【ウクライナ危機⑯】ドラマのような本当の話。英雄になったコメディアン『ウォロディミル・ゼレンスキー』

この記事をシェアする▼

【ウクライナ危機⑯】ドラマのような本当の話。英雄になったコメディアン『ウォロディミル・ゼレンスキー』

前回の記事を読む▼

【ウクライナ危機⑮】混沌極める東欧情勢……。ウクライナの未来を占う大統領選が始まる『2019年ウクライナ大統領選挙』
“https://diggity.info/society/ukraine-15”

Volodymyr Zelenskyy

ウォロディミル・ゼレンスキー

5 News/YouTube

2019年4月にウクライナの大統領に当選したウォロディミル・ゼレンスキー氏は、それまで政治経験ゼロの人気コメディー俳優だった。

人気コメディアンから祖国防衛の指導者に、注目集まるゼレンスキー大統領 ウクライナ/BBCニュース.2022

1978年 ウクライナ中東部の都市でゼレンスキー誕生

ゼレンスキーはソビエト時代の1978年1月、ウクライナ中東部の都市クリボイ・ログ(現在のクリヴィー・リフ)で生まれた。ブレジネフ時代末期、いわゆる「停滞の時代」と言われた時期だ。民族に代わる「ソビエト人」という概念が表れたころでもある。クリボイ・ログは人口60万人余り。豊富な鉄鉱山があり、ソビエトの鉄鋼業の中心都市の1つだ。

コメディアン大統領はウクライナを救えるのか/東洋経済ONLINE.2019
ユダヤ系ウクライナ人

父親は同国の経済学研究所のコンピューターサイエンスの教授、母親は元エンジニア。ユダヤ系の家系であり、祖父はソ連軍でナチスと戦い、親戚の多くがホロコーストで殺されたという。

ゼレンスキー大統領とは何者か。コメディー俳優から祖国を守る指導者になるまで/HUFFPOST.2022

(前略)大学教授であった父の仕事の関係で幼少期をモンゴルで過ごした。

政治経験のないコメディアンがウクライナ大統領選で圧勝できた理由/ダイヤモンド・オンライン.2019

14歳の頃にソ連の崩壊を経験

1991年12月、ソビエト連邦は崩壊した。ヴォロディミル少年は14歳、12月のソビエト連邦崩壊の直接の原因は、ソビエト第2の共和国であるウクライナが国民投票で独立を選択したことだった。その後の経済危機は、ロシアであろうとウクライナであろうとソビエト的中産階級(学者、教師、医者、技術者、中堅官僚、軍人など)の暮らしを直撃した。ゼレンスキー家も同様だろう。ヴォロディミル少年は16歳の時、イスラエルに留学するチャンスを得たが、父の反対で、故郷の町にとどまったという。

コメディアン大統領はウクライナを救えるのか/東洋経済ONLINE.2019
中学の頃から人を率いる人物の片鱗を見せいていた

ゼレンスキー氏が通った地元の中等教育機関のアラ・シピルコ校長は、高い演技や話術の能力にとどまらず、学校の成績が優れ、統率力も持っていたと話した。

勤勉・威厳・多才… 恩師らが見たゼレンスキー大統領の素顔/毎日新聞.2022

17歳で地元のコメディー劇団に入りテレビ番組に出演

KiViN/YouTube

17歳の時、地元のコメディ劇団に入り、ロシアのテレビ番組で寸劇や即興を披露した。

ゼレンスキー大統領とは何者か。コメディー俳優から祖国を守る指導者になるまで/HUFFPOST.2022

昔、イギリスのロックが好きで、ギターを弾いていたという。

ゼレンスキー大統領とは何者か。コメディー俳優から祖国を守る指導者になるまで/HUFFPOST.2022

キエフ国立経済大学の法学部に進学中に劇団「第95街区(Kvartal 95)」を結成

 キーウ国立経済大学在学中の19歳の時に劇団「クバルタル95」を結成したゼレンスキーは、次第に旧ソ連域内で知られるようになる。

英雄か、それとも危険なポピュリストか? ゼレンスキー大統領(44)の素顔が見えた“来日時のエピソード”/文春オンライン.2022

ゼレンスキーの一座は「Kvartal 95」と呼ばれ、ウクライナの都市であるクリヴィイ・リハを拠点としていたが、当時はロシア語で公演していた(これは当時としては普通のことだった)。彼は、「ヴォバン」というニックネームでチームのキャプテンを務めた。

