ウクライナ東部の紛争とその後の停戦合意についてご紹介します。ウクライナとロシアの間で激化した紛争は、両国の対立の根源に関する複雑な要素が絡み合い、多くの人々の生活に深刻な影響を与えています。
この記事では、ミンスク合意に基づく停戦の現状や、両国の異なる見解について触れながら、紛争の背景や最新の展開について詳しく解説します。
また、停戦合意の履行の難しさや人道的な課題にも言及し、この問題が国際社会に与える影響についても考察します。ウクライナ東部の情勢に関心をお持ちの方にとって、この記事は深い洞察と関連情報を提供するものとなっています。
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Minsk agreement
ミンスク合意
ウクライナ危機が始まって以来、外交的解決に最も力を注いできたのはフランスとドイツでした。フランスのエマニュエル・マクロン大統領とドイツの首相、オルガ・ショルツの姿は、クレムリンの巨大なテーブルの両端に座り、激しい討論を繰り広げるという光景は、当時よく報道されていました。
彼らの目指したのは、ウクライナ問題を平和的に解決するための枠組み「ノルマンディー・フォーマット」と「ミンスク合意」の推進でした。ノルマンディー・フォーマットは、2014年にフランスのノルマンディー地方で開かれたDデイ記念式典をきっかけに始まりました。このフォーマットでは、ウクライナとロシアの間の紛争を和解させるため、フランスとドイツが仲介役を果たしました。
<ミンスク合意>内戦停戦を目指すロシア・ウクライナ文書
ミンスク合意は、2014年にウクライナ東部のドンバス地域での内戦の停戦を目指してロシアとウクライナが結んだ文書で、その目的と内容は多角的です。大きな柱となる部分は以下の4つです。
- 停戦に関する条項:これは全ての戦闘行為を停止させ、人道的な災害を最小限に抑えるためのものです。具体的には、ミンスク協定は全面的な停戦と重火器の撤去を求めています。
- ウクライナ東部地域ドンバスの自治や選挙に関する条項(政治条項):ドンバス地域の自治を確保し、地元住民による選挙を保証するための規定です。これにより、分離主義者とウクライナ政府の間での政治的な対話が奨励されます。
- 外国部隊の撤収に関する条項(治安条項):この部分はドンバス地域からの外国部隊と武器の完全な撤退を要求しています。これには、非合法な軍事組織の解散も含まれています。
- ドンバス地域の崩壊した社会サービスの回復に関する条項(社会条項):内戦により破壊された基礎インフラの復旧と、社会経済的な安定化を目指したものです。この条項は、難民の帰還と人道的な援助の提供、さらには地域の経済活動の復活を目指しています。
以上の4つの柱は、ミンスク合意が目指す和平実現のための重要な要素となっています。
「ミンスク議定書」・「ミンスク覚書」・「ミンスク協定遂行措置」
2014年にクリミアがロシアに併合された後、ウクライナ情勢の平和的解決を目指し、ロシア、ウクライナ、ドイツ、フランスの4カ国が協議を重ねました。これは一般に「ノルマンディー・フォーマット」と呼ばれています。その結果、まず「ミンスク議定書」と「ミンスク覚書」が取り交わされ、その後2015年2月には「ミンスク協定遂行措置」が承認されました。これらが一連の「ミンスク合意」を構成しています。
「ノルマンディー・フォーマット」4カ国の大統領による協議
ノルマンディー・フォーマットの始まりは、2014年6月6日に遡ります。この日は、第二次世界大戦のヨーロッパ戦線の転機となったノルマンディー上陸作戦の70周年記念式典が行われた日でした。この記念式典の際に、当時のドイツ首相アンゲラ・メルケルの主導のもと、ロシアのプーチン大統領、ウクライナのポロシェンコ大統領、フランスのオランド大統領の4者で「ノルマンディー・フォーマット」が発足しました。
このフォーマットは、ウクライナ情勢の悪化に対応するために、2014年以降ミンスク合意に基づいて設置された対話の場で、ロシアとウクライナの当事国とドイツとフランスの2カ国が参加して解決策を模索する枠組みとして機能してきました。しかし、2016年10月以降は開催されておらず、その影響力は低下しています。
合意の具体的な協議「三者コンタクト・グループ」
ウクライナ東部の対話の場において重要な役割を果たしているのが、三者コンタクト・グループと呼ばれる組織です。このグループはロシア、ウクライナ、そして停戦監視にあたるOSCEの3つの当事者で構成されています。更に、この三者コンタクト・グループには、ウクライナ東部ドンバス地域の自称「共和国」であるドネツクとルガンスクの代表も参加しています。
欧州安全保障協力機構「OSCE」
OSCEとは、正式名称をOrganization for Security and Co-operation in Europe(欧州安全保障協力機構)と言い、北米、欧州、中央アジアの57か国が加盟する世界最大の地域安全保障機構です。OSCEは安全保障問題を軍事的な側面だけでなく、包括的に捉えて活動しています。経済、環境、人権・人道分野における問題も安全保障を脅かす要因となるとの考えから、これらの領域における安定と協力の推進にも注力しています。ウクライナ東部の平和を目指し、停戦監視と対話の場の提供という重要な役割を担っています。
「ミンクス1」+「ミンクス2」=『ミンスク合意』
ミンスク合意とは、ウクライナ東部ドンバス地域における武力衝突の解決を目指した一連の協定を指します。この協定は、2回にわたって締結されました。
「ミンスク1」は失敗?親ロ派支配の現実と紛争再燃の背後にあるもの
2014年9月、ウクライナ東部のドンバス地域における戦闘を収束させるべく、初のミンスク合意(通称:ミンスク1)がベラルーシの首都ミンスクで締結されました。この合意は、欧州安全保障協力機構(OSCE)の支援を得て、ウクライナ、ロシア、およびドンバス地域の未認可「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」の4者により署名されました。
ミンスク1は12の項目から成り、その中にはOSCEによる停戦監視、分離派が支配する地域への暫定的な特別地位の付与、地方選挙の実施、当事者への恩赦などが含まれていました。これらは紛争の解決と平和の維持を目指す具体的な手段とされていました。
しかし、2015年1月には、全面的な戦闘が再開され、ミンスク1が完全に遵守されることはありませんでした。この結果、新たな和平協定の必要性が高まり、続いて「ミンスク2」が締結されることとなります。
