2021年1月6日の連邦議事堂襲撃事件において、「Qアノン」と呼ばれる陰謀論的な運動の信者が一部関与していたことはよく知られています。
しかし、事件にはQアノン信者以外にも様々な組織や個人が含まれており、その多様性が事件を理解する上で重要です。
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Capitol rioters
連邦議事堂の襲撃者たち!米国議会襲撃の主犯とその背景に迫る
2021年1月6日の米国議会議事堂への襲撃に参加した群衆の中には、「白人ナショナリスト」や「リバタリアン」と自称する人々も一部に含まれていたとの報告があります。
これら人々は、かつての大統領であるトランプの選挙に対する怒りを共有していました。
トランプは「選挙詐欺」の主張を頻繁に口にし、これがこれらの人々の怒りを煽り、最終的には連邦議会議事堂を襲撃するという極端な行動に繋がったのです
トランプ大統領の語り口は、彼が就任直後から人々の偏見や人種差別を助長しました。
彼はメキシコ系やイスラム教徒を「犯罪者」「レイピスト(強姦魔)」「侵略者」として攻撃し、これが一部の人々による特定のグループへの攻撃を正当化するような印象を与えました。
その結果、一部の差別主義者たちは、自らの行動に対する「許可」を得たと感じたのです。
事態の深刻さを示す一例として、ヘルメットやタクティカルベストを身に着けた元空軍将校の姿までもが確認されました。
彼らは「持っているなら武器を持って来い」と叫んだり、「これは第二の革命だ。平和的な抗議とは違う」と叫んでおり、襲撃の状況はまるで戦場さながらでした。
集会を主催した団体「ウィメン・フォー・アメリカ・ファースト」
1月6日の集会を正式に開催するためには、国立公園局から許可を得る必要がありました。
許可を取得したのは「Women for America First(ウィメン・フォー・アメリカ・ファースト)」というトランプ支持グループでした。
このグループは、女性のトランプ支持者が中心となって組織された団体で、彼らの規模や影響力は少なからず存在します。
1月6日の集会許可証の背後に見える糸!トランプの関係者との繋がり
トランプは最初に2020年12月19日に抗議集会について言及し、「1月6日にD.C.で大規模な抗議が行われます。そこに行って、大変なことになるよ!」と述べました。
これに対し、主催団体「Women for Trump」の代表が「騎兵が来る、大統領殿」とツイートすると、トランプはそれをリツイートし、「とても興奮している!」とコメントしました。
また、グループのウェブサイトには、「大統領からの指令で、1月6日にワシントンD.C.で集会を開催するように」というポップアップメッセージが表示されていました。
当初、集会はホワイトハウス近くのフリーダム・プラザで予定され、約5,000人の参加者が予想されていました。しかし、実際には他のグループも1月6日に集会を計画していることが明らかになりました。
許可にはスタッフの連絡先リストが含まれており、そのうち8人がトランプの選挙プロモーションに関与しており、彼の集会の組織やアドバイザーとして活動していました。
非公開企業の支払いから見える選挙プロモーションの闇
なお、トランプの選挙プロモーションは、これら8人と「Event Strategies」という会社に2年以上にわたり、270万ドル以上を支払っていました。
OpenSecretsによれば、実際の主催者への支払いはさらに多くなる可能性があります。
トランプのプロモーション活動は複数の非公開のダミー企業を通じて資金を流しており、関与する金額は数十億ドルにも及ぶ可能性があると報じられています。
襲撃の象徴となった証!?「メイクアメリカ・グレイト・アゲイン」
1月6日にアメリカ合衆国議会を襲撃したトランプ支持者の中には、「MAGA」(Make America Great Again)の帽子を被っていた人々が存在しました。
この「MAGA」スローガンは、2016年のトランプの大統領選挙でのプロモーションの主要なフレーズであり、その後も広く使用されました。
「MAGA」帽子の背後に見える分断と極端化!
