ガリバー旅行記は予言の書?火星を周る2つの月「フォボス」と「ダイモス」の謎に迫る!【宇宙】

ジョナサン・スウィフトの『ガリバー旅行記』は、小説でありながら、火星の二つの月「フォボス」と「ダイモス」についての詳細を不思議なほど正確に記述しているとして、一部で予言の書とも見なされています。

彼の記述が偶然の一致なのか、それとも何らかの未知の知識があったのか、その謎は今もって科学者や文学愛好家たちの興味を引き続けています。

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1726年にロンドンで刊行された『ガリバー旅行記』は、アイルランド出身の聖職者でジャーナリストのジョナサン・スウィフトが書いた4部構成の諷刺小説です。現在にいたる300年のあいだ、世界中の子どもと大人に読み継がれてきました。次々と起きる出来事、たっぷりの諷刺、理屈抜きの面白さ!本書は定評と実力をそなえた米文学者の柴田元幸が、「お茶の間に届くこと」を意識して、朝日新聞に好評連載した翻訳の書籍化です。(「Books」出版書誌データベースより)

The two moons of Mars

火星を周る二つの月「ファボス」「ダイモス」

NASA Goddard/YouTube

火星は地球の隣に位置する惑星であり、多くの研究者たちが探査と研究を続けています。

火星には二つの小さな衛星がありますが、これらの衛星は非常に興味深い物語を持っています。それらは、フォボスとダイモスと名づけられています。1877年にアメリカの天文学者ホールによって発見されました。

フォボスとダイモスの由来

フォボスとダイモスはギリシャ神話に登場する「恐怖」と「恐慌」の神から命名されました。ギリシャ神話では、それぞれポボスとデイモスと表記されます。

ポボスとデイモスは、ギリシャ神話の戦いの神アレスの息子たちです。アレスはローマ神話では「マルス」と呼ばれており、これが火星(英語ではMars)の語源となっています。

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火星の衛星の特徴

フォボスは火星の表面から約9,378キロメートルの高さに位置し、直径は22.2キロメートルです。一方、ダイモスは火星から23,460キロメートルの距離に位置し、直径は12.4キロメートルです。

フォボスは地球に近い方にあり、ダイモスはそれよりも遠い位置にあります。どちらの衛星も非常に小さく、不規則な形状をしています。

太陽系で月があるのは地球と火星だけ

太陽系には8つの惑星が存在し、それらは地球型惑星(岩石惑星)と巨大惑星(ガス惑星)の2つのカテゴリに分類されます。

地球型惑星は水星、金星、地球、火星を含み、これらの惑星は比較的小さく、岩石でできているという共通点があります。実際には、地球と火星のみが自然の衛星を持っています。

地球には、もっとも有名な衛星である月があります。月は直径約3,474キロメートルで、地球のサイズに対して非常に大きい衛星です。

火星には、前述の通り、フォボスとダイモスの2つの小さな衛星があります。

一方、水星と金星には自然の衛星は存在しません。

これらの惑星が衛星を持たない理由にはいくつかの説がありますが、最も一般的な説は、これらの惑星が太陽に近すぎるため、重力的な影響で衛星を獲得することが困難だと考えられています。

その形はまるで“じゃがいも”

火星の衛星であるフォボスとダイモスは、どちらも非常に小さく不規則な形状をしており、でこぼこのじゃがいものような形をしています。

この特徴的な形状は、衛星が長い間宇宙空間でさまざまな衝突や変化にさらされてきたことが考えられます。

考えられる2つの起源「捕獲説とジャイアントインパクト」

火星の衛星であるフォボスとダイモスの起源については、主に以下の2つの説が提唱されています。

  1. 捕獲説(キャプチャ説)はフォボスとダイモスが元々は太陽系内の小天体(小惑星)であり、火星の重力に捕獲されてその衛星となったとする説です。この説によれば、フォボスとダイモスは、太陽系の形成初期における微惑星の破片が長い時間をかけて集積してできた小惑星であるとされます。火星がこれらの小惑星を捕獲し、その重力の影響で現在の軌道に収まったとされています。
  2. 巨大衝突説(ジャイアントインパクト説)は、フォボスとダイモスが火星と別の天体との衝突によって生成された破片が集まってできたとする説です。このシナリオでは、火星の初期に別の大きな天体が火星に衝突し、その衝撃で多くの破片が宇宙空間に飛び散りました。その後、これらの破片が再び集まってフォボスとダイモスが形成され、火星の周りを周回する軌道に収まったとされています。

どちらの説も現在の研究において支持されている部分がありますが、確定的な結論はまだ得られていません。

今後の探査計画や衛星の詳細な観測によって、フォボスとダイモスの起源に関するさらなる知見が得られることが期待されています。

LabEx UnivEarthS/YouTube

ファボス「太陽系内で最小の衛星」

フォボスは、火星の第1衛星であり、形状はフットボールに似た楕円形をしています。

その大きさは、おおよそ26.5×21.7×17.7キロメートルとされており、太陽系内の最も小さな衛星の一つです。フォボスは非常に不規則な形状をしており、多くのクレーターやでこぼこが表面に見られます。

このような小さな不規則な形状の衛星は、太陽系内で他にもいくつか存在しており、これらの衛星がどのように形成されたのか、またそれらが持つ科学的価値について、研究者たちは引き続き調査を行っています。

