Adoとウタが告げる「新時代」── 初音ミクとめぐるJ-POPとボーカロイドの歴史⑩

2022年、音楽シーンを席巻したアーティストがいた。その名はAdo。彼女の歌唱力と個性的なルックスは、多くの人々から支持され、注目を集めた。

そして、彼女が手掛けた『ONE PIECE FILM RED』の主題歌がオリコン週間シングルチャートで1位を獲得するなど、国内外で話題を呼び、映画のヒットの一因にもなった。

そんなAdoが、2022年の紅白歌合戦にアニメキャラクター「ウタ」として出場することが決定し、ますます注目を浴びている。彼女の魅力に迫る。

ボカロシーンの流れを汲んだ大ヒット曲!「うっせわ」 ── 初音ミクとめぐるJ-POPとボーカロイドの歴史⑨
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『ONE PIECE FILM RED』に登場する歌姫・ウタの歌唱パートを歌い手・Adoが担当。7組の豪華アーティストたちが同作のために楽曲提供した主題歌と劇中歌を収録! (C)RS

Ado & UTA

『ONE PIECE FILM RED』

ONE PIECE公式YouTubeチャンネル/YouTube

Adoは2022年の音楽界において、最も注目を集めたアーティストの一人と言えます。ONE PIECE FILM REDの主題歌『新時代』は、オリコン週間シングルチャートで1位を獲得するなど、国内外で大きな話題を呼びました。

また、Ado自身もその個性的なルックスと強烈な歌唱力で、多くのファンを魅了。2022年の紅白歌合戦にアニメのキャラクター「ウタ」として出場することが決まった。

『ONE PIECE FILM RED』歌姫ウタの歌唱の担当はAdo!

『ONE PIECE FILM RED』のヒットの理由のひとつとして、ウタの歌唱パートを担ったAdoの歌声が挙げられる。

映画の主題歌『新時代』は、Ado自身が作詞・作曲を手掛け、映画の世界観にマッチした力強い歌声で歌い上げました。また、映画内でもAdoの楽曲が挿入歌として使用されているほか、映画のエンディングにもAdoの楽曲が使われています。

ONE PIECE公式YouTubeチャンネル/YouTube
国民的代表作『ONE PIECE』

「国民的」という表現は、日本の大衆文化における重要な位置を占める作品や人物などを指すことが多く、『ワンピース』もその一つとされています。漫画やアニメの視聴者層は幅広く、年齢や性別を問わず多くの人々に愛されています。また、関連商品やイベントも多数開催され、その人気は今なお衰えることがありません。

素性を隠したまま発信するウタの歌声

『ONE PIECE FILM RED』は、アニメ・マンガシリーズ「ワンピース」の映画作品で、2022年8月6日に公開されました。

本作の物語は、ウタという歌姫の素性を隠したまま発信される歌声が別次元と評されるほどの人気を誇っています。ウタの歌声を楽しみにしているルフィと麦わらの一味たち、海賊、海軍、さらには世界中のファンが会場を埋め尽くす中で展開される物語です。

ストーリーは、ウタが「シャンクスの娘」という衝撃的な事実が発覚することから始まります。この事実が明らかになると、ルフィたち麦わらの一味や関係者たちの運命が大きく変わることとなり、スリリングで感動的な冒険が繰り広げられます。

映画は、ウタの素性の謎や彼女と麦わらの一味たちとの関係、さらにはシャンクスとのつながりなど、ワンピースファンには見逃せない要素が詰まった作品となっています。

尾田栄一郎インタビューによると、『ONE PIECE FILM RED』が音楽映画となった前日譚として、音楽ユニット・FAKE TYPE.のラッパー トップハムハット狂(TOPHAMHAT-KYO)の「Princess♂」を聴きながら、尾田は「こういう女の子が映画に出てきたら面白いのに」と思った。

当初はウタのようなキャラではなく、「歌姫の話にしたい」という案が提案され、尾田は音楽の難しさを知った上でスタッフの覚悟を信じて一歩踏み出した。

原作者「尾田栄一郎」が直々に監修するFIRMシリーズの4作目!

