
《地球温暖化》もう止められない……。最悪のシナリオが現実になる時「ホットハウス・アース」
Hot House Earth
恐竜の時代の地球「ホットハウス・アース」
2050年には、20億人以上が水不足に苦しめられ、食料生産量も大幅に減る中、55%の世界人口が、年20日程度で、生命に危険をもたらすほどの熱波に襲われると推測されている。最悪の事態なら、10億人以上が他の地域への移住を強いられる。それは人類文明の終焉を示している。
人類滅亡のシナリオ
2019年5月、豪メルボルンの独立系シンクタンク「ブレイクスルー(Breakthrough-National Center for Climate Restoration)」が、今後30年の気候変動にまつわるセキュリティリスクをシナリオ分析した結果を報告した。
報告書には、2050年には地球全体の気温が3度以上上昇した場合、以下のようなシナリオが予測されています。
- 55%以上の世界人口が、年に20日以上の熱波にさらされ、生命に危険が及ぶ
- 食料生産量が大幅に減少し、水不足が深刻化する
- 10億人以上が他の地域への移住を余儀なくされる
- 経済活動が鈍化し、多数の企業が倒産する
- 政府の機能が弱体化し、治安が悪化する
- 戦争やテロ活動などの紛争が頻発する
このようなシナリオが実現した場合、人類の文明は終焉に向かう可能性があるとされています。
人類は生存不可能「ホットハウス・アース・シナリオ」
このシナリオでは、地球全体の平均気温が3度以上上昇することで、人口の55%にあたる約35億人が20日以上の間、生命に危険が及ぶような熱波に襲われると予測されています。
生態系が崩壊・・・致命的な災害が頻発
ホットハウス・アース・シナリオが現実になると、世界中の生態系が崩壊し、海洋生物が絶滅し、熱帯雨林が荒廃するなどの深刻な環境問題が発生すると予測されています。また、北アメリカでは野火、熱波、干ばつが頻発し、アジアを流れる大河が干上がり、20億人以上が水不足に苦しむことになります。
食の危機!農業が困難な状況に……。人々は移住するしかなくなる
メキシコと中央アメリカの降雨量が半分に減少すると、農業にとっては非常に困難な状況となります。加えて、エルニーニョ現象と同じようなの気候が常態化、危険な熱波が100日以上も続くことになり、移住を余儀なくされる人々が10億人以上に上ると予測されています。
もうどうしようもない……。政治はパニック状態に陥る
報告書は、このようなシナリオが現実になれば、世界は混乱に陥り、人類文明が終焉に向かう可能性があることを示しています。その結果、世界の安全保障に対する脅威が増大し、政治的なパニックが引き起こされる可能性があると述べています。
古の地球!恐竜が繁栄した時代は「ホットハウス・アース」だった!
中生代は、恐竜が繁栄していた温暖な時代である「ホットハウスアース」と呼ばれていました。しかし、約6600万年前に恐竜が絶滅したことをきっかけに、気候は寒冷化へと向かい、現在のような寒冷な時代が約260万年前に始まり、氷河期と間氷期のサイクルが現れるようになりました。
私たち人類が生きてきた時代は「アイスハウス」
地球は、極地ですら氷のない「ホットハウス」の時期と氷がある「アイスハウス」の時期が交互に生じていた。
コズミックフロント☆NEXT「極地大冒険 氷から見える地球史 前編」/NHK
地球の気候は、地球の軌道や気候システム内での様々な要因によって長期的に変化します。これらの要因により、地球の気温、降水量、氷河の成長・縮小などが変化し、様々な気候変動が生じます。地球史上、寒冷な時期と温暖な時期が交互に訪れ、それぞれの時期に対応する気候状況が形成されました。
現在、北極にグリーンランド氷床、南極に南極氷床が存在しているということは、我々が生きている現代の地球は氷河時代であることを示しています。
#Didyouknow? You can tell what climatic era Earth is in based on the presence of ice at the poles. Earth is currently in an “Icehouse,” as opposed to a “Hothouse,” phase ❄️ #PolarExtremesPBS
— NOVA | PBS (@novapbs) February 5, 2020
(But this doesn’t mean human-caused climate change isn’t happening.) pic.twitter.com/AEWxEsF6zt
NOVA l PBS: How Humans Could Make Icehouse Earth into a Hothouse…
— MSPublicBroadcasting (@MPBOnline) March 4, 2020
Earth’s climate has slowly fluctuated between cold and hot periods for millions of years. Stream “Polar Extremes” on the @PBS app or online now to learn more: https://t.co/Iqkk2llsyv #MPB50 #MPBOnline pic.twitter.com/L8IpJHqsLF
温暖化の暴走!!このままだと地球は「ホットハウス・アース」と化す!!
