この記事は、戦争プロパガンダに関する10の法則について解説しています。戦争中には、国民の士気を維持し、敵の士気を低下させるために、情報操作やプロパガンダが行われることがあります。この記事では、そうしたプロパガンダに関する法則を、具体的な例を交えながら紹介しています。
例えば、1つ目の法則「われわれは戦争を望んでいない」という言葉は、戦争直前に国家のリーダーがよく使うが、歴史的には逆に戦争へと突入することが多い。
戦争や恐怖は歓迎すべきではないため、リーダーたちは平和を愛する言葉を使うことが必要だとされる。しかし、この言葉は実際には戦争プロパガンダの一つであり、リーダーたちが自らの行動や意図を隠すために用いる手段となっている。
また、3つ目の法則「敵の指導者は悪魔のような人間だ」では、戦争を正当化するため、敵の指導者を悪魔のような存在として描き、一般の人々に重大な脅威があると思わせることがあります。しかし、敵を悪者に仕立て上げることで、国家全体を悪者にすることは難しいため、この現象は敵指導者の悪魔化として知られています。
このように、戦争プロパガンダに関する具体的な法則を知りたい人にとって、この記事は非常に興味深いものになるでしょう。
【戦争プロパガンダ①】人類の歴史は戦争の歴史……。全ては勝利のために!!切っても切れない『戦争とプロパガンダ』
How to create a war
戦争の作り方
この世界は、人類が誕生してから長い年月が流れてきました。そして今もなお、世界平和を実現することができていません。でも、私たちは一つのことを知っています。
それは、世界中の全ての人々が互いを信じ合い、尊敬し合い、愛し合って、争いをやめることができれば、世界平和を実現することができるということです。
しかし、この理想的な状況に至るまでには、多くの困難や障害が立ちはだかっています。人間には、利己的な本性があり、文化や背景、宗教などによって分断されているため、互いを理解し合うことは容易ではありません。また、紛争や戦争の原因となる政治的な利害関係や貧困、資源配分などの社会問題もあります。
権力者は戦争をする理由を作り出す
戦争を始める権力者は、「戦争をしたい」と公言することはありません。しかし、歴史は私たちに示しています。独裁者や独裁的な政府が、自己の利益やイデオロギーを追求するために戦争を始めた例が数多くあります。
そして、民主主義国家においても、選挙によって選ばれた指導者が、時には自己の理念を推し進めるために戦争を始めることがあります。
しかし、世界の指導者たちは、戦争を開始することを公然と宣言することはありません。その代わりに、敵国が悪い、自国が正しいといった意見を煽り立て、国民を納得させようとします。
そのような手法を用いることで、国民は「仕方なく戦争をするんだ」と考えるようになります。しかし、実際には、戦争が解決策ではなく、悲惨な結果を招くことが多い。
The Basic Principles of War Propaganda
戦争正当化の法則を解説した本!『戦争プロパガンダ10の法則』
「戦争プロパガンダ10の法則」という本は、歴史的事実に基づいて、戦争を正当化するために使用されるプロパガンダの10の法則を詳しく説明しています。この本は、戦争を望む人々が、どのように戦争を始めるかを示す情報操作の手法や正義が捏造される過程を浮き彫りにするものです。
つまり、メディアと結託して流された「嘘」を分析し、歴史の中で繰り返されてきた情報操作の手口を明らかにしていると言えます。この本は、戦争に反対する人々にとっても、戦争を望む人々にとっても重要な一冊と言えます。
戦争終了後に騙されたことに気付く・・・そして私たちはまた騙される
この本は、イギリスの政治家アーサー・ポンソンビーが、第一次世界大戦中にイギリス政府が行った戦争プロパガンダを批判するパンフレット「戦時の嘘」を書いたことに基づいています。ポンソンビーは、平和主義者でありながら、政府によるプロパガンダに対して強い批判をした人物です。
彼は、「戦争が終わるたびに、我々は自分たちが騙されていたことに気づき、二度と騙されないように誓うが、再び罠にはまってしまう」と警告しています。
【1】「われわれは戦争を望んでいるわけではない」
歴史的に、戦争直前に国家のリーダーが「われわれは戦争を望んでいるわけではない」という言葉を用いることがよくある。しかし、言葉とは逆に戦争へと突入することが、歴史が証明している。
戦争や戦争に伴う恐怖は、常識的に考えて歓迎すべきものではない。そのため、リーダーたちはまず平和を愛していると見せかけることが得策とされている。実際に、多くの国家指導者たちが戦争開戦前に、平和を愛する言葉を用いている。