「ONE PIECE」劇場版シリーズとしては15作目、FILMシリーズとしては「FILM STRONG WORLD」「FILM Z」「FILM GOLD」に続く4作目。

FILMシリーズは、原作者・尾田栄一郎が総合プロデューサーを務めるシリーズ。監督には、「コードギアス」シリーズで知られる谷口悟朗が担当。脚本には黒岩勉が続投。声優陣には、原作同様に田中真弓、山口勝平、中井和哉、平田広明らが出演している。

ボイスキャスト「名塚佳織」・歌唱パート「Ado」

「ウタ」の歌唱パートは「新時代」という楽曲で、Adoが担当しました。ただし、声優は名塚佳織ではなく、沢城みゆきが演じています。

名塚佳織は、『交響詩篇エウレカセブン』の主人公・エウレカ役や『コードギアス』シリーズのナナリー・ランペルージ役、『僕のヒーローアカデミア』の葉隠透役など、幅広いキャラクターを演じている声優です。特に、「エウレカセブン」では主役を演じ、名演技を披露しています

シネマトゥデイ/YouTube

「“Oda”を反対から読むと“Ado”」

「ONE PIECE FILM RED」の主題歌担当にAdoが起用された経緯は、作者の尾田栄一郎が彼女の楽曲に感銘を受け、監督やスタッフにも曲を聴かせたことがきっかけです。

ウタ役のボイスキャストは名塚佳織、歌唱キャストはAdoが担当しています。最初はオーディションを検討していましたが、Adoの名前が挙がり、彼女にオファーしました。

その後、スタッフは「もうこの人しかいない」と確信するようになり、2021年5月頃にはAdoに決定していたとのことです。

尾田先生は音楽好きとして知られており、新旧さまざまな楽曲を聴いていることが「ONE PIECE Magazine」などで明らかになっています。

Adoが起用されたときの尾田先生の反応は大変喜んでおり、Adoの名前が自身の名前「Oda」を反対から読んだものであることから冗談を言ったりもしていたそうです。尾田先生はAdoにぜひ歌ってほしいと言っていたといいます。

Adoが「ONE PIECE FILM RED」の主題歌を担当することになった経緯は、尾田栄一郎が聴いて感銘を受けた彼女の楽曲に魅了され、監督やスタッフにその曲を聴かせて協議したことがきっかけである。

「どこのブランドと洋服のコラボするんですか?」Adoの勘違い(笑)

Adoは、「ONE PIECE FILM RED」の話が来たとき、最初は洋服のブランドとのコラボだと思っていたそうです。彼女にとって『ONE PIECE』は国民的にも世界的にも有名な作品であり、「人生で関わることは一生ないだろう」と思っていたため、その話が来たときには驚きと喜びを感じました。

彼女は『ONE PIECE』における「ロマン」や登場人物の強い意志に尊敬の念を抱いており、特にルフィー達の互いを信じ合う姿に憧れていると語っています。

映画を鑑賞した感想について、Adoは面白いシーンや感動する部分もあったが、映画全体を通して重要なテーマがあると感じたと述べています。ウタとシャンクスの関係性が思ったよりも深く、ウタが歌う理由や新時代を築きたいという意志にシャンクスが鍵になっていると感じています。

また、ルフィにとってもシャンクスは大きな存在であり、ウタが幼少期からルフィと関わっていたことも作品の重要な部分を描いていると考えているようです。

歌姫「ウタ」とAdo

ウタは、『ONE PIECE FILM RED』の物語の鍵を握る重要なキャラクターで、ルフィの”命の恩人”である赤髪のシャンクスの娘です。彼女は、素性を隠しながらも、世界で最も愛されている歌手であり、その“別次元”の歌声で世界中を熱狂させる。

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「自分とは真逆な存在」素性を隠したウタとの共通点について

映画「ONE PIECE FILM RED」では、Adoがウタとして主題歌「新時代」をはじめ、全7曲を歌っています。初めてウタの姿を見たとき、Adoは「自分とは真逆な存在」と感じましたが、ウタの歌声で世界中を熱狂させる場面では、彼女自身と重なる部分があると語っています。

ウタはカラフルで可愛い女の子であり、性格もお茶目で元気です。一方、Adoは普段から悲しみや怒り、憎しみから生まれるパワーを歌うことが多く、最初はウタに自分の声が合うのか心配だったということです。

