【ウクライナ危機(14)】国際的な注目!クリミア沖で起きた「ウクライナ海軍艦船拿捕事件」の緊迫事態

ウクライナ海軍拿捕事件は、ロシアとウクライナの緊張関係によって引き起こされた重大な出来事です。この記事では、事件の背景や双方の主張、そして国際社会の見解について探ります。ロシアの主張には疑わしい点があり、国際法や公正な国際秩序を尊重する観点から容認されるべきではありません。ウクライナの港湾都市への影響や緊張状態の継続による地域の経済活動への影響も考慮しながら、この事件の真実を明らかにします。

【ウクライナ危機(13)】ウクライナ東部紛争の鍵「ミンスク合意」が示す平和への道
created by Rinker
毒殺、撲殺、自殺偽装……暗殺の舞台はイギリス、そしてアメリカへ。裏切り者は、必ず葬り去られる。オリガルヒ、反体制派、内部告発者、外国人協力者まで、クレムリンはいかに彼らを追い詰め、抹殺するのか? そして、なぜ西側諸国はプーチンを止められないのか? ピュリツァー賞ファイナリストによる渾身の調査報道。(「Books」出版書誌データベースより)

Ominous November

ウクライナ史に残る悲惨な事件が起きてきた月『11月』

euronews/YouTube

ウクライナの11月は、その歴史的な意義から、ウクライナ人にとって重要な月である。この期間は、過去の重大な事件を回顧し、追悼の集会が開催される時期でもある。これらの活動はウクライナ人の愛国心を呼び起こし、同時にソ連時代から続く反ロシアの感情も高まる。

特筆すべきは、親ロシア派のヤヌコヴィッチ大統領の退陣を求めて発生した市民デモ、「マイダン」の参加者が増え始めたのも2013年の11月であったことである。この民衆の動きは、ウクライナの政治風景に大きな影響を与えた。

さらに、1932年のソ連時代には、ウクライナ人が農業生産向上の名目でウラル地方などに強制移住させられ、少なくとも500万人近くが餓死したとされる悲劇があった。この事件は「ホロドモール(飢餓による殺害)」と呼ばれ、ウクライナ国内の多くの地域では、毎年11月に追悼集会が開催され、ホロドモールで命を落としたウクライナ人を悼んでいる。

このように、ウクライナの11月は、愛国心と反ロシア感情の象徴として、ウクライナ人の心に深く刻まれている。

「新たな紛争の火種」クリミア半島沖でロシアがウクライナ艦船を拿捕!

2018年11月25日、ロシアが黒海とアゾフ海を繋ぐケルチ海峡近辺で、ウクライナ海軍艦艇に対する攻撃を行い、艦船を拿捕、乗組員を拘束したという報道がありました。この3隻の艦船は、ウクライナの黒海沿岸都市オデッサから出航し、ロシアが支配するクリミア半島とロシア本土に挟まれたケルチ海峡を通過し、アゾフ海に面するウクライナのマリウポリ港を目指していました。

この事態により、クリミア半島と東部ドンバス地域に次いで、アゾフ海がウクライナ紛争の新たな前線と化す可能性が浮上しました。それが現実化すれば、ヨーロッパは今後数年間、この問題への対応に追われることになります。

ロシアの沿岸警備艇がウクライナ艦船に銃撃を行い、乗組員24人を拘束した上、ウクライナの生命線とも称されるケルチ海峡をタンカーで封鎖したというこの事件は、2014年から続くウクライナとロシアの間の紛争の一部であり、その一方で前例のない出来事でもありました。

特に注目すべきは、ロシアがウクライナへの公然とした攻撃を初めて認めたという点です。これは、両国間の紛争における重大なターニングポイントと言えるでしょう。

Global News/YouTube
シアの攻撃でアゾフ海が孤立!ウクライナ南東部の都市が直面する現実
KJ Reports/YouTube

アゾフ海は、クリミア半島の東に広がる大きな海域で、クリミア半島、ウクライナ本土、そしてロシア領土に囲まれています。しかし、黒海からアゾフ海へアクセスするには、ケルチ海峡という唯一の海峡を通過するしかありません。

