【戦争プロパガンダ⑤】気づいた時には終わっていた……。サイバー大国ロシアの緻密なハイブリッド戦争『2014年 クリミア併合』

「ハイブリッド戦争」という言葉が注目される中、2014年に起こったクリミア危機はその代表例として知られています。ロシアがウクライナのクリミア半島を併合したこの事件は、軍事的手段と非軍事的手段を組み合わせた戦術であるハイブリッド戦争の典型的な例となりました。

本記事では、クリミア危機の背景や経緯を詳しく解説しています。国際社会の関心を集め、世界政治の勢力図に大きな変化をもたらしたこの歴史的な出来事を理解する上で、必読の記事といえます。

【戦争プロパガンダ④】サイバープロパガンダを駆使した新時代の戦争『ハイブリッド戦争』
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国際社会というのは厳しいもので、 おとなしい平和国家であっても、凶暴な他国から攻撃されることがあります。 ここまで似た状況にあるウクライナと日本は、同じ結末にたどり着く危険性が十分にあると思います。 ウクライナに対して用いられたロシアの共産主義的手法は、今、中国によって日本に対して用いられています。 その最も顕著な例が沖縄と尖閣諸島です。 沖縄は第二のクリミアになりかねません。 (「はじめに」より)

“Accession of Crimea to Russia

【ハイブリッド戦争】2014年 クリミア併合

Thread And Anchor Films LLC/YouTube

ハイブリッド戦争とは、軍事的手段と非軍事的手段を組み合わせた戦術で、情報操作、経済的圧力、サイバー攻撃、政治工作、特殊部隊の使用などが含まれます。

2014年のクリミア危機では、ロシアがハイブリッド戦争を用いてクリミア半島を事実上の無血占領し、併合を実現しました。これにより、ハイブリッド戦争が国際社会の関心を集めるようになりました。

クリミア危機の結果、多くの国々がロシアに対して経済制裁を実施し、国際政治の勢力図に大きな変化がもたらされました。また、この出来事は東西冷戦終結後の緊張関係が再び表面化した瞬間でもあり、新たな軍事・政治的対立が生まれることを示唆しました。

クリミア併合の背景

ソ連崩壊後、ウクライナは汚職や経済成長の停滞など、さまざまな問題に直面しました。2000年代には欧州連合(EU)との良好な関係を築こうとし、EUとの連合協定を結ぶ協議を行いました。しかし、ヤヌコーヴィチ大統領が協定に署名する意思を示しましたが、最終的には署名を拒否しました。

この背景には、経済難から目先の「冬を越す」ために、ロシアとの接近を図ったことがあります。しかし、この行動がユーロマイダンにつながる反政府デモを引き起こし、治安部隊はデモ活動の鎮圧に努めましたが、デモ活動は高まるばかりで、激しい衝突が起こりました。

2014年2月21日にヤヌコーヴィチ大統領と野党リーダーらが危機回避の文書に署名し、政権側は憲法改正、大統領選の早期実施などの譲歩を行いました。しかし、ヤヌコーヴィチ大統領は首都を離れて、ウクライナ東部に脱出し、憲法改正法への署名を拒否しました。

2014年2月23日、最高会議はこれを職務放棄と見なして大統領の失職を宣言し、代わりに議会議長のトゥルチノフが大統領代行を兼務することになりました。

2014年2月24日、ウクライナの新政府はヤヌコーヴィチ元大統領に向けた逮捕状を発行しました。この発表により、政治的混乱がさらに拡大しました。

ソチ五輪とクリミア半島侵攻

2014年2月7日から23日までの17日間、ロシアのソチで第22回オリンピック冬季競技大会(冬季五輪)が開催された。これは、1991年のソ連崩壊後の混迷から、資源エネルギーの価格高騰を背景に地力を回復させたロシアにとって、大国復活をアピールする重要なイベントであった。しかし、大会閉幕直後の2014年2月23日に、ロシアはウクライナ領クリミア半島への侵攻を開始し、世界中を驚かせた。

クリミア半島のセヴァストポリでの親露派住民の行動

2014年2月23日、クリミア半島のセヴァストポリでは、親露派住民が独自の行動を起こすことで、政治的な独立を示そうとしました。住民集会において、キエフからの指示に従わないことを決議し、さらに独自の「人民市長」を選出しました。

