【戦争プロパガンダ④】サイバープロパガンダを駆使した新時代の戦争『ハイブリッド戦争』

【戦争プロパガンダ④】サイバープロパガンダを駆使した新時代の戦争『ハイブリッド戦争』

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【戦争プロパガンダ③】SNS時代!フェイクニュースが世論を作り上げる『サイバープロパガンダ』
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戦争は戦場だけではない! いかに低コストで最大限のダメージを敵国に与えるか。執拗なサイバー攻撃、SNSを利用したプロパガンダ、暗躍する民間軍事会社――世界を脅かすプーチン流「現代戦」と日本の安全保障のリスクとは?(「Books」出版書誌データベースより)

Hybrid Warfare

サイバー空間を駆使した新時代の戦争「ハイブリッド戦争」

NATO/YouTube

「ハイブリッド戦」とは、戦闘機、艦船などの軍事力だけに頼らない作戦だ。例えば、軍艦ではない船舶による領海侵入や上陸、正規軍ではない武装兵の動員、電力や通信網といったインフラ破壊、サイバー攻撃によるフェイクニュースの拡散などで相手を攪乱(かくらん)し、知らぬ間に優位な状況をつくり出すことを狙いとする。

【日本復喝!】台湾が警戒する中国〝ハイブリッド戦〟 情報戦やサイバー攻撃で相手を攪乱し、無血併合を画策か 日本国内でも不可解な事案発生の危険性/zakzak.2022
無差別テロ・犯罪までも利用。新しい時代の戦争の形式

(前略)無差別テロ、犯罪など、多様な手法を複合的に用いるような、多面的な姿をした戦争のことを指す。

中国が仕掛ける「ハイブリッド戦争」に、日本が抵抗できない理由/ダイヤモンド・オンライン.2021

 要するに、今日の戦争は、もはや正規軍同士の武力行使には限られなくなったということである。20世紀における戦争のイメージとは違うのである。

中国が仕掛ける「ハイブリッド戦争」に、日本が抵抗できない理由/ダイヤモンド・オンライン.2021

フランク・ホフマン(Frank Hoffman)は、ヒズボラとイスラエル軍の戦いを分析し、この弱者による戦いを、はじめてハイブリッド戦争と呼び、それを正規軍のみならず非正規軍の軍事行動も含めるものと定義した。

ハイブリッド戦争とは何か――21世紀における戦争の新たな形態/SYNODOS.2021
中国が日本に対してやっているのもハイブリッド戦争の一つ

アジアに目を転ずると、中国は、東シナ海や南シナ海において、グレーゾーン戦略を続けており、それらは今日ではハイブリッド戦争の一つとみなされている。

ハイブリッド戦争とは何か――21世紀における戦争の新たな形態/SYNODOS.2021

 中国人民解放軍政治工作条例では、「輿論戦、心理戦、法律戦(編集部注:これらを合わせて「三戦」ともいう)を実施し、瓦解工作(中略)を展開する」と定められている。17年以降の中国では「制脳権」という言葉がもてはやされ、認知領域の戦いでの勝利も重視されるようになってきている。

【限定公開】主戦場となるサイバー空間 〝専守防衛〟では日本を守れない/WEDGE Infinity.2021

ハイブリッド戦争先進国!!サイバー大国「ロシア」

Red Square

 サイバー戦を通したハイブリッド戦争の先頭を走るのはロシアだ。2013年、ロシアのワレリー・ゲラシモフ参謀総長は、ハイブリッド戦争を「宣戦布告なく行われる政治、経済、情報、その他の非軍事的措置を、現地住民の抗議ポテンシャルと結合させた非対称的な軍事行動」だと規定した。ロシアには3万~5万人規模のサイバー戦専門部隊がいる。

【韓国紙】ハイブリッド戦争/オピニオンの「ビューポイント」
ロシアのハイブリッド戦争の主軸は諜報機関!

