『ONE LOVE MANCHESTER』アリアナ・グランデが織りなす愛の詩

2017年、イギリス・マンチェスターで発生したテロ事件をきっかけに、アリアナ・グランデ主催のチャリティーコンサート「One Love Manchester」が開催。

マンチェスター市民の不屈の精神を称え、アリアナへの感謝と愛を込めた一夜となりました。

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前作『ユアーズ・トゥルーリー』に続く、“ネクスト・マライア”の呼び声高いアリアナ・グランデの2ndアルバム。世界各国のiTuneチャートを席巻した、イギー・アゼリア客演の先行シングル「プロブレム」ほか、アリアナ旋風を再び巻き起こす一枚。(「CDジャーナル」データベースより)

ONE LOVE MANCHESTER

ワン・ラブ・マンチェスター

Scooter Braun Projects/YouTube

「One Love Manchester」は、2017年6月4日にイギリスのマンチェスターで開催されたチャリティーコンサートです。

このコンサートには、アリアナ・グランデ、ジャスティン・ビーバー、ケイティ・ペリー、マイリー・サイラス、コールドプレイ、ファレル・ウィリアムスなど、様々な人気アーティストが出演。

テレビ放送やオンラインストリーミングでも視聴可能であり、すべての収益は「ウィ・ラブ・マンチェスター・エマージェンシー・ファンド」に寄付されました。

このチャリティコンサートが開催されたきっかけは、2017年5月22日に起きたある事件がきっかけでした。

マンチェスター・アリーナで爆弾テロが発生(2017年5月22日)

2017年5月22日の夜(日本時間:5月23日の午前0時33分頃)、マンチェスターの中心部にある屋内競技場「マンチェスター・アリーナ」でアメリカの歌手アリアナ・グランデのコンサートが大歓声と共に終了しました。

観客はコンサートの余韻に浸りながら会場を後にしようとしていました。その直後、コンサート会場で地鳴りのような爆発音と共に、歓声は一変して悲鳴に変わりました。

この音に驚いた人々は恐怖に包まれ、パニックの中で悲鳴を上げながら外に向かって走り出しました。

自爆テロ

この爆発は自爆テロでした。

テロの標的となったマンチェスター・アリーナは2万人以上が収容でき、この日は超満員で多くの子供たちも来場していました。

マンチェスターで起きた恐怖の事件

事件発生の翌朝、イギリスのメイ首相はロンドンの首相官邸前で声明を読み上げ、マンチェスターで起きた自爆テロ攻撃を強く非難しました。

首相はこの攻撃が「無防備な若者」を標的にした冷酷な行為であると断言し、怒りをあらわにしました。

グレーター・マンチェスター(マンチェスターの都市圏)の警察のイアン・ホプキンス本部長は、「管轄内でこれほど恐ろしい事件が起きたのは初めてだ」と語り、迅速に捜査を進めており、これが単独犯の犯行なのか、テロリストのネットワーク属していたのかを明らかにしようとしていると表明しました。

また、英交通警察の調べで、爆発はアリーナ建物内のロビーで起きたことが判明しました。

マンチェスター・アリーナの近くにあるマンチェスター・ビクトリア駅は、このテロ事件受け閉鎖され列車の運行は休止されました。

BBC News/YouTube
犯人はマンチェスター生まれの兄弟

この悲劇的なテロ攻撃を実行したのは、マンチェスター生まれのリビア系英国人であるアベディ兄弟でした。兄のサルマン・アベディは、自爆テロの実行犯でありこの爆発で自身も死亡しました。

