新型コロナウイルスの影響で経済的な苦境に立たされた音楽アーティストたち。しかし、その中から新たな才能が生まれ、彼らの音楽が注目を集まりました。
特に、SNS上で話題となっている「夜好性」というネットミームに注目が集まっています。夜に感情を解放し、音楽を楽しむ人々に支持されるヨルシカ、YOASOBI、ずっと真夜中でいいのに。の音楽を紹介します。
物語を音楽に変えるアーティスト「YOASOBI」 ── 初音ミクとめぐるJ-POPとボーカロイドの歴史⑥
YOASOBI・ヨルシカ・ずっと真夜中でいいのに。
夜好性アーティスト
新型コロナウイルスの経済的な低迷が音楽アーティストにも大きな影響を与えた中、新しいアーティストがその苦境を乗り越え、新たなプロモーション方法を模索して成功を収めることができました。
「夜好性」
「夜好性」というネットミームは、SNSを中心に広がりを見せており、ヨルシカ、YOASOBI、ずっと真夜中でいいのに。といった「夜」を名前に含む3組のアーティストが関連しています。
彼らの音楽や歌詞は、多くのリスナーに共感を呼び、特に新型コロナウイルスの影響下で音楽消費が変化している現代において注目されました。
コロナ禍での音楽消費の変化は以下のようなものが考えられます。
- 内省的な歌詞やテーマへの関心の高まり: 新型コロナウイルスの影響で、人々は自宅で過ごす時間が増え、内省的な歌詞やテーマを含む音楽に関心が高まっています。「夜好性」のアーティストたちも、人間の心情や感情、悩みを描いた歌詞が特徴であり、リスナーが共感できる要素が多く含まれています。
- オンラインやSNSでの音楽発信: ライブ活動が制限されている中、アーティストたちはSNSやオンラインプラットフォームを活用して音楽を発信し、ファンとのコミュニケーションを維持しています。特に、「夜好性」のアーティストたちは、SNSでのプロモーションが得意であり、リスナーとの繋がりを強化しています。
- リスニング環境の変化: 自宅で過ごす時間が増えたことで、リスニング環境も変化しています。これにより、静かな環境で聴くのに適した、繊細な音楽や歌声が求められるようになりました。「夜好性」のアーティストたちの音楽も、この変化にマッチしており、多くのリスナーから支持されています。
【文化時評】「夜好性音楽が誘う解放区」。コロナ禍で突然悪者にされた夜の街。会社や学校、家からも解放される時間は消え、心はよどむ。そんな気持ちに寄り添うのが、「ヨルシカ」「YOASOBI」「ずっと真夜中でいいのに。」といった「夜好性」音楽なのかもしれません。29日付朝刊より。#nikkeithestyle pic.twitter.com/n9pPtZSBuE
— NIKKEI The STYLE (@NIKKEITheSTYLE) August 29, 2021
【26日のMJ】立秋を過ぎ夜が長くなる今、ユニット名に「夜」を包含した音楽グループが話題を呼んでいます。ヨルシカ、YOASOBI、ずっと真夜中でいいのに。――小説やアニメなど多メディアを活用して独自の世界観を構築し、じっくり聴けるとして楽しむ「夜好性」の人々が増殖中です。 pic.twitter.com/kv8ylur7fM
— 日経MJ (@nikkeimj) August 25, 2020
「YOASOBI」「ヨルシカ」「ずっと真夜中でいいのに。」
「ヨルシカ」は物語を包含した音楽を展開し、「ずっと真夜中でいいのに。」はリスナーの感情と共感性を追求し、「YOASOBI」はWeb小説から音楽を創造していくというスタイルを持っています。
これらのアーティストは、夜好性リスナーに支持され、現代人や若者の耳は切迫した感情を歌う楽曲に惹かれるようになりました。
昼間、多くの人が学校や仕事で忙しく、個性が尊重されず、感情や思想は必要とされません。しかし、夜になると抑圧されていた個人が解放され、自宅で好きな音楽を楽しむことができます。そんな時に彼らの楽曲が選ばれるのです。
3組のアーティストの人気はチャートランキングにも現れており、YOASOBIの「夜に駆ける」は2020年6月15日付のBillboard JAPAN総合ソング・チャート“JAPAN HOT 100”で3週連続1位を獲得。
ヨルシカ「花に亡霊」は2020年7月13日付のBillboard JAPANアニメチャート“JAPAN Hot Animation”で2位にランクイン。
ずっと真夜中でいいのに。の最新アルバム「ぐされ」は2021年2月22日付のBillboard JAPAN週間“Top Albums Sales”で2位を獲得しています。
コロナ渦で新たな楽曲のヒットパターンが誕生!?