ロシアによるハイブリッド戦争の主軸は、サイバー攻撃と情報戦・宣伝戦により、実戦を避けつつ、相手に打撃を与えることである。サイバー攻撃は国家支援型の性格が強く、GRU(ロシア連邦軍参謀本部情報総局)やSVR(連邦対外情報庁)、FSB(連邦保安庁)などが行っている。心理戦も効果的に展開しており、フェイクニュースをSNSなどで拡散している。

2022年度防衛産業委員会総会を開催/一般社団法人 日本経済団体連合会 / Keidanren.2022

ロシアが旧ソ連圏でハイブリッド戦争の実証実験を開始

cccp soviet union USSR

(前略)ロシアの情報機関が実験場として選んだのが、エストニアやウクライナといった旧ソ連圏である。

偽情報で世界を攪乱 ロシアの「積極工作」/WEDGE Infinity.2022

2007年、エストニアの首都タリンの中心部にあったソ連時代の戦没者慰霊碑を軍の墓地に移すという決定がされた時、隣国でありかつての宗主国であるロシアとの外交問題に発展した出来事がありました。 ロシアの外交官から抗議と怒りの声明が出される中でエストニアが撤去作業を進めた結果、当時一国に対しては最大とされるサイバー攻撃の標的となりました。

世界最先端のIT国家、エストニアを知っていますか【第7回】ゼロトラスト時代のサイバー攻撃への備え/UNIADEX ユニアデックス株式会社.2021

【青銅の夜】IT立国エストニアへの大規模サイバー攻撃

International Centre for Defence and Security/YouTube

 エストニアは激動の歴史を歩んでいる。近代だけを見ても、1940年に旧ソ連によって併合され、41年に独ソ戦勃発後はナチス・ドイツに占領された後、44年に旧ソ連に再占領された。独立を回復したのは91年である。

エストニア国家機能をまひさせた大量のDDoS攻撃/毎日新聞.2018

エストニアは、独立時に取り残されたロシア系住民の問題を引きずっている。

Black Hat USA 2007 – 初の”サイバー戦争”!? 狙われたIT先進国エストニア/TECH+総合トップ – マイナビニュース.2007
「タリン解放者の記念碑」
AP Archive/YouTube

 加えて、両国関係を決定的に悪化させたのが2007年の「タリン解放者の記念碑撤去事件」である。

ロシアとエストニアの領土問題解決北方領土への影響は?/Wedge ONLINE.2014

エストニアの首都タリンにある第二次大戦のロシア兵墓地には、2メートルもあるロシア兵士のブロンズ像が立っていた。

いまだ静かなロシアのサイバー攻撃 ロシアにやられたエストニアから学べる教訓とは/Yahoo!ニュース/2022

高さ2メートルほどもあるその像は、第2次世界大戦直後の1947年に、ロシアの占領下にあったエストニアのロシア兵墓地に設置されたもので、ロシア人からは大戦の勝利に貢献した英雄の像として崇められていた。

日本人が知らない「ネット覇権」の世界的闘争/東洋経済ONLINE.2022
「英雄 or 占領」ロシアとエストニアの認識の違い

ソ連兵士をかたどったこの像が、ロシアにとってはソ連による「エストニア解放の象徴」であり、他方、エストニアにとってはソ連による「エストニア占領の象徴」であることは、周知の通りである。1940年、独ソ不可侵条約の付属文書であるモロトフ・リッペンドロップ協定によって、エストニアのソ連への併合は実行に移されたわけだが、この併合についてのロシアとエストニアの歴史認識は、完全に相容れない。

