【ウクライナ危機(24)】欧州を襲ったエネルギー危機!!背後から浮かび上がったのはロシアの天然ガスパイプライン『ノルド・ストリーム2』

【ウクライナ危機(24)】欧州を襲ったエネルギー危機!!背後から浮かび上がったのはロシアの天然ガスパイプライン『ノルド・ストリーム2』

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【ウクライナ危機(23)】国内では“オリガルヒ”との戦いが続いていた。その頃、世界を震撼させた巨大リーク「パンドラ文書」が公開……そこにはゼレンスキーの名前も『ゼレンスキー政権クーデター計画』
“https://diggity.info/society/ukraine-23/”

European energy crisis

欧州エネルギー危機

DW News/YouTube

ウクライナ、ロシアの両国関係は最近、ロシアが仕掛けたと疑うウクライナのエネルギー危機の深まりもあり、さらにこじれる様相となっている。

ロシア軍、ウクライナ国境付近で増強 米がCIA長官派遣して懸念伝える/CNN.co.jp.2021

欧州で「エネルギー危機」が勃発!!

DW News/YouTube

 欧州では目下、天然ガス価格と電気料金が急騰し「エネルギー危機」と呼ばれる状況に陥っている。暖房を天然ガスに依存する家庭が多い欧州では今冬、「暖房か食料か」の選択を迫られるエネルギー貧困層が増加するかもしれない。

欧州で天然ガス急騰「悪いのはロシア」は本当か/週刊エコノミスト Online.2021

 実際、暖房を天然ガスに依存する世帯比率が85%の英国イングランド地域では、エネルギー貧困層は全世帯の約13%、300万世帯を超えている。

欧州で天然ガス急騰「悪いのはロシア」は本当か/週刊エコノミスト Online.2021

 こうした状況の中、欧州連合(EU)は10月21~22日、EU首脳会議を開催し、エネルギー危機を乗り切るための方策を議論した。短期的な問題を乗り切るための対症療法として、税免除や補助金提供がまとめられたものの、中長期的解決策の原因療法は見つからず、年末に持ち越しとなった。今回のエネルギー危機が複合的な原因で発生したことに加え、EU各国のエネルギー事情が異なることから、合意できる解決策が見つからなかったとみられる。

欧州で天然ガス急騰「悪いのはロシア」は本当か/週刊エコノミスト Online.2021
ヨーロッパはロシアの天然ガスに依存している

まず背景にあるのは、EUにおける天然ガスのロシアへの高い依存率だ。天然ガスのEU域内生産はここ10年で半減し、2019年の輸入依存率は約90%に達している。中でもロシアからの輸入割合は大きく、EUの天然ガス総輸入量のうち、ロシア産は 2020年(6,320万トン)に43.9%、2021年上半期(7.480万トン)には 46.8% を占めている。

なぜ天然ガスをめぐってロシアとEUの対立が起きているのか?/The HEADLINE.2021

ロシア依存が高い背景には、同国の地理的な優位性がある。天然ガスは気体状態の方が液化天然ガスよりも輸送コストが低く、欧州と地続きのロシアからは気体状態の天然ガスをパイプラインを使って輸送可能となっている。そのため、EU域内のエネルギーはロシアに大きく依存する状況だ。

なぜ天然ガスをめぐってロシアとEUの対立が起きているのか?/The HEADLINE.2021

エネルギー危機はプーチンの戦略!?「ガスプロムが天然ガス価格を高騰させている可能性」

DW News/YouTube

 ただ、このエネルギー危機は、単に供給不足による資源高やエネルギー高騰が招いただけだとは言い切れない。そこにはロシアのプーチン大統領の狡猾な政策が見え隠れしている。

エネルギー問題でEUを分裂させたドイツの自業自得【白川司】/WiLL Online.2021

 というのは、天然ガス価格をリードしているのが、ロシアのガスプロムであるからだ。ガスプロムは天然ガスの供給を抑え込んで、天然ガス価格の高騰を演出している可能性が高いのである。

エネルギー問題でEUを分裂させたドイツの自業自得【白川司】/WiLL Online.2021
ガスプロムの新ガスパイプライン「ノルドストリーム2」が稼働すれば……。

 それはロシアとドイツを結んでいるの新ガスパイプライン「ノルド・ストリーム2」がまだ稼働していないことと関係があるだろう。

エネルギー問題でEUを分裂させたドイツの自業自得【白川司】/WiLL Online.2021
ロシア国営のガス会社

ノルドストリーム2の事業規模は110億ドル(約1兆2000億円)。事業主体のノルドストリーム2AGはスイスを拠点とし、ロシア国営のガス会社、ガスプロムの傘下にある。

ノルドストリーム2、破産手続きを検討 ロイター報道/日本経済新聞.2022

『ロシア・ウクライナガス紛争』から始まった新パイプライン計画

VOA News/YouTube

現在ロシアはウクライナやポーランドを通過するパイプラインを使い、ガスを西欧諸国に送っている。しかし、ウクライナやポーランドがこのパイプラインをブロックすれば、ロシアのガスビジネスを妨害することが可能である。実際、2005~2006年にはロシアとウクライナの間でガス料金をめぐるトラブルが起きたために、西欧へのガス輸送が一時滞ったことがあった。

露からのガスパイプライン – ノルドストリーム2をめぐる激論/ドイツニュースダイジェスト.2019
ロシアはこれに対応するためにウクライナを通らないパイプライン「ノルドストリーム」を完成

 ロシアは、ウクライナ天然ガス供給途絶問題によって、ドル箱の欧州市場を確保していく上で死活的なルートであったウクライナ経由のインフラを見限り、ルートの多様化へとかじを切った。まず11年に最初のノルドストリームを完成させた。バルト海を経由して年間550億立方メートルのロシア産天然ガスをドイツへ輸送するパイプラインで、これは原子力発電所14基もしくは石炭火力発電所50基の発電量に相当する。