2020年、コロナパンデミックで外出自粛が増えたことで、自宅で過ごす時間が増え、共感性の高い曲をTikTokやSNSでシェアする人が増えました。海外ではDua Lipaの「Don’t Start Now」が、自粛期間中のアンセムとして世界中で聴かれる現象が起きました。それ以外にも、アーティストの楽曲に共感したユーザーが拡散する新しいヒットのパターンが見られるようになりました。
SNSのショート動画で求められた楽曲
TikTokや類似のショート動画SNSなどでは、、15~30秒の動画でキャッチーな楽曲と印象に残る歌詞が求められてます。若者に人気のTikTokでは、音楽に合わせた約15秒の動画が簡単にシェアできます。
ユニバーサルシグマ・メディアストラテジー本部の久田耕平は、プロモーションにはリスナーの動向を把握する必要があり、特にZ世代の動向を注視していると語ります。TikTokがZ世代の主要なSNSであるため、その特性を研究し、ヒット曲を分析し、アーティスト側に常に情報共有する体制が重要だと述べています。
TikTokでは、最初の3秒で曲が判断されるため、瞬時にリスナーに響くメロディーや歌詞が大切です。また、日本ではカラオケ文化が強いため、カラオケで歌いたくなるメロディーとリスナーを引き付ける歌詞を持つ曲がTikTokでも強いと分析されています。
親和性が高かったのが“夜好性”やボカロ曲
夜好性アーティストの歌詞は、文学的で独自の世界観を表現した意味深なものが多く、音楽だけでなく歌詞にも中毒性が高いです。日本人はリリカルで感情的なメロディや歌詞に惹かれる傾向があり、このような曲は短い時間で印象に残りやすいため、TikTokとの親和性が高いと言えます。
SNS上で夜好性アーティストやボカロ系曲が多くのリスナーに受け入れられた理由の一つに、この親和性があると考えられます。夜好性アーティストの曲が短時間で印象に残る特徴は、TikTokなどのショート動画SNSでの人気につながっていると言えるでしょう。
“夜行性”登場の背景にボカロカルチャー
確かに、これらのアーティストが登場した背景にはボーカロイドのカルチャーが共通しています。
ボカロ文化が広がった2000年代以降、動画投稿サイトで曲を発表し、自らの作品世界を築いた多くのクリエイターが登場しました。彼らは歌い手や絵師など他ジャンルのクリエイターとフラットに交流できました。
2010年代には、米津玄師をはじめとするボーカロイド文化から生まれたアーティストがJ-POPのメインストリームで活躍するようになりました。
そして現在、音楽性、歌詞、活動のあり方など様々な点で「ボカロ以降」の感性を持ったアーティストたちが次々と登場しており、日本独自の音楽カルチャーが盛り上がっています。
「歌い手」
「歌い手」とは、主に既存の曲に自分の歌を乗せた動画を投稿する人たちのことで、活動場所はニコニコ動画やYouTubeなどの動画サイトが中心です。最近では、短い動画をTwitterに投稿する人も増えており、「歌ってみた」という言葉が動画のカテゴリーやタグ付けなどに使われています。
元々は、歌い手のほとんどが個人で活動するアマチュアシンガーでした。しかし、現在ではメジャーデビューを果たす人も珍しくなくなり、武道館や幕張メッセ、埼玉スーパーアリーナでワンマンライブを開催する人も出てきています。
ボーカロイドやSNS、YouTuberなど、さまざまなムーブメントを推進力にして拡大を続ける歌い手は、今やプロの音楽業界も無視できない存在となっています。NHKやYahoo!ニュースの特集でも取り上げられ、歌い手の認知度は急激に高まっているのです。
「絵師」
絵師とは元々、浮世絵の下絵を描く職業を指していましたが、インターネットの普及と共に、現在ではアニメやゲーム風のイラストを描くイラストレーターや画家を指す言葉として使われています。絵師たちはライトノベルの表紙や挿絵、ゲームのビジュアルキャラクター、音楽のミュージックビデオに使われるアニメーションの原画などで活動しており、イラストによって小説・ゲーム・楽曲の売り上げにも影響を与えることがあります。
フィーチャーされる大きなきっかけは「初音ミク」
