地球温暖化が進む現代において、冬の季節でも寒波に見舞われることがあります。寒波によって起こる異常気象や、極端な気温の変化は、生物や環境に悪影響を与えることもあります。
そこで今回の記事では、地球温暖化が寒波に与える影響や、その仕組みについて探っていきます。また、私たちができる対策や、今後の見通しについても考えていきます。寒波がもたらす厳しい自然現象を理解し、地球環境を守るためにも、ぜひお読みください。
Cold waves
深刻度を増す未曾有の『大寒波』
冬に大雪が積もる荒天が続くと、一部の人たちはSNSで「温暖化はウソ」という投稿をすることがあります。彼らは、地球全体の気温が上がっているなら、冬も温暖になっているはずだと考えます。
アメリカの保守派Webサイト「Breitbart.com」は、このような大寒波を地球温暖化のでっち上げだと主張しました。
ドナルド・トランプは、ツイッターで「今我々はここ20年で一番の寒波を経験しているが、ほとんどの人がこのような寒さを記憶していない。これが地球温暖化?」とつぶやき、共和党上院議員テッド・クルーズは、「寒いな。アル・ゴア(第45代米副大統領は)、こんなことは起こらないと私に言ったのに」とからかいました。ソーシャルメディア上では、アル・ゴアの凍りついた写真が拡散されました。
アル・ゴアは、気候変動の問題に取り組む熱心な支持者の1人であり、自身の著書やドキュメンタリー映画「不都合な真実」などを通じて、地球温暖化やその影響について世界中に訴えかけてきました。
短期間の寒さと地球温暖化は無関係!
地球温暖化は、長期的に地球の気温が上昇することを指し、数十年以上の期間にわたって観測される気候変動の一つです。一方、短期的な寒さや暑さは、天候の変動や自然現象などによって引き起こされる気象変化であり、温暖化とは直接的な関係がありません。
大雪は温暖化が進んでいる証拠
「本当に地球が温暖化してるなら雪は減るはずだ」と思う人もいるかもしれません。
確かに地球温暖化が進むと、一般的には平均気温が上昇し、雪が降ることが少なくなると考えられがちです。
地球温暖化が進むと、一般的には平均気温が上昇し、雪が降ることが少なくなると考えられがちです。しかし、実際には大雪が降る可能性が高まります。
災害を引き起こす大雪「豪雪」「ドカ雪」
災害レベルの大雪には「豪雪」「ドカ雪」の2種類があります。
豪雪(ごうせつ)は、特に多くの雪が降る地域やその状況を指します。豪雪地帯は、冬季に大量の雪が降ることが一般的で、交通や生活に影響を与えることがあります。日本では、日本海側の地域や北海道などが豪雪地帯として知られています。
一方、ドカ雪(どかゆき)は、非常に短時間で大量の雪が降ることを指します。通常は予測が難しく、急な積雪によって交通機関や人々の生活に大きな影響を与えることがあります。ドカ雪は豪雪地帯だけでなく、他の地域でも発生することがあります。
要するに、豪雪は一般的に雪が多い地域や状況を指し、ドカ雪は短時間で大量の雪が降る現象を指します。どちらも多くの雪が降ることを表しているため、混同されることがありますが、状況や地域によって使い分けられる言葉です。
地球温暖化によって「ドカ雪」
近年、地球温暖化の影響により、短時間で大量の雪が降るドカ雪の現象が増加していることが指摘されています。
ドカ雪の増加に伴い、雪害対策に関連する事故も増えていて、死者や重傷者の数が年々増加しています。特に除雪作業中の事故増加には、雪の性質の変化(水分量の違い)やドカ雪の降り方の問題があります。
さらにそれだけでなく、社会的な要因も大きく影響しています。豪雪地帯では高齢化が進み、若い人々の減少によって地域のコミュニティ力が低下しています。また、自治体の行政サービスの縮小化も、雪害対策に対する対応力の低下につながっています。
全体的には雪の降る量は減少傾向
温暖化によってドカ雪が増える理由は、気温上昇に伴う海水温の上昇や、気象パターンの変化が関係しています。確かに、温暖化により全体的に雪が減る傾向がありますが、一部の地域では短期間で大量の雪が降る現象が増えているのです。
【ドカ雪の原因①】温暖化で水蒸気量が増加!降水量が増加
温暖化によって海水面の温度が上昇すると、大気中の水蒸気量も増えます。これは、温度が上がることで海水から蒸発する水蒸気量が増加するためです。この現象は、クラウジウス=クラペイロンの式によって説明されています。