ウクライナとロシアは、2003年にこのケルチ海峡の自由航行を保証する協定を結んでいましたが、ロシアが行った攻撃行為は、この協定を大きく侵害するものでした。これにより、ロシアが支援している分離派が掌握している地域に近い、ウクライナ南東部の都市が封鎖される可能性が出てきました。これは、地政学的な観点から見ると、ウクライナにとって大きな打撃となり、その経済、特に港湾都市の運用に重大な影響を及ぼす出来事でした。

クリミア併合と37億ドルの大橋プロジェクトにより引き起こされた海洋紛争

この海洋紛争の引き金とななったのは、ロシアがウクライナ南部のクリミア半島を一方的に併合した後に始めた、37億ドルの建設費を投じた大橋の建設プロジェクトでした。

BBC News/YouTube
ケルチ海峡大橋開通で加速する緊張!ウクライナ抗議とロシアの地政学的影響力の衝突

このケルチ海峡大橋は、2014年にロシアが一方的に併合したクリミア半島とロシア本土を繋ぐ目的で始まったプロジェクトで、2018年5月15に開通しました。このプロジェクトは、クリミア半島の足場固めとなるだけでなく、ロシアの地政学的影響力を示す政治的な旗艦プロジェクトともなりました。これにより、ロシアはクリミア半島への物資や人々の移動を効率化し、その支配力を強化することが可能となりました。

開通の日には、プーチン自らトラックを運転してこの橋を走行しており、ウクライナでは激しい抗議の嵐が巻き起こりました。

Al Jazeera English/YouTube
クリミア半島とロシア本土の鉄道橋完成!新たなライフラインによる交流と地政学的変化

ケルチ海峡大橋は、道路と鉄道の両方を含む複合型の橋となっています。その鉄道部分は2019年12月23日に完成し、これによりクリミア半島とロシア本土が鉄道と道路で直接結ばれました。これは、それまでの主な交通手段であったフェリーを必要としない、新たな交通路の確立を意味しています。

この橋の完成は、クリミアの住民にとってロシア本土との直接のつながりを形成する重要なライフラインを提供しました。これにより、クリミア半島とロシア本土の間の交流がさらに容易になり、ロシアのクリミア半島への影響力が強化される一方で、ウクライナとのつながりがさらに希薄になる可能性が高まりました。

The Straits Times/YouTube
プーチン大統領が鉄橋開通式に出席し、将来の経済効果を予測

同日、プーチン大統領は鉄橋開通式に出席しました。さらに自ら列車に試乗し、その周囲も視察していました。

プーチン大統領は、「毎年1,400万人の旅行者と1,300万トンの物流がロシアとクリミア半島を行き来するだろう」とし、「これがロシア経済全体に非常に肯定的な影響を及ぼすだろう」と予想しました。以前、彼は自動車道の完成時にも同様に現場に出向き、直接トラックでケルチ大橋を渡ったことがあります。

ウクライナから見たケルチ海峡大橋の制約と批判!

しかし、ウクライナ側から見ると、ケルチ海峡大橋の存在は全く異なる意味を持っています。橋脚の設置によりケルチ海峡を通過できるルートが限られ、最も高い部分で水面から橋までの高さが35メートルしかないため、一部の船舶は航行できなくなっています。

これに対し、ウクライナの当時の大統領であったペトロ・ポロシェンコは、「これはロシア政府が国際法を無視した最新の証拠だ」と非難しています。

created by Rinker
ハイブリッド戦争の内幕とは。毎日新聞モスクワ特派員が両国政府と親露派の要人を取材、砲撃と空爆で破壊された街に潜入して、戦闘員と市民の声を聞く。激動のロシア情勢を伝えるルポルタージュ。(「BOOK」データベースより)