美少女ゲームの全盛期の1997年ぐらいに、そのゲームでイラストを描く人たちを敬意を込めて「絵師」と呼ぶようになりました。初音ミクの登場によって、イラストを描く文化が広く知られるようになり、キズナアイなどのVチューバーの登場も認知度を高める要因となりました。
絵師100人展のプロデューサー・石坂太一さんによると、絵師たちの存在が世界で注目される理由は、初音ミクやVチューバーの登場によってイラスト文化が周知されたことに加えて、彼らが多くの分野で活躍しているからです。絵師たちの未来については、さらなる分野での活躍や、その影響力が拡大していくことが期待されています。
ボカロシーンは顔出しなし!?匿名性アーティスト
ボカロシーンの影響は、アニメーションや映像と音楽を組み合わせて作品の世界観を構築する点で顕著です。例えば、ヨルシカのMVでは登場キャラクターの顔が隠されるなど、作者の感情や状況が取り除かれる演出が見られます。このような特徴は、作曲者よりも「ボーカロイドキャラクターの曲」という受け取られ方に重きが置かれるボカロシーンに通じる部分があります。
ボーカロイドシーンでは、キャラクター自体が楽曲の主役となり、作曲者や歌い手はあくまでそのキャラクターをサポートする役割を果たしています。そのため、ボカロシーンで培われたアイデアや表現手法は、映像と音楽を組み合わせて物語や世界観を展開する作品においても、効果的に活用されているのです。
ネット発のアーティストカルチャーが生んだ“匿名性”
インターネット発のアーティストたちは、ボーカロイド(ボカロ)を利用した楽曲制作が多く、ボカロP(プロデューサー)として活動する際にはニックネームや下の名前の愛称を使うのが一般的です。
これは、クラシック音楽などとは異なり、本名で活動する人が少ないという文化が前提にあるためです。また、ネット上の創作活動はアニメーションとの親和性が高く、顔出しなしの文化を推進する要因となっています。
例えばAdoの『うっせぇわ』では、楽曲制作に関わる「Music & Lyrics & Arrangement」だけでなく、「Movie」「Mix」「Image Director」などの要素がクレジットされています。ビジュアルも含めた楽曲制作が一般的となっているため、歌い手が素顔を晒す必要性は低くなっています。
2000年代以降に生まれた世代は、物心ついたころにはすでにSNSが普及しており、メディアリテラシー教育が学校で教えられているため、プライバシーに対する意識が高まっています。そのため、本名や所属先を公表せず、ニックネームで活動することが一般的になっています。
かつては「本名・素顔非公開」のアーティストには、匿名性から来る神秘性やミステリアスなイメージがあったものの、現在の本名非公開アーティストには、本名でないことによる親近感が生まれています。
YouTubeのコメント欄などでも、多くの人がニックネームでアカウントを作成しており、アーティストもその一環として同様のニックネームを名乗ることで、親しみやすい印象を与えているのです。
“夜行性”のルーツはニコニコ動画!?TikTokとニコニコ動画との類似性
近年、ボーカロイドカルチャーの拡大に大きく貢献しているのがTikTokです。TikTokでバズることをきっかけにリスナーを獲得するボカロ曲も増えています。顔出しをしないのは日本特有の文化ですが、そのようなプラットフォームの特徴は、ニコニコ動画と非常に似ています。
一部ではTikTokを「リア充向けアプリ」とみなす人もいますが、実際にはオタクにも優しい、ニコニコ動画的なプラットフォームです。
ニコニコ動画が音楽業界に恩恵をもたらした
ニコニコ動画は音楽業界に大きな影響を与えており、素人がカラオケ動画を投稿する「歌ってみた」ブームからは、DAOKOやたなか(元ぼくのりりっくのぼうよみ)などの歌手が生まれました。
さらに、ボカロの登場により、作曲に挑戦する投稿者が増え、紅白歌合戦にも出場した米津玄師などの新世代の作曲家やシンガーが誕生しています。
こうした流れを受け継いでいるユニットも存在しており、彼らもニコニコ動画やTikTokを通じて、音楽業界に新しい風を吹き込んでいると言えます。インターネットを活用したこれらのプラットフォームが、新たな才能を発掘し、音楽業界の発展に寄与していることは間違いありません。
今や「夜好性」は音楽シーンの潮流の1つ!