多くのトランプ支持者は、このフレーズが書かれた赤い帽子をトランプの集会に参加する際に身に着けていました。彼らにとってこの帽子は、一種の象徴ともなりました。
特に、支持者はトランプの最初の任期を通じて、このフレーズをキャッチフレーズとして使用し、その立場と信念を示していました。
この帽子が一部の人々にとってはアメリカの偉大さの回復を象徴するものである一方、他の人々にとっては分断と排除の象徴となりました。
それにもかかわらず、この象徴は、連邦議事堂襲撃のような極端な行動につながる熱意を助長する要素となりました。
この帽子を被った人々の中には、政府に対する不満や不信感を共有する人々が多く含まれていたと考えられます。
したがって、この「MAGA」の帽子というシンボルは、議会襲撃という事件の中で、重要な役割を果たしたと言えるでしょう。
「America First」と「MAGA」スローガンの影響力と論争!
「America First」や「Make America Great Again」(MAGA)というスローガンは、トランプ大統領が広めたフレーズであり、その政治的立場を象徴しています。
2016年の大統領選挙以降、これらのスローガンは大衆文化の一部となり、芸術、エンターテイメント、政治のさまざまな分野で多大な影響力を持つようになりました。
それらは多くのバリエーションが生まれ、トランプ大統領の支持者や反対派の両方によって使用されました。
しかしながら、これらのスローガンが単なる政治的メッセージではなく、人種差別的な意図を含むという批判があります。
特に、それらは犬笛政治やコード化された言葉として、白人至上主義者や他の排他的なグループを助長するために使用されたという見方もあります。
トランプの言辞は、白人至上主義者や極右過激派グループによる動きを助長する燃料となったとも指摘されています。
2021年1月6日の議会襲撃事件で明らかになったのは、そのようなスローガンが実際の対人関係や社会的動向にどのような影響を与えているかということです。
議会警察官のハリー・ダンは証言で、自身や他の黒人警官がトランプ支持者の群衆から人種差別的な罵声を浴びせられたと述べ、これには「MAGA」シャツを着た女性の侮辱的な叫びも含まれていました。
一方で、一部の警察官が同僚の救出や暴徒をだますためにMAGA帽子を着用した事実が存在します。
しかし、その行動が全ての法執行官の意見を代表するものではなく、また、それが議会ビルを襲撃したトランプ支持者の行動をを正当化するものではありません。
警察を支持する運動「ブルー・ライブズ・マター」
暴徒の中には、一部の人々がBlue Lives Matterの旗を振っていました。
同じBLM!ブラック・ライブス・マターのカウンター組織
「Blue Lives Matter(警察の命も大切)」運動は、警察官の生命と職務を尊重し、保護するための活動です。「ブルー」は警察官の制服の色に由来します。
しかし、この運動は2014年にアメリカで発生したBlack Lives Matter(黒人の命も大切)運動への反応として生まれ、政治的な色彩が強いものとなっています。
この運動は、警察支持を主張する一方で、保守派の支持を得ていて、右派や白人至上主義者の間に浸透していると指摘されています。
これはその中に、陰謀論的な視点や差別的な傾向があるとされるQAnon運動との重複が認められるためです。
「Blue Lives Matter」運動は、デモや白人至上主義者などの差別的なグループを励ますために用いられることがあり、警察改革や銃規制への反対運動の一因になっている可能性もあります。
その一方で、「警察」はアメリカ人にとって政治的立場を試す「踏み絵」のような存在になりつつあります。
銃規制については、国際警察協会(IACP)はアサルトウェポンの禁止を強く支持していますが、多くの警察官がこれに反対するという調査結果もあります。
