日本の航空自衛隊が進化し、宇宙領域での活動も含むようになった「航空宇宙自衛隊」の設立について紹介しています。日本と米国が宇宙分野での連携を深めるために、米空軍基地に常駐する連絡官の派遣を検討していることや、中国やロシアが他国の衛星を無力化する技術の開発を進めていることなども取り上げています。
また、宇宙作戦隊の設立により、日本の防衛戦略が宇宙領域を含むように進化していることが示唆されています。記事を読むことで、宇宙空間での安全保障の重要性や、日本が宇宙分野での地位向上を目指す意図などを理解することができます。
KOKU-JIEITAI
航空宇宙自衛隊
航空宇宙自衛隊は、日本の航空自衛隊がさらに進化し、宇宙領域における活動を含むようになった組織です。航空宇宙自衛隊は、主に日本の領空と宇宙領域を防衛することを目的としています。その任務には、航空および宇宙における偵察、通信、監視、衛星利用などが含まれます。
「宇宙領域のための専門部隊を作る!」
2019年9月17日の午前、安倍晋三首相は自衛隊の最高指揮官として防衛省で開かれた自衛隊高級幹部会議において、航空自衛隊に新設される「宇宙作戦隊」について言及し、「航空宇宙自衛隊への進化も夢物語ではない」と述べました。彼はまた、防衛大綱で重点課題に据えられた多次元統合防衛力について触れ、「従来の陸・海・空と宇宙・サイバー・電磁波を融合させ、領域横断的な自衛隊の運用を進める」と強調しました。
アメリカの「宇宙軍」と協力!
防衛省は、宇宙分野での米軍との連携を深めるために、米空軍基地に常駐する連絡官の派遣を検討していることがわかりました。アメリカは2020年までに宇宙軍を設立し、日本は2022年度までに「宇宙領域専門部隊」を発足させる予定です。防衛省は、この目標に向けて米空軍基地への連絡官派遣を検討しています。
2019年6月4日に、岩屋毅防衛相とシャナハン米国防長官代行が会談し、宇宙分野での連携を深めることを再確認しました。この協力は、両国が宇宙での安全保障や緊急時の対応、衛星情報の共有などを通じて、互いの利益を保護し合うことができるようになることを目指しています。また、両国の宇宙分野での技術や知見の交流を促進し、宇宙開発や研究における協力を強化することが期待されています。
航空自衛隊を航空宇宙自衛隊へ!
2020年1月5日、日本政府が航空自衛隊の名称を「航空宇宙自衛隊」に改称する方向で調整に入ったことが、国内複数のメディアで報じられました。自衛隊法などの改正を経て、2023年度までの実現を目指しています。陸海空の3つの自衛隊の改称は、1954年の自衛隊創設以来初めてのこととなります。
この改称は、日本の防衛戦略が宇宙領域を含むように進化することを反映しています。航空宇宙自衛隊は、宇宙における偵察、通信、監視、衛星利用などの活動を行うことが予定されており、日本の領空と宇宙領域を防衛することを目的としています。
「航空宇宙自衛隊」に改称調整 - 政府、中ロ軍拡に対応https://t.co/dQkNXn5NuJ
— 共同通信公式 (@kyodo_official) January 5, 2020
【自衛隊高級幹部会同で安倍首相訓示】
— 産経ニュース (@Sankei_news) September 17, 2019
航空自衛隊に来年度新設する「宇宙作戦隊」に言及した上で「航空宇宙自衛隊への進化ももはや夢物語ではない」と述べ、宇宙分野の防衛力強化を指示しました。https://t.co/KaWF0IE3xs
Space Operations Squadron
宇宙作戦隊
宇宙作戦隊は、日本の航空自衛隊が宇宙領域での活動を担当する部隊で、日本の安全保障の一環として設立され、平和利用の原則に基づいて活動を行っています。
「宇宙作戦隊」の主な任務は、日本の人工衛星が宇宙ゴミや不審な衛星などの衝突や脅威から守られるよう、「宇宙状況監視」を行うことです。中国やロシアは、他国の衛星を無力化する「キラー衛星」や、地上局と衛星の通信を妨害する技術の開発を進めているとされています。宇宙作戦隊は、こうした攻撃から自国の衛星を守るための防衛策を研究することが求められます。
日本の安全保障の一環として設立され、平和利用の原則に基づいて活動を行っています。
2020年4月16日 「宇宙作戦隊」設立のための法案が可決!
改正防衛省設置法が2020年4月17日の参議院本会議で与党などの賛成多数により可決・成立しました。これにより、航空自衛隊に新たな「宇宙作戦隊」が設立されることが決定し、組織改編が進められることになりました。
宇宙分野での防衛能力強化に向けて、河野防衛大臣は、人工衛星などを監視する「宇宙作戦隊」を今月18日に発足させることを明らかにし、技術面などで民間との協力を進めていく考えを示しました。https://t.co/hva8tt68qR pic.twitter.com/U5p49h5aix
— NHKニュース (@nhk_news) May 8, 2020
5月18日(月)、 #航空自衛隊 に宇宙作戦隊が新編されました。部隊の新編に当たり、防衛大臣から宇宙作戦隊長に対して隊旗の授与が行われました。宇宙作戦隊は、府中基地において約20名で編成され、令和5年度からの本格的な宇宙状況監視の運用開始に向けた取り組みを進めていきます。 #宇宙 #府中 pic.twitter.com/PcZaglpxrN
— 防衛省 航空自衛隊 (@JASDF_PAO) May 18, 2020
<隊旗授与式>ついに「宇宙作戦隊」発足!