マイダン革命後、親ロ派とクリミアタタール人が衝突

2014年2月26日、クリミア半島で原住民系クリミアタタール人と新ロシア派住民の間で小競り合いが発生した。この出来事は、政変後のクリミア半島における民族間・政治的対立が深刻化していることを示す象徴的な出来事であった。

親ロ派武装集団による政府・議会占拠

2月27日、親ロシア派の武装集団がクリミア半島の政府および議会を占拠しました。この行動は、親ロシア派の影響力拡大とクリミア半島の政治状況変化の一因となりました。

武装部隊が占拠した議会では、首相が解任され、親ロシア政党のアクショノフ氏が新首相に就任しました。アクショノフは、クリミアが新たに創設した独自の「軍隊」組織の司令官も務めることになりました。

同日、議会はクリミア半島の自治権拡大の是非を問う住民投票を5月25日に実施することを決めました。また、投票で政権が親露派の議会に譲り渡されることも決定されました。

UKRAINE TODAY/YouTube
アクショノフの首相就任とその不透明な経緯

首相選出は、ロシア軍と疑われる武装集団が議会を封鎖する中で行われました。非公開の密室での選出であり、出席議員の数も半数以下だったことから批判が出ています。

犯罪組織との過去の関与の疑惑

AP通信によると、アクショノフは「ゴブリン」というあだ名を持ち、過去に犯罪組織と関わった経歴もあると報じられています。地元の記者たちも、「地元マフィアと深い関係があったことは事実。突如、首相となった背後に、ロシアがいることも間違いない」と指摘しています。

地方政府庁舎・警察署などを“謎の武装勢力”が襲撃!

2014年2月28日、クリミア半島では、国籍マークを外した兵士たち(リトル・グリーンメン)が活動を開始しました。彼らはベルベク空軍基地に到着し、滑走路を封鎖。さらに、シンフェロポリにある空港も武装集団によって占拠されました。

これと同時に、リトル・グリーンメンたちは地方政府庁舎や警察署などを襲撃し、破壊工作を開始しました。彼らは、ロシア軍に似た戦闘服を着用しており、ロシア製の武器を装備していましたが、階級章や部隊章などの徽章は着けておらず、どこかの国の正規軍ではないような印象を与えていました。

ロシア特殊部隊と判明したの後の話

当初、メディアがリトル・グリーンメンの所属を尋ねても、「教えられない」と回答されていたため、彼らの正体は謎に包まれていました。

その後、リトル・グリーンメンがロシア軍特殊作戦部隊であることが判明しました。彼らは、クリミア半島の政治情勢を利用して秘密裏に活動し、ロシアのクリミア併合のための状況を整える役割を果たしていたとされています。

VICE News/YouTube

謎の部隊が展開すると同時にサイバー攻撃

クリミア半島に緑色の軍服を着た部隊が姿を現すと同時に、ウクライナ独立通信社、国家安全保障・国防会議、クリミア最高会議、クリミア独立住民投票のウェブサイトがDDoS攻撃を受けました。

ウクライナ政府系機関のシステムにマルウェアが秘密裏に埋め込まれていたことが、米マイクロソフト社の調査で判明しました。

これらのマルウェアは攻撃指示を受けて初めて起動する潜伏型で、有事の際に政府システムを不全化する可能性がありました。

“謎の集団”がクリミアの通信センターを占拠「ネットケーブルを物理的切断」

2014年2月28日、クリミア半島のウクライナ国営通信事業者「Ukrtelecom」がサイバー攻撃を受け、通信サービスが妨害された。

さらに、正体不明の人員がUkrtelecomの施設を占拠し、インターネットケーブルを切断しました。これによってクリミア半島は他のウクライナ地域とのインターネット接続が完全に遮断されました。

サイバー封鎖の影響

クリミア半島がインターネット上で孤立し、ロシアがクリミア半島でのインターネット活動を自由に管理できるようになりました。この状況はサイバー封鎖と呼ばれています。

ロシア軍による電波妨害とフェイク情報の拡散

ロシア軍はクリミア半島の一部地域で携帯電話サービスが利用できないよう、電波妨害機を使用しました。これにより、住民は通信手段が制限され、情報収集が困難になりました。

