未曾有のコロナ禍で人気を集めたアーティスト!「夜好性」 ── 初音ミクとめぐるJ-POPとボーカロイドの歴史⑦
YOASOBI・ヨルシカ・ずっと真夜中でいいのに。
夜好性アーティスト
経済的な低迷をもたらした新型コロナウイルスは、音楽アーティストにも多大な影響を及ぼした。ライブは軒並み中止となり、ライブ会場となるクラブやライブハウスなども苦境に立たされ、多くの店舗が閉店という苦渋の決断を下している。既存のアーティスト達が新しいプロモーション形態を模索していた中、若い世代に人気を集めていた新しいアーティストもいた──。
ヨルシカ・ずとまよ・YOASOBI、夜つながりの“ボカロ”音楽ヒットの理由/週刊女性PRIME.2020
「夜好性」
今、SNSを中心に「夜好性」というネットミームが徐々に広まりつつある。ヨルシカ、YOASOBI、ずっと真夜中でいいのに。――“夜”という言葉を名前に含む3組のアーティストのファンが自らの呼称として使いはじめた言葉だ。
ヨルシカ、YOASOBI、ずっと真夜中でいいのに。~ネットカルチャー発の次世代型アーティストとは/Billboard JAPAN
描く内容や聞かれ方からはコロナ下の音楽消費の変化が浮かび上がる。
「夜好性」音楽 不安を文学的に歌う/日本経済新聞.2021
【文化時評】「夜好性音楽が誘う解放区」。コロナ禍で突然悪者にされた夜の街。会社や学校、家からも解放される時間は消え、心はよどむ。そんな気持ちに寄り添うのが、「ヨルシカ」「YOASOBI」「ずっと真夜中でいいのに。」といった「夜好性」音楽なのかもしれません。29日付朝刊より。#nikkeithestyle pic.twitter.com/n9pPtZSBuE
— NIKKEI The STYLE (@NIKKEITheSTYLE) August 29, 2021
【26日のMJ】立秋を過ぎ夜が長くなる今、ユニット名に「夜」を包含した音楽グループが話題を呼んでいます。ヨルシカ、YOASOBI、ずっと真夜中でいいのに。――小説やアニメなど多メディアを活用して独自の世界観を構築し、じっくり聴けるとして楽しむ「夜好性」の人々が増殖中です。 pic.twitter.com/kv8ylur7fM
— 日経MJ (@nikkeimj) August 25, 2020
「YOASOBI」「ヨルシカ」「ずっと真夜中でいいのに。」
物語を包含した音楽を展開する「ヨルシカ」、リスナーの感情とスレスレの共感性をゆく「ずっと真夜中でいいのに。」、Web小説から音楽を創りあげていく「YOASOBI」。
ヨルシカ、ずとまよ、YOASOBI「夜」の音楽が現代人を救済する “夜好性”が増える必然/ KAI-YOU.net.2020
これら夜好性リスナーに支持されるアーティストの台頭により、現代人ないしは多感な若者の耳はより、切迫した感情を歌う楽曲に傾けられるようになった。
ヨルシカ、ずとまよ、YOASOBI「夜」の音楽が現代人を救済する “夜好性”が増える必然/ KAI-YOU.net.2020
昼間は多くの人が学校や部活動、会社など各々の所属する場所に位置し、与えられた役割を担う。しかし、個性が尊重される環境になく、自身にクリエイティビティが求められていない場合、そこに個人の感情や思想は必要とされない。社会性という名のもとに意識が統一された場所で、私たちは生活している。
ヨルシカ、ずとまよ、YOASOBI「夜」の音楽が現代人を救済する “夜好性”が増える必然/ KAI-YOU.net.2020
ところが、夜になると抑圧されていた個人が解放され、自宅の部屋で好きな音楽を聴くことができる。そこで、彼らの楽曲が選ばれるのだ。
ヨルシカ、ずとまよ、YOASOBI「夜」の音楽が現代人を救済する “夜好性”が増える必然/ KAI-YOU.net.2020
3組のアーティストの人気はチャートランキングにも表れています。YOASOBIの「夜に駆ける」は、2020年6月15日付のBillboard JAPAN総合ソング・チャート“JAPAN HOT 100”で3週連続の1位を獲得。また、ヨルシカ「花に亡霊」は、2020年7月13日付のBillboard JAPANアニメチャート“JAPAN Hot Animation”で2位にランクイン。ずっと真夜中でいいのに。の最新アルバム「ぐされ」は、2021年2月22日付のBillboard JAPAN週間“Top Albums Sales”で2位を獲得しています。
ヨルシカ・YOASOBIなど「夜好性」アーティストのヒットの要因を検索データから分析/manamina.2021
コロナ渦で新たな楽曲のヒットパターンが誕生!?
