《地球温暖化》こんなに寒いのに本当に温暖化!?毎年のように災害級の大雪が降る理由
Cold waves
深刻度を増す未曾有の『大寒波』
ここ数年、北半球各国を襲った大寒波は、2012年2月の欧州、2014年1月の米国などで数十年に一度といわれる大雪や強風、低温によって多くの被害をもたらしました。
~地球は温暖化しているのに、なぜ大寒波?~
温暖化なんてウソなんじゃないか――。冬に大雪が積もる荒天が続くと決まってこんな投稿をSNS(交流サイト)で見る。地球全体の気温が高まっているのなら、冬も温暖になっていなければおかしいでしょうと続く。
「冬の嵐」温暖化で増加中/日本経済新聞.2022
保守派Webサイト「Breitbart.com」は、この大寒波を地球温暖化“でっち上げ”の証拠と呼んだ。また、実業家のドナルド・トランプ(Donald Trump)氏はツイッターで、「今我々はここ20年で一番の寒波を経験しているが、ほとんどの人がこのような寒さを記憶していない。これが地球温暖化?」(@realDonaldTrump)とつぶやいた。
アメリカ大寒波で温暖化否定論が噴出/ナショナルジオグラフィック.2014
テキサス州共和党上院議員テッド・クルーズ(Ted Cruz)氏は、「寒いな。アル・ゴア氏は、こんなことは起こらないと私に言ったのに」とからかった。
アメリカ大寒波で温暖化否定論が噴出/ナショナルジオグラフィック.2014
ソーシャルメディア上では、凍りついたアル・ゴア氏の写真が人々の間を行き交っている(テレビ番組「The Daily Show」の中で、キャスターのジョン・スチュワート氏もその様子についてからかった)。
アメリカ大寒波で温暖化否定論が噴出/ナショナルジオグラフィック.2014
短期間的な寒さと温暖化はあまり関係がない
短い期間の寒さについては温暖化とあまり関係がありません。
温暖化というのは数十年〜100年単位での気温上昇で、ひと冬の寒さなど数カ月程度の気候変動には当てはまらないのです。
予報士のつぶやき「温暖化なのになぜ寒い」/テレ朝news.2022
なぜ?温暖化の影響で災害級の大雪
地球が温暖化しているなら、雪は減るんじゃないの?」実は専門家は、地球温暖化によって、逆に冬の間の大雪被害が増える可能性を指摘しています。
[解説] 地球温暖化しているのに、なんで大雪・暴風雪になるの?/国際環境NGOグリーンピース・ジャパン.2021
「ドカ雪」
災害を引き起こす大雪には2種類あります。一つは、38豪雪、56豪雪、平成18年豪雪のように、冬季を通した大雪のこと。このような豪雪は20~30年に一度の稀な現象です。もう一つは、短時間(一晩、一日)で降る大雪、いわゆるドカ雪で、これが近年増加しています。
[コラム]北陸の気候から考える地球温暖化/北陸原子力懇談会
ドカ雪の増加に伴い、雪害対策に伴う事故も急増しており、内閣府が出している広報誌「ぼうさい」の第69号(24年度)を見ると、平成22年度の死者は131名、重傷者636名、23年度は、死者134名、重傷者883名と、多くの人的被害が生じたと言うことです。特に近年、除雪作業中に発生する事故件数が増えていて、雪の性質の変化(水分量の違い)やドカ雪の降り方の問題もあるが、豪雪地帯での急激な高齢化や自治体行政のサービスの縮小化などの社会的な問題が大きい要因となっています。地域のコミュニティ力が豪雪に対応できないでいるということです。
道踏みと自然知/農村づくり・ICT支援研究会.2022
温暖化で雪の降る量自体は減少
なぜ温暖化でドカ雪が増えるのだろうか。そもそも暖かくなれば、雪が減るはずであり、実際、東京の年間降雪量は、30年前の平年値に比べて3割減、鹿児島は5割減、大阪にいたっては7割減となっている。
年間降雪量の世界ベスト3はすべて日本…「世界一の豪雪地帯」である日本の雪がさらに増えそうなワケ/PRESIDENT Online.2022
【ドカ雪の原因①】温暖化で水蒸気量が増加 = 降水量が増加
温暖化すると海水面の温度が上昇し、大気中の水蒸気量も増えることで、海水面から蒸発する水蒸気量が増加します。水蒸気量の増加は世界平均でみると降水量の増加をもたらします。