一方、弟のハシェム・アベディは2020年8月20日に55年以上の禁固刑が言い渡されました。

事件の約1か月前、アベディ兄弟はリビアに渡航していました。兄のサルマンはテロの準備を行うために2017年5月18日に英国へ戻りました。

弟のハシェムは事件後もリビアに留まり続けましたが、2019年に英国に送還された後、ロンドンの空港で逮捕されました。

検察によると、ハシェムは爆弾を作るために必要な薬品の発注や、材料運搬の手配など、事件に深く関わっていたことが明らかにされています。

テロ事件の爪痕

このマンチェスターの自爆テロ事件では、最終的に800名以上が負傷し、22名が犠牲となりました。

これは、52人が死亡した2005年7月7日にロンドンで発生した爆弾攻撃に次ぎ、イギリス国内で最悪のものとなりました。

マンチェスターの事件は特に、若いコンサート参加者をターゲットにした点で、国内外に大きな衝撃を与えました。

公共の場での音楽イベントという、平和で楽しいはずの環境が標的となったことで、多くの人々の心に恐怖を植え付けました。

特に、若い世代が多く集まるコンサートという場所での無差別な攻撃は、国際社会に広く憤りと悲しみを引き起こしました。

ABC News/YouTube
アリアナ・グランデの口から語られたこの日の出来事

アリアナ・グランデは、この事件に対して非常に強い感情を抱いており、度重なるインタビューやSNSなどで事件を次のように振り返っています。

「ツアーから帰宅後、急にひどいめまいに襲われ、息ができないような感じがしたんです。その時は、まさに幸せな気分で楽しい状態だったのに、突然そんな状態に陥りました。以前から不安を抱えていた私ですが、身体的な症状が現れることはなかったので、2か月も続いためまいの症状にとても混乱しました」

団結と希望が生まれたマンチェスター

マンチェスター自爆テロの悲劇に直面して、マンチェスターの市民は驚くべき団結と強さを示しました。

この出来事によって、この街の人々はただ被害者として立ち尽くすのではなく、共に立ち上がり、支援し合うことを選びました。

アンディー・バーナム市長は、「愛する人を失った家族の方たちに心から同情する。勇敢な救急機関は尊敬する。この素晴らしい街にとってひどい夜だ」と述べた上で、マンチェスターがこの試練を乗り越える強さを持っていることを強調し、「連中には勝たせない」と力強く宣言しました。

この困難な時に、マンチェスター市民はソーシャルメディアを通じて助け合いの精神を見せつけました。

「#RoomForManchester」というハッシュタグは、帰宅できなくなった人々に部屋を提供するために生まれ、多くの人々がこの呼びかけに応じました。この行動は、マンチェスター市民の温かさと思いやりを示すものでした。

また、ツイッターでは「#MissingInManchester」というハッシュタグが使われ、家族や友人の行方を探す投稿が多数書き込まれました。

フェイスブックでも、利用者が家族や友人に自分の安否を連絡できる機能が提供されました。これらの行動は、社会メディアが災害や緊急時においていかに重要な役割を果たすかを示しています。

団結と立ち上がる意志の象徴として歌われた曲

マンチェスターのテロ事件は、多大な影響を与えた出来事であり、被害者やその家族、そして市民を含むイギリス国民の多くの人々が傷つき、心を痛めました。

しかし、そのような中でも、イギリス国民は団結し、力強く立ち上がっていきました。それを象徴するかのようにマンチェスターでのテロ事件後、追悼会場で自然発生的にある歌が歌われました。

それが「Don’t Look Back In Anger」です。

Guardian News/YouTube
イギリス国歌とも言われる歌「Don’t Look Back In Anger。」

「Don’t Look Back In Anger」は、オアシスの代表曲の一つとして、世界的に人気が高い曲の一つです。

イギリス国内に限らず多くの国で愛されており、「イギリス国歌」と称されることもあります。

この曲は、1990年代のブリットポップという音楽ジャンルの中でも、特に代表的な楽曲の一つとして音楽史に刻まれてい明日。

Oasis/YouTube
「怒りに変えてはいけない」

この曲の歌詞の中で、最後の部分に歌われているフレーズはとても印象的なものになっています。

それは「怒りに変えてはいけない、怒りに変えてはいけないよ、せめて今日だけは(Don’t look back in anger, I heard you say)」というフレーズで、前向きなメッセージを持っており、明るい未来への希望を表しています。