米大統領ルーズベルトは太平洋戦争開戦前に、「われわれが戦争を望んでいないことは全国民はもちろん世界中の国々に知れ渡っている」と述べた。同様に、日本の東条英機も独首相ヒトラーも平和を愛する言葉を用いたが、結果的には戦争へ突入した。
この矛盾は、戦争プロパガンダの法則の1つであり、国家指導者たちが自らの行動や意図を隠すために用いる手段となっている。
【2】「しかし敵側が一方的に戦争を望んだ」
戦争プロパガンダにおいて、「敵側が一方的に戦争を望んだ」と双方が主張することがしばしば見られる。このような状況は、第三者から見ると矛盾した形になることが多い。両国がお互いの敵を悪者に仕立て上げようとするが、実際には国家や民族全体を悪者として扱うことは難しい。
この現象は、戦争プロパガンダの一環であり、国家が戦争を正当化するために敵を悪者として描くことで、自国民の戦意高揚や世界の支持を得ようとするものである。しかし、その結果として双方が同様の主張を行うことで、戦争の本質や根本的な原因が見えづらくなることがある。
《プロパガンダ》「トンキン湾事件 」 ベトナム戦争のきっかけは捏造
ものである。北ベトナムがアメリカの軍艦を攻撃したと主張し、これを報復戦としてアメリカはベトナムへの介入を始めた。しかし、当時の事実は、数百トンしかないベトナムの魚雷艇が、数千トンものアメリカの駆逐艦を攻撃するという、常識的に見てあり得ないものであった。
1964年当時、アメリカ国内では、怒りに駆られた多くの国民がベトナムが攻撃を仕掛けたという世論を支持し、トンキン湾事件に対して疑問を持つことはほとんどなかった。しかし、後になってこの事件がアメリカによる捏造であったことが判明した。
【3】「敵の指導者は悪魔のような人間だ」
戦争の正当化のため、動員する国家はしばしば敵の指導者を悪魔のような存在として描き、一般の人々の安全と福祉に対する重大かつ差し迫った脅威を作り出す。敵側を悪者に仕立て上げることで、戦争への支持を得ようとするが、国家や民族全体を悪者にすることは難しい。この現象は、敵指導者の悪魔化として知られている。
例えば、第1次世界大戦前のイギリスでは、ドイツ皇帝は完璧なジェントルマンとして紹介されていたが、開戦後には異常者、殺人犯、人殺しと罵られるようになった。このような敵指導者の悪魔化は、国民の敵対感情を煽り、戦争への支持を高める効果がある。
現代では悪の指導者の代名詞「アドルフ・ヒトラー」
第二次世界大戦後の戦争プロパガンダでは、敵の指導者をヒトラーになぞらえることがよく見られる。これは、ヒトラーが象徴する絶対的な悪を利用し、敵指導者のイメージを悪化させることを狙ったものである。
同様に、日本では「鬼畜米英」と敵国民全体を悪魔にした。ヒトラーになぞらえられた指導者は、いかなる弁明や否定を行っても、その名誉を取り戻すことは非常に困難となる。
このようなプロパガンダ戦術は、国民の敵対感情を煽り、戦争への支持を高める効果がある。しかし、その結果として、敵国との対話や和平の道が閉ざされることもある。
指導者の悪を強調し、国民の個人性を打ち消すプロパガンダ
敵指導者の悪を強調する戦争プロパガンダは、彼らの支配下に暮らす国民の個人性を無視し、打ち消す効果がある。このようなプロパガンダによって、敵国にも自分たちと同様に暮らしているはずの一般市民の存在が隠蔽されてしまう。その結果、敵国民を個々の人々としてではなく、悪の指導者に従う集団として捉えることになり、敵対感情が煽られる。
1991年以降のアメリカの世界観とならず者国家
1991年にソ連が解体し、冷戦が終結すると、アメリカは世界で唯一の「超大国」となりました。この地位を維持するため、アメリカは以前よりも積極的に国際政治に関与し、戦争を起こしやすくなりました。
アメリカは、自国の利益や価値観に反する「危険」とみなした国を「ならず者国家」と呼び、これらの国を敵視する政策を採用しました。
「ならず者国家」は、核兵器開発や人権侵害、テロ支援などの行為を行っているとされ、国際社会から制裁や軍事行動が行われることがあります。しかし、アメリカが敵視する国に対しては、しばしば情報操作やプロパガンダが用いられ、事実と異なる状況が報道されることがある。
ジョージ・W・ブッシュ「悪の枢軸」
2002年の一般教書演説で、当時のジョージ・W・ブッシュ米大統領は連邦議会を前に、イラン、イラク、北朝鮮を「悪の枢軸」と呼びました。この言葉は、これらの国がアメリカの安全保障上の脅威であると主張するためのものでした。
同年5月、当時国務次官だったジョン・ボルトン氏は、この3カ国にキューバ・リビア・シリアを加え、さらに脅威の範囲を広げました。
