナでは2004年に、大統領選の結果をめぐる民主化運動で親ロシア政権が倒れる政変(オレンジ革命)が起こった。この「革命」によって、いわゆる親欧米/反ロシア色の強いユシチェンコ政権が誕生したが、同政権は、2009年、バンデラを郵便切手のデザインに採用し、2010年にはバンデラに「ウクライナの英雄」の称号を与えた。

プーチンはなぜウクライナの「非ナチ化」を強硬に主張するのか? その「歴史的な理由」/現代ビジネス | 講談社.2022
2010年ユシチェンコ大統領がバンデラに国家勲章を授けるとウクライナ東部で非難行動が相次ぐ

ユーシチェンコがバンデラに「ウクライナ英雄」の勲章を授けたのは、2010年1月20日に調印された大統領令においてである。これが22日のプレスサービスで報じられると即座に国内から二種類の反応が起こった。西ウクライナから賛辞が届くと共に、東ウクライナから非難行動が起こったのである。特徴的なのものを紹介しておくと、リヴィウに隣接するテルノピリ市の首長ロマン・ザスターヴニーは即時にユーシチェンコに対して謝意を示し、「これは我々の国家にとって実に大きな、そして光栄な出来事である。しかしながら、ステパン・バンデラという人物はウクライナ精神の不屈さとウクライナの自由と独立の名における自己犠牲的なヒロイズムのシンボルなのである」というコメントを発したのに対し東ウクライナでは、オデッサで变勲の大統領令が燃やされたり、セヴァストーポリで議員が国内パスポートを燃やすパフォーマンスを見せたりという反対行動がみられた。

―『バンデラへの祈り』、コンセプト・パブ「クリイウカ」、『黄金の9月ハリチナー年代記1939-1941』―(P.5)/島田 智.バンデラとバンデルシュタットをめぐる言説とその周辺子.ウクライナ研究会

一方国外では、ロシア政府とロシアのラビ、ポーランド政府がすぐさま非難のコメントを出したのに続き、ヨーロッパ議会でも遺憾の意が表された。

―『バンデラへの祈り』、コンセプト・パブ「クリイウカ」、『黄金の9月ハリチナー年代記1939-1941』―(P.5)/島田 智.バンデラとバンデルシュタットをめぐる言説とその周辺子.ウクライナ研究会
ヤヌコヴィッチ大統領が称号を剥奪

2011年にヤヌコーヴィチはステパン・バンデラの「ウクライナの英雄」の称号を剥奪した。

ウクライナ問題について その3/キヤノングローバル戦略研究所.2014
ユーロ・マイダン革命後にポロシェンコ政権でバンデラの名誉回復が法案が議会に提出される

2013年末にウクライナで始まったユーロ・マイダン革命の結果、EUよりもロシアとの関係改善に前向きなヤヌコーヴィチ政権が倒れ、ポロシェンコ政権が樹立されると、2015年、かつてバンデラが率いた「ウクライナ民族主義者組織」「ウクライナ蜂起軍」の故メンバーたちを「20世紀のウクライナ独立の闘士」とみなすという法案が議会に提出された。また、マイダンの混乱の中、ウクライナ蜂起軍の赤と黒の旗を掲げる人々がニュース映像にも映っていた。

プーチンはなぜウクライナの「非ナチ化」を強硬に主張するのか? その「歴史的な理由」/現代ビジネス | 講談社.2022
ステパン・バンデラ通りが誕生
Chile N Thailand Travel/YouTube

 2016年8月、ウクライナの首都キエフに、OUN-UPA(ウクライナ民族主義者組織-ウクライナ蜂起軍)の指導者の名を冠したステパン・バンデラ通りが誕生した。

反ロシアへ歴史の書き換えが急速に進むウクライナ/JBpress.2016
ロシアが反発……さらにポーランドも

ウクライナのニュースサイト「キーウポスト」によると、2016年に「モスクワ通り」が「バンデラ通り」に改名されると、ロシア側は反発していたという。

「キエフのモールにナチスのロゴ」拡散の動画はミスリード。ロシアの侵略を正当化? ハッキング説も/BuzzFeed Japan.2022

ポーランドは、大戦期におけるバンデラの組織の行為を「ポーランド人に対する虐殺」認定し、不快感を露わにしている。

反ロシアへ歴史の書き換えが急速に進むウクライナ/JBpress.2016
「彼は祖国の自由を守った一人である」ゼレンスキーの発言

(前略)その後もバンデラに称号を再付与すべきとの議論がウクライナ国内でなされており、ゼレンスキー大統領は「ステパン・バンデラは何割かのウクライナ国民にとっては英雄である。これはいたって普通であり、素晴らしいことだ。彼は祖国の自由を守った一人である」と発言している。

プーチン大統領は「何を恐れて」ウクライナに侵攻したのか? その「思想と思惑」を読み解く/現代ビジネス | 講談社.2022
バンデラの誕生日1月1日には毎年たいまつ行進
BBC News/YouTube

ウクライナでは、バンデラを愛国者としてたたえるパレードが10年ほど前から定着。

ユダヤ人が殺された渓谷に博物館建設へ 被害と加害が絡む歴史/東京新聞 TOKYO Web.2020

毎年1月1日には、民族主義組織がバンデラの誕生日を祝いたいまつ行進を行っている。

キーウ市内、ステパン・バンデラの誕生日に合わせた行進実施/ウクルインフォルム通信.2019

(前略)たいまつ行進はナチス・ドイツが戦意高揚を目的としてしばしば行っていたのを真似たとみられる。

『ラーク便り』データベース/(公財)国際宗教研究所

行列では全ウクライナ連合「自由」とウクライナ民族主義者組織などの国粋主義者らがウクライナ国旗や民族主義的組織の旗を手に、「第2のハザール・カガン国(ロシアを示した表現)を倒せ」、「我々の信条は民族主義なり! 我らの預言者はステパン・バンデラなり!」などと書かれたプラカードを掲げて練り歩いた。