「ミンスク2」包括的な和平へ向けた一大合意の意義
2015年2月、ドイツのメルケル首相、フランスのオランド大統領、ロシアのプーチン大統領、ウクライナのポロシェンコ大統領の間で「ミンスク2合」が締結されました。この合意は「ミンスク1」を補完し、より具体的かつ包括的な措置を定めることを目指したものでした。
ミンスク2は13項目から成り、その中には以下のような内容が含まれていました:
- 2015年末までにウクライナの憲法改定を実施し、「地方分権化」を進める。
- ウクライナ政府がドネツクとルガンスクに特別地位を与える法律を制定する。
- 停戦と武器の撤収、そしてドネツク州とルガンスク州における地方自治に向けた議論のスタート。
- 最終的には、これら二つの州の特別地位を認める法律の採択。
この合意は非常に複雑で多岐にわたる内容を含んでいますが、メルケル前独首相が主導してまとめられ、ドイツとフランスの首脳も署名しました。それゆえ、後任のドイツ・ショルツ首相とフランス・マクロン大統領との会談では、「ウクライナにミンスク2を履行させること」が重要なテーマとなりました。
ウクライナの苦悩!「ミンスク合意」によるロシアの影響とその問題点”
ウクライナの紛争は複雑で、その解決は簡単なものではありません。ミンスク2はロシアの意向が強く反映されたため、ウクライナ側からは懸念が表明されています。特に、ドネツクとルガンスクに「特別地位」を与えるという項目は、ロシアによるこれらの地域の実質的な支配を可能にするとウクライナ側からは警戒されています。
2019年に大統領に当選したヴォロディミル・ゼレンスキーは、この問題に積極的に取り組むことを公約しています。ゼレンスキーは、就任演説で東部地方の紛争解決を最優先課題と宣言し、特にミンスク2の修正を目指すことを明言しました。ゼレンスキーが目指したのは、ロシアによるウクライナ側の不利な条件を修正し、より公正な和平協定を作り上げることでした。
Eace decided…? The path of the Minsk Protocol
和平に向けて……。ミンスク合意までの道筋
2014年6月にウクライナ大統領に就任したペトロ・ポロシェンコは、東部ウクライナでの戦闘に、当初から強気で攻勢を仕掛けました。8月に入ると、政府軍は大きな領域を奪還し、親露派を追い詰める形勢となりました。しかし、その状況は8月22日に一変しました。
この日、ロシア正規軍がウクライナ国境を越えて大規模な攻撃を開始しました。その結果、圧倒的な戦力差によりウクライナ軍は敗北し、戦局は逆転。一度は奪還した領土の多くが再びロシアに占領されました。ロシア正規軍の参戦とウクライナ軍の敗北を受けて、ウクライナ政府は和平交渉に臨むこととなりました。
本来であれば、ウクライナ領内での紛争であるため、特別な和平交渉の必要はないはずでした。国内から敵勢力を排除することは当然の権利であるからです。しかし、ウクライナが和平交渉に臨むことを選択したのは、いくつかの重大な事情があったからです。
まず、政府軍は各地で分離派民兵により包囲、寸断され、2000人以上の捕虜を取られるという深刻な状況にありました。さらには大規模な投降が発生する可能性もあったため、交渉を選択せざるを得ませんでした。
また、ウクライナの経済状況も交渉を決定付ける要因となりました。ウクライナ国庫はほぼ空となり、戦費の捻出が困難になっていたのです。さらに、ロシアからの天然ガス供給が6月16日以降代金未納を理由に停止され、冬を前にエネルギー供給が不安定となっていました。
以上のような状況下、ウクライナ政府は自国の危機を収束させるために、和平交渉を選択したと言えます。
クリミア併合からの制裁強化!対ロシア制裁が新たな局面へ突入
2014年3月、ロシアがクリミア併合を宣言したことが、「西側」によるロシアへの制裁のきっかけとなりました。これに続き、ロシアが東ウクライナに義勇兵を送り込み、都市の占拠を続けたこと、そして7月に起きたマレーシア航空機の撃墜事件にロシア義勇兵が関与している可能性が指摘されたことから、対ロシア制裁は数次にわたって強化されました。
制裁の内容は、初期段階ではロシア政府および財界要人に対する入国禁止と、彼らの海外資産の凍結が主でした。しかし、7月にアメリカが発表した追加制裁では、ロシアのエネルギー関連案件および大手銀行への融資の禁止、エネルギー開発関連技術の供与の禁止が盛り込まれました。また、EUも追加制裁を発表し、ロシアでの投資案件に対する融資の禁止を含めました。
これらの欧米諸国の制裁強化に対して、ロシア政府は報復として、2014年8月7日に米国、EU(28カ国)、カナダ、豪州、ノルウェーからの農畜産物の輸入を1年間禁止することを決定しました。さらに、欧州の航空会社が利用するシベリア上空の飛行ルートに対する飛行禁止もしくは制限の検討も報じられました。
こうした措置を通じて、欧米諸国とロシアの対立は、「経済制裁の応酬」という新たな段階に突入したといえるでしょう。両者の間で高まる緊張は、国際政治における新たな混乱を引き起こし、地政学的な影響を及ぼすことになりました。
緊張の中での再会へ!ウクライナ・ロシアがミンスクで会談へ
2014年8月、親ロシア派との戦闘を続けるウクライナ政府軍は、その攻勢を強化しました。この緊張した情勢の中、ウクライナとロシアの両政府は8月19日に、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領とウクライナのペトロ・ポロシェンコ大統領が8月26日にベラルーシの首都ミンスクで3か月ぶりに会談すると発表しました。
ドイツのアンゲラ・メルケル首相はこの会談について、大きな進展を期待していないとしながらも、「解決策を見つけるためには話し合いが必要だ」との見解を示しました。また、メルケル首相はウクライナとロシア間の天然ガス供給問題について、冬の到来という時間切れが迫っていると警告しました。彼女は、「まだ緊急事態には至っていないが、時間的制約により交渉を近く終える必要がある」と述べました。
一方、フランスのローラン・ファビウス外相は、ウクライナがロシアとEUとの良好な関係を持つ必要性を強調しました。彼はこの課題について、「達成は容易ではないが、フランスはロシアとウクライナの間の緊張緩和に寄与する」と表明しました。
団結と分裂!独立記念日の祝賀と東部の「敗戦パレード」の対立
