ホタルの光る仕組みが明らかに!1億年以上前の突然変異が生んだ進化とは?【ホタルの雑学】

今夜、夏の夜空を見上げたら、きらめくホタルたちが舞っているかもしれません。彼らがどのようにして光るのか、私たちは長年疑問に思っていました。

しかし、科学技術の進歩により、ホタルの光る仕組みがついに明らかになりました。この記事では、その仕組みや進化の歴史について紹介していきます。ホタルの神秘的な輝きに思いを馳せながら、一緒に探求してみましょう。

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あるときは愛のために、またあるときは殺して食べるために…煌めくホタルたちの可憐な姿からは想像もできない、生死をかけた骨肉の争いや、ドラマチックな一生がここにある。(「BOOK」データベースより)

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ホタルって?

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ホタルは、鞘翅(そうし)目に属する昆虫で、ホタル科に分類されます。漢字で「蛍」と書きますが、「螢」という旧字体もあります。

蛍の名前の由来は?

「蛍(ほたる)」という言葉の正確な語源は定かではありませんが、複数の説が存在しています。

一つの説によると、「火垂る」という言葉が転じたものだとされています。昔、火を燃やすために火種を運ぶための松明を用いていましたが、その松明が揺れる様子が蛍が飛ぶ様子に似ていたため、「火垂る」と呼ばれるようになりました。その後、蛍が夜空を飛ぶ姿も「火垂る」に見立てて「蛍(ほたる)」と呼ばれるようになったとされています。

また、「火照る(ほてる)」や「火足る(ひたる)」などとの関連も指摘されています。蛍が光を放つ様子が、火が燃える様子に似ているため、「火照る(ほてる)」や「火足る(ひたる)」という表現が蛍にも用いられるようになったとされています。

他にも、「星垂る(ほしたる)」の意味などの説もあるようですが、詳しい語源ははっきりとわかっていません。

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蛍がいるのは自然が豊かな証拠

蛍が生息する環境には、清浄で豊かな水、水辺の草や木々、夜間には適度な暗闇など、様々な要因が重なっています。蛍は水辺に生息することが多く、水質や水の流れ、水辺に生育する植物なども蛍の生息に大きな影響を与えます。そのため、蛍が生息している場所は自然が豊かであることが多く、環境保護にもつながる大切な指標の一つとされています。

蛍は、蒸し暑い夜に活動が活発になることが多く、雨上がりの夜など、湿度が高くて空気が軽いときには特に舞い上がることがあります。ホタルは夜行性の昆虫で、明るい場所ではあまり活動しません。蛍が活発に活動するためには、周囲の明るさが0.1ルクス以下になる必要があります。一方で、満月の夜や街灯の明かりの下など、明るい場所では蛍はあまり飛ばなくなります。

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自他ともに認める“完全変態”

ホタルは完全変態をする昆虫で、卵、幼虫、蛹、成虫の4つの段階を経て成長します。ホタルの卵は、水辺のコケなどに産み付けられ、孵化した幼虫は水中で生活し、主にカワニナという巻貝などを食べながら成長します。幼虫期間は1年から3年程度で、その後、蛹になるために川岸の柔らかい土の中に潜ります。蛹は、約2週間から1か月程度で羽化し、成虫として羽ばたきます。成虫になると、交尾して卵を産み、再びそのサイクルが始まります。

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大人になると餌を食べない……儚い命

成虫のホタルは、草や木の葉の裏で昼間はじっとしています。栄養を幼虫時に貯めておき、移動や熱を伴わない発光エネルギーを使って、寿命7日から20日の間、子孫を残す活動に専念します。なんと成虫のホタルはえさを捕食せずに、水分だけを摂ります。

世界にいるたくさんの蛍!