Russia’s Capture of Ukrainian Ships

「ウクライナ海軍艦船拿捕事件」の全容

UATV English/YouTube

2018年5月、ロシアはロシア本土とクリミア半島を結ぶケルチ海峡大橋を完成させました。この橋の完成以降、ロシアがケルチ海峡を通ってウクライナのアゾフ海沿岸の港へ向かう商業船の動きを制限し始めたという報告が相次いでいます。この影響はEU加盟国の貨物船にも及んでいます。

一方、ロシアはクリミア半島周辺の軍備を強化し、アゾフ海を制圧しようとする動きを見せています。これは軍事的緊張を高めることで、対ロシア融和を主張するウクライナの親ロシア派を支援するロシアの戦略の一部と見られています。

アゾフ海周辺のウクライナ地域にはロシア系の住民が多く、ケルチ海峡が封鎖された場合、ウクライナの経済的苦境が深まる可能性があります。その結果、ウクライナ政府に対する批判が高まる可能性もあります。

ウクライナ海軍分遣隊とロシアの衝突!ケルチ海峡での攻撃と封鎖の舞台裏

2018年11月24日、ウクライナ海軍分遣隊の指揮官はロシア当局からケルチ海峡の閉鎖を通告されましたが、翌日の11月25日にはウクライナ海軍分遣隊がロシアの海域管理当局に対してケルチ海峡の通航を要請しました。その同じ日の朝、ロシア連邦保安庁(FSB)沿岸警備隊の哨戒部隊、哨戒艦DonとIzumrudを含む、がウクライナのタグボートYany Kapuに衝突し、被害を与えました。

ウクライナのタグボートが航行を続けたため、ロシアは「ケルチ海峡大橋」の下に貨物船を錨泊させ、ヘリコプターや航空機で海峡を哨戒し、アゾフ海への入り口を封鎖しました。その結果、ウクライナのアゾフ海沿岸のベルジャンシク(Berdyansk)港からケルチ海峡に向かっていた別の3隻のウクライナ海軍分遣隊は、基地に戻らざるを得なくなりました。

同日の夕方には、ロシアの哨戒艦がウクライナの砲艦(Berdyansk)に発砲し、オデッサ港に戻ろうとしていたこの砲艦を停船させました。ロシアはその後、3隻のウクライナ海軍艦艇全てを拿捕し、23人の乗組員を拘束しました。ロシアの哨戒艦の1隻には、10人の特殊部隊員が乗船していたとされています。ロシアは11月26日まで一時的にロシア以外の船のケルチ海峡通行を禁止しました。

ウクライナ大統領がロシアの行動を非難!衝突事件が緊張を高める

その後、11月25日夜にウクライナの国家安全保障・国防会議が緊急に招集され、その場でウクライナのペトロ・ポロシェンコ大統領はロシアの行動を「理不尽で常軌を逸している」と非難しました。この衝突はウクライナとロシア間の緊張を一層高め、国際社会からも懸念の声が上がることとなりました。

ポロシェンコ大統領が戒厳令を宣言!ロシアの地上戦準備を警戒

ウクライナのペトロ・ポロシェンコ大統領は、ウクライナ海軍の艦船3隻がクリミア半島近海でロシアに拿捕されたことを受けて、戒厳令の布告を宣言しました。彼は11月26日にテレビ演説を行い、この方針を表明しました。そして、その後、この戒厳令は26日から30日間有効であると発表されました。

また、ポロシェンコ大統領はロシアがウクライナに対する地上戦の準備を進めている証拠をウクライナの諜報機関が掴んでいると主張しました。

TRT World Now/YouTube

ウクライナ国民の怒りが爆発!ロシア大使館への抗議行動

さらに、首都キエフでは、11月25日の夜から26日の未明にかけて抗議行動が発生しました。およそ150人の抗議者がキエフのロシア大使館周辺に集まり、一部の抗議者は発火物を投げ、大使館の車両が少なくとも1台焼失しました。