このような背景のもと、「予定通り」にアメリカは2003年にイラク戦争に突き進みました。アメリカ政府は、イラクのサダム・フセイン政権が大量破壊兵器を保有していると主張しましたが、後にこれが根拠のない主張であったことが明らかになりました。
ジョージ・H・W・ブッシュ
湾岸戦争時、ジョージ・H・W・ブッシュ大統領は、敵対感情を煽るために、サダム・フセインの名前を悪魔を意味する”Satan”に似せて発音していたとされます。このようなプロパガンダは、敵国指導者を悪の化身として描写し、戦争の正当化につながります
トランプ版「悪の中軸」
ドナルド・トランプ米大統領は、国連総会での一般討論演説で「少数のならず者国家」が「この惑星にとって災いだ」と非難しました。彼は特に北朝鮮、イラン、シリア、ベネズエラを名指しして批判を行いました。
トランプ大統領は、これらの国が国際秩序を無視し、人権侵害や核兵器開発などの行為を行っていると主張しました。これらの国に対してアメリカは、経済制裁や外交圧力をかけることで、彼らの行動を変えさせようと試みました。
【4】「われわれは領土や覇権のためではなく、偉大な使命のために戦う」
多くの戦争は、地政学的な征服欲と経済効果が背後にあるものです。しかし、これらの真の目的は国民には公表されず、脅威の認識が作成された後、戦争に参加する理由となる物語が創作されます。
戦争努力を計画している人々によって犯された不正行為の歴史と真実は、同時に抑制されなければなりません。平和と自由は、戦争の物語に織り込まれた共通のテーマであり、国民の支持を獲得するための強力な手段です。
戦争を正当化するためのプロパガンダは、人々が受け入れやすいように緻密に構築されます。それにより、国民が戦争努力に参加し、政府の行動を支持するよう誘導されるのです。
正義に基づく戦争と心理的遮断
戦争を正義に基づいて行う場合、「自分たちは正しい」という前提のもと、「対立する者たちは悪であり、懲らしめるべき」という論理が働きます。兵士たちにとっては、この思考が自己正当化となり、戦闘行為が可能になる要因です。
戦場では兵士は日常から完全に遮断され、自分が行っていることが絶対に正しいと信じるような心理状態が求められます。このような催眠状態に近い状態に自分を追い込むことで、兵器を使用し、相手を攻撃することが可能となります。
日常的な心理状態で戦場に臨むことは、かえって危険であるとされます。そのため、兵士たちは過酷な戦場での行動を遂行できるよう、自己催眠的な状態を維持することが重要となるのです。
《プロパガンダ》イラク戦争と大量破壊兵器の主張
イラク戦争は、イラクがアルカイダとつながりがあり、大量破壊兵器を保有しているという主張を理由に、国連安保理の決議がないまま開戦されました。これは、イラクがアメリカと国際社会に対する差し迫った脅威であるという理由付けのもとで行われました。
侵攻は国際法違反ではないかという指摘がありましたが、アメリカは「イラクに大量破壊兵器がある」と主張し続け、戦争へ突き進みました。日本の小泉純一郎首相(当時)もこの主張を支持し、イラク戦争への支持を表明しました。その後、復興支援のため、日本は自衛隊をイラクに派遣しました。
大量破壊兵器は見つからなかった
しかし、戦争後になってイラクが大量破壊兵器を持っていないことが判明し、戦争の正当性に疑問が投げかけられるようになりました。
この戦争とフセイン政権の崩壊が引き起こした混乱は、イラク国内で宗派対立を激化させ、国際テロ組織アルカイダが勢力を拡大しました。これによって、過激派組織「イラク・シリア・イスラム国(ISIS)」が台頭することになりました。戦争の結果、何万人ものイラク国民が犠牲になり、米兵4,000人以上、英兵179人が死亡しました。
アメリカでは、2001年の9月11日テロ事件が発生した後、「黒幕はイラクのサダム・フセイン大統領だ」という説が広まりました。これにより、タカ派はイラク攻撃の口実を探していたのです。しかし、後の事実が明らかになると、戦争の正当性が大きく揺らぐことになりました。イラク戦争は、戦争の真の目的やその後の影響について検証し続けるべきでしょう。
《プロパガンダ》2022年ロシアのウクライナ侵攻「ウクライナによる大量虐殺」
2023年2月24日、ロシアのプーチン大統領はウクライナでの「特別軍事作戦」を宣言し、ロシア軍がウクライナ東部のドンバス地方に侵入しました。さらに南部のオデッサへの上陸や、首都キエフへのミサイル攻撃も報じられています。
ロシア政府は、ウクライナの’軍事政権’による大量虐殺がロシア系人を含むウクライナ人に対して行われていると主張し、国連憲章第51条に基づく自衛権を行使していると主張しています。
