【世界のスラム街】“キベラ”に次ぐケニア第2のスラム「ムクルスラム」

【世界のスラム街】“キベラ”に次ぐケニア第2のスラム「ムクルスラム」

Mukuru Kwa Njenga

ムクル・クワ・ネンガ

Africa Uncensored/YouTube

ケニアの首都ナイロビのスラムは、南アフリカ共和国のソウェトに次いで、アフリカ第2の規模と言われています。ナイロビで一番大きなスラムが街の南に広がるキベラ・スラム、二番目が街の東南に位置する工場地帯に隣接するムクル・スラムです。

【ケニア/スラム】青少年の支援活動を開始予定~ナイロビのスラム~(2012.03.12)/Save the Children Japan.2012

ムクル・スラムはナイロビの3大スラムのひとつと言われ、約60万の人々が暮らしている。「ムクル」はキクユ語でダンプサイトを意味し、ごみの山の上にできた街であることに由来する。

したたかに「生きる」世界のトイレ──ナイロビのスラムから(前編)/LIXIL ビジネス情報

ムクル・スラムは家賃が比較的安く、他のスラムに比べて若者が多く住んでいます。多くの人々は隣接する工場、もしくは男性であれば建設現場の日雇いや警備員、女性であればスラムの南に位置するエステートと呼ばれる住宅街で掃除婦として働き、生計を立てています。一方で、仕事がないため、日中はベースと呼ばれる場所でたむろしている若者も多くいます。エイズ、ドラッグなどの問題も深刻です。

【ケニア/スラム】青少年の支援活動を開始予定~ナイロビのスラム~(2012.03.12)/Save the Children Japan.2012

家は厚紙・プラスチック・トタン

家は厚紙やプラスチック素材で建てられ、少し金銭に余裕があればトタン板が使える。

手洗いが難しい国、どうすれば? 新型ウイルス対策の壁/BBCニュース.2020

1~2階建てのトタンの長屋が立ち並び、10~30世帯、40~120人ほどがひとつの長屋で生活している。

したたかに「生きる」世界のトイレ──ナイロビのスラムから(前編)/LIXIL ビジネス情報
コンクリートの建築物も混在

ナイロビでは一般的に土やトタンでできた仮設の建物が立ち並ぶ市街地はスラムと呼称されるが、ムクル・クワ・ンジェンガ内には一般的に呼ばれるところの“スラム”だけでなく、コンクリート㐀の恒久的な建物が立ち並ぶ“都市的な”市街地も混在している。

アフリカの市街化プロセスに関する実証的研究:ナイロビのインフォーマル市街地における土地所有の管理・建築行為・公共空間の管理に着目して(p.2)/小野 悠.第 55 回土木計画学研究発表会・講演集.土木学会

ゴミはそのまま川に……

Nation/YouTube

ごみの回収は行われておらず、その大半がそのまま川に流される。

手洗いが難しい国、どうすれば? 新型ウイルス対策の壁/BBCニュース.2020

ケニアは毎年、約4,000万リットルの新油から約1,300万リットルの使用済み油を生産しています。このような大量の非常に有毒な廃棄物は、保管と安全な処分のためによく計画されたメカニズムを必要とします。残念ながら、ほとんどの使用済みオイルは下水道に投棄されるか、道路建設の材料として使用されます。さらに憂慮すべきは、この危険な廃棄物のほとんどが、ナイロビのムクルスラムを流れるゴン川など、多くのスラムコミュニティが依存するさまざまな川に投棄され、5,000世帯近くと推定50,000人に水を供給しているという事実です。 。

コリンズ・アプオヨ/Changemaker Library

闇で売買……無法地帯のインフラ

スラム内では一般にインフラ整備が十分に行き届いておらず、電気、上水、下水に関しても正規のサー ビスを補う形でスラム独自の違法な整備が行われている

スラムにおける遊び(p.1)/井本 佐保里.年次活動報告書 2014.公益財団法人中山隼雄科学技術文化財団
水は有料……生きるために購入

ムクルでの生活がどのようなものか 簡単に言うと 1つの蛇口を550人が使い 水道料金は 都市の他地域の9倍です 上水道が整備されていないためで 水は買うものなのです

貧しい人々を都市計画に参画させたなら?(13:19)/ドクターズゲート

水は飲料用や調理用だけでなく、衣服を洗濯したり、身体や顔を洗ったりと生きていくためになくてはならないものであるが、ムクル・スラムでは20Lの容器1杯あたり5ksh(ケニア・シリング、1ksh=約1円)で売られている。これは水の販売を生業とする人々が水道会社の水道管に無断でパイプをつないで導水してきたものである。週末などに1週間分をまとめて購入して自宅に保管しておくことが多い。

