《地球温暖化》「北極が消える日」を想像してみよう。私たちは未来をどう変えることができるのか
北極圏の氷は、地球の気候や生態系において重要な役割を果たしています。この氷は、世界中の海水の約3%を占めており、また、地球の気候変動の指標としても重要です。しかし、現在、北極圏の氷は、温暖化の影響により急速に溶けています。
この状況が続くと、地球の海面が上昇し、生態系にも大きな影響を与える可能性があります。この記事では、北極圏の氷がなぜ重要なのか、なぜ溶けているのか、そして今後どのような影響があるのかについて探求していきます。
The Arctic: The front line of global warming
北極、地球温暖化の最前線。
地球温暖化が最も影響を受ける場所、それが北極です。
規模は日本の国土の10数倍!海に浮かぶ広大な氷「北極」
北極は大陸ではなく、海に浮かんだ氷が広がる地域で、面積は500~600万平方km(日本の国土の10倍以上)です。北極にある氷山は、アラスカやグリーンランドなどから海面に流れ出た氷河の一部です。
「北極点」と「北磁極」
北極と言うと、地理上の北極点と北磁極の二つがあります。地理上の北極点は、一日中天体がほぼ同じ高さで回る場所で、北磁極は磁気コンパスの磁針が真下を指す場所です。北磁極は、カナダ北極圏周辺を年々移動しています。
極寒の領域、北緯66度33分以北の世界「北極圏」
北緯66度33分以北の地域は「北極圏」と呼ばれ、ほとんどが凍結しています。夏は太陽が沈まず、冬は太陽が昇らない日があります。厳しい環境にもかかわらず、先住民族を含め約400万人が暮らしており、ホッキョクグマやトナカイなどの独特の生態系があります。
世界でも最大級の海域!8か国に囲まれた海「北極海」
北極海は北アメリカとユーラシア大陸に囲まれた海域で、周辺には5つの国があります。これらとフィンランド、アイスランド、スウェーデンを含む8か国は「北極圏国」と呼ばれます。北極海は約1400万平方キロメートルの面積があり、地球の海洋の約3%、日本の国土の約40倍に相当します。
ユーラシア側には広い陸棚があり、北極海中央部から北米側には深い海盆が存在します。北太平洋とはベーリング海峡で繋がっており、北大西洋とはデービス海峡、フラム海峡、バレンツ海を通じて繋がっています。北極海でできた氷のほとんどは、北大西洋側に流れ出ています。
デカすぎ!?世界最大の島「グリーンランド」
グリーンランドは、デンマークの自治領であり、北極海と大西洋に挟まれた世界最大の島です。ほとんどが北極圏内にあり、全島の約80%が氷床で覆われています。
多種多様!?知られざる極地のアイスワールド
極地と呼ばれる地球上の場所には、氷河、海氷、氷山、永久凍土など、さまざまな種類の氷が存在します。
「氷河」陸地に降り積もった雪が氷が流れ出したもの
氷河は、陸上に降り積もった雪が蓄積し、氷になって流れるもので、北極、南極、ヒマラヤ、ヨーロッパアルプス、南米パタゴニアなどに分布しています。
「氷床」規格外にでかい特別な氷河につけられている名前
グリーンランドと南極大陸の氷床は規模が大きく、「氷床(ひょうしょう)」と呼ばれます。それ以外の氷河は、「山岳氷河」と呼ばれます。
「棚氷」海に押し出された氷床が割れずに浮かんだもの
氷床は海に向かって滑り落ち、海上に押し出されると「棚氷(たなごおり)」となります。
「氷山」海に漂う棚氷・氷河の破片
氷山とは、氷河や棚氷が壊れたり割れたりして、海に漂い出した大きな氷の塊のことを指します。これらの氷の破片は、陸上の氷が海水に浮かぶ形で存在し、一部が水面上に現れるため、氷山と呼ばれます。
氷山は主に北極や南極の寒冷な地域で形成され、海流や風によって世界中の海域に流されることがあります。氷山は地球上で最も大きな淡水の供給源の一つとなり、また気候変動や海洋生態系にも影響を与える重要な要素です。
「氷塊」小さい氷山
氷河や棚氷が破片として漂うものが氷山ですが、100平方m以上で海面上に5m以上出ているものが「氷山」とされ、それ以下のものは「氷山状の氷塊」と呼ばれます。
「海氷」海水が凍りついて出来た氷
南極の氷は雪が降り積もり「氷床」と呼ばれ、厚さは数千メートルに達します。一方、北極の氷は海水が凍ってできた「海氷(海氷)」と呼ばれ、厚さは数メートルです。
この違いから、氷床は融けると淡水になり、海氷は塩分を含みます。北極域の海氷は、北極海とその周辺のベーリング海、オホーツク海、ラブラドル海に分布し、南極域の海氷は、南極海(南緯60度以南の海域)に分布し、時には周辺の大洋にも広がります。
「永久凍土」地下の温度が2年連続で0°C以下になる地面
永久凍土とは、地下の温度が2年以上連続して0℃以下になる地面のことです。北半球陸域の25%程度を占め、温室効果ガスや有機物が大量に含まれています。地球温暖化により永久凍土が融解すると、温室効果ガスが放出され、温暖化が加速することが懸念されています。
北極の温暖化速度は全球平均の4倍以上!地球温暖化の真犯人とは?