抗議行動に参加したオレクシー・リャボフはロイター通信に対して、「今日ここに集まったのは、我々の軍を銃撃したロシアの今日の行動に対し抗議するためだ」と話しました。また彼は「我々はとても怒っている。もうずっと前にロシアとの外交関係は全て断つべきだった」とも述べ、ウクライナの人々の強い反ロシア感情を表しています。

ITV News/YouTube
ロシア連邦保安局が武力使用の拿捕を認める

ロシア連邦保安局(FSB)は、11月26日未明に黒海でウクライナ海軍の艦船を国境巡視船が拿捕し、武器を使って停止させたと発表しました。これは、ウクライナの艦船がロシアの領海を不法に侵入し、停止の要請を無視して危険な行動をとったことに対する措置だと説明しています。さらに、艦船に乗っていた24人のウクライナ海軍兵士については、ロシアが4年前に併合したクリミアの裁判所が28日までに、全員を翌年、2019年1月25日まで(つまり2ヶ月間)拘束することを承認しました。

ロシア・ウクライナ両国の要請で“国連安保理の緊急会合”が開催へ…。

米国の国連大使であるニッキー・ヘイリーは、ロシアとウクライナの問題に対して、国連安全保障理事会が11月26日に緊急会合を開くと、ツイッターで公表しました。この開催は、ロシアとウクライナの両国が要請したものでした。

EUがこの一件について自制を求める声明を発表

欧州連合(EU)は「ロシアがケルチ海峡の通行の自由を回復し、直ちに緊張を緩和することを期待する。また、全ての関係者に対し、最大限の自制を行使するよう求める」との声明を発表しました。北大西洋条約機構(NATO)も同様に「自制と緊張緩和」を求める声明を出しました。

「懲戒令布告の検討」ウクライナ議会が緊急招集

ウクライナ議会は、2018年11月26日に緊急会議を開き、60日間の戒厳令の採択を議論しました。この提案は、ソビエト連邦からの独立以降初めてのものであり、ウクライナ大統領ペトロ・ポロシェンコが「攻撃的になっているロシアに対するウクライナの防衛を強化する」ために必要と主張しました。

しかし、この提案には驚きの声が上がり、ポロシェンコの真の意図について疑問が投げかけられました。特に、4カ月後の大統領選挙を控え、ポロシェンコの支持率が低下しているため、選挙の延期を図る意図があるのではないかという憶測がなされました。

ウクライナ法によれば、戒厳令が施行されている間は選挙活動を行うことができません。このため、戒厳令が2019年3月の大統領選の選挙活動を妨害する可能性があるとの懸念が表明され、議会では混乱が見られました。

FRANCE 24 English/YouTube

ウクライナ戒厳令の適用範囲、議会の反対により限定的に

ポロシェンコ大統領は、ウクライナ全土への戒厳令の宣言を提案しましたが、議会は反対しました。結果、戒厳令の適用範囲はロシアとの国境地域に限定されました。戒厳令が適用される10州のうち5州はロシアとの国境を有しています。さらに、2州はモルドヴァ共和国から分離し、親ロシア派の分離主義勢力「沿ドニエストル共和国」が宣言した地域と隣接しています。この「沿ドニエストル共和国」地域にはロシア軍が駐留しています。残る3州は、ロシアが併合したクリミア半島に近い黒海またはアゾフ海に面しています。

懲戒令の期間中は“16~60歳のロシア人男性の入国を全面禁止”

さらにウクライナ議会はポロシェンコ大統領が提案した60日間の戒厳令ではなく、期間を30日間に短縮して同意しました。また、16歳から60歳までのロシア男性のウクライナへの入国を全面的に禁止するという措置まで導入しました。これは、クリミアの併合やウクライナ東部の軍事衝突において、ロシアの武装集団がウクライナ内に侵入し暗躍した経験を受けてのもので、新たな暴動や不安定な行動を防ぐためのものです。

一部には過剰な対応との批判もありますが、政府は外交官や特別な事情がある場合には入国を認めると述べています。この期間中、大統領選挙キャンペーンも一時停止されました。ポロシェンコ大統領は26日、戒厳令は防衛の目的だけで発動され、宣戦布告ではないと強調しました。ウクライナは拿捕された艦船と乗組員の即時解放を求めていますが、ロシアはこれを拒否しています。

Daily Mail/YouTube

安保理の舞台でロシアとウクライナの言い分対立!真実はどちらに?

