地球の「肺」の危機!?ボルソナロ政権とアマゾンの生態系の崩壊【アマゾン森林破壊】


環境問題が世界的な注目を集める中、アマゾンの森林破壊がますます深刻化しています。ブラジルのボルソナロ大統領が「アマゾンは地球の肺じゃない」と発言し、批判を浴びる中、アマゾンの森林は地球全体の環境に大きな影響を与えていることから、多くの人々がこの問題に注目しています。

この記事では、アマゾンの森林がなぜ重要か、ボルソナロ大統領の発言や森林破壊がもたらす影響について解説し、国際社会が取り組むべき環境保護の重要性を訴えます。

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アマゾンには、古くから現在までの、コミュニティと文化が大地や森、自然の豊かさや資源に敬意を払い発展してきた幅広く多様な経験が存在する。〔……〕本書に綴られている 数々の教訓は、血と汗、時と記憶、夏と冬、長い年月に多くの人びとが経験した苦しみと希望で満ちている。その教訓は、それらが育まれた場所であるアマゾンの地と森林と同様に、 貴重な資源である。緊急性を持って、私たちの経験が役立てられることを願っている。[マリナ・シルヴァ(環境運動家、元ブラジル連邦政府環境大臣)](「Books」出版書誌データベースより)

Jair Messias Bolsonaro 

ボルソナロ大統領とアマゾン森林破壊

BBC News Japan/YouTube

近年、環境問題が世界中で注目される中、アマゾンの森林破壊がますます深刻な問題となっています。特にブラジルのジャイール・ボルソナロ大統領が、「アマゾンは地球の“肺”なんかじゃない!」という発言で物議を醸したことが話題になりました。

ボルソナロ政権は、経済成長や雇用創出を理由に、アマゾンの開発を積極的に推進しています。しかし、その結果として、過去数年間でアマゾンの森林破壊が急速に加速したのです。

ボルソナロ大統領

ジャイール・ボルソナロ大統領は、2019年1月1日にブラジルの大統領に就任した人物です。彼はブラジルの右派政治家であり、軍人出身です。ボルソナロ大統領は、反グローバリゼーションや反左派、反LGBT、反腐敗などの立場を取ってました。

軍人時代はキレて兵舎を爆破!

軍の出身であり、ブラジルの砲兵部隊からパラシュート部隊に移りました。また、彼が士官だった頃に、軍の給料が不十分であるとの不満が一部の士官の間で起こり、ボルソナロを含む士官グループが、軍事施設に爆薬を仕掛け爆発させる事件を起こしました。

ボルソナロは、この事件に関与していたとされている士官グループの一員として、軍事裁判にかけられましたが、最終的には無罪となりました。しかし、彼は軍を退役することを余儀なくされました。

退役後に政治活動をスタート

軍を退役した後、政治に関心を持ち、1989年にリオデジャネイロの市会議員に当選しました。その後、1991年には連邦議員に当選し、2014年の下院選挙ではリオデジャネイロで歴代最高の得票数で当選した。

下院議員としての活動期間中、目立つ存在とは言い難く、議員立法も大半が軍人や軍部に関係したものであったとされています。

過激すぎる数々の問題発言!

ボルソナロ大統領は、過去に下院議員として様々な物議を醸す発言を繰り返してきました。彼の発言内容は極右的な主張が目立ち、過激なものが多く、人種差別やホモフォビア、男性優越主義といった立場を強調しています。

例えば、「彼女(マリア・ド・ロザリオ下院議員)をレイプすることはない。ブスでタイプじゃないから」や、「ゲイの息子は愛せない。男と一緒に現れるくらいなら、事故で死んでくれたほうがマシ」、「独裁政権の失敗は、拷問しただけで殺さなかったこと」、「女の給料は男より低くするべき。妊娠するから」といった発言が、その一例です。

このような過激な発言は、ボルソナロを支持する一部の人々からは喝采を浴び、彼の人気を高める一因となっています。一方で、多くの人々は彼の発言に憤りを感じ、彼に対する反発を強めています。

大統領に就任!「南米とトランプ」と呼ばれた

2018年に行われたブラジルの大統領選挙で、その極右的な主張を掲げ、人種差別や女性蔑視、同性愛嫌悪などの発言を繰り返しました。彼は、トランプ大統領を尊敬する発言をし、しばしば「南米のトランプ」と呼ばれることもありました。