2020年は外出自粛により、自宅で過ごす時間が増えた。そのこともあって共感性が高い曲をライフスタイルとともにTikTokなどのSNSに投稿するユーザーが増えた。その結果、海外では2021年3月にグラミー賞を受賞したDua Lipaの「Don’t Start Now」が自粛期間中のアンセム(応援歌)として世界中で聴かれるという現象も起きた。
TikTokでバズる曲の仕掛け人──米津玄師やYOASOBIも卒業生の「ボカロP」とは何者か?/DIAMOND SIGNAL.2021
SNSのショート動画で求められた楽曲
しかし、昨年はそのような状況から、アーティストの楽曲に共感したユーザーが広げる、新しいヒットのパターンが見られるようになった。加えて、15~30秒という長さの動画を投稿するTikTokや類似のショート動画SNSでは、その短時間で伝わる楽曲のキャッチーさと聴き手の印象に残る歌詞が求められる。
TikTokでバズる曲の仕掛け人──米津玄師やYOASOBIも卒業生の「ボカロP」とは何者か?/DIAMOND SIGNAL.2021
若者を中心に人気を集める「TikTok」は、音楽に合わせてユーザーがアクションした、約15秒の動画をシェアできるコミュニティアプリ。多彩なフィルターや映像効果で簡単に編集できるのも人気の理由です。
【2022年】TikTokで流行の人気曲59選 「新時代」「おとせサンダー」もあるよ/KAI-YOU.net.2022
ユニバーサルシグマ・メディアストラテジー本部、USM洋楽マーケティングストラテジー部 部長の久田耕平氏は、「プロモーションを打っていくには、リスナーの動向をしっかりと把握する必要があります。特にZ世代が今どこにいるのかというのは注視していますね。SNSで言えば、Z世代の可処分時間消費の中心は今やTikTokです」と語る。
ユニバーサルミュージック SNS研究しレコード会社の強み生かす/日経クロストレンド.2022
そのためにTikTokの特性を研究し、ヒットしている曲を分析。それらの情報をアーティスト側に常に共有できる体制を取っているそうだ。「TikTokは、頭の3秒を聴いてジャッジされると言われているので、本当に0.5秒や1秒ぐらいで無意識にいいなと思ってもらえるメロディーや歌詞が大切です。また、日本はカラオケ文化が強いので、カラオケで歌いたくなるような王道のメロディーかつ、瞬時にリスナーを引きつけられる歌詞を持つ曲は、TikTokでもやはり強いと分析しています」(久田氏、以下同)。
ユニバーサルミュージック SNS研究しレコード会社の強み生かす/日経クロストレンド.2022
親和性が高かったのが“夜好性”やボカロ曲
夜好性アーティストの歌詞を例に見れば、彼らの歌詞は文学的であったり、独自の世界観を表現した意味深なものが多いことから、音だけでなく、歌詞の面でも中毒性が高い。特に日本人はメロディにしても歌詞にしてもリリカルでエモいものに惹かれる傾向があるが、こういった曲は短い時間で印象に残りやすいため、TikTokとの親和性も高い。
このこともSNS上で夜好性アーティストやボカロ系曲が多くのリスナーに受け入れられた理由だと考えられる。
TikTokでバズる曲の仕掛け人──米津玄師やYOASOBIも卒業生の「ボカロP」とは何者か?/DIAMOND SIGNAL.2021
“夜行性”登場の背景にボカロカルチャー
ただ、これらのアーティストが登場した背景に共通した文脈としてボーカロイドのカルチャーがあるのは間違いない。ボカロ文化が花開いた00年代以降、動画投稿サイトに曲を発表することで自らの作品世界を築き上げ、“歌い手”や“絵師”など他ジャンルのクリエイターとフラットに交流できる幾多のクリエイターが登場した。米津玄師を筆頭に、そうした土壌から生まれたアーティストがJ-POPのメインストリームでも活躍するようになったのが2010年代のこと。そして今は、音楽性、歌詞、活動のあり方など様々なポイントで“ボカロ以降”の感性を持ったアーティストたちが続々と登場し、日本独自の音楽カルチャーが花開いているのである。
ヨルシカ、YOASOBI、ずっと真夜中でいいのに。~ネットカルチャー発の次世代型アーティストとは/Billboard JAPAN
「歌い手」