3大パイプラインで目指す「グレートゲーム」の覇権=原田大輔/週刊エコノミスト Online.2020
さらに「ノルド・ストリーム2」とトルコ向けの「トルコ・ストリーム」の建設を開始

 これに続き、19年完成を目指し、ノルドストリーム2(年間550億立方メートル)とトルコ向けにトルコストリーム(同315億立方メートル、将来はオーストリア、イタリアに延伸)の建設を進めてきた。

3大パイプラインで目指す「グレートゲーム」の覇権=原田大輔/週刊エコノミスト Online.2020
「ノルド・ストリーム2」は欧州の需要を十分満たすほどのガスを供給が可能だった

2010年時点では1200億立米のガスを欧州向けに輸送していたウクライナのガスパイプラインだが、ノルドストリーム2が稼働すれば、最悪の場合、ガス輸送量が150億立米程度となる可能性も予想されていた。実際、欧州の需要と供給のバランスから言えば、それで十分なのである。

独露をつなぐ海底ガスパイプライン~バイデン政権がノルドストリーム2を容認した理由/Yahoo!ニュース.2021

だがノルドストリーム2が完成すると、ロシアはウクライナやポーランドを迂回して、大消費国ドイツに直接ガスを送り込むことができる。

露からのガスパイプライン – ノルドストリーム2をめぐる激論/ドイツニュースダイジェスト.2019

“通行料収入”をもらっていたウクライナ・ポーランドは「ノルド・ストリーム2」に猛反対!

問題は、ガスの経由国となっていたウクライナやポーランドの利害である。ウクライナはガスの輸送タリフで毎年20億ドルに上る収入を得ていたと言われる。それがなくなるとすれば、国家財政にとっても大きな打撃となる。

独露をつなぐ海底ガスパイプライン~バイデン政権がノルドストリーム2を容認した理由/Yahoo!ニュース.2021

ポーランドも、ウクライナも、このパイプラインには猛反対していた。

2つのパイプライン――ウクライナを脱炭素の犠牲にしたバイデン/キヤノングローバル戦略研究所.2022

ウクライナはノルドストリーム2に警報を鳴らす

最も強い懸念を示すのはウクライナ。

独ロの輸送管に最後の難関 「ロシアの覇権拡大」に警戒の声/東京新聞 TOKYO Web.2021

ウクライナとロシアの半国営企業ガスプロムの契約は2024年に切れる予定。ロシアは旧ルートの輸送量を減らし、ノルドストリーム2を欧州のメインパイプラインにする予定だが、これを実行するとウクライナは数十億ドル規模の輸送費損失を被ることになる。

ドイツの規制当局 ノルドストリーム2ガスパイプラインの承認手続きを一時停止/KWP News/九州と世界のニュース.2021
ロシアがパイプラインを政治的・軍事的な武器として使う可能性がある

 パイプラインの敷設により、ウクライナを通る既存ルートの利用が減ることで、同国はロシアから得ている重要な経由料を失うことになる。ロシアによる2014年のクリミア(Crimea)半島併合以降、同国と対立関係にあるウクライナは、ロシアがパイプラインを「危険な地政学的武器」として利用する可能性があると欧州に警告してきた。

ロシア、ノルドストリーム2完成を発表 各国反発のガス管/AFPBB News.2021

ゼレンスキー大統領は「ノルドストリーム2はウクライナが一方的に敗者になるエネルギー戦争だ」と明言する。

独ロの輸送管に最後の難関 「ロシアの覇権拡大」に警戒の声/東京新聞 TOKYO Web.2021
欧州にとってもロシア依存は分断の恐れがあった

 ノルドストリーム2は欧州にとって「もろ刃の剣」。天然ガスの安定的調達が可能になる一方、ロシアへの依存度がさらに高まるのは必至。対ロ関係を巡って欧州連合(EU)加盟国が分断される恐れが強い。

独ロの輸送管に最後の難関 「ロシアの覇権拡大」に警戒の声/東京新聞 TOKYO Web.2021

また、ロシアはこれら諸国に対し、「供給停止」という政治的手段を持つことになる。西ヨーロッパに直接ガスを送れるようになれば、政治的圧力を加える手段として「供給停止」を容易に使えるようになる、とこれら諸国は見るのである。

暗雲漂う「ノルトストリーム2」の行方/国際環境経済研究所.2020
プーチンはモルドバ共和国でまさにエネルギーを武器に使用した

 ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、オオカミのように相手の弱みをかぎつけることができる。最近では、欧州のエネルギー危機に乗じて、欧州連合(EU)の周辺諸国への影響力を強めようとしている。モルドバ共和国へのロシアの圧力を見てほしい。

【社説】エネルギー不足、ロシアの揺さぶり拍車/ウォール・ストリート・ジャーナル.2021

 ロシア国有企業ガスプロムのこの小国へのガス供給契約は、9月に期限切れとなった。ロシア政府は、ガス供給の100%をロシアに依存するモルドバに対し、直ちに供給量を3分の2に減らした。その後ガスプロムは、ガス供給を維持する条件として、大幅な値上げを突き付けた。その結果、モルドバは最終的に緊急事態を宣言するに至った。

【社説】エネルギー不足、ロシアの揺さぶり拍車/ウォール・ストリート・ジャーナル.2021

「ロシアは長期契約通り履行している」エネルギー危機についてプーチンの発言

CRUX/YouTube

EUはエネルギー市場自由化の一環として、特定企業(ロシアのガスプロムなど)と固定価格で長期の供給契約を結ぶ方式をやめて、日々のスポット価格をベースにした契約に移行するよう促してきた。それは市場原理派の勝利を意味していたが、必ずしも安定供給と価格のバランスに関する綿密な分析を踏まえた上の判断ではなかった。