それにもかかわらず、彼は大統領選挙で多くの支持を集め、決選投票で勝利を収めました。彼の勝利は、ブラジルの政治にとって大きな転換点となり、多くの人々からは歓迎された一方で、彼の極右的な主張に懸念を抱く人々もいました。

国の腐敗にうんざりした国民がボルソナロに投票

ボルソナロがブラジルの大統領に当選した背景には、ブラジルの支配層に対する不信感や不満があったとされています。

ブラジルでは、政治やビジネスの世界で腐敗や汚職が横行しており、その問題に対する取り組みが不十分であるとの批判がありました。また、ブラジルの経済が停滞し、失業率や貧困率が高い状況が続いていました。

ボルソナロは、こうした不満や不信感を利用し、汚職や経済危機に対する批判を強め、自身が法の秩序を守る姿勢を示すことで、多くの有権者から共感を得ることに成功しました。さらに軍出身という経歴もプラスに働きました。

また、彼の歯に衣を着せない発言や過激な主張も、彼の支持者たちからは支持され、彼を「変革の象徴」として見なすようになりました。

このように、ボルソナロ大統領誕生は、単純なブラジルの右傾化によるものではなく、多くのブラジル人が政治の変革を求め、彼を新しいリーダーとして見なすようになった結果であると言えます。

選挙中に襲撃され命の危機にあった事も…。

2018年のブラジル大統領選挙期間中に、ボルソナロはミナスジェライス州の街、ジュイス・デ・フォラで支持者に担がれている最中に、ナイフで刺されました。彼は深刻な傷を負い、手術を受けた後に回復、この事件での同情票も集まりました。

ボルソナロ政権下で加速したアマゾン森林破壊

ボルソナロ大統領が就任して以降、アマゾンの熱帯雨林の破壊が深刻化、彼の環境保護政策に対する批判は、国内外から高まった。

DW News/YouTube
選挙中のマニフェストどおりにアマゾン開発を有言実行

ボルソナロ大統領は、選挙戦の際にアマゾンの開発を最大の政策として打ち出し、その後、就任後にその政策を実行してきました。

彼は、アマゾンの熱帯雨林の開発を進めることで、ブラジル経済を成長させることができると主張しており、農牧業や鉱業のための開発プロジェクトを推進。

それに伴い、アマゾンの熱帯雨林が破壊される結果になってしまいました。特に、先住民保護区での違法伐採が相次いでいることが深刻な問題となった。

2019年7月には、2018年の同じ時期の4倍近くにあたる面積が破壊された。

アマゾン熱帯雨林の減少データを発表した人物を解任

2019年夏には、アマゾン川流域の熱帯雨林が大規模な森林火災に見舞われ、国内外から大きな注目を集めました。その際には、ブラジル国立宇宙研究所(INPE)が発表した人工衛星データにより、アマゾンでの森林減少が前年同月比で88%増加したことが明らかになっています。

しかし、INPEの所長であったリカルド・ガウヴァンは、このデータの発表によってボルソナロ大統領から批判を受け、解任されることになりました。大統領は、INPEのデータが誇張されており、ブラジルの環境保護政策を誤解を招くものであると主張し、解任を決定したとされています。

この解任劇も、国内外から批判を浴びることになり、ブラジル政府の環境保護政策に対する不安が高まる一因となりました。

BBC News Japan/YouTube

環境保護団体に指摘されるも……アマゾンの開発を続行!

環境保護グループや非政府組織は、アマゾンの熱帯雨林の違法伐採や環境破壊が増加している背景に、ボルソナロ大統領が経済発展を優先し、森林開発を推進していることがあると指摘しています。

ボルソナロ大統領は、過去に気候変動防止に関するパリ協定からの離脱を示唆し、環境保護に取り組む非営利団体を「緑のテロリスト」と攻撃する発言を繰り返し、政府からの資金援助を打ち切ることを示唆するなど、環境保護に関する取り組みを妨げるような発言をしている。