「歌い手」とは、主に既存の曲に自分の歌を載せた動画を投稿する人たちのこと。活動場所はニコニコ動画やYouTubeなどの動画サイトが中心で、最近では短めの動画をTwitterに投稿する人も増えています。またこれらの活動を指す「歌ってみた」という言葉は、動画のカテゴリやタグ付けなどにも使われます。
この10年間で“歌い手”という存在はどう変わったのか 歌い手「そらる」に聞く“歌ってみた”の可能性/ねとらぼ.2019
元々は歌い手のほとんどが、個人で活動するアマチュアシンガーでした。しかし今やメジャーデビューを果たす人も珍しくなくなり、武道館や幕張メッセ、埼玉スーパーアリーナでワンマンライブをする人まで出てきています。ボカロ(=ボーカロイド)やSNS、YouTuberなどさまざまなムーブメントを推進力にしながら拡大を続け、もはやプロの音楽業界も無視できない存在となった歌い手。NHKやYahoo!ニュース 特集でも取り上げられ、その認知度は急激に高まっています。
この10年間で“歌い手”という存在はどう変わったのか 歌い手「そらる」に聞く“歌ってみた”の可能性/ねとらぼ.2019
「絵師」
絵師とは本来、浮世絵の下絵である原画を描く職業のことを指していましたが、インターネットの普及にともない、現在は日本のアニメやゲーム風のイラストを描くイラストレーターや画家を指す言葉としても使われています。ライトノベルの表紙や挿絵、ゲームのビジュアルキャラクター、音楽のミュージックビデオに使われるアニメーションの原画など、絵師はその活動範囲を広げており、そのイラストによって小説・ゲーム・楽曲の売り上げをも左右することがあります。明確な定義は存在しませんが、イラストを描く職業である「イラストレーター」の中で、アニメや漫画・ゲーム風のキャラクターを描く人を特に「絵師」と呼ぶことが多く、ネット上で活躍している人が多いのも特徴です。
絵師/札幌デザイン&テクノロジー専門学校
フィーチャーされる大きなきっかけは「初音ミク」
今、多くの分野で活躍する絵師の存在。世界で注目を浴びる理由は? 絵師の未来は? 注目絵師100人がイラストを展示する「絵師100人展」のプロデューサー・石坂太一さんに伺いました。
初音ミクがブームの火付け役に!? 識者が語る“絵師”の変遷と未来/ananweb.2022
「もともと絵師とは浮世絵の下絵を描く専門的な職人に対して使われていた呼称ですが、25年ぐらい前からファンの間で自然発生的に使われ始めました。当時は美少女ゲーム全盛期で、そのゲームなどでイラストを描く人たちのことを敬意を込めて“絵師”と、2ちゃんねるなどで呼んだのが始まりだと思います」
初音ミクがブームの火付け役に!? 識者が語る“絵師”の変遷と未来/ananweb.2022
絵師がフィーチャーされる大きなきっかけとして「初音ミク」の存在を挙げる。
「美少女ゲームは一部のファンの人たちが楽しむ狭い世界だったと思いますが、初音ミクが登場したことで、イラストを描く文化が広く周知されていった。さらに、キズナアイなどのVチューバーの登場も認知度を高めた要因だと思います」
初音ミクがブームの火付け役に!? 識者が語る“絵師”の変遷と未来/ananweb.2022
ボカロシーンは顔出しなし!?匿名性アーティスト
また、ボカロシーンの影響は、アニメーションなどの映像と音楽を組み合わせて作品の世界観を構築するところにも表れている。ヨルシカのMVでは登場キャラクターの顔が隠されており、作者の感情や状況などを取り除いているような演出が見られる
TikTokでバズる曲の仕掛け人──米津玄師やYOASOBIも卒業生の「ボカロP」とは何者か?/DIAMOND SIGNAL.2021
このような特徴は、作曲者よりも「ボーカロイドキャラクターの曲」という“受け取られ方”に重きが置かれるボカロシーンに通じる部分だ。
TikTokでバズる曲の仕掛け人──米津玄師やYOASOBIも卒業生の「ボカロP」とは何者か?/DIAMOND SIGNAL.2021
ネット発のアーティストカルチャーが生んだ“匿名性”
「ネット発のアーティスト」は、ボーカロイド(ボカロ)による楽曲制作が多く、制作者であるボカロPはニックネームや下の名前の愛称などで活動するのが主流です。例えばクラシック音楽のように、そもそも本名フルネームで活動する人が少ないという文化が前提にあります。
