「裕福な国は貧しい国にゴミを押し付け始めた」この世界のルール資本主義(10)

「裕福な国は貧しい国にゴミを押し付け始めた」この世界のルール資本主義(10)

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「大量生産と大量消費が生み出したのは“大量のゴミ”」この世界のルール資本主義(9)
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古紙やペットボトルなどの分別収集のイメージが強いリサイクル。だが、回収された使用済み製品は国内で再使用・再生利用されるだけではない。中古車や鉄スクラップなどは今や日本の主力輸出品である。一方、国際的なリサイクルは急速に拡大し、各国による再生資源の獲得競争や、環境汚染を生む有害廃棄物の輸出など、多くの問題も起こっている。二十世紀末から急拡大している知られざる現状と、問題点を明らかにする。(「BOOK」データベースより)

Export garbage

裕福な国は貧しい国にゴミを押し付け始めた

国際環境NGOグリーンピース ジャパン/YouTube

豊かな国々は、環境保護を語りながら、自分たちが排出するゴミを貧しい国々に大量に輸出してきました。

先進国での処理が高額になる一方で、発展途上国では処理コストが低く、また法的にも規制が緩いことがあったためです。

世界的に増加し続けるプラスチックのゴミ

世界的にプラスチックのごみは増加し続けています。

プラスチックは、軽量で丈夫であり、低コストで大量生産が可能であるため、現在、世界中で年間約3億トンのプラスチック製品が生産されており、ペットボトルやレジ袋だけでなく、家電製品、車の部品、建築資材、衣服や家具の一部など、多様な製品に使用されています。

一方で、年間に約1億3,000万トンが廃棄物として発生しています。

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不適切な廃棄方法で処理

このプラスチックの廃棄物の大部分は、ごみ捨て場や海洋に投棄されるなど、不適切な廃棄方法で処理されています。

プラスチックは非常に耐久性があり、不適切な廃棄物処理方法や、リサイクルが十分に行われていなかったりする場合、長期間にわたって環境に残り続けることがあります

プラスチックを生産する時点で化石燃料を大量消費

また、プラスチックは原料として石油や天然ガスなどの化石燃料を大量に消費しているため、地球規模での石油の枯渇やエネルギー資源の過剰消費につながる可能性があります。

プラスチックを燃焼して処理すると有害物質が発生

プラスチックの廃棄物処理に関しても問題があります。プラスチック製品を焼却することで発生する二酸化炭素や有害物質は大気汚染や地球温暖化の原因となります。また、プラスチック製品が不適切な廃棄方法で処理されると、海洋プラスチック汚染などの深刻な環境問題を引き起こす可能性があります。

日本もゴミを輸出している!

BBC News Japan/YouTube

日本国内では年間約900万トンのプラスチック廃棄物が発生しています。日本は廃棄物処理技術が発展しており、プラスチックごみの有効利用率は8割を超えています。しかし、その一方で、プラスチック製品の焼却による熱回収や、リサイクル名目での海外輸出に依存している状況もあります。

プラスチック製品の焼却による熱回収は、プラスチック製品を燃やして発生する熱を利用して発電する方法です。一方、リサイクル名目での海外輸出は、日本で収集されたプラスチックごみを海外のリサイクル工場に輸出して、再利用する方法です。

「リサイクル資源」の名目で海外にプラスチックゴミを輸出

2019年には、日本から約90万トンのプラスチックごみが海外に「リサイクル資源」として輸出されました。現在は、このような海外輸出に対する規制がなく、輸出先での適切なリサイクルが行われなかったり、プラスチックごみが不適切な廃棄方法で処理されたりすることで、環境汚染を引き起こすケースがあると指摘されています。

プラスチックゴミが山積み

輸出されている廃プラスチックの中には、リサイクルできるような良好な状態ではないものも含まれています。そのため、輸出先でプラスチックごみとして山積してしまうことがあります。