したたかに「生きる」世界のトイレ──ナイロビのスラムから(後編)/LIXIL ビジネス情報
法外な値段

水を得るには、スラムの周囲に点在する水商人から買う以外に方法はなかった。だが彼らが法外な値段で販売する水は、政府が設けた給水所で仕入れるか公営水道から直接盗んできたもので、汚れていることも多かった、と9人の子どもの母親であるムトニさんは語る。

焦点:ナイロビのスラム、「自販機」がもたらす安全で低コストの水/REUTERS.2021

ムトニさんは、20リットルのポリタンク1杯分の水が、高ければ50ケニアシリング(約50円)すると話した。世界銀行によれば、ナイロビのスラム住民の多くは1日1.9ドル(約210円)に満たない所得で暮らしており、水がこの価格では生活が破綻しかねない。

焦点:ナイロビのスラム、「自販機」がもたらす安全で低コストの水/REUTERS.2021
水の自動販売機

市当局がスラムの水問題を緩和するために設置を進めている、トークン投入式の自動販売機を利用するだけだ。

焦点:ナイロビのスラム、「自販機」がもたらす安全で低コストの水/REUTERS.2021

ナイロビ市上下水道公社(NCWSC)のエンジニアとしてシステム開発に携わるカギリ・ギチェハ氏によれば、このプロジェクトは最終段階にあり、自動販売機の設置を待つばかりとのことだ。

焦点:ナイロビのスラム、「自販機」がもたらす安全で低コストの水/REUTERS.2021
電気も闇で売られる

電気もまた同様に、この販売で生計を立てている住民がいて、電力会社の電気を無断で引っ張ってきて各戸につないでいる。筆者が住んでいた長屋では、部屋ごとに毎月450kshを業者に払って電気を使用していた。頻繁に停電するため、灯油で使えるランタンとローソクの常備が不可欠だ。長屋に暮らす子どもたちが、夜真っ暗ななか、ローソクを片手に学校の宿題をしている姿が思い出される。

したたかに「生きる」世界のトイレ──ナイロビのスラムから(後編)/LIXIL ビジネス情報

彼らは、電力会社の電線から電気を引っ張ってきて各戸に供給し、住民から電気料を徴収して生活している。サービスレベルはひどいもので、筆者が住んでいた約半年間、夕方自宅に戻って夕食をとり寝るまでの間、電気がずっと点いていた日は1日たりともなかった。何日もまともに電気が使えないような時期もあった。スラム内の数百世帯の住民が夜になると一斉に使うのだから、地域の電力供給量を圧迫して停電になるのも不思議はない。

したたかに「生きる」世界のトイレ──ナイロビのスラムから(後編)/LIXIL ビジネス情報
地元の闇業者が電線を切断

電力導入後にあらためてムクル・スラムを訪ねてみると、たしかに電柱が整然と立ち並び、電線が張り巡らされている。しかし、住民に話を聞いてみると、電力会社からの電気はまだほとんど使えず、あいかわらず地元業者から購入しているというのだ。というのも、地元業者が自分たちの仕事がなくなることを恐れて、電力会社の電線をことごとく切って回っているのだとか。電力会社から正規に買ったほうが安くて安定したサービスが得られるというのはよく知られたことである。一部の住民の妨害によって多くの住民が迷惑を被っているわけである。

したたかに「生きる」世界のトイレ──ナイロビのスラムから(後編)/LIXIL ビジネス情報

超絶狭い空間での共同生活

ムクル・クワ・ンジェンガの土地を法的に所有しているのは、民間の個人や企業である。しかし、同地域で建物を建設しているのはストラクチャ・オーナー(以下、オーナーとする)と呼ばれる土地所有者であり、彼らは法的な土地所有権を有さずに、建物を建設して部屋を賃貸している。

アフリカの市街化プロセスに関する実証的研究:ナイロビのインフォーマル市街地における土地所有の管理・建築行為・公共空間の管理に着目して(p.5)/小野 悠.第 55 回土木計画学研究発表会・講演集.土木学会

ムクル・クワ・ンジェンガにおける一般的なユニットは11戸。いわゆる中廊下型の集合住宅だが、ユニット同士が道路以外の三面を接するかたちでぎゅうぎゅう詰めに建っているので、外部に向けての窓はなく、廊下に面して窓と玄関ドアが並んで取り付いている。個室ひとつのサイズは3×3m=約9?Fとかなり狭く、そこに多い場合は家族7?8人が暮らしている場合もあるようなので、極限まで過密な状態だと言っていいだろう。