しかし、ストーリーや脚本、ウタの生い立ちを知るうちに、彼女の中にも芯のようなものがあることに気付きました。ウタは悲しみや怒りといったネガティブな感情も表に出しており、歌姫という神聖で輝かしいイメージとは異なり、人間として輝いていると感じています。

そのネガティブな感情や怒りの感情を持つ人間臭さが、Ado自身とも似ていると感じるところがあると語っています。

Adoのビジュアルを、尾田栄一郎が描いたことについて

Adoは、尾田栄一郎が自身のビジュアルを描いたことについて、「びっくりです。うわぁぁ!すごい!」と言葉にならない感動があったと語っています。

尾田先生によって描かれたポージングは迫力があり、格好よすぎてずっと見入ってしまったと言います。さらに、ルフィ、ウタ、Adoのイラストも大変気に入っており、感動し、ずっと眺めていると語っています。

日本を代表する豪華アーティストが楽曲を提供!

『ONE PIECE FILM RED』では、劇中歌「私は最強」をMrs. GREEN APPLE、「逆光」をVaundy、「ウタカタララバイ」をFAKE TYPE.、「Tot Musica」を澤野弘之、「世界のつづき」を折坂悠太、「風のゆくえ」を秦 基博が提供し、20億回を越えるストリーミング再生数を誇る豪華なコラボレーションが実現しました。音楽が物語の鍵となっています。

ワンピースの原作担当・高野健は、人選について尾田栄一郎、監督と3人で話し合い、各アーティストがふさわしいと思われる楽曲を担当することになったと述べています。監督からは各シーンで使う楽曲のラインアップが提案され、それぞれのアーティストにはシーンの内容が伝えられました。ただし、基本的にはアーティストに自由に創作してもらうという方針で、ウタの「歌」がアーティストの解釈で1曲ずつ作られたと説明しています。

Ado/YouTube
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「本当に貴重な経験になりました」

映画『ONE PIECE FILM RED』で書き下ろされた曲を歌うことが、貴重な経験になったとAdoは述べています。これまでボカロPによって書き下ろされた楽曲を歌ってきたり、カバー曲がボーカロイド系が多かったAdoですが、今回は以前から知っているアーティストたちから提供された7曲を歌うことで、さまざまな表現や声を引き出すことができたと感じています。

すべての曲が映画とウタのために作られ、ストーリーにもぴったり合っていることから、これらの素晴らしい曲を自分の声で歌うことができたのは、とても貴重な経験だと語っています。

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主題歌「新時代」

インタビューでAdoは、中田ヤスタカが手掛けた主題歌「新時代」について語っています。彼女はこの曲が非常に意味深く、映画を観る前と観た後で聴くと全く違う響き方になることを強調しています。映画を観た後に聴くと、曲が作品全体を語っていることに気付くと言っており、その感動は映画を観ないと伝わらないと述べています。これから映画を観る人には、その変化を楽しみにしてもらいたいとAdoは伝えています。

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いつも通り一人でレコーディング!

Adoは、楽曲のレコーディングについて語っています。彼女は一人でスタジオに入り、自分で考えながら録音するという、彼女独自の制作スタイルで取り組みました。

しかし、客観的に聞いたときにウタの役割をちゃんと果たせているか心配だったと言います。また、皆さんに聴いてもらう瞬間はとても緊張したと語っています。

特に、「ウタカタララバイ」という曲では、歌姫がラップをするというサプライズがあり、Ado自身も「私これできるかしら」と不安に思っていたと言います。

レコーディングの最中にも何度もくじけそうになったと述べていますが、結果的に自分の中でまだ知らなかった歌い方やテクニックを引き出すことができたと感じています。Adoは、このプロジェクトを通じて本当に素晴らしい経験をしたと感謝しています。

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『ウタの歌 ONE PIECE FILM RED』発売日 2022年8月10日

2022年8月10日には、映画『ONE PIECE FILM RED』で歌唱を担当したAdoのアルバム『ウタの歌』がリリースされた。計8曲が収録され『新時代』や『私は最強』などの劇中曲に加え、『ビンクスの酒』も収録されています。

『ONE PIECE FILM RED』の通常盤ジャケットイラストは尾田栄一郎が描き下ろしており、中央には歌唱担当のAdoがスタイリッシュでクールな雰囲気を纏っている。ウタのライブ風景が彩り豊かに描かれ、ルフィも大盛り上がりの様子が伺える。Adoのアーティストビジュアルも尾田栄一郎描きおろしでリニューアルされている。

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2022年 音楽チャートはAdoが総なめ!