2020年5月18日(月)、航空自衛隊は自衛隊史上初の宇宙専門部隊となる「宇宙作戦隊(Space Operations Squadron)」を、空自府中基地(東京都)を拠点に発足。宇宙作戦隊は、大臣直轄部隊として設立され、隊員20名でスタートし、初代隊長には阿式(あじき)俊英2等空佐が就任しました。さらに「宇宙」職域も新たに設けられました。
同日、部隊の新編に当たり、防衛大臣から宇宙作戦隊長に対して隊旗の授与が行われました。隊旗授与式は新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、隊員約20人のうち阿式(あじき)俊英隊長(2等空佐)ら代表2人が出席した。
初代隊長は、幼い頃には「ガンダム」にも憧れたという阿式俊英2等空佐(41)。阿式隊長は「宇宙空間の監視を行うにあたりグローバルな宇宙監視ネットワークを運用する米国との連携は不可欠。最重要の人材育成や情報共有の在り方など検討していきたい」と語った。宇宙作戦隊長の阿式俊英2等空佐は「まずは人材の育成が重要だ。米軍、JAXAと協力していきたい」と述べた。
防衛大臣の河野太郎は、「国民からの期待が非常に高く、各国からもメッセージが寄せられており、協力体制を構築していきたい」と述べました。彼はまた、「自衛隊は1954年の発足以来、日本の領土、領海、領空を守り続けてきたが、安全保障環境は変化しており、従来の領域に加え、今や宇宙をはじめとした領域でも優位性の確保が重要である」としました。そして、「早急に宇宙状況監視などの態勢を構築しなければならない」と強調しました。
丸茂空幕長は、「宇宙空間の安定的利用を確保するには、通信衛星や測位衛星など日本の防衛にとって重要な人工衛星が宇宙ゴミ(スペース・デブリ)との衝突や、不審な衛星からの攻撃によって被害を受けることのないよう、宇宙空間の状況を日頃から適切に把握できる態勢を整備しておく必要があります」と述べました。そして、「宇宙作戦隊では、宇宙状況監視システムを運用するなど、宇宙空間の安定的利用の確保に資する活動を実施していく予定です」と、航空自衛隊のホームページで説明しています。
宇宙作戦隊隊旗授与式。編成完結報告、隊旗授与、記念写真、空幕長、宇宙作戦隊長との懇談。 pic.twitter.com/RT9Wzd2l8S
— 河野太郎 (@konotarogomame) May 18, 2020
宇宙作戦隊隊長阿式俊英2等空佐に聞く
— 航空新聞社WING (@wingnews) July 17, 2020
安定的な宇宙領域活用に寄与する部隊の任務とはhttps://t.co/LxR8TTZ0yD pic.twitter.com/08LdzWAizp
2年前倒しの設立
宇宙作戦隊の創設は、当初2022年度の予定でしたが、2年前倒しして2020年に実現しました。政府が作戦隊発足を急いだのは、米国との協力強化が必要と見たためです。
2019年3月時点の軍事用の衛星は、米国が125基、中国が103基、ロシアが96基、インドが12基で、日本の11基を上回っています。そのため、日本は地上の画像データ収集や弾道ミサイルの発射情報などで米国の衛星に依存しています。一方で、米国は2019年12月に宇宙軍を創設しました。
自衛隊幹部は「日本も専用部隊を創設し宇宙領域に取り組む姿勢を示さなければ、米軍とも情報共有できない」と述べていました。
自衛隊初の“宇宙”領域
自衛隊で初めて「宇宙」の名称がついた部隊である宇宙作戦隊の設立には、宇宙空間での防衛力強化という安全保障上の重要性が反映されています。近年、宇宙空間の重要度が増しており、多くの国が宇宙に関連する軍事技術を開発しています。
また、2019年に米国が宇宙軍を設立したことを受け、日本政府も宇宙作戦隊を設立することで、米軍との協調を高める狙いがあるとされています。
同盟各国のトップから祝意
隊旗授与式において、米国、フランス、オーストラリア、ドイツの宇宙部隊最高位者から祝意のメッセージビデオが寄せられました。
宇宙軍作戦部長兼宇宙コマンド司令「ジェイ・レイモンド大将」
米宇宙軍作戦部長兼宇宙コマンド司令のジェイ・レイモンド大将は、この度の宇宙作戦隊の新編を祝して、ビデオコメントを寄せました。「われわれは、空、陸、海においてもそうであるように、宇宙分野においても相互運用性の発展のために日本とともに献身的に活動する」と語りました。
Congratulations to our @ModJapan_en, @JASDF_PAO partners! We’re excited to welcome Japan’s new Space Domain Mission Unit! We look forward to building upon our already strong partnership as we continue to ensure peaceful use of #space & collectively defend our vital space assets! pic.twitter.com/dbmYzLZkzi