ウクライナの大統領になったコメディアン。ウォロディミル・ゼレンスキーはどのようにして“物語”を支配したか?/GQ Japan.2022

95番街という意味で誰でも覚えやすいようにとこの名前をつけたという。95はゼレンスキーが通っていた学校の名前からだ。

コメディアン大統領はウクライナを救えるのか/東洋経済ONLINE.2019

法学部を卒業して選んだ道はプロのコメディアン!!

2000年、キエフ国立経済大学の法学部を卒業。

元コメディアンとテック起業家が本領発揮、ウクライナのデジタル・メディア戦略とは/NewSphere.2022

大学では法学を専攻していたが、卒業後はプロのコメディアンとして活動することを選択。

政治経験のないコメディアンがウクライナ大統領選で圧勝できた理由/ダイヤモンド・オンライン.2019

ソ連時代から続く番組「KBH」で大活躍!!

Официальный канал КВН/YouTube

ゼレンスキーの人生で転機となったのは、旧ソビエトで人気を博する番組『КВН』(カーヴェーン、「陽気な機知のクラブ」)への参加である。この番組はソビエト時代から続く、いわば若者グループがユーモアを競い合う番組だ。ソビエト時代のゴステレラジオを引き継ぐロシアのチャンネル1がロシアのみならず旧ソビエト全体で放送を続けていた。当時はまだウクライナとロシアは友好条約を結んでおり、兄弟国として関係が良好だった。

コメディアン大統領はウクライナを救えるのか/東洋経済ONLINE.2019

 共産圏のエンタメ事情に詳しいテレビ局関係者が語る。

ゼレンスキー大統領 世界で称賛される「演説上手」の陰にコメディアン時代のトーク力…“ウクライナの志村けん” は下ネタも大好き(画像1/3)/Smart FLASH[光文社週刊誌].2022

「彼の出発点は、『КВН』という旧ソ連圏で愛されている長寿コメディ番組です。日本でたとえるとコメディ版の『高校生クイズ』のようなもので、学校や地元の友人で組んだチームで番組に参加し、大喜利に答えて点数を競います。ロシアのエンタメ業界には同番組の出身者がたくさんいて、影響力の高さが窺えます」

ゼレンスキー大統領 世界で称賛される「演説上手」の陰にコメディアン時代のトーク力…“ウクライナの志村けん” は下ネタも大好き(画像1/3)/Smart FLASH[光文社週刊誌].2022
一気に人気の芸人に!!

自らがプロデュースしたコメディ集団を率いて、旧ソ連諸国をツアーで回り、コメディアンとしての腕を磨いた。転機となったのは彼が25歳になった2003年。ゼレンスキー氏のコメディ集団はウクライナの大手テレビ局と契約を結び、番組出演や番組制作を行うようになった。