しかし、アメリカのブリンケン国務長官は、ロシアがウクライナ当局による住民への大量虐殺を根拠に侵攻を行っているとする報告書について、「侵攻に向けた口実づくり」と批判しています。虐殺の事実については、真偽が不明なままであります。
このウクライナ侵攻は、ロシアのこれまでの主張である「クリミアはソ連時代に同じ国だったウクライナに移管したもので、住民の大半はロシア人」や「東部ウクライナの住民の大半はロシア人で、ロシアへの帰属を望んでいる」といった理由を逸脱しています。
ロシアは2014年クリミア併合でも同じ手を使用
プーチン大統領は2014年のクリミア併合や、その後のウクライナ東部の親ロシア派武装勢力への支援において、「自分たちの正当化」を繰り返し行いました。彼は「ネオナチがロシア系住民を弾圧しているため、救済が必要」といった、事実ではない無理やりな理屈を喧伝してきました。
これらの行動は、他国を納得させることよりも、自己正当化を目的として行われていると考えられます。プーチン大統領にとって、ロシアの立場や行動を正当化することで、国内外への批判を抑え、国民や国際社会からの支持を得ることが重要でした。
徹底した情報統制で国民は真実が分からない
ロシア国営テレビや主要メディアでは、親ロシア派武装勢力が支配しているウクライナ東部の情報が中心となり、民間の建物が攻撃を受けたり死者が出ていることなどは報じられていません。
これにより、ロシアの人々は実際の状況について正確な情報を得ることが難しくなっており、ロシア軍がウクライナに侵攻していることを認識している人は少ないでしょう。
その代わり、ウクライナが大量虐殺を行っているというプーチン政権のプロパガンダを信じている人が多い状況です。このような情報操作は、国内の世論をコントロールし、国民の支持を得るために行われています。
ロシアだけじゃない!?アメリカもベトナム戦争以降に情報統制実施
ベトナム戦争では、戦場でのアメリカ軍の残虐な行為が報道されることで、アメリカ国内だけでなく世界中で反戦運動が起きました。それを教訓に、アメリカは湾岸戦争(1991年)でメディアの取材方法に変化をもたらしました。
アメリカ軍はエンベット取材と呼ばれる従軍取材方式を採用し、軍が厳密に管理した状況下でのみ、選ばれた記者たちに取材を許可しました。これにより、アメリカ軍が望まない情報やイメージがメディアに流れることを抑制し、報道内容をコントロールすることが可能になりました。
【5】「われわれも意図せざる犠牲を出すことがある。だが敵はわざと残虐行為におよんでいる」
戦争において、自国の兵士に犠牲が出た場合、国や政府はその状況を認めることがありますが、同時に敵に対して非難を行うことが一般的です。
たとえば、「敵はわざと残虐行為をしている」や「敵は卑劣な兵器や戦略を用いている」といった主張が行われます。これによって、自国の責任を最小限に抑えつつ、敵国に対する非難を高めることができます。
自分はただの誤爆、敵は残虐行為
プロパガンダの一般的な現象として、自国の軍隊を正義の使者として描写し、敵国の軍隊を非人道的で残虐な存在として描くことがあります。その目的は、国民に対して自国の戦争行為を正当化し、支持を維持することです。
自国の軍隊は、国民のために活動し、他国の民衆を救うために行動しているというイメージを植え付けることで、国民は軍隊に対する愛情や尊敬の感情を持つようになります。一方で、敵国の攻撃は異常な犯罪行為であり、血も涙もない悪党であるというイメージを印象づけることで、国民の敵対心を煽ります。
また、自国の軍隊が目標を軍事施設に限定し、誤爆があった場合もたまたまの事故として描写することで、自国の戦争行為が正確で人道的であるという印象を与えます。このようなプロパガンダ戦略は、情報の操作や偏った報道を通じて、戦争に関する国民の意識や感情をコントロールするために用いられます。
《プロパガンダ》「原油まみれの水鳥」
湾岸戦争では、テレビが戦場の映像を生中継で伝えることが初めて実現し、劇場型の戦争と呼ばれるようになりました。しかし、伝えられる映像は都合のいい部分だけを切り取られ、事実が歪められることがありました。戦争においては、最初に犠牲になるのが「真実」であると言われています。
湾岸戦争でも、多くのフェイクニュースが流れました。その最たるものが、「油まみれの水鳥」です。アメリカ軍は、イラク軍が故意に破壊した石油施設から流れ出た重油によって水鳥が身動きが取れなくなったと主張し、イラクの野蛮な行為の象徴として世界に映像と写真が流されました。しかし、戦争後に判明したのは、実際には重油はアメリカ軍の攻撃によって流出したものだった。
《隠蔽》イラク戦争「米軍がヘリから民間人を銃撃」