地球温暖化の主要因は、温室効果ガスの増加によるもので、北極域の気温は全球の平均よりも特に速い速度で上昇しています。これは北極温暖化増幅と呼ばれ、過去数十年間の観測データでも確認されており、全球平均の約4倍の速さで温暖化が進行しています。
北極の温暖化を招く現象「アイスアルベドフィードバック」
北極の温暖化増幅は、アイスアルベドフィードバックや気温逆転層の消滅など、いくつかの正のフィードバックが強く働いています。
アイスアルベドフィードバックとは、地球上の雪氷面積が増加すると、地球の反射率(アルベド)が増加し、地球が冷却し、さらに雪氷面積が増加するという正のフィードバックです。
このフィードバックは、地球の気候変動を決定する機構の一つとされています。しかし、温暖化が進むと、このフィードバックは逆に働き、雪氷面積の減少によって地球のアルベドが減少し、地球がさらに暖かくなることにつながります。
北極圏の過去最高気温38度が示す、地球温暖化の危機的状況!
2020年6月20日にシベリアのベルホヤンスクで過去最高気温の38度を記録する熱波が発生しました。これは、地球温暖化が進行していることの現れであり、北極圏の気温上昇が特に顕著です。氷河の流出河川は、生活に必要な水を供給するだけでなく、洪水災害のリスクも内包しています。
氷河が一気に解けて洪水が発生
近年、夏季に河川が増水し、集落に被害を与える事例が増えています。例として、グリーンランド北西部の極北の集落カナック村では、2015年7月と2016年8月に、氷河の流出河川が増水し、村の道路が破壊されました。このような現象は、地球温暖化が進むにつれてさらに頻繁に発生する恐れがあります。
北極圏で雪が雨に代わる?
研究チームのメンバーは、地球温暖化が止まらない場合、北極の海にある氷が溶け、雪が雨にかわってしまうと警告しています。
北極の温暖化は地球規模で影響をもたらす
北極域の急激な変化、特に海氷の大幅な減少や氷床の融解が加速しており、これが地球全体の環境や生態系に大きな影響を与えていることが科学者たちから指摘されています。この深刻な問題は世界中で共有されています。
ジェット気流の異常変化が招く猛烈な気象現象とは
北極圏の温暖化の影響で、ジェット気流は南へ伸び、大きく湾曲し、スピードが遅くなってしまいます。その結果、ジェット気流が変形し、気圧の高い部分と低い部分が長い間同じ場所にとどまるようになります。これにより、夏にはアメリカ西部からカナダ西部にかけて大規模な熱波が発生し、冬には雪嵐や寒波が頻繁に起こることが予想され、大きな被害が発生する可能性があります。
Permafrost reduction
地球環境の崩壊!永久凍土減少が人類にもたらす深刻な影響
年間を通して凍結されているはずの永久凍土が、北極の広範囲で解け始めています。
永久凍土の減少による海面上昇
海面上昇の原因は、水温上昇による水の膨張と、北極圏の陸上の雪や氷が解けて河川から海へ流れ込むことで水量が増加することです。地球温暖化により降水量や降雪量が増加し、永久凍土の減少によって土壌が湿潤になるため、過去70年間で北極海への河川水の流入量が増加しています。
実際に永久凍土が解け、その水が大西洋に流れ込むことで海面が上昇していることが、衛星画像で確認されています。
北極圏の「時限爆弾」!永久凍土解けると放出される温室効果ガスの恐怖
永久凍土の減少によって露出した土壌は熱を吸収し、その熱で河川の水が温められます。この温かい水が海洋に流れ込むと、海水温度がさらに上昇し、海氷が融解することで海洋や大気の温暖化に影響を与えると考えられています。冬に北極圏で新たな氷が形成されますが、融解した氷の量を完全に補うことは難しい状況です。
眠っている温室効果ガスを解放
地球温暖化により永久凍土が解けると、海面上昇だけでなく、温室効果ガスの解放も問題となり、温暖化がさらに加速します。
メタンガス放出は地球温暖化の加速剤
北極の永久凍土が温暖化で解けると、メタンガスの放出が懸念されます。メタンは温室効果が高く、地球温暖化に大きな影響を与えるため、これが放出されることは「時限爆弾」とも言われています。永久凍土には大気中の炭素の2倍以上のメタンが閉じ込められていると推定されています。
メタンガスだけじゃない!二酸化炭素も放出!
