『ベネズエラの奇跡』スラムから世界に羽ばたいた“オーケストラ”①

『ベネズエラの奇跡』スラムから世界に羽ばたいた“オーケストラ”①

El Sistema

ベネズエラの奇跡「エル・システマ」

El Sistema Japan/YouTube

エル・システマは、国立財団ベネズエラ児童青少年オーケストラシステム(FESNOJIV)による統括である。

発達障害児の社会適応とオーケストラ(p.9)/Waseda

非行防止・貧困撲滅のために国策として行われている「エル・システマ」は、子どもたちの音楽活動のみならず将来の働き口を確保することにより、社会全体の安定化を図るシステムです。「エル・システマ」に参加した子どもや青少年は、貧困層を中心に約78万人にのぼります。彼らは音楽学習を通じて道徳精神を育み、同国各地でオーケストラ活動や教職を通じて健全に社会参加しています。

コミュニティへの参画およびコミュニティの発展(p.101)/ヤマハ株式会社: コーポレートサイト

創設者「アブレウ博士」

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エル・システマが誕生したベネズエラでは貧富の差がとても激しく、ひと握りの裕福な家庭を除いて多くの子どもたちが厳しい環境で育ちます。そうしたコミュニティでは十分な教育の手が回らず、子どもたちは粗雑に扱われてきました。

音楽の力で、被災地の子どもたちの”心の復興”を。/真如苑救援ボランティア サーブ

この状況に手を差し伸べるため、ベネズエラの文化大臣を務めたアブレウ博士(経済学者・音楽家)がスタートさせたのがエル・システマです。

音楽の力で、被災地の子どもたちの”心の復興”を。/真如苑救援ボランティア サーブ
アブレウ博士って?
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1939年ベネズエラ生まれ。指揮者、ピアニスト、経済学者、教育者、活動家、政治家、元ベネズエラ文化大臣。61年にペンシルバニア大学より石油経済学の博士号を取得、同時にベネズエラ国立音楽院で作曲とオルガンを学び、64年同音学院卒業。その後、指揮者として活躍するほか、大学の経済学教授、ベネズエラの国会議員も務めた。75年「エル・システマ」を創設。貧困層の多い一般家庭の子どもたちに無償で楽器と音楽指導を提供し、全国各地にユースオーケストラを組織。

2013年度「平和の文化」特別賞 受賞者/五井平和財団

1983年にはベネズエラの文化大臣に就任、2009年にはユネスコのアンバサダーを務めている。ユネスコ国際音楽賞、アストゥリアス賞、ポーラー音楽賞、エラスムス賞、高松宮記念世界文化賞、ドイツ文化勲章など受賞多数。

訃報 〓 エル・システマの創設者、ホセ・アントニオ・アブレウが死去/月刊音楽祭
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「奏でよ、そして、闘え」

ネズエラ発祥のエル・システマのモットーは、「tocar y luchar(奏でよ、そして、闘え)」。

音楽で乗り越える勇気! ベネズエラと相馬の子どもオーケストラの交流プロジェクト/MotionGallery 

ここで言う闘うとは、自分を取り囲む困難を乗り越えろという意味。それは、貧困か、住む場所か、自然災害か、障害か、感染症か…。様々な困難があるからこそ、音楽の持つ意味があるのかと思います

tocar y luchar(奏でよ、いざ闘わん)/ エル・システマジャパン

最近は合唱も重要な活動のひとつとなり、モットーにも一語が加わった。「奏でよ、歌え、闘え」。

音楽は何のためにある? エル・システマ・フェス/チケットぴあ

無償で音楽教育が受けられる!

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ベネズエラの音楽の奇跡として知られるエル・システマは、何十万人ものベネズエラの子供や若者たちにとって、音楽教育を無償で受けられる革新的な育成の場です。

エル・システマ | ベネズエラ/ベネズエラ大使館

 この『エル・システマ』に加わっているメンバーの約75パーセントが貧困層に属する子供たちで、音楽をやってみたいと思った子供たちは、3歳になると希望する楽器を国から無料で貸与され、全国各地にある研修所に通うことができるという(そのため財団は、日本やヨーロッパ諸国から、中古の楽器の寄付を募っている)。