ホタルは世界中に2000種類以上あるといわれています。

たとえば、アメリカにはファイヤーフライと呼ばれるホタルが約200種類生息しており、南アメリカにもホタルが存在します。また、ヨーロッパにもホタルが生息していますが、アジアに比べて種類は少なく、日本や東南アジアが代表的な生息地となっています。

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近い将来見れなくなるかもしれない

ホタルが絶滅の危機に瀕している原因としては、生息地の減少や水質汚染、農薬や殺虫剤の使用、人工光の増加、観光客の影響などが挙げられます。特に人工光の増加によって、ホタルの交尾行動に必要な暗闇が失われ、繁殖に支障をきたすことが報告されています。また、水質汚染によってホタルの生息地となる川や湖が減少すると、その生息数も減ってしまいます。

現在、日本に生息する蛍の種類の中で、クメジマボタル、コクロオバボタル、ミヤコマドボタルなどが絶滅危惧種に指定されています。これらの種類は生息数が減少しており、特にクメジマボタルは絶滅危機が深刻な状況にあります。一方で、ゲンジボタルやヘイケボタルは、環境省版レッドリストには掲載されていませんが、各都道府県のレッドリストに掲載されている地域があります。

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蛍の光

ホタルの発光器にある発光細胞は、非常に緻密な構造を持っています。発光に必要な酸素を送り込むための気管と、その供給を調節する神経が入り込んでいるのです。発光細胞に含まれる酵素と蛍光物質が反応し、酸素の存在下で化学反応が起こります。その結果、光が生成されます。

神経による調節が行われることで、ホタルは光を点滅させたり、連続して光らせたりすることができます。

ほとんど熱を帯びない輝き

ホタルが発する光は、ほとんど熱を伴わない「冷光」です。このため、ホタルは自身の体温を上げることなく、周囲の環境にも影響を与えずに光を放つことができます。その神秘的な光は、私たち人間にとっても魅力的な風物詩の一つとなっています。

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その光は求愛行動

ホタルが光る理由は、交尾のためのアピールです。雄のホタルは、光を出して雌のホタルにアピールし、交尾を促します。

未交尾の雌のホタルにとっては、より多くの雄のホタルからアピールを受けるため、より多くの光を出すことが重要です。そのため、未交尾の雌のホタルのほうがよりよく光ります。ただし、ホタルは連続的に光ることができず、1分間に数回の光りと休憩を繰り返すことが多いです。風が強かったり、気温が低い日は、ホタルが光るのを控えることがあります。また、月が明るく輝いている日や、灯りのある場所では、ホタルの光が目立たなくなるため、それほど多くのホタルを見ることができません。

実は卵の頃から光っている

ホタルの卵は、成虫の体内で発光するため、孵化する前から光ることができます。ただし、産み落とされたばかりの卵からは、暗闇の中でやっと見える程度の明るさしか出ません。光は、成長に伴って徐々に強くなり、孵化の数日前には、卵の殻を通して中の幼虫の尾端の2つの発光器を確認することができるほど強くなります。また、卵の光は、成虫のように点滅するのではなく、昼間も夜も光り続けることが特徴です。

大昔、突然変異で光れるようになった!

ホタルは、1億年以上前に起きた遺伝子の複製ミスと変異によって光る能力を手に入れたことが、基礎生物学研究所と中部大学などの研究チームによって解明されました。ホタルの光る仕組みは、光を発する酵素の一つであるルシフェラーゼと、その基質であるルシフェリンが反応することによって発生します。

この過程で、酸素が必要とされるため、ホタルは呼吸をコントロールするための気管を進化させています。また、ホタルの光る能力は、生存戦略として重要な役割を果たしており、繁殖行動のアピールや、天敵を寄せ付けない防御手段として活用されています。

光らない蛍もいる

ホタルの中には、幼虫の時だけ光る種類も存在します。また、オスとメスで光の色が異なる種や、オスだけが光る種類もあります。日本には約50種類のホタルが生息していますが、そのうち光る種類は10種ほどです。

多くの種類のホタルは、幼虫の時期に光り、成虫になると光らなくなります。これは、成虫には食べ物を摂取するための口がなく、短い寿命を持つためです。一方で、幼虫は餌を探すために光を利用しており、そのために発光能力を維持していると考えられています。

光らないホタルはかわりにアレを出す

光らないホタルの多くは、においを出してコミュニケーションをとっています。例えば、クロホタルは発光しないため、においを出して交尾相手を探します。また、ツチホタルは発光しない代わりに、オスが特有のにおいを出してメスにアピールします。これらのホタルは、狭い範囲で生活し、においを利用することで相手を見つけることができます。

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