さらに、永久凍土には1.4兆トン以上の炭素が有機物として閉じ込められており、これが分解されると温室効果ガスのメタンガスの他に、二酸化炭素も放出されます。この現象は、温暖化をさらに加速させることにつながります。
永久凍土が人類の命運を左右する!?
永久凍土の中の氷が解けると、様々な問題が引き起こされます。解けた水が流れたり蒸発したりすることで、地盤沈下が起こり、地中に埋められた水道管などが損傷したり、人々が転居を余儀なくされることがあります。
さらに、地盤沈下が草原や牧草地で起こると、水がたまり、池が広がります。それにより、植生が二酸化炭素を吸収する力が減り、土壌中の有機物が分解されてメタンなどが発生することで、温室効果がさらに強まるという悪循環が生じます。
【驚愕】メタンガス爆発で形成された巨大クレーター
2014年7月、ロシア北西部ヤマル半島のツンドラ永久凍土帯上空を飛んでいたヘリコプターのクルーが、巨大なクレーターを発見しました。このクレーターは非常に大きく、底が確認できないほどでした。その原因については、隕石衝突、ミサイル実験、あるいは宇宙人の着陸など、さまざまな憶測が飛び交いました。
しかし、このクレーターは、二酸化炭素の30倍の温室効果を持つメタンガスが、永久凍土が溶けて解放された結果、爆発を引き起こしたものだと考えられています。この現象は、地球温暖化の進行により、永久凍土が融解し、メタンガスが放出される危険性を示しており、地球温暖化への影響が懸念されています。
動物たちはどこへ?氷がなくなると生態系に悪影響!
海氷が溶けることによって、海洋生物には確かに様々な影響が及びます。ホッキョクグマやアザラシなど、氷に依存する動物は生息地が失われることにより生存が困難になるでしょう。これは生態系全体に影響を与え、特にこれらの動物が食物連鎖の頂点に位置する場合、その影響は他の生物にも波及します。
また、海氷が溶けることで塩分濃度が低下し、海水の層ができる現象は、生物にも影響を与えます。これにより、表層にいる微生物やプランクトンは餌を探しにくくなり、その生存が困難になることがあります。プランクトンは海洋生態系の基盤となる生物であり、その減少は海洋生物全体に悪影響を及ぼす可能性があります。
人類は滅亡する?北極圏から感染症が広がる恐怖の未来!