うっせぇわ、きゅんです…SNS発・匿名アーティストが人気のワケ/All About.2021
また、ネット上の創作活動はアニメーションとの親和性が高いということも、顔出しなしの文化を推進した理由に挙げられそうです。Adoの『うっせぇわ』ではクレジットに「Music & Lyrics & Arrangement」に加えて「Movie」「Mix」「Image Director」が連なります。ビジュアルもセットにした楽曲制作と考えれば、歌い手が素顔を晒す必然性はなくなります。
うっせぇわ、きゅんです…SNS発・匿名アーティストが人気のワケ/All About.2021
そもそも2000年代以降に生まれた世代は、物心のつく頃にはすでにSNSが存在し、メディアリテラシー教育を学校で叩き込まれています。本名や所属先をTwitterのプロフィールに記載することを禁止していたり、Instagramにクラスの集合写真を掲載する際はモザイクを必須にしたり、といった作法を小中学生のうちから当たり前に行っているのです。
うっせぇわ、きゅんです…SNS発・匿名アーティストが人気のワケ/All About.2021
かつて「本名・素顔非公開」というと、そこに匿名性から来る神秘性、ミステリアスなイメージが取り巻いていましたが、2020年代の本名非公開アーティストは、むしろ本名ではないことによる親近感が生まれているといえます。YouTubeのコメント欄を見ると、大半の人のアカウント名がニックネーム(ハンドルネーム)になっており、その中の一人としてアーティストも同じようなニックネームを名乗っているのです。
うっせぇわ、きゅんです…SNS発・匿名アーティストが人気のワケ/All About.2021
“夜行性”のルーツはニコニコ動画!?
(前略)ここ最近、ボーカロイドカルチャーの広がりに大きく寄与しているのがTikTokだ。近年ではTikTokでのバズをきっかけにリスナーを獲得するボカロ曲も少なくない。
おおしましゅん×Chinozoが語り合う“TikTokとボカロ”が生んだ課題と可能性 「本家もちゃんと再生して、愛して」/Real Sound.2022
TikTokとニコニコ動画との類似性
顔出しをしないというのは、TikTok全体というよりは日本特有の文化だが、こうしたプラットフォームの特徴は、とあるプラットフォームにとてもよく似ている。
TikTokとニコニコ動画の繁栄に類似点? 二次創作文化やボカロP、アニソンとの親和性から考察/Real Sound.2022
そう、ニコニコ動画だ。
TikTokとニコニコ動画の繁栄に類似点? 二次創作文化やボカロP、アニソンとの親和性から考察/Real Sound.2022
いまだにTikTokを「リア充向けアプリ」と見ている人も多いが、実はそうではない。TikTokはむしろ、オタクに優しい、ニコニコ動画的なプラットフォームなのだ。
TikTokとニコニコ動画の繁栄に類似点? 二次創作文化やボカロP、アニソンとの親和性から考察/Real Sound.2022
ニコニコ動画が音楽業界に恩恵をもたらした
ニコニコ動画が音楽業界にもたらした恩恵はとても大きく、素人がカラオケ動画を投稿する「歌ってみた」ブームからはDAOKOやたなか(元ぼくのりりっくのぼうよみ)などの歌手を生み出した。また、ボカロの登場で作曲に挑戦する投稿者も増え、紅白にも出場した米津玄師など新世代の作曲家やシンガーも生まれている。この3組のユニットもその流れを継いでいるといっても過言ではない。
ヨルシカ・ずとまよ・YOASOBI、夜つながりの“ボカロ”音楽ヒットの理由/週刊女性PRIME.2020
今や「夜好性」は音楽シーンの潮流の1つ!
最初はファン同士が繋がるためのハッシュタグとして用いられていたこの「夜好性」というワードだが、最近ではテレビ番組で取り上げられるなど、メディアの注目も上昇。この3組だけでなく「ネットカルチャー発の次世代型アーティスト」が次々とブレイクしている今の日本の音楽シーンの潮流を示す言葉として話題を呼びつつある。
ヨルシカ、YOASOBI、ずっと真夜中でいいのに。~ネットカルチャー発の次世代型アーティストとは/Billboard JAPAN
「YOASOBI」活動の初期は顔出しなし!?