地球温暖化と「水」/国立環境研究所.2018
これまでの研究で、気温が1度上がるごとに水蒸気の量は7%増えることが分かっている。これが、温暖化と雨の関係を考えるための初めの一歩となる。
温暖化が進むと雨や雪はどう変わる?/東京新聞 TOKYO Web.2020
亜熱帯の地域では降水量は減少
しかし気候システムは複雑で、すべての地域で降水量が増えるわけではなく、熱帯や高緯度では増え、亜熱帯では減ります。水蒸気が上昇して凝結する(雲粒雨粒となる)ときに発生する熱(凝結熱)によって風の流れが変わり、その風の変化によって亜熱帯では降水量が減ってしまいます。
地球温暖化と「水」/国立環境研究所.2018
日本では小雨は減少・大雨の日が増加
気象庁の観測データによると、日本では1日に降る雨(日降水量)が100ミリ以上や200ミリ以上という大雨の日が、この100年余りで増えている。1時間に50ミリ以上という短時間に滝のように降る雨も増加。その一方で、1ミリ以上の雨の日は減っている。
温暖化が進むと雨や雪はどう変わる?/東京新聞 TOKYO Web.2020
え?温暖化の影響で雪が雨に?降雪量は減少
温暖化すると、今まで雪として降っていたものが雨となります。4°C温暖化した世界では日本の多くの場所で年積算降雪量が減ってしまいます(雪と雨を足した総量は増える)。
地球温暖化と「水」/国立環境研究所.2018
ときどき降る「ドカ雪」は増加
ところが4°C温暖化した世界でもときどき強い寒気がやってきます。そのとき山岳部では0°Cを下回るので、雪が降ります。その上、温暖化して大気中の水蒸気量は増えているので、その増えた水蒸気が雪として落ちてしまい、「どか雪」の量が増えます。つまり温暖化すると平均的に雪は減るのですが、ときどき降る「どか雪」が山岳部で増えてしまいます。
地球温暖化と「水」/国立環境研究所.2018
【ドカ雪の原因②】温暖化で蛇行した偏西風が寒気を運ぶ
私たちが暮らす日本を含む中緯度地域の上空約1万メートルには、西からの強い風、偏西風が常に吹いています。この偏西風は日本、北米、ヨーロッパからモンゴル、そして日本と地球を一周しています。しかし、まっすぐ吹いているわけではありません。ヨーロッパでは北寄りに、西シベリアでは南寄りに、そしてモンゴルでは北寄りに、と蛇行する形が近年では頻繁に観測されます。さらにこの蛇行は気候の条件で変化するといわれています。
#119 気候変動メカニズムの解明を目指して(2)~空、その先へ~/いいね!Hokudai – CoSTEP – 北海道大学
北極圏の気温上昇
「地球温暖化によって北極域の気温が上がると、偏西風が蛇行して、異常気象が増える」という言説がある。
「温暖化でジェット気流が蛇行して異常気象が増える」というのは本当か大気科学の第一人者、筑波大学の田中博教授に聞く/キヤノングローバル戦略研究所.2022
北極の冷たい空気が南に進出…。
温暖化が進行すると、北極とそれより南側の地域との温度差が小さくなり、偏西風が弱まる。偏西風は北極の冷たい空気を遮断するカーテンのような役割を果たしているのだが、その勢いが弱くなると、グニャリと大きく蛇行することになる。その際、北極周辺の寒気が、より南側に進出してくるため、大寒波が起きる、と観られている。近年、北米各地が「スノーマゲドン(雪の最終戦争)」と呼ばれるほどの猛烈な寒波に襲われることが度々あるのも、こうした現象によるものだと考えられている。
温暖化で大寒波が頻発するのは何故なのかー北米、アジアでも猛威、ゴジラならぬ「スノージラ」/Yahoo!ニュース.2016
世界の気象を変化させる!「偏西風(ジェット気流)」
偏西風は南北方向に波打って流れていて、南に張り出したところが「気圧の谷」となり、地上では低気圧が発生します。逆に北に張り出したところは「気圧の尾根」といって、高気圧が発生します。
類のジェット気流(偏西風)/おもしろコラム.2014
狭い範囲で強烈な勢いで吹く偏西風=ジェット気流
そんな偏西風の中でも特に狭い幅で強く吹くもののことを「ジェット気流」と呼びます。