ロシアによるウクライナ海軍艦艇の銃撃と拿捕を受けて、国連安全保障理事会は11月26日に緊急会議を開催しました。アメリカをはじめとする国々がロシアの行為を厳しく非難しました。アメリカのヘイリー大使は会議で、自身の発言がトランプ大統領およびポンペオ国務長官との協議に基づくものであるとし、米国の懸念を強調しました。「ロシアとの関係の正常化は歓迎するが、現行の不法行為がそれを不可能にしている」と述べ、対ロシア制裁の維持を示しました。

一方、ロシアのポリャンスキー次席大使は、ウクライナが国境を侵犯したと主張し、ウクライナ大統領の支持率が低迷し、自身を国家の救世主と見せるために危機を演出したと訴えました。彼は「自分たちは最初に攻撃することはないが、自己防衛の方法は知っている」と強調しました。

また、ウクライナが戒厳令を発令し、不利な大統領選挙を延期しようとしているとも指摘しました。ウクライナのイェルチェンコ国連大使は、ウクライナの艦船がロシアとの合意に基づき、事前通告した上で通行しようとしたと述べ、ロシアの主張を完全な嘘であると非難しました。

ヘイリー大使はロシアを「決して許されない傲慢な行為」と厳しく非難し、EU加盟8カ国は、緊急会議後にロシアに対して拿捕された船舶と乗組員の即時解放を求める共同声明を発表しました。

euronews/YouTube

NATOが緊急会合開催!ウクライナの領土保全に全面的な支援

ウクライナのポロシェンコ大統領との電話会談後、北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長は、11月26日にウクライナとの緊急会合を開催することを発表しました。ストルテンベルグ事務総長は、「ウクライナの領土保全と主権を全面的に支持している」とNATOのメンバー国ではないウクライナの支持を表明しました。

さらに、ロシアのペスコフ大統領報道官は報道陣に対して、ウクライナの艦船がロシアの領海を違法に侵入し、ロシア国境警備隊からの警告を無視したと述べました。

乗組員声明に矛盾!ウクライナ海軍拿捕事件の真相は?

11月27日、ロシア連邦保安局(FSB)がウクライナのクリミア半島近海でウクライナ海軍の3隻の艦船を拿捕した事件に関連して、拘束したウクライナの乗組員3名からの声明を公開しました。その中の一人、ヴォロディミル・リソヴィは、ウクライナ海軍艦船の「挑発的な性質」の行動に対する認識を示しました。これに対し、ウクライナ海軍の司令官は、これらの3名が偽の証言を強制されたと反論しました。

プーチン、ポロシェンコ大統領を非難…選挙目的のアピールだと主張

プーチン大統領はモスクワでの国際投資フォーラムで、ウクライナの海軍艦船の問題についてコメントし、「我々の兵士は何をすべきだったのか?彼らは国境の防衛という彼らの義務を果たしていただけだ。各国でも同様の行動をとるだろう」と述べました。プーチンはこの問題は明確にロシアへの「挑発行為」であり、ウクライナの政府と2019年3月の大統領選挙を控えた現職大統領のポロシェンコが計画したと主張しました。

つまり、ポロシェンコ大統領が低い支持率を持っているために、戒厳令を発動するための口実を求めていたと指摘したのです。具体的には、2014年にウクライナ東部の親ロシア派分離主義者の暴動の最盛期にも見られなかったような「国境の騒ぎ」を口実に、ポロシェンコ大統領が戒厳令を発令したと指摘しました。