凍土にはウイルスや細菌が潜んでおり、未知の病原体が多く存在しています。地球温暖化によって永久凍土が解けると、これらの病原体が活性化し、感染症が広がるリスクが高まります。
例えば、2016年にシベリアで炭疽菌が流行し、1人が死亡し、少なくとも7人が感染したことが報告されています。これは、熱波により凍土が解け、炭疽菌に感染したトナカイの死体が露出したことが原因とされています。
また、地球温暖化によって北極の気温が上昇し、新たな病原体が繁殖・拡散することが懸念されています。例えば、寄生性の線虫がジャコウウシに感染し、マダニがウイルスを人々に伝播させたり、蚊が野兎病菌を媒介し、スウェーデンなどで感染が広がっています。
さらに、海氷が消えて移動が容易になったため、大西洋のアザラシが太平洋のアザラシに接触し、致死的なウイルスが伝播したとされるケースもあります。
病気の増加は、科学調査の拡大によるものである可能性も否定できませんが、専門家は「北極は感染症と気候変動のパンドラの箱となっている」と警告しています。
Loss of Arctic sea ice
北極圏の海氷が失われると地球の未来が消え去る
地球の平均気温が上昇すると、水の蒸発が増加し、大気中の水蒸気量も増えます。これにより、北極域では降雪が増え、理論上は北極海の海氷も成長するはずです。海氷は太陽光の大部分を反射し、宇宙に戻すことで、気温上昇を抑制する効果があります。
つまり、北極海の海氷は地球の気温上昇を緩和する役割を果たしているのです。
しかし、人間活動による温室効果ガスの排出が引き起こす急激な気温上昇は、北極海の海氷を成長させるどころか、逆に海氷を溶かし減少させてしまいます。これにより、太陽光の反射量が減少し、気温上昇をさらに加速させる悪循環が生じている。
「北極圏の海氷が消失する?」その背後に隠れた問題
北極海の海氷面積は季節によって変化します。通常、冬季の2月から3月にかけて、寒さが厳しくなり海氷が広がり、その面積は年間最大に達します。
一方で、夏季の9月には気温が上昇し、海氷が融けて縮小し、面積は年間最小となります。このように、北極海の海氷面積は季節の変化に伴って年間で最大・最小の状態が繰り返されています。
地球を脅かす北極圏の危機、海氷面積の減少が深刻化
北極域の海氷面積は、1979年から長期的に減少しており、特に年最小値で減少が顕著です。2007年には、海氷面積の年最小値が大幅に減少し、それ以降の年最小値も2006年以前より小さくなっています。
1979年から2022年までの海氷面積の減少率は、1年当たり約8.7万平方キロメートル(95%信頼区間: 7.4~9.9万平方キロメートル)とされており、この値は日本の北海道の面積(8.3万平方キロメートル)にほぼ匹敵します。
北極圏の海氷が消える?
このままの勢いで減り続けると、2050年頃には夏季の北極海氷がほぼ消失する可能性があります。
ただし、予測モデルには不確定要素があり、実際には状況が異なる場合もあります。また、夏季の海氷がゼロになるとしても、冬季には引き続き海氷が存在すると予測されています。
海氷の減少がもたらす地球環境への影響
海氷が融解することで開放水面が増えると、太陽放射の吸収が増加し、さらなる海氷の融解が促されるという正のフィードバック効果が働いています。これは「アルベド効果」と呼ばれ、氷や雪が太陽光を反射する性質を指します。
雪や氷の表面は明るく、太陽光を効果的に反射し、地球全体の温度上昇を抑える役割を果たしています。しかし、海氷が融解し、開放水面が増えると、太陽光をより多く吸収する水が広がり、地球全体のアルベドが低下します。これにより、地球全体の温暖化が加速される恐れがあります。
未来に待つのは未曾有の海面上昇
海面上昇は、主に海水温の上昇による水の膨張と、陸地にある氷(氷河や氷床)が融解して海水量が増えることによって引き起こされます。気候変動による温暖化が続くと、今後も海面上昇が進むと予測されています。
一部の予測では、100年後には地球全体で平均10〜90センチメートルの海面上昇が見込まれていますが、状況やモデルによって予測値は異なります。海面上昇の速度は、温室効果ガスの排出量や気温上昇の程度にも左右されます。
また、グリーンランドの氷床(ひょうしょう)が完全に融解すると、海面が約7メートル上昇するとされています。
温暖化による森林火災がもたらす未曾有の環境破壊
北極の温暖化が中緯度地域に影響を与え、気象災害が増加する研究が報告されています。海氷の融解により太陽光の反射が減少し、地表の吸収が増え、広範囲の地域が暖められ気温が上昇します。気温上昇で土地が乾燥し、火災リスクが高まります。アメリカ西部などで山火事が頻発し、森林破壊や炭素排出量が増え、温暖化が加速しています。