類のジェット気流(偏西風)/おもしろコラム.2014
そもそも、ジェット気流とは「上空10,000m前後で吹く強い西風」のこと。
上空を流れる強い西風 「ジェット気流」とは?/ウェザーニュース.2019
広い意味でいうと偏西風のことですが、特に冬季には対流圏界面付近(日本付近では上空10,000m前後)で毎秒100mに達し、ジェット気流とよばれるのです。
上空を流れる強い西風 「ジェット気流」とは?/ウェザーニュース.2019
時速になおすと軽く300km/hを超え、新幹線並みの猛烈な風。
上空を流れる強い西風 「ジェット気流」とは?/ウェザーニュース.2019
台風でさえも、この猛烈な風のチカラによって進路を変えられてしまいます。
上空を流れる強い西風 「ジェット気流」とは?/ウェザーニュース.2019
寒波の要因!?寒帯ジェット気流の蛇行
北半球では北緯40度付近を流れる偏西風(寒帯ジェット気流)が南北に蛇行すると、寒波の要因となる寒気が北から南下しやすくなります。
気象と気象用語/気象庁 Japan Meteorological Agency
増加した水蒸気量+北極圏の冷たい空気 → 大雪
ジェット気流は、北極側の寒気と低緯度側の暖気の境目なので、たとえば日本付近で南におおきく蛇行すれば、その北側の寒気が日本に近づく。温暖化で大気の水蒸気量が増えていれば、この寒気によって大雪になることもありうる。
大雪と地球温暖化/東京大学海洋アライアンス.2015
Polar Vortex
大寒波を引き起こす原因!?冬に現れる極地の渦「極渦」
「極渦(きょくうず)」とは、毎年冬になると北極点に形成される巨大な空気の渦で、成層圏まで到達する。
米大寒波と気候変動の関係は 温暖化はどうなったのか/BBCニュース.2019
極地の空気の塊は昔から存在したが、2014年に初めて「極渦」と名付けられた。
「極渦」の大寒波に襲われるアメリカ、そのメカニズムとは? なぜ頻発するのか?/Business Insider Japan.2019
寒気を閉じ込める役割を果たしているジェット気流「極渦」
冬になると北極圏は24時間夜になってしまうため、北極圏上にある成層圏はマイナス60℃以下にまで下がります。その結果、北極圏上空には強い偏西風が吹きすさび、極渦と呼ばれる強い風の渦が形成されます。
記録的大寒波を大陸にもたらす「成層圏突然昇温」とは?/Gigazine.2021
極渦は文字通り、北極と南極の上空で反時計回りに渦巻くジェット気流だ。通常はこの流れが、寒気を極に閉じ込める役割を果たしている。
米寒波の原因、キーワードは「極渦」と「北極振動」/CNN.co.jp.2014
“極渦”の流れが弱くなり中緯度に寒気が侵入する現象「負の北極振動」
これまでの研究から、極渦の状態は「北極振動」と呼ばれる、北極を取り巻く領域の気圧配置の変化と連動することがわかっている。
雪の少ない傾向まだ続く?「極渦」が寒気とじ込め/日本経済新聞.2020
大気の流れには北極付近で寒気をため込む時期と寒気を放出する時期の2つがあり、冬の間に、蓄積と放出を何度か繰り返します。これを「北極振動(Arctic Oscillation)」といい、正の場合(positive phase)は寒気をため込む、負の場合(negative phase)は寒気を放出するという意味です。
負の北極振動 年末にかけ、寒さ・大雪に備えを(片山由紀子)/Yahoo!ニュース.2022
見分け方は北極付近が青だったら「正」、赤だったら「負」です。
負の北極振動 年末にかけ、寒さ・大雪に備えを(片山由紀子)/Yahoo!ニュース.2022
振動は1年に何周期かのペースで繰り返されている。
米寒波の原因、キーワードは「極渦」と「北極振動」/CNN.co.jp.2014
極渦が弱まり成層圏の気温が突然上昇「成層圏突然昇温」
成層圏突然昇温(SSW)とは、気温変化が穏やかな上空約10~50キロの成層圏で突然気温が上昇する現象をいう。通常、冬の北極は日射が届かないため非常に低温となり、成層圏では「極渦」と呼ばれる強力な西風の気流の渦がこれらの冷たい空気を取り囲むが、極渦が弱まると、風が減速したり、反転し、冷たい空気が下降して、温度がわずか数日で摂氏50度も上昇する。