政治経験のないコメディアンがウクライナ大統領選で圧勝できた理由/ダイヤモンド・オンライン.2019

「2011年頃までロシアの芸能界で活躍、人気芸人としての地位を不動のものにした。それゆえロシア国内の情勢を熟知していた」

ゼレンスキー“局部でピアノ芸人”「大統領への道」/文春オンライン.2022

テレビ番組制作会社「第95街区(Kvartal 95)」設立!!制作に手掛けるように

Студия Квартал 95 Online/YouTube

Kvartal 95がロシアのテレビで人気になると、ゼレンスキーはパートナーのセルゲイとボリス・シェフィルとともに、同じ名前のプロダクションを設立した。

ウクライナの大統領になったコメディアン。ウォロディミル・ゼレンスキーはどのようにして“物語”を支配したか?/GQ Japan.2022

その後、友人たちと劇団を結成し、テレビ番組制作会社「Kvartal 95」を設立。

ゼレンスキー大統領とは何者か。コメディー俳優から祖国を守る指導者になるまで/HUFFPOST.2022

ライブショーやテレビのバラエティ番組、映画で成功を収めた。

ゼレンスキー大統領とは何者か。コメディー俳優から祖国を守る指導者になるまで/HUFFPOST.2022

劇団仲間と立ち上げた番組の制作会社と芸能事務所を兼ねた企業で、制作者としても活躍する。

ゼレンスキー“局部でピアノ芸人”「大統領への道」/文春オンライン.2022

クバルタル95はウクライナの予選を勝ち抜いて、КВНのトップリーグに参加した。

コメディアン大統領はウクライナを救えるのか/東洋経済ONLINE.2019
ウクライナやロシアで様々なイベント・番組を手がけた
Joel Thingvall/YouTube

彼らの会社は、2006年にゼレンスキー自身が出場し、優勝を果たしたウクライナのダンス番組をはじめ、両国の市場向けに数多くの番組やイベントを制作した。

ウクライナの大統領になったコメディアン。ウォロディミル・ゼレンスキーはどのようにして“物語”を支配したか?/GQ Japan.2022

経営・制作・主演俳優・脚本家としてマルチな才能を発揮

FILM.UA Group/YouTube

同じ頃、ゼレンスキーは、米国で教育を受けたマリウス・ベイスバーグという映画監督がロシアで手がけていたコメディ番組の製作、共同脚本、そして時には主演を務めるようになった。

ウクライナの大統領になったコメディアン。ウォロディミル・ゼレンスキーはどのようにして“物語”を支配したか?/GQ Japan.2022

2005年、ゼレンスキーは、『三銃士』のミュージカル・コメディ版でダルタニアン役を演じ、俳優と脚本家としてデビューした。その後、『ノー・ラブ・イン・ザ・シティ(No Love in the City)』『伍長VSナポレオン(Corporal vs. Napoleon)』『8つのファースト・デイト(8 First Dates)』『ラブ・イン・ベガス(Love in Vegas)』などの作品で脚本と主演を担当した。

ウクライナのゼレンスキー大統領について知っておくべき7つのこと/Business Insider Japan.2022

「一大エンタメ企業の経営者であり、自らシナリオを書き、自ら演じ、監督もするマルチクリエイター、いわば”ミニチャップリン”のようなものです」(ウクライナ国営通信・平野高志氏)

ゼレンスキー“局部でピアノ芸人”「大統領への道」/文春オンライン.2022
映画「パディントン」では声優で参加!
VLGFILM Ukraine/YouTube

(前略)映画『パディントン』ではウクライナ語版の声優としてパディントン役を務めている。

侵攻に立ち向かうウクライナ大統領のゼレンスキーと、彼をヒーローのように偶像化する行為の“罪深さ”/WIRED.2022

体を張った下ネタ芸でお茶の間の人気者に!!

 下ネタ芸も辞さないインテリのエンタメ人として重宝された彼は、2009年にロシア版の『SEX AND THE CITY』に出演し、あられもない姿を披露していました。日本でいうと、志村けんのような存在でしょうか」

露のウクライナ侵攻に「最後まで戦う」 ゼレンスキー大統領の資質と戦略「キエフ守る」 人心掌握に長ける有事のリーダー像/zakzak.2022

体を張ったネタも厭わなかった。2016年、バラェティに出演した時のことだ。スーツ姿のゼレンスキー氏は舞台上のピアノの後ろでズボンを下げ、相方とともに腰を振りながら、局部で演奏するネタを披露し、観客は大爆笑。

ゼレンスキー“局部でピアノ芸人”「大統領への道」/文春オンライン.2022

ウクライナに活動を拠点を移した

その後、本国に拠点を移す。

ゼレンスキー“局部でピアノ芸人”「大統領への道」/文春オンライン.2022
2014年がロシアが一方的にクリミア併合、ウクライナ軍をに寄付などの支援をするとロシア芸能界から出禁

