「地上の楽園が消えるまで」アマゾン消滅へのカウントダウン【アマゾン森林破壊】

現在アマゾンの森林伐採や火災が続いており、生態系や地球環境に与える影響が懸念されています。また、これらの問題は長年にわたって続いており、未来永劫続く可能性があります。しかし、環境保護や森林保全に取り組む活動や政策が進められているため、アマゾンが完全に消失する日を回避することができるかどうかは未来にかかっています。

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アマゾンには、古くから現在までの、コミュニティと文化が大地や森、自然の豊かさや資源に敬意を払い発展してきた幅広く多様な経験が存在する。〔……〕本書に綴られている 数々の教訓は、血と汗、時と記憶、夏と冬、長い年月に多くの人びとが経験した苦しみと希望で満ちている。その教訓は、それらが育まれた場所であるアマゾンの地と森林と同様に、 貴重な資源である。緊急性を持って、私たちの経験が役立てられることを願っている。[マリナ・シルヴァ(環境運動家、元ブラジル連邦政府環境大臣)](「Books」出版書誌データベースより)

Lost the amazon

地球の肺が消滅する日は避けられるか?

Alluring Planet/YouTube

アマゾン熱帯雨林は地球の肺とも称され、地球上の熱帯雨林の約50%以上を占める巨大な生態系です。その広大な地域は、南アメリカ大陸の中央部、地球の裏側に位置しています。また、面積は約6000万ヘクタール(600万㎢)に及び、地球上の熱帯林の総面積の約40%を占めています。

アマゾンは主にブラジルに位置していますが、ペルー、コロンビア、ボリビア、エクアドル、ガイアナ、フランス領ギアナ、スリナム、ベネズエラにまたがる領域を含んでいます。

その規模はブラジルの半分!「法定アマゾン」

ブラジル政府は、アマゾンとその周辺のセラード(熱帯草原)からアマゾンへと移り変わる部分を「法定アマゾン」と定め、開発と保護の両面の政策を進めています。この「法定アマゾン」の面積は約5,500万ヘクタール(550万㎢)で、ブラジルの国土面積の約61%にもおよびます。これは日本の国土の約12倍に相当する広大な地域です。

Joshua Turner/YouTube

桁違いの違法伐採!消滅への道程

1970年代から80年代にかけて始まったアマゾンの森林破壊は、現在でも続いています。たとえば、2012年8月から1年間で失われた森林面積は5834平方キロメートルで、これは東京都の約2.7倍の大きさ、つまり日本全国で3番目に大きい都道府県である岐阜県の面積の約4倍に相当します。

一部の予測では、2030年までにアマゾンの60%が消失する可能性があるとされています。途上国では、2013年以降、森林保全に取り組んできましたが、森林減少は止まりませんでした。その主な原因は、違法伐採が横行していたからです。

ブラジルでは、1年間で約2万平方kmもの森林が伐採されていたという事例があります。これは、日本の四国ほどの面積に相当します。政府の規制は、チェック機能が弱く、また、森を切って得られる利益の方が、規制を守らなかったときの刑罰より大きいため、農場主たちは規制を守る動機がありません。

JAXA 地球観測研究センター/YouTube

先住民の土地を奪ってそこの森林を伐採

アマゾン熱帯雨林には、多くの先住民族が暮らしています。彼らは自然と共生し、森林を守ることが多く、森林保全に対する重要な役割を果たしています。しかし、侵入者による違法な開発や農地拡大などによって、彼らの生活が脅かされ、時には侵入者との間の衝突に発展する恐れがあります。この問題に対しては、政府や国際社会が対策に乗り出すことが急務になっています。

VICE Japan/YouTube

さらに追い討ち「深刻なアマゾン火災」

乾季に入ると気温が上昇し、雨が少なくなるため、火災が頻発して、毎年のように広大な森林が消失しています。

アマゾン熱帯雨林での火災は自然発生することもありますが、人為的な要因が大きく関与しています。違法な焼畑農業や放火などが主な原因とされています。また、過去の森林破壊により、森林内部の乾燥化や枯葉の堆積が進んでおり、自然発生する火災も拡大する要因となっています。

このまま放置すれば、地球全体の気候に深刻な影響を及ぼすことが懸念されます。アマゾンの熱帯雨林は、世界の酸素の約20%を生産していると言われており、これが破壊されることで、大気中の二酸化炭素濃度が増加し、地球温暖化の進行を加速させる可能性があります。

この問題はアマゾンだけではない、シベリアやアラスカ、カナダなど、世界各地で森林伐採や山火事が頻発している。

2019年に米海洋大気庁(NOAA)は同年7月の世界の世界の地表面・海面温度は観測史上で最も高かったことを発表した。

What If/YouTube
原因の1つは現地の農家の人が生きるための焼畑

地元住民にとって焼畑は生活の糧を得るために必要な手段である場合があります。

そもそも。アマゾンの土壌は、多くの栄養分が植物に吸収されているので、農業に適さない。さらに、再生されるのに時間がかかるため、短期的な利益のために焼畑農業などの違法な森林破壊を行うことは、長期的環境破壊を招くことに繋がっています。

まもなくアマゾンは不毛の地「サバンナ」へ変わる

アマゾンの雨は熱帯雨林が生み出しており、森が消えれば降水量も量が減ってしまう。専門家はやがてアマゾンが回復不能点に達し、熱帯雨林と言うよりサバンナという状態となりかねないと懸念している。

マゾン熱帯雨林は地球上で最も生物多様性が高い場所の1つであり、多くの種がこの地域でしか生息していません。また、アマゾンには多くの先住民族が住んでおり、彼らにとっても文化や生活にとって欠かせない場所です。したがって、アマゾンのサバンナ化は、地球上の生物多様性の喪失や先住民族の文化的喪失につながる可能性があります。