いま、ベネズエラで起きている「大事件」 玉木正之コラムノンジャンル編/玉木正之公式WEBサイト『カメラータ・ディ・タマキ』

エル・システマの教育メソッドは、ピアラーニング(Peer Learning。”ピア”とは英語で仲間の意)です。学校のクラブ活動を思い浮かべていただくと、分かりやすいかもしれません。クラブ活動には先輩後輩がいて、先輩が後輩を教えますが、エル・システマも、この仕組みです。

音楽の力で、被災地の子どもたちの”心の復興”を。/真如苑救援ボランティア サーブ
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ここから世界的な音楽家を多数排出

エル・システマからは、グスタボ・ドゥダメルやクリスティアン・バスケス、ディエゴ・マテウス、ディートリヒ・パレデスなどの世界的に有名な指揮者や、フランシスコ・“パチョ”・フローレスやエディクソン・ルイスなど素晴らしいソリストたちが輩出されています。

エル・システマ | ベネズエラ/ベネズエラ大使館
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Pacho Flores/YouTube
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世界の超一流音楽家も賛同!

アルゲリッチ、アバド、ラトル、ペンデレツキ、ロストロポーヴィチら著名な音楽家もこの活動に賛同し、カラカスに出向いて指導したり、共演したりしている。同様の試みは他の中南米諸国にも広がっている。

2006年 第10回 若手芸術家奨励制度/高松宮殿下記念世界文化賞.2006

政府の全面バックアップ!

エル・システマの事業は、90%以上を政府の支出によっており、その意味で政権に支えられてきた。特にチャベスはエル・システマを多方面に拡大し、積極的に援助してきた。マドゥロの弾圧に対する抗議行動の中で、逆に政治的な追究もなされている。芸術と政治のあり方をどのように考えればよいのかという課題を提起しているといえる。

エル・システマの研究(下)―刑務所におけるオーケストラ活動の矯正教育的側面を中心に―(p.41)/太田 和敬

……犯罪多発国家「ベネズエラ」で逮捕者0人

世界有数の石油産出国のベネズエラは、貧困層が50%を占め、南米一の犯罪多発国でもある。しかし、この財団の子供が犯罪で逮捕されたことはないという。

2006年 第10回 若手芸術家奨励制度/高松宮殿下記念世界文化賞.2006

演奏している人は指揮者も含め全員ベネズエラの子どもや若者たち。貧困層の子どももそうですが両親がいない、家族がいない、という子も何人もいるそうです。エル・システマに所属している子ども達は「自分は一人じゃない」「私も頑張れば音楽の世界で生きて行ける」「演奏ってこんなに楽しい!」「私たちの演奏で感動してくれる人がこんなにたくさんいる」と自分の居場所を見つけ、音楽を通して自信をつけながら社会の階段を登ります。

ベネズエラ発祥の音楽教育『エル・システマ』/スペイン留学.jp.2019

 もちろん、ベネズエラの人口約2500万人の約1パーセントが参加する活動によって、貧困や麻薬や犯罪が解消できるとは思えない。が、わずか20数年で、これほどまでに多くの若者たちを「救い」、アイデンティティと生きる希望を与えた活動は、絶賛されるべきだろう。

いま、ベネズエラで起きている「大事件」 玉木正之コラムノンジャンル編/玉木正之公式WEBサイト『カメラータ・ディ・タマキ』

2004 年のロス・アンデス大学の調査によると、「エル・システマ」の参加者の 63%が学業において Good から Excellent の成績を達成している(「エル・システマ」参加者以外では 50%)。また参加者 家族への調査によると、子供達の時間厳守、責任感、規律が改善されたという結果が出ている。

~オーケストラは子供を救う~青少年人材育成システム「エル・システマ」ファクトシート

確実なステップアップ!初心者から世界的なプロへ!?

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楽器がまったくできない子どもでも,好きな楽器を選んだら,オーケストラの部員として指導されます.音が出たときの喜び,ハーモニーが生まれるときの楽しみを大切にすれば,おのずと子どもたちは音楽に熱中するからです.彼らを教える教師たちの中には,エル・システマで育った人たちもいます.彼らはそこで働くことによって,音楽で生計を立てていくことが可能となり,同時に次の世代を育てていくのです

UNICORN English Communication 1 : LESSON 6 El Sistema: The Miracle of Music 教科書題材の背景(p.16)/文英堂