また、警察が左派の抗議者に対して右派の抗議者よりも3倍の割合で武力行使を行い、特に「Black Lives Matter」運動のデモに対しては催涙ガスやゴム弾などの使用が頻繁であるというデータも存在します。
このような現状を見ると、「Black Lives Matter」運動が人種的な不平等や警察の暴力に対する認識を高める一方で、それに対抗する形で「Blue Lives Matter」運動が生まれ、それがさらに政治的な議論を引き起こしていることがわかります。
差別の象徴とされる旗「南部連合の旗を降る人々」
さらに、南部連合の旗を掲げている人もいました。
南部連邦国旗、または通常「南軍旗」として知られるこの旗は、南北戦争中に奴隷制度の継続を主張した南部連邦国の象徴であり、現在でも特定のグループによって使用されています。
一部の人々はこの旗を「州の権利を守るために戦った英雄を表す」と解釈していますが、白人至上主義者によって広く使用されることで、人種差別や白人至上主義との結びつきが強化されています。
そのため、この旗に対する認識は深く分かれており、物議を醸しています。
南部連邦国の象徴としてのこの旗を撤去する取り組みは広範で、公共の場所からの撤去や州旗からの除去など、様々な形で行われています。
これは、南部連邦国旗が保守的な政治運動や差別的な団体によって用いられることへの対抗策としての行動です。
さらに、この旗はアメリカの歴史、特にジム・クロウ法やクー・クラックス・クランなど、アフリカ系アメリカ人に対する人種差別の歴史と深く結びついています。
ジム・クロウ法は、アフリカ系アメリカ人を社会的に隔離し、彼らの権利を制限するために制定された一連の法律で、南北戦争後から1968年まで存在しました。
また、1940年代には南部の一部の民主党員が「州権民主党(States’ Rights Democratic Party)」またはディキシークラットとして知られる第三の政党を結成し、ジム・クロウ法を擁護するために南軍旗を使って選挙活動を行いました。
これらの行動は、南部連邦国旗が人種差別と白人至上主義に直接結びつけられる一因となりました。
南部連邦国旗の使用に対する新たな試みとトランプの反応
南部連邦国旗に対する認識は依然として深く分かれており、その使用は大きな議論を引き起こしています。
しかし、近年の社会的動向を見ると、人種差別と結びつけられるこの象徴からの距離を置く試みが増えています。
2021年6月にはミシシッピ州が旗を変更し、南軍旗を組み込んでいたものであり、2021年7月にはアメリカ国防総省が全米の軍事施設での南軍旗の掲示を事実上禁止しました。
これに対してトランプは、南軍旗の禁止に否定的な意見を示し、「言論の自由」の問題であり、旗が好きな人々は奴隷制度の思い出を連想しないことを理解していると述べました。
また、トランプは大統領在任中に白人の優越性の考えを推進し、多くのトランプ支持者はCOVID-19の景気後退以前から移民に仕事を奪われていた白人の中流層でした。
ただし、白人はすでに人種的に多様な中流階級であり、人口の57%に対して59%が白人であることに留意することが重要です。
植民地軍の旗…「南軍旗に続く意味深なガズデン旗」
この旗以外にも、同じような意味をもつガズデン旗が掲げられていました。
おの旗は、南軍旗と類似した意味を持つ旗であり、当初はアメリカ独立戦争中の大英帝国に対抗する植民地軍の旗としてデザインされ、その後2000年代のティーパーティー運動時に共和党の極右派が採用しました。
また、アメリカ人のほとんどが教科書でしか見たことのない「Join, or Die」の旗(ベンジャミン・フランクリンがデザインした旗)を暴徒が改ざんし、横領した事例もありました。
熱烈なトランプ支持者「クーエイ・グリフィン」
2021年1月6日、ニューメキシコ州オテロ郡の郡委員であるクーエイ・グリフィンは、カウボーイハットを被って議会のテラスに登り、「ウイ・ザ・ピープル(我ら人民)」と叫んでいました。
