この記事では、エプスタイン事件とQアノンの関連性について詳しく解説します。エプスタイン事件は大金持ちや権力を持つ人々の犯罪行為が明るみに出た事件であり、Qアノンはこの事件を自身の陰謀論の拡散手段として利用しました。
記事では、エプスタインの関係者や被害者の証言、政治エリートとのつながり、Qアノンの主張などを詳細に取り上げ、事件の裏側に迫ります。また、ビル・クリントン元大統領やトランプ氏との関係、事件後の陰謀論、エプスタインの死についても触れながら、読者には客観的な情報を提供します。この記事を通じて、エプスタイン事件とQアノンの重要な要素について理解を深めることができます。
【Qアノン陰謀論(1)】Qアノンの前兆「ピザゲート」の闇と陰謀の連鎖
Jeffrey Epstein Case
「大金持ち」「権力」「陰謀論」エプスタイン事件とQアノンの影響
「事実は小説よりも奇なり」という言葉があります。この言葉は“現実の出来事が時々小説よりも驚くべきことがある”という意味です。2019年の「エプスタイン事件」は、まさにその言葉がぴったり当てはまる事例になりました。
この事件を通して、大金持ちや強い権力を持った人々が、人々から見えないところで起こしている犯罪が明るみに出ました。そして、この事件は世界中の人々が陰謀論を真剣に議論するきっかけになりました。
特に、”Qアノン”は、エプスタイン事件を自分たちの陰謀論を拡散するためのツールとして使用しました。Qアノンは、エリートや政治家たちが秘密裏に悪事を働いていると主張しており、エプスタイン事件はその主張を裏付ける証拠として使われたのです。
事実、エプスタイン事件以降から、Qアノンの信者たちは急増していきました。
陰謀と現実の交差点…ジェフリー・エプスタインとQアノン
Qアノンという名称は、当初はインターネット上のオカルト愛好者の間でしか知られていない存在でした。彼らは秘密結社や世界的な富豪の一部がこの世界を裏から操っているという、典型的な陰謀論を展開していました。そのため、一般的な社会から見れば、Qアノンは「嘘に決まっている」存在でした。
しかし、2019年のエプスタイン事件は、Qアノンの認知度を一変させました。元大手投資銀行家であったジェフリー・エプスタインが小児性愛(ペドフィリア)で逮捕され、その事件が大きな注目を浴びる中、Qアノンは一般の世間に飛び出す機会を手に入れたのです。それはQアノンが以前から、政治エリートがエプスタインを中心にペドフィリアのネットワークを形成していると主張してきたからです。
セレブたちとの親交で知られるエプスタインの寄付活動と影響力”
ニューヨーク・ブルックリン地区出身のエプスタインは、優秀なヘッジファンド経営者として知られ、トランプ氏やビル・クリントン元大統領といったセレブと親交がありました。非の打ちどころがないと見られていた彼は、自身の設立した三つの財団を通じて、過去20年間で総額3,000万ドル(約31億8,000万円)以上の寄付を政財界や大学などに提供しました。
寄付を受けた機関としては、ハーバード大学、プリンストン大学、コロンビア大学、ニューヨーク大学、コーネル大学、ペパーダイン大学、オハイオ州立大学、スタンフォード大学、カリフォルニア大学ロサンゼルス校、サンタフェ研究所、ロックフェラー大学、ペンシルベニア大学などがあります。エプスタインが支援した科学者には、ミンスキー氏、チャーチ氏、そして英国の理論物理学者、故スティーブン・ホーキング氏や、「クォークの父」と称されるノーベル物理学賞受賞者、故マレー・ゲルマン氏らがいます。
彼の豊かさはまた、彼が所有していた不動産の数にも現れています。彼はニューヨーク・マンハッタンに4600平方メートルの敷地に立つ9階建ての豪華なビルを所有していました。さらにフロリダのパームビーチに邸宅、パリにマンション、ニューメキシコ州に40平方キロメートルの牧場と豪邸を所有していました。
また、カリブ海のヴァージン諸島にあるリトル・セイント・ジェームス島も所有していました。そして、この島が児童買春を含むパーティーの舞台になりました。
