消費が幸福や自己実現の追求につながるとされる現代社会において、消費者を欺く偽情報や誤解を招く広告、そして子供たちの安全を脅かす問題が発生しています。
新しい生活様式の誕生!マスメディアが牽引する大衆消費社会《資本主義(7)》
Mass Consumer Society
いらないものが欲しくなる…。大衆消費社会の罠
大衆消費社会では、「早く消費をしろ」「もっと消費しろ」という圧力が日常の空間の中に存在しており、私たち消費者は、消費をすることによって自分の幸福を追求する風潮が広まっています。
この風潮に影響されると、消費を行わないことが自己の否定につながると感じるようになってしまうことがあります。
また、消費行動によって得られる快楽や幸福感はすぐに冷めるため、何度も消費をするという繰り返しのサイクルが生まれ、最終的には消費しても幸せではないという、という問題を引き起こしています。
加えて、消費者が選択できる商品やサービスが限定されることで、多様性が失われ、消費者の自由な選択が制限される問題も存在しています。
これらの課題を考慮すると、大衆消費社会の構造が抱える問題が、単なる消費の営みにとどまらず、幸福感の持続性や消費者の選択の自由にまで影響を及ぼしていることが分かります。
大衆消費社会の陰と光
大衆消費社会とは、消費することが社会全体の重要な役割を果たすという価値観のもと、消費者の購買意欲を刺激するため、様々な手段を用いて消費行動を促す社会です。
このような社会構造の中で、企業は自社の製品の需要を増やすために、さまざまな広告戦略や販促手法を駆使し、消費者にアピールします。
消費者が消費をやめた場合、製品を供給している企業は倒産の危機に陥る可能性があるため、社運をかけてそれは行われています。
この状況は、企業にとっては製品の売り上げを増やし、その結果企業の存続につながっていますが、消費者は必要でないものを買ってしまうことや、本当に必要なものと区別がつかなくなることがあります。
特に、裕福な国では、消費者がお金を使える余裕があることから、さらに様々な商品やサービスの購入を促されています。
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消費社会の主役はもちろん私たち消費者
消費社会において経済を支え、成長させる主役は私たち消費者です。消費者とは、消費社会で商品やサービスを購入し、最終的に使用する人々のことを指します。
消費者のニーズや要望に応じて、企業は様々な商品やサービスを提供します。
企業は、消費者の需要に対応して商品やサービスを開発・販売することで、利益を得ることができます。これにより、企業は経済活動を持続し続け、消費者の生活の質も向上させる役割を果たします。
これが、消費社会の主なメカニズムとなっています。
消費社会にとって必要な人間を大量に作り出した
資本主義の大量生産・大量消費や大衆消費のシステムは、消費者の欲望の拡大によって完成しました。そして、このシステムを維持するためには、消費社会に適した人間を育成することが必要不可欠でした。
消費社会に適した人間は、以下の特徴を持ちます。
- 消費意欲が高い
- 個人的なアイデンティティを消費によって表現する
- 一度手に入れたものに飽きやすい
- 新しい商品やサービスに敏感
- 消費の選択肢を持っている
- 自己実現を消費によって追求する
これらの特徴を持つ人間は、自己表現や社会的地位の向上のために消費財を次々と購入する傾向があり、個人の利益や快楽をなによりも重要視する傾向があります。
彼らは、社会や環境への配慮よりも、自己満足や瞬間的な楽しみを追求することが一般的です。
しかし、このうような消費社会に適した人間が増えることで、資本主義はより効率的に運営され、経済成長が促進されていきました。
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「古い製品=ダサい」「新製品=カッコいい」という価値観
多くの企業は、このような消費者に商品やサービスを売り込むために、消費者の欲求や価値観に訴えかける広告戦略を採用しています。