YOASOBIのサウンドの特徴は、ジャズやフュージョン寄りの鍵盤サウンドが織りなす疾走感あるビートチューンが解き放つ高揚感。ヨルシカやずっと真夜中でいいのに。から連なるボーカロイドを使用しない“進化系ボカロ文化圏サウンド”の系譜にあり、サビで弾けるエモーショナルさが魅力的だ。また、ikuraの透明感と芯の強さを持つ歌声もポイントに。楽曲と見事にマッチし、切ない世界観や登場人物の狂おしい感情を表現したボーカルはYOASOBIの魅力を形作る要素になっている。
“小説+音楽”のクリエイターユニット YOASOBI、第2弾楽曲「あの夢をなぞって」も好調 バイラルチャート躍進の理由を探る/Real Sound.2020
AyaseがボカロPとしてアップしていた楽曲「ラストリゾート」がすでに評判になっていたこともあり、「夜に駆ける」はYouTubeで公開後わずか1カ月で100万回再生を突破。2020年1月にはSpotifyの「バイラルトップ50(日本)」で1位をマークします。そして春先からTikTokでカバー動画やダンス動画など、さまざまな形でアップされ話題になっていきました。折しも新型コロナウイルスの影響で外出自粛が求められ、おうち時間を充実させる方法として動画の需要が高まっていた頃でした。そんな中、YouTubeの人気企画「THE FIRST TAKE」にてikuraがオリジナルアレンジで「夜に駆ける」を歌う動画が5月中旬に公開され、人気に火が付きます。
まだ間に合う!YOASOBI入門 “小説を音楽にするユニット”ブレイクの軌跡/特集記事一覧 | auスマートパスプレミアム.2021
当初「Ayase」は顔出しなしで活動していた
AyaseはYOASOBIを結成する以前のボカロP時代には顔出しをせずに音楽活動を行っていました(後略)
YOASOBIとヨルシカ – もう迷わない! それぞれの特徴や魅力、代表曲を徹底解説!/Cal-cha.2022
そんなAyaseさんですが、2020年5月に放送された朝の情報番組『とくダネ!』でメディア初顔出しとなり、大きな反響を呼びました。
Ayase(ボカロp)の素顔がブサイク?バンド時代の画像は!たぬきで炎上?/TheTopics.2021
顔出しをしないネット発のアーティストが多い中、2人は積極的にメディアに出演。「とくダネ!」「めざましテレビ」「あさイチ」「ZIP!」「スッキリ」など、実に多くの情報番組にて特集が組まれました。またSNSを使って自分たちのメッセージを積極的に発信し、応援してくれるファンを増やしていったこともブレイクする大きなきっかけとなりました。
まだ間に合う!YOASOBI入門 “小説を音楽にするユニット”ブレイクの軌跡/特集記事一覧 | auスマートパスプレミアム.2021
とくダネ!見てくれたでしょうか!
— Ayase (@Ayase_0404) May 25, 2020
完全に初の顔出しだったので個人的に超緊張してました…
昔から何度も見てきたニュース番組、
小倉さんを始めスタジオの皆さんにもがっつり触れていただいて、感動した…!
これからもYOASOBIを、
そしてAyaseとikuraを、
どうぞよろしくお願いします!!#YOASOBI pic.twitter.com/ASmYzJUAdN
「ヨルシカ」顔出しなし!匿名で活動!!
3組の中で、表立った活動歴が一番古いのがヨルシカ。2017年にボカロPとして活動していたn-bunaがsuisとともに結成した。
ヨルシカ、YOASOBI、ずとまよ…10代がハマる「ネット発」ユニットの共通点/現代ビジネス | 講談社.2020
ユニット名はファーストミニアルバム『夏草が邪魔をする』に収録されている「雲と幽霊」の歌詞の一節〈夜しかもう眠れずに〉から取られている。
ヨルシカ、YOASOBI、ずとまよ…10代がハマる「ネット発」ユニットの共通点/現代ビジネス | 講談社.2020
バンド!ではない?