プーチン大統領、ポロシェンコ大統領との会談を避ける理由を明言

プーチン大統領はこの問題について何度もコメントしていますが、2018年12月5日の発言が特に注視されています。

その日、プーチンはモスクワでボランティア賞を授与するセレモニーの後、記者団からポロシェンコ大統領との会談の可能性とその条件について質問され、「私は単にポロシェンコ大統領との会談を避けているわけではない。私は彼の選挙キャンペーンに参加したくないだけだ」と述べました。

ウクライナの次期大統領選は2019年3月31日に予定されており、プーチン大統領の見解では、ポロシェンコ大統領はこの危機を意図的に引き起こし、その責任を自分ではなくロシアに転嫁し、問題を適切に処理する能力を見せつけることで選挙に影響を及ぼそうとしているとのことです。

G20開幕!!拿捕事件について会談

G20ブエノスアイレス・サミットがアルゼンチンのブエノスアイレスで2日間の11月30日から開催されました。このイベントの前に、米国のトランプ大統領は29日に、アルゼンチンへ向かう途中で、12月1日に予定していたロシアのプーチン大統領との会談をキャンセルすると明らかにしました。その理由として、ウクライナのクリミア半島東部のケルチ海峡でウクライナ海軍艦船がロシアに拿捕されたことを挙げました。

トランプ大統領はTwitterで、ウクライナ艦と乗組員がまだ返還されていないと指摘し、それを受けてプーチン大統領との会談を中止するのが最善の選択と判断したと述べました。彼はまた、問題が解決された際に再び有意義な会談を持つことを楽しみにしていると付け加えました。

トランプはこの発表のわずか1時間前に、記者団に対し、プーチンとの会談は「非常に良い機会」と言っていました。会談のキャンセルはG20に向かう大統領専用機に乗った直後に発表されました。機内では、報道官のサラ・サンダースが、トランプの決定は国務長官のマイク・ポンペオ、首席補佐官のジョン・ケリー、大統領補佐官のジョン・ボルトンとの協議の結果だったと説明しました。

ロシア側からは、プーチン大統領のスポークスマン、ドミトリー・ペスコフがG20に向かう飛行機の中で「CNNとトランプのツイートだけを見て、公式の情報はない」としましたが、「もしキャンセルなら、プーチン大統領はG20で他の首脳と有益な会談を持つために2、3時間余分に時間ができるだろう」と述べました。

WION/YouTube
トランプとの非公式会話

その後、ホワイトハウスの報道官、サラ・サンダースは12月1日に、このサミットの間にアメリカのトランプ大統領がロシアのプーチン大統領と非公式に会話にを交わしたことを明らかにしました。彼女はこの会話が11月30日の夕食会で行われたとし、多国間の首脳が参加するイベントではこれが通常の事だと説明しました。

さらに、プーチン大統領もG20サミット終了後の記者会見で、トランプと銃撃・拿捕事件についての会話を明らかにしました。「彼には彼の立場があり、私には私の立場がある。意見は変わらなかった」と述べました。また、この事件についてフランスのエマニュエル・マクロン大統領やドイツのアンゲラ・メルケル首相とも話し合ったと語りました。

プーチンは、「私たちは私たちの立場だけでなく、この事件がどのように起こったかも説明した。航海日誌には私たちの領海に侵入することが書かれていた」と述べ、「領海侵犯」を理由に拿捕の正当性を主張しました。ただし、「彼らを納得させることができたかどうかは分からない」とも述べました。

Télam/YouTube
日本の安倍総理大臣とプーチンが首脳会談!その内容は「北方領土問題」

G20サミットが閉幕した後、アルゼンチンを訪れている日本の安倍晋三首相は、日本時間で12月2日午前2時半から約45分間、ロシアのプーチン大統領と会談を行いました。これは両者による24回目の会談で、先月14日にシンガポールで合意した内容、すなわち「平和条約を締結した後に歯舞群島と色丹島を引き渡す」とした1956年の日ソ共同宣言を基に、平和条約交渉を加速することを確認したものです。