その中で、消費者に「持っていないと時代遅れだ」「持つことで個性的になれる」といったメッセージを送り、商品やサービスの購入を促しています。
また、新製品や新しい機能が追加された製品を購入させるために、既存の製品がまだ十分使用可能なのにも関わらず、一刻も早く買い替えるように煽る戦略もあります。
これらの広告やマーケティング手法は、消費者の潜在意識の奥深くに影響を与えることがあります。
洗脳に近い形で商品を購入するケース
その結果、消費者は自分の本当に欲しい物や、自分自身の価値観ではなく、広告やマーケティングによって植え付けられた欲求や価値観にもとづいて、消費(購買)行動をさせられることがあるのです。
このような状況は、大衆消費社会における消費行動の問題点として指摘されることが多く、持続可能で意味のある消費の視点から見直しが求められています。
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多種多様な商品の選択肢がもたらす、消費者の悩み
消費者は、新しい商品やサービスに触れる機会が増えるにつれて、選択肢も増えています。
これは、技術の進歩やグローバル化、インターネットの普及などにより、消費者が世界中の様々な商品やサービスにアクセスできるようになったためです。
多様な選択肢があることは、消費者にとって一見良いことのように思われますが、選択肢が増えることで、消費者は選択の難しさや情報過多に悩まされることがあります。
これは、選択肢が増えることで、消費者が最適な選択を行うためには、多くの情報を比較検討しなければならなくなるためです。
また、選択肢が増えることで、消費者は新しい商品やサービスに敏感になり、ついつい新たな消費を行ってしまう傾向があります。
これが、短期的な消費のサイクルを誘発し、持続可能性や環境保護の観点から問題視されています、
情報・知識の格差により消費者が騙されるケース
現代の消費社会では、多様な商品やサービスが存在し、消費者が選択する際に情報収集が不可欠です。
しかし、情報収集力には個人差があり、消費者は情報不足に陥ったり、偽情報に惑わされたりすることがあります。加えて、業者は商品やサービスを売るために様々な手法を使い、消費者を誘導することがあります。
このような状況下で、消費者は業者側との交渉力の格差があった場合に、消費でのトラブルが発生することがあります。
消費者問題に対処するためには、以下のような対策が考えられます。
- 消費者教育: 消費者が情報収集や判断力を向上させるための教育や啓発活動を行う。
- 消費者保護法の整備: 不当な商慣行や詐欺行為に対して罰則を設け、消費者の権利を守る法律を整備する。
- 消費者団体の活動: 消費者団体が消費者の利益を代表し、業者との交渉や情報提供を行うことで、消費者の権利を守る。
- 情報の透明性向上: 業者による情報提供の透明性や正確性を求め、偽情報や誤解を招く広告に対処する。
- インターネットの利用: オンライン上での口コミや評価システムを活用し、消費者同士が情報を共有する。
これらの対策により、消費者は情報不足や偽情報から守られ、適切な選択ができるようになります。また、業者側も適正な商売を行い、消費者との信頼関係を築くことが求められます。
巧妙かつ悪質になっていく詐欺まがいの手法
現代の消費社会では、次のような様々な消費者問題が発生しています。
- インターネット上での詐欺行為や迷惑メール
- 情報漏洩と不正利用
- 商品やサービスの誇大広告
- 偽装表示
- 欠陥商品や有害商品の販売
- 適切な情報提供がないままの契約
- 不当な勧誘と違法な架空請求
これらの問題は、消費者が情報力や交渉力に乏しいため、業者側が不当な利益を得ることができるパワーバランスが原因となっているものや、犯罪者が巧妙な手口を用いて消費者を騙すケースまで、さまざまです。
これに対抗するためには、消費者教育と規制の強化が不可欠です。
子供も巻き込まれる
現代の消費社会では、スマートフォンやタブレットなどのデバイスを通じて、子供たちがアプリやゲームを利用する際にトラブルが発生することがあります。