ロシアとバルト三国の国境問題~歴史認識と現実政治の狭間/JIIA -日本国際問題研究所-.2007
エストニアは像の撤去を検討

1991年にソビエト連邦から独立を回復したエストニアは2007年、ソビエト時代の1947年に建てられたこの像の撤去を検討していた。

いまだ静かなロシアのサイバー攻撃 ロシアにやられたエストニアから学べる教訓とは/Yahoo!ニュース/2022

エストニアに暮らすロシア系住民は、この像を、第二次大戦中にナチス・ドイツと戦って犠牲を払いながら勝利した象徴としてきた。一方で、エストニア住民にしてみれば、この像はソビエトによる侵略の象徴に他ならなかった。

いまだ静かなロシアのサイバー攻撃 ロシアにやられたエストニアから学べる教訓とは/Yahoo!ニュース/2022
ついに像が撤去!これに反発したロシア系住民が暴動

2007年4月27日の早朝。北欧のエストニアで、「タリン解放者の記念碑」と名付けられたブロンズ像が撤去された。

日本人が知らない「ネット覇権」の世界的闘争/東洋経済ONLINE.2022

これがソ連の戦勝記念日の5月9日の直前に行われたため、ロシア系住民が強く反発し、警官隊と衝突するなど暴動騒ぎに発展した。

Black Hat USA 2007 – 初の”サイバー戦争”!? 狙われたIT先進国エストニア/TECH+総合トップ – マイナビニュース.2007

ロシア人にしてみれば、記念碑の移転は「歴史の書き換え」だという意味を持ったのだ。ロシア人は激高し、エストニア在住のロシア系住民は「青銅の夜」と呼ばれる暴動をタリンで起こし、またロシアのエストニア大使館も抗議する人々に包囲された。

ロシアとエストニアの領土問題解決北方領土への影響は?/Wedge ONLINE.2014

同時に4月27日金曜日から、エストニア政府のWebサイトが攻撃を受け始めたのだ。

Black Hat USA 2007 – 初の”サイバー戦争”!? 狙われたIT先進国エストニア/TECH+総合トップ – マイナビニュース.2007
世界中からエストニアに大量のアクセス

2007年4月27日。バルト海に面した北欧の小国エストニアは、異様な朝を迎えた。それは大統領府のウェブサイトの異常から始まった。世界中から大量のアクセスが押し寄せ、そのあまりの量にサーバーが耐えきれずにダウン、サイトは使用不能に陥った。サイバー攻撃である。

【世界のサイバー事件簿①】あなたのPCがサイバー攻撃に使われている? エストニアのサイバー事件/TIME&SPACE.2016
世界中のウイルスに感染したPCが、特定の日時を狙いサイバー攻撃

 このエストニアに対する攻撃は、かつてないほど進化したものであると同時に大規模なものであった。攻撃にはボットネットと呼ばれる「ハイジャックされたコンピュータ群」が利用された。

“サイバー戦争”に耐えたエストニア、国家の関与を否定するロシア/ITmedia.2007

この「ボット」に感染した”ゾンビコンピュータ”は、感染を拡大させて1万台、10万台と増えていく。そして「ボット」は、攻撃者が秘密裏に用意した「C&C(Command & Control)サーバー」と呼ばれる一種の司令塔に定期的にアクセスして指示をあおぐ。攻撃者はC&Cサーバーを通じて、世界中のボットにこう指示を出すのだ。「○月○日○時に、このURLを攻撃せよ」と。すると、その決行日時に、世界中のコンピュータに感染した「ボット」のプログラムがターゲットへの攻撃を開始するのだ。

【世界のサイバー事件簿①】あなたのPCがサイバー攻撃に使われている? エストニアのサイバー事件/TIME&SPACE.2016
当時、世界屈指のIT立国だった「エストニア」が狙われた事件

当時のエストニアは、オンライン投票やデジタル署名などのサービスを導入し、すでに電子政府のリーダー的存在でした。

世界最先端のIT国家、エストニアを知っていますか【第7回】ゼロトラスト時代のサイバー攻撃への備え/UNIADEX ユニアデックス株式会社.2021

5月9日に向けて様々な攻撃の可能性を想定していたエストニア政府は、すぐによりセキュリティに優れたサーバにホスト先を変更した。しかし攻撃は激しさを増すばかりで、新しいサーバもストレスに耐えかねる状態になった。攻撃者を特定しようにも、攻撃元は巧みに隠され、しかもICMP ECHOフラッド、DNS攻撃、SYNフラッド、トラフィック・フラッドなど次々に新手の攻撃が加わった。トラフィックは通常の100~1,000倍の規模だったそうだ。