会談の冒頭で、プーチン大統領は「我々はロシアと日本の主要な協力関係の発展を確認するために、あらゆる機会を利用している。非常に頻繁なスケジュールで作業しており、これを喜んでいる」と述べました。これに対して、安倍首相は「シンガポールでの会談の結果を踏まえて、平和条約の問題を中心に議論を進めたい」と応じました。また、「北方四島での共同経済活動の実現に向けた取り組みや、元島民のための人道的な措置、例えば航空機による墓参などについて、引き続き協力を進めていきたい」と述べました。

さらに、両首脳はシンガポールでの合意を踏まえて、今後の平和条約交渉の枠組みについて確認しました。その枠組みとは、日本側は河野太郎外務大臣を、ロシア側はセルゲイ・ラブロフ外相をそれぞれ交渉責任者とし、その下での交渉担当者として、日本側は森雅子外務審議官を首相特別代表、ロシア側はモルグロフ外務次官を大統領特別代表とするものです。これにより、平和条約交渉をさらに加速させることを確認しました。

ANNnewsCH/YouTube

ポロシェンコ大統領、懲戒令の解除を発表も新たな制裁措置の検討を強調

ウクライナのポロシェンコ大統領は、12月26日に対ロシア国境地域で敷かれていた戒厳令を終了すると発表しました。この決定は、キエフで開催された国家安全保障国防会議(National Security and Defence Council)で公表され、安全保障状況の全ての要素を分析した結果として述べられました。

ポロシェンコ大統領は、「国民の権利をこれ以上制限すべきではない」との理由を説明しつつ、ロシアの国会議員らを対象とした新たな制裁措置の検討を強調しました。しかし、その一方で、ロシアに対する警戒を緩める様子は見せていません。ロシアでは、支持率が低迷し、再選が困難とされるポロシェンコが緊張を煽り、非法的な措置をとったとの見方が優勢です。

また、戒厳令下で軍部隊の配置転換や予備役の招集を行い、クリミアを一方的に編入したロシアに対する防衛態勢を強化したと主張しました。さらに、戒厳令を停止の理由は大統領選挙を予定通り実施するためと語りました。しかし、30日間の戒厳令で政権基盤を強化はできませんでした。

ウクライナとロシアの緊張状態…紛争解決の難しさが浮き彫りに

依然としてウクライナ側は、ロシアからの「総攻撃」の可能性を主張し、警戒しています。一方、ウクライナ東部の一部を実効支配している親ロシア派武装勢力は、ウクライナ軍による「化学兵器攻撃」の可能性があると主張し、防衛態勢を強化しています。さらにロシア外務省は12月25日に、ウクライナとロシアの紛争に関して裁定ができないと主張する声明を発表し、この状況に反発を表明していました。

Daily Mail/YouTube

ウクライナ大統領ゼレンスキー就任後も続く問題の行方

翌年の2019年ウクライナ大統領選挙でポロシェンコは敗北、コメディアンのヴォロディミール・ゼレンスキーが2019年5月20日に大統領に就任しました。ゼレンスキーは就任の演説で、ウクライナ東部の親露派武装集団との継続的な紛争に対処するため、ロシアとの交渉を開始し、武力行為を終了する方向へ進むという考えを明らかにしました。

その5日後の2019年5月25日、国際海洋法裁判所(ITLOS)はロシアにケルチ海峡で拘束したウクライナの24名の海軍軍人とその艦船を迅速に解放し、ウクライナに返還するよう命じました。しかし、ロシアはこの決定を受け入れず、その立場は不変であると表明しました。

2019年7月17日には、ロシアはウクライナの艦船の乗組員の勾留を延長し、親露派武装集団の支配地域以外でもロシア国籍を取得する手続きを簡易化する範囲を拡大しました。しかし、2019年9月7日には、ウクライナとロシア間で囚人交換が行われ、ロシアで不当に有罪判決を受けた政治囚11人と、24名のウクライナ海軍軍人がウクライナに帰国しました。

Радіо Свобода Україна/YouTube

衝撃の主張を検証!ロシアの言い分はリアル?フェイクか?