Phobos seen by Mars Express
西から昇って東に沈む

火星上で見るフォボスは、地球の月の約3分の1ほど大きさで、公転周期が火星の自転周期より短いため、珍しい動きをします。

西から昇り東へ沈むように見えるのは、フォボスの軌道が火星の静止軌道より内側にあるためで、その公転速度は火星の自転速度よりも速いためです。

結果として、フォボスは1日に2回、西から上り速いスピードで空を横切り、東へ沈みます。

このような珍しい動きを示す衛星は、太陽系内でフォボスだけです。

惑星の1日よりも短い周期で惑星の周りを回っているため、火星上から見たフォボスの姿は、他の衛星とは異なる興味深い現象をもたらしています。

NASA Jet Propulsion Laboratory/YouTube
少しずつ落下中

フォボスは火星の上空約6,000キロメートルの軌道を回っており、この距離は太陽系の衛星の中で最も近いものとなっています。

火星の重力の影響によって、フォボスは年間約2メートルずつ惑星に向かって「落下」しているとされています。

この現在の軌道減衰が続くと、おおよそ5,000万年以内にフォボスは火星に十分近づいた際に潮汐力によってバラバラになってしまう可能性があります。

その後、破片は火星の大気に落下するか、新たな火星の環を形成することが考えられています。

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ファボス最大のクレーター「スティックニー」

フォボスの表面は多数のクレーターで覆われており、その中でも特に有名なのがスティックニーと呼ばれる巨大なクレーターです。

スティックニーは直径約9キロメートルで、フォボスの小さなサイズに対して非常に大きなクレーターです。

スティックニーなどの巨大クレーターの壁面に見られる線状の模様は、フォボスの弱い重力によってクレーター内部に存在する砂や岩が滑り落ちて形成された地滑りの跡とされています。

フォボスの重力が弱いため、地滑りが起こる際に滑り落ちる物質はゆっくりと動くことができ、独特の模様を作り出すことができます。

ダイモス「フォボスよりも小さい」

NASA Jet Propulsion Laboratory/YouTube

ダイモスは火星の第2衛星であり、約8キロメートル×6キロメートル×5キロメートルの楕円体に近い形状をしています。フォボスよりも外側の軌道を回り、火星から約24,000キロメートル離れた位置で公転しています。

ダイモスはフォボスよりもさらに小さく、その表面はフォボスと比べてなめらかです。これは、ダイモスの表面がフォボスほど衝突によって形成されたクレーターに覆われていないためです。

火星から見ると、ダイモスは明るい恒星のように見えます。その視等級は約12等級で、肉眼では観測できないが、双眼鏡や小型の望遠鏡を使えば観察することができます。

東から昇って西に沈む

ダイモスの公転スピードは火星の自転よりも遅いため、火星上から見ると、ダイモスは東から昇り西へ沈むように見えます。これは地球と地球の月の関係とは異なる現象で、火星の衛星についての研究において興味深い点です。

代表的な2つのクレーター「スウィフト」「ヴォルテール」

ダイモスにはいくつかのクレーターがありますが、特に有名なものが2つ存在します。そのうちの一つは、アイルランドの作家ジョナサン・スウィフト(1667年11月30日 – 1745年10月19日)の名前にちなんで「スウィフト」と命名されています。

スウィフトは、彼の著作『ガリヴァー旅行記』の中で、火星には2つの衛星があると言及していました。これは、火星の衛星が実際に発見される約150年前のことでした。

また、フランスの哲学者兼作家ヴォルテールも、彼の著作『ミクロメガス』で火星に2つの衛星が存在することに言及していました。

これらの著作は、ヨハネス・ケプラーが予想していた火星の2個の衛星に基づいています。

スウィフトとヴォルテールが火星の衛星について言及したことを称えるため、ダイモスのクレーターに彼らの名前が付けられました。

火星の月を予言!?「ガリバー旅行記」

「ガリバー旅行記」は、アイルランドの作家ジョナサン・スウィフトによって書かれた風刺小説で、1726年に出版されました。

物語の中では、主人公ガリバーが数々の奇妙な国を訪れ、その中の一つであるラピュータという浮遊島に住む人々と出会います。

ラピュータ人は高度な科学技術と天文学を持っており、物語の中で火星に回る2つの衛星について言及しています。

この予言は、火星の衛星フォボスとダイモスが実際に発見される約150年前になされたもので、その驚くべき正確さから注目を集めています。

当時、木星のガリレオ衛星が既に発見されていましたが、火星の衛星が見つからなかったのは、火星に近い距離を公転し、非常に小さいためだと考えられました。

スイフトは火星からの距離を3倍、5倍として、公転周期を計算しました。つまり、彼の予言は神秘の力ではなく、科学的な推測に基づいていたのです。

実際にアサフ・ホールが1877年に屈折望遠鏡を使ってフォボスとダイモスを発見したとき、スイフトが物語の中で述べたような軌道を描いていました。

この事例は、文学と科学の交差点に位置し、当時の知識と論理的思考による予測の驚くべき精度を示しています。

このような予言は、科学的な知識がどのように発展し、時代を超えて影響を与えるかを示す例として語り継がれています。

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1726年にロンドンで刊行された『ガリバー旅行記』は、アイルランド出身の聖職者でジャーナリストのジョナサン・スウィフトが書いた4部構成の諷刺小説です。現在にいたる300年のあいだ、世界中の子どもと大人に読み継がれてきました。次々と起きる出来事、たっぷりの諷刺、理屈抜きの面白さ!本書は定評と実力をそなえた米文学者の柴田元幸が、「お茶の間に届くこと」を意識して、朝日新聞に好評連載した翻訳の書籍化です。(「Books」出版書誌データベースより)

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