これは、プラスチックごみの選別や分別が不十分だったり、プラスチック製品が汚染されていたり、品質に問題がある場合があるためです。また、海外のリサイクル工場には、プラスチックごみを処理するための適切な設備や技術が整っていない場合もあり、輸出されたプラスチックごみ

かつて“世界のゴミ箱”と言われた国「中国」

NTD Japan/YouTube

1980年代以降、中国は日本や欧米、欧州などの国から廃プラスチックや古紙などの資源ごみを大量に輸入し、中国国内で分別・加工して、新たな製品の原料として再利用することが一般的でした。

全世界の70%のプラスチックゴミを輸入
アジアンドキュメンタリーズ/YouTube

1988年から2016年までの間に、中国が輸入したプラスチックごみの総量は2.2億トンであり、世界全体の約7割を占め2017年には、日本の中国への廃プラスチック輸出量は、約140万トンだった。。しかし、2017年に中国政府が発表した資源ごみの輸入規制により、日本を含む多くの国が廃プラスチックの輸出に制限を設けることとなりました。このため、日本の廃プラスチックの処理方法に関しても、新たな取り組みが模索されるようになっています。

「もうゴミはいらない!」中国は“世界のゴミ箱”を辞めた

られていましたが、環境への悪影響や健康被害の問題などを理由に、2018年から24品目の廃棄物の輸入を禁止する政策を開始しました。この政策は、廃プラスチックや古紙、スチールスクラップ、廃鉄、ゴムなどの廃棄物の輸入を制限するもので、輸入が認められる廃棄物の品目も厳しく制限されることになりました。

結果……東南アジア諸国にゴミが拡散!

BBC News Japan/YouTube

中国の資源ごみ輸入禁止により、先進諸国は急場しのぎで東南アジア諸国に廃プラスチックの輸出先を変更しました。そのため、マレーシアやベトナム、タイ、インドネシアなどの東南アジア諸国では、プラスチックごみの輸入量が急増し、環境汚染や健康被害の問題が深刻化しました。

輸出されたプラスチックごみには、回収やリサイクルが困難なものが含まれていることがあります。例えば、使用済みおむつや廃棄された建材、家電製品などは、リサイクルが困難であるため、廃棄物として処理されることが一般的です。これらの廃棄物は、燃やすことで発生する二酸化炭素や有害物質が環境に悪影響を与えるため、より適切な処理方法が求められています。

また、プラスチックごみの中には、異なる種類のプラスチックが混在していることがあり、リサイクルが困難になることがあります。これは、プラスチック製品の種類や使用目的が多様化したことに起因するものであり、プラスチック製品の分別やリサイクル技術の向上が求められています。

朝日新聞社/YouTube

プラスチックゴミで埋まったベトナムのリサイクル村「ミンカイ」

ベトナムのミンカイ村は、プラスチックごみで埋もれていることが報告されています。ミンカイ村は、ハノイから車で1時間の場所にある村で、プラスチックごみのリサイクルが主な産業となっています。

しかし、近年になって、村に集まったプラスチックごみが増加し、適切な処理方法が確保されていないため、村がプラスチックごみで埋もれる状況となっています。

中国が2017年にプラスチックごみの輸入を禁止したことにより、東南アジア諸国にプラスチックごみが流入し、その中にはベトナムにも大量に輸入されました。2018年の最初の6か月には、日本がベトナムに最も多くのごみを輸出した国の1つであり、総量はプラスチック、紙、鉄鋼を含めて約410万トンでした。

このような状況を受けて、ベトナム政府はプラスチックごみの問題に取り組む方針を打ち出しています。具体的には、プラスチックごみの使用量の削減や分別、リサイクル技術の向上などが求められています。また、村などでの適切なプラスチックごみの処理方法の確保も重要な課題となっています。

日本の廃棄物処理専門家はリサイクル村について「住民の健康被害や環境汚染が懸念される」とする一方、「このような受け皿があるからこそ、ベトナムではリサイクル資源が資源として流通することが可能になる。なければごみが増えてしまう」と指摘した。