2022年8月6日に公開されたアニメ映画「ONE PIECE FILM RED」の主題歌「新時代」が大ヒットとなり、Apple Musicのランキングで世界1位を獲得し、国内外で70冠を達成しました。

歌手のAdoが歌うこの曲は、「第63回日本レコード大賞」の「優秀作品賞」に選ばれ、2年連続の受賞も果たしました。さらに、劇中歌7曲がApple Musicのランキングで1~7位を独占するなど、アニメの世界だけでなくリアルの世界でも大きな反響を呼んでいます。

Adoは、アニメと現実世界での成功について驚きと喜びを語り、アニメーションと現実がこうしてリンクすることは珍しいと感じている様子です。

Billboard JAPANで首位に!

2022年の年間Billboard JAPANダウンロード・アルバム・チャート“Download Albums”で、Adoの『ウタの歌 ONE PIECE FILM RED』は首位を獲得しました。

Billboard JAPANトップ・アーティスト・チャートで総合首位!!

Adoが2022年のBillboard JAPANトップ・アーティスト・チャート“Artist 100”で総合首位を獲得し、アニメ映画「ONE PIECE FILM RED」から10曲がトップ100以内に入ったというニュースが話題となっています。

Ado自身も、多くの人に楽曲を聴いてもらえて嬉しいと感じているようです。特に、自身が歌った「ONE PIECE FILM RED」の曲がランキングに入ったことに驚きを感じたそうです。

歌番組に続々と出演!「UTA TV LIVE TOUR」

ウタが実施したライブツアー「UTA TV LIVE TOUR」は、全6公演で2019年12月に開催されました。また、12月14日に放送されたフジテレビ系の音楽特番「2022FNS歌謡祭」を皮切りに、TBS、テレビ朝日、日本テレビと各局の大型音楽特番にも出演し、衣装を変えたパフォーマンスやトークを披露しました。

ウタのキャラクターが現実世界で活躍するアーティストと肩を並べる様子は、多くのファンから注目されました。

ONE PIECE公式YouTubeチャンネル/YouTube
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このパフォーマンスに賛否両論が…。

12月19日のCDTVにて、クリスマス仕様の衣装をまとった「ウタ from ウタワールド」が3曲を披露し、好評を博した。一方、音源を使用したことに疑問の声もあがり、紅白では生歌披露を期待されていた。

新時代を告げる?史上初!アニメキャラ「ウタ」が紅白に出場!!

「ONE PIECE FILM RED」のヒロインであるウタが、紅組歌手として「第73回NHK紅白歌合戦」に出場することが決定、アニメキャラクターが紅白歌手として出場するのは初めての試みになりました。また、「ONE PIECE UTA LIVE RED×WHITE」というコラボレーション企画も実施。

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顔出しなしのAdoがアニメキャラ「ウタ」として出場!?

注目度の高い紅白歌合戦で、アニメキャラクターであるウタが紅組歌手として出場することは、多くの人々にとって大きな驚きであり、話題となりました。

また、Ado自身もこれまで顔出しをしておらず、どんな形でパフォーマンスをするのか注目がされた。制作統括の加藤英明氏は、「演出はまさにこれから。どうでしょうね」とコメントしており、具体的な情報はまだ公開されていません。

しかし、Adoは出場を決めたウタに向けてコメントを寄せ、当日のパフォーマンスに期待を寄せた。

音楽シーンの「新時代」

知られるように、Adoはボカロ曲の歌い手として活動をスタートし、基本的にネットを拠点に活動を続けている。社会現象にもなった「うっせぇわ」を経て、今回『ONE PIECE FILM RED』主題歌「新時代」などの大ヒットによって、次世代を担うシンガーとしての地位を確立したと言っても過言ではないだろう。

いわゆる「覆面歌手」として、これまでテレビに姿を見せたことのないAdoの実質的な“初出場”は、目立たないが『紅白』の歴史において大きな意味のあることに違いない。

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『ONE PIECE FILM RED』に登場する歌姫・ウタの歌唱パートを歌い手・Adoが担当。7組の豪華アーティストたちが同作のために楽曲提供した主題歌と劇中歌を収録! (C)RS

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