再生可能エネばかりを重視したヨーロッパがはまったエネルギー危機/Newsweek.2021
欧州はエネルギーについて日々変動する価格(スポット価格)で契約、結果ロシアに市場価格を委ねることになってしまった

そのため、この政策はいくつかの点でネガティブな結果を招いた。まず、日々変動するスポット価格を基準にした結果、天然ガスの価格支配力を持つロシア側の優位性が一段と高まった。ロシアはヨーロッパ向け天然ガスの最大の供給国であり、生産力には十分な余裕がある。だから供給量の調節によって、いくらでも市場価格を操作できる。

再生可能エネばかりを重視したヨーロッパがはまったエネルギー危機/Newsweek.2021

それだけではない。固定価格方式の排除は供給の安定を困難にする。天然ガスの生産とパイプライン敷設には巨額の投資と長年に及ぶ開発期間が必要だ。それほどの投資をする意欲はなかなか生まれないから、供給側の数は限られる。結果、ロシアの市場支配力が高まった。そのロシアが欧州地域への供給拡大に後ろ向きであることも、今回の危機の要因となっている。

再生可能エネばかりを重視したヨーロッパがはまったエネルギー危機/Newsweek.2021
エネルギー危機で価格について批判されたプーチンは反論「欧州側のシステムの不備」

 米エネルギー長官などが、「ロシアの市場操作が天然ガス価格急騰の原因」と非難したが、露プーチン大統領は「ロシアは長契を全て履行している。スポット契約に切り替えたのは欧州の需要家だ。市場価格であれば、いつでも出荷する」と反論している。70年代の日本の製鉄会社と同じく需要家はスポットが有利と判断したが、裏目に出たということだ。エネルギー危機の大きな原因は、需要家の選択にあったのかもしれない。

欧州エネルギー危機の正体/国際環境経済研究所.2021

批判を受けて10月13日、プーチン大統領は「ロシアは欧州側との契約上の義務を完全に果たしている。原因はヨーロッパ側のシステムの不備にある」と述べて、ロシアが供給を意図的に抑えているという批判に真っ向から反論している。

ロシア、じわじわ世界への影響力高め/Business Journal.2021
ロシア上院国際問題委員会のコサチョフ委員長「それ以上の事案については自発的かつ互恵的な合意次第」

  ロシア上院国際問題委員会のコンスタンチン・コサチョフ委員長はインタビューで、「われわれの落ち度でもないのに、ただ救済に向かうことはできない」と述べた。

ロシアが示唆、欧州向け追加ガス供給には「ノルドストリーム2」必要/Bloomberg.2021

  追加供給の条件を具体的に言及することはないながらも、「ロシアは全ての契約と義務を履行している。それ以上については、自発的かつ互恵的な合意次第であるべきだろう」と語った。

ロシアが示唆、欧州向け追加ガス供給には「ノルドストリーム2」必要/Bloomberg.2021
発言の裏に見え隠れする『ノルド・ストリーム2』

 プーチン大統領が暗に示しているのは「ロシアとドイツを結ぶ新パイプラインであるノルド・ストリーム2を、ドイツとEUは早く承認せよ」ということだろう。ロシア側はこの見方を否定しているものの、反ロシアの機運からノルド・ストリーム2を承認しないドイツやEUに、ロシアがいらだっているのは間違いない。

ロシア、じわじわ世界への影響力高め/Business Journal.2021
プーチン大統領と天然ガス価格の拭い去れない疑惑

10月6日午前(欧州時間)、天然ガスの指標価格「オランダTTF」が年初に比べて約8倍に値上がりする異様な事態に陥り、価格支配力を持つロシアによる意図的な操作ではないかとの疑惑が持ち上がった。もちろん、プーチン大統領はあくまで需給ひっ迫が要因として操作疑惑を否定している。

「脱炭素のために目先の生活を犠牲にできるか」昨今の物価上昇は世界経済に突きつけられた“踏み絵”かも/Business Insider Japan.2021

しかし同日、9月に完成したばかりの欧州向け天然ガスパイプライン「ノルドストリーム2」の早期稼働と供給量の拡大について、プーチン大統領が言及するや否や天然ガス価格は急落。ロシアが陰に陽に天然ガス価格を支配している疑惑はどうしても否定できない。

「脱炭素のために目先の生活を犠牲にできるか」昨今の物価上昇は世界経済に突きつけられた“踏み絵”かも/Business Insider Japan.2021

『ノルドストリーム2』は完成後も承認がない限り動かせなかった

ノルドストリーム2は既に完成しているが、まだ運転開始の承認が得られていない。同パイプラインは、ドイツのエネルギー計画の主要部分を占めるもので、ロシアにとっては収入源になり得る。さらに、米当局者らによれば、同パイプラインは、ロシアのウクライナに対する軍事圧力を停止させる手だてに関する米独政府間の協議の一つの焦点にもなっている。

ウクライナ危機で送ガス管切り札に 米独に温度差/ウォール・ストリート・ジャーナル.2021
ロシアは「承認しない限り動かすことはない」「承認されれた、翌日には175億立方メートルのガスの供給が始まる」

ロシアは、エネルギー危機に見舞われている欧州へのガス追加供給について、完成したばかりの海底パイプライン「ノルドストリーム2」経由の輸出開始を欧州規制当局が承認しない限り実行に動く意思はないと示唆した。