例え無料のアプリやゲームだったとしても、アイテム課金や追加コンテンツの購入などがあり、子供たちが知らないうちに課金をしてしまう場合があります。
子育てに関連する消費
現代の消費社会において、子育てに関連する消費が強く求められています。
例えば、子育てに必要なアイテムとして、ベビーカーやチャイルドシート、おむつやミルク、おもちゃや教育グッズなどが挙げられます。
さらに、育児書や育児雑誌、育児イベントなど、情報提供も消費の対象となっています。
これらの商品やサービスは、子供の成長や安全、教育面で役立つものも多くありますが、同時に消費者への売り込みが過剰になることがあります。
親は、子供に最高のものを提供したいという気持ちから、無意識的に消費を促進することがあります。
子育てにおける消費のバランスを適切に保つためには、以下の点に注意が必要です。
- 必要性を考慮する: 子育てに関連する商品やサービスを購入する際に、本当に必要かどうかを慎重に検討し、過剰な消費を避ける。
- 情報収集を行う: 商品やサービスの評価や口コミ、専門家の意見などを調べ、適切な選択を行う。
- 予算管理を徹底する: 子育てに関する支出に対して、適切な予算を設定し、無駄な出費を抑える。
- 他人と比較せず、自分のペースで子育てを楽しむ: 他の親と比較することなく、自分の子供の成長やニーズに合わせた子育てを心がける。
これらの注意点を意識することで、子育てに関連する消費を適切な範囲内で行い、親子共に健康的で楽しい子育てができるでしょう。
消費社会では子供も立派な消費者
現代の子供たちにとって、メディアやアイドル・キャラクターの影響力は大きなものになっています。
テレビやインターネットを通じてアクセスできるアニメやゲームの主人公たちは、子供たちの憧れの対象となり、彼らが消費するものや参加するイベントに大きな影響を与えます。
また、ネットの発達した現代では、子供たちも大人と同様にさまざまな情報に触れることができ、同じように多種多様な商品にアクセスできます。
しかし、子供たちの判断力はまだ未熟であり、情報や商品に対する判断力が低いため、大人と同様のトラブルに巻き込まれるケースも発生しています。
そのため、保護者や教育者が子どもたちのメディア利用や消費行動に注意を払い、適切な指導を行うことが重要です。
消費者保護の重要性と課題
これら消費問題が放置されると、消費者の利益を損なうだけでなく、市場経済の健全な発展にも悪影響を与える可能性があります。
そのため、政府は様々な取り組みを行ってきました。
「消費者保護基本法」
1968年に「消費者保護基本法」が制定され、日本における消費者保護の法的基盤が整備されました。
この法律は、商品やサービスの提供者が消費者に対して偽りや誇大広告を行うことを禁止したり、不良品や有害な商品を提供することを禁止したりすることを定めています。
また、消費者が適切な情報を受け取り、自己の判断で購入する権利を保障するとともに、消費者が被る被害を回避するための手段を提供することが目的とされています。
「消費者基本計画法」
2004年には消費者基本法を大幅に改正し、消費者政策・行政の指針を規定する「消費者基本計画法」を新設。消費者保護のために、消費者の権利の尊重と自立の支援が柱とされています。
消費者基本計画の策定は、国、都道府県、市区町村が行うことが義務付けられています。
「消費者庁」
2012年には、消費者に対する指導、監督、啓発などの消費者行政を担う行政機関「消費者庁」が設置されました。
同庁は、国民生活に関わる広範な消費者問題に対して、一元的かつ効果的な対策を取ることが目的とされています。
消費者被害の防止や消費者教育、企業に対する規制強化などを行い、消費者の安全と利益を守るために様々な取り組みを行っています。
読者の皆様へ
大衆消費社会における安全で賢い消費は、消費者の意識改革にかかっています。
私たち一人ひとりが賢い消費者になることで、大衆消費社会の課題に立ち向かうことができます。詐欺や偽造品から身を守るためには、情報をしっかりと把握し、自らを守る意識を持ちましょう。
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