この事件の本質を理解するためには、ロシアの主張には疑わしい点がいくつもあることを認識することが重要です

問題となった拿捕事件は、ウクライナの艦船が黒海とアゾフ海を結ぶケルチ海峡を通行しようとした時に発生しました。過去にロシアは、クリミア半島近くの主要港へのアクセスを制限するため、ウクライナ軍のケルチ海峡通過を妨げてきました。しかしこの件に関して、ロシアはウクライナが挑発したと主張しています。

公海(航行が自由な海)で拿捕

しかし、専門家が公開情報や無線傍受記録を分析した結果、ロシアがウクライナの艦船を公海(航行が自由な海)で捕えたとの結論に達しました。さらに、この際、ロシアは高い殺傷力を持つ兵器の使用を試みていたと指摘しています。

その海域は二カ国合意で自由航行をプーチンが認めていた

さらに、ロシア自体が2003年12月にウクライナと締結した二国間合意で、ケルチ海峡とアゾフ海の自由航行を双方の船舶に認め、アゾフ海を共同管理することを確認しています。この合意はロシア側からはプーチン大統領自身が署名し、その文書は国連にも提出されています。

ロシアが主張する“領海”は国際社会が認めないまま武力支配しているエリア

これらの話の前に、クリミアの併合はロシアが武力を用いて強行した現状変更であり、その正当性は国際社会によって承認されていません。そのため、ロシアがケルチ海峡を一方的に掌握し、他国の船舶の通航を制限するその行為も、国際法や公正な国際秩序を尊重する観点からすれば、決して容認されるべきものではありません。

そこにロシアが勝手に橋を作り一方的な航行規制

クリミアの併合後の2014年、ロシアは本土とクリミアを直接結ぶための橋の建設を急ピッチで進め、翌年の5月には全長20kmの鉄道道路併用橋が完成しました。その結果、ロシアのケルチ海峡とアゾフ海への影響力が格段に強まりました。

しかしながら、この新たに建設された橋の下部は非常に低く設計されており、大型船舶の通過には制約があるという問題が生じました。さらに、ロシアは橋の安全を理由に一方的な航行制限を導入しました。これは、公海でありながら自由な航行が困難となる状況を作り出しました。

これらの行為は、ウクライナの港湾都市であるマリウポリなどにとっては大きな打撃となり、地域の経済活動にも悪影響を及ぼしました。

BBC News/YouTube
事件直後にはロシアは貨物船を停泊させ航行をブロック

また、事件直後にロシアは貨物船を橋の下に横向きに停泊させ、海峡の航行を完全にブロックしました。

ロシアは「領海侵犯があった」と主張していますが、世界の多くの国はクリミアの併合を認めていない上、2003年の自由航行と共同管理の合意も破棄されていないという現状を無視しています。

Global News/YouTube
created by Rinker
毒殺、撲殺、自殺偽装……暗殺の舞台はイギリス、そしてアメリカへ。裏切り者は、必ず葬り去られる。オリガルヒ、反体制派、内部告発者、外国人協力者まで、クレムリンはいかに彼らを追い詰め、抹殺するのか? そして、なぜ西側諸国はプーチンを止められないのか? ピュリツァー賞ファイナリストによる渾身の調査報道。(「Books」出版書誌データベースより)
【ウクライナ危機(16)】コメディの舞台からウクライナの救世主へ『ウォロディミル・ゼレンスキー』の驚異的な軌跡

You might be interested in …

当サイトではプロモーションが含まれています。また、利用状況の把握や広告配信などのために、GoogleやASP等のCookieが使用されています。これ以降ページを遷移した場合、これらの設定や使用に同意したことになります。詳細はプライバシーポリシーをご覧ください

X