この記事では、日本の伝統楽器である尺八の進化、魅力、そして今後の展望について紹介します。尺八の繊細な音色や表現力、自然と調和した音色であるため宗教的な儀式にも使われることがあるなど、その魅力は多岐にわたります。
また、近年では海外でも尺八の演奏や教育が行われ、多様な音楽シーンでの活躍が期待されています。一方で、伝統的な尺八の音楽が後継者不足や時代の変化によって維持が難しくなっている現状もあります。このような背景から、尺八を新しいジャンルに取り入れることで、若い世代にも広がりやすくなるよう取り組むことが求められています。今後は、伝統的な尺八の音楽と新しいジャンルの融合や、新しい素材や技術を取り入れた進化など、尺八の可能性を追求することが期待されています。
Shakuhachi
日本伝統の笛「尺八」
尺八は、豊かな表現力を持つ日本の伝統的な木製の縦笛楽器で、多くの人々に愛され続けています。
どこかで聴いたことがある?特徴的な尺八の音色
その音色は繊細で、表現力豊かであるとされています。
近年では、世界各国の映画でも、尺八の音色が使用されることが増えています。尺八の音色は、エキゾチックで神秘的な響きを持ち、映画の世界観や雰囲気を一層深く表現するために用いられています。特に、「ジュラシック・パーク」や「ハリー・ポッター」などは、尺八の音色が非常に印象的で、多くの人々の記憶に深く刻まれています。
名前の由来はその長さ
尺八の名前の由来は、尺(しゃく)と八(はち)の二つの言葉によって表されます。尺は、古代中国における長さの単位で、約30センチメートルに相当します。一方、八は、8つの指穴を持つ尺八の特徴を表しています。
尺八の全長は、1尺8寸(約54cm)が標準で、尺という単位からすると、尺八はやや短めの楽器といえます。しかし、尺八の音色は、その短い長さからくる独特な響きがあり、非常に豊かであります。
曲によって長さの違う尺八を使い分ける
様々な長さの尺八があり長いほど低い音が出せるようになります。
「春の海」は、正月によく演奏される尺八の名曲の一つです。この曲は、通常は1尺8寸で演奏されることが多いですが、中には1尺6寸で演奏する場合もあります。
1尺6寸は、約50センチメートル程度で、1尺8寸よりもやや低い音程になります。これは、曲の雰囲気や演奏者の演奏スタイルによって、調弦を微調整することができるという尺八の特徴によるものです。
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多彩な演奏と感情豊かな音色
尺八は、基本的には単音階楽器であり、他の音を出すには、指穴を半開にしたり、息を吹き込む角度を変化させる必要があります。
一般的な尺八は、表側に4つの指穴と裏側に1つの指穴があり、5つの指穴を使って演奏されます。指穴の開閉や吹き方の微妙な調整によって、尺八からは、レ、ファ、ソ、ラ、ドの5つの基本音が出せます。これらの音を組み合わせることで、和音やメロディーを演奏しているのです。
尺八の特殊な奏法
尺八には、伝統的な奏法の他にも、特殊な奏法があります。代表的なものとしては、上運指、下運指、揮指(きし)、早口(はやくち)、息吹き(いぶき)などがあります。
これらの奏法は、音色や音程を微調整するために使われることが多く、尺八の表現力を豊かにします。また、これらの奏法は、西洋の現代音楽における管楽器の特殊奏法と共通点があり、フルートなどの楽器で用いられる奏法の多くは、尺八の伝統的な奏法から発展してきたと言われています。
竹に穴を開けた笛!ただ制作には10年かかることも…。
尺八は、竹を細かく削り、内部に孔を開けることで作られます。竹は、年輪の密度や節の位置などによって音質が異なり、また、孔の位置や大きさも音質に大きく影響する。
尺八に適した竹「真竹」
尺八に使用される竹は、真竹と呼ばれる種類の竹で、肉厚で丈夫なことから、尺八をはじめとする伝統的な楽器の材料として適しています。また、真竹は、竹細工や工芸品、物干し竿や庭ほうきなどの日常生活に欠かせない用途にも広く使用されています。日本国内でも、真竹は広く分布しており、南は九州から北は東北まで生息しています。
まさに真竹は、日本の自然や文化に深く根付いた素材であり、日本の伝統産業や文化の一翼を担っていると言える。
尺八に使用する真竹は、根と根の間や節と節の間に隙間がなく、直径や節の間隔が尺八の長さに合ったものでなければなりません。また、竹の表面には、虫食いや傷などがあってはならず、風合いが美しく、弾力性に富んだものが望ましいとされています。
重要なのが乾燥期間
製作までに長い時間を要します。まず、竹を切り出した後、数年間乾燥させ、風合いを整えます。その後、中心部をくり抜き、最低でも10年間乾燥させます。
これは、竹が新鮮なうちに製作を行うと、竹の含水率が高く、製品が完成してから反ってしまう可能性があるためです。また、乾燥させることで竹が硬くなり、尺八の音質や性能が向上するとされています。
また、中継ぎに使用されるホゾ竹も、尺八本体と同様に、自然に生育した真竹から選別されたものが使用されます。