このまま炭素排出量の削減が進まない場合、2030年には既に地球の平均気温が1.5度上昇し、2050年には3度以上上昇すると予測されています。これを超えると、地球温暖化が加速してしまい、極端な気象現象や海面上昇などが起こり、地球は「ホットハウス・アース」と呼ばれる酷暑の惑星になってしまう可能性があるとされています。
《地球温暖化》「異常気象はもう異常と思わない方がいい」ついに時代はカオスに突入
ヨハン・ロックストローム博士の提言
スウェーデン出身の気鋭の環境学者ロックストローム博士は、ストックホルム・レジリエンス・センターの所長およびストックホルム大学で環境科学の教授、2004 ~ 2012年までストックホルム環境研究所の所長を務めている。
地球が持続可能な状態を維持「プラネタリー・バウンダリー」
ヨハン・ロックストローム博士らは、地球が持続可能な状態を維持するための9つのプラネタリー・バウンダリーを提唱しています。
「バウンダリー」とは、ある領域やシステムにおいて、持続可能な範囲を超えるある種の限界を指します。
プラネタリー・バウンダリーは、気候変動、生物多様性の喪失、地球システムの化学的変化、土地利用の変化、淡水利用、海洋の酸性化、大気エアロゾル、オゾン層の減少、そして物質の循環に関するものです。これらのバウンダリーを超えることは、地球システムの安定性を脅かし、人類の生存に大きな影響を与える可能性があるとされています。
今ならまだ引き返せる…。ギリギリの地点
大きなコストがかかり、人が住みにくくなるというのではなく、ホットハウス・アースに向かう不可逆で破滅的な変化をもたらし、自己強化型のフィードバックメカニズム(熱を海が95%吸収しているが、海の吸収が激減し、氷が融け、それが太陽光を吸収しやすい海へと逆転する)になってしまう。
脱プラスチックへの挑戦 堅達京子+NHKBS1スペシャル取材班 山と渓谷社/公明党議長 衆議院議員 太田あきひろ.2020
動き出したらもう止まらない!あらゆる現象が連鎖!!
ホットハウス説では、地球が極度の温暖化に陥ると、自然界の様々な現象(フィードバック)が働き出し、温暖化をさらに加速させると考えられています。たとえば、氷が解けると海面が上昇し、地球の表面が変化することで反射される太陽光の量が変わります。これにより、地球の温度が上昇し、さらに氷が解けるという循環が起こると考えられています。
温暖化を加速させる10の説
ホットハウス説では、以下のようなフィードバックが考えられています。
- 永久凍土の融解によるメタンやCO2の放出
- 海底のメタンハイドレートからのメタン放出
- 陸上と海洋の生態系によるCO2吸収の減少
- アマゾン熱帯雨林の大規模な枯死
- 北方林の大規模な枯死
- 湿地帯からのメタン放出
- 海洋循環の変化による二酸化炭素の放出
- 酸素の減少による微生物の代謝変化
- 酸素欠乏による海洋生態系の変化
- 地球上の白色部分(氷や雪)の減少による地球の反射率の低下
未来の地球を左右する…。今がギリギリの時!