「夜好性」というワードは、もともとファン同士が繋がるためのハッシュタグとして使われていましたが、最近ではテレビ番組などメディアでも取り上げられるようになり、注目度が上昇しています。この言葉は、この3組だけではなく、ネットカルチャーから生まれた次世代型アーティストが次々とブレイクしている現在の日本の音楽シーンの潮流を示していると言えます。
インターネットやSNSの普及により、新たな音楽スタイルやアーティストが生まれ、多様な音楽シーンが展開されています。こうした状況の中、「夜好性」は、新たな音楽シーンの象徴として広まっているのです。
活動の初期は顔出しなし!?
「YOASOBI」
YOASOBIのサウンドは、ジャズやフュージョン寄りの鍵盤サウンドが織り成す疾走感あるビートチューンと高揚感が特徴です。ヨルシカやずっと真夜中でいいのに。と同様に、ボーカロイドを使用しない「進化系ボカロ文化圏サウンド」の系譜に位置づけられます。
サビで炸裂するエモーショナルさが魅力的であり、ikuraの透明感と芯の強さを持つ歌声が楽曲と見事にマッチし、切ない世界観や登場人物の狂おしい感情を表現しています。
AyaseがボカロPとして制作していた楽曲「ラストリゾート」が評判を呼び、YOASOBIの「夜に駆ける」はYouTubeで公開後わずか1カ月で100万回再生を突破しました。2020年1月にはSpotifyの「バイラルトップ50(日本)」で1位を獲得し、春先からはTikTokでカバー動画やダンス動画が話題となりました。
新型コロナウイルスの影響で外出自粛が求められる中、動画の需要が高まっていた時期でした。そんな中、YouTubeの人気企画「THE FIRST TAKE」でikuraがオリジナルアレンジで「夜に駆ける」を歌う動画が5月中旬に公開され、さらなる人気に火が付いたのです。
当初「Ayase」は顔出しなしで活動していた
Ayaseは、YOASOBIを結成する以前のボカロP時代には顔出しをせずに音楽活動を行っていましたが、2020年5月に放送された朝の情報番組『とくダネ!』でメディア初の顔出しを果たし、大きな反響を呼びました。
顔出しをしないネット発のアーティストが多い中、Ayaseとikuraは積極的にメディアに出演しました。彼らは「とくダネ!」「めざましテレビ」「あさイチ」「ZIP!」「スッキリ」といった多くの情報番組で特集されました。
また、AyaseとikuraはSNSを使って自分たちのメッセージを積極的に発信し、応援してくれるファンを増やしていきました。
とくダネ!見てくれたでしょうか!
— Ayase (@Ayase_0404) May 25, 2020
完全に初の顔出しだったので個人的に超緊張してました…
昔から何度も見てきたニュース番組、
小倉さんを始めスタジオの皆さんにもがっつり触れていただいて、感動した…!
これからもYOASOBIを、
そしてAyaseとikuraを、
どうぞよろしくお願いします!!#YOASOBI pic.twitter.com/ASmYzJUAdN
顔出しなし!匿名で活動!!