携帯電話の一時的な使用不能とフェイク情報の拡散

携帯電話が一時的に使用不能になった後、機能が回復した際には、ロシア軍は大量のフェイク情報をメールやSNSを通じて拡散しました。

フェイク情報の拡散により、ウクライナの住民はどの情報が真実か判断できず、混乱に陥りました。

「ロシア系住民に危機」ロシアからのフェイクニュース

クリミア危機の際、ロシアはフェイクニュースや偽情報の拡散を通じて情報戦・心理戦を展開しました。これにより、現地のロシア人住民にウクライナ政府への反感を煽ることができました。

ロシアはロシア語メディアやSNS上で、「政治的にはウクライナ国民だが、民族的にはロシア人と同じだ」と主張し、さらに「キエフでの政変の黒幕は米国だ」「ウクライナの親西欧派住民はナチス支持者やファシストの末裔だ」「ロシア政府は関与しておらず現地住民による運動である」「民族主義者による虐殺でクリミアのロシア人に危機が迫っている」といったフェイクニュースを拡散しました。

これにより、現地のロシア人住民がウクライナ政府に対する不信感を抱くようになりました。

ロシアは「クリミアはソ連からウクライナへプレゼントされたものだ(つまりもともとはロシアのものである)」といった真贋のややこしい偽情報も流布しました。これを、ロシアはクリミアへの権利を主張する根拠として使用しました。

これらの情報戦・心理戦は、ロシアがクリミア半島の支配を確立するために重要な役割を果たしました。

ロシア軍の電子戦と虚偽指令による戦術

ロシア軍は電子戦でウクライナ軍の無線通信の利用を妨害しました。これにより、ウクライナ軍は司令部などとの連絡に携帯電話を使用せざるを得なくなりました。

ロシア軍はウクライナ軍兵士の携帯電話に虚偽指令を送信しました。これにより、展開拠点の変更や、「攻撃されるから逃げろ」など、兵士の士気を低下させる目的のメッセージが送られました。

虚偽指令に従ってある地点に誘導されたウクライナ軍兵士は、ロシア軍による待ち伏せ攻撃を受けることとなりました。これにより、ウクライナ軍は大きな損害を受けることとなりました。

SETC17: Ukraine
電子戦の概要

電子戦は、電磁波(電波など)を利用して行われる戦術です。主に3つのカテゴリーに分けられます。

  1. 電子攻撃:電子攻撃は、敵の通信機器やレーダーに強い電波を当てて機能を妨害する手法です。これにより、敵の通信や情報収集能力を低下させることができます。
  1. 電子防護:電子防護は、敵の電子攻撃を無効化するための手法です。電波の周波数を変更したり、出力を増加させることで、敵の攻撃を受けずに通信やレーダーの機能を維持することができます。
  1. 電子戦支援:電子戦支援は、敵の使用電波を把握し、攻撃や防御のための情報を収集する手法です。これにより、敵の通信やレーダーの特性を理解し、効果的な電子攻撃や防護策を立案することができます。

電子戦とサイバー攻撃

ロシア軍は電子戦によってウクライナのレーダーを使用不能にしました。これにより、ウクライナ軍は空中や地上の状況を正確に把握することが困難になりました。

ロシアはサイバー攻撃を通じて、ウクライナの発電所やメディア機器を乗っ取りました。これにより、ウクライナのインフラや情報発信が大幅に妨害されました。

GPSが使用不能になったことで、偵察用のドローンは自己位置を把握できず、地上へ降下したまま動かなくなりました。これにより、ウクライナ軍はドローンによる情報収集が困難になりました。

市民のデモ隊がインフラ設備を襲撃!