ロシアが示唆、欧州向け追加ガス供給には「ノルドストリーム2」必要/Bloomberg.2021

プーチン氏はテレビ中継されたイベントで「ドイツの規制当局があす供給を許可すれば、その翌日には175億立方メートルのガスの供給が始まる」と述べた。

ノルドストリーム2、独が承認次第ガス供給開始できる=ロ大統領/REUTERS.2021
ドイツは承認手続きを一時停止
DW News/YouTube

11月16日、ドイツの規制当局はロシアの天然ガスを欧州に届ける新しいパイプライン「ノルドストリーム2」の運用開始に向けた承認手続きを一時停止したと明らかにした。

ドイツの規制当局 ノルドストリーム2ガスパイプラインの承認手続きを一時停止/KWP News/九州と世界のニュース.2021

ドイツ連邦ネットワーク庁(BNetzA)は、4カ月に及ぶ承認手続きの再開に先立ち、ノルドストリーム2運営に携わるスイス拠点の企業連合が、まずドイツの法令に基づくドイツ子会社を立ち上げる必要があるとしている。十分な資金を持つことと、親会社であるロシア政府系天然ガス企業ガスプロムからの独立性を証明するためという。

「ノルドストリーム2」の試運転、3月に遅延の可能性=独政府筋/REUTERS.2021

政府筋は「ノルドストリーム2の稼働開始は2022年3月までずれ込む可能性があると予想している」と述べた。

「ノルドストリーム2」の試運転、3月に遅延の可能性=独政府筋/REUTERS.2021

承認の遅れにより、ガス価格が再び高騰している。

「ノルドストリーム2」の試運転、3月に遅延の可能性=独政府筋/REUTERS.2021

バイデン政権はロシアがウクライナに侵攻した場合は『ノルド・ストリーム2』は終了

WION/YouTube

 米独間の協議内容を知る米議会関係者によると、バイデン政権は、ロシアがウクライナに侵攻した場合には同パイプラインの運転開始を認めないという確約をドイツに求めている。

ウクライナ危機で送ガス管切り札に 米独に温度差/ウォール・ストリート・ジャーナル.2021

また、2022年2月7日にワシントンで行われた米独首脳会談において、バイデン大統領は「ロシアがウクライナに侵攻した場合、それはNS2の終焉を意味する」と明言する一方、ショルツ首相は米独がロシア・ウクライナ情勢や対ロ経済制裁に同じ姿勢で臨んでいると語りつつも、NS2への直接的な言及を避けた。

[ドイツ] 経済・気候保護大臣、ノルドストリーム2運開に反対姿勢を表明/電気事業連合会.2022
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Nord Stream 2

地政学プロジェクト!?『ノルド・ストリーム2』

WION/YtouTube

 ロシアの国営エネルギー大手ガスプロムは9月6日、ドイツとロシアを結ぶ天然ガスパイプライン「ノルド・ストリーム2」(NS2)で最後の溶接作業を終了し、ドイツの海底に敷設されたことを明らかにした。今後、年末までの稼働に向けて試運転などの作業が実施される。NS2を巡ってはこれまで、米国をはじめポーランドやウクライナなどが反対してきたが、完成に至ったのには周到な米国の方針転換がある。

独露の天然ガス新パイプライン「ノルド・ストリーム2」完成を米国が容認した深謀遠慮=阿部直哉/週刊エコノミスト Online.2021

トランプ政権は欧州のロシア依存に警告……計画の見直しを迫る

DW Українською/YouTube

去る2021年1月、当時の米国のトランプ政権は、ノルドストリーム2が完成すれば、ロシアのパイプラインガスに対する依存度が高まり、「ドイツがロシアの捕虜になる」、「政治・経済面でも欧州に大きな影響力を行使することになる」と主張し、ノルドストリーム2の建設作業に関わっていると見られる欧州企業に対し、追加の制裁のリスクがあると警告していた。

天然ガス・LNG最新動向 ―スポットLNG価格高止まり!命運を左右するノルドストリーム2と大国の争覇にゆれる日本のエネルギーセキュリティー―/JOGMEC石油・天然ガス資源情報ウェブサイト.2021

また、ノルドストリーム2を通じてのガス購入で、ドイツはロシアに巨額の資金を支払うにもかかわらず、米国がドイツをロシアから防衛するのは不公平だとして防衛義務を履行しない考えを示唆し、米独関係の悪化を臆せずに計画の見直しを迫った。

天然ガス・LNG最新動向 ―スポットLNG価格高止まり!命運を左右するノルドストリーム2と大国の争覇にゆれる日本のエネルギーセキュリティー―/JOGMEC石油・天然ガス資源情報ウェブサイト.2021

さらに、欧州への米国LNG輸出を増やしたい意向も示していた。

天然ガス・LNG最新動向 ―スポットLNG価格高止まり!命運を左右するノルドストリーム2と大国の争覇にゆれる日本のエネルギーセキュリティー―/JOGMEC石油・天然ガス資源情報ウェブサイト.2021
ロシアとドイツは反論「商業プロジェクトだ」

ロシア大統領府はノルドストリーム2は商業プロジェクトだと反論。

米、ノルドストリーム2巡り欧州企業に制裁リスク警告=関係筋/NEWSWEEK.2021

ドイツ政府も、ノルドストリーム2は商業プロジェクトであり、環境対策や安全面への配慮で石炭火力発電所や原子力発電所の閉鎖が進む中、天然ガスが必要になっていると主張している。

米、ノルドストリーム2巡り欧州企業に制裁リスク警告=関係筋/NEWSWEEK.2021
トランプが工事をしていた事業会社とCEOに制裁……パイプライン建設は中断
DW News/YouTube

 トランプ前大統領は、19年12月、ノルド・ストリームの建設工事を行っていた企業を対象に制裁措置を発表し、工事が中断することになった。

ロシアのウクライナ侵攻、どうして冬を選んだのか?/WEDGE Infinity.2022

トランプ政権の方針を引き継いだバイデン政権も同じく反対だった

 バイデン政権もノルドストリーム2には反対であり、去る3月18日、ブリンケン国務長官は「バイデン政権は法律を順守することにコミットしている」と述べ、このプロジェクトに関与している企業には米国による制裁のリスクがあり、直ちに撤退すべきであると警告する声明を発表した。