「ヨルシカ」
ヨルシカは、2017年にボカロPとして活動していたn-bunaとsuisが結成したユニットで、3組の中で最も古い活動歴を持ちます。ユニット名はファーストミニアルバム『夏草が邪魔をする』に収録されている「雲と幽霊」という曲の歌詞の一節「夜しかもう眠れずに」から取られています。
バンド!ではない?
n-buna(ナブナ)はコンポーザーを担当し、suis(スイ)がボーカリストを務めるヨルシカは、2人組のバンドとして紹介されることもありますが、n-bunaは「僕のしたい“人間的な表現”を、楽器やボーカルで形にしてもらったのがヨルシカだと思います」と述べており、一般的なロックバンドとは一線を画した存在と言えます。正規のメンバーはn-bunaとsuisの2人だけで、ユニットと呼ぶのが適切です。楽曲のレコーディングやライブには、サポートメンバーとして下鶴光康(gt.)、キタニタツヤ(ba.)、Masack(dr.)が参加しています。
ヨルシカを結成するきっかけとなったのは、n-bunaが映画や小説のような一つの作品を作りたいという思いからで、音楽を含む作品をパッケージして世に出すことを目指していました。人間的なボーカルで表現したいと考えたn-bunaは、suisと出会いユニットを組むことになります。
suisは、n-bunaのボーカロイド曲のライブでゲストボーカルを務めていたことがきっかけで見つけられました。もともとn-bunaのボーカロイド曲のファンだったsuisは、彼の歌詞や世界観に魅力を感じていたため、ヨルシカで共演できることを驚きと喜びに感じていました。
ボカロP「n-buna」
2010年代後半、ボカロPとしてインターネット上で絶大な人気を誇ったn-buna(ナブナ)は、ヨルシカの結成と大ヒットをきっかけに、ボカロ音楽を聴かなかった層からも広く知られる存在となりました。
ヨルシカ結成前のn-bunaは、「夜明けと蛍」や「ウミユリ海底譚」などの代表曲を持つボカロPとして特徴的な存在でした。
ボカロシーンでは音数の多い曲が一般的に流行しやすいものの、ヨルシカの音楽はそれとは異なります。ギターロックを主軸にしつつ、心地よい空白のフレーズが特徴のエレクトロな音像を持ち、国内外のトレンドを取り入れたメロディーの楽曲を展開しています。
ボカロシーンからJ-POPシーンまでのリスナーを幅広く獲得しているのは、n-bunaの芸術的なセンスが大きく寄与していると言えます。また、ヨルシカの作品は小説のような奥深さがあることから、高い評価を受けています。
顔出しなし!匿名で活動!!
SNSから生まれた次世代アーティストであるヨルシカは、YOASOBIやずっと真夜中でいいのに。と共に「夜好性」というくくりで注目されています。
しかし、YOASOBIがテレビでのプロモーションを積極的に行っている一方で、ヨルシカはn-bunaのポリシーにより、素顔やプロフィールを一切明かしていません。suisも同じ考えで、自分の顔が知れることに恐怖を感じていると語っています。
ヨルシカにとって、世界観を伝える重要なコミュニケーションツールであるMVなどの映像は、n-bunaと映像作家さんが創り上げるものであり、suisは歌で色を足して補完する役割を果たしています。suisは、映像を見て感動し、全体をプロデュースするn-bunaをリスペクトしていると語っています。
「ヨルシカ」と「YOASOBI」との共通点は女性ボーカル!
「YOASOBI」と「ヨルシカ」はどちらも女性がボーカルを担当しているという共通点があります。YOASOBIのボーカルを務めるikuraこと幾多りらは、ユニットを結成する以前はアコースティックセッションユニット「ぷらそにか」に所属するシンガーソングライターとして活動していました。
YOASOBIとヨルシカ – もう迷わない! それぞれの特徴や魅力、代表曲を徹底解説!/Cal-cha.2022
YOASOBIのボーカルを務めるikuraこと幾多りらは、ユニットを結成する以前はアコースティックセッションユニット「ぷらそにか」に所属するシンガーソングライターとして活動していました。
YOASOBIとヨルシカ – もう迷わない! それぞれの特徴や魅力、代表曲を徹底解説!/Cal-cha.2022
歌声以外は謎に包まれた女性シンガー
OASOBIとヨルシカは、どちらも女性がボーカルを担当しているという共通点があります。
YOASOBIのボーカル、ikura(幾多りら)は、ユニット結成前にアコースティックセッションユニット「ぷらそにか」に所属し、シンガーソングライターとして活動していました。彼女のクリアで力強い歌声は、YOASOBIの楽曲に独特の魅力をもたらしています。
一方、ヨルシカのボーカル、suisは、ユニット結成前にn-bunaのボーカロイド曲を歌うライブのゲストボーカルとして活動していました。
彼女は元々n-bunaのボーカロイド曲のファンで、その歌詞や世界観に魅了されていたと語っています。彼女の繊細で感情豊かな歌声は、ヨルシカの楽曲に深みと魅力を加えています。
このように、YOASOBIとヨルシカは、女性ボーカリストが共通の特徴であり、それぞれ異なる経歴や個性を持つボーカリストが、ユニットの魅力を引き出しています。
顔出しなし!匿名で活動!!