ベトナム 発展支える「リサイクル村」 新興国の発展を支えるも、健康被害など負の側面 (1/2ページ)/SankeiBiz.2017

違法に輸出されるケース

プラスチックごみの中には、日本から違法に輸入されているものもあるとされています。中にはリサイクルできない不純物を含むものもあり、2%を超える場合は違法とされています。また、プラスチックごみの中には、分別が不十分で汚染されたものもあるとされています。

インターポールは、加盟国の捜査情報などをもとに、プラスチックごみに関する犯罪を調査し、違法な輸出や受け入れが急増していることを指摘しています。このような違法なプラスチックごみの輸出や受け入れは、環境に悪影響を与えるだけでなく、国際法に違反することになります。

先進国からの持ち込まれたゴミを強制返却

BBC News Japan/YouTube

中国がプラスチックごみの輸入を禁止したことにより、先進国は東南アジア諸国にプラスチックごみを輸出するようになりました。しかし、これにより、東南アジア諸国ではプラスチックごみの処理に苦慮することになり、中には強制的に送り返す動きも出てきています。

特に、マレーシアやインドネシアでは、プラスチックごみの問題による環境汚染や健康被害が深刻化しており、政府が対策を講じるなかで、不適切なプラスチックごみの輸入を防止するために、強制的に送り返す動きが相次いでいます。このような状況を受けて、プラスチックごみの適切な処理方法を確保し、環境や人々の健康を守るための国際的な取り組みが求められています。

世界のゴミ捨て場じゃない!マレーシアが怒りを表明
TBS NEWS/YouTube

「世界のゴミ捨て場じゃない」マレーシアは、違法なプラスチックごみの輸入に対して強い姿勢を示し、13の富裕国に対して3737トンのプラスチックごみを送り返したことが報じられています。

違法なプラスチックごみ輸入が急増したマレーシアでは、十分な処理施設がなく、単純燃焼によって各地で大気汚染の深刻化するなどの問題が発生しています。これまでに送り返された廃プラスチックごみは、国内の200以上の工場から回収されたものも含まれており、その後の適切な処理が求められています。

日本&ノルウェー:「もうこんなことはやめよう」

2019年バーゼル条約の国際会議で、汚染された廃プラスチックを条約の規制対象にすることが決定されました。この提案は、ノルウェーが最初に出し、日本が共同提案に回り、議論の末に各国で合意されたものです。

ゴミの押し付けが困難になった

これにより、汚染された廃プラスチックの輸出や処理に関する国際的なルールが整備され、プラスチックの大量消費国が、廃棄物を他国に押しつけることが、今までよりも難しくなりました。

ゴミは自分の国でなんとかしよう!

日本も含めた締約国は、プラスチックごみの発生量削減だけでなく、国内でのリサイクル処理能力の強化など、国内で循環させていくことが求められています。環境省は、国内で発生するプラスチックごみの全量を原則国内で処理できるように体制を見直すことを目指しており、各自治体でもプラスチックごみの分別やリサイクルに関する取り組みが進んでいます。また、企業や消費者も、プラスチック使用量の削減やリサイクルに積極的に取り組むことが求められます。今後は、より持続可能なプラスチックの使用と廃棄に向けて、国際的な取り組みが進むことが期待されます。

ちなみにアメリカは拒否

プラスチックゴミの世界最大の輸出元は欧州連合(EU)だが、国単位で見るとアメリカです。そんな、アメリカはバーゼル条約に批准していません。ただし、アメリカはOECD(経済協力開発機構)理事会の輸出入に関するガイドラインを設定しています。

これにより、リサイクルが目的である場合、アメリカなどの非加盟国からのプラスチックごみの輸入が可能となっています。

ただし、OECD理事会の決定には、輸出先国との事前の合意が必要であり、輸出品目や数量などにも制限が設けられています。また、バーゼル条約加盟国である日本や欧州連合は、リサイクル目的での輸出入に関しても厳しい規制を設けているため、アメリカからのプラスチックごみ輸入についても問題が指摘されています。

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