バイデンはノルドストリーム2へ制裁発動できるか/WEDGE Infinity.2021

方針転換!?バイデンは5月に事業会社とCEOへの制裁を見送り

ТСН/YouTube

5月19日、バイデン米政権が、ロシアとドイツを結ぶガスパイプライン計画「ノルドストリーム2」の事業会社とその最高経営責任者(CEO)に対する制裁を見送ったことが分かった。

米、ノルドストリーム2事業会社への制裁見送り/REUTERS.2021

ロシアとの関係を安定させて「唯一の競争相手」と位置づける中国への対応に集中する狙いがある。ロシアも対米関係を改善させ、中国に対する外交的立場を高めたい狙いだ。

米、ロシアと関係改善探る 対中国シフトへ布石/日本経済新聞.2021

「双方の指導者が協力すれば世界はより安全になる」。ブリンケン米国務長官は19日、アイスランドで開いたロシアのラブロフ外相との会談で力説した。ラブロフ氏は会談後、記者団に「建設的だった」と評価した。

米、ロシアと関係改善探る 対中国シフトへ布石/日本経済新聞.2021

バイデン米大統領がプーチン大統領に提案した首脳会談開催の発表は見送られたが、ラブロフ氏は「今後の(2国間関係)是正の道筋については、米ロ両大統領が決める」と語った。近くサリバン米大統領補佐官とパトルシェフ・ロシア安全保障会議書記が会談し、首脳会談に向けた調整を進める見通しだ。

米、ロシアと関係改善探る 対中国シフトへ布石/日本経済新聞.2021

 5月25日、バイデン米大統領(写真)は、ロシア産天然ガスをドイツへ直送する海底パイプライン「ノルドストリーム2」の事業会社に対する制裁を見送ったのは、同事業がほぼ完了しており、制裁を発動することで欧州との関係を損ねる可能性があったからだと述べた。

バイデン氏、ノルドストリーム2への制裁は欧米関係に「逆効果」/REUTERS.2021
ゼレンスキーはこの制裁解除に脅威と発言

ゼレンシキー大統領は、独露間新ガスパイプライン「ノルド・ストリーム2」関連の制裁解除の可能性が、将来の米露首脳会談の主要な脅威であると発言した。

ゼレンシキー大統領、米露首脳会談とノルド・ストリーム2制裁解除可能性にコメント/ウクルインフォルム通信.2021

大統領は、「(パイプライン「ノルド・ストリーム2」は)約95%がすでに完成している。あと約5%残っているだけだ。私は、それ(編集注:ノルド・ストリーム2の制裁解除)は米国の敗北となると思っている。バイデン大統領個人の敗北となると思っている。私は、それをオープンかつ明確に述べている。それは、ロシア連邦による地政学的な深刻な勝利、そして新たな力と影響力の分割となるであろう」と発言した。

ゼレンシキー大統領、米露首脳会談とノルド・ストリーム2制裁解除可能性にコメント/ウクルインフォルム通信.2021

大統領はまた、本件に関してはウクライナのパートナー国と米議会に統一見解がないことに注意を向け、「それは深刻なゲームである。それはエネルギー安全保障だけの話ではない。(中略)率直に行って、私は、その状況を懸念している」と強調した。

ゼレンシキー大統領、米露首脳会談とノルド・ストリーム2制裁解除可能性にコメント/ウクルインフォルム通信.2021
制裁を見送った同日、アイスランドの首都レイキャビクで米露外相会談
Bloomberg Quicktake: Now/YouTube

ブリンケン米国務長官とロシアのラブロフ外相が19日夜、アイスランドの首都レイキャビクで会談を行った。

米ロ外相が初の対面会談、「相違」認めつつ協力方針を確認/nippon.com.2021

 1月のバイデン米政権発足後、両外相の対面協議は初めて。会談は1時間半以上に及び、軍縮・軍備管理分野などでの「戦略的安定性」についても話し合った。

米露首脳会談、6月実現へ調整続く 外相、初の対面協議/毎日新聞.2021

ブリンケン氏は会談冒頭、「ロシアとは予測可能で安定した関係を求めている」と述べた。一方で、ロシアが米国や同盟国に対し敵対的な行動を取れば「対処する」とけん制した。ラブロフ氏は「両国の関係は国際情勢に大きな影響を与える。前向きな結果が出せる問題では協力すべきだという点で一致している」と応じた。

米露外相会談 「戦略的安定性」で協調模索 首脳会談も調整/毎日新聞.2021
会談中にノルドストリーム2の敷設に携わるロシア船4隻・4団体に制裁報道

会談開始から30分後、米がロシアとドイツを結ぶガスパイプライン計画「ノルドストリーム2」の敷設に携わる船舶などロシア船4隻と、ロシアの4団体に制裁を科したとの報道があった。関連する事業会社とその最高経営責任者(CEO)に対する制裁は見送られた。

米ロ外相が初の対面会談、「相違」認めつつ協力方針を確認/nippon.com.2021

ラブロフ氏は、制裁に関する質問には答えなかった。ロシアの対米姿勢を「非常にシンプル」とし、「われわれは例外なくすべての問題を議論する用意があるが、その議論は、誠実かつ明示された事実に基づいたもので、お互いの立場を尊重するとの認識の下で行われる」と述べた。

米ロ外相が初の対面会談、「相違」認めつつ協力方針を確認/nippon.com.2021

米独首脳会談後に声明を発表「ノルドストリーム2工事の完成に合意」

DW News/YouTube

 7月14日から16日にかけて、ドイツのメルケル首相は訪米し米独首脳会談が行われた。ドイツでは9月に総選挙が予定され、メルケルは選挙後引退することになっているので、最後の訪米となる。