クリミア半島では、錯綜した情報が市民に与えられることで混乱が生じました。デモ隊がインフラ設備に押し寄せ、占拠することによって、電源が落ちてしまう事態も発生しました。

占領されたラジオ局からフェイクニュース

停電状態の中、市民たちが頼りにしていたラジオ局もデモ隊に占拠され、ラジオからはフェイク情報が流し続けられました。

市民のデモ隊はロシア軍だった

後に、インフラ設備を占拠したデモ隊は、実はロシア軍であることが判明しました。このような混乱を利用して、ロシア軍はクリミア半島の支配を確立し、ウクライナ政府との対立をさらに悪化させる結果となりました。

様々な勢力を動員されていた

ロシアはクリミア半島の支配を確立するために、正規軍だけでなく非正規の手段も用いました。現地の一般住民やクリミア・コサックと呼ばれる民族主義勢力、暫定政権からの報復を恐れてキエフ(キーウ)から逃れてきた内務省治安部隊「ベルクート」の元隊員たち、そしてロシアのカバルディノ・バルカル共和国からクリミアに入ったコサックなどがその例です。

これらの非正規勢力は、おそらくロシアの情報機関によって扇動されたと考えられます。これにより、ロシアは正規軍と非正規勢力を組み合わせることで、より効果的にクリミア半島での支配を確立しました。

「ロシア系住民を保護」ロシアが軍の投入を承認

2014年3月1日、ロシアのウラジミール・プーチン大統領は、ウクライナのロシア系住民の保護を理由に、ロシア軍のウクライナへの投入を国家上院(連邦評議会)に求めました。国家上院はこの要求を全会一致で承認しました。

ロシア軍がクリミアに上陸

2014年3月2日、ロシア軍の歩兵部隊は、クリミア半島内の主要なウクライナ軍基地を包囲しました。これには、ウクライナ沿岸警備隊第36旅団のペレバルネ基地、海軍海兵隊のフェオドシヤ基地、対空ミサイル部隊のエフパトリア基地などが含まれていました。ウクライナ軍部隊は無抵抗のままロシア軍の管理下に置かれました。

ウクライナ海軍のデニス・ベレゾフスキー総司令官は親ロシア派に投降し、セヴァストポリにある海軍本部を明け渡しました。彼はその後、「クリミア海軍司令官」に任命され、ロシアによるクリミアの併合後はロシア黒海艦隊副司令となりました。

ABC News/YouTube

2014年3月3日、ロシアはクリミア半島に駐留する軍隊を増派し、ウクライナ南部のクリミア半島に実効支配を強化しました。フェリーで上陸し始めたロシア軍は、ウクライナ国境警備隊の検問所で武装した7人を乗せたバス2台を止めようとしましたが、その後ロシア軍が検問所を占拠しました。

その後、ロシア軍兵士を乗せたトラック3台がフェリーで到着し、ウクライナ軍に対して投降を求める最後通告が出されました。

3月5日までに、ロシア軍は籠城するウクライナ軍を降伏させることに成功し、大部分のウクライナ軍兵士はロシア軍で契約軍人となることに同意した。

《プロパガンダ》ロシア国内の別の襲撃事件を偏向報道「ロシアが守っている」

ロシア軍がクリミア半島に進撃すると、タイミング良くウクライナ各地でユダヤ教の教会への襲撃事件が起こりました。ロシアのテレビ局は実際とは無関係の混乱を、まるでクリミアからの生中継であるかのように報道しました。

武力侵攻したロシア軍兵士が「自警団」に見せかけ、ウクライナの戦闘員と戦っているかのように映し出されたのです。テレビカメラの前で、ロシア軍とウクライナ市民との街頭戦は演出されていました。

ロシアのSNSで拡散された、ウクライナのドンバス地方の炎上する戦車の写真は、実際は中国で同種のロシア戦車が炎上していた事件の写真でした。

また、ロシアメディアが「ファシズムとの戦い」をうたって義勇兵を募集した記事では、ナチス・ドイツの象徴であるカギ十字をつけた、ウクライナ国旗を掲げる戦車の写真が拡散しました。しかし、この元の写真はロイター通信が配信したもので、カギ十字は捏造されたものでした。

これらの例からわかるように、ロシアは情報戦を巧みに利用し、国際社会や現地住民の意識に影響を与えることで、クリミア半島での立場を強化しました。

ロシア軍?とみられる謎の部隊がウクライナ軍基地を包囲

クリミア半島のシンフェロポリ近郊では、2014年3月4日にもロシア軍とみられる部隊がウクライナ軍の基地を包囲する様子が見られました。しかし、プーチン大統領は、ウクライナ軍基地を包囲しているのは「地元の自警団」だと言明しました。