Kibo Summit,  Mount Kilimanjaro, Tanzania
世界中に被害が及ぶ

アマゾン熱帯雨林は地球規模の気候システムにも大きな影響を与えており、放棄や破壊が進むと、世界的な気候変動や生物多様性の喪失といった深刻な問題が引き起こされる可能性があります。

逆に二酸化炭素を放出するエリアに変化する可能性も

アマゾンの熱帯雨林は、植物が光合成を行う際に二酸化炭素を吸収し、酸素を放出することで、地球の大気中の二酸化炭素濃度を低下させる働きをしています。しかし、熱帯雨林の破壊により植物が減少し、また、気候変動により乾燥化が進むことで、熱帯雨林が二酸化炭素の発生源に転じる可能性があるとされています。このような状況は、地球温暖化の進行を加速する恐れがあります。

破壊の始まりはここから…。アマゾンの開発の歴史

人類は1万年以上前からアマゾンの熱帯雨林に住み着き、その後、狩猟や農業などのために森林を少しずつ伐採してきました。

Vox/YouTube
世界的にゴムの需要が増加!アマゾンが大量に供給

19世紀には、自動車産業が発展し、軍事用としても世界中でゴムの需要が急激に増加。アマゾンの天然ゴムは世界市場で大きなシェアを占めました。そのため、多くの人々がアマゾンに入植してゴム生産に従事し、大規模な伐採と開発が進みました。

アマゾン開発が促進!「アマゾン経済開発庁」が設立

1953年には開発を促進することを目的とした政府機関、「アマゾン経済開発庁(SPVEA)」が設立。

軍事政権が大規模なアマゾン開発を実施

1964年の軍事政府による権力奪取によって、アマゾン開発はより積極的な段階を迎えました。軍事政府は、アマゾン地域の国家的利益を重視し、大規模な開発計画を進めることになりました。

新組織「アマゾン開発庁」が創設

1966年、ブランコ大統領が「アマゾン作戦」を発表、アマゾンを開発し経済的に活用することを目的として、「アマゾン経済開発庁(SUDAM)」の設立や「アマゾン地域の法定化(法定アマゾン)」などを行いました。

アマゾン開発庁(SUDAM)は、アマゾン地域の開発と経済的成長を促進することを目的としており、アマゾン地域における投資や開発プロジェクトの承認、資金調達、研究開発の支援などを行っています。

これの政策は、外国企業を含む民間企業をアマゾンの開発に参加させることで、アマゾンの国際的な開放を促進することを目的としていました。軍事政権は、アメリカの支援を受け、経済発展を推進することで政権の正統性を維持しようとしていたため、アマゾンの開発は重要な政策課題の一つとなっていました。

アマゾンへの入植を勧める

1960年代にブラジルでは、農民のアマゾンへの入植を積極的に勧め、原生林を伐採して全長5,500kmに及ぶアマゾン横断道路を建設しました。入植者は、農地を開くために伐採を繰り返し、その農地の生産力がなくなったら野焼きされ牧場として開発されました。

「土地なき人を人なき土地へ」アマゾン開発が本格化

1970年には、ブラジル政府が「土地なき人を人なき土地へ」というスローガンとともに、アマゾン開発を本格的に推進し始めました。この時期には、世界銀行もアマゾン開発に融資を行っており、100万人規模の移住計画が実施されました。

外国企業や民間企業が参入

1970年代後半には、ブラジル政府がアマゾンの自然資源を開発するために大規模なプロジェクトを開始しました。このプロジェクトには、大規模なダム建設、道路建設、鉄道建設、牧畜業の促進などが含まれていました。また、アマゾンの木材資源の開発も進められ、多くの国際企業が参入しました。

アマゾン開発について世界が議論「アジェンダ21」

1992年のリオデジャネイロ地球サミットでは、環境と開発に関するリオ宣言と行動計画の「アジェンダ21」が採択され、アマゾンの開発や森林保全が議論されました。このサミットは、持続可能な開発の促進に向けた国際的な枠組みを構築する上で重要な出来事のひとつとされています。

一時的に改善 → 再び破壊が加速

2000年頃、ブラジル政府の森林保護政策は一時期効果発揮したが、2013年以降再び森林破壊が加速し、政策遂行力の低下や違法伐採の不問罪などが原因とされています。加えて、不況や政治危機によって政府の森林破壊抑制策を実行する能力が低下したことも影響しています。

確実に進む「アマゾン消滅へのカウントダウン」

2019年に就任したボルソナロ大統領は、環境保護の重要性を軽視し、森林破壊に直接的につながる政策を推し進め、ボルソナロ政権下でのアマゾン森林火災は、過去10年で最多に達した。

科学者たちは、アマゾンの消滅について正確な予測をすることはできませんが、破壊が続くとその日が来ることを警告しています。

BBC News Japan/YouTube
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アマゾンには、古くから現在までの、コミュニティと文化が大地や森、自然の豊かさや資源に敬意を払い発展してきた幅広く多様な経験が存在する。〔……〕本書に綴られている 数々の教訓は、血と汗、時と記憶、夏と冬、長い年月に多くの人びとが経験した苦しみと希望で満ちている。その教訓は、それらが育まれた場所であるアマゾンの地と森林と同様に、 貴重な資源である。緊急性を持って、私たちの経験が役立てられることを願っている。[マリナ・シルヴァ(環境運動家、元ブラジル連邦政府環境大臣)](「Books」出版書誌データベースより)

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