2010年4月5日、内部告発サイト「WikiLeaks」は、2007年7月にイラク・バグダッドで起きた米軍の攻撃ヘリコプターによる路上の銃撃事件の映像を公開しました。
この攻撃で、ロイター通信の記者2人が犠牲となりました。映像には、発砲許可を求める兵士やパイロットらの会話や、攻撃後に自己満足を示す軽口や笑い声が収録されており、衝撃を受けるものでした。
ロバート・ギブス大統領報道官は、「映像は鮮烈で、非常に悲劇的だ」とコメントし、米兵たちが一般市民の犠牲を防ぐ努力をしていることを強調しました。バラク・オバマ大統領も、ネット映像を見たかどうかについて、「わからない」と述べました。
この映像から、同様の事件が珍しくないことが伺えます。関係者に対する処分が行われなかったのもそのためでしょう。この事件が他の事件と異なる点は、ロイターの記者が巻き込まれたことと、ビデオがリークされてインターネットに公開されたことです。
類似の事件が数多く存在するとすれば、米軍の攻撃で親族を失ったり、米軍を恐れている理由を持つイラク人が多くいることは想像に難くありません。
《隠蔽》シリア空爆「米軍の空爆で民間人を殺害」
2021年11月15日、ニューヨーク・タイムズは、2019年にシリアで米軍が行った空爆で約70人の民間人が死亡したにもかかわらず、事実が隠蔽されていたと報じました。米中央軍は、空爆の正当性を主張しています。犠牲者の多くは女性や子どもでした。
軍内部では、戦争犯罪にあたる可能性があるとして詳細な調査を求める意見が出たものの、正当防衛という主張により隠蔽され、軍の最上層部に報告されなかったとされています。
シリアやイラクでは、アメリカ軍が主導する有志連合が過激派組織ISに対する掃討作戦を行っていますが、少なくとも1400人を超える民間人が作戦の巻き添えとなり、死亡したとされています。
【6】「敵は卑劣な兵器や戦略を用いている」
戦争や紛争において、自陣営の行為を正当化し、敵陣営の行為を非難するという主張は、しばしば見られる現象です。自陣営がフェアな戦いを行っていると主張することで、その行為を正当化し、国内外の支持を得ようとします。
一方、敵陣営がアンフェアな方法で戦っているという主張は、敵を非難し、自陣営の行為に対する正当性を強める役割があります。
常任理事国はたびたび安保理決議を無視してきた
2003年のイラク戦争では、アメリカはイラクが大量破壊兵器を保有していると主張し、国連安全保障理事会の決定なしに攻撃を開始しました。しかし、戦後、大量破壊兵器は見つからず、国際社会から批判が集まりました。日本は、人道復興支援の名目で自衛隊を派遣し、イラク戦争に参加しました。この戦争は、国際法の遵守が問われる事例となりました。
2018年のシリア攻撃では、アメリカ、イギリス、フランスがアサド政権がシリア内戦で化学兵器を使用したと主張し、内戦に介入しました。シリア政権を支持するロシアは、国連安全保障理事会の決議を経ずに行われた攻撃を国際法違反として批判しました。
2022年2月24日にロシアがウクライナに侵攻しました。これは、国際法を無視した行為であり、侵略戦争の禁止という国際社会が築き上げた重要な原則に反しています。侵略戦争は過去の歴史において多くの犠牲を生み出してきたため、国際社会は平和的な解決を求めてきました。しかし、ロシアのウクライナ侵攻は、国連安全保障理事会の常任理事国であるロシア自身が、国際秩序を脅かす行為を行ったという点で、非常に懸念される事態です。
敵が一方的に使用する兵器は卑劣
歴史を振り返ると、敗北した国は敵が使用した武器をルール違反の凶器と見なすことがよくあります。これは、戦争の激しさや破壊力が増すことで、敵の手段や使用する兵器がより悪質であると認識されるためです。
一方的な使用や非対称な力の行使が、敵の卑劣さを強調する要因となることもあります。例えば、化学兵器や生物兵器など、特定の兵器が敵によって使用されると、その行為は戦争犯罪や人道に対する罪として非難されることが多いです。
しかし、戦争の勝敗が決まった後でも、兵器や戦術の選択に関する評価は主観的であり、敗者が見る敵の卑劣さは、勝者には正当化されることがしばしばあります。
大量破壊兵器の使用の批判のダブルスタンダート
ロシア軍によるウクライナ侵攻では、報道によれば、「真空爆弾」(燃料気化爆弾)などの大量破壊兵器が使用されているとされています。これは非常に残虐な兵器であり、その使用が一般市民の犠牲を増やし、戦争犯罪につながる可能性が高いです。この結果、世界の「反露感情」がさらに強まることになりました。
さらに、クラスター爆弾の使用が疑われていることも国際社会からの非難を浴びています。クラスター爆弾は多数の子爆弾を内包し、広範囲に散布する兵器であり、その使用は一部の国際条約で禁止されています。これらの兵器は無差別攻撃を引き起こす可能性が高く、特に市民への被害が懸念されます。