研究によれば、気温が1度上昇するごとに、大気中の水蒸気量は約7%増加するとされています。これは、大気が温まることで、より多くの水分を保持できるようになるためです。水蒸気量の増加は、世界平均で降水量の増加につながります。
亜熱帯の地域では降水量は減少
ただし、気候システムは非常に複雑であり、全ての地域で降水量が増えるわけではありません。熱帯や高緯度地域では降水量が増える一方で、亜熱帯では減る傾向があります。これは、水蒸気が上昇して凝結する際に発生する凝結熱によって、風の流れが変わり、降水パターンに影響を与えるためです。
日本では小雨は減少・大雨の日が増加
日本の気象庁の観測データによれば、過去100年余りで1日に降る雨(日降水量)が100ミリ以上や200ミリ以上という大雨の日が増加しています。また、1時間に50ミリ以上という短時間で大量の雨が降るケースも増えています。一方で、1ミリ以上の雨が降る日数は減少しているとのことです。
温暖化の影響で雪が雨に?降雪量は減少
温暖化が進むと、かつて雪として降っていたものが雨に変わります。もし地球が4°C温暖化した場合、日本の多くの場所では年間の積雪量が減少しますが、降水量自体は増えているため雪と雨の合計量は増えます。
しかし、4°C温暖化した世界でも時折強い寒気が訪れることがあります。そんな時、山岳地域では気温が0°Cを下回るため、雪が降ります。さらに、温暖化によって大気中の水蒸気量が増加しているため、その水蒸気が雪として降ることで、ドカ雪の量が増えます。
つまり、温暖化で平均的には雪は減るものの、山岳地域では時々降るドカ雪が増えてしまうということです。
【ドカ雪の原因②】温暖化で蛇行した偏西風が寒気を運ぶ
私たち日本人が住んでいる地域では、上空約1万メートルに西からの強い風、偏西風が常に吹いています。この偏西風は、日本から北米、ヨーロッパ、モンゴルへと一周し、再び日本に戻ってくるような形で地球を巡っています。
しかし、風は真っ直ぐに吹くわけではありません。ヨーロッパでは北向きに、西シベリアでは南向きに、そしてモンゴルでは再び北向きに蛇行するような形が近年よく観測されています。この蛇行パターンは、気候の状況によって変わるとされています。
北極圏の気温上昇!北極の冷たい空気が南に進出…。
「地球温暖化によって北極域の気温が上がると、偏西風が蛇行し、異常気象が増える」という考え方があります。実際に温暖化が進むと、北極と南側地域との温度差が縮小し、偏西風が弱くなる傾向にあります。
偏西風は、北極の冷たい空気を遮断する役割を持っていますが、その勢いが弱まると、偏西風が大きく蛇行するようになります。
その結果、北極周辺の寒気が南側に進入し、大寒波が起こる可能性が高くなります。最近、北米各地で「スノーマゲドン(雪の最終戦争)」と呼ばれるほどの激しい寒波が頻繁に発生するようになっており、この現象も地球温暖化による影響が考えられています。
世界の気象を変化させる!「偏西風(ジェット気流)」
偏西風は南北方向に波打って流れており、南に突き出した部分は「気圧の谷」となり、地上では低気圧が発生します。逆に、北に突き出した部分は「気圧の尾根」と呼ばれ、高気圧が発生します。偏西風の中でも、特に狭い幅で強く吹くものを「ジェット気流」と呼んでいます。
狭い範囲で強烈な勢いで吹く偏西風=ジェット気流
ジェット気流は、一般的に「上空10,000m前後で吹く強い西風」を指します。広義には偏西風そのものを指すこともありますが、特に冬季には対流圏界面付近(日本周辺では上空10,000m前後)で毎秒100mの速さに達し、ジェット気流と呼ばれます。
これを時速に換算すると、300km/h以上になり、新幹線に匹敵する驚異的な速さです。台風も、この強烈な風の力によって進路を変えられることがあります。
寒波の要因!?寒帯ジェット気流の蛇行
北半球の北緯40度付近を流れる偏西風(寒帯ジェット気流)が南北に蛇行する際、寒波を引き起こす寒気が北から南下しやすくなります。
増加した水蒸気量+北極圏の冷たい空気 → 大雪
ジェット気流は、北極側の寒気と低緯度側の暖気の境界に位置しているため、日本周辺でジェット気流が南に大きく蛇行すると、その北側の寒気が日本に接近します。温暖化により大気中の水蒸気量が増加している状況に、この寒気がプラスされることによって大雪が発生します。