n-buna(ナブナ)がコンポーザーを、suis(スイ)がボーカリストを務める2人組のバンドとして紹介されることもありますが、n-buna曰く、「僕のしたい“人間的な表現”を、楽器やボーカルで形にしてもらったのがヨルシカだと思います」と語っており、一般的なロックバンドとは一線を画した存在と言えます。
ヨルシカはロックバンドとして活動している|n-buna元々ボカロPとして活躍していた!/斜め上からこんにちは
正規のメンバーはn-bunaとsuisの2人だけであるため、ユニットと呼ぶのが正解のようです。楽曲のレコーディングやライブには、サポートメンバーとして下鶴光康(gt.)、キタニタツヤ(ba.)、Masack(dr.)が参加しています。
ヨルシカが描く、淡くほろ苦い世界観。僕らの青春はこんな色だった/MEETIA.2019
n-bunaとsuisの2人はヨルシカのスタートをこう振り返る。
「昔から、映画や小説のような一つの作品が作りたかったんです。コンセプトをしっかり固めたうえで、その作品の中に音楽というものがあって、それをパッケージして世に出すということがしたかったのが、ヨルシカの始まりですね。それを人間的なヴォーカルを使って表現したくて、suisさんという人と出会って組んだ感じです」(n-buna)。
「ヨルシカの前に、n-bunaくんのボーカロイド曲を歌うライヴのゲスト・ヴォーカルをして、そこで見つけてもらったんです。もともとn-bunaくんのボーカロイド曲のファンで、彼の描く歌詞や世界がすごく好きだったので、最初に聞いたときには嘘みたいな話だと思ったんですけれど。〈人生っておもしろいな〉って」(suis)。
ヨルシカ『エルマ』時代の旗手から早くも届いた次なる物語/Mikiki.2019
ボカロP「n-buna」
2010年代後半を代表するボカロPとして、インターネット上を中心に絶大な人気を誇るn-buna(ナブナ)。
n-buna(ナブナ)のバンドプロジェクト”ヨルシカ”/LiveConG
元々は「ボカロP」としてインターネット上を中心に人気を集めていた彼ですが、バンドの大ヒットをきっかけに、これまでボカロ音楽を聴かなかった層からも広く知られることになりました。
「ヨルシカ」n-buna(ナブナ)のおすすめボカロ曲 まとめ/LiveConG
ヨルシカが結成される前、コンポーザーのn-bunaは、「夜明けと蛍」、「ウミユリ海底譚」を代表曲に持つボカロPとして異彩を放っていた。ボカロシーンで、一般的に流行しやすい楽曲が、音数を増やした曲であるのに対して、ヨルシカの音楽は、それとは異なる。ギターロックを主軸としながらも、空白のフレーズが心地いいエレクトロな音像。国内に留まることなく、海外のトレンドを汲んだメロディーの楽曲。ボカロシーンからJ-POPシーンまでのリスナーを幅広く獲得してきたのは、n-bunaの芸術的なセンスによるものが大きいが、ヨルシカの作品は、小説のような奥深さがあることから、評価が高いのも事実だ。
ヨルシカ、ヒットの理由を探る アルバム『盗作』リリース記念特集/Billboard JAPAN
顔出しなし!匿名で活動!!
SNSから生まれた次世代アーティストであるヨルシカは、YOASOBI、ずっと真夜中でいいのに。らと共に、そのネーミングから「夜好性」というくくりで注目されてきた。そのなかでいえば、YOASOBIはテレビでのプロモーションなどを積極的に行っているが、ヨルシカについては「作者が作品より前に出ないようにしたい」というn-bunaのポリシーから、一切素顔やプロフィールを明かしていない。
ヨルシカ・suisが明かす、顔出しをしない理由。作品に息を吹きこんで感じた“生きている楽しさ”/MOVIE WALKER PRESS.2021
suis自身は「表に出ないほうがいいというのは、相方であるn-bunaくんの方針ですが、私も同じ気持ちです。私は世間様に顔がバレるのが恐ろしいというか、シー・モンスターと同じ気持ちです。ルカはすごく勇敢でしたが、私はやっぱり人間が怖い。n-bunaくんは『純粋に音楽を聴いてほしい』という崇高な気持ちがあってそうしていますが、私の場合は感性も一般人だし、顔が知れたらなにをされるかわからないという恐怖があるので、絶対に顔を出したくないんです」と心情を吐露する。
ヨルシカ・suisが明かす、顔出しをしない理由。作品に息を吹きこんで感じた“生きている楽しさ”/MOVIE WALKER PRESS.2021
顔出しをしないヨルシカにとって、世界観を伝える重要なコミュニケーションツールであるMVなどの映像については「そこは私が全然携わっていない部分で、n-bunaくんと映像作家さんが創り上げてくれた世界観です。ヨルシカの世界はn-bunaくんが作っているもので、私は歌で色を足して補完する役割だから、完成した映像を見て、いつも『すごい!』と思ってしまいます」と、全体をプロデュースするn-bunaをリスペクトする。
ヨルシカ・suisが明かす、顔出しをしない理由。作品に息を吹きこんで感じた“生きている楽しさ”/MOVIE WALKER PRESS.2021
「ヨルシカ」と「YOASOBI」との共通点は女性ボーカル!