当時のコントの半分以上は政治風刺だった。

英雄か、それとも危険なポピュリストか? ゼレンスキー大統領(44)の素顔が見えた“来日時のエピソード”/文春オンライン.2022

〈政治風刺で笑いを取るには、政治についての知識と「勘」がなければできない。この過程で培った蓄積がゼレンスキーを政治家の道に導いたとも考えられます。

英雄か、それとも危険なポピュリストか? ゼレンスキー大統領(44)の素顔が見えた“来日時のエピソード”/文春オンライン.2022

 ロシアを活動の中心に据えていたゼレンスキーに転機が訪れたのは2014年3月、ロシア軍によるクリミア占領の時でした。

英雄か、それとも危険なポピュリストか? ゼレンスキー大統領(44)の素顔が見えた“来日時のエピソード”/文春オンライン.2022

 ゼレンスキーは即座にウクライナ軍に寄付をしたり慰問をしたりと、愛国的な行動を取り始めます。ロシアの芸能界からは出入り禁止を言い渡され、ウクライナに活動の中心を移すことになります。〉

英雄か、それとも危険なポピュリストか? ゼレンスキー大統領(44)の素顔が見えた“来日時のエピソード”/文春オンライン.2022

ゼレンスキーにとって人生の転機となったドラマ!!教師が大統領へ……。「国民の僕(しもべ)」

Слуга народа/YouTube

国民の僕(しもべ)は、さえない歴史教師の政治批判が隠し撮りされ、ネットでブームになったことから、あれよあれよという間に大統領に……というストーリーから始まるコメディ・ドラマシリーズです。

ゼレンスキー氏主演「国民のしもべ」、米Netflixにて再放送。同氏を大統領に押し上げた作品/engadget 日本版.2022
主演はもちろんゼレンスキー!

すでに3シーズンにわたって放送されたドラマの中で、ゼレンスキー氏は汚職や不正を嫌う30代の教師を演じ、ソーシャルメディアの力によって主人公が教師から大統領に転身し、ウクライナに存在する様々な問題を解決していくという内容だ。

政治経験のないコメディアンがウクライナ大統領選で圧勝できた理由/ダイヤモンド・オンライン.2019
主人公は財閥や腐敗したシステムと戦う
KinoGuru/YouTube

このドラマの影の主役はウクライナを操る財閥だ。3人の財閥がキエフの夜景を見ながら、大統領選挙の結果がどうなっても3人でウクライナを操ろう、と話す場面から始まる。

コメディアン大統領はウクライナを救えるのか/東洋経済ONLINE.2019

平凡な教師ゴロボロチコがウクライナの現状への不満をぶちまける様子を生徒がスマートフォンで盗み撮りし、それがSNSに投稿されて大人気となる。ついに大統領に立候補させられて、当選。素人大統領とその同級生からなる仲間たちが、財閥や既存の政治家、腐敗したシステムとの悪戦苦闘を繰り広げていくというストーリーだ。

コメディアン大統領はウクライナを救えるのか/東洋経済ONLINE.2019

このドラマの分析は重要だ。『国民のしもべ』には3つのメッセージが込められている。1つは財閥支配からの脱却、2つ目は財閥ではなく普通の人に奉仕する普通の人としての大統領、3つ目は自立するウクライナである。注目すべきは、欧米に対するシニカルな描き方だ。ポロシェンコはこのドラマについて「反欧米的で、嫌いだ」と述べているが、確かにその要素はある。IMF(国際通貨基金)にしてもG7にしても、ウクライナを支援するのは自らの利益のためだ、と突き放して描かれている。

コメディアン大統領はウクライナを救えるのか/東洋経済ONLINE.2019

2018年の大晦日……突然ビデオメッセージで大統領選の出馬を表明!!