国際人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」は、「ロシア軍は無差別殺傷兵器による違法な攻撃をやめるべきだ」と強く非難しており、ロシアの行為が国際法に違反することを指摘しています。
大量破壊兵器「クラスター爆弾」
クラスター爆弾は、確かに通常兵器に分類されるものの、その特性から大量破壊兵器に準ずるものとも捉えられています。この兵器は、1発の親爆弾から最大で200個もの子爆弾が飛び散り、無差別殺戮を引き起こします。さらに、約10%が不発弾となり、第二の地雷のような恐れがあります。
過去にアメリカが、湾岸戦争やコソボ紛争、アフガニスタン報復戦争でクラスター爆弾を使用し、無関係な市民に被害を与えています。
また、イラク戦争では、米軍が1,500発、英軍が2,000発以上のクラスター爆弾を使用しました。アメリカは劣化ウラン弾やクラスター爆弾を使い、圧倒的な戦力でイラクを制圧しました。
しかしながら、戦争の主たる目的であったはずの大量破壊兵器は発見されず、アメリカの大義は「サダム独裁政権からイラク国民を自由にするための戦争」へと変化しました。
クラスター爆弾禁止条約「オスロ条約」
2008年のクラスター爆弾禁止条約(オスロ条約)には108カ国が署名していますが、ロシアやウクライナ、そしてアメリカは署名していません。
アメリカは一時期、不発率が1%以上のクラスター爆弾の使用を2019年以降禁止する方針を定めましたが、2017年にその政策を放棄しました。日本はオスロ条約に加盟しており、現在クラスター爆弾を保有していませんが、在日米軍はクラスター爆弾を保有しています。
日本政府は、在日米軍基地は日本の管轄外であるため、米軍のクラスター爆弾の使用や保有は禁止されていないとしています。また、沖縄では2010年にアメリカ軍がクラスター爆弾の投下訓練を行っていることが明らかになりました。
日本政府は、安全保障関連法案の議論の中で、法的には自衛隊の後方支援活動として弾薬を運ぶことは可能であり、その中にはクラスター爆弾も含まれるとしています。
これらの事実から、クラスター爆弾に関する国際的な取り組みや条約があるにもかかわらず、一部の国がその使用を継続していることが明らかです。
【7】「われわれの受けた被害は小さく、敵は甚大」
戦争や紛争の際には、プロパガンダがしばしば活用されます。戦況が不利な場合、政府や軍隊は情報操作によって自国民の士気を維持し、敵国民の士気を低下させることを目的として、自国の被害や損失を隠蔽し、敵の被害を誇張して伝えることがあります。
プロパガンダの手法には、報道機関を通じた情報のコントロールや、一部の真実を大きく取り上げることで他の事実を覆い隠す「強調」、捏造された情報やデマを流布する「偽情報」、事実を捻じ曲げる「誤謬」などがあります。
しかし、このようなプロパガンダは、戦争が終結した後で真実が明らかになり、国際的な信頼を損ねることにつながっています。
《プロパガンダ》太平洋戦争「日本軍による大本営発表での嘘」
戦時中、日本の大本営は戦況が悪化するにつれ、捏造された戦果を報道し、敗北を隠蔽するためにメディアを利用しました。これによって国民は真実から遠ざけられ、一喜一憂することになりました。
例えば、1943年2月9日にニューギニア島ブナとソロモン群島ガダルカナルで発生した戦闘では、大量の戦死者や多数の艦艇、航空機の損失がありましたが、大本営は「転進」という言葉を使って敗北を認めませんでした。これにより、戦場からの撤退が戦術的な変更と捉えられるような印象操作が行われました。
また、1943年5月30日にアッツ島守備隊が全滅した際には、その事実を「玉砕」と表現し、戦闘員が天皇のために犠牲になったという印象を与えました。このように、損害の隠蔽や戦果の誇張は、船舶や航空機、地上兵力の数値にも及び、現実との乖離を拡大させました。
【8】「芸術家や知識人も正義の戦いを支持している」
芸術家や知識人がプロパガンダ活動に巻き込まれたことは、戦争の正当化や国民の支持を獲得する目的で行われました。彼らの作品や言葉には感動を呼び起こす力があり、それが国民の心に訴えかけ、世論を動かす結果を生み出すことがありました。
人の心を動かすプロパガンダの物語を外注
感動や芸術作品は確かに世論を動かす力があります。第一次世界大戦時代の広告会社がまだ発展途上であったため、政府は芸術家や知識人をプロパガンダ活動に巻き込むことが一般的でした。詩人や作家の文才を利用して、戦争を正当化し、国民の支持を集めることが目的でした。
