カリンバは、指で軽く弾くだけで美しいメロディを奏でることができる楽器で、その癒しの音色が注目を集めています。
この小さな楽器は、アフリカの伝統的な楽器であるムビラに起源を持ち、そのシンプルでメランコリックな響きが多くの音楽ファンを魅了しています。
Kalimba
「カリンバ」
カリンバは、アフリカの楽器の一種で、別名「指琴」とも呼ばれます。主に手の平に乗せて弾くことができる小型の打楽器で、鍵盤楽器のような形状をしています。
カリンバは、木製の共鳴箱に、金属製の鍵が張り巡らされた構造をしています。演奏者は、指で鍵を弾くことで音を出します。
鍵の数は、数本から数十本まで様々で、鍵の数が多いほど演奏できる曲の種類が増えます。また、カリンバには大小様々な種類があります。
通称「親指ピアノ」
カリンバは、異なる文化や地域で様々な名称で呼ばれています。英語圏では、”Kalimba”や”Thumb Piano”、”Thumb Harp”、”Mbira”などの名称で知られています。
また、日本語では、”カリンバ”の他にも”指琴”、”親指ピアノ”、”ハンドオルゴール”などの名称でも呼ばれることがあります。
南アフリカメーカのが作った楽器の商品名
「カリンバ」という名称で呼ばれる楽器は、実際には南アフリカの楽器メーカーが商標登録している商品名であり、楽器の分類上は「ラメラフォーン(Lamellophone)」に分類されます。
ラメラフォーンは、複数の金属や木材製のラメラ(細い板状のもの)を、共鳴箱の上に張り付けて作られる楽器群の総称です。
カリンバは、このラメラフォーンの一種であり、アフリカやその他の地域で数多くの類似楽器が存在します。
ラメラフォーンは、様々な構造や大きさがあり、地域によってはイリンバ、チリンバ、マリンバ、ムビラ、サンザ、リケンベなどと呼ばれています。
民族楽器を西洋の音階に置き換えた楽器
そのため、一部のカリンバには、ドレミファの音階が採用されているものがありますが、特に決まった音階があるわけではありません。
また、一般的に「カリンバ」と呼ばれる楽器は、多くが工業製品であり、素材や音色、音程などが標準化されています。
一方で、民族楽器として伝承されてきたカリンバは、地域や演奏者によって形や材料、音階が異なり、その地域や文化に根付いた独自の音楽性を持っています。
カリンバの起源と歴史
カリンバの起源については、はっきりとした定説が存在しませんが、その歴史は非常に古く、アフリカ南部から中部の地域に起源を持つとされています。
実際に、古代エジプトの古文書にもカリンバに似た楽器について言及されているとされています。
特に、カリンバはサン民族と密接に関連しているとされています。サン民族は南部アフリカの狩猟採集民であり、彼らの音楽文化においてカリンバは重要な役割を果たしていました。
カリンバという言葉は、南アフリカのバントゥー語で「小さな音楽」という意味を持ちます。この楽器は、アフリカの先住民族が使用していたものから発展したもので、様々な名前で呼ばれています。
例えば、ショナ語では「ムビラ」、トンガ語では「サンザ」とも呼ばれています。
19世紀には、ヨーロッパの探検家や宣教師たちがアフリカ大陸を訪れ、カリンバの存在がヨーロッパへ伝わりました。
「ヒュー・トレイシー」が初めて世界に向けプレゼン!!