Студия Квартал 95 Online/YouTube

あと数分で新年を迎えるという昨年12月31日の深夜、テレビで現職大統領の新年の辞を模したビデオメッセージを流し出馬表明。

ドラマで大統領演じた俳優、本当に出馬した 人気トップ/朝日新聞デジタル.2019

「当時のゼレンスキー氏は、汚職にまみれた政治家を風刺する芸風で活動していました。『国民の僕』では芸風を生かして、平凡な高校教師が大統領になり、政界の汚職や不正を正す役を演じました。これがウケてドラマは大ヒット。ゼレンスキー氏は若者を中心に絶大な人気を獲得しました。すると、彼らから現実の大統領就任を期待する声が出始めたんです」(前出・国際ジャーナリスト)

ゼレンスキー大統領の妻・オレナ夫人 共に戦うことを決意した“自由の女神”の素顔/NEWSポストセブン.2022

自身の党はドラマタイトルの同じ名前!!?「国民の僕(しもべ)党」設立

Студия Квартал 95 Online/YouTube

公認を受ける政党名も、ドラマのタイトルと同じ「国民のしもべ」だ。SNSを駆使しながらの地方遊説も続ける。

ドラマで大統領演じた俳優、本当に出馬した 人気トップ/朝日新聞デジタル.2019
ドラマの撮影スタッフの一部が政党のスタッフに転職

(前略)これまでドラマを制作していたスタッフの一部が政党のスタッフに転職までしている。

政治経験のないコメディアンがウクライナ大統領選で圧勝できた理由/ダイヤモンド・オンライン.2019
大統領選の中でもゼレンスキーは撮影中だった
Зе!Канал/YouTube

 現職のペトロ・ポロシェンコ大統領が政治集会を開いている間、ゼレンスキー氏は、ひょんなことから大統領に就任する教師の役を演じる人気ドラマ「国民のしもべ」の撮影中だった。

ウクライナ大統領選に圧勝したコメディアン/JBpress.2019

 大統領選への出馬宣言も後で思いついたつけ足しのようなもので、自分の妻に伝え忘れたほどだ。

ウクライナ大統領選に圧勝したコメディアン/JBpress.2019
大統領選の直前にシーズン3が最終回をむかえた
Фильмы и Сериалы Студии Квартал 95/YouTube

日本では考えられないが、サードシーズンの最終回がオンエアされたのは3月28日。大統領選を戦っていたゼレンスキー氏は大統領役でドラマに直前まで出演し、大統領選は最終回のオンエアから間もない31日に行われた。

政治経験のないコメディアンがウクライナ大統領選で圧勝できた理由/ダイヤモンド・オンライン.2019

シーズン3はたった3話で終了!!理由は本物の大統領になったから!

ITV News/YouTube

2015年に放送が開始され、2019年までの間に51話(シーズン3は3話のみ)も制作され終わりを告げました。シーズンが終わった理由は、同年にドラマで主演を演じていたゼレンスキー自身が大統領に当選したからです。ゼレンスキー大統領は、まるでドラマをなぞるようにコメディアンから大統領へと転身したというわけです。

ゼレンスキーをウクライナ大統領に導いたドラマ、「国民の僕」が米Netflixで配信開始/Esquire.2022
ゼレンスキーの背後に一人のオリガルヒの姿が

実は、このドラマを企画し、3年近くも視聴率ナンバーワンに押し上げた「影の演出家」がいる。

コメディ俳優が大統領に就任。ウクライナ国民が汚職と米国支配にNOを突き付けた=浜田和幸/MONEY VOICE.2019

その人物こそポロシェンコ大統領のライバルと目されるコロモイスキー氏であり、この人気ドラマを制作、放映したテレビ会社「1プラス1」のオーナー社長に他ならない。

コメディ俳優が大統領に就任。ウクライナ国民が汚職と米国支配にNOを突き付けた=浜田和幸/MONEY VOICE.2019
オリガルヒ「イーホル・コロモイスキー」

ゼレンスキーのバックにいると言われているのが、総資産額11億ドルを所有すると言われるオリガルヒのイホル・コロモイスキーである。彼は、金融、鉄鋼、メディア、エネルギー、投資と非常に多くの分野に進出しており、ゼレンスキーが出演するテレビ局「1+1」も所有している。