「ロリコン島」エプスタインの犯罪舞台としてのカリブ海の孤島
エプスタインが所有していたカリブ海の孤島、リトル・セイント・ジェームス島は、エプスタインの犯罪の舞台となり、その恐怖と影響力の象徴となりました。一度連れてこられると逃げられないこの孤島は、多くの被害者が性的暴行を受けたと証言する”館”を含む設備を有しており、現在では”ロリコン島”と呼ばれるまでになりました。
エプスタインは、警察のいないこの「島」での「セキュリティ」のためとして、ビデオカメラを随所に仕込みました。彼はここで有力者に性的な接待を行い、その模様をビデオに記録していました。その記録は、後に彼らを脅迫する材料として使われる可能性があるという容疑を持たれています。
エプスタインの性的搾取:…未成年被害者との闇の数十年
検察の告発によれば、ジェフリー・エプスタインは2002年から2005年にかけて、マンハッタンとフロリダ州パームビーチの自宅で未成年の少女数十人を性的に搾取していたとされます。彼は被害者に数百ドルを支払い、マッサージや性的行為を強要し、また、他の少女を勧誘するように仕向けていたとされています。
特に驚くべきことに、被害者の中にはわずか14歳の少女も含まれており、エプスタインは「被害者の多くが未成年者であることを十分に認識していた」とされています。
さらに、エプスタインは「スカウト部隊」も持っていたとされ、この部隊は弱い10代の少女に近づきやすいように、主として年齢の近い者で構成されていたとされています。これにより、エプスタインは新たな被害者を増やし、彼の性的搾取のネットワークを拡大していったとされています。
再犯の性犯罪者エプスタイン
ジェフリー・エプスタインは以前にも同様の罪で有罪となり、性犯罪者として登録されていました。彼の性的搾取が初めて明るみに出たのは2005年で、被害者少女の保護者が警察に相談したことで発覚しました。そして2008年、エプスタインは少女の売春勧誘と売春斡旋で有罪判決を受けました。
エプスタインの軽い判決に対する怒り
当時の捜査で100人を超える被害少女が特定され、彼には終身刑の可能性もあったのですが、司法取引の結果、彼は僅か13カ月の禁固刑に処されました。さらに、性犯罪者としての登録が義務付けられたものの、彼は監視が緩やかなパームビーチ郡の刑務所に収監され、1日12時間、週6日の外出が許され、自分のオフィスで過ごすことも許可されていました。
この軽い刑罰は、多くの人々がエプスタインの富と影響力によって司法制度が操作されたと感じさせるものでした。被害者や一般市民は、この判決に激怒し、司法の公正さと公平性に疑問を投げかけました。
エプスタインの過去の犯罪とその軽微な刑罰は、彼が持っていた富と権力が、法の目を逃れる手段としてどのように利用されたかを浮き彫りにしました。そして、これが彼の後の犯罪行為に対する追及が激化する一因となりました。
トランプ政権とエプスタイン事件!アコスタの判決操作と閣僚抜擢の疑惑
エプスタインの軽い判決を決めたのは、後にドナルド・トランプ政権で労働長官を務めることになるアレクサンダー・アコスタでした。
当時、エプスタインは自身の豊富な資金と人脈を生かして強力な弁護士団を結成しており、「アコスタはその圧力に屈してエプスタインに手心を加えたのでは」という疑惑が、エプスタイン事件を機に地元メディアの調査報道によって浮上しました。
この報道によって、エプスタインに対する2008年の事件の再捜査を行うきっかけとなり、ニューヨークの連邦地検が動き出しました。そして当人のアコスタは公的な立場での批判が高まり、最終的に労働長官の職を辞任することとなりました。
しかし、エプスタインの犯罪をもみ消したとされる人物が、どうしてトランプ政権の閣僚ポストに抜擢されたのかという疑惑は解消されていません。
“黒革の手帳”が明かすエプスタインの闇
エプスタイン事件の捜査では、元執事のアルフレド・ロドリゲスが所有していた黒革の手帳が注目されました。この手帳はエプスタインの元執事によって保管されており、多くの重要な情報が記されていたとされています。