ボルソナロ大統領は、欧州が環境保全についてブラジルに教えることは何もないと述べ、アマゾンの「持続可能な開発」についての自身の計画を改めて主張した。

BBC News Japan/YouTube

フランスの大統領がアマゾン森林火災消化支援を表明!!それを痛烈に批判

フランスで開催されたG7サミットでは、アマゾンの熱帯雨林火災に対する消火支援のため、G7諸国が2,000万ドル(約21億円)の資金を拠出することが発表されました。フランスのマクロン大統領は、G7を代表してこの支援を申し出、他のG7諸国も賛同して支援を表明しました。

また、マクロン大統領は「アマゾンの熱帯雨林は、地球環境にとって非常に重要な存在であり、我々はその保護に全力を尽くすべきだ」との考えを示し、今後も国際協力を進めていくことを表明していました。

Guardian News/YouTube
VICE News/YouTube
「アマゾン不当で余計な攻撃」ボルソナロ大統領が批判

ボルソナロ大統領は、G7サミットでの消火支援に対して、ブラジルが参加しないG7が独自に行動することに不快感を示し、フランスのマクロン大統領に対して批判を浴びせました。また、マクロン大統領がブラジルに対して環境保護を求める発言をしたことに対し、「植民地主義的な思考」を持っていると非難するなど、マクロン大統領との対立を公然と示した。

ハリウッド俳優のレオナルド・ディカプリオを批判

アマゾンの消火ボランティアらが、寄付を募るためにわざと火を付けたとして逮捕される事件がありました。

逮捕された消防団員4人は、アマゾン流域の支援活動で受賞歴がある有名な非政府組織と関係があることが報じられています。ブラジル当局は、このNGOの事務所も捜索し、調査を進めているようです。

一方、このNGOの創設者は、英BBCに対して「容疑はばかげている」とのコメントを出しています。消防団員たちがわざと火をつけたとする根拠はなく、ボランティア活動に取り組んでいたと主張しているためです。

「アマゾンに火を放つために金を出している」痛烈批判

この事件を受けて、ボルソナロ大統領は、映画俳優のレオナルド・ディカプリオについて、「アマゾンに火を放つために金を出している」と皮肉を言った。これは、ディカプリオが環境保護団体を支援するために寄付を行っていることを指しての発言であるとされています。

ディカプリオは、自身のインスタグラムで「当該団体に寄付した事実はない」とする声明を投稿し、事件に関する報道に対して反応しました。また、彼は同時に「生態系の未来は危機にひんしている」と述べ、環境保護に対する支持を表明しました。

ディカプリオが共同設立した環境保護団体であるEarth Allianceは、アマゾンの熱帯雨林火災に対して緊急支援として500万ドル(約5億5千万円)の寄付を表明していました。この寄付は、地元NGOや地域の先住民族団体など、火災の被害を受けた人々や地域の生態系を保護するために使用されている。

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環境活動家・トゥンベリ・グレタ”を批判

ブラジルのアマゾン地域での先住民活動家の暗殺事件は、近年増加しており、深刻な人権問題として取り上げられています。トゥンベリ・グレタさんも、この問題に対して声を上げており、自身のTwitterで「先住民の人々が違法伐採を阻止するために殺害されているのに、世界が声を上げないのは恥ずべきことだ」と投稿し、世界的な注目を呼びました。

ボルソナロ大統領はグレタ・トゥンベリさんに対して、「あんなピラニャ(ガキ)のためにマスコミはなんでスペースを割くのか」と侮蔑的な発言を行うなど、彼女を批判する発言を繰り返しました。彼はまた、環境保護活動家たちはアマゾンの開発を妨げる存在だとして、環境保護活動家を非難していました。

毎日新聞/YouTube
見出し

グレタは、自身のTwitterのプロフィール欄に「Pirralha(ピラリャ)」という言葉を追加し、ボルソナロ大統領の子供じみた発言に対する皮肉として使用しました。

「アマゾン森林火災はフェイク」ボルソナロ大統領が主張

ボルソナロ大統領は、関係国とのビデオ会議で「熱帯雨林に火は付かない。アマゾンが燃えているというのはうそで、正しい数字でこれに対抗しなければならない」と述べた。森林伐採やアマゾン火災の責任を先住民や知事、そして環境活動家になすりつけた。

テレ東NEWS/YouTube

「地球の“肺”」という表現は誤り?