「ずっと真夜中でいいのに。」
ずっと真夜中でいいのに(通称ずとまよ)は、フロントパーソンであるACAねがボーカルや作詞・作曲を担当し、流動的なバンドメンバー構成で様々な世界観を作り上げる特定の形を持たない音楽ユニットです。彼らが初めてYouTubeで映像を公開したのは2018年6月で、アニメーション作家・イラストレーターのWabokuが手がけた「秒針を噛む」のMVは、カバー動画やファンアートを通じて急速に拡散され、無名の新人のMVとしては異例の20万再生を約1週間で記録しました。
このような楽曲の拡散プロセスは、ヨルシカのヒット経緯と似ており、ファンが楽曲の中に物語を読み込みながら二次創作に参加し、さらなる拡散につなげています。また、映画『約束のネバーランド』の主題歌「正しくなれない」や、映画『さんかく窓の外側は夜』の主題歌「暗く黒く」を手掛けたことも話題となっています。
顔出しなし!匿名的にアーティスト活動!!
ずっと真夜中でいいのには、結成から約3年ほどで、YouTubeの総再生回数が4億回(2021年6月時点)に達し、時代を代表するアーティストとなりました。しかし、彼女のメディア露出は非常に限られており、その全貌を明かすことはありません。
2021年に開催された音楽フェス「COUNTDOWN JAPAN 21/22」に出演した際も、顔を隠したままパフォーマンスを行い、その素顔は謎に包まれています。
ハッシュタグから繋がる創作活動!
ずっと真夜中でいいのに。の魅力は、音源だけではなく、MVにもあります。彼らは気鋭のアーティストを起用することで、独自の世界観を持ったMVを生み出しています。これは、アーティストとしての彼らの才能や視野の広さを示しているでしょう。
最新曲「ばかじゃないのに」でのTV♡CHANY氏の起用は、SNSを活用して才能を見つけ出す方法が実り多いことを示しています。SNSを通じて、世界中のアーティストやクリエイターと繋がることができ、それぞれの才能を組み合わせて新たな作品を生み出すことが可能です。また、才能が才能を呼ぶという姿は、アーティスト同士の協力や共感が生まれることを意味し、さらなる創造力の源となるでしょう。
ヨルシカとの共通点
ずっと真夜中でいいのにのメンバーは、ボーカル作詞作曲を担当するACAね以外には素性が明らかにされていません。楽曲「秒針を噛む」の編曲はボカロPのぬゆりが担当し、他にも「100回嘔吐」や「煮ル果実」など、さまざまなボカロPが編曲を担当しています。
さらに、村山☆潤や久保田真悟、Kenichiro Nishiharaといったアーティストも参加しています。
ACAねはプロデューサー的な役割を担っており、様々なクリエイターと関わりを持つ流動性の高いプロジェクトと言えます。このような匿名的で正体が掴みにくい面は、ヨルシカとの共通点として捉えられます。
知りたい!と思わせる効果
情報が溢れる現代において、逆に情報を制限し、リスナーやファンに探求心を喚起することで、独自の魅力を引き出しています。「知りたい」という原動力は、人間の好奇心を刺激し、宣伝効果を高めることができます。
このような戦略は、ヨルシカやずっと真夜中でいいのに。などのアーティストに共通して見られ、彼らの成功を後押ししています。
匿名性はMVでも!?“夜行性”アーティストボカロシーンの系譜
ずっと真夜中でいいのに。の楽曲MVは、確かに作者の存在を強調させないスタイルで作られていることが特徴の一つです。アニメ調のMVが主流であり、キャラクターがリップシンクをすることで楽曲とのリンクが強調されています。しかし、同時に映像は抽象的であり、歌詞や映像の説明が完全になされない点が視聴者を惹きつける要素の一つとなっています。