これは1787年に制定された合衆国憲法の前文最初の言葉で、グリフィンはこれを使って集まったトランプ支持者の群衆に訴えました。
グリフィンは元大統領トランプの熱烈な支持者であり、「Cowboys for Trump」(C4T)という支援団体の創設者でもあります。
議事堂の西側正面のバルコニー席に立ち、「我々はどこにも行かない!我々の要求に対して『NO』という答えは受け入れない!」と宣言しました。
しかし、このエリアへの立ち入りは禁止されており、その行為は法に抵触しました。
2021年1月17日にワシントンD.C.で逮捕され、制限された建物や敷地に違法に侵入した罪で告発されました。
警察の報告によれば、彼は他のトランプ支持者と共に米国議会の敷地に入りましたが、建物内には入っていなかったとされています。
彼はその後地元に戻り、2021年1月14日のオテロ郡委員会の会議で、自分のライフルとリボルバーを持ってバイデンの就任式に参加する予定だと述べました。
しかし、その発言の3日後にワシントンで再び逮捕されました。
裁判とその後の行動
1日のベンチトライアルの後、グリフィンは制限された敷地に違法に侵入または滞在した罪で有罪判決を受けましたが、騒擾行為の罪は無罪とされました。
彼には、既に服役した期間を含む禁固14日、監視付きの仮釈放1年、地域奉仕活動60時間、3,000ドルの罰金、500ドルの賠償金が命じられました。
2022年4月、グリフィンは第12地方裁判所で政治委員会の登録義務違反の罪状について無罪を主張しました。その後もニューメキシコで活動を続け、投票結果の再集計を要求しました。
また、彼はドミニオン投票機に対する不信を理由に、オテロ郡での予備選挙の結果を認証しないと述べました。
職からの解任
2022年9月、ニューメキシコ州の裁判官は、グリフィンを選出された役職である郡委員から解任しました。これは、彼が憲法第14条に違反し、米国議会襲撃に関与したことを理由に訴訟が提起された結果です。
また、彼は選挙活動報告法に違反した罪で告発され、政治委員会の登録の怠慢で無罪を主張しました。
極右過激派インフルエンサー「ティム・ジョネット」
ティム・ジョネットは、元BuzzFeedのソーシャルメディア戦略家で、2016年に同社を離れ、右派評論家のミロ・ヤノポウロスの大学ツアーを管理しました。
この時期、ジョネットは大統領トランプと会ってサインをもらったと主張していました。彼はその後、右派評論家のマイク・サーノビッチと出会い、「MAGA3X」というトランプ支持の拡大を目指した運動を立ち上げました。
ジョネットは2017年の夏に行われた「Unite the Right」ラリーに参加しました。このラリーは白人至上主義者たちが集結する暴力的な集会として知られています。
ジョネットはネオナチや白人至上主義者、反ユダヤ主義の陰謀論者として扱われています。
また彼は多くのオンラインプラットフォームから禁止されていますが、「907 Agency」を設立し、ソーシャルメディアインフルエンサーを作成することで影響力を保持しています。
彼はまた、「Meme Magic Secrets Revealed」という本も出版しました。
議事堂襲撃事件とその後の裁判
ジョネットは2021年1月6日の議事堂襲撃事件に参加し、その様子をライブストリームで配信しました。これにより彼は容疑者として捜査され、複数の罪で起訴されました。
FBIによって提出された裁判所の文書によれば、ジョネットは議員の部屋に侵入し、「愛国者が支配している」、「誰の家か?私たちの家だ!」、「1776年が再び始まる」、「くそったれ、グローバリスト」、「アメリカファーストは避けられない」、「クラーケンを解き放て。行こう」と叫んでいました。
ジョネットは米国議会襲撃への関与により、2か月の刑務所刑を言い渡されました。