「YOASOBI」と「ヨルシカ」はどちらも女性がボーカルを担当しているという共通点があります。
YOASOBIとヨルシカ – もう迷わない! それぞれの特徴や魅力、代表曲を徹底解説!/Cal-cha.2022
YOASOBIのボーカルを務めるikuraこと幾多りらは、ユニットを結成する以前はアコースティックセッションユニット「ぷらそにか」に所属するシンガーソングライターとして活動していました。
YOASOBIとヨルシカ – もう迷わない! それぞれの特徴や魅力、代表曲を徹底解説!/Cal-cha.2022
歌声以外は謎に包まれた女性シンガー
一方、ヨルシカのボーカルを務めるsuis(スイ)は、ikuraとは対照的に過去の経歴や素性についてはほとんど公表されておらず、歌声以外は謎に包まれた女性シンガーです。
YOASOBIとヨルシカ – もう迷わない! それぞれの特徴や魅力、代表曲を徹底解説!/Cal-cha.2022
「ずっと真夜中でいいのに。」顔出しなし!匿名で活動!!
ボーカル、作詞作曲を担当するACAねをフロントパーソンとしながら、流動的なバンドメンバー構成でさまざまな世界観を作り上げていく特定の形を持たない音楽ユニット、ずっと真夜中でいいのに。通称“ずとまよ”。
音楽ずっと真夜中でいいのに。 ZUTOMAYO FACTORY「鷹は飢えても踊り忘れず」副音声版/WOWOWオンライン
ずっと真夜中でいいのに。(通称ずとまよ)が初めてYoutubeで映像を公開したのは2018年6月。アニメーション作家/イラストレーターのWabokuが手掛けた「秒針を噛む」のMVは、一般ユーザーが楽曲をカバーした「カバー動画」や、やはりファンがMVなどをもとにしたイラストを描いた「ファンアート」を介して一気に拡散され、約一週間で無名の新人のMVとしては異例の20万再生を記録(後略)
ヨルシカ、YOASOBI、ずとまよ…10代がハマる「ネット発」ユニットの共通点/現代ビジネス | 講談社.2020
ユーザーが楽曲のなかに物語を読み込みながら二次創作に参加しつつ楽曲を拡散していく過程は、ヨルシカのヒットの経緯と似ている。
ヨルシカ、YOASOBI、ずとまよ…10代がハマる「ネット発」ユニットの共通点/現代ビジネス | 講談社.2020
最近では映画『約束のネバーランド』主題歌の「正しくなれない」や、同じく映画の『さんかく窓の外側は夜』主題歌の「暗く黒く」を手がけたことも話題を呼んでいます。
ヨルシカ・YOASOBIなど「夜好性」アーティストのヒットの要因を検索データから分析/Workship
顔出しなし!匿名的にアーティスト活動!!
そこから3年弱。YouTubeの総再生回数が4億に達し(6月時点)、時代を代表するアーティストとなった今でも彼女のメディア露出はごくわずかで、その全貌を現すこともない。
「ずっと真夜中でいいのに。」のACAねにインタビュー。デジタルネイティブな神聖の正体を探る。/VOGUE JAPAN
2021年に開催された音楽フェス「COUNTDOWN JAPAN 21/22」に出演するも顔は見えずその素顔は謎に包まれたまま…。
Z世代が好きな顔出ししないアーティストTOP3、3位Eve、2位ずっと真夜中でいいのに。、1位は?
メンバーはボーカル作詞作曲を担うACAね以外には素性が明らかにされていない。「秒針を噛む」の編曲はボカロPのぬゆりが担当しており、他に100回嘔吐や煮ル果実といったボカロPが編曲を担当する楽曲もある。村山☆潤や久保田真悟、Kenichiro Nishiharaといったアーティストも参加しており、ACAねがプロデューサー的な役割を担い、様々なクリエイターと関わりを持つ流動性の高いプロジェクトだと言えるだろう。こうした匿名的で正体が掴みにくい面も、ヨルシカとの共通点だ。
ヨルシカ、YOASOBI、ずとまよ…10代がハマる「ネット発」ユニットの共通点/現代ビジネス | 講談社.2020
知りたい!と思わせる効果
プロモーションも斬新だ。情報で溢れ返る時代に、むしろ情報を出しすぎず探させるという強気の宣伝戦略。「知りたい」という原動力は、宣伝においては最も強い感情だ。
ずっと真夜中でいいのに。はなぜこんなにも我々を魅了するのか? 『少年ジャンプ』編集部・高野健が独自の視点で徹底解説/Real Sound.2021
ハッシュタグから繋がる創作活動!