クリミアでの作戦にロシア軍が参加したかという質問に対しては、「いや、参加はしていない」と断言し、自身特有の笑みを浮かべて「似たような軍服はたくさんある」と述べました。

クリミアの首相「武装勢力はロシア人ではない」

クリミア共和国のアクショノフ首相は2014年3月5日、CNNとの単独会見で、武装部隊がロシア人ではないと主張し、軍の主要施設の警護はクリミアの住民が担っていると言明しました。ただし、ロシア軍に以前従軍していた住民がロシア軍の制服を保有し続けている場合もあると説明しました。

このような発言は、ロシアがクリミア半島での軍事行動について、あくまで地元の自警団が行っていると主張することで、国際社会への非難を避ける狙いがあったと考えられます。

CNN/YouTube

クリミア議会がロシアに加入の是非を問う「住民投票の実施」

2014年3月6日、クリミア議会はロシア連邦への加入を決定し、クリミア半島の国家的帰属を問う住民投票を3月16日に実施することを決定しました。

しかし、この住民投票は国際的に批判を受け、ウクライナ政府や西側諸国は違法であるとして認めませんでした。

RTVE/YouTube
オバマ大統領(アメリカ)は声明で「住民投票を完全に拒否する」

2014年3月12日、当時のアメリカ大統領バラク・オバマはウクライナの暫定政権首相アルセニー・ヤツェニュクとホワイトハウスで会談し、3月16日にクリミア自治共和国で予定されていたロシアへの編入の賛否を問う住民投票を「完全に拒否する」と述べました。

同日、G7(主要7か国)とEU(ヨーロッパ連合)の首脳は、住民投票の結果を認めないという声明を発表しました。声明では、住民投票がウクライナ憲法に違反しており、威嚇的なロシア軍の存在を踏まえて道徳的効力を持たないと強調されました。また、ロシア軍に対して駐屯地への撤退を求め、ウクライナ政府との直接対話を促しました。

PBS NewsHour/YouTube

ロシアがお得!?クリミアの地上波はロシア国営放送

住民投票を実施するのに際し、ロシアは世論工作を行いました。この工作の一環として、クリミア半島内のウクライナのテレビ局の放送を停止し、ロシアの国営テレビに切り替えました。

これにより、政変後のウクライナ国内の混乱とロシア併合のメリットが強調され、多くの住民が賛成に回るような”流れ”が作られました。

クリミア半島周辺の住民は、主要言語がロシア語であり、ロシア文化のもとで暮らしている人々です。また、多くの住民は高齢者であり、年金受給者であるため、ロシアはロシアの年金とウクライナの年金を具体的に説明しました。ロシアの年金はウクライナのそれに比べて高額であり、これが住民の支持を取り付ける要因となりました。

投票の結果!賛成多数でクリミアはロシアに併合が決定

2014年3月16日のクリミア半島の住民投票の結果、クリミア自治共和国で96.8%、セバストポリ市で95.6%がロシア編入に賛成しました。これを受けて、クリミア自治共和国のアクショーノフ首相は16日夜に「われわれはロシアに入る」と宣言しました。

住民投票の結果を受け、ロシアはクリミア自治共和国とセバストポリ市とそれぞれ編入に関する条約に調印しました。

プーチン大統領がロシア併合を承認!

2014年3月18日、ロシアのプーチン大統領は、クリミア半島での住民投票で圧倒的多数がロシアへの編入を支持したことを受けて、クリミア併合を宣言しました。プーチン大統領は、「クリミアはロシアの固有の領土であり、セバストポリはロシアの町だ」と述べ、「強力で安定した主権の下に存在しなければならない。それはロシアだけだ」と語りました。

プーチン大統領はクリミアの住民投票が「国際法にのっとり、民主的な方法で行われた」と主張し、ロシアとクリミアは「分けることが出来ない土地であった」と強調して、編入を正当化しました。演説後、プーチン大統領はクリミアの首相とともに編入のための条約に署名しました。