元執事はエプスタインの運転手、伝令、接客担当者として働いており、エプスタインの指示で少女たちへの車の手配や贈り物なども行っていました。さらに、「マッサージ」の後には部屋を片付ける役目も担っていたとされています。
トランプ、ボールドウィン、ロックフェラーら著名人の名前が浮上
この手帳には、多くの著名人の名前と連絡先が記載されており、これが事件に対する大きな注目を集める要因となりました。
具体的には、当時のアメリカの大統領であったドナルド・トランプ、ハリウッド俳優のアレック・ボールドウィン、金融業界の巨頭デイヴィッド・ロックフェラー、イスラエルのエフード・バラク元首相、そして大富豪ジョージ・ソロスの甥などの名前が記載されていたとされています。
手帳に記された「マッサージ」の意味
加えて、手帳の「マッサージ」の項目には、マッサージ師とみられる人物の連絡先も記されていました。この手帳が示す情報の意味は明確でなく、憶測の域を出るものではありませんが、元執事が手帳を「保険」として保持していた可能性が考えられています
手帳が広まるきっかけはウェブサイトから
この手帳は、2015年にジャーナリストのニック・ブライアントによってウェブサイト「GAWKER」上でコピーが公開されました。
この手帳は、当初、エプスタイン被告の性犯罪に関する調査を進めていたフロリダ州警察とFBIには明かされていませんでした。
しかし、エプスタインの被害者の訴訟を担当していた弁護士に対し、元執事のロドリゲスが5万ドルで販売しようと試みたことから、その存在が明らかになりました。しかし、この取引を知った弁護士がFBIに通報し、ロドリゲスは有罪となり、禁固18カ月の判決を受けました。
その後、ロドリゲスは中皮腫のため2014年に亡くなりましたが、彼が生前に手帳の詳細について語ることは一度もありませんでした。そのため、手帳に書かれた丸印の意味など、多くの不明な点が解明されていません。
ジャーナリストのニック・ブライアントによれば、黒い手帳が初めて裁判所に資料として提出されたのは、ロドリゲスが2009年に売り渡そうと試みた後のことだとされています。
「ロリータ・エキスプレス」機長の告発!プライベートジェットに隠された真実
ジェフリー・エプスタイン被告は、自身のプライベートジェットを用いて、未成年のセックス・トラフィッキングを行っていたという疑惑があります。彼のジェットは、ニューヨーク、フロリダ、ニューメキシコ、パリ、ヴァージン諸島のプライベート島などを行き来しており、この飛行機は「ロリータ・エクスプレス」というあだ名で知られていました。
“ロリータ”は、ナボコフの同名小説から派生した言葉で、性愛の対象として未成年の少女を指します。その名の通り、エプスタイン被告の行動は、彼が未成年の少女を性的搾取の対象としていたとの疑惑を強く持たせるものでした。
25年間にわたりエプスタイン被告のプライベートジェットのパイロットを務めていたビソスキー氏は、ジェット機が「ロリータ・エクスプレス」と呼ばれていたことを証言しました。
しかし、ビソスキー自身は、飛行中に客室で性的行為が行われていたという直接的な証拠を目撃したことはないと述べています。なぜなら、彼が操縦を行っている間、操縦室のドアは常に閉じられており、客室内で何が起こっていたのかを知ることはできなかったからです。
プライベートジェットに搭乗したVIPたち
また、このプライベートジェットには、2人のアメリカ合衆国大統領、英国のエリザベス女王の次男であるアンドリュー王子、俳優のケビン・スペイシー氏、政治家のジョージ・ミッチェルとジョン・グレン、ヴァイオリン演奏者のイツァーク・パールマン氏など、著名人が搭乗していたと明らかにしました。ビソスキー氏が公表した搭乗者リストには、アンドリュー王子から性的暴行を受けたと主張するバージニア・ジュフリー氏も含まれていました。