首脳会談で米独関係好転も対露と対中での溝は深い/WEDGE Infinity.2021
米独両政府が声明を発表「ウクライナ、欧州エネルギー安全保障、および我々の気候目標に対する支援に関する共同声明」

7月21日、米独両政府が、「ウクライナ、欧州エネルギー安全保障、および我々の気候目標に対する支援に関する共同声明」を発表した。

独露をつなぐ海底ガスパイプライン~バイデン政権がノルドストリーム2を容認した理由/Yahoo!ニュース.2021

米独は共同声明で「ロシアの侵害と悪意のある活動の責任を追及する決意を共有している」と表明。「この合意は、ロシアが攻撃的な政治目標を達成するために、ノルドストリーム2を含むいかなるパイプラインも乱用しないようにすることを目的としている」とした。

米独、ノルドストリーム2問題で合意 ロシア牽制/REUTERS.2021
ロシアがエネルギーをウクライや中東欧諸国に武器として使った場合は制裁

声明によれば、ロシアがウクライナや中東欧諸国に対しエネルギーを武器として悪用した場合は、ドイツは独自の対応をとるとともに、EUに対し制裁を促す、などとしている。

首脳会談で米独関係好転も対露と対中での溝は深い/WEDGE Infinity.2021
ドイツはウクライナのエネルギー安全保障などで支援

米独政府の共同声明によると、米独は、2024年に期限が切れるウクライナとロシアのガス移送協定の10年延長を支持するほか、ドイツはウクライナのエネルギー安全保障支援などで少なくとも1億7500万ドル(約193億円)を拠出する。ドイツ側は、ロシアがエネルギー供給でウクライナを脅せば、制裁も含む措置を講じると約束した。

米、ロシア送ガス管完成を容認 独はウクライナ支援約束/JIJI.COM.2021
ウクライナやポーランドはこの声明に反発

一方、声明の名称にも含まれるウクライナはポーランドとともに、「ロシアが欧州の安全保障への破壊的影響を及ぼす可能性を増大させ、NATOとEUの加盟国間の対立を深めるものだ」と反発した。

独露をつなぐ海底ガスパイプライン~バイデン政権がノルドストリーム2を容認した理由/Yahoo!ニュース.2021
バイデン政権の思惑

 バイデン政権が、98%完成しているノルドストリーム2の完成を阻止するのは現実的ではないと考えたこと、また、対中姿勢を巡りドイツの協力を得たいという思惑もあり譲歩した面がある。いずれにせよ、ロシアに対する地政学的脅威の認識自体は米独の間で隔たりが残ったままであると見られる。

首脳会談で米独関係好転も対露と対中での溝は深い/WEDGE Infinity.2021

米ホワイトハウスは21日、バイデン大統領が8月30日にウクライナのゼレンスキー大統領とホワイトハウスで会談すると発表した。ロシアの脅威にさらされるウクライナへの支援を印象づける狙いがある。

米独、ガス計画めぐる対立に終止符 ウクライナ支援合意/日本経済新聞.2021

ノルドストリーム2に対して米議会では反発が強い。バイデン氏が率いる与党・民主党のジャンヌ・シャヒーン上院議員は21日の声明で「米独合意によって欧州の同盟国を十分に安心させることができるとの確信は持てない」と懸念を示した。共和党のテッド・クルーズ上院議員も米国がノルドストリーム2の建設完了を認めることについて「プーチン氏の勝利であり、米国や同盟国にとって大惨事だ」と批判していた。

米独、ガス計画めぐる対立に終止符 ウクライナ支援合意/日本経済新聞.2021
ドイツのメルケル首相の思惑

 メルケル独首相は、9月の総選挙に出馬せず引退する。同選挙では、ノルドストリーム2に反対する緑の党が躍進する可能性があり、メルケル氏は任期中に決着を図ったとみられる。

米、ロシア送ガス管完成を容認 独はウクライナ支援約束/JIJI.COM.2021
プーチンに電話「ウクライナに圧力をかけないように要望」

ドイツのメルケル首相は21日、ロシアのプーチン大統領と電話し、ノルドスリーム2について協議した。ガス供給をめぐりウクライナに圧力をかけないよう要求したとみられる。

米独、ガス計画めぐる対立に終止符 ウクライナ支援合意/日本経済新聞.2021

メルケル首相(ドイツ)とゼレンスキーが会談「ゼレンスキーの懸念を理解」

DW News/YouTube

8月22日、ドイツのアンゲラ・メルケル首相は訪問先のウクライナで、ロシアがノルドストリーム2ガスパイプラインを対ウクライナの武器として利用した場合、新たな制裁を科す可能性があると警告した。

メルケル独首相「ロシアはガスパイプラインを国境紛争に利用してはならない」/KWP News/九州と世界のニュース.2021

  メルケル首相は22日にウクライナの首都キエフで、同国のゼレンスキー大統領との会談後に記者会見に臨み、「このパイプラインが武器として利用されているという疑念が強まれば、追加制裁に向けて欧州の枠組みで行動を取ることをわれわれは明確にした」と述べた上で、ガス輸送協定は「可能な限り速やかに」2024年以降も延長されなければならないと語った。 

独首相、対ロシア追加制裁も-ノルドストリーム2を「武器」利用なら/Bloomberg.2021

  ノルドストリーム2は「危険な地政学上の武器」だと語ったゼレンスキー大統領は、協定延長に関連するコミットメントがあまりにも曖昧だとして、もっと確かな保証を望んでいると指摘。「全ての国の中で、ウクライナはノルドストリーム2完了による主要なリスクに直面している国だ」と語った。

独首相、対ロシア追加制裁も-ノルドストリーム2を「武器」利用なら/Bloomberg.2021

メルケル首相はゼレンスキー大統領の懸念を理解していると述べ、「ドイツはノルドストリーム2を武器(ウクライナに対する圧力)として利用させないというアメリカのコミットメントに同意している」と強調した。

