【音楽は世界を変える】スラムから世界に羽ばたいた“オーケストラ”⑤ 「ファベーラのオーケストラ」

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【音楽は世界を変える】スラムから世界に羽ばたいた“オーケストラ”⑤ 「ファベーラのオーケストラ」

El Profesor de Violín

映画「ストリート・オーケストラ」

oricon/YouTube

実話をもとにした映画!

São Paulo - SP

楽器の持ち方も知らない、当然、楽譜も読めないスラム街の子供たちが、クラシック音楽の教育との出会いを通して「エリオポリス交響楽団」を結成し、自身の運命やブラジル社会を変えていった奇跡の実話を映画化。

ストリート・オーケストラの上映スケジュール・映画情報/映画の時間

かつて“神童”と呼ばれたヴァイオリニストのラエルチは、交響楽団の最終審査に落ち、生活の為にスラム街の学校のヴァイオリン教師の職につく。

スラム街を変えた交響楽団。奇跡の実話がランクイン!今週公開!女性が注目する映画TOP5!/Filmers.2016

ある時、ギャングに襲われたラエルチは見事な演奏で彼らを逆襲した。音楽に感動したギャングたちが銃を下したということを聞いた子供たちは、暴力以外に人を変える力があることを知る。しかし、音楽の喜びに気付いた子供たちと、情熱を取り戻したラエルチのもとには、やがて思わぬ事件が待ち受けることになる。

映画『ストリート・オーケストラ』16年8月公開、スラム街の子供たちが音楽で運命を変えた感動の実話/ファッションプレス.2016

監督&キャスト

 音楽家の両親の元で育ったセルジオ・マシャード監督が、南米一と称されるサンパウロ交響楽団や実在するスラム街に結成されたエリオポリス交響楽団と半年に及ぶ撮影を経て制作。

【読者プレゼント】映画『ストリート・オーケストラ』(8/13公開)/ぶらあぼONLINE.2016

製作にあたり、脚本のマルタ・ネリングがエリオポリスに一時住んだ。一方、マシャード監督は地区を歩きに歩いて、登場人物をはじめ地域で暮らす人たち、また麻薬ディーラーなどギャングらの話にも耳を傾けた。現実をできるだけ物語に取り込むためだ。マシャード監督は、街の案内役となったエリオポリス交響楽団の草創期からのビオラ奏者、グラジエラ・テイセイラの話に衝撃を受けた。彼女の父や元夫は麻薬ディーラーで、5歳くらいの時、父と歩いていて手に銃を持たされた。父は抗争相手に近づくや彼女の手を取り、その手に銃を握らせたまま引き金を引いたという。「父親が娘にそんなことをするなんて、信じられなかったよ」と言うマシャード監督は、そうした現状を物語の背景に織り込みながら撮影に臨んだ。

『ストリート・オーケストラ』 撮影が呼び覚ましたトラウマ/朝日新聞GLOBE+.2016
スラム出身の俳優

 ブラジル最大の映画祭“サンパウロ国際映画祭”で観客賞に輝いた本作のメガホンを取ったのは、『セントラル・ステーション』で助監督を担当したセルジオ・マシャード監督。教師役は、自身もスラム街出身のブラジルの俳優ラザロ・ハーモスが演じ、生徒役の子どもたちは700名以上のオーディションから選ばれたという。

スラム出身の子どもがオーケストラを組む感動の実話 『ストリート・オーケストラ』予告映像公開/Real Sound.2016
「演技経験のある子は1人しか……」

彼らは全員スラム街出身で、演技経験のある子は1人しかいません。オーディションでは、自分の人生を語ってもらいました。そして子どもたちを初めて集めた日に、みんなの前でもう一度、自分の人生を語ってもらったんです。彼らはまだ子どもですが、すでに苦しみを十分に味わい、暴力などの痛みを感じているという共通点があります。他人の話を聞いて、涙する子どもたちを見た時、「この映画のことが分かった」と感じました。

ブラジル最大の映画祭、サンパウロ国際映画祭で観客賞を受賞『ストリート・オーケストラ』が公開/THE FASHION POST

ヒップホップ&オーケストラ

ギャガ公式チャンネル/YouTube

一般的に外国人の考えるブラジル音楽といえば、やはりサンバやボサノヴァ、それにカエターノ・ヴェローゾらを代表格とするMPB(Música Popular Brasileira)のイメージが強い。しかし本作で描かれるスラム街の若者にとってそれらの音楽は“伝統音楽”でしかなく、もっともリアルで親しみの感じられる音楽はヒップホップだ。

後編/リオ五輪開催中のブラジルから届いた奇跡の音楽物語!/MOVIE Collection.2016

 映画のなかでは、子どもたちが奏でるクラシック曲とクラブでのヒップホップが共存する。

スラムの子供たちがオーケストラに挑戦! 映画「ストリート・オーケストラ」監督が語る、相互リスペクト導く共同作業の尊さ/Mikiki.2016

映画で流れる、モーツァルト、ブラームス、バッハ、ラフマニノフ、チャイコフキーほか錚々たる作曲家の名曲にも注目だ。

映画『ストリート・オーケストラ』16年8月公開、スラム街の子供たちが音楽で運命を変えた感動の実話/ファッションプレス.2016
伝説のラッパー“Sabotage”
Sabotage/YouTube

ブラジルのスラム街の子どもたちによって結成されたクラシック楽団「エリオポリス交響楽団」誕生の実話を基にした映画「ストリート・オーケストラ」(セルジオ・マチャド監督)で、2003年に銃弾に倒れた伝説的ラッパー、サボタージによるエンディング曲「Respeito e lei(リスペクトすることが掟)」のミュージックビデオが公開された。