2014年8月24日、ウクライナの首都キエフでは国の独立記念日の祝賀式典が盛大に行われました。兵士たち、ミサイル、装甲車両が中心部をパレードし、その壮大な光景は国民の自由と独立を象徴していました。これらの一部は今後、東部の前線に送られることとなっています。
一方、この祝賀式典とは対照的に、ウクライナ東部の親ロシア派「ドネツク人民共和国」も独自のパレードを強行しました。このパレードでは、戦闘で捕虜にしたウクライナ政府軍の約50人が銃を突きつけられ、ドネツク市を行進させられるという「敗戦パレード」が展開されました。親ロシア派がこのような行動を取ったのは、キエフで行われた軍事パレードに対する反発と、自身の存在を示す目的があったと考えられます。
しかし、この「敗戦パレード」は、ジュネーブ条約で定められた捕虜の人道的取り扱いに違反しており、国際社会からは厳しい批判が寄せられています。なお、ロシアも含めて多くの国がジュネーブ条約を批准しています。
現地報道によれば、「敗戦パレード」を見ようと、人民共和国の支持者ら約3000人が沿道に集結したとのことです。パレードの間、見学者からは捕虜たちへ罵声が浴びせられ、瓶が投げつけられるなどの混乱が見られました。
また、パレードが行われる直前に、ドネツク市内最大の病院の一つが攻撃を受けるという事態も発生しました。これについてウクライナ当局は、民間人の居住地域を攻撃することはないとして政府軍の関与を否定しています。
プーチン・ポロシェンコ両大統領が直接対話!ミンスクでの会議が実現
2014年8月26日から27日にかけて、ベラルーシの首都ミンスクでウクライナ情勢の安定化に向けた関係国会議が開催されました。会議にはウクライナのポロシェンコ大統領、ロシアのプーチン大統領、ベラルーシ、カザフスタンの各国大統領、そして欧州連合(EU)のアシュトン外交安全保障上級代表が出席しました。主にウクライナ東部の安定化とウクライナとEUの連合協定の課題について協議されました。
会議の冒頭で、ポロシェンコ大統領とプーチン大統領は握手を交わし、ロシア、ベラルーシ、カザフスタンが組成するユーラシア関税同盟の関連会議の場で会談が実現しました。両首脳が直接顔を合わせるのは、2014年6月以来でした。
ポロシェンコ大統領は、「今回の目的は流血を止めるためにできうる全てのことを行うことと、政治的妥協を見つけるためのプロセスを始めることだ」と述べ、和平への積極的な取り組みを強調しました。一方、プーチン大統領は、「武力行使の拡大だけで、紛争を解決することはできない」と応じ、親ロシア派に対するウクライナ政府の軍事作戦を批判しました。
この会議は全体で6時間にわたり行われ、その後、プーチン大統領とポロシェンコ大統領が1対1でさらに2時間会談しました。こうした会議を通じて、「話し合いによってウクライナ危機に対する新たな政治的解決策に向けた機運を高められるかどうか見極める」(アシュトン氏の報道官)という期待が寄せられています。
供給問題の再開!ウクライナとロシアのガス協議が前進
プーチン大統領は会談の後で、「ロシアはウクライナの和平プロセスのためにあらゆることをする」と強調しました。しかし、彼は「ロシアとウクライナには多くの未解決の問題がある」と述べ、停戦を実現するためにはさらなる協議が必要であると認識を示しました。
ベラルーシのルカシェンコ大統領も、「意見の違いは大きかったが、今回は会合を開催できただけでも成功だった」と強調しました。そして、ウクライナの和平のための連絡グループの会合が週内にもミンスクで開かれるとの見通しを示しました。
協議後、ポロシェンコ大統領は「一定の成果」が得られたと述べましたが、ウクライナ東部で4か月間続く政府軍と親ロシア派勢力との衝突の終結に向けた大きな妥協には至りませんでした。
また、両氏はロシア産天然ガスのウクライナへの供給問題に関する協議を再開することで一致しました。ロシアは6月に代金未払いを理由にウクライナへのガス供給を停止しており、これによりウクライナを経由してガスを受け取る欧州各国への悪影響が懸念されていました。
矛盾する発言と現実の状況!プーチンの行動にウクライナの懸念
プーチン大統領は、8月27日早朝の会談でドネツクとルガンスク地方の戦闘終結へできる限りのことをすると再度表明していました。しかし、ウクライナの当局者は実際には全く逆の行動を取っていると非難しました。
ロシア軍の兵士が分離主義武装勢力に加勢し、ウクライナ政府軍に対して新たな戦線を開いていると、ウクライナ軍のリセンコ報道官は述べています。また、ウクライナ軍はロシア領内から「激しい」砲撃を受けているとの報告があります。
プーチン大統領のこうした行動はすでにパターン化されているとも言えます。クリミアを併合する考えはないと述べながら同半島を併合し、スイスで緊張緩和を約束した後も、戦闘は激化しました。
ウクライナ政府の非難!ロシア軍の介入に対する声”
ウクライナ政府は、ロシア軍の介入に対して非難の声を上げています。8月26日には、ロシア軍兵士10人を拘束したとも発表していました。これに対し、ロシアの国営メディアは、同国の国防省筋の情報として、これらの兵士は国境地帯を警戒中に偶然越境した可能性があると報じていました。
さらに、「ウクライナスカヤ・プラウダ」紙の8月26日付けの記事によれば、ロシア軍は25日の夜に戦車や装甲車など30両をウクライナ領内に進入させ、国境沿いの6つの村を占拠したと報じています。各村落には、戦車3両と装甲兵員輸送車2両から成る小グループが配備されているとのことで、これらは後続部隊を受け入れるために国境を確保する橋頭堡としての役割を担っていると考えられます。
ポロシェンコ大統領がロシアの軍部隊進入を非難!
ウクライナのポロシェンコ大統領は8月28日、親ロシア派の支援のためロシア軍部隊がウクライナ領内に進入したとして、強く非難しました。ウクライナ軍の大隊副司令官は、ドネツク州での任務に就いており、今回の交戦を「全面的な侵攻」と形容しました。
戦闘はドネツクの南東部と、ロシアからの国境線から約20キロ離れた同州南部のアゾフ海沿いに位置するノボアゾフスクで発生しました。ウクライナ政府側の部隊の戦闘員はロイターの電話取材に対し、「2日前にロシアから国境を越えて運ばれた軍装備品がノボアゾフスクにある」と述べました。
ウクライナ政府の発表によれば、ロシア軍の支援を受けた親ロシア派は、アゾフ海沿岸の主要都市ノボアゾフスクを支配下に置き、他の南東部の一部地域を制圧しました。また、ロシア軍と親ロシア派の攻撃は続いているとのことです。