米国の新聞報道によれば、ジェフリー・エプスタインとの交友関係があった著名人には、ドナルド・トランプ氏、ビル・クリントン元大統領、アンドリュー英王子、イスラエルのエフード・バラク元首相、映画監督のウディ・アレン氏、モデルのナオミ・キャンベル氏などが含まれています。
ビル・ゲイツとジェフリー・エプスタインの関係
2011年、マンハッタンのエバ・アンダーソン・ドゥビンの家でとエプスタインはビル・ゲイツと会っています。
アンダーソン・ドゥビンはエプスタインの愛人として知られており、二人が会うきっかけを作ったのは、ゲイツ財団のボリス・ニコリク博士とメラニー・ウォーカー博士で、彼らは同時にマサチューセッツ工科大学(MIT)のメディアラボの客員研究員を務めていました。
このMITメディアラボは、エプスタイン氏から525,000ドル(約6,000万円)の寄付を受け取っていましたが、エプスタイン氏が少女を売春させていた事実が公になったため、当時の所長であった伊藤穣一氏は辞任を余儀なくされました。
アンダーソン・クーパーとのインタビューでゲイツ氏は、「エプスタイン氏との交友、そして彼を信用したことは大きな過ちであった」と述べています。さらに、ゲイツ氏はエプスタイン氏との出会いが、慈善事業の資金調達のためだけだったと明言しました。
ゲイツは、「何度かディナーを共にし、彼の人脈を通じて世界保健衛生分野の慈善事業のために数十億ドルを調達することが可能かと期待していました」と述べています。しかしながら、「それが実現しないと分かった時点で、私とエプスタイン氏との関係は終わりを告げました」とゲイツは語りました。
トランプとの繋がり
当時の大統領であったドナルド・トランプは、自分の名前がエプスタインの黒革の手帳に記載されていたことについて、2019年8月13日に「エプスタインは島を所有しているが、私が知っている限り、それほど良い場所ではない」と述べ、自身とエプスタインとの関与を否定しました。
しかし、トランプ大統領は同じく手帳に名前が記載されていたビル・クリントン元大統領については、「エプスタインの親友であるクリントンは、27回もしくは28回エプスタインの飛行機に乗っていた。だからクリントンに、彼がエプスタインの島に行ったかどうか尋ねると、多くのことが明らかになるだろう」と話しました。
トランプとエプスタインのパーティー映像と15年来の付き合い
エプスタイン被告は1992年に、当時の不動産業者であったトランプ氏と共に、トランプ氏の別荘「マー・ア・ラゴ」で28人の女性を招いてパーティーを開いたことがありました。当時撮影されたパーティーの映像では、若い女性たちに囲まれたトランプ氏とエプスタイン氏が楽しそうに談笑する様子が確認できます。
さらに、2002年には、当時実業家であったトランプ氏が米国の「ニューヨーク・マガジン」誌の取材に対して、「ジェフとは15年来の付き合いだ。一緒にいると楽しい素晴らしい男だよ。彼も私同様、美しい女性が好きだという噂だ。その大半がかなり若いらしいけどな」と語っていました。
これらの発言と過去の行動は、トランプ氏とエプスタイン氏が社交的な関係を持っていたことを示しています。しかし、トランプ氏がエプスタイン氏の犯罪行為に直接関与していた証拠は公には存在していません。
トランプ被告とエプスタインのパーティー…性的暴行主張と訴訟の結末
2016年に、ある女性が当時の米大統領選候補であったドナルド・トランプに対して、彼女が13歳だった1994年に性的暴行を受けたと主張して訴訟を起こしました。彼女は、この暴行がジェフリー・エプスタインのマンハッタンの自宅で行われたパーティーでトランプから受けたと証言しました。また、彼女はトランプとエプスタインが彼女が未成年であることを知っていたにもかかわらず、彼女にさまざまな性的行為を強要したと主張しました。
訴状によれば、「レイプの直後にトランプ被告は、このことを誰かに話したら、私と私の家族が肉体的な危険にさらされて、もしかすると殺されるかもしれないと脅した」。2016年11月、大統領選の4日前に告訴は取り下げられた。女性の代理人によると、彼女は「数多くの脅迫」を受けていたと述べています。