このフレーズは、前半部分で「過去を振り返って怒りに変えてはいけない」というメッセージが込められており、後半部分で「明日からは前を向いて生きよう」という意味が込められています。

この曲の歌詞は、マンチェスターのテロ事件の後、人々に勇気や希望を与える意味で、非常に重要なものとなりました。

追悼集会での「Don’t Look Back in Anger」は、多くの人々に感動を与え、マンチェスター市民の強さと団結を象徴するものとして、世界中で注目を集めました。

音楽を愛する者への攻撃に対して、彼らは音楽を愛する意思を示したたのでした。

この曲を歌っているノエル(OASIS)がこの時のことを振り返る

この曲は、オアシスのギタリストであるノエル・ギャラガー氏がリードボーカルを担当した楽曲であり、1996年に全英シングルチャートで1位を獲得した大ヒット曲です。

ノエル・ギャラガーは事件の直後に出来事について感情的な言葉で以下のように語っています。

「家で1分間の黙祷を観ていたんだけど、そうしたら歌い出したんだ。人生で初めて言葉を失ったと言わざるをえないね。正直、ぶったまげたよ。今でさえなんて言っていいか分からないんだ。あの曲に人々が結集したという事実にね」

BBC/YouTube

「もう一度マンチェスターで歌う!」アリアナの決意

マンチェスター・アリーナでの爆発テロ事件後、アリアナ・グランデは深い悲しみとショックに陥り、一時はベッドから起き上がれない状態でした。

しかし、事件後2、3日後の朝、突然アリアナはベッドから起き上がり、自身の母親に「正直、この先歌えないってことはない。だけどマンチェスターで歌えなきゃ私は二度と歌わない」と言いました。

そして、アリアナはTwitter上で、マンチェスター・アリーナでの爆発テロ事件後、被害者やその家族に向けた長文のメッセージを投稿しました。

その中でアリアナは、「私の心、祈り、追悼の意は、マンチェスター爆発の被害者とその家族とともにあります。私自身、また、ほかの誰であっても、被害者のご家族の皆さまたちが感じている悲痛を代わりに受けることなどできないとはわかっています…。ですが、もし、あなたが私の助けを求めるなら、また、必要とするなら、私の手と心、私のできる限りのすべてをあなた方に差し出すことができます」と、被害者に対する支援を表明しました。

アリアナは事件によって深い傷を負いながらも、マンチェスターでの追悼コンサートを開催することで、犠牲者やその家族、そして市民たちへの支援と希望を示したのです

また、アリアナ自身も、この出来事を乗り越えて再び歌うことで自身の精神的な回復に繋がることになります。

「マンチェスターのために」アリアナ・グランデ主催のチャリティーコンサート

2017年6月4日、アリアナ・グランデがマンチェスターでチャリティコンサート「One Love Manchester(ワン・ラブ・マンチェスター)を行うことを世界に向けて発表しました。

このコンサートには、コールドプレイ、ジャスティン・ビーバー、ケイティ・ペリー、マイリー・サイラス、テイク・ザット、ファレル・ウィリアムス、ワン・ダイレクションのナイル・ホーランなど、多くの人気アーティストが参加を表明。

そして、その収益はすべて「We Love Manchester」基金に寄付されることが発表されました。

この基金は、事件後にマンチェスター市内で発生した事件の被害者やその家族、そして市民たちへの支援を行うために設立されたものです。

BBC Music/YouTube

アリアナ・グランデが訪れた病院

そしてアリアナは、コンサート前にマンチェスターに入り、病院を訪問し、爆発テロ事件で負傷した子どもたちやその家族を激励しました。

アリアナは、病院でベッドにいた子どもたちと抱き合ったり、看護師と記念写真を撮ったりするなど、温かい気持ちで接し、彼らの心を癒やしました。

「One Love Manchester」が届けた、音楽でつながる世界中の愛と絆

2017年6月4日、こうして「One Love Manchester」が開催されました。

このコンサートはマンチェスター自爆テロの悲劇に対する回答として、音楽を通じた絆と愛の力を世界に示しました。

アリアナ・グランデはこのコンサートで、自身の楽曲「One Last Time」を披露しました。彼女のパフォーマンス中には、観客が一体となって歌う大規模なシンガロングが起こり、この瞬間はまさに音楽が人々を結びつけ、愛と絆を深める力を象徴していました。