ウクライナ政府軍は東部ドネツクやルガンスクで親ロシア派を追い詰めるなど、政府側に優位な展開を見せていました。しかし、今週に入ってから親ロシア派が勢いを盛り返しています。
それに対してロシア側は、自軍がウクライナへ越境したという事実そのものを否定しています。この対立状況は両国間の緊張を高めており、解決への道筋は見えていません。
対ロシア追加制裁の警告!オバマ大統領の発言と対ロシア協議の予定
8月28日、アメリカのホワイトハウスで行われた緊急の記者会見において、オバマ米大統領はウクライナ東部で活動する親ロシア派武装勢力が「ロシアによって訓練を受け、武器供給を受け、資金支援を受けている」と指摘しました。さらに「ロシアのウクライナ侵攻はさらなる代償と結果を招く」と述べ、対ロシア追加制裁の実施を警告しました。
来月にはウクライナのポロシェンコ大統領とホワイトハウスで会談を行い、具体的な対応を協議する予定です。また、ドイツのメルケル首相との電話会議でも、欧米が追加制裁を検討する必要があるとの認識で一致しました。オバマ氏はこれまでの欧米の制裁によって、「ロシアは冷戦終結以降で最も孤立している」と認識しています。
9月4日から5日にかけて開催されるNATO首脳会議では、ウクライナとの協力強化に向けた「さらなる措置が焦点になる」との見解を示しました。
国連安保理の緊急会合!潘基文事務総長の声明とフェルトマン事務次長の指摘
一方、国連安全保障理事会は同日、ウクライナの要請を受けて緊急会合を開いた。事務総長の潘基文は「国際社会は状況のさらなる悪化を容認できない」との声明を発表しました。事務次長のフェルトマンは、ウクライナ東部の戦闘にロシア軍の部隊が加担したとの指摘に対して、「事実であれば国際法と国連憲章に違反する」と述べた。ただし、ロシア側はこれを全面否定しています。
NATO当局者は1,000人を超えるロシア軍部隊がウクライナに侵入したと指摘しています。ウクライナとロシアは26日の首脳会談で停戦協議を再開することで合意しましたが、状況は依然として予断を許さない状況となっています。
迫りくる危機!ウクライナ東部で拡大するロシアの軍事侵略に国際社会が警戒
ウクライナ東部情勢について、英政府筋は2023年8月29日にCNNへの取材で、ロシア軍要員約4000~5000人がウクライナに侵入したと明らかにしました。これらの要員は部隊として編成され、東部のルガンスクおよびドネツクの両州で戦闘に参加しており、ロシアの軍事侵攻が拡大しているとの指摘がありました。
さらに、ロシアの国境周辺には約2万人の兵士が集結しており、増員の可能性も示唆しています。英政府筋によれば、これらの要員の主な任務は親ロシア派武装勢力を支援し、ウクライナ政府に対する圧力を維持することとされています。ただし、ロシアがウクライナとの国境地帯から併合したクリミア半島への地上ルートを構築する野心的な意図も否定できないと英政府筋は分析しています。
ロシアによるウクライナへの軍事介入については、北大西洋条約機構(NATO)が先にロシア軍部隊がウクライナ内に侵入したとする衛星写真を公開していました。これに対し、ロシアのラブロフ外相はこれらの写真を「コンピューターゲームから借りた画像」として一蹴し、ロシア軍のウクライナ侵入を否定していました。
プーチン大統領の新たな提案!包囲されたウクライナ軍への人道回廊設置を呼びかけ
ロシアのプーチン大統領は2023年8月29日、戦闘が続くウクライナ東部の状況について、包囲されているウクライナ軍部隊のための「人道回廊」を設け、安全な退却を認めるよう親ロシア派武装勢力に呼びかけました。ロシア大統領府はこの要請を同日未明に発表しました。
プーチン大統領がウクライナ国内の戦闘に関して具体的な行動を親ロシア派に要請するのは初めてです。ウクライナのメディアによると、親ロシア派は今週から反転攻勢に出て、東部ドネツク州のイロワイスクなどでウクライナ軍の多くの部隊を包囲しています。
欧米諸国はロシアが親ロシア派への本格的な軍事支援を開始したとして、その行動を強く批判していました。プーチン大統領がウクライナ軍兵士への人道的な処遇を求めるこの呼びかけの背景には、ロシアに対する高まる国際的な批判を和らげる意図があるとみられます。
ウクライナ東南部での緊迫!マリウポリ要衝を親ロシア派がほぼ包囲
親ロシア派武装勢力が勢いを増し、8月29日にはウクライナ東南部、アゾフ海に近い要衝の港湾都市マリウポリを「ほぼ包囲した」と報じられました。
この事態に対しウクライナのペトロ・ポロシェンコ大統領は、8月30日、ベルギーのブリュッセルで行われているEU(欧州連合)首脳会議に出席。ウクライナの現状について説明し、「後戻りできない状況に迫っている」と強く非難。ウクライナ東部にロシア軍が侵攻しているという状況を訴え、「ロシア軍の侵略とテロの犠牲となっている」と述べました。
EUのホセ・マヌエル・バローゾ委員長は30日、「EUはロシアに対してより厳しい制裁を行う用意がある。しかし、EUは一方でウクライナとロシアが衝突を終わらせる政治的合意を求めている」と述べました。
この頃、「テロリストとは交渉をしない」と親ロシア派との交渉を断固拒否してきたウクライナ政府も、親ロシア派が優勢の中で和平を結ぶ以外の選択肢がなくなっていました。
欧米の結束固まる!ロシア包囲網の強化が進む
アメリカのバラク・オバマ大統領は、ロシアに対する圧力を増すため、9月3日にエストニアでバルト3国の首脳と会談を行いました。黒海を含むこの地域での軍事支援の強化を表明したオバマ大統領の視線は明らかにモスクワに向いています。
同日、フランスはロシアへの強襲揚陸艦の納入を今年秋から延期する方針を示すなど、欧米側はロシア包囲網の強化に動いています。
北大西洋条約機構(NATO)のアンダース・フォグ・ラスムセン事務総長は、「ロシアが停戦に深い関心を持っているとは思えない。ウクライナ東部を不安定化させ続けたいだけだ」と指摘しました。
プーチンの戦略的な動き…オバマへの反撃で停戦案を準備
一方、ロシアのプーチン大統領は、このオバマ大統領の動きに対し素早く反撃し体勢を入れ替えました。ウクライナとの停戦合意という手を打つタイミングを見計らい、その決断は鮮やかに決まりました。
プーチンはモンゴルを訪問中でしたが、モスクワからの機上で7項目にわたる停戦案をまとめていました。この動きは、「船中八策」のごとくと形容されるほど、窮地からの鮮やかな反撃と受け取られています。
プーチン大統領とポロシェンコ大統領「7項目の停戦案」に合意!