この訴訟は非常に重大な主張を含んでいましたが、結果的には告訴は取り下げられ、法的な審理は行われませんでした。告訴取り下げの理由については様々な見解がありますが、女性の代理人は彼女が多数の脅迫を受けていたと主張していました。
クリントン元大統領、エプスタインの寄付とジェット機での渡航を認める
ビル・クリントン元大統領は、ジェフリー・エプスタインとの関係について、彼の「ひどい犯罪」については全く知らなかったと声明で発表しました。クリントン財団はエプスタインから寄付を受けており、また、クリントン元大統領は2002年と2003年に4回、エプスタインのジェット機でアフリカ、欧州、アジアへ渡航したと認めています。
写真が明かすクリントン元大統領とエプスタインの関係
2019年8月18日にデイリーメールが公開した写真によると、ビル・クリントン元大統領は、ジェフリー・エプスタインのプライベートジェットで移動中、エプスタインのマッサージ師であったシャンティー・デービスさんから肩にマッサージを受けていました。
デービスさんは、当時22歳で、後にエプスタインから何度も性的暴行を受けたと告発しました。彼女は、客室乗務員としてエプスタインのジェット機で働いていたと語っています。
デービスさんは、クリントン元大統領について「チャーミングで優しかった」と述べており、彼が関与した犯罪はなかったと主張しています。それは、クリントン元大統領がエプスタインのジェット機での旅行中に完全な紳士として振る舞っていたという彼女の証言を基にしています。
Bill Clinton gets neck massage from an Epstein victim in never-before-seen photos during trip on pedophile’s plane in 2002 https://t.co/0Ak8KGs3rM pic.twitter.com/DfC7OJ8CXX
— Daily Mail US (@DailyMail) August 18, 2020
アンドルー王子とエプスタイン事件、王族のスキャンダルと事件の波紋
エプスタイン被告との深い関わりを持つとして知られるもう一人の人物は、英国のアンドルー王子です。彼のエプスタイン被告との交流が明らかになったことで、アンドルー王子は2019年に王室の職務から引退を余儀なくされました。
大衆紙”Mail on Sunday”は、エプスタイン被告のニューヨークの住居から出て行く若い女性を見送るアンドルー王子の隠し撮り動画を公開しました。驚くべきことに、この訪問はエプスタイン被告が未成年者に対する性犯罪で有罪判決を受けた後のことだったとされています。
また、バージニア・ジュフリーさんは、エプスタイン被告の性的虐待を受け続けただけでなく、アンドルー王子を含むエプスタイン被告の裕福な友人たちとの性的行為を強制されたと主張しています。ジュフリーさんは、審理を終わらせずに続けるべきだと語っています。彼女はアンドルー王子による性的虐待を3度経験したと証言していますが、アンドルー王子はこれらの主張を繰り返し強く否定しています。
マクスウェル被告に科された刑と罰金、エプスタイン事件の裁判結果
さらに、裁判では「ジェイン」の偽名を用いた女性が証言を行いました。彼女は14歳からエプスタイン被告に性的暴行を受け続けたと述べ、その現場にはエプスタインの元恋人のギレーヌ・マクスウェルが居合わせたと語っています。
彼女が最初にエプスタインとマクスウェルに出会ったのは1994年、ミシガン州の夏のキャンプでのことでした。
マクスウェルは未成年女性たちへの買収斡旋や人身売買など6件の容疑で逮捕され、刑務所に拘置されていました。その後、懲役20年の実刑と5年の監視下で釈放が許されました。彼女はこの時に75万ドル(約1億円)の罰金も科されました。
エプスタインの収監、保釈申請と陰謀論の渦中での拘置所生活