— U.S. Space Command (@US_SpaceCom) May 18, 2020
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ちょ……ダサくね?宇宙作戦隊のネーミングに賛否
宇宙作戦隊の設立とその名称が発表された際、インターネット上で意外な反応が広がりました。70人の部隊に、師団や連隊ではなく「宇宙作戦隊」という名称が選ばれたことで、まるで昭和時代のSF作品のようだと感じる人が多かったようです。
漫画原作者の七月鏡一さんが「司令官閣下が納谷悟朗(宇宙戦艦ヤマトで沖田十三艦長の声を担当した声優)の声で命令を下す」とつぶやいたことも、多くのネットユーザーの想像力を刺激しました。
宇宙作戦隊の名称の由来については、任務内容が明確になることを重要視して選ばれたとされています。航空幕僚長との協議を経て、最終的にこの名称が決定されました。
2020年4月16日の参院外交防衛委員会で、河野太郎防衛相は航空自衛隊に今年度新設される予定の「宇宙作戦隊」(仮称)の名称について言及しました。「名前がダサいとかいろんな批判、感想をいただいている」と述べ、名称を見直す可能性を示唆しました。
空自新設の「宇宙作戦隊」、名称変更? 河野防衛相、ダサい批判で見直し示唆 https://t.co/885wVKItt2
— 毎日新聞ニュース (@mainichijpnews) April 16, 2020
これが宇宙作戦隊のシンボルマークだ!
2020年7月31日の定例記者会見で、丸茂吉成航空幕僚長は航空自衛隊の宇宙作戦隊のシンボルマークをお披露目しました。
創設年の2020年と宇宙のモチーフ
宇宙作戦隊のシンボルマークには、創設年の2020年にちなんで、大小20個の星がデザインされています。また、人工衛星の軌道や監視レーダーをモチーフにしており、下部にある6つの「○」は、山口県内に新設予定の宇宙監視レーダーのアンテナの数を表現しています。このシンボルマークは、制服に付けるワッペンなどとして活用される予定です。
丸茂吉成航空幕僚長は、「将来の無限の可能性と夢を表すシンボルだと思う。一致団結して、誇りを持って任務に取り組んでもらいたい」と述べました。このシンボルマークは、宇宙作戦隊のアイデンティティとして、部隊の一体感や結束力を高め、任務遂行に対する誇りや意識を向上させることを目指しています。
本日、宇宙作戦隊のシンボル・マークを公表しました。
— 防衛省 航空自衛隊 (@JASDF_PAO) July 31, 2020
宇宙作戦隊は、宇宙空間の安定的利用の確保に資するため自衛隊初の専門部隊として、令和2年5月18日(月)に新編されました。
シンボル・マークの詳細は、航空自衛隊HPをご覧ください。https://t.co/lfJDt9ihLT#航空自衛隊 #宇宙 pic.twitter.com/iSWILwxg33
「KOKU-JIEITAI」というローマ字表記が話題に!
宇宙作戦隊のシンボルマークが公表された際、「KOKU-JIEITAI」というローマ字表記が話題を呼びました。この表記は、2016年から使われるようになり、当時の幕僚長が発案したものです。その目的は、「親近感を持ってもらえるように」というものでした。
「KOKU-JIEITAI」という表記は、航空自衛隊を意味し、英語では”Japan Air Self-Defense Force”となります。この表記が使われることによって、国内外の人々に対し、航空自衛隊の存在や活動について理解を深めてもらうことが期待されています。また、親しみやすい表現であることから、関心を持ってもらいやすくなると考えられます。
新編された宇宙作戦隊のロゴに、なぜAir Self Defense ForceではなくKOKU-JIEITAIと書かれているのかというご質問をいただきますが、各国の空軍は既にKOKU-JIEITAIと呼んでくれるようになっています。Coke-Jet-Tieだと思っている相手も多いようですが。 pic.twitter.com/tctjA881gF
— 河野太郎 (@konotarogomame) August 3, 2020
宇宙作戦隊の訓練風景を公開!
2020年12月16日、新たに導入された「宇宙領域シミュレーター」を活用した解析結果が公開されました。今月月、米国と中国の人工衛星が距離5.6キロまで接近した事象を、米軍がインターネット上で公開した情報を基に再現したものです。衛星2機が徐々に接近し、アフリカ大陸上空ですれ違う様子などがモニターに映し出されました。
宇宙作戦隊長の阿式俊英2等空佐(42)は、「人材育成が喫緊の課題だ。事象を正確に把握するには専門的技術が必要だ」と話しました。宇宙空間の状況を正しく捉えられれば、「必要に応じて衛星の軌道を変更して衝突を回避するといったことが考えられる」と指摘しました。