ナイロビに見る未来を占う存在としてのスラム//LIXIL ビジネス情報

独立した部屋としてのキッチンはなく、水はタンクで購入し、七輪を使用して調理する

ナイロビに見る未来を占う存在としてのスラム//LIXIL ビジネス情報

スラムのトイレ

Yu Yamakami/YouTube

トイレは共同で、道路側に3つの個室が並び、そのうちのひとつが水浴び場になっている場合もある。

ナイロビに見る未来を占う存在としてのスラム//LIXIL ビジネス情報

セメントで固められた地面の穴に排泄物を溜めていくタイプの、いわゆるボットントイレである。はっきり言って快適とはほど遠い。トイレの扉を開けると強烈な臭いが鼻を刺す。床にはゴキブリが這い、天井には蜘蛛が巣をつくって鎮座している。上下の虫たちに気を遣いながら、けっして穴の中を見ないように、足を置く場所を見きわめ、穴の位置に構え、的を外さないように細心の注意を払って用を足すのだ。電気のないトイレは昼間でも薄暗く、夜になると真っ暗だ。

したたかに「生きる」世界のトイレ──ナイロビのスラムから(前編)/LIXIL ビジネス情報

足についた病原菌が、水や食べ物を介して口に入り、下痢を引き起こす。コレラや腸チフスの発生は珍しくない。下痢で命を落とす5歳未満児は、南アジアやアフリカを中心に世界で年間約76万人。肺炎に次いで多い(WHO調べ)。

トイレをわが手に/朝日新聞GLOBE+.2015
アレが空を舞う……フライング・トイレ

さらに治安が悪いことと、雨の日にトイレに行くには一旦外に出なければならないことから、一部の人々はスーパーなどのビニール袋に排泄して屋外に投げ捨ててしまうという。これらはフライング・トイレットなどと呼ばれている。

ナイロビに見る未来を占う存在としてのスラム//LIXIL ビジネス情報

有料!トイレのビジネス

穴の中が排泄物でいっぱいになると長屋のオーナーが汚物回収業者を手配してくれる。男性の2人組がタイヤの付いた手押し車にドラム缶を載せてやってくる。スコップを使って穴から汚物を汲み取り、ドラム缶に移していく。ドラム缶に入れられた汚物は運び出され、マンホールから下水管に流したり、川に捨てたりする。この汚物回収サービスは、200Lのドラム缶1杯あたり、250~500ksh(ケニア・シリング、1ksh=約1円)の料金がかかる。金額に幅があるのは汚物の回収場所から廃棄場所までの道のりによって決まっているからである。距離があるほど、また、細い道やぬかるんだ道など道の状態が悪いほど料金は高くなる。汚物回収は彼らのビジネスであり、労働の負荷に応じてサービス料金を決めているのだ。

したたかに「生きる」世界のトイレ──ナイロビのスラムから(前編)/LIXIL ビジネス情報
パブリック・トイレ

トイレのない長屋の住人や学校の子どもたちはパブリック・トイレを使うことになる。もちろん、商店街で働いている人や外出中の通行人などもパブリック・トイレを使うことがある。

したたかに「生きる」世界のトイレ──ナイロビのスラムから(前編)/LIXIL ビジネス情報

大人が5ksh、子どもが2kshというのが1回あたりの使用料の相場である。また月極の契約も行なわれている。

したたかに「生きる」世界のトイレ──ナイロビのスラムから(前編)/LIXIL ビジネス情報

こうしたシステムを採っているのはパブリック・トイレのオーナーである。トイレを設置し、日常的に掃除をして、壊れたら修理し、汚物が溜まったら回収業者を手配する。初期費用を回収し、メインテナンス費用をまかないつつ、利益を出すために、トイレの使用料をとっているのだ。

したたかに「生きる」世界のトイレ──ナイロビのスラムから(前編)/LIXIL ビジネス情報

密造酒「チェンガー」

11月16日の新聞から、ナイロビのムクル地区での密造酒による被害が報道され始めた。病院に運び込まれる人の数は日ごとに増え、18日の新聞によると113名が死亡、400名以上が入院。命が助かっても失明する者も出ている。11月15日にスラムで製造され、ナイロビの各地で売られた密造酒にメタノール(メチルアルコール)が入っていたのである。