ヒュー・トレイシー(Hugh Tracey)は、イギリス生まれの民族音楽学者であり、アフリカの伝統音楽に関心を持っていました。
彼は1920年代からアフリカ南部を中心に民族音楽の調査を行い、カリンバを含む多くの伝統楽器を研究しました。
彼が特に熱心に取り組んだのが、カリンバの研究であり、アフリカの伝統楽器を西洋音階に合わせて改良しました。この改良により、カリンバは西洋音楽とも相性がよく、より多くの人々に受け入れられる楽器となりました。
ヒュー・トレイシーはカリンバの製造も行い、彼が創設した会社「アフリカン・ミュージカル・インスツルメンツ」は、現在もカリンバの製造や普及活動を行っています。
ヒュー・トレイシーの努力によって、カリンバはアフリカを代表する楽器の一つとして世界に広まりました。
彼の改良したカリンバは、世界中の音楽家や音楽ファンに影響を与え、さまざまなジャンルで使用されるようになりました。
カリンバ – アース・ウィンド&ファイアーの魅力的な楽器
例えば、モーリス・ホワイトがアース・ウィンド&ファイアーでカリンバを取り入れるきっかけとなり、バンドの象徴的なサウンドを生み出しました。
モーリス・ホワイトは1941年12月19日にメンフィスで生まれ、シカゴで育ちました。彼は、名門ソウル・レーベル、Chess Recordsでセッション・ドラマーとして活躍し、数多くの名作に演奏をしています。1966年から1969年の間、ラムゼイ・ルイス・トリオのドラマーとしても活躍しました。
この時期に出会ったカリンバは、その後アース・ウィンド&ファイアーのシグニチャー・サウンドのひとつとなります。モーリス・ホワイトは、この楽器を彼らの楽曲に取り入れることで、エキゾチックで夢想的な音楽世界を創り出しました。
70年代半ばには、「カリンバ・プロダクションズ」という制作屋号を設立し、カリンバの普及にも貢献しました。
カリンバの音色と癒やしの効果、オルゴールとの関連
カリンバは、独自の音色を持ち、オルゴールのような音色で、その音色が心を癒し、癒やしの効果を持つことから、「心の楽器」として親しまれています。このような音色は、カリンバの鍵が共鳴箱に直接取り付けられていることや、鍵の材質、形状が関係しています。
また、オルゴールは、カリンバにヒントを得たとされる説があります。オルゴールは、カリンバと同様に、金属製の細い板(ラメラ)を弾くことで音を出す楽器であり、両者は音色の面で類似点があります。ただし、オルゴールは、カリンバとは異なり、機械式で自動演奏が可能であるため、違いもはっきりしています。
極めれば多彩な演奏が可能!
カリンバは、簡単な演奏技術で美しい音色を奏でることができ、誰でも気軽に演奏できる楽器として、様々な場面で使われるようになりました。
特に、弾き手によって異なる音色が生まれるため、数人で合奏しているかのような複雑な音色が楽しめることも魅力の一つです。
カリンバは、容易な奏法と柔らかく美しい音色が特徴であり、初心者から上級者まで楽しめる楽器です。ビブラートテクニックや音階を覚えることで、様々なジャンルの音楽を演奏することができます。
また、その音色は、親しみやすく郷愁を誘うものであり、アフリカ大陸の文化や歴史を感じさせるものでもあります。
マニアは絶対気になる!アフリカのご当地カリンバ
アフリカには、カリンバと同じような、指で鍵を弾く楽器が様々な地域で演奏されています。これらの楽器は、地方によって構造や大きさが異なり、呼び名も様々です。
代表的なものとして、イリンバ、チリンバ、マリンバ、ムビラ、サンザ、リケンベなどがあります。
これらの楽器は、分散和音をリズミカルに奏で、独奏や弾き語り、時に伴奏や合奏で使われます。特に、マリンバは、西アフリカの民族音楽において重要な役割を担っています。
また、南アフリカやジンバブエなどでは、ムビラが広く演奏されており、アフリカの伝統音楽に欠かせない楽器の一つとされています。
おっきなカリンバ「アレイ・ムビラ」
アレイ・ムビラは、アフリカ・ジンバブエの伝統的な楽器で、親指ピアノとも呼ばれます。
「アレイ」という言葉は、ジンバブエのショナ族の言語で「棚」や「棚状のもの」という意味があります。一方、「ムビラ」は、カリンバと同様に親指ピアノとして知られる楽器のことを指す一般的な名称です。
カリンバと同じく、箱の上に張られた金属板を指で弾いて音を出しますが、アレイ・ムビラはさらに小型で、より複雑な音色を奏でることができます。
アレイ・ムビラは、主にジンバブエの先住民族であるショナ族の文化に根ざした楽器で、その歴史は非常に古く、数千年前から存在していると言われています。
しかし、現在でも日本ではあまり一般的な楽器ではなく、2〜3台しか存在していないというのは事実かもしれません。
ただし、最近ではアフリカ音楽の普及や多様化が進み、アレイ・ムビラを演奏するアーティストも増えてきています。