Black Hat USA 2007 – 初の”サイバー戦争”!? 狙われたIT先進国エストニア/TECH+総合トップ – マイナビニュース.2007

翌28日土曜日になると攻撃の被害がさらに広がった。調査の結果、ロシア語のブロガー・コミュニティの中で、エストニアを口汚くののしり、攻撃手法を具体的に示しながら実行を促すWebサイトが多数見られることが明らかになった。この時点で「通常の攻撃とは異なるサイバー暴動」と認識された。

Black Hat USA 2007 – 初の”サイバー戦争”!? 狙われたIT先進国エストニア/TECH+総合トップ – マイナビニュース.2007

ITの仕組みがすでに整備されていたこともあり、この事件ではデータの盗難はありませんでしたが、銀行、メディア、一部の政府サービスのWebサイトがDDoS攻撃(分散型サービス拒否攻撃)の対象となり、22日間にわたって攻撃が続きました。その結果、一部のサービスは中断され、いくつかのサービスは完全に停止に追い込まれました。

世界最先端のIT国家、エストニアを知っていますか【第7回】ゼロトラスト時代のサイバー攻撃への備え/UNIADEX ユニアデックス株式会社.2021
IT立国の弱点が露呈

エストニアでITインフラがダウンすれば、国民がバンキング機能を利用できなくなる。ダウンタイムは「ミルクやパンですら買えなくなってしまうような状態」だったそうだ。またネットは主要な情報源でもあり、オンライン・メディアが機能しなくなると、テレビやラジオがないのと同じような状態になる。IT立国を掲げたゆえの弱点を露呈した。

Black Hat USA 2007 – 初の”サイバー戦争”!? 狙われたIT先進国エストニア/TECH+ – マイナビニュース.2007

 エストニアを襲った今回の「サイバー攻撃」は「テロ」と呼ぶより「戦争」と呼んだほうがふさわしいと専門家は言う。

“サイバー戦争”に耐えたエストニア、国家の関与を否定するロシア/ITmedia.2007
エストニアの非難にロシア政府は関与を否定

当然、エストニア政府はロシアを激しく非難したが、ロシア政府は「ハッカーがロシア政府のコンピュータに侵入して悪用したのであって、我々は関係ない」と即座に否定している。

【世界のサイバー事件簿①】あなたのPCがサイバー攻撃に使われている? エストニアのサイバー事件/TIME&SPACE.2016

しかし後に、ロシアの民主主義・反ファシスト青年運動組織である「ナーシ」のメンバーが、このサイバー攻撃についてロシア政府の関与を認めている。このメンバーは与党・統一ロシアの幹部補佐だったので、情報を掴んでいた。

いまだ静かなロシアのサイバー攻撃 ロシアにやられたエストニアから学べる教訓とは/Yahoo!ニュース.2022
この出来事を契機にサイバーセキュリティーを強化

電子政府としての取り組みを進めてきたエストニアにとって、青銅の夜は国の継続を脅かす事象でした。

先進電子国家エストニアを知る/ニュートン・コンサルティング.2019

エストニアは電子政府を推進するなどIT化の進んだ国であったが、サイバーセキュリティが十分でなく脆弱であった。それで、2007年のサイバー攻撃を契機に、NATOサイバー防衛センターを首都タリンに誘致、サイバーセキュリティに積極的に取り組むようになった。