北極圏の温暖化を引き起こす「ススの侵略」
大規模な火災によって発生した煤煙(スス)は、大気中を長距離移動し、北極圏にまで運ばれることがあります。煤煙の粒子は太陽光を吸収し、周囲の空気を加熱することで、温暖化を促進するとされています。
煤煙が北極圏に到達すると、地表や雪、氷の表面に堆積し、反射率(アルベド)が低下します。これにより、太陽光の反射が減少し、地表や氷がより多くの太陽熱を吸収することになります。この現象は、北極圏の温暖化をさらに加速させることが考えられます。
従来の研究では、煤煙の影響が十分に評価されていなかったが。新たな研究によって煤煙の影響がより深刻であることが示唆されている、
気候変動が引き起こす「絶望の連鎖」北極圏のメタンガスと森林火災
近年、地球温暖化によって北極圏での山火事の発生頻度が高まっていることが、科学誌『Science』に発表された新しい研究で明らかになりました。
2019年と2020年の山火事を分析した結果、約470万ヘクタール(約4万7000平方キロメートル)が焼失したことが判明しました。この傾向は、温暖化が進むにつれて悪化すると予想され、二これらの火災によって排出された二酸化炭素の量は、スペインで1年間に排出される量に匹敵すると指摘されています。
北極圏の火災はが放置される原因
北極圏の火災は通常の山火事といくつかの点で異なります。まず、多くの火災が放置されることが挙げられます。北極圏の火災は、人々のインフラや建物に直接的な影響を与えることが少なく、消火活動にかかるコストが高いためです。また、広範囲にわたる火災に対処するのが困難であることも、火災が鎮火されずに燃え広がるリスクが高まる原因となります。
泥炭火災の恐怖、地下から燃え広がる北極圏の炎
北極圏の火災のもう一つの特徴は、燃焼の仕方です。北極圏の土壌である泥炭(でいたん)地は、通常は水分を多く含んでいるため火災の燃え広がりを防ぎます。しかし、温暖化によって泥炭が乾燥すると、引火性が強くなります。北極圏の火災では、木や低木だけでなく、泥炭も燃料になります。泥炭火災は地下の泥炭を燃料に燃えるため、ゆっくりと燃え広がり、数週間続くこともあります。泥炭は可燃性のメタンガスを大量に含んでいるため、冷たく湿った状態でも火が持続してしまいます。
「消し続ける」しかない?北極圏の「ゾンビ火災
気候変動によってアラスカの山火事シーズンがより暑く長くなることで、「ゾンビ火災」と呼ばれる現象が増えています。これは、寒帯森林が炭素を大気から吸収し、泥炭の豊富な土壌に貯蔵するものの、気温上昇によって泥炭が燃えやすくなるために起こります。泥炭火災は鎮火したように見えても、実際にはくすぶり続け、越冬してゾンビ火災になることがあります。
アラスカ州とカナダ・ノースウエスト準州の火災管理当局は、2005年から2017年までに48件のゾンビ火災(残留火災)を報告しています。オランダ・アムステルダム自由大学のリモートセンシング専門家であり、アラスカ州の火災管理当局と協力しているRebecca Scholtenは、衛星画像を調査し、さらに20件の報告されていなかった山火事を発見しました。
この現象は高緯度北方域全体で発生しており、2020年3月と2021年3月にシベリア北部で発生した極端に早い時期の山火事も、このゾンビ火災が原因だと考えられます。
永久凍土の破壊を招く火災、それが引き起こす温室効果ガスの恐怖
北極圏の山火事は、大量の炭素を含む永久凍土層にダメージを与え、永久凍土からの二酸化炭素の排出量を増加させています。
温暖化による落雷火災の深刻性
地球温暖化が北極圏の気象条件に大きな影響を与えており、それに伴って雷が増加し、火災の発生リスクが高まっています。気象学者クリス・バガスキー氏は、温暖化が北極の環境に対してより多くの雷が発生するように「充電」していると指摘しています。
シベリアや北極海などの地域で発生する雷雨は、大陸から運ばれてくる温暖で湿潤な空気の影響を受けています。この空気が北極海を覆い続けることで、嵐が発達しやすくなり、火災の起きやすい状況が作り出されています。
2021年の研究では、過去10年から20年の間に北極での雷が増加し、この傾向は地球温暖化と強く関連していることが明らかにされています。このような状況は、北極圏の火災リスクをさらに高めることになり、永久凍土層の融解や二酸化炭素の排出量の増加など、気候変動の悪循環をさらに加速させる可能性があります。
「地球の未来を考える」北極の氷を守ることの重要性
地球温暖化の進行により、北極の海氷や永久凍土が減少し、気候変動が加速しています。北極海の海氷が完全に消失すると、地球全体の温暖化はいまより2倍の速度で悪化することが予想されており、人類がこの先の未来を生きるためにも、北極の氷を守らなければいけません。