メルケル独首相「ロシアはガスパイプラインを国境紛争に利用してはならない」/KWP News/九州と世界のニュース.2021

メルケル氏は、20日に行われたロシアのプーチン大統領との会談で「(ロシアの対応次第で)欧州として追加制裁を科すことにわれわれは賛同していると明確に伝えた」と述べた。

ドイツ・ウクライナ首脳、パイプラインめぐり協議/日本経済新聞.2021

2021年9月10日『ノルドストリーム2』完成

FRANCE 24 English/YouTube

ロシア国営ガスプロム社は、9月10日、独露間で建設を続けていたガスパイプライン「ノルド・ストリーム2」の敷設を完了したと発表した。

露ガスプロム社、ノルド・ストリーム2の完工を発表/ウクルインフォルム通信.2021

発表には、ガスプロム社の朝の会議にて、アレクセイ・ミレル同社社長が、同日8時45分にノルド・ストリーム2の敷設作業が完全に終了したと伝えたと書かれている。

露ガスプロム社、ノルド・ストリーム2の完工を発表/ウクルインフォルム通信.2021
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スターリン以来の長期政権を築いたプーチン。独裁者か、救国の英雄か?その評価は内外で真っ二つに割れるが、その人物像は?プーチンを直接知るKGB時代の元同僚やイスラエル情報機関の元長官など、20人の貴重な証言と最新情報をもとに、その実像に迫る。(「BOOK」データベースより)

Yamal Europe

エネルギー危機の要因はロシア?ドイツがロシア産天然ガスを高額転売!!

WION/YouTube

欧州は今、ガソリン価格の高騰に加え、温暖化ガス排出量の少ない天然ガスの価格が30%以上高騰している。エネルギー価格の高騰は、人々の生活と産業に直接打撃を与える。コロナ禍からの経済の立ち直りが期待される中、問題は深刻化している。

年内に脱原発達成のドイツがEUで孤立し始めた訳/東洋経済ONLINE.2022

高騰の原因はコロナ禍からの回復で世界的にエネルギー需要が急増していることに加え、ロシアからの供給が減り、ロシア産ガスを欧州へ送る主要ルートの1つ、「ヤマル・ヨーロッパ」パイプラインは通常西向きに流れるはずが、東向きの流れが急増していることにある。

年内に脱原発達成のドイツがEUで孤立し始めた訳/東洋経済ONLINE.2022

ベラルーシ・ポーランド経由でドイツへ送るガスパイプライン「ヤマル・ヨーロッパ」

Газпром добыча Надым/YouTube

ヤマル・ヨーロッパはロシアからベラルーシ、ポーランドを経由してドイツに至る。

ベラルーシ大統領、EUへの天然ガス輸送停止を警告/MSN.2021

突然ドイツへのロシア産ガス購入予約が取り消し、供給がSTOP!ガスの価格が高騰

ドイツへの輸送容量の予約が突然取り消されたことを受け、10月30日以来供給が止まっており、代わりにドイツからポーランドへの供給に切り替えられている。この結果、欧州のガス先物価格は週初から18%近く高騰した。

ロシア産ガスのドイツ向け供給停止続く、価格高騰/REUTERS.2021
プーチンは契約取り消しについて説明「ドイツ・フランスの企業が購入要求をださなかった」

プーチン氏は「ガスプロムは、この(ヤマル)ルートでガスを購入している顧客、特にドイツとフランスの企業が購入要求を出さなかったため、このための輸送を予約しなかった」と説明した。

欧州ガス価格危機の責任はドイツに、ロシア大統領が主張/REUTERS.2021

欧州のルールで認められているように、ガスプロムは確定契約に加え、ヤマルとウクライナを経由して配送するために追加の輸出能力を入札で予約している。

欧州ガス価格危機の責任はドイツに、ロシア大統領が主張/REUTERS.2021
プーチン今の状況について批判的「高騰は消費の減少につながる」

 こうした状況について、ロシアのプーチン大統領は20日の政府会合で、「最終的には消費の減少につながり、ガスプロムを含むロシアの生産会社に影響を及ぼす」と指摘。ガスなどエネルギー価格の終わりなき高騰はわれわれの利益と一致しないと述べた。発言の様子は国営ロシア24テレビが放映した。

欧州ガス価格が再び上昇、ロシアとノルウェーからの供給が減少/Bloomberg.2021

実際に準備が整った10月27日には、プーチン大統領は国営天然ガス企業ガスプロムに対し「国内の天然ガス貯蔵施設への充填が完了する11月8日以降、速やかに欧州諸国の貯蔵施設の充填を開始する」よう命じた。これにより、欧州の天然ガス価格は3週間ぶりの安値となった。

プーチンが絶体絶命…ロシア経済が“崩壊寸前”で、いま起きている「本当にヤバい現実」/現代ビジネス | 講談社.2021
数日後にドイツ方面への供給が再開

 11月4日、ロシア産天然ガスをポーランド経由でドイツに運ぶパイプライン「ヤマル・ヨーロッパ」で、ドイツ方面へのガス輸送が再開した。

ロシア産ガス、ドイツ方面への輸送再開 欧州でガス価格下落/RUTERS.2021

ドイツのパイプライン運営会社のデータで明らかになった。これを受けて、欧州のガス価格は5─6%下落した。

ロシア産ガス、ドイツ方面への輸送再開 欧州でガス価格下落/RUTERS.2021

パイプラインによるガス輸送の流れは、顧客の要請によって切り替わる。

ロシア産ガス、ドイツ方面への輸送再開 欧州でガス価格下落/RUTERS.2021

エネルギー危機ついてプーチンはロシアの責任を否定

欧州の天然ガス危機については、ガスプロムが既存の契約に基づいて必要量を全量供給していることを紹介し、更に欧州向けに12%、海外向けに20%供給を増やしたと主張した。天然ガス危機の要因として、悪天候や長く寒い昨秋の気候、地下貯蔵施設への充填不足、風力発電の稼働率低迷、脱炭素化による石油・天然ガスへの投資不足を例に挙げ、ロシアにその責がないことを強調した。

