「地球温暖化の影響が今後どのように私たちの暮らしに影響を与えるのか知りたい」という方には、この記事がおすすめです。気候変動が進むことで、海面上昇や水不足、異常気象、野生生物の危機など、様々な問題が生じる可能性があります。
また、都市部での気温上昇や食料の価格高騰など、私たちの身近な問題も取り上げられています。この記事を通じて、地球温暖化の現状や将来の見通しを理解し、自分たちに何ができるか考えてみましょう。
“RCP8.5: Earth’s Worst-Case Scenario”
人類最悪のシナリオ
米国ワシントン大学のIHMEが2020年に発表した世界人口予測によれば、人口は2064年にピークの97.3億人に達し、2100年までには87億人に減少するとされています。
出生率の低下、高齢化、都市化が人口減少の主な理由であり、教育や女性の社会進出、家族計画へのアクセスの向上が出生率低下に影響しているとされています。
そんな2100年に向けて、科学者たちは地球環境の悪化により人類の生存が困難になる可能性を指摘しています。
天気予報は当たらなくても、気候予測は可能?
週間天気予報が当たらないことから、100年後の気候予測が疑わしいと感じるかもしれませんが、実はそれは誤解です。天気予報と気候予測は異なるタイムスケールで行われるので、正確さや予測可能性も違います。
気温や降水量は100年後も予測できる?専門家が教える気候予測の秘密
専門家は、特定の日の天気は予測が難しいけれど、将来の平均的な気候(気温や降水量など)は100年後でもある程度予測できると説明しています。気候予測の不確定要素は、人間活動と温室効果ガスの排出です。これが気温予測に幅をもたらしますが、その幅を考慮しても、気候予測は非常に有用です。
長期的な気候変化は、短期的な天気変化より安定しているため、気温や降水量、日射量、風、氷の量、雪の量などがほぼ予測できます。
気候予測は、過去のデータや現在の観測データ、地球システムモデルを使って行われます。さらに、人間活動の影響を考慮したシナリオを試すことで、未来の気候変化を評価し、適切な対策を立案できます。
地球を襲う最悪のシナリオ「RCP8.5の恐ろしい予測とは?」
RCP8.5は、最悪の気候変動シナリオで、2100年までに地球の平均気温が最も大きく上昇するとされています。(現実には他のシナリオも存在し、最悪の状況だけが起こるわけではありません。)
RCPシナリオとは何か?気候変動対策に欠かせない情報とは
RCPシナリオは、IPCCという国際的な組織が開発し、気候変動のシミュレーションで使われています。排出量が少ないシナリオから多いシナリオまで、4つのシナリオがあります。
RCP2.6は、温室効果ガス排出が最も抑えられた場合で、2100年までの気温上昇が0.3℃から1.7℃になると予測されています。一方、RCP8.5は、排出量が最も多く、気温が最大4.8℃上昇すると予測されています。
地球温暖化が進むと北半球では夏が半年に!?