エプスタインが勾留されたマンハッタンのメトロポリタン矯正センターは、その過去の収監者がジョン・ゴッティ、バーニー・マドフ、エル・チャポなどといった重罪犯罪者だったことから知られています。エプスタイン被告が2019年7月6日に逮捕されて以降、彼をめぐる状況は大きく動きました。
逮捕の直後、彼の弁護団は6000万ドル(約630億円)の保釈金を積んでエプスタイン被告の身柄を未決囚用の拘置所から自宅へ移すことを提案しました。しかしこの提案は、「拘置所から出たら『消される』」という陰謀論がインターネット上で渦巻く中、最終的に認められませんでした。
彼は自殺防止のための特別な房で過ごすことになりましたが、彼が不平を言ったという報告はあまりありませんでした。彼が寝る時は、消灯が禁じられていたために靴下を目に当て、わずか1インチ(約2.54cm)ほどの薄いマットレスに仰向けになって眠りに落ちました。彼が唯一不平を言ったのは、矯正センターから提供される下剤についてだったと言われています。
2019年8月10日「エプスタインの自殺」
逮捕から約1ヵ月後の2019年8月10日(土)の早朝、ジェフリー・エプスタインは、自身が収監されていたマンハッタンのメトロポリタン矯正センター内で死亡しているのが見つかりました。彼は当時66歳でした。警察当局は、エプスタインが首を吊って自殺したと発表しました。
エプスタインの自殺から2日後、当時のアメリカ合衆国司法長官であったウィリアム・P・バーは、メトロポリタン矯正センターに「深刻な不備」があったと発言しました。しかし、バー司法長官はその詳細については明らかにしませんでした。その後も彼はこの事件について、「不行届きに不行届きが重なった末の最悪の事態」と非難する発言をしました。
エプスタインの死の謎と監視不備…その真相とは?
エプスタインの死に至る経緯について、彼の収監中の行動とメトロポリタン矯正センターでの手続きに関する疑惑が生まれました。
2019年7月9日の火曜日の午前中、ジェフリー・エプスタインは精神科から推奨された正式な自殺リスク評価の面談を受けていました。面談を行った精神科医の名前は公表されていません。エプスタインは礼儀正しく、協力的であり、混乱することなく、一貫性のある話をし、時折ユーモアのセンスを見せる様子が記録されています。
エプスタインが最初に自殺未遂を行ったのは7月23日で、それは新たな保釈請求が判事から却下された数日後のことでした。その判決の後、エプスタインは自殺監視棟に移されましたが、31時間後には別の棟に移動されています。自殺未遂後のエプスタインは、「素晴らしい人生」を送っていると述べ、再び自ら命を絶つことはないと否定しました。刑務所の精神医に対しても「自殺には関心がない」と語り、自身が痛みに弱く「臆病者」であり、自身がユダヤ教徒であるため自殺は宗教的に許されないとも述べていたとされています。
エプスタインは再度、自殺リスクを評価するための心理評価を受けました。これは、7月31日に彼を法廷に連行した連邦執行官が「自殺傾向」が見られるという「受刑者保護警告」を提出したためでした。しかし、記録によれば、エプスタインは再び精神医を説き伏せ、自殺する意図はなく、裁判で勝訴し「通常の生活」に戻ることに専念していると語ったとされています。
また、8月8日には、弁護人が「エプスタインは精神的に安定しているので、厳重監視の対象から外して欲しい」との申し立てを行い、それが認められました。それにより独房を移動したその夜に、エプスタインは自殺しました。また、彼が自殺した際、拘置所の規定で定められていた「30分ごとの監視」は行われていなかったとされています。
看守の不正行為と監視の不足…自殺事件から露呈した問題
エプスタインを監視していたのが、メトロポリタン矯正センターの2人の看守、トヴァ・ノエルとマイケル・トーマスです。彼らは嘘の供述をし、国を騙そうとした罪で起訴されました。彼らには囚人たちを30分ごとに見回るという指示が出されていたにもかかわらず、職務を怠りながらも収容所の公式記録に見回りを行ったと偽って署名したとされています。