日本でも、多くの文化人が戦争の宣伝活動に関与しました。戦争を賛美する詩や絵画が制作され、国民の士気を高めるために利用されました。終戦後、戦争の敗北によって、こうした活動はなかったことにされる傾向がありました。
《プロパガンダ》湾岸戦争「ナイラ証言」
「ナイラ証言」は、1990年にイラクがクウェートに侵攻した際、名前をナイラと名乗る15歳の少女がイラク軍の蛮行について涙ながらに訴えたことを指します。
ナイラは、クウェート内の病院でボランティア活動をしていたと述べ、イラク軍兵士たちが新生児を保育器から引きずり出し、床に投げ捨てて死なせたと主張しました。この証言が国際世論を動かし、湾岸戦争が始まりまいた。
その結果、アメリカ軍は大規模な空爆を実施し、多国籍軍とともにイラクに進軍しました。この戦争でイラク軍は迅速に壊滅させられました。イラク政府によると、戦闘員の死亡者数は2万人以上に上り、一般市民にも2278人の死亡者が出たとされています。
これが捏造だった
しかし、後になってナイラの証言が捏造であることが判明した。ナイラの証言はクウェート政府が意図した反イラク世論を喚起するための広報キャンペーンの一部で、ヒル・アンド・ノウルトンという広告会社がこのキャンペーンを実行し、ナイラの虚偽の証言を作り出して世論を誘導していたのです。
この虚偽の証言は、アメリカ合衆国大統領や上院議員、さらには各国のマスメディアによって繰り返し引用され、反イラク世論を喚起しました。結果として、アメリカは湾岸戦争に参戦し、イラクを壊滅させました。これはクウェート政府にとってプロパガンダ活動として大成功でした。
この事例は、「女性や子供の証言」や「現地で現場を見た被害者は嘘をつかない」という人々の根強い思い込みを背景に、弱者側が女性や子供を利用したプロパガンダ活動の例として引用されています。
《プロパガンダ》第一次世界大戦「ドイツが中立国ベルギーへ侵入し、残虐行為を働いた」
第1次世界大戦当初、米国は参戦を控えていましたが、欧州諸国、特に英国は米国の参戦を熱望していました。しかし、米国民は容易に動かされませんでした。そこで、英国をはじめとする連合国側は、ドイツに対するプロパガンダを展開しました。
このプロパガンダは、「ドイツが中立国ベルギーへ侵入し、ベルギーで数々の残虐行為を働いた」というものでした。
例えば、「ベルギー人牧師を寺院の鐘塔に吊るして鐘の舌とした」「連合国側捕虜を十字架に磔にして処刑した」、「ベルギー人の子供の手首を切断した」、「連合国側兵士の死体を搾り、その脂肪でグリセリンを製造している死体製油工場が存在する」など、実際には虚偽・捏造である内容が含まれていました。
その中でも「ベルギー人の子供の手首を切断した」という捏造話は、第一次世界大戦時のプロパガンダの中でも特に効果的だったとされています。これは紙媒体、宗教関係、詩集など様々な形で国際的に広まりました。
この話がベルギー難民の窮状とドイツ軍の残虐さを訴えるプロパガンダとして成功し、政治的な影響力を持ちました。
アメリカが第一次世界大戦に参戦
英国政府は、このような虚偽の情報を用いて国民の義憤、恐怖、憎悪を煽り、愛国心を喚起して志願兵を集めることを目的としていました。さらに、米国と共謀して捏造された多くのプロパガンダが世論を沸騰させました。
結果的に、このような世論の高まりにより、米国はドイツに宣戦布告し、第一次世界大戦に参戦することになりました。
【9】「われわれの大義は神聖なものである」
「神聖な大義」という言葉は、戦争や政治的行動において非常に強力な効果を持ちます。これは、宗教的な意味を持つ戦争を、絶対的な価値があるとみなすことからきています。戦争プロパガンダには、しばしば宗教的な意味合いが含まれることがあります。例えば、「神のご加護に」「ゴッド・セーヴィ・ザ・クイーン」などのスローガンが使用されることがあります。
宗教性が戦争に与える影響は、現代においても見られます。反民主主義制度に対する介入や、国家の正義を守るための戦争が、神聖な大義や聖なる意味にすり替えられることがあります。しかし、戦争の宗教性は陣営によって異なり、自国に有利に働くときだけ、戦争が宗教的な意味合いを帯びることが多いです。
《プロパガンダ》太平洋戦争「日本の広告で命懸けの聖戦を呼びかける」
日本の戦争プロパガンダポスターは、他国のプロパガンダとは異なる特徴を持っていました。戦争初期には、「聖戦完遂」や「自存自衛」などの戦争目的が掲げられていましたが、その後は国民の努力が足りないことや国内に不心得者がいることを主張するポスターが主流となりました。