この感動的なシーンは、テロの影響を受けた人々だけでなく、世界中の人々にも大きな感動を与えました。

BBC Music/YouTube
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BBC Music/YouTube
BBC Music/YouTube
BBC Music/YouTube
事件後の思いを込めた「虹の彼方に」

コンサートの最後、アリアナは「虹の彼方に(原題:Somewhere Over The Rainbow)」を熱唱しました。

この曲は、映画「オズの魔法使い」で知られる名曲であり、アリアナはこの曲を、事件で被害を受けた方々や亡くなった方々への追悼の気持ちを込めて歌ったのです。

途中、アリアナは感極まり、涙で歌えなくなってしまう場面もありましたが、最後まで歌い上げ、集まったファンや参加者たちに感動を与えました。

OfficialGrandeVideos/YouTube

マンチェスターからの愛を込めた「Don’t Look Back In Anger」

コンサートの中で、マンチェスターからアリアナに向けて特別な歌が送られました。

コールドプレイのボーカリストクリス・マーティンは、突然ライブの中にアリアナ・グランデを呼び寄せました。

そしてクリス・マーティンは、グランデに対して、「こんなに強く、素晴らしい君にありがとうと言いたい。君は僕らのためにたくさん歌ってくれた。英国にいる僕らも君のために歌いたい。これは『Don’t Look Back In Anger』という曲だ。僕らから君へ贈る」と語り、感動的なパフォーマンスを行いました。

BBC Music/YouTube
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前作『ユアーズ・トゥルーリー』に続く、“ネクスト・マライア”の呼び声高いアリアナ・グランデの2ndアルバム。世界各国のiTuneチャートを席巻した、イギー・アゼリア客演の先行シングル「プロブレム」ほか、アリアナ旋風を再び巻き起こす一枚。(「CDジャーナル」データベースより)

マネチェスターを救った歌姫アリアナが初の名誉市民に

マンチェスターのテロ事件後、アリアナにはマンチェスターの名誉市民権が与えられました。

これは、アリアナが事件後に示した行動や態度に対する感謝と敬意の表れとして、市議会から贈られたものです。

市議会のリーダーであるリチャード・リースはこのことについて以下のように賞賛しました。

「彼女はこの地を二度と訪れたくないと思っても理解されたことでしょう。彼女は代わりに、アーティスト、パフォーマーとして、マンチェスターに戻りパフォーマンスするまで(ほかでは)パフォーマンスしないと決心した。

そうすることにより、多くの人々を慰め、We Love Manchester緊急基金のために何百万ポンドをも集め、その基金の最初のパトロンになった。よって、アリアナ・グランデを初のマンチェスター名誉市民とすることを提案する」

追悼のアンセム、マンチェスターを包む感動の歌

マンチェスターのテロ事件の直後から、Don’t Look Back In Angerは、市民たちによって自然発生的に合唱され、追悼のアンセムとして注目を集め、以降も特別な場所で歌い継がれています。

TwitCelebGossip/YouTube
Guardian News/YouTube

読者の皆様へ

音楽は、時に言葉では表現できない感情や思いを表現することができます。

マンチェスターのテロ事件後、音楽が人々の心に寄り添い、慰めや勇気を与える存在となったことは、多くの人々にとって希望の光となったのでした。

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あまりの素晴らしさに全曲をシングル化する計画もあったほどの捨て曲なしの2作目。ライヴでは観客の大合唱が発生するほど、覚えやすくて歌いたくなる名曲がズラリ。(「CDジャーナル」データベースより)

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