「サイバー先進国」エストニアに注目すべき理由/WEDGE Infinity.2018

 2012年に、NATOサイバー防衛センターは、サイバー戦に関する国際法についての重要な研究文書「サイバー戦に適用される国際法に関するタリン・マニュアル」を発表した。タイトルに「タリン」が冠されていることからも、エストニアがNATOのサイバーセキュリティへの取り組みの象徴的存在であると言ってよい。

「サイバー先進国」エストニアに注目すべき理由/WEDGE Infinity.2018

【ロシア・ジョージア戦争】ハイブリッド戦争の実戦

Associated Press/YouTube

最初の目立つサイバー攻撃は2007年にエストニアに対して行ったものだった。その効果に味をしめたのか、2008年のロシア・ジョージア戦争では、戦闘と並行してサイバー攻撃や情報戦を展開し、まさにハイブリッド戦争の実践的練習を行ったといえる。

「忍び寄るハイブリッド戦争」/金融ファクシミリ新聞社
戦闘とサイバー攻撃を組み合わせた作戦を展開!たった5日でロシアは勝利した

 2008年8月、ロシア・ジョージア戦争の時、ロシアのサイバー攻撃でジョージア(当時、グルジア)の国家中枢機関は無力化された。同国の国防、内務、外務各省のコンピューター機能は、ロシア軍ハッカーのDDoSと悪性ウイルス攻撃で完全に麻痺(まひ)した。マスコミとポータルサイトも例外でなかった。同国政府と軍首脳部は戦争の指揮も、欧米諸国への援助要請もろくにすることができなかった。戦争の情報が遮断されると、恐怖にとらわれた国民は抵抗することさえできなかった。結局、ロシア戦闘機の空襲開始後5日でジョージアは白旗をあげた。

【韓国紙】ハイブリッド戦争/オピニオンの「ビューポイント」
ここで得たノウハウをウクライナとの戦争に使用した!?

ロシアはハイブリッド戦争をジョージアで練習し、ウクライナで花咲かせたという議論もあるくらいである。

ロシアが展開するハイブリッド戦争の脅威(廣瀬 陽子)/現代ビジネス | 講談社.2019

だが、それに関しては、国際社会は大きな反応をしなかった。

「忍び寄るハイブリッド戦争」/金融ファクシミリ新聞社
2011年にもロシアはサイバー攻撃をしかけた

2008年以降もロシアとグルジア間ではサイバー攻撃がたびたび問題になっていた。そして2011年初めにグルジアのニュースサイトがサイバー攻撃を受け、重要情報が窃取されるマルウェアがグルジア国内の約390のコンピュータに拡散された。このマルウェアは感染したPCのWebカメラを使って盗聴する機能も持っていた。

ロシア・グルジアのサイバー戦争:サイバー反撃による秘匿性の崩壊/InfoComニューズレター.2012
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弱小国となったロシアはなぜ世界に覇権を誇示し続けられるのか。異能の研究者が戦争の最前線を読み解き、未来の世界情勢を占う。(「Books」出版書誌データベースより)

Russian Hybrid Warfare

ロシアが世界中で仕掛けるハイブリッド戦争

RANE/YouTube

 ロシアが欧州諸国に対して行った有名なサイバー攻撃には、エストニアに対する2007年のサイバー攻撃がある。これは、サイバーセキュリティ関係者の間では知らぬものはいない歴史的な事件だった。当時からデジタル化が進んでいたエストニアに対して、ロシアが国家機能を麻痺させるほどのサイバー攻撃を実施。省庁や議会、金融機関の業務ができないほどの大規模なDDos(莫大なデータを一斉に送りつける攻撃)攻撃を受け、メディアや一般企業にも被害は及んだ。