ウクライナにコメディアン大統領誕生、東部問題につけ込むロシア/WEDGE Infinity.2019

コロモイスキーはポロシェンコ政権と対立し、プリバト銀行を国有化される憂き目にも会って、現在は外国に身を寄せています。ただ、コロモイスキーはテレビ局「1+1」などの有力マスコミをウクライナに保有しているものですから、自らのメディアを駆使してポロシェンコへのリベンジを開始したのです。

ウクライナのゼレンスキー次期大統領につきまとう「一発屋」の不安/朝日新聞GLOBE+.2019

今回の大統領選挙期間中も連日、ゼレンスキー氏の登場する過去の番組を放送し、選挙運動もSNSやメディアを中心に展開。

コメディ俳優が大統領に就任。ウクライナ国民が汚職と米国支配にNOを突き付けた=浜田和幸/MONEY VOICE.2019

よくある演説集会ではなく、仲間のコメディアン俳優を動員し、各地でショート・コントを演じるという奇抜な作戦も功を奏したようだ。

コメディ俳優が大統領に就任。ウクライナ国民が汚職と米国支配にNOを突き付けた=浜田和幸/MONEY VOICE.2019

今回の大統領選におけるゼレンスキーの勝利は、フィクションが現実となるような展開であり、真相は不明ながら、このシナリオをコロモイスキーが完璧に描いていたのだとしたら、驚くべきことです。

ウクライナのゼレンスキー次期大統領につきまとう「一発屋」の不安/朝日新聞GLOBE+.2019

選挙運動の資金もほとんどコロモイスキー氏が出したので、恩が大きいわけです。

政治経験ゼロのコメディアン大統領でウクライナは大丈夫か?/日刊SPA!PLUS.2019
大統領になったゼレンスキーはコロモイスキーを優遇しなかった

ゼレンスキー氏は大統領選挙中、大富豪イーホル・コロモイスキー氏に支援されていたため、当選してもその操り人形になるのではと大勢が懸念していた。コロモイスキー氏はアメリカで、詐欺や資金洗浄の疑いで捜査対象になっている。

人気コメディアンから祖国防衛の指導者に、注目集まるゼレンスキー大統領 ウクライナ/BBCニュース.2022

しかし、ふたを開けてみると、ゼレンスキー氏は懸念されていたより独立独歩の人だった。たとえば大統領は、国有化以前はコロモイスキー氏が所有していたプリヴァト銀行の、再民営化を認めなかった。

人気コメディアンから祖国防衛の指導者に、注目集まるゼレンスキー大統領 ウクライナ/BBCニュース.2022

実はコメディも続けていた!大統領就任の月に最新作を公開

Студия Квартал 95 Online/YouTube

ゼレンスキーは政治家に転向しても、コメディのキャリアをないがしろにしなかった。彼の最新作である『I、You、He、She』は、彼が大統領に就任したのと同じ月に公開されたのだが、これは間違いなく歴史的な出来事である。

ウクライナの大統領になったコメディアン。ウォロディミル・ゼレンスキーはどのようにして“物語”を支配したか?/GQ Japan.2022

大統領就任後は評価微妙だったが……ロシアとウクライナの危機が進むにつれ徐々に化け始める

ゼレンスキーは就任当初、ロシアとの関係について、「ロシアとしっかり目を合わせて話し合えばいいのだ」「この戦争に終止符を打てる」などと発言。それに対し、ウラジーミル・プーチンは「ただの世間知らず」と強く非難していた。政治専門家からも、「彼には大統領の衣装は大きすぎる」などという意見が多く、決して評価は高くなかった。