北極の成層圏突然昇温により寒波襲来のおそれ……2018年の大寒波と同じ/PRESIDENT Online.2021
北極振動のメカニズムについては十分に解明されていませんが、負の北極振動が強化される一因として「成層圏の突然昇温」が挙げられます。
今冬の北陸 ラニーニャ現象で寒冬 負の北極振動が強化されれば厳冬 大雪への備えを/tenki.jp.2022
成層圏突然昇温により極渦が分裂 → 負の北極振動が強化
成層圏突然昇温が起こると、上空10キロまでの対流圏で「ジェット気流」が弱まる。
北極の成層圏突然昇温により寒波襲来のおそれ……2018年の大寒波と同じ/PRESIDENT Online.2021
ジェット気流が弱まると極渦が分裂、「北極圏からの寒気放出パターン」である負の北極振動が強化されやすくなることがあります。事実、2021年1月4日頃から2月13日頃にかけて大規模な突然昇温が発生、その後の1月下旬から2月前半にかけての対流圏では負の北極振動が強化されたという報告がなされています。2020年度の冬がどのような状況であったかは、北陸在住の皆様には周知の事実でしょう。
今冬の北陸 ラニーニャ現象で寒冬 負の北極振動が強化されれば厳冬 大雪への備えを/tenki.jp.2022
温暖化によって毎年のように極渦が分裂!?
英ブリストル大学、エクセター大学、バース大学の共同研究チームは、過去60年間に発生した成層圏突然昇温40件を分析し、成層圏で突然昇温が始まってから地表に向かって下降するまでの兆候を追跡する新たな手法を開発した。
北極の成層圏突然昇温により寒波襲来のおそれ……2018年の大寒波と同じ/PRESIDENT Online.2021
この手法により、成層圏突然昇温が成層圏から地表にもたらす影響を追跡した結果、成層圏突然昇温で成層圏の極渦が2つに分裂すると、北西ヨーロッパからシベリアにかけて厳しい寒波が起こりやすいことがわかった。一連の研究成果は、2020年12月25日に学術雑誌「ジャーナル・オブ・ジオフィジカル・リサーチ」で発表されている。
北極の成層圏突然昇温により寒波襲来のおそれ……2018年の大寒波と同じ/PRESIDENT Online.2021
本来はこれらの現象は1〜2週間で戻る…が
イギリス気象庁は成層圏の極渦の弱化を確認しており、成層圏突然昇温によって、イギリス全土が70%の確率で厳しい寒さに襲われると予想しています。イギリス気象庁の主任研究員であるポール・デイヴィス氏は「成層圏突然昇温が発生すると、寒波を免れることはできません。しかし、イギリスの天候データは、1~2週間で不安定ながら比較的穏やかな状態に戻ることを裏付けています」と語っています。
記録的大寒波を大陸にもたらす「成層圏突然昇温」とは?/Gigazine.2021
氷が解け北極の気温が上昇…。
極渦は本来、成層圏近くの高い高度で循環しており、人間の活動には影響を及ぼさない。しかし、近年はジェット気流が極渦に干渉を起こし、その渦を分裂させているのだ。
米国に大寒波襲来、シカゴが「北極より寒い」異常事態に/Forbes JAPAN.2019
この極渦の乱れに大きな影響を与えるのが地球温暖化だ。
温暖化なのになぜアメリカは凍えるのか?/エコロジーオンライン.2019
北極に氷があると鏡のように太陽の光を反射することができるのだが、地球温暖化で夏の気温が高くなり、氷が無くなると太陽の熱を海水が吸収してしまう。そのおかげで北極海にホットスポットができあがる。気候変動によって大きな影響を受けるジェット気流と、このホットスポットの存在によって、極渦の乱れが生じていると研究者は考えている。
温暖化なのになぜアメリカは凍えるのか?/エコロジーオンライン.2019
毎年のように北極以外の地域に大寒波をもたらせる
このまま温暖化が進めば、極渦は毎年のように分裂し、北極以外の地域に厳しい寒さをもたらすことになる。
温暖化なのになぜアメリカは凍えるのか?/エコロジーオンライン.2019