地球温暖化が進むと、北半球では夏が1年の半分になる可能性があります。これは、気温上昇が特に北半球で夏の期間を延ばすことを示しています。
都市部はますます暑くなる?2100年までに平均4.4℃上昇の可能性
『Nature Climate Change』によると、都市化と気候変動が相まって、都市の気温が大幅に上昇する可能性があります。2100年までに、都市部の気温は平均で4.4℃も上がるかもしれません。
猛暑に要注意!ヒートアイランド現象の危険性
ヒートアイランド現象とは、都市が広がることで、建物や道路が熱を吸収し、夜に熱が出てしまうため、都市の気温が自然環境よりも高くなる現象です。
これが原因で、都市では熱中症や熱波のリスクが増え、人々の生活に影響が出ることが心配されています。特に夏には、都市生活が不快になります。
ヒートアイランド現象は、地表面の人工化、都市の高密度化、人工的な熱の排出が原因で起こります。これらが相まって、都市部では気温が高くなり、熱の問題が深刻化します。
例えば、東京の気温は過去100年で約3℃上昇しており、地球温暖化とヒートアイランド現象が大きく関係しているとされています。
エアコンや冷蔵庫の増加が地球温暖化に悪影響
都市のヒートアイランド現象が進むことで、エアコンや冷蔵庫などの冷却装置がますます必要になっています。
ただし、これらの機器は電力を使い、温室効果ガスを出してしまい、地球温暖化を悪化させるかもしれません。国連環境計画の報告によると、2050年までに冷却装置の数は現在の36億台から140億台に増えることが予想されており、これが温室効果ガスの大幅な増加につながる可能性があります。
地球温暖化が続くと2300年までに海面上昇5メートル超の危機
2019年、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)は、地球温暖化に関する特別報告書で、温室効果ガスの排出量が現状のまま増加し続けると、今世紀末までに海面が1メートル上昇し、生態系のバランスが崩れることを警告しています。
さらに、このままの状況が続くと、2300年までに海面の上昇幅が5メートルを超える可能性があるとされています。
海面上昇を抑えるために必要な取り組みとは
パリ協定では、地球の気温上昇を産業革命前と比較して2度未満に抑えることが合意されています。この目標を達成した場合、2100年までの海面上昇は43センチ(29~59センチ)に抑えられ、2300年でも約1メートル程度になるとされています。
国連報告の予測は甘かった?氷床融解で海面上昇は加速中
しかしながら、温室効果ガスの排出量は年々増加し続けており、南極とグリーンランドの大氷床の融解ペースが衛星画像によって加速していることが明らかになりました。これらの情報を考慮すると、国連の予測は現実よりも控えめである可能性があります。
2100年までに海面上昇2メートル超!影響は世界中に
氷床の研究者らによる専門的判断に基づくと、誤差の範囲は大きいものの、RCP8.5シナリオの下では、2100年までに海面上昇幅が2メートルを超える可能性があるとされています。
最良のシナリオでも、海面は2100年までに約61~91cm上昇すると予測されています。この影響により、最大で400万人が移住を余儀なくされることが予想されています。
海面上昇によって水没する陸地の大半は、ナイル川のデルタなどの重要な農業地域です。バングラデシュも大部分が人が住めない場所になる可能性があります。さらに、ロンドン、ニューヨーク、上海などの世界的な大都市も海面上昇の脅威にさらされています。
海面上昇で1億人が危険な状況に
科学誌「ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)」に掲載された論文によると、現在すでに1億人以上が満潮時の潮位より低い場所で生活しており、その多くが堤防や土手で守られていません。これらの情報から、地球温暖化と海面上昇に対する対策が急務であることが改めて示されています。
「2100年までに3倍に?」気象災害の増加を警告する新たな研究
100年に1度しか起きないような高潮が、標高の低い大都市や島国では今世紀半ば、ほかの地域でも今世紀末までに、どこかで毎年のように起きるようになる可能性が指摘されています。このような状況は、気候変動による海面上昇や極端な気象現象の増加に起因していると考えられます。
2018年の夏には、北半球で前例のない熱波、干ばつ、洪水、山火事などが多発しました。これらの気象災害は、北極の急速な温暖化によってもたらされる大気の状態と関連があるとされています。
2018年10月31日付けの学術誌「Science Advances」に掲載された新たな論文では、地球温暖化がこのまま続くと、こうした気象災害は2100年までに平均で1.5倍に増え、最大で3倍になる恐れもあると警告されています。
気候変動による落雷リスク今後50%増加の恐れ
2014年に発表された研究によれば、気候変動の影響で今世紀末までに落雷の発生件数が50%増加する可能性があるとされています。これは地球温暖化が空中の水蒸気量を増やし、激しい雷雨が発生しやすくなることが原因です。
落雷は森林火災や死亡事故を引き起こすことがあり、現在の発生率が今後さらに増加すると、そのリスクも高まることになります。研究者たちは、降水量や対流雲のデータを用いることで、落雷発生の頻度を予測できると主張しています。
地球温暖化が進むと、世界の水不足が深刻化する!