欧州最新情報「ウクライナ大統領、ゼレンスキーとは一体何ものか?」/Design Stories.2022

就任後は紛争解決に向けてプーチン大統領との対話路線を打ち出し、フランス・ドイツを交えた4者会談を3年ぶりに開催。停戦合意を成立させた。

元芸人から国の危機守る大統領に ゼレンスキー氏の評判は?専門家に聞く/ABEMA TIMES.2022

 しかし、親ロシア派支配地域の地位などをめぐって平行線をたどる……。高かった支持率は、汚職や紛争といった問題を解決できず低下。

元芸人から国の危機守る大統領に ゼレンスキー氏の評判は?専門家に聞く/ABEMA TIMES.2022

しかし、2021年秋以降、ロシア、ウクライナ間の緊張が再び高まり、彼の大統領としての転機が訪れた。プーチンを前に口調も厳しくなったゼレンスキーは、「戦争を仕掛けてくる相手に極めて毅然とした態度で臨みながらも、決して攻撃的ではない」「彼はもはや、就任時と同じ人間ではなく、プーチンという相手が、いかなる妥協も許さない、手強く、強欲で皮肉な相手であることに十分気づいている」「国家元首の貫禄が出てきた」などと、評価され始めたのだ。

欧州最新情報「ウクライナ大統領、ゼレンスキーとは一体何ものか?」/Design Stories.2022
2022年2月24日 ロシア軍がウクライナに侵攻を開始……プーチンによる侵略戦争が始まった

 2022年2月24日、ロシア軍がウクライナに侵入し、市民を巻き込む無差別な攻撃を行うのみならず、原子力発電所までをも砲撃して世界を震撼させている。

経済力から考えても無謀すぎる戦争に突き進むプーチン/WEDGE Infinity.2022

そして、1人のコメディアン世界的な英雄になった

Washington Post/YouTube

ウクライナのゼレンスキー大統領は、今回の危機に瀕し、強力なリーダーへと大化けした。

プーチンの誤算とディスインフォメーションの限界/WEDGE Infinity.2022
ゼレンスキーはすぐに国外に逃げるという偽情報が流される

プーチン大統領は、ゼレンスキー大統領について、コメディアン出身の政治の素人であり、リーダーとしては弱いと軽んじ、キエフの陥落も容易だと踏んでいたのだろう。そして、ゼレンスキー大統領はすぐに国外に逃げるだろうといった虚偽の情報も流されていた。

プーチンの誤算とディスインフォメーションの限界/WEDGE Infinity.2022
命を狙われているゼレンスキーは逃げるどころか、首都に居続け国民に向けてメッセージを発信
Україна 24/YouTube

 「敵の一番の標的」と自認する通り、首都キエフが陥落すれば、身に危険が及びかねない。

ゼレンスキー大統領は何者? プーチン氏と戦う44歳俳優―ニュースQ&A/JIJI.COM.2022

 しかし、ゼレンスキー大統領は、「自分はロシアの殺人リスト・ナンバーワンとなっている」としつつ、「ウクライナにいて国を守る」と主張し、ウクライナ国民に共に戦うことを呼びかけるなど、国民を鼓舞するメッセージを発信し続けた。その際、自身のソーシャルメディアなどを駆使し、自撮りの映像で訴えかけるという現代版の情報発信を展開してきた。

プーチンの誤算とディスインフォメーションの限界/WEDGE Infinity.2022
支持率が9割を超え……ウクライナ国民が立ち上がる
CNN/YouTube

 このゼレンスキー大統領の呼びかけに応じ、ウクライナ国民は立ち上がり、ロシアに徹底抗戦する機運が高まることとなり、結果、ロシア軍が早期にキエフを陥落させるという作戦が頓挫したのだった。

プーチンの誤算とディスインフォメーションの限界/WEDGE Infinity.2022

そして、今やウクライナでのゼレンスキー大統領支持率が91%と、昨年末より3倍も跳ね上がり、ウクライナ防衛への強い意志を示すゼレンスキー大統領はヒーローだといった声が聞かれるようになった。