このようなスタイルは、聴く人が楽曲やMVに対して自分自身の解釈や想像力を働かせることを促します。聴く人それぞれが異なる物語や感情を見いだせる余白を残すことで、作品に対する共感や愛着が深まることがあるでしょう。また、作者の存在を強調させないことで、作品自体がより前面に出ることができます。
ここでも「ヨルシカ」との類似性
ヨルシカのMVは、確かに実写のものも少なくありませんが、人物の顔が映されないことで、あえて楽曲の説明を避けるスタイルを取っています。これにより、リスナーが楽曲と映像から独自の解釈や想像を引き出すことができるようになっています。
例えば、ヨルシカの『盗作』では、動画の概要欄やMVの内容を含め、物語としての「盗作」を作り上げています。CDの初回盤には「盗作」の小説が付属するなど、物語の世界観をさらに深める要素が用意されています。しかし、作者の感情や状況は徹底的に排除されており、リスナーが作品自体に焦点を当てることができます。
この特徴は、ボーカロイド音楽の特徴を引き継いでいると言えるでしょう。
ボカロシーンの仕組みを引き継ぐ
ボーカロイドを利用した楽曲では、初音ミクや鏡音リンなどの人間ではないキャラクターが歌唱しています。これらのキャラクターが人気を持つことで、楽曲がまず「ボーカロイドキャラクターの曲」として受け取られ、作曲者の個人が二の次になることが一般的です。
ヨルシカやずっと真夜中でいいのに。も、このボーカロイド音楽の特徴を引き継いでいます。彼らの楽曲では、実在のボーカリストが歌っているものの、その素性や顔が明かされていないことで、リスナーは音楽や歌詞、映像に集中できるようになっています。また、彼らの楽曲が物語の世界観やキャラクターを重視している点も、ボーカロイド音楽の影響を受けていると言えるでしょう。
歌い手
夜好性アーティストの活躍が「Ado」誕生に繋がる!?
2020年は、新型コロナウイルスの影響でステイホームが推奨され、インターネットへのアクセスが大幅に増加しました。その結果、音楽シーンも大きく変化し、インターネット上で活躍していたボーカロイドPやアーティストの楽曲が一気に広がり、人気を博しました。
特に、YOASOBIやヨルシカなどのアーティストがYouTubeやTikTokを通じて大きな成功を収めました。
また、この時期には、ユーザーが音楽を使って二次創作動画を作成することが増え、UGC(ユーザー・ジェネレイテッド・コンテンツ)が急速に拡大しました。
例として、「歌ってみた」や「踊ってみた」といった動画が大変人気を集め、多くのクリエイターやボーカリストが参加しました。これにより、「歌い手」と呼ばれるボーカリストたちの存在も一層大きくなりました。
こうした状況は、2019年以前のヒットチャートとは異なる新たな音楽シーンを形成し、インターネットを通じた音楽消費が一層広がりを見せたと言えます。
「うっせぇわ」
Ado(アド)は、歌い手として活動していた経歴を持ち、現役女子高生という肩書もあり、注目を集める存在です。「うっせぇわ」でメジャーデビューを果たし、その楽曲の作詞・作曲を手がけたsyudouは、2018年頃からボカロPとして人気が高まっていました。
彼の鋭い歌詞とAdoの独特の歌唱スタイルが組み合わさり、リアリティと説得力のある作品が完成しました。彼女の成功は、インターネットを通じて活動するアーティストたちに新たな可能性を示しており、今後も音楽シーンにおいて重要な役割を果たすことが期待されます。
メインストリームを席巻!!新時代の歌い手「Ado」 ── 初音ミクとめぐるJ-POPとボーカロイドの歴史⑧