 しかも、その教育内容がユニークで、まだ楽譜も満足に読めないうちから児童オーケストラの一員となり、ベートーヴェンやチャイコフスキーの交響曲を演奏するのだ。

いま、ベネズエラで起きている「大事件」 玉木正之コラムノンジャンル編/玉木正之公式WEBサイト『カメラータ・ディ・タマキ』

オーケストラは三段階であり、はじめの国立児童オーケストラは小中学生、ユース・オーケストラ21は中高生、国立シモン・ボリバル交響楽団はそれ以上と分かれている。ユース・オーケストラは奨学金が、シモン・ボリバル交響楽団では給与が支給される。なお、年齢の区切りは試験次第で飛び越えることができる。従って、年少児を持つ親にとっては無料かつ文化的な素養を学べる託児所であり、貧しい家の出身者にとっては、エル・システマで出世することで練習資金はもとより生活資金まで手に入れることができる、という仕組みになっている。また、ユース・オーケストラ以上は現在精力的に海外公演をこなし各国から高い評価を得ている。

発達障害児の社会適応とオーケストラ(p.12)/Waseda

今や国を代表するオーケストラ「シモン・ボリバル交響楽団」

El Sistema/YouTube

ベネズエラを代表するシモン・ボリバル交響楽団はエル・システマで育った音楽家が集まって1999年に結成された楽団である。この楽団を代表する指揮者グスタボ・ドゥダメルは現在世界的に著名な指揮者のひとりとなっている。

ベネズエラの交響楽団から演奏家の国外流出が止まらない理由/アゴラ 言論プラットフォーム.2017

ベネズエラは、正式名称をベネズエラ・ボリバル共和国といい、ボリバルは、南米の独立戦争の英雄シモン・ボリバルに由来する。これは、エル・システマの主要なオーケストラであるシモン・ボリバル交響楽団でも使われている。

エル・システマの研究(下)―刑務所におけるオーケストラ活動の矯正教育的側面を中心に―(p.43)/太田 和敬
国連平和親善大使
djquichua/YouTube

ベネズエラでの活動は国連のSDG’sのモデル事業にも認定され、代表オーケストラであるシモン・ボリバル・ユース・オーケストラ・オブ・ベネズエラは、国連平和親善大使として世界各地で演奏しています。

音楽で橋を架ける!エルシステマ・コネクトの新たな挑戦!/CAMPFIRE

世界的指揮者「グスタボ・ドゥダメル」

Gustavo Dudamel/YouTube

ダイナミックかつ情熱的な指揮ぶりで全世界を魅了するグスターボ・ドゥダメルはベネズエラ出身の指揮者。

BIOGRAPHY – グスターボ・ドゥダメル | Gustavo Dudamel/ユニバーサル ミュージックジャパン公式サイト

 貧困児童のための音楽プログラム〝エル・システマ〟を創始したホセ・アブレウ卿に見いだされ、ベネズエラの「成り上がりの象徴」でもあるスーパースターと言っていい。

ベネズエラ人指揮者は「自由の戦士」として闘うグスターボ・ドゥダメル氏と暴政の闘いから私たちが学ぶべきもの/論座 – 朝日新聞社の言論サイト.2017

エル・システマで教育を受けたあと、18歳の時にベネズエラのオーケストラ「シモンボリバル・ユース・オーケストラ」の指揮者となり世界各地でツアーをし絶賛を受ける。23歳でバンベルク交響楽団の第1回グスタフ・マーラー指揮者コンクールに優勝(後略)

グスターボ・ドゥダメルさん、PICKBOYの指揮棒をお使いいただきありがとうございます。/株式会社ナカノ

 2005年DGと契約、ロス・フィルを振って全米デビュー。2006年ミラノ・スカラ座デビュー。2007年ルツェルン音楽祭でウィーン・フィルを振る。2008年ヴァルトビューネでベルリン・フィルを指揮。

BIOGRAPHY – グスターボ・ドゥダメル | Gustavo Dudamel/ユニバーサル ミュージックジャパン公式サイト
100年に1人の天才

2009年には、世界のメジャー・オーケストラの一つ、ロサンゼルス・フィルハーモニック音楽監督に二十代で就任。これは、メータ以来、半世紀ぶりの出来事で、欧米のマスコミには「百年に一人の天才」と言われるようになり、『タイムズ』は「世界で最も影響力のある百人」の一人としてドゥダメルを挙げた。この間、ドゥダメルは、ベルリン・フィル、コンセルトヘボウ管弦楽団、ニューヨーク・フィルなど世界のあらゆるトップ・オーケストラを指揮するばかりか、世界のトップ・オーケストラの次期音楽監督として早くも下馬評があがっている。