アーカンソー州・銃保有推進団体リーダー「リチャード・バーネット」
リチャード・”ビゴ”・バーネットは、アーカンソー州のプロガン(銃所有権支持)団体のリーダーで、2021年1月6日の議事堂襲撃事件で注目を集めました。
バーネットの姿が議事堂内、特に下院議長ナンシー・ペロシーのオフィス内で撮影され、その姿が全世界に配信されました。彼はペロシーのデスクの椅子に寝そべり、自身の行動を楽しんでいる様子が写真に収められました。
襲撃の朝、バーネットは「立ち上がる時が来た。愛国者は最高を守る」とツイートし、その意気込みを示していました。
事件の後、メディアへのインタビューで彼は、自分はペロシーのオフィスに入る前に丁寧にドアをノックしたが、群衆が部屋に押し入ったと述べました。
さらに彼は、ペロシーのデスクから取ったと主張する封筒を自慢げに見せ、「私はそれを盗んだわけではない。デスクに25セントを置いてきた」と述べました。また彼は、「ビッチ」というメモを残したとも語りました。
その行動により、バーネットは不法侵入、窃盗、公的資金または公式文書の窃盗の罪で起訴されました。
KKKの元メンバー「ブライアン・ジェイムズ」
ブライアン・ジェームズは、白人至上主義団体クー・クラックス・クラン(KKK)の元メンバーで、2021年1月6日の議事堂襲撃に参加した者の一人でした。
この情報は、フランスの新聞Le Mondeが報道しました。
KKKは、白人の優越性を唱え、アフリカ系アメリカ人に対するリンチなどの凶悪な行為を行ってきた悪名高い組織です。
南北戦争の終結後の1865年に設立されたこのグループは、その最終目標を有色人種やユダヤ人をアメリカから追放し、白人のみの国家を確立することだと主張しています。
KKKは暴力的な歴史を持ち、アメリカの白人至上主義、右翼テロリスト、ヘイトグループと見なされています。
彼らの主な標的は、アフリカ系アメリカ人、ヒスパニック、ユダヤ人、ラテン系アメリカ人、アジア系アメリカ人、先住民、カトリック教徒、移民、左派、同性愛者、ムスリム、無神論者、中絶施設など、広範な集団に及びます。
KKKは人種差別に基づく暴行や殺人を引き起こし、その存在の大部分を通じてこれらの犯罪を免れてきました。
その手法は、恐怖と脅威を用いてアフリカ系アメリカ人、ユダヤ人、その他の人々を抑圧することでした。グループは何度も復活を遂げ、いくつかの形態を経て存在し続けています。
国を守っていたはず……「退役軍人の参加」
2021年1月6日に起きた米国議会議事堂襲撃事件では、退役軍人たちが大きな役割を果たしていたことが報告されています。彼らはその経験と訓練を使って、暴動を組織し、指導しました。
このことは、軍内での極右思想の浸透と、それが米国の民主主義にどれほどの影響を及ぼすかを考えさせるものとなりました。
ヘルメットや戦術ベストを着用していた退役軍人の存在や、暴動を扇動する言葉を叫ぶ退役軍人の姿は、彼らが軍での訓練を暴力的な行動に利用していたことを示唆しています。
これは非常に憂慮すべきことであり、退役軍人が民主主義や公共の安全を脅かすような活動に関与することは断じて許されるべきではありません。
また、事件に関与した退役軍人の中には、心理作戦のスペシャリストである女性大尉のような、特定の専門知識を持つ人物も含まれていたことが報告されています。
彼女は議事堂での抗議行動に約100人を組織的に動員しており、そのスキルを不適切な目的のために使用していた可能性があります。
この問題は、合衆国憲法に忠誠を誓った軍人たちが、憲法が保護する価値と権利に反する行動をとる可能性があるという、非常に深刻な問題を露呈させました。
軍人から議事堂襲撃者へ…。アシュリ・バビットの悲劇
最も衝撃的だった出来事の一つに、14年間空軍に所属し、忠実なトランプ支持者だったアシュリ・バビットの死があります。
バビットは議会警察によって射殺され、この出来事はその後の議論の焦点となりました。