このように、尺八製作には、素材選びから加工まで熟練の職人技が必要であり、そのためにも、真竹の育成や加工技術の継承が重要な課題となっています。
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1本の竹から作れる尺八の本数は“1”
尺八は竹の根っこの部分を使用して作られます。つまり、1本の竹から1本の尺八しか作ることができません。
尺八の美しさを際立たせる
尺八は、竹の自然な曲線美を活かして、根元部分を曲げて作られています。そのため、尺八の根元部分は、美しい曲線美があり、尺八ならではの独特なフォルムを持っており、一般の方から見ても、尺八の根元部分は、尺八らしさを感じる重要な部位となっています。
また、根元部分は、尺八の音色にも大きく影響を与えます。根元部分を曲げることで、竹が持つ自然な共鳴や反響を活かし、尺八ならではの豊かな音色を生み出すことができます。そのため、尺八の根元部分は、尺八の魅力を表現する重要な要素の一つとして位置づけられています。
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全国でも尺八を作れる人はたった数人
竹の採取から下作り、調律、漆塗り、磨きまで、すべての工程が手作業で行われます。尺八製作には、竹の選別や加工、銀製部品の製作、漆塗りなど、多くの工程が含まれます。尺八の製作に携わる職人は、これらの工程に精通し、熟練した技術を持っています。しかしながら、そのような職人は、全国で数名しかいないとされています。
保管が難しい!
尺八は、天然の竹が使われているため、湿度や温度の変化に敏感で、保管には注意が必要です。湿度が高いと竹が膨張し、低いと収縮するため、竹が歪んでしまったり、割れてしまったりすることがあります。また、直射日光に当たると、竹が乾燥して割れることもあります。
そのため保管には、湿度や温度の管理が必須です。
湿度が高い場合には、竹を保管する場所を乾燥させるために、除湿機や空調機を使うことができます。一方、湿度が低い場合には、竹に水分を与えるために、湿度を上げるための器具を使うことができます。
また、尺八を保管する際には、竹を保護するために、専用のケースや袋を使うことが望ましいとされています。これにより、竹に直接湿気が当たることを防ぎ、竹を保護することができます。
楽器というよりもはや美術品
尺八には、楽器としての価値と工芸美術品としての価値の二つの価値観があります。
楽器としての価値は、尺八が持つ音の響きや音色、音程などの性能に対する評価が基準となります。
一方、工芸美術品としての価値は、竹材の形や色の美しさ、希少性などが評価されます。尺八に使われる竹材は、希少価値が高く、竹材自体に美しさがあることから、尺八自体が芸術品としての価値を持つことがあります。また、尺八の製作には職人の手仕事が使われ、伝統的な技術や美意識が反映された美しい作品が多く存在します。
これらの価値観は、それぞれ異なる視点から尺八を評価するため、尺八の愛好家やコレクターにとっては重要な要素となっています。
歴史深い伝統楽器でありながらまだまだ進化の途中にある!!
尺八は、楽器としての完成されたモデルが存在していません。
これは、尺八が持つ様々な可能性や表現力、演奏技術の発展など、まだまだ研究や改良が必要であるためです。現在も、尺八の構造や音響特性などの研究が進められており、新しい演奏法や奏法の発見があるたびに、楽器自体も変化していく可能性があります。
演奏法にも正解がない
また、尺八の演奏法についても、一つの正解が存在しないことが特徴的です。尺八は、奏者の個性や感性が反映される楽器であり、演奏法についても、奏者の考え方やスタイルによって異なる解釈や表現がされることがあります。そのため、尺八の演奏においては、正解や決まりごとよりも、個性的な表現や奏法が評価される傾向があります。
近年では竹以外の素材を使った尺八も登場!!
最近では、初心者用として、竹の代わりに塩化ビニールや合成材を使用した尺八も作られるようになりました。これらの尺八は、竹製の尺八よりも安価で、湿度や温度の変化に強く、初心者にとっては取り扱いが簡単な点が魅力的です。
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今やジャンルレス!現代の“Shakuhachi ”
尺八は、元々は宗教儀式などで使われる楽器として発展してきましたが、古典的な邦楽曲から現代の邦楽曲まで幅広いレパートリーに対応できるため、邦楽演奏家にとっても重要な楽器の一つとして、様々なジャンルの音楽にも取り入れられるようになっています。
特に、ジャズや即興音楽の分野では、尺八の音色や音域を活かし、自由な表現が可能な楽器として、多くのミュージシャンたちに愛用されています。また、尺八奏者自身も、伝統的な演奏方法にとらわれず、自由な発想や表現を試みることで、新しい音楽の可能性を模索しています。