この件は、連邦収容所の看守たちが直面している厳しい労働環境、監視の不足、および腐敗の問題を浮き彫りにしました。ダンカン・レヴィン氏、元ニューヨーク東部地区連邦検事は、「刑事弁護士やMCC(メトロポリタン矯正センター)に出入りしている人なら、そこには深刻な問題が山積みで、環境が劣悪であることを誰もが知っています」とコメントしています。さらに彼は、「このような施設に頻繁に行く人なら、このような事件が起こっても驚かないと思います」と付け加えています。
これは、エプスタインの死をめぐる広がる問題の一部であり、刑務所の管理や監視に対する懸念を強調するものとなりました。看守たちが適切な手順を踏まず、かつ、重要な監視職務を怠っていたことは、収監されている個人に対する責任を果たす上で重大な問題であると指摘されています。
「口封じのため?」まさかの出来事に陰謀論が渦巻く
ジェフリー・エプスタインは長年にわたり、アンドルー王子、ドナルド・トランプ氏(大統領就任前)、ビル・クリントン元大統領などの政治家、有力者、著名人と親交を深めていたため、「自殺」ではなく「口封じのための他殺」だとの憶測も存在します。
エプスタインの家族が依頼し、彼の検死に立ち会った法医学者の一人であるマイケル・バーデン博士は、彼の遺体から「首吊り自殺としては珍しい、絞殺とより一致する特徴」が見つかったと主張し、他殺の可能性が高いと語っています。遺体には、「自殺では非常に珍しい」とされる「甲状軟骨と舌骨の3箇所の骨折」が見つかっていたとされています。
一方で、ニューヨーク市の主任医学検査官バーバラ・サンプソン氏は、バーデン博士の意見とは異なり、「調査の結果、エプスタインの死因は首吊り自殺によるものだと結論づけました。私たちはこの決定に自信を持っています。エプスタインの家族や親族、病理学のコンサルタントと医療調査の情報を共有しました。医療調査は徹底的に行われ、我々には二度目の調査を行う理由はありません」とコメントしています。
しかし、バーデン博士によれば、検死を行った病理学者であるクリスティン・ローマン博士は、エプスタインの死因が首吊り自殺だと結論づけることに疑問を抱き、「保留」としたとのことです。しかし、その1週間後にサンプソン氏が死因を「自殺」に変更したとバーデン博士は説明しています。
監視カメラ映像の紛失と削除、内部での不正疑惑浮上
2019年12月20日、ジェフリー・エプスタインの元同房者に関する審理で、検察側はある映像の所在が不明であると発表していました。しかし翌日、その映像は発見されたと報告されました。「本日未明、合衆国政府がメトロポリタン矯正センター(MCC)職員に確認したところ、問題の映像は被告側弁護人の要請を受けたMCC職員により保管されておりました」と、ジェイソン・スワーゴールド連邦検事補は判事に報告しました。
監視カメラ映像の消失と再発見、エプスタイン事件の疑念を増大
しかし、問題の映像についてはさらに混乱が生じました。連邦検事は裁判官に対し、MCCが「MCCの別の階のビデオを誤って保存した。結果、2019年7月22-23日に被告の房の外部から撮影されたビデオは、もはや存在しない」と説明しました。さらには、FBIは技術的エラーにより、この映像がバックアップシステムにも保存されていないと結論付けました。
この映像の消失と再発見、そして最終的な消失は、エプスタインの死にまつわる疑念を増大させることとなりました。適切な保管やバックアップが行われなかったために証拠が失われたとすれば、それは法的手続きの中での重大な過失と言えるでしょう。この事件は、司法制度とその透明性に対する信頼を損なう結果となりました。
バー司法長官がエプスタイン自殺後のMCCに深刻な不備を指摘
ジェフリー・エプスタインの自殺2日後、当時のアメリカ司法長官ウィリアム・P・バーは、メトロポリタン矯正センターに「深刻な不備」があったと発表しました。具体的な詳細は提供されませんでしたが、彼はプレス会見で「司法省全体が愕然としました。率直に言って、MCCが十分にこの囚人を保護できなかったことに怒りを覚えました」と述べ、施設に対する深刻な違反と調査が必要であることを強調しました。