ロシアのプーチン大統領とウクライナのポロシェンコ大統領が、9月3日に電話会談を行い、ウクライナ危機の解決に向けた大筋で合意しました。
プーチン大統領はモンゴルの訪問先ウランバートルで報道陣を前に、ポロシェンコ大統領に対して7項目の停戦案を示したと述べ、9月5日の協議で「最終的な合意がウクライナ政府と東部の親ロシア派との間で達成できると思う」と述べ、強い期待を示しました。
この停戦案は、親ロシア派とウクライナ政府軍の双方の攻撃停止、人道援助のための「回廊の構築」、戦闘で損壊したインフラの復興、拘束された兵士の交換など、7項目から成り立っています。
プーチン大統領は、「停戦方法について、われわれ(プーチン大統領とポロシェンコ大統領)の考えはかなり一致しているように思えた」と報道陣に語り、9月5日に予定されている連絡グループの会合で、ウクライナ政府と親ロシア派の間で合意が達成されるとの見方を示しました。
一方、ポロシェンコ大統領は、プーチン大統領との和平に向けた措置で「相互理解」に達したと述べ、9月5日の協議で「和平プロセスがようやく始まる」ことに期待を示しました。しかし、政府軍だけが撤退するよう求めていることから、ウクライナ側は「親ロシア派を保護するための計画のようなものだ」と強く反発しています。したがって、停戦が実現するかどうかはまだ不透明な状況でした。
「 ミンスク1(ミンスク議定書)」停戦・和平に向けミンスクで会談
ウクライナ政府がこれまで「テロリストとは交渉しない」としてきた親露派と同じ交渉のテーブルについたことは、ウクライナ危機の解決に向けた重要な転換点となりました。ウクライナ政府の代表として交渉に臨んだのは、前ウクライナ大統領のクチマ氏であり、現職者を交渉に参加させないことで、ウクライナ政府側が何とか面子を保とうとしたと考えられます。
親露派を代表したのは、「ドネツク人民共和国」のザハルチェンコ首相とプルギン副首相、そして「ルガンスク人民共和国」のリーダー格であるプロトニツキー氏です。この交渉には仲介者として、キエフに駐在するロシア大使のズラボフ氏とOSCEのタリヤヴィニ特別代表が立ち会いました。
親露派の指導者たちは9月5日に、ウクライナからの分離を望む気持ちは変わっていないと述べました。
ウクライナ和平の鍵!プーチン提案の12項目
ミンスクでの停戦協議では、ウクライナ政府代表とドネツク州、ルハンスク州の「人民共和国」代表が、プーチン大統領が提案した案を基礎に協議を行いました。駐ウクライナのロシア大使と欧州安全保障協力機構(OSCE)代表が立会人となり、ウクライナ政府代表と分離派代表が協議文書に署名したのです。ロシアはこの紛争の当事者ではなく、OSCEと共に停戦の仲介者となりました。
OSCEが公表した停戦合意文書の内容は、ウクライナ軍の撤退ではなく、「違法な武力集団、武器、傭兵のウクライナからの撤退」が含まれていました。これはロシアの義勇兵やウクライナの極右集団について言及したものと思われます。
最も重要な内容としては、「ドネツク、ルハンスク両州の特定の地域に暫定的自治権を与える法律を制定する」ことが明記され、大幅な自治権を持つ「特別な地位」を認めることが盛り込まれていました。
最大の焦点となるドネツク、ルガンスク両州の統治体制については、「特定地域に暫定的自治権を付与する特別な地位に関する法律を定め、地方分権を実施する」とされました。この「特別な地位」は高度の自治権獲得を目指す親ロ派が要求していたもので、親ロ派が掲げていた自治体の繰り上げ選挙の実施も合意に盛り込まれました。
この協議は、9月5日に調印され、詳細部分は大部分がウクライナ大統領のポロシェンコ氏が6月20日に出した「15項目の講和案」に類似していました。
合意の詳細
その内容は12項目に及び、9月3日にプーチン大統領が提案した行動計画を受け入れる形をとりました。主な項目としては以下のようなものがあります。
- 停戦および兵器の撤収
- OSCEによる停戦の監視
- 拘束された兵士や戦闘員の交換
- ウクライナ東部への人道支援
- ドネツク・ルガンスク両州の一部地域における自治に関する法律の制定(特別地位)と脱中央集権化
- 同法による地方選挙の前倒し実施
- 両州で起きた事件の関係者の訴追・処罰をしないこと
これらの和平交渉により、ウクライナ危機は新たなフェーズに入りました。
“ATOの迅速な対応!ウクライナ危機に向けた新たな一歩
しかし、9月4日と5日にウェールズ南部で開催された第26回NATO首脳会議では、ロシアの代表団が参加しませんでした。これは冷戦が終わってから初めてのことでした。北大西洋条約機構(NATO)は、この会議で数千人規模の新たな即応部隊の創設を承認しました。この即応部隊の創設により、NATOは東欧で継続的に存在感を示すことで、ウラジーミル・プーチン露大統領を恐れる旧ソ連構成国に安心感を提供しようと試みています。
ウクライナと親ロシア派は欧州安保協力機構(OSCE)が示した停戦条件に基づいて、部隊の撤収、捕虜の交換、そしてウクライナ東部の戦禍を被った地域への人道的支援の提供に合意しました。
NATO首脳会議の閉幕後、オバマ米大統領は、「ロシアによるウクライナ侵攻は健全で、自由で、平和な状態にあるべき欧州の未来図を脅かしている」と主張しました。また、ロシアが反発するウクライナのNATO加盟問題についても言及し、「同盟への加入の機会は我々の高い基準を満たす諸国には常に開かれている」と述べました。
議定書調印後もたびたび休戦違反 「ミンクス覚書」を調印
ミンスク議定書の調印から2週間経過したが、両勢力、ウクライナ政府軍と親ロシア派武装勢力は、停戦規定にたびたび違反しました。停戦が発効した5日以降、ウクライナ東部のドネツク州とルガンスク州の多くの町で戦闘が一旦は止んだものの、少なくともドネツク州の2つの町では戦闘が続いています。
ウクライナ軍が死守しているドネツク空港周辺や、ウクライナ軍が掌握しているマリウポリ郊外の検問所でも戦闘が発生しています。停戦協定発効後、マリウポリ市では女性1人が死亡し、3人が負傷したと市当局が明らかにしました。
終わらない戦闘を受けて、ミンスクでの会談は続けられ、ミンスク議定書に続くミンスク覚書が2014年9月19日に調印されました。ウクライナ政府と同国東部の親ロシア派は9月20日朝までに、戦闘を完全に停止し、緩衝地帯を設けるなどの9項目の措置を取ることで合意しました。また、ウクライナ政府軍と親露派は21日未明までに撤退し、前線に沿って緩衝地帯を設け、OSCEが停戦監視団を配置することになりました。
北大西洋条約機構(NATO)欧州連合軍のフィリップ・ブリードラブ最高司令官は、停戦合意が「名ばかり」であることを指摘し、ロシアがウクライナの分断を狙って自国の兵士を親露派に関与させていると非難しました。しかし、同時にブリードラブ司令官は、ウクライナ政府と親露派の交渉について「双方が新たな停戦実現に向けて合意できることを心から期待し、願っている」と述べました。
また、OSCE議長国スイスのディディエ・ブルカルテル大統領は、「停戦を持続可能なものとする重要な一歩であり、危機の平和的な解決に向けた努力への大きな貢献」として、ミンスクでの交渉を歓迎しました。
ミンスク合意破綻!ドネツクでの砲撃で10人死亡、停戦の絶望的な現実
10月1日ウクライナの親ロシア派が支配する東部ドネツク市で、学校とバス停が砲撃を受け、教師や保護者を含む10人が死亡しました。この攻撃は、ウクライナ政府と親ロシア派が9月に停戦合意を結んだ後、一回の攻撃による最多の民間人犠牲者数を記録しました。