その後、憲法裁判所による判断やロシア議会による条約の批准手続きが行われ、4月1日に発効しました。

国連はクリミアの投票結果は無効を採択もロシアは無視

2014年3月27日、国連総会はウクライナのクリミア半島で実施された住民投票に正当性はなく、ロシアによるクリミア併合は無効であるとする決議を採択しました。決議では、クリミア半島の住民投票はウクライナ憲法に違反し、国際法に反するとされました。

国連総会の採択した決議は、ロシアによるクリミア併合を非難し、ウクライナの領土保全を支持するもので、国際社会の大部分がクリミア併合に反対していることが示されています。しかし、国連総会の決議は法的拘束力はなく、ロシアによるクリミア半島の事実上の支配は続いています。

【危険な前例】ロシア軍がクリミアの軍事拠点を全て制圧

2014年3月25日、ロシア軍はクリミア半島の軍事拠点をすべて制圧し、ウクライナ軍を排除しました。クリミア併合において、ロシアは情報戦も展開しました。

クリミアとウクライナ本土との有線通信網が切断され、ウクライナのテレビ局のクリミアでの放送が停止し、インターネットや携帯電話の通信が妨害されました。これにより、ロシアがクリミア半島の情報を完全にコントロールすることが可能となりました。

プーチン政権は、「ロシア人保護」を口実にクリミア半島の併合を実行し、旧ソ連地域にとって危険な前例を作りました。

The New York Times/YouTube

たった3週間でクリミアを併合

2014年のロシアによるウクライナ侵攻では、ウクライナの情報インフラに対して秘密裏にサイバー攻撃が行われました。この攻撃により、ウクライナの通信網や情報システムが混乱し、ウクライナ軍の対応能力が大幅に低下しました。ロシア軍はこの機会を利用して、迅速かつ効果的にクリミア半島を制圧しました。

それはたった3週間の出来事で、人口約250万人のクリミア半島は事実上無血占領され、ロシアの支配下に置かれました。

ロシアの支配下に入ったクリミアでの「飴」と「鞭」

クリミア併合後、ロシアは着実にロシア化戦略を進めました。わずか2ヶ月後には、街中でロシアを歓迎する市民の集会が開催され、プーチン大統領の写真を飾る店舗も増えました。ロシア政府は、生活の向上や年金の増額などの政策を実施することで、クリミアの市民に対して「飴」としての利益を提供しました。

一方で、ロシア政府は「鞭」の側面も見せており、旧ソ連時代を思わせるような情報統制が行われました。ウクライナのテレビ局のクリミアでの放送が停止され、ロシアの国営テレビに切り替えられました。

これにより、ロシア政府はクリミアの市民に対して自らのメッセージを効果的に伝えることができ、ロシア化戦略をさらに進めることができました。

ロシア国民はこの事件を侵略だとは思っていない

クリミア半島の併合は、国際社会から「ロシア=無法者国家」という烙印が押されることになった出来事でした。ウクライナの領土を一方的に切り取る侵略行為ではありましたが、ロシア国内では見方が全く異なりました。

「今、国民がロシアを誇れることが三つだけある。第2次大戦での勝利、ガガーリンの宇宙初飛行、そしてクリミアなのです」という社会学者アレクセイ・レビンソンの言葉が示すように、ロシアでは「クリミア併合」とは言わず、「復帰」や「編入」という言葉を使い、クリミアが「もともとロシアのものだ」という意識を持っています。

欧米側も経済制裁のみ「プーチンのロシア国内での支持率は上昇」

欧米諸国は、クリミアの併合に対して軍事的な手段で対抗せず、「冷戦終結後、最も重大な国際法違反」として非難し、経済制裁措置を取るにとどめました。プーチンの「電撃作戦」は、結果的に功を奏しました。

ロシアがクリミアを併合した直後、プーチンに対するロシア国民の支持率は一時約80%にまで上昇しました。

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国際社会というのは厳しいもので、 おとなしい平和国家であっても、凶暴な他国から攻撃されることがあります。 ここまで似た状況にあるウクライナと日本は、同じ結末にたどり着く危険性が十分にあると思います。 ウクライナに対して用いられたロシアの共産主義的手法は、今、中国によって日本に対して用いられています。 その最も顕著な例が沖縄と尖閣諸島です。 沖縄は第二のクリミアになりかねません。 (「はじめに」より)

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