2000年[第13号]憲法改正案の国民投票の結果/CanDo アフリカ地域開発市民の会

「チャンガー」と一般に呼ばれる密造酒による被害は初めてではない。ケニアでは都市、農村にかかわらず売られており、毎年何百人もの人が命を落としたり失明したりしている。しかし、その危険性を知らない人もまだ多いようである。

2000年[第13号]憲法改正案の国民投票の結果/CanDo アフリカ地域開発市民の会

もちろん密造酒は違法であるが、警察官はそれを取り締まるどころか口止め料として、ただで飲んでいるケースもあるらしく、白昼堂々と売られている。

2000年[第13号]憲法改正案の国民投票の結果/CanDo アフリカ地域開発市民の会

密造酒は、コップ1杯を10ケニアシリング(約15円)で売っていることから、スワヒリ語の10=クミから、「クミクミ」ともいう。「たった10ケニアシリングで命を落とした」と被害者の家族は嘆いている。チャイ(ミルクティー)が1杯、6ケニアシリング、ビールは1 本、50ケニアシリング。クミクミは安くて、おいしくて、いやなことを忘れられる、と特にスラムでは日常的に飲まれている。

2000年[第13号]憲法改正案の国民投票の結果/CanDo アフリカ地域開発市民の会

スラムの学校「インフォーマルスクール」

 大都市ナイロビでは、他の多くの自治体とは異なり市が直接公立学校を供給している状況にある。一方で、市内に多く点在するスラムの1つであるムクルスラム内(人口約7万人)に存在する公立学校は6校のみである。圧倒的な公立小学校不足の中、近年台頭しているのがノンフォーマルスクールである。

ケニア・ナイロビスラムのノンフォーマルスクール調査/復興デザイン研究体 – UT-ReSU
ノンフォーマルスクールって?

ノンフォーマルスクールとは、国が定める施設基準等に達しておらず、教育省による認可を受けていない学校を指す。一方、そのほとんどが社会開発省より「自助努力団体」としての認可を受けている。しかしこの認可においては施設整備状況や教育内容は測られない。あるノンフォーマルスクールの校長によれば、同スラム内に少なくとも70校のノンフォーマルスクールが存在しているという。

ケニア・ナイロビスラムのノンフォーマルスクール調査/復興デザイン研究体 – UT-ReSU

多くの学校は、最初は近隣の小さな子どもを数人集めて小さな幼児教室のような形でスタートし、賃貸住宅の1室(概ね3×3メートル)で生まれています。その後、徐々に子どもの数が増えていくと、学校としての形を成していきます。

ムクルスラムにおける学校空間―地域空間の理解【研究プロジェクト】/Spatial understanding of school/neighborhood at Mukuru Kwa Njenga/Mukuru Design Unit.2020

地元の非政府団体(NGO)メルシー・ムクルが運営する4つの小学校には、合わせて約7000人の生徒が通っている。同団体のメアリー・キリーン会長によると、生徒の半分がせっけんも買えない状況だという。

手洗いが難しい国、どうすれば? 新型ウイルス対策の壁/BBCニュース.2020

また、これらの多くの学校は独自のトイレや校庭を持たず、地域内のトイレを有料で借り、スラム内の路地や空き地を校庭の代替として利用している場合が多い。その他、ほとんどの学校では給食を提供しておらず、子どもは昼休みになると帰宅し自宅で食事を済ませることになっている。このような学校は地域の資源を利用することではじめて成り立つもので、学校空間を地域にまで広げることでようやく成り立っている様子が見えてくる。

ケニア・ナイロビスラムのノンフォーマルスクール調査/復興デザイン研究体 – UT-ReSU
高校に進むことも!

ムクルでは、地区内の約半分の子どもたちがノンフォーマルスクールに就学していると推察され、多くの子どもが学習の機会を得ています。しかしケニアでは、こうした認可を受けない学校の子どももKCPE(Kenya Certificate of Primary Education)の受験資格を得ることができ、Secondary School(高校)に進学する道も開かれています。

ムクルスラムにおける学校空間―地域空間の理解【研究プロジェクト】/Spatial understanding of school/neighborhood at Mukuru Kwa Njenga/Mukuru Design Unit.2020
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インド、フィリピン、ペルー、グアテマラ、エジプト、ケニア、ウガンダ――そのスラムに潜む、希望、貧困、性、子どもと老人、疫病、安寧、犯罪、幸福…。 スラムは富以外のあらゆるものを内包して、まるで生命体のように際限なく成長していく。 世界中のスラム街を鮮烈に撮り下ろした衝撃の写真集。(「紀伊國屋書店」データベースより)
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