加えて、10月20日には親ロシア派の会見中に突然爆発が発生しました。市内の化学工場近くなどで複数の爆発が起き、会見が行われていた建物の窓ガラスが爆風で吹き飛びました。親ロシア派は「ウクライナ軍の短距離弾道ミサイルによる攻撃」と主張していますが、ウクライナ軍は関与を否定しています。
また、ウクライナ軍が同国東部で親ロシア派に対し、殺傷能力の高いクラスター爆弾を使用したという報告もありました。これに対して、ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)はウクライナ政府軍が10月20日初めにクラスター爆弾を使用し、少なくとも6人が死亡、数十人が負傷したとする報告書を発表しました。死者には一般市民や、国際赤十字の職員も含まれているとされています。
これに対し、ウクライナのセルゲイエフ国連大使は10月21日、同国国防省の公式見解として「クラスター爆弾を東部の対テロ作戦で使用した事実はない」と述べました。しかし、ヒューマンライツウォッチや国連当局者がウクライナ軍のクラスター爆弾の使用に懸念を表明しているため、この問題についてはまだ不透明な点が多い状況です。
このように、ミンスク議定書・ミンスク覚書による停戦合意が結ばれたにもかかわらず、ウクライナ東部での戦闘は止まらず、合意は破綻してしまいました。この結果、地域の人々は引き続き恐怖と不安に直面し、その生活は一層困難になりました。
新たな停戦が発表!ウクライナ政府と親ロシア派の合意で戦闘終結
12月4日、ウクライナ政府と親ロシア派武装勢力が新たな停戦合意を結び、それが12月9日から施行されることが明らかになりました。この発表はウクライナのペトロ・ポロシェンコ大統領と親ロシア派武装勢力の幹部2人によって行われました。
新たな停戦期日は、今年9月5日にベラルーシの首都ミンスクでロシアと欧州の特使らの仲介で結ばれた停戦合意の一部として決められていたとみられますが、その期日が明らかにされたのは今回が初めてです。
ポロシェンコ大統領は、「12月9日に始まる予定の『静粛の日』に関し、ミンスク協定を確実に順守していくための措置」の準備を進めてきたと述べました。大統領府の関係者によれば、この発言は、親ロシア派側が停戦を破らなければ、政府軍は東部戦線に配備した重火器を10日から撤収することを意味しているとのことです。
この新たな停戦合意は、再び戦闘の終結と地域の安定をもたらす可能性を持っています。しかし、前回の停戦合意が破られた経験から、合意が順守されるかどうかは注視すべき問題となっています。今回の停戦が成功し、長期的な平和がもたらされることを、世界中の人々が期待していました。
深刻な事実が明らかに!ウクライナ紛争で双方が市民を危険に…。
12月15日、国連(UN)はウクライナ東部で続く政府軍と親ロシア派武装勢力による紛争について、双方が市民を拷問し、無差別に攻撃していると非難する報告書を公表しました。国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)は、「住民らにとって、特に高齢者や子どもたち、福祉施設などで支援を受けている人々にとって、極めて厳しい状況になっている」と警告しています。
この27ページの報告書では、人道的危機を招いたのは、親欧米派の政権側と今年4月に蜂起したロシア系の武装勢力、双方が関与していると非難しています。これは、単なる一方的な問題ではなく、双方の行動が市民を危険に晒しているという深刻な事実を示しています。
また、ウクライナ政府と親露派武装勢力は、停戦合意の実現に向けた努力の一環として、捕虜の交換を始めています。この交換は26日に開始され、27日には完了する見通しです。
翌年も続く戦闘…ウクライナ東部の人道的危機
予想に反して、2015年に入ってもウクライナ東部の戦闘は続きました。1月13日には、親ロシア派武装勢力が発射したとされる長射程のロケット弾が都市間バスを直撃し、乗客11人が死亡、17人が負傷したとウクライナ当局が発表しました。
さらに悲劇は続き、政府軍が拠点とする港湾都市マリウポリで、ロケット弾による攻撃が行われ30人が死亡しました。この攻撃について、国連安全保障理事会は1月26日の緊急会合で非難しました。ロケット弾は親ロシア派の武装勢力が制圧している地域から発射されたもので、明らかに民間人を狙っていたとして、国際人道法に違反すると断じました。
このような戦闘が続く中、1月31日にはウクライナ政府と親ロシア派勢力がベラルーシの首都ミンスクで和平協議に臨みましたが、交渉は決裂しました。
そして、2月1日には東部の交通の要所であるデバルツェボで、親ロシア派武装勢力と政府軍の間で戦闘が激化しました。この地点の支配権争いが続くなかで、民間人の安全が更に脅かされています。戦闘の続くウクライナ東部での人道的状況は厳しく、和平への道のりは依然として遠いようです。
闘が続くウクライナ東部での死者37人!和平への望みは…。
2015年2月10日には、クライナ東部の政府軍司令部へのロケット攻撃などが発生しました。この日だけでも少なくとも37人が死亡し、戦闘の激化が示されました。
親ロシア派勢力が包囲を主張しているデバルツェヴォでは、政府軍の兵士7人と市民8人が死亡。また、親ロシア派勢力は自陣営の戦闘員7人が死亡したとも明らかにしました。これは稀な事例であり、戦闘の厳しさを物語っています。
このような激しい戦闘が続く一方で、外交官らや欧州安全保障協力機構(OSCE)の仲介者らはベラルーシの首都ミンスクで双方の溝を埋めるための交渉を続けました。戦場と交渉室で同時に進行するこれらの出来事は、ウクライナ東部での紛争が緩和することを期待させる一方で、その道のりの困難さも示しています。
「ミンスク2(ミンスク協定遂行措置)」徹夜で停戦案に合意!!
ウクライナ東部での戦闘の激化に対応するために、2015年2月11日の夜にベラルーシの首都ミンスクで開始されたウクライナ、ロシア、ドイツ、フランスの首脳による4カ国首脳会談が開催されました。この交渉にはウクライナのポロシェンコ大統領、ドイツのメルケル首相、フランスのオランド大統領、そしてロシアのプーチン大統領の4人が参加しました。
ウクライナ危機に関する基本的な立場から見れば、3対1の対抗図式、つまりプーチン大統領対他の3者という形が予想されました。しかしながら、実際のところ、ウクライナで和平が成立するかどうかは、プーチン大統領の次第であるとの見方が一般的でした。
4首脳による不眠不休の16時間
この会談は、ドイツとフランスが仲介役を務め、16時間という驚異的な長時間に及びました。その間、4首脳はほとんど休憩を取らずに議論を続けました。同時に、ウクライナと対話を行うための枠組みも非常に複雑でした。
ウクライナは4カ国首脳会談の枠組みでドイツ、フランス、ロシアの首脳と話し合い、一方で親ロシア派武装勢力「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」の代表者は別の枠組みである「3者コンタクトグループ」でウクライナ代表と交渉を行いました。この3者コンタクトグループにはロシア代表と全欧安全保障協力機構(OSCE)の代表も出席しました。
ウクライナ合意の壁!ロシアへの優遇か、ウクライナの懸念か?