ブラジルの伝説的ラッパー、サボタージとクラシックがコラボのMV公開/映画.com.2016
Respeito e lei
Sabotage/YouTube

Sinfônica Heliópolis

ファベーラのオーケストラ「エリオポリス交響楽団」

Institutobaccarelli/YouTube

大都会サンパウロ“最大のファベーラ”「エリオポリス」

VEM DRONEAR – Dronear é um novo Verbo/YouTube

エリオポリスは、サンパウロで最も大きなファヴェーラで、南米大陸で2番目に大きなファヴェーラだ。2008年のテレビ番組の調査によるデータによると12万5千人が居住し、その半数以上の53%が25歳までの子供や若者だ。

映画『ストリート・オーケストラ aka VIOLIN TEACHER』公式サイト/GAGA
エリオポリスで生まれたオーケストラ!

同地で、青少年に無料で音楽教育を行うNGO「バカレリ協会(Instituto Baccarelli)」が組織したのがエリオポリス交響楽団である。

映画『ストリート・オーケストラ aka VIOLIN TEACHER』公式サイト/GAGA

全てはここから!バカレリ協会

Institutobaccarelli/YouTube

ところで、前述のエリオポリス交響楽団を組織する、青少年に無料で音楽教育を行うNGO「バカレリ協会」。その設立のきっかけは、1996年にエリオポリスで発生した大火災だったという。

未来をもっと輝かせるために(宇佐美浩子)/繊研新聞.2016
創設者「シルヴィオ・バカレリ」

テレビでその姿を見たシルヴィオ・バカレリは、エリオポリスの公立学校へ向かい、子供や青年たちにクラシック音楽で使う楽器を教えることを提案した。その提案に、学校の先生たちも驚いたが、何ヶ月後には、36人の子供たちがヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバスの練習を始めた。6か月後には、最初のコンサートを開いていた。

映画『ストリート・オーケストラ aka VIOLIN TEACHER』公式サイト/GAGA
「エル・システマ」の影響

そしてまた当協会に大きく影響を与えた活動が、実は他にある。それは1975年、ベネズエラで生まれた音楽教育プログラム「エル・システマ」だ。

未来をもっと輝かせるために(宇佐美浩子)/繊研新聞.2016

「ひとことで言うと、結びつきです。エル・システマでは、すべてがつながっている。演奏することと、音楽を奏でることの社会的意義。この2つが切り離されることはけっしてありません。合奏には他者への思いやりと協働という概念が必要なので、人として成長することにつながる。つまりオーケストラというのはコミュニティーなのです。みんなでハーモニーをつくりだす、ひとつの小さな世界なのです。これが芸術的な感性と結びつけば、どんなことも可能になる」
と、音楽教育であると同時に社会政策でもあるエル・システマで学んだことを語っている。

映画『ストリート・オーケストラ aka VIOLIN TEACHER』公式サイト/GAGA

スラムのストリートで練習

 音楽を通して若者に夢を持たせようとした。当初、練習できるスペースもなく屋外で練習していた(後略)

音楽を通してスラム街に住む若者に夢を持たせようとした。…/世界日報.2016

世界的指揮者「ズービン・メータ」と共演!そして……

Institutobaccarelli/YouTube

2005年にオーケストラが組めるようになったときにウィーン・フィルの名誉指揮者ズービン・メータが彼らを訪れた。演奏の質の高さに打たれたメータはその場でベートーヴェンの「運命」の指揮をとった。その後、彼らはサンパウロを代表するオーケストラに成長し、エリック・シューマンとの共演も果たした。

「1億人の大質問!?笑ってコラえて!」で紹介された情報 – エリオポリス交響楽団/価格.com

今や生徒は1000人以上!

バカレリ協会は現在、エリオポリス交響楽団の他、楽器の習得段階にある子どもたちが参加するオーケストラ「オルケストラ・ド・アマニャン(明日のオーケストラ)」、コーラスを学ぶための「コラル・ダ・ジェンチ(私たちの合唱団)」、公立学校網で合唱を学ぶ仕組みを管理しており、およそ1300人の子どもたちが同協会を通じて音楽を学んでいる。

映画『ストリート・オーケストラ aka VIOLIN TEACHER』公式サイト/GAGA

 マシャード監督は「ブラジルは多くの問題を抱えた国だ。だが、バカレリ協会で行われている取り組みを目にして、そうした問題を解決することが決して難しくないと考え始めた。例えば、刑務所を建てるよりも音楽学校を設立して運営した方がもっと安く済む。バカレリの生徒たちは音楽と触れ合ったことで人生がいかに変わったか。残念ながらブラジル政府は今ひとつそのことが理解できていないんだ」と不満顔だ。「国が兵器に使うお金、汚職政治家や富裕層が使い込んでいるお金の数%を使うだけで100のバカレリ協会が作れるんだ」

ブラジルの治安回復に有効な“日本発祥のもの”とは…音楽が人を再生させる「ストリート・オーケストラ」/産経ニュース.2016
この場所だけは安全!?ギャングからもリスペクト!!

エリオポリスでは今も、犯罪がどこかで起きている。だがマシャード監督は「実際に訪れて人々に接すると、彼らは変わる機会を探していることがわかる。バカレリ協会は麻薬ディーラーにも敬意を払われていて、トラブルに見舞われたことはないとのことだ。

『ストリート・オーケストラ』 撮影が呼び覚ましたトラウマ/朝日新聞GLOBE+.2016

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