プーチンの誤算とディスインフォメーションの限界/WEDGE Infinity.2022

「キャプテン・ウクライナ、ウクライナの最初の本物の大統領、英雄、指導者」

“英雄”に大化けしたゼレンスキー大統領とウクライナ国民に最大限の敬意を表す/FNNプライムオンライン.2022

ウクライナのゼレンスキー大統領に対する賛辞の数々だ。

“英雄”に大化けしたゼレンスキー大統領とウクライナ国民に最大限の敬意を表す/FNNプライムオンライン.2022

「私は彼に投票しなかった。しかし、彼の勇気は私の考えを変え、何百万人もの国民を鼓舞した」

“英雄”に大化けしたゼレンスキー大統領とウクライナ国民に最大限の敬意を表す/FNNプライムオンライン.2022
世界中がウクライナを支援に
NBC News/YouTube

連日SNSを通じてメッセージを発信するゼレンスキーはこの戦争のヒーローであり、ウクライナに対し世界中から武器、食糧などの物的支援だけでなく義勇兵、ボランティアなども駆けつけて応援している。

核戦争の恐怖が迫っても世界はゼレンスキーを支持し続けることができるのだろうか/FNNプライムオンライン.2022

その「顔の変化」についても、現在の状況を考えれば当然だとする人が多いようだ。「彼の顔は、ウクライナ国民の痛みを感じ、彼らの命が失われていることを悲しんでいる男の顔だ。彼は私たち全員にとって、真のリーダーでありヒーローだ」「彼の表情からは、その心痛が手に取るように伝わってくる。すべてのウクライナ人を思って、心を痛めているのだ」といった書き込みが見られる。

「これぞヒーローの顔!」 41日間で、ここまで激変したゼレンスキー大統領の「顔」/Newsweek.2022

元々は喜劇俳優で、政治経験ゼロだったゼレンスキー大統領は、アメリカから国外脱出を打診された時、「私が必要としているは弾薬だ。脱出の為の足ではない」と拒否し、今や「国家指導者に求められる最大の責務である国民の保護の為に、彼は敢然と立ち向かっている。」のである。

“英雄”に大化けしたゼレンスキー大統領とウクライナ国民に最大限の敬意を表す/FNNプライムオンライン.2022
created by Rinker
望まぬ戦争でウクライナ人は命を落とす。世界と未来のために。 ウクライナの各地で痛ましい悲劇が続いている。 ウクライナの民間人の死者は3月22日の段階で約4000人、ウクライナ軍の死者は3月上旬のデータで約1300~3000人となっている。また、ロシア軍は3月2日のロシア国防省発表で498人、3月24日のウクライナ側発表では約1万5800人と大きな乖離があるが、これもまた現在繰り広げられている情報戦のひとつなのだろう。 このように大きな被害を出しながらも、ウクライナが持ちこたえている要因は何か? 各国の志願兵による軍事支援やロシア軍の士気の低下などさまざまな理由が考えられるが、間違いなくそのひとつは、ゼレンスキーの演説がウクライナ国民を鼓舞し、各国の人々に支援を呼びかけたことにある。そして日本だけでなく他の国々に向けた演説はいかなるものだったのか、それについても知って欲しいというのが、本書を緊急発刊する理由である。紙幅と時間が許す限りの演説を、本書では収録した。(「Books」出版書誌データベースより)

この記事の続きを読む▼

【ウクライナ危機⑰】軍事支援をして欲しければバイデンのスキャンダル調査しろ……。再選を目指すトランプ大統領がゼレンスキーに要求!?『ウクライナゲート』
“https://diggity.info/society/ukraine-17/”
この記事をシェアする▼
Previous post 【ウクライナ危機⑮】混沌極める東欧情勢……。ウクライナの未来を占う大統領選が始まる『2019年ウクライナ大統領選挙』
Next post 【ウクライナ危機⑰】軍事支援をして欲しければバイデンのスキャンダル調査しろ……。再選を目指すトランプ大統領がゼレンスキーに要求!?『ウクライナゲート』

当サイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、GoogleやASP等のCookieが使用されています。これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについてはプライバシーポリシー
をご覧ください

×
X