博士によると、今この地点は2度の上昇を起こす逆転のスイッチを押してしまうギリギリの地点だという。
れらのフィードバックが起こる原因となる気温上昇が一定の臨界点を超えると、それらの要素が急激に進行することになります。そのような要素は「ティッピングポイント(臨界点要素)」と呼ばれ、それを超えるともう止まらないと考えられてる。
一つの現象がドミノ倒しのように連鎖していく可能性
地球には多くのティッピングポイントがあり、それらが連鎖してホットハウス・アースに突入する可能性が指摘されています。
2度前後の上昇でグリーンランドなどの氷床が解けたり北極海の海氷が減少したりすることで、気温上昇が進む。上昇幅が4度前後になると南米アマゾンの熱帯雨林が枯死し、含まれていた二酸化炭素が大量に放出される。温暖化は加速し気温上昇が5度以上になると、東南極の氷床が解け、海水面の上昇は最大60メートルになる可能性があるという。
気温2度上昇で地球が「温室化」 上昇連鎖の恐れ 国際チーム予測/森林文化協会
臨界点を超えると元に戻らない
臨界点を超えると、地球の状態が急激に変化して、元に戻すことができなくなります。
臨界点の概念は、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)によって20年前に導入された。ひとたび臨界点を超えると、一気に不可逆的な変化が起こる。斧で20回打っても耐えて立っていた森の大木が、21回目の打撃でついに倒れるようなものだ。
地球が「臨界点」超える危険性、気候科学者が警鐘「私たちに残された時間がどれほど短いか、人々はわかっていません」/ナショナルグラフィック.2019
According to scientists, the planet could be approaching a point of no return where global warming leads to an irreversible “hothouse Earth.” https://t.co/J3N3jFjRK2
— Twitter Moments (@TwitterMoments) August 7, 2018
Our planet is approaching the ‘hothouse Earth’ tipping point
— Planet Green (@PlanetGreen) August 18, 2018
READ: https://t.co/aTeckvtcP8 pic.twitter.com/O4WU598VDB
臨海を越えた先にある未来が「ホットハウス・アース」
「ホットハウス・アース」という行く末が予想される温暖化の効果として、産業革命前より平均気温が摂氏4度から5度高くなり、海抜が10~60メートルも上がるということがあります。また、異常気象の増加により、灼熱の赤道直下の土地は無人化し、人類はひたすら南極か北極を目指すはめになる可能性もあります。
《地球温暖化》2100年「もうここには住めない」
過去120万年の間で最高値の気温になる!!
研究によると、ホットハウス・アース期に入ると、地球の気温は過去120万年で最も高い水準に達することになります。これにより、極地での氷床や氷河の融解が加速し、海水面が上昇し、海洋の酸性化も進むことが予想されています。
Featured on @guardian, a perspective explores the risk of crossing a planetary climate threshold that might lead to “Hothouse Earth,” in which global average temperatures exceed the temperatures of any interglacial period of the past 1.2 million years. pic.twitter.com/O8PBkj51g9
— PNASNews (@PNASNews) December 27, 2018
A Perspective explores the risk of crossing a planetary climate threshold that might lead to “Hothouse Earth,” in which global average temperatures exceed the temperatures of any interglacial period of the past 1.2 million years. Read more: https://t.co/sAcpjg4nd3 pic.twitter.com/Qqr1TnfVUN
— PNASNews (@PNASNews) December 28, 2018
…最善を尽くしても回避不可能の可能性
世界の平均気温は、産業革命前から、10年間で0.17℃のペースで、すでに1℃上昇しており、その主な原因は、化石燃料の燃焼に伴うCO2などの温室効果ガスの排出であることが科学的に証明されています。2015年のパリ協定では、2℃以上の気温上昇を抑え、できるだけ1.5℃までに抑えることを目指しており、そのために世界全体で温室効果ガスの排出を正味ゼロにすることが目標とされています。
ところが、スウェーデンの環境学者であり、「ホットハウス・アース」の危険性を主張した論文の共同執筆者でもあるヨハン・ロックストローム氏は、「地球が『ホットハウス・アース』と化してしまう未来を避けることは、温度上昇を2度までに抑えても無理かもしれない」と述べています。
温暖化が一定以上進むと人間の手によって押しとどめることが不可能に、今後10年の動向が分岐点だと専門家/Gigazine.2018
“The trajectory is of the planet barrelling towards a ‘hothouse earth,’ with escalating feedback mechanisms … The threat is cascading tipping points, leading to escalating climate catastrophe – conceivably a rise of 7°C by the end of the century…”https://t.co/JcMykTl0QR
— Richard Seymour (@leninology) April 7, 2020
世界の終わりが近づいているのか……。
イギリスの研究所エクセター大学グローバルシステム研究所所長のティム・レントンは警鐘を鳴らす
「半世紀後、わたしたちはいまの状況をどんなふうに振り返るのでしょうか。もっと持続可能性のある健やかな未来を何世代にもわたって築けたはずだったと悔やむのでしょうか」と、エクセター大学グローバルシステム研究所所長のティム・レントンは言う。「埋蔵量に限りがある化石燃料を使い続けることや、世界の終わりを受け入れるような行動はやめるべきです」
わたしたちの惑星は、気候変動の「ティッピングポイント」に近づきつつある/WIRED.2019