ロシア情勢(2021年12月 モスクワ事務所)/JOGMEC石油・天然ガス資源情報ウェブサイト.2022
プーチンはドイツがロシアのガス価格の3〜7倍でポーランド・ウクライナに転売している可能性に懸念を示す

更には、ドイツからポーランドへのパイプラインガスの逆流に触れ、ロシアとの長期契約に基づく価格の3~7倍以上の価格で転売されており、更にはポーランドからウクライナに天然ガスが流れている可能性について独自の見解による懸念を示した。

ロシア情勢(2021年12月 モスクワ事務所)/JOGMEC石油・天然ガス資源情報ウェブサイト.2022
『ノルドストリーム2』承認への圧力と批判されていたが、ロシアは契約上の義務をきちんと履行していた

欧州の天然ガス価格が高騰する中での供給停止について、ロシア政府はロシアから直接ドイツに天然ガスを運ぶ「ノルドストリーム2」を承認するようドイツ当局や欧州連合(EU)に圧力を掛けるために、欧州への供給を増やして価格を抑制する対応を見送っていると欧州の一部の政治家は主張してきた。

ロシア産ガスのドイツ向け供給停止続く、価格高騰/REUTERS.2021

ロシア政府はこのような見方を否定し、契約上の義務を果たしていると強調。ロイターが取材した欧州の企業も、ロシア側が義務を履行していると確認した。

ロシア産ガスのドイツ向け供給停止続く、価格高騰/REUTERS.2021
エネルギー危機はロシアにとっても危機!?迫るりくる「インフレーション」

プーチン大統領が欧州に対して悪意がない証拠は他にもある。実は、ロシアにとって欧州の天然ガス危機は「対岸の火事」ではないからだ。実際、プーチン大統領は10月20日に次の認識を示している。

プーチンが絶体絶命…ロシア経済が“崩壊寸前”で、いま起きている「本当にヤバい現実」/現代ビジネス | 講談社.2021

「欧州の天然ガス危機の影響がロシアにも及ぶ可能性がある。国内の天然ガス価格が高騰するような事態になれば、食品などの必需品価格が一段と上昇し、深刻なインフレを招きかねない」

プーチンが絶体絶命…ロシア経済が“崩壊寸前”で、いま起きている「本当にヤバい現実」/現代ビジネス | 講談社.2021

日本ではあまり知られていないが、ロシアではインフレ懸念が高まっている。

プーチンが絶体絶命…ロシア経済が“崩壊寸前”で、いま起きている「本当にヤバい現実」/現代ビジネス | 講談社.2021

物価上昇の主因は食料価格だ。ロシアの年間食品価格インフレ指数は、8月の7.7%から9月は9.2%に達した。特に果物と野菜の価格が上昇している

プーチンが絶体絶命…ロシア経済が“崩壊寸前”で、いま起きている「本当にヤバい現実」/現代ビジネス | 講談社.2021

ドイツのロシア産ガス転売が発覚!!

12月27日、ロシア産天然ガスを欧州に輸出するパイプライン「ヤマル・ヨーロッパ」の流れが7日連続で東向きに「逆流」していることがドイツのパイプライン管理会社ガスケードのデータで分かった。

ロシア産ガスの欧州輸送、7日連続で東向きに「逆流」/REUTERS.2021

ガスケードのデータによると、ドイツとポーランドの国境沿いのムルナウにある計測地点で27日は天然ガスがポーランド側に向けて東向きに流れ、流量は約120万キロワット時だった。

ロシア産ガスの欧州輸送、7日連続で東向きに「逆流」/REUTERS.2021

ロシア国営の大手天然ガス会社、ガスプロムの広報担当のセルゲイ・クプリヤノフ氏は25日、ガスプロムは欧州に対し長期契約に基づく追加供給を実施する用意があると表明。ドイツからポーランド、およびウクライナに向けて逆流している天然ガスの規模は1日当たり300万─500万立方メートルとの見方を示した上で、ガスプロムが供給を削減しているとの観測を改めて否定した。

ロシア産ガスの欧州輸送、7日連続で東向きに「逆流」/REUTERS.2021
ドイツはノーコメント

ドイツ経済省はプーチン大統領の発言内容についてコメントを控えている。天然ガス輸入業者からのコメントも得られていない。

ロシア産ガスの欧州輸送、7日連続で東向きに「逆流」/REUTERS.2021
2022年以降もドイツは転売を続けていた

1月11日、ドイツのパイプライン管理会社ガスケードのデータによると、ロシア産天然ガスを欧州に輸出するパイプライン「ヤマル・ヨーロッパ」の流れが東向きに「逆流」している。

ロシア産ガスの欧州輸送、22日連続で逆流/REUTERS.2022

ガスの流れがいつドイツ方面へ転換するかは不明だが、ロシアのガスプロム関係者は月内のどこかの時点と予想した。

ロシア産ガスの欧州輸送、22日連続で逆流/REUTERS.2022
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地政学とエネルギー分野の劇的な変化によって、どのような新しい世界地図が形作られようとしているのか?エネルギー問題の世界的権威で、ピューリッツァー賞受賞者の著者が、エネルギー革命と気候変動との闘い、ダイナミックに変化し続ける地図を読み解く衝撃の書。(「紀伊國屋書店」データベースより)

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【ウクライナ危機(25)】命を利用した戦略……?ベラルーシから大量の難民・移民が押し寄せる『EU難民問題』
“https://diggity.info/society/ukraine-25/”
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