キエフ、元旦に国粋主義者バンデラを讃える松明行列/スプートニク日本ニュース.2016

参加者は、約1000人。行進を組織した主な団体は、自由(スヴォボーダ)党と右派セクター党であり、タラス・シェウチェンコ公園のコブザール像から、フレシチャーティク通りに向けて行進した。

キーウ市内、ステパン・バンデラの誕生日に合わせた行進実施/ウクルインフォルム通信.2019

「欧米はウクライナにいるバンデラ(過激派)を支援・扇動している」プーチンは非難

 OUNがドイツと協力関係にあったという史実を利用して、プーチンは、ステパン・バンデラをヒトラーの右腕とイメージづけようとした(実際のところ、バンデラはヒトラーに会ったこともなく、最後にはナチスとソ連の両方から迫害されることになる)。

「歴史」をねじ曲げるプーチンの危険すぎる思想――ウクライナを“ナチス”と呼びつける理由/デイリー新潮.2022

プーチンは訴えた。

「ロシア世界」を守るためには仕方ない…プーチンが軍事介入を正当化するために使う”あるキーワード”/PRESIDENT Online.2022

今、世界は新たなファシストの台頭に直面している。

「ロシア世界」を守るためには仕方ない…プーチンが軍事介入を正当化するために使う”あるキーワード”/PRESIDENT Online.2022

しかしアメリカや西側諸国の政府は、1940年代の戦時中の同盟ではロシアと手を組んだにもかかわらず、今回はそうしようとせず、なぜかウクライナの過激派を支援・扇動しようとしている。ロシアを崩壊させたいという欲求から、アメリカとヨーロッパの米同盟国は第二次世界大戦の原則そのものを裏切っているのだ。

「ロシア世界」を守るためには仕方ない…プーチンが軍事介入を正当化するために使う”あるキーワード”/PRESIDENT Online.2022
一方で、ナチスとソ連の秘密取引は弁明

 一方、第2次世界大戦中のナチス・ドイツとロシアの協力については、プーチンは巧みな話術を駆使して正当化した。

「歴史」をねじ曲げるプーチンの危険すぎる思想――ウクライナを“ナチス”と呼びつける理由/デイリー新潮.2022

 ドイツによるポーランド侵攻を容易にした1939年の独ソ不可侵条約と、スターリンとヒトラーによる秘密取引は、ロシアの生存のために必要だったとして弁護された。ところが、ステパン・バンデラとウクライナの民族主義者たちは、過激思想や反ユダヤ主義に駆られ、ナチスに仕えてウクライナのユダヤ人を虐殺したとして非難された。メディア戦略によって広められた「プーチンが語る物語」のなかでは、彼らはホロコーストの実行犯であり、ウクライナの民族主義思想を掲げてロシア人をも攻撃した危険分子だった。

「歴史」をねじ曲げるプーチンの危険すぎる思想――ウクライナを“ナチス”と呼びつける理由/デイリー新潮.2022
バンデラ派はウクライナでは主流ではな……それでも親ロシア派住民の脅威「ファシスト」として非難を続けていった

彼らはウクライナの主流とは言えず、議会や政権において代表性をほとんど持たなかったが、ウクライナの親露勢力やロシアは「バンデラ派」をロシア系住民への脅威「ファシスト」として非難した。

プーチン政権と第二次世界大戦 第(pp.2-3) 132 号 2020 年 8 月 4 日/山添 博史.防衛研究所WEBサイト

この「ファシストのバンデラ派」は、ロシアの正統性や影響力に対する現実の脅威というより、ロシアがこれを非難することでウクライナの反露勢力に対する敵意を強め、ウクライナの分断を強める効果があった。このことが、ロシアは防御的ではなく攻撃的で、ウクライナに介入し現実の紛争を煽っているという中東欧での懸念をもたらしている。

プーチン政権と第二次世界大戦 第(p.3) 132 号 2020 年 8 月 4 日/山添 博史.防衛研究所WEBサイト

このためたびたび、中東欧からは「ロシアが誤った歴史観で外国を威嚇している」という非難、ロシアからは「中東欧のファシストが誤った歴史観で戦後秩序とロシア系住民を脅かしている」という非難が積み重なってきた。

プーチン政権と第二次世界大戦 第(p.3) 132 号 2020 年 8 月 4 日/山添 博史.防衛研究所WEBサイト

ネオナチは存在するが政権担っていない、ゼレンスキーはユダヤ系……「ウクライナはナチに支配されていない」

ウクライナでは過去も現在もネオナチは存在するが、政権を担っていない。ゼレンスキー大統領はウクライナ系ユダヤ人の家庭で生まれた。プーチン氏が主張するように「ウクライナはナチストたちに支配されている」とはいえない。

ウクライナ侵攻は「プーチンの戦争」/アゴラ 言論プラットフォーム.2022
created by Rinker
独裁者・プーチンを徹底解明! その内在的論理を理解しなければ、ウクライナ侵攻を理解することはできない。 外務官僚時代、大統領となる前の若き日のプーチンにも出会った著者だからこそ論及できる、プーチンの行動と思想。

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【ウクライナ危機(34)】ウクライナ正規軍の中に危険なネオナチ組織がいてロシア系住民をジェノサイド!!?『侵攻の口実“アゾフ連隊”』
“https://diggity.info/society/ukraine-34/”
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