戦況が不利になるにつれて、指導者の責任は問われず、国民の努力不足が責められるようになりました。戦争末期には、悲壮感あふれる「一億玉砕」をも辞さない宣伝が広まり、国民は降伏することを考えず、自分も死ぬことが予定されていると信じていました。
このようなプロパガンダは、国民の一体感を醸成し、戦争継続への支持を維持する目的があったと考えられます。また、相互監視を訴えることで、国民の監視社会を作り上げ、政府による統制を強化していました。
現代の戦争でも宗教色による大義名分「聖戦」が用いられる
アルカイダが米国を攻撃した理由は、イスラム圏に対する西欧の侵略の中心としての米国に対する反感が根底にありました。
特に、パレスチナ問題におけるイスラエルへの支援が大きな要因となっています。イスラム主義者は、国境を無視し、世界をイスラム圏と異教徒の世界に二分するという世界観を持っており、9・11の攻撃もイスラム圏防衛のための聖戦と位置付けていました。
一方で、当時のジョージ・W・ブッシュ米大統領も、米軍を「十字軍」と形容するなど、戦争を宗教的な意味合いで捉える傾向がありました。ブッシュ大統領は、信仰を通じてアルコール依存症から立ち直ったと公言し、キリスト教右派のグループと親密な関係を築いていました。
このキリスト教右派のグループは、聖書の記述に基づいてイスラム圏との戦いがキリストの再臨や千年王国をもたらすと信じており、このような戦争を後押ししていました。
このように、アルカイダによる9・11の攻撃やアフガニスタン戦争、イラク戦争などの背景には、両者の宗教的な世界観が大きな役割を果たしていました。こ
【10】「この正義に疑問を投げかける者は裏切り者である」
戦争を正当化し、反対意見を抑圧するために、「この正義に疑問を投げかける者は裏切り者である」という主張が使われることがあります。これは、戦争を疑問視する人々を「敵側の人間」とレッテル貼りし、異なる意見を持つ人々に対する社会的圧力を高める手法です。
このような状況では、多くの国民が反対の声を上げることが難しくなり、半ば強制的に戦争支持の世論を増長させます。
2022年ロシアのウクライナ侵攻「反戦を訴えた児童が逮捕」
ロシアがウクライナ侵略後、ロシア国内で反戦を訴える国民が逮捕や拘束される事態が発生しています。約7000人が50都市で拘束され、その中には小学校低学年とみられる子供たちも含まれていることが報じられています。
ネット上で拡散された子供たちが護送車に押し込められた写真は、人権侵害や言論の自由の制限について物議を醸しています。
大日本帝国時代「戦争を否定すると非国民扱いをうける」
戦時下の日本社会では、自由や民主主義、平和といった言葉は、「非国民」の表現とされていました。平時の社会の倫理や思考、発想は戦争の状況下では許されないとされていたのです。子どもたちは学校で空襲時の避難訓練を行い、国のために全国民が戦うべきだという教育を受けていました。
子どもたちだけでなく、大人たちも国のために国民が力を合わせて戦うという軍国主義の考えに浸っていた。戦争に否定的な意見を述べると、非国民というレッテルが貼られることもありました。
いつの時代も終わった後で私たちは本当のことに気付く
このような10からなる戦争のプロパガンダの法則は、先に戦争を仕掛ける側も、受けて立つ側も、国民の支持を得るために用いられます。それなのに、私たちは戦争が終わるまで騙されたことに中々気づくことができません。
いつの時代も、私たち“人”は憎悪を煽られ、正義に燃え、弱者に同情することで行動する。これらの感情は、「人間らしい」心の動きであり、文化を支える情熱となります。
プロパガンダに全く心を動かされない人は、冷血漢や利己主義者であることが多いです。感情自体を責めるつもりはありませんが、人間らしい心を失わず、同時にプロパガンダに流されない姿勢が重要です。
国民主権!国のいく末は国民が決める
私たちの国、日本のような国民主権の国家では、国の行く道は国民が決めるものです。平和に進むのか、戦争に進むのか、その選択は一部のエリートだけではなく、国民全体が関与するべきです。そのため、国民は自分たちの意思を政治に反映させる権利と責任があります。
戦争の道へ進もうとする国家を止める力は、国民自身にあります。これは、選挙やデモ、請願活動など、さまざまな形で声を上げることができます。
また、社会への意識を高めるために、教育や情報発信、対話や議論を通じて平和を求める意志を共有し、広めることも重要です。
国民が主体となって行動し、国家の方向性に影響を与えることで、戦争という悪しき道を避けることができます。そのためには、国民一人ひとりが政治に関心を持ち、自らの意思を表明し、積極的に関与していくことが今求められます。
【戦争プロパガンダ③】SNS時代!フェイクニュースが世論を作り上げる『サイバープロパガンダ』