本記事では、大量生産・大量消費がもたらした経済成長と技術革新について解説し、同時に大量廃棄物がもたらす環境問題についても取り上げます。
また、公害問題が深刻化した日本の事例を交えながら、大量廃棄社会が引き起こす問題について詳しく説明します。本記事を読むことで、大量生産・大量消費がもたらす利点と負の側面、そしてこれからの社会における持続可能性について考えるきっかけになれば幸いです。
「あなたはだんだん欲しくなる」大衆消費社会の罠から脱却する方法《資本主義(8)》
Mass disposal
大量生産・大量消費の裏に大量廃棄
大量生産・大量消費は、資源を効率的に活用し、多くの製品を低コストで提供することができるという利点があります。これにより、多くの人々が豊かな生活を享受することができるようになりました。しかし、このような経済活動がもたらす影響は決して小さくありません。
大量生産・大量消費・大量廃棄の時代の恩恵と問題点
20世紀の大量生産、大量消費、大量廃棄の時代は、経済成長と技術革新によってもたらされました。工業技術や農業技術の進歩により、商品やサービスが安価で大量に供給されるようになり、人々の生活水準は向上しました。以下に、20世紀のいくつかの重要な変化を示します。
- 工業技術の進歩: 自動車、家電製品、航空機などの工業製品が量産されるようになり、消費者に広く普及しました。これにより、人々の移動手段や生活スタイルが劇的に変化しました。
- 農業技術の革新: 農業技術の向上によって、食糧生産が増加し、飢餓や栄養不良の問題が軽減されました。また、食品加工技術の進歩により、食品の保存性や利便性が向上しました。
- 情報技術の発展: コンピューターやインターネットの登場によって、情報の収集・共有・処理が容易になり、ビジネスや学術、エンターテイメントなどの分野で大きな変革が起こりました。
- グローバリゼーション: 貿易の自由化や国際協力の拡大により、世界各地で資源や労働力が共有されるようになり、企業は国境を越えて事業を展開するようになりました。
しかし、このような経済成長や技術革新による恩恵の一方で、環境破壊や資源の枯渇、廃棄物の増加などの問題も顕在化しました。また、大量生産・大量消費・大量廃棄のサイクルにより、環境や地球の持続可能性に対する懸念が高まりました。
新商品を売るために手持ちの物を捨てさせる
大量生産・大量消費・大量廃棄の社会では、新製品の販売促進のために、既存商品を破棄することが一つの特徴となっています。大量生産がもたらす製品コストの低下と価格競争力の向上により、消費者には手ごろな価格で商品が提供されるようになりました。
ただし、これらの商品は耐久性が劣り、修理やメンテナンスが難しく、短期間で使い捨てられることが前提となっているのが現状です。
企業の利益のために必要
企業が利益を上げるためには、生産した商品を販売することが不可欠です。また、より多くの商品を売ることで、企業は利益を増やすことができます。そのため、大量生産は企業にとって重要な役割を果たしていました。
大量生産によって、コストを抑えて効率的に商品を生産することができます。また、一度に大量生産することで、商品の価格を下げ、消費者にとって手頃な価格で提供することができます。
資本主義の中で企業は生き残るために利益追求!
資本主義経済においては、企業が利潤を最大化することが最も重要視されています。そのため、企業は生産性を向上させ、コストを抑えることで商品価格を下げ、より多くの商品を売ることを目指しました。
そしてこのような経済活動によって、大量生産・大量消費・大量廃棄というサイクルが生まれてしまいました。
“国の発展”に必要不可欠
このように大量生産は、大量消費が存在することで初めてその効果を発揮するシステムです。また、人々の物欲を刺激し、増え続ける人口を維持するためにも、このシステムは必要不可欠な要素でした。
多くの製品が市場に流通し、新商品が登場する度に古いものは廃棄されます。本来は生活に不要なものであっても、消費社会の欲望によって売買されることで、20世紀の経済は発展を遂げてきました。このような経済システムによって、企業は大量生産による生産性向上と、大量消費による利益増大を実現し、経済発展を遂げることができました。
その結果、地球の汚染が始まった…。
大量消費社会は、消費者の欲求を満たすために大量生産が行われ、その結果、環境問題や資源枯渇、廃棄物の増加などの負の側面をもたらしました。
大量生産と大量消費によって生まれる大量廃棄物は、自然環境に深刻な影響を与え、地球温暖化や環境破壊などの問題を引き起こしました。廃棄物の処理には多大なエネルギーが必要であり、そのために二酸化炭素などの温室効果ガスが排出され、地球温暖化を引き起こす原因となりました。
公害問題の深刻化
1970年代には、日本では公害が深刻な社会問題となりました。大気汚染や水質汚染が広がり、人々の健康や環境に悪影響を与えるようになりました。さらに、食品添加物による健康被害が懸念され、人々の間で環境保護や食品安全に対する意識が高まりました。
この時期、起きた公害で特に有名なのは、水俣病、四日市喘息、新潟水俣病、イタイイタイ病などです。これらの公害病は、重金属や化学物質による環境汚染が原因で発生し、多くの住民が健康被害を受けました。
大量廃棄社会の危機
1990年代以降、焼却炉からのダイオキシン発生、最終処分場の不足、不法投棄による環境汚染など、大量廃棄社会が引き起こす問題が次々と明らかになりました。ゴミ問題が深刻化する中、東京や大阪などの日本の大都市では、江東区の埋立地「夢の島」に東京23区から排出されるごみの大半が運ばれていましたが、将来的に処分場が満杯になることが懸念されました。
バブル経済時代には、消費拡大に伴い、一人当たりのゴミ量も増加しました。さらに、産業廃棄物も増え、処分場が足りなくなる状況が発生しました。この結果、地方への産業廃棄物の押し付けや不法投棄が増加する事態となりました。
産業廃棄物不法投棄問題
2000年頃の日本では、大規模な産業廃棄物の不法投棄問題が社会問題となりました。多くの企業がコスト削減や処理の手間を避けるために、適切な処理を行わずに産業廃棄物を違法に投棄していることが明らかになりました。
その代表的な事件として、瀬戸内海の豊島における不法投棄事件、福島県いわき市(四倉町)の不適正保管の事件、青森・岩手県境産業廃棄物不法投棄事件などが挙げられる。
この問題が表面化した背景には、経済成長に伴う大量の廃棄物の発生や、適切な処理施設の不足、処理コストの高さなどが挙げられます。また、行政の監視体制や法規制の緩さも、不法投棄が横行する要因となっていました。
ついにゴミは地球を覆い尽くし始めた
大量消費社会の影響で、必要でないものや短寿命な製品が大量に生産され、多くの人々がそれらを購入し、使い捨てを繰り返してきました。経済が支えられる一方で、大量の廃棄物やプラスチックゴミが土に戻らず、地球上に広がり続けています。
このような状況は、資源の枯渇や環境破壊、気候変動といった地球規模の問題を引き起こしており、持続可能な社会の実現が求められています。
プラスチックゴミの問題は特に深刻であり、海洋汚染や生態系への影響が懸念されています。海洋生物がプラスチックを誤飲したり、プラスチックが分解された微小な粒子(マイクロプラスチック)が海洋生態系に浸透し、食物連鎖を通じて人間にも影響を与える可能性が指摘されています。
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