バー長官は、「FBIと監察官が調査を既に開始している」とし、「MCCで起きたことの真相を探り、この失敗に対する責任を明確にする」と続けました。
公務員組合がエプスタイン事件を受けて刑務所管理の懸念を訴え
これに対し、7万人の政府職員が参加する組合であるアメリカ公務員連合(AFGE)は反発しました。彼らはツイッターで「トランプ大統領による刑務所局の雇用の凍結に警鐘を鳴らしてきた。結果として数千人のスタッフの空きができ、これら職員不足が職員と受刑者に危険な状態を作り出している」と指摘しました。
これらの発言は、エプスタインの死に関する疑念だけでなく、全体的な矯正施設の管理と運営についての深刻な懸念を浮き彫りにしました。
エプスタインの死による陰謀論の急速な広まり
ジェフリー・エプスタインの自殺ニュースが広まると、政府当局から被害者に至るまで、エプスタインがどうして自殺を可能とする状況にあったのかという疑問の声が次々と上がりました。エプスタインが裁判で証言台に立つことができれば、他の関与者が露見する可能性もあったのです。
当局はエプスタインの死について捜査を開始しましたが、事実収集のペースは遅く、その間に陰謀説が急速に広まりました。自殺を疑問視する声、彼の死が他者による口封じの可能性を指摘する声、さらにはエプスタインが死んでいないという陰謀論まで、インターネット上で拡散されました。
エプスタインの死と政治利用…トランプと陰謀論の拡散戦略
ジェフリー・エプスタインの死に関する陰謀論は、驚くべきことにアメリカ大統領ドナルド・トランプによっても拡散されました。彼は、「エプスタインはビル・クリントンの秘密を握っていたが、死亡した」とするコメディアン、テレンス・K・ウィリアムズのツイートをリツイートしました。そのツイートは「エプスタインがビルとヒラリーに殺された」という無根拠の陰謀説を指していました。
この事態に対して、司法長官ウィリアム・P・バーは「今後も原告のための真実追求を継続することには変わらない」と表明しました。一方で、トランプのこの行動には大きな反発が起きています。特に、この行動は「国民の信頼を利用し、根拠のない陰謀説を使って政敵を攻撃するという一例だ」と非難されました。
トランプ大統領は、ウィリアムズ氏について「とても尊敬されている保守派の有識者」と述べ、自分がその人による陰謀論ツイートを拡散したことを擁護しました。「彼はすごいトランプ・ファンなんだ。それにあれはリツイートで、僕が書いたわけじゃないから。だから自分のしたことは大丈夫だと思う」と彼は言いました。
このような背景の中、オルーク氏は、トランプ大統領がテキサス州とオハイオ州での大量銃乱射事件を受けて銃規制強化に向けた機運やトランプ氏自身への批判が高まる中、世間の関心をそらす戦略として陰謀説を利用していると批判しました。
未曾有のパンデミックと広がるQアノンの影響
エプスタイン事件の陰謀論が広がる中、2019年8月にFBIは、QAnonを国内テロを引き起こす可能性のある危険な運動と認定しました。しかし、その後もQAnonのインターネット上での活動は止まることはありませんでした。
2023年に突入し、新型コロナウイルスの大流行が始まると、QAnonの影響力が一層増したのです。特に、3月からアメリカの都市部でロックダウンが行われ、多くの人々が自宅に閉じ込められました。この結果、インターネットを頼りに生活を送る人が増え、QAnonに触れる機会が増大しました。
こうした状況が、QAnonの信者数増加につながったと見られています。ロックダウンによる自宅待機が増え、インターネット時間が増えたことで、初めてQAnonの情報に接触し、その陰謀論に取り込まれる人々が急増したのです。
こうして、QAnonはコロナ禍を背景に、その影響力を一層拡大することになりました。
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