2020年時点で、世界の33%の人々が水不足の影響を受けており、これは彼らが必要なときに十分な水が利用できない状況を指しています。
地球温暖化が進むと、この問題はさらに深刻化することが予想されています。例えば、気温が4℃上昇すると、水不足に悩む人々の割合は約5割増の47%〜50%にまで増加するでしょう。
一方、気温が2℃上昇する場合でも、水不足に苦しむ人々の割合は現在よりも高い38%〜41%となりますが、4℃上昇するよりは影響が小さくなります。
農業が崩壊?地球温暖化がもたらす食料危機
温暖化により、干ばつや気温上昇、降雨不順などが農業システムを脅かし、世界各地で農業生産量の減少が予想されています。
特にアフリカの一部では、2020年までに降雨依存の農業収穫が半減すると言われており、ラテンアメリカ、中東、アジアも同様の影響を受けるでしょう。これにより、従来の場所や方法での食料生産が難しくなる可能性が高まります。
IPCCの報告書によれば、21世紀末に地球の平均気温が2度上昇すると、現在の農地で十分な生産量が確保できず、主要穀物の栽培が困難になります。
気温上昇は農作物の生育に大きな影響を与えます。例えば、北海道は気温上昇によりコメの生産に適した地域に変化しましたが、本州の一部では温度が高すぎるためにコメの品質劣化が起きています。
地球温暖化が続くと、2050年には食糧不足により小麦の価格が3倍、米の価格が2.2倍に高騰し、栄養不足の乳幼児が2500万人以上に増えると予測されています。
8.2億人が飢餓に苦しむ世界
2019年時点で、世界では約8.2億人が飢餓に苦しみ、さらに20億人が鉄や亜鉛などの重要なミネラル(微量元素)を十分に摂取できていないとされています。
食料輸入国の日本が直面する温暖化による食糧危機
温暖化による穀物生産への影響は、食料の多くを輸入に頼る日本にとって深刻な問題です。日本は世界最大の食料輸入国であり、戦後の食生活の変化によりパンや肉の消費が増えました。米の自給率はほぼ100%ですが、小麦やトウモロコシなどは大量に輸入しています。
結果、食料自給率は先進国中で最低の約40%です。日本は世界の人口の2%ですが、農産物貿易では輸入が約10%を占めています。
私たちの食生活は、国内農地と2.4倍の海外農地に依存しており、異常気象などで輸入ができなくなると、食料供給に混乱が起こる可能性があります。
野生生物の絶滅危機!地球温暖化が招く未来とは?
研究によれば、温室効果ガスが大量に排出されると、2100年までにホッキョクグマの個体数はほとんど残らない可能性が高いです。
排出量が少なくても、いくつかの個体群は失われるでしょう。急速に変化する気候や異常気象による環境の変化は、ホッキョクグマをはじめ、多くの野生生物を絶滅の危機に追いやります。
2017年時点で、地球温暖化の影響を受けるとされる野生生物は約2,800種。この数は今後さらに増えると予想されます。温暖化が引き起こす野生生物の危機は、地球上の生命を支える自然環境の崩壊へとつながるのです。
気候変動による植物の移動と生態系への影響
植物はそれぞれ特定の地域で生息していますが、温暖化によって北や高地へ移動する必要が出てきます。しかし、樹木が種子を飛ばして分布を広げる速度は年間40mから最大約2kmであり、温暖化によって1.5~5.5km/年で移動する気候帯には追いつかず、生息場所を失い絶滅の危険にさらされます。
地球温暖化と健康リスク、熱中症や感染症に注意
温暖化が進むと、夏の気温が高くなり、熱射病などの発生率や死亡率が増える恐れがあります。
特に高齢者が影響を受けやすいとされています。さらに、熱帯熱マラリアが低い気温でも広がることがわかっており、2100年までには中国北部、韓国、西日本も感染危険地域になるかもしれません。また、デング熱などの感染症も北上が予想されています。
「2100年 未来の天気予報」で見えた地球温暖化の現実
環境省は、地球温暖化の進行とその影響を理解しやすく伝えるため、「2100年 未来の天気予報」という動画を制作しました。監修は気象キャスターネットワークと国立環境研究所で、気象庁・気象研究所も協力しています。
気象キャスターは小島瑠璃子さんが務めており、2100年の夏と冬の天気予報を1.5℃目標達成・未達成の2パターンで、合計4つのシナリオを紹介しています。
動画では、スーパー台風や竜巻、高潮、豪雨、洪水などの激甚化や、農作物への大きな被害が予想されています。