ボルソナロ大統領は「アマゾンは世界遺産の一部と言うことも、科学者たちが断言しているように、わが国の熱帯雨林が地球の肺だと言うことも誤りだ」と主張した。

アマゾンの熱帯雨林は、大量の二酸化炭素を吸収して、地球上の20%の酸素を生み出している、「地球の肺」と呼ばれています。

確かに地球の“肺”とは言い切れない

確かに、地球の熱帯雨林を「地球の肺」と表現することには科学的に正確でない側面があるかもしれません。熱帯雨林は、酸素を放出する光合成作用と、二酸化炭素を吸収する呼吸作用が同時に行われることで知られています。

肺の機能は呼吸によって酸素を吸収し、二酸化炭素を排出する役割を持っています。“肺”というのならまったくの機能が逆である。

さらにに、科学者の中には、熱帯雨林の機能事態に別の見解を示す人もいる。

「アマゾンは酸素を出すが吸収もする、つまり酸素を特に多く出すわけではない」

「光合成で酸素を出す植物があり、一方」それとは別に死んで分解していく植物もある。それを食べる昆虫やバクテリアが出す二酸化炭素で、酸素と二酸化炭素の割合はほぼ同等になる」

「アマゾンが出す酸素と吸収する二酸化炭素はプラスマイナスゼロになる」

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絶対に守らないといけない生命の森

それでも、地球上の2%のアマゾン熱帯雨林は、地球の生態系にとって非常に重要な役割を果たしています。

Joshua Turner/YouTube
人を含む生物にとって貴重な水源

アマゾンは地球上で最大の淡水流出源であり、年間を通じて約2,000億トンの水を大西洋に流しています。この水は、南アメリカ大陸の広大な地域を潤し、農業、漁業、産業などの重要な水源として利用されています。また、アマゾンの森林が大量の水分を蒸発させることで、周囲の空気を湿潤に保ち、降雨量を増加させています。このように、アマゾンの水循環は地球の気候や生態系に大きな影響を与えています。

しかし、森林伐採によって土壌の水分保持能力が低下し、熱帯雨林が本来持つ水循環の機能が失われると、乾燥化や洪水などの自然災害が発生しやすくなります。

多種多様な生命の楽園

アマゾン熱帯雨林は、過去数百万年間にわたる地球の気候変動の中で緑が残ったため、多様な生物が生息する避難場所となりました。今、ココには全世界の生物種の約10分の1から15分の1が生息しているとされています。また、アマゾンに生息する動植物の種類は世界でも類い稀なものであり、生物多様性の宝庫としても知られています。

Travel + Leisure/YouTube
フルーツの宝庫

アマゾンは、多くの種類の果物が生息しているため、フルーツの宝庫とも呼ばれています。アサイーやカムカムはその代表例で、健康食品としても人気があります。また、アマゾンには他にも、グアバやマンゴスチン、アボカド、カムカムなどの人気のあるフルーツが自生しています。

貴重な医薬品の原料も!

アマゾンの植物には、薬として利用される可能性があるとされています。

実際、熱帯雨林に生息する植物や動物には、医薬品や化粧品の原料として用いられるものが多くあります。特に、ガンや糖尿病、心臓病、アルツハイマー病などの難病治療に役立つと期待されている成分を含む植物が多数存在しています

また、アマゾンには未知の植物種がまだまだ存在すると考えられており、今後も医療や健康分野での発見が期待されています。しかし、アマゾンの森林破壊が進むことによって、これらの植物が失われてしまう可能性があり、その影響は計り知れません。

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アマゾンには、古くから現在までの、コミュニティと文化が大地や森、自然の豊かさや資源に敬意を払い発展してきた幅広く多様な経験が存在する。〔……〕本書に綴られている 数々の教訓は、血と汗、時と記憶、夏と冬、長い年月に多くの人びとが経験した苦しみと希望で満ちている。その教訓は、それらが育まれた場所であるアマゾンの地と森林と同様に、 貴重な資源である。緊急性を持って、私たちの経験が役立てられることを願っている。[マリナ・シルヴァ(環境運動家、元ブラジル連邦政府環境大臣)](「Books」出版書誌データベースより)

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