最新曲「ばかじゃないのに」では、SNS上のハッシュタグ「#ずとまよファンアート」で見つけたスイス在住のベトナム人イラストレーター・TV♡CHANY氏(@tvchany_)を起用し、レトロポップで彼らには珍しい「LOVE」全面のアニメMVを展開していた。目のつけどころがいいし、才能が才能を呼んでいる美しい姿だった。
ずっと真夜中でいいのに。はなぜこんなにも我々を魅了するのか? 『少年ジャンプ』編集部・高野健が独自の視点で徹底解説/Real Sound.2021
匿名性はMVでも!?“夜行性”アーティストボカロシーンの系譜
作者の存在を強調させない楽曲作りに意識的である様子は、動画サイトに投稿されるミュージックビデオ(MV)からも見いだすことができます。
ずっと真夜中でいいのに。の楽曲MVはほとんどがアニメ調のもの。キャラクターがときどきリップシンク(歌詞に合わせて口を動かす動作)をするなど、楽曲とのリンクが随所に散りばめられているのが見る者を引き込みますが、映像はいささか抽象的で完全に歌詞や映像の説明がなされるわけではありません。
年間チャートでも存在感 「ボカロ系ユニット」を何度も聴きたくなるワケ/URBAN LIFE METRO.2020
「ヨルシカ」との類似性
一方、ヨルシカのMVは実写のものも少なくないですが、MVに出てくる人物の顔が映されない点は、あえて楽曲の説明を避けているように見えます。
反対に、同じくヨルシカの『盗作』は動画の概要欄やMVの内容含めて物語としての「盗作」を作り上げており、CDの初回盤には「盗作」の小説が付属します。どちらにせよ、徹底的に作者の感情や状況を排除していると捉えてよいでしょう。
この特徴は、ボーカロイド音楽の特徴を引き継いでいると言えます。
年間チャートでも存在感 「ボカロ系ユニット」を何度も聴きたくなるワケ/URBAN LIFE METRO.2020
ボカロシーンの仕組みを引き継ぐ
ボーカロイドを利用した楽曲は、初音ミクなどの人間ではないキャラクターが歌唱しています。初音ミク、鏡音リンなどのキャラクターが人気なこともあって、作者が誰であれ第一に「ボーカロイドキャラクターの曲」という受け取られ方を促進しており、作曲者が誰かは二の次です。
この仕組みを引き継いでいるのがやヨルシカ、ずっと真夜中でいいのに。なのです。
年間チャートでも存在感 「ボカロ系ユニット」を何度も聴きたくなるワケ/URBAN LIFE METRO.2020
夜好性アーティストの活躍が「Ado」誕生に繋がる!?
2020年、コロナ禍のステイホームの影響で、インターネットに触れる機会が圧倒的に増加した。音楽シーンにおいても、YouTubeやTikTokをきっかけに、YOASOBIやヨルシカなど、今までインターネット上で活躍していたボカロPの楽曲がヒット。 “歌ってみた”や“踊ってみた”といった、音楽を使って二次創作動画を作り出すUGC(ユーザー・ジェネレイテッド・コンテンツ)の増加も後押しし、2019年以前のヒットチャートとは大きく様相を変えた1年となった。その結果、ニコニコ動画やYouTubeなどで「歌ってみた」動画を投稿しているボーカリストを指す「歌い手」の存在も大きくなっている。
<コラム>「歌い手」「ボカロP」「絵師」が鍵──yamaやAdoから考察する新たな音楽シーン/Billboard JAPAN
歌い手「Ado」
「うっせぇわ」でメジャーデビューを果たしたAdo(アド)。デビュー前は歌い手として活動しており、現役女子高生という肩書からも大きく注目されました。
Ado(アド)-「うっせぇわ」で話題の女子高生シンガー/Cal-cha.2022
「うっせぇわ」の作詞・作曲を手がけたsyudouは、2018年頃からボカロPとして人気を得ており、その歌詞はこれまでも毒を感じる鋭いものであった。そのような作風でAdoとコラボレーションすることによって、よりリアリティを帯びた説得力を感じる作品が完成したのだろう。ヨルシカ、ずっと真夜中でいいのに。、YOASOBI以前は、女性ボーカル自身の表現の優先度は高くなく、あくまでも歌詞の内容をフラットに伝えるものが多かった。対してAdoの場合、歌い手としてのキャリアがあることも関係してか、がなりなどを効果的に使用し、歌詞の存在感を際立たせている。その点でYOASOBIの次の世代のネット発シンガーと言うことができるだろう。
Ado「うっせぇわ」ヒットは必然だった? ボカロシーン流行の変遷を整理/Real Sound.2021