合意の実行に向けた議論の中心は、ウクライナ東部で親ロシア派武装勢力が占領する2つの地域に「特別な地位」を与え、広範な自治権を認めることでした。しかし、ウクライナはこの内容に対し、事実上ロシアが実効支配を持つ結果につながるとして警戒感を示しました。さらに、ウクライナ国内からは、この合意がロシアに有利な内容であるとの不満も出ていました。
一方、ロシアはウクライナが合意の実行に消極的であり、武力解決を試みていると主張しました。ロシアは自身が「紛争の当事者ではない」との立場を保持し、合意に記載されているウクライナ領内からの外国部隊や雇い兵の撤退、そしてウクライナ政府による国境管理の回復なども進んでいませんでした。
この合意の適用は、ウクライナ情勢の緊張緩和へとつながるカギを握ると考えられていました。しかし、それぞれの当事者の見解の相違と警戒感があいまいさを生じさせ、実施の道のりは困難なものとなりました。
“ウクライナ停戦合意成立!プーチンの笑顔とポロシェンコの渋い表情
2015年2月12日、ベラルーシの首都ミンスクで行われたロシア、ウクライナ、ドイツ、フランスの首脳による会談で、16時間に及ぶ難航した交渉の末にウクライナ東部での停戦に関する合意が成立しました。この合意は、1月から再燃していたウクライナ東部での紛争の停戦に向けた道筋を示すものであり、親露派武装勢力「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」の代表者もウクライナ代表との別途行われた会談でこれに署名しました。
しかし、首脳たちの反応は分かれていました。会談後の会見で、ロシアのプーチン大統領は笑顔を見せる一方、ウクライナのポロシェンコ大統領は渋い表情を崩しませんでした。
ロシアの主張を反映した「ミンスク2」の合意
「ミンスク2」は、「ミンスク1」が定めた内容を基本的に踏襲しており、特に停戦の維持、国境の不変、及びウクライナの連邦制導入を含む地方分権という要素はロシアの主張に基づいており、この協定は、ウクライナの地方により多くの自律権を与えることで、親ロシア派の反乱分子が支配する地域の自主性を認めるというロシアの立場を反映しています。そのため、この合意によってロシアが失うものは特にありませんでした。
ポロシェンコ大統領の意思とウクライナの未来!ミンスク合意での妥協点
一方、ウクライナのポロシェンコ大統領は、EUやNATOへの加盟を目指してロシア及び親ロシア派と対立してきました。ドネツクなどに高度な自治権を認めると、ロシアの影響力が残ることになるため、ポロシェンコ大統領は連邦制の導入に消極的でした。そのため、ウクライナ政府にとっては、「ミンスク2」は不満を残すもので、これ以上の戦闘を回避するための妥協点といえます。
しかし、ウクライナ側が一方的に折れたわけではありません。1月半ばには、プーチン大統領がウクライナの「中立化」(NATOへの非加盟)を主軸とする停戦合意を秘密提案していましたが、この提案はウクライナにとって受け入れがたいものでした。ポロシェンコ大統領は交渉に際し「ロシアの提案には受け入れがたい部分がある」と述べ、最終的な合意文書に「中立化」は含まれませんでした。これにより、ウクライナは自国の西向きの政策路線を保持し続けることが可能となりました。
「ミンスク2」の実行への期待と現実
「ミンスク2」に基づき、2月15日午前0時からの停戦が発表されました。その後、戦闘は全般的に下火になっていると報じられていましたが、前年9月の「ミンスク1」が完全には履行されなかった経験を踏まえ、この新たな和平合意が実際に履行されるかどうかについては、当事者を含めて楽観的な見方はあまりされていませんでした。
国連安保理が全会一致で支持するウクライナ停戦合意
2月17日、国連安全保障理事会は、ウクライナ東部の和平実現に向けた停戦合意を支持する決議案を全会一致で採択しました。この決議案は、常任理事国であるロシアが提出し、すべての当事者に合意内容の遵守を求めるものでした。
ウクライナ東部で戦闘を繰り広げている反政府勢力がロシアの支援を受けていることを背景に、米国のパワー国連大使はこの決議案を「皮肉だ」と指摘しました。「ロシアは合意し、それを損ねるためにあらゆる手を尽くす。ロシアは国家の主権を支持した上で、隣国の国境が存在しないかのように振る舞う」と彼女は強く批判しました。
一方、ロシアのチュルキン国連大使は、「危機が発生した当初から、ロシアはウクライナでの紛争当事者らに対して、包括的で透明性の高い対話を通じて平和的な解決を目指すよう積極的に促してきた。今後もこの基本的なアプローチを堅持する」と述べました。
安全保障理事会は決議案採択の直前に、すべての当事者に戦闘の停止を呼びかける報道声明を発表しました。この声明は英国が作成したもので、ドネツク州デバリツェボ周辺で戦闘が続いている事態に対する深い懸念を表明しています。
また、安保理会は昨年の2014年7月に採択した、マレーシア航空機が墜落したウクライナ東部の現場への立ち入りを求める決議案を再確認しました。
ウクライナ東部での停戦発効!しかし戦闘は続く
2015年2月15日午前0時(日本時間午前7時)、ウクライナ東部で政府軍と親ロシア派の間の停戦が発効しました。ウクライナのポロシェンコ大統領と親ロ派トップは14日夜までに、それぞれの部隊に停戦を命令しました。しかし、戦闘は沈静化するか否かは未だ予断を許さない状況でした。
停戦合意からわずか20分で攻撃発生!和平への不透明感が浮き彫りに
ルガンスク州当局によれば、政府軍が支配する同州ポパスノエは、停戦発効約20分後に砲撃され、2人の住民が死亡しました。「ミンスクで調印された和平合意が、厳格に履行されるという強固な確信を誰も持っていない」とポロシェンコ大統領は述べました。
停戦発効後、合意文書をまとめた4カ国の首脳(ウクライナ、ロシア、ドイツ、フランス)は電話で協議し、停戦合意の履行状況を確認する予定だとロシア大統領府の報道官が明らかにしました。しかし、ウクライナ軍当局は停戦後も親ロシア派から100回以上の攻撃を受けたと指摘しています。これにより、停戦が守られていない状況での重火器撤去は困難であると表明しています。一方、親ロシア派も一方的な撤去はできないと主張しています。
停戦合意では、双方が停戦2日目の16日までに重火器撤去を開始するよう義務付けていますが、ポロシェンコ大統領は電話協議で「撤去には完全かつ無条件の停戦が必要」と強く訴えています。
親ロシア派にとっての重要都市デバリツェボで激しい戦闘が続く
デバリツェボはロシアやウクライナの主要都市を結ぶ鉄道が交差する重要な位置にあり、また東部2州の親ロシア派支配地域を結ぶ幹線道路も通っています。この地域は親ロシア派地域に食い込む形で位置しているため、軍事的な弱点となっています。
停戦合意を実施するため、関係国首脳は電話で再協議することも申し合わせましたが、親ロシア派は「包囲された領域は停戦ラインに当たらない」と主張し、15日以降も政府側への攻撃を続けていました。