サイバー攻撃の実験場、ウクライナで暗躍する親ロシア工作集団「UNC1151」フォーサイト-新潮社ニュースマガジン/JIJI.COM.2022

ドイツで悪質なフェイクニュースが拡散「リサ事件」

ハイブリッド戦争との関連では、ロシアがドイツへのデマゴーグ効果を狙った自作自演の「リサ事件」も画策された。

多元的グローバリズムと人の移動/公益財団法人日本国際フォーラム.2021

 デマゴーグはギリシャ語であり、「民衆の指導者」(demos=民衆、aggos=導く者)を意味する。しかし現在では、民衆の偏見を利用して、間違った主張や約束をし、理性ではなく感情に訴える議論を駆使する指導者を指す表現になっている。

ドナルド・トランプはヒトラーと同じデマゴーグ【前編】/Newsweek.2016

2016年1月23日、移民たちが13歳のロシア系ドイツ人の少女を誘拐し、レイプしたと報じられた後、ドイツで数百人の人々がデモを行った。デモ参加者が掲げたプラカードには、「リサ(少女の名前)、私たちはあなたと共にある」と書かれていた。

フランス大統領選にも大きな影響、ロシア発のフェイクニュースに苦慮するEU各国/HUFFPOST.2017

『リサ・F』と特定された少女は、後になって自分の主張を撤回した。ドイツの警察当局は今も捜査しているが、ヨーロッパ中にこのニュースが広まったきっかけは、ロシアの国営テレビ局による報道だった。ロシアやドイツの報道機関の中には、「当局がこの事件を捜査しないのは、ドイツの移民政策の印象が悪くなるからだ」といった主張を加えたところもあった。ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相ですら、この事件は「もみ消されつつある」と述べた。

フランス大統領選にも大きな影響、ロシア発のフェイクニュースに苦慮するEU各国/HUFFPOST.2017
目的は今のドイツ政権転覆

 ロシアは、ウクライナのクリミア半島を併合した2年前のウクライナ危機の間、ドイツなど欧州諸国でのスパイ活動を強化してきた。ドイツ国内の治安機関である連邦憲法擁護庁(BfV)によると、ロシアは、旧ソ連の秘密警察KGBがかつて用いた破壊活動戦術である「不安定化」と「偽情報」の2つを展開している。

ロシアがドイツに仕掛けるハイブリッド戦争/Newsweek.2016

 NATO戦略的通信研究センター(StratCom COE)を指揮するジャニス・サーツによると、ロシアはこうした戦術を使って意図的にドイツの政情不安をかき立てており、その最終目標はアンゲラ・メルケル政権の転覆だという。

ロシアがドイツに仕掛けるハイブリッド戦争/Newsweek.2016

2016年アメリカ大統領選挙「ヒラリー・クリントンにハッキング」

WION/YouTube

オランダと英国の国民投票に際しても、クレムリンは同様の情報操作を展開した。そのクライマックスとなったのが米国の大統領選である。

新兵器「デマ爆弾」で国家機能を殲滅せよ!|ロシア「ハイブリッド戦争」の全貌/クーリエ・ジャポン.2017

ロシアのプーチン大統領は2016年の米大統領選挙を前にヒラリー・クリントン候補を不利にする目的で、民主党のアカウントへの不正侵入とメールのリークを命じた。米上院情報委員会が3年がかりの調査を終えて出した最終結論だ。調査はなお、トランプ大統領がモスクワと共謀した証拠は見いだされなかったとしている。

2016年の民主党ハッキング、プーチン氏が命令-米上院委員会報告/Bloomberg.2020

  調査ではトランプ氏側とロシア側、さらにはロシア政府とつながりのある人物の間で多数のやりとりがあったことも判明したほか、トランプ氏が情報リークを自分の政治的利益に利用しようとしたことが明らかになった。しかし委員会は「トランプ大統領とロシア側が共謀した証拠は見つからなかった」としている。その上で、ポール・マナフォート受刑囚が当時、選対本部長としてトランプ陣営にいたことは「防諜(ぼうちょう)における深刻な脅威」だとした。

2016年の民主党ハッキング、プーチン氏が命令-米上院委員会報告/Bloomberg.2020
【陰謀論Qアノン】「トランプ or ヒラリー」ガチのディスり合い!!混沌のアメリカ大統領選挙(5)