ウィーン・フィルハーモニー ウィーク イン ジャパン2014:ドゥダメルの魅力/サントリー ホームページ
史上最年少で“ウィーンフィルニューイヤーコンサート”の指揮者!
ViennaPhilVEVO/YouTube

世界中の主要オーケストラからオファーが殺到し、2017年1月1日には、指揮者として最高の栄誉といってよいウィーンフィルニューイヤーコンサートの指揮台にダントツの最年少として登壇した。これは、紅白歌合戦のトリを新人の中学生歌手がいきなり歌うくらい、異例なことだ。

ベネズエラ人指揮者は「自由の戦士」として闘うグスターボ・ドゥダメル氏と暴政の闘いから私たちが学ぶべきもの/論座 – 朝日新聞社の言論サイト.2017
世界が衝撃「踊るオーケストラ」
Gustavo Dudamel/YouTube

ドゥダメルの名を一躍世に知らしめたのが、2007年のBBCプロムスなどで見せた「マンボ(レナード・バーンスタイン作曲)」だ。

年俸3億の天才指揮者ドゥダメルが語る「至高の音楽が生まれるまで」/COURRIER JAPON.2019

彼がいまでも音楽監督を務めるベネズエラのユースオーケストラ「シモン・ボリバル楽団」によるこの演奏で、奏者たちはみなベネズエラ国旗を模したカジュアルなジャケットを身にまとい、軽快なリズムにあわせて踊りながらマンボを演奏した。

年俸3億の天才指揮者ドゥダメルが語る「至高の音楽が生まれるまで」/COURRIER JAPON.2019

クラッシック音楽のコンサートとは思えない型破りな演奏と、「マンボ!」の掛け声にあわせて生まれる会場の一体感はドゥダメルの音楽の代名詞となり、彼が人気指揮者の階段を駆け上がるきっかけとなった。

年俸3億の天才指揮者ドゥダメルが語る「至高の音楽が生まれるまで」/COURRIER JAPON.2019

世界各国で広がる「エル・システマ」のプログラム

Froid International/YouTube

現在では国の支援も受けベネズエラ国内だけで参加者40万人規模、世界では60以上の国や地域で、エル・システマを利用したり、触発された活動が行われたりしている。〝オーケストラ教室〟としては、むろん世界最大だ。

日本でエル・システマに触れる機会~~世界を席巻するオーケストラ教室「エル・システマ」とは/毎日新聞.2017

どんな国でエル・システマのプログラムが展開されているかというと、たとえば移民や難民の多いヨーロッパ。ギリシャやスウェーデンなどでは、難民キャンプの横に活動拠点を設け、どの人種の子どもであったとしても誰もが参加しやすい体制にしている。

音楽が子どもたちにもたらす大切なもの〜世界子ども音楽祭が開催/ヤマハ

また、音楽が盛んなオーストリアにもエル・システマのプロジェクトがあり、活動の多くが学校で行われている。

音楽が子どもたちにもたらす大切なもの〜世界子ども音楽祭が開催/ヤマハ

ニュージーランドでは、先住民と白人との歴史的背景があるなかで、どんな子どもでも受け入れるエル・システマのプロジェクトを2011年に開始。ニュージーランドの文化遺産省とオークランド交響楽団の共同プログラムとして設立された。

音楽が子どもたちにもたらす大切なもの〜世界子ども音楽祭が開催/ヤマハ

アジアはというと、韓国でエル・システマのプログラムが導入されていて、地方オーケストラ団体がいくつもある。農村や山岳地、漁村など、都心のように芸術に十分触れることができない地域の子ども達にも、音楽を届けるためだ。

音楽が子どもたちにもたらす大切なもの〜世界子ども音楽祭が開催/ヤマハ

自殺,不登校,引きこもり,学級崩壊な どの問題を抱える「先進国」日本でもFriends of El Sistema Japan がエル・システマの導入活動を行って います.

UNICORN English Communication 1 : LESSON 6 El Sistema: The Miracle of Music 教科書題材の背景(p.17)/文英堂
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“100年に一人”の若き天才指揮者と「エル・システマ」アーティストたちの驚くべき才能と熱き魅力に初めて迫る。(「BOOK」データベースより)

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