デバリツェボはウクライナ政府軍が約6000人の兵力で守っていましたが、現在では親ロシア派軍に包囲され、補給も脱出もできない状態にあります。デバリツェボが陥落し、多くの守備兵が捕虜となれば政府軍の敗北は明確となるだけに、ドイツのメルケル首相やフランスのオランド大統領は急遽停戦仲介に乗り出しました。
ポパスノエやドネツク州ゾロトエなどでは、砲撃を受け、政府軍は停戦違反を欧州安保協力機構(OSCE)に報告しました。ポロシェンコ大統領は「親ロシア派のデバリツェボ攻撃で和平プロセスは崩壊の危機にある」と非難しました。大統領は2月14日、停戦が失敗に終わった場合、全土での戒厳令発令もあり得ると警告していました。
2月17日には、デバリツェボで包囲された政府軍部隊と親ロシア派の戦闘が激化しました。親ロ派がデバリツェボの相当部分をほぼ制圧したとの情報もあります。
ウクライナ政府軍の当局者は2月17日、「敵がどう試みてもウクライナ軍は決して降伏しない」と表明しました。しかし、前日からの24時間で政府軍が17回の停戦違反を犯したと親ロシア派は非難しています。このような状況の中、停戦合意を守っていないとして、ウクライナ高官はロシアを批判しました。
一方、親ロシア派幹部は同日の午前、「デバリツェボは我々の領土であり、戦いをやめることはできない」と訴えています。
ウクライナ軍が「デバリツェボ」で敗北、撤退開始
ウクライナのポロシェンコ大統領は2月18日、東部の町デバリツェボから政府軍を撤退させることを明らかにしました。デバリツェボの制圧は親ロシア派にとっての勝利であり、ウクライナ政府にとっては大きな打撃となります。
親ロシア派は、停戦ラインが示された時点でデバリツェボを自分たちの支配地域とみなしていました。これに対して、ウクライナ政府がどのような対応を取るのかはまだ明らかになっていません。
大統領の声明によれば、政府軍は「デバリツェボは我々が掌握していた。包囲網はなかった。我が軍は計画的、組織的に、全重火器を持って同地を去った」としています。また、残る部隊も新しい防衛線まで撤退させるとのことです。大統領によれば、すでに80%の部隊が武器を携行して撤退し、さらに2部隊が撤退する予定だと言われています。
親ロシア派の支配が決定的になったことにより、欧州連合(EU)のモゲリーニ外交安全保障上級代表は、親ロシア派がデバリツェボで停戦合意に違反したと非難しました。そして、戦闘が続けばEUが「適切な行動」を取ると表明しています。
ウクライナ大統領府によると、ポロシェンコ大統領は戒厳令を出す用意があるとも述べています。デバリツェボの事実上の陥落を受けて、政権の求心力が低下することを避けるための対策と見られています。
親ロシア派が「デバリツェボ」を制圧、重火器撤去を開始
同日、デバリツェボを制圧した親ロシア派が停戦合意に従って前線からの重火器撤去を開始したと発表しました。これと並行して、ロシアのラブロフ外相は同日、デバリツェボを除くウクライナ東部のほぼ全域で停戦が実現したとの見解を示しました。デバリツェボの状況は依然として不安定ではありますが、ラブロフ外相のコメントはウクライナ東部の大部分で停戦が進行しているという前向きな評価を示しています。
停戦順守を求める声上がるも「マリウポリ」で戦闘激化
ウクライナ東部の港湾都市マリウポリ周辺では政府軍と親ロシア派との間の戦闘が激化しています。2月22日には欧米諸国から停戦合意の順守を強く求める声が上がりました。しかし、双方は重火器の撤去を巡る対立を続けており、停戦の継続は不確実な状況となっています。
この東部での不安定な状況は、同日ハリコフで親ロシア派のビクトル・ヤヌコビッチ前大統領の政権打倒から1年を記念する現政権支持派のデモ行進中に爆発事故が発生し、2人が死亡する事態でより顕著となりました。この爆発はテロ攻撃と見られ、治安当局は関連して4人を逮捕しました。
停戦合意の履行不確実性とウクライナ危機の継続
ロシアのプーチン大統領は2月23日、「そのような世界滅亡的な筋書きにはならないと信じる。そこまでの事態に至らないことを願う」と語り、ウクライナ政府と親ロシア派の停戦合意が履行されれば危機は収束するとの確信を示しました。また、当面これ以上の行動は不要であるとの見方を示し、「(停戦合意の)履行を真に願う。それがウクライナ地域の正常化に向けた正しい道だ」と強調しました。
しかし、実際にはウクライナ東部では停戦発効後も衝突が続いており、ウクライナ国家安全保障国防会議は2月20日の時点で300回もの停戦違反があったと伝えています。
さらにプーチン大統領は、ロシアが昨年併合したクリミア半島についても言及。「クリミアの人たちが自ら行った選択を尊重しなければならない」と述べ、クリミア半島をウクライナに返還する意図がないことを明確にしました。これはロシアがクリミアに対する立場を変えるつもりがないことを示しており、この問題が引き続きウクライナとの緊張の一因であることを示しています。
それから数年間……。大規模な軍事衝突は減少も戦闘は継続
その後、ミンスク2の停戦合意は大規模な軍事衝突を防いできたものの、細かな戦闘は続き、死傷者数は増加していきました。2016年の終わりから2017年の初めにかけて、多数の独立分離派の要人が命を奪われ、これらはウクライナの特殊部隊による暗殺との疑惑が持たれている。2018年初頭の時点で、この紛争により1万人以上が犠牲になっていました。
更に、紛争地域の住民たちは貧困と衛生状態の劣化、政治的な抑圧に直面している。これらの状況は人道的観点から看過できない問題となっています。
「ミンスク合意の解釈の食い違い」ウクライナとロシアの対立の根源
ミンスク合意は、ウクライナの内戦を終結させるためのものでしたが、その履行についての見解は、ウクライナとロシアとで大きく異なっていました。ロシアはミンスク合意の履行を繰り返し強調する一方、ウクライナは否定的な立場を取りました
この理由は、ミンスク合意が単なる停戦合意にとどまらず、地方分権化を進める条項やドンバス地域の特別な地位、つまり強い自治権を認める条項などを含んでいるからです。ロシアは、ドンバス地域の自治が確立すれば、ロシア系住民の権利が保護されると見ていました。その一方で、ウクライナはこの合意により、自身の国内における支配力が削がれるという危機感を抱いていました。
ロシアの目標は、親ロシア派の自治地域をウクライナ国内に残すことで、これによってウクライナに影響力を持ち続けることでした。そのためミンスク合意をロシアは積極的に推進していきました。その中で、ロシアのウクライナ批判の本質は、ウクライナ政府が停戦協定を破り、武力を用いてドネツク・ルガンスク一部地域を奪還しようとしていると感じていたからでした。
この両者の見解は一致しないまま、時間が過ぎていくことになります。
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