トランプは一部から、デマゴーグ(扇動政治家)でありファシストだといわれている。政治評論家がトランプを歴史上の人物にたとえる場合も、出てくるのは「人種隔離を永遠に!」と叫んだ元アラバマ州知事ジョージ・ウォレスや、共産主義者を弾圧する赤狩り(レッドパージ)で知られるジョセフ・マッカーシー上院議員(当時)、さらにはヒトラーなどの偏向した人物ばかり。

ドナルド・トランプはヒトラーと同じデマゴーグ【前編】/Newsweek.2016

2020年アメリカ大統領選挙「バイデンを陥れるフェイクニュース」

2020年の米大統領選で当時現職だったドナルド・トランプ氏を勝たせようとロシアが行った政治工作は、プーチン大統領が指示していた公算が大きい――。米国家情報官室(ODNI)が16日公表した報告書は、こうした見解を示した。

昨年の米大統領選、プーチン氏が工作指示と米報告書 来週にも制裁か/REUTERS.2021

ロシアの工作については、昨年11月3日の大統領選に先駆け、バイデン氏の不利になりそうな根拠のない情報を、ロシアとつながりのある人物を通じて広めるなどしたという。さらに、選挙プロセスそのものへの世間の信頼を損なおうと、偽情報を拡散する工作を展開したとしている。

昨年の米大統領選でもプーチン氏が「親トランプ」工作承認=米政府報告/BBCニュース
【陰謀論Qアノン】「出馬を取りやめるべき」トランプの対抗馬バイデンがセクハラ疑惑で告発!?さらに陰謀論が拡散(11)
バイデンはプーチンをディスる「プーチンは殺人者だ」
Nation/YouTube

バイデン米大統領はロシアのプーチン大統領が「殺人者」であるとの認識を示し、ロシアは同国が行ったとされる米大統領選挙への干渉に対し報いを受けることになると述べた。17日放送されたABCニュースのインタビューで語った。

バイデン米大統領、プーチン氏は殺人者と指摘-選挙介入の報復を言明/Bloomberg.2021
トランプが煽ったフェイクを拡散して議事堂襲撃を引き起こした
ABC News/YouTube

 バイデン大統領がプーチン大統領を「殺人者」と激しく糾弾した背景には明らかに、先の大統領選期間中にロシアが、自国の情報機関通じ、各州で「選挙不正が大々的に行われている」との根拠のない欺瞞情報を拡散させ、結果的に「選挙は略奪された」とのトランプ氏の執拗な主張を信じ込んだ暴徒による米議事堂量乱入事件で6人の犠牲者を出したことと関係したものだ。

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【陰謀論Qアノン】「連邦議事堂に行進することを知っている」大統領選結果を決める最後の日、トランプは支持者へむけて演説……その結果(18)
プーチン「お互い様だ」
Global News/YouTube

【3月18日 AFP】(更新)ジョー・バイデン(Joe Biden)米大統領が、ロシアのウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領は「殺人者」だとする認識を示したことについて、プーチン氏は18日、「お互いさまだ」とコメントした。

プーチン氏「お互いさまだ」 バイデン氏の「殺人者」見解で/AFPBB News.2021

 翌18日にテレビ放送された発言の中で「お互いさまだ」と軽口で応じたプーチン氏は、「人は常に他人の中に自分の本質を見いだし、その人物も自分と同じなのだと考えるものだ」と語った。

プーチン氏「お互いさまだ」 バイデン氏の「殺人者」見解で/AFPBB News.2021

 さらに、現在78歳のバイデン氏の健康を祈るとし、「これは皮肉なしに言っている、冗談としてではない」と断った。

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【戦争プロパガンダ⑤】気づいた時には終わっていた……。サイバー大国ロシアの緻密なハイブリッド戦争『2014年 クリミア併合』
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