事件前、バビットはソーシャルメディアで度々陰謀論について投稿しており、その中にはQAnonのような右派の陰謀論も含まれていました。
彼女の友人たちは、彼女が強い愛国心とアメリカを守る強い願望を持っていたと語っています。その信念は、彼女がイラクとアフガニスタンに派遣された軍人としての経験からも窺えます。
彼女は自国を守るために、自身の命を何度も危険に晒してきました。
しかし、その強い愛国心がどのようにして議事堂襲撃への参加へとつながったのかは、多くの人々にとって理解しがたい事態でした。
特に、バビットの義理の母は「彼女がなぜこんなことをしようと決めたのか理解できない」と困惑を示しています。
衝撃の告白!「あの日、私は何を見たのか」
その後、ベテラン議会警察官のマイケル・バード警部補が、バビットを射殺した警察官として公に身元を明かしました。
バードは「あの日、私は数多くの命を救った」と述べ、議会議員、仲間の警察官、職員が深刻な危険にさらされていたことを強調しました。また、「それが私の仕事です」と述べました。
合衆国議会警察は、この警察官が議員や職員を「重大な負傷や死」から守った可能性があると指摘し、事件以来、この警察官と彼の家族は多くの脅迫に直面していると明らかにしました。
米国司法省はル襲撃に関連して約600人の起訴を準備していますが、トランプ支持者はバビットを「殉教者」として扱い、トランプは彼女の死を殺人と非難しています。
軍内の極右思想の広がりとその危機
極右思想や白人至上主義団体の軍内での活動の拡大は、米国社会全体の問題として深刻化しています。これらの団体は積極的に勧誘活動を行い、軍人や退役軍人から支持を集めています。
ペンタゴンの上級関係者によれば、この傾向は一過性のものではなく、深く根ざした問題となっており、特に過去1年間で軍内での極右活動が増加しているとの報告があります。
一方、これに対応するため、国防長官ロイド・オースティンは、軍内の極端主義の台頭に対抗するプロモーションを開始しました。
このプロモーションは、極右思想が広がることによる軍や社会全体の安全保障への影響を最小限に抑えることを目指しています。
衝撃の事実!襲撃の被告の多くが米軍経歴者だった!
2021年1月6日の議事堂襲撃に関連して起訴された被告のうち、80人以上が米軍とのつながりを持ち、軍の経歴を持つ人々がほとんどでした。
裁判資料によれば、別の被告は2021年8月のFBIとの面接時に「米国空軍の基礎訓練に参加していた」と述べ、その後の彼の参加を指摘しています。
合計で、少なくとも36人が海兵隊に所属し、28人が陸軍に、3人が海軍に、5人が空軍に所属していました。
現役の海兵隊員クリス・ウォーナギリス中佐は、2021年1月6日の襲撃への参加で起訴された現役軍人では唯一の人物です。
捜査官たちは、ウォーナギリスが「議事堂の東回廊のドアを押し開いた」一団の中で最初の人物だったと述べており、既に建物内にいた襲撃者たちに対抗していた警察官たちが「困難に直面した」と指摘しています。
海軍の中将が極右思想に警鐘!差別容認の余地なし
海軍の人事部を監督するジョン・ノウェル中将は、米軍が大切にしている平等の原則に反する極右思想は絶対に容認できないと述べ、次のように強調しました。
「任何形式の差別は、海軍の核心価値に反するものです。」さらに、白人至上主義や過激主義運動に参加する兵士は、プロの軍人としての資格を満たしておらず、彼らの行動に対して責任を問われると述べています。
襲撃に参加した現役の警官官
2021年1月6日の議事堂襲撃には地方の現役警官も関与していました。大統領の扇動的な呼びかけに応じて全米から怒りに満ちた群衆が集まりました。
その日のために十分な警備体制が敷かれていたはずだが、群衆の数が予想を超え、警備は適切に行われませんでした。
一部の警察が暴徒を敷地に受け入れる
映像には、通常は厳重な警備体制で自動小銃を構えている警官が、なぜか抵抗もせずにバリケードを開けて暴徒を中に入れている姿が映し出されています。
さらに、議事堂警察の警官の中には、暴徒を諌めることなく、一緒にセルフィーを撮っている者もいました。多くの暴徒が議事堂に侵入後、セルフィーを撮り、それをソーシャルメディアに投稿しました。
この事件を受けて、議会警察は2021年2月18日に、6名の警察官を有給休暇にし、さらに29名の警察官が規則違反の疑いで調査対象となりました。以降、少なくとも2名の警察官が停職処分となりました。
一人は議事堂に侵入したデモ隊とセルフィーを撮影していたとされ、もう一人は「Make America Great Again」の帽子を被りながら、デモ隊に議事堂への侵入を手引きしていたとされています。
シークレット・サービスの関与も…。
シークレット・サービスにもトランプ支持者がいることが明らかになっています。
ワシントン・ポストによれば、ある女性捜査官が自身のFacebookに陰謀論的な書き込みをしていたとして、停職処分となり、内部調査の対象となっています。
これは、トランプ支持や暴動へのシンパシーをおぼえる警察官が警察組織に確実に存在していることを示す証拠となります。
この点に関連して、民主党のクライバーン下院院内幹事は議事堂襲撃事件後、意味深長な発言をしました。
「私のネームプレートが貼ってある正規の議員会館事務所とは別に、議事堂内にある、看板もない部屋で院内幹事業務をしているが、乱入してきたトランプ支持者たちはなぜか、すぐにこの院内幹事用の部屋に押しかけてきた。
内部の人間の何らかの支援がなければ説明がつかない」と語っています。
襲撃における反ユダヤ主義者的要素とネオナチ
襲撃における反ユダヤ主義的要素は、大きな問題であり、私たちが見過ごすべきではありません。
多くの参加者が反ユダヤ主義的なサインを掲げていたこと、そして「ターナー日記(ターナー・ダイアリーズ)」という極右の聖典を振りかざしていたことが目撃されました。
極右のバイブル「ターナー日記」
この1978年に出版された「ターナー日記は、連邦政府に対する抵抗を描いた小説で、アメリカの白人至上主義者や極右過激派の間で重視されています。
この小説は、政府の解体や、黒人やユダヤ人を巨大な収容所に収容することを公然と提唱しています。
著者であるウィリアム・ピアースは元物理学教授で、後に過激派の思想家となりました
。彼は「アメリカナチ党」のリーダーとして活動し、最終的には「ナショナル・アライアンス」という白人至上主義組織の指導者となり、2002年7月の死までその象徴でした。
さらに、「NSC-131」というネオナチグループや「プラウドボーイズ」という極右グループのメンバーも現場にいました。
彼らは「6MWE」と書かれたTシャツを着用しており、これはナチスによって殺害された600万人のユダヤ人は十分ではなかったという意味を含んでいます。
現役警官や退役軍人の関与も明らかに!1月6日の襲撃事件の深刻性を考える
2021年5月19日時点で、1月6日の襲撃に関与したとして、1,000人以上が告発されました。
その中には、警官や公務員に対する暴行、抵抗、または妨害の罪で告発された346人と、陰謀の罪で告発された55人が含まれています。この中には、米軍とのつながりを持つ退役軍人を含む人々もいます。
CBSニュースによれば、これらの告発された個人の中には、ブルックリンの裁判官の息子や、人質を拘束するために持ち込まれたと思われるジップタイを持っていた個人も含まれています。
連邦当局者は、最も重大な違反行為に関しては国家安全に関連する犯罪を専門とする検察チームが調査を行っていると述べています。
議事堂への侵入における現役および退役軍人、さらには法執行官の関与は、この問題の深刻さを浮き彫りにしました。
【Qアノン陰謀論(23)】アメリカの